説明

光ファイバ保持部材、光ファイバの保持構造、光ファイバのリボン化方法および光ファイバの融着方法

【課題】 簡易な構造であり、光ファイバ心線を順番に配置する際に、光ファイバ心線が保持部から抜け落ちることがない光ファイバ保持部材等を提供する。
【解決手段】 本体部3の長手方向の側方には、ヒンジ23aにより開閉可能な仮押さえ部5が設けられる。また、仮押さえ部5と併設され、ヒンジ23bによって仮押さえ部5と同様な向きに開閉可能な本押さえ部7が設けられる。仮押さえ部5の裏面には段部11が設けられる。仮押さえ部5を閉じた際に、仮押さえ部5の裏面5aと対向する部位の上面3aには凹部が形成され、凹部には弾性部材9が設けられる。弾性部材9は、後述する光ファイバ挿入作業において、光ファイバを挿入することができるよう、容易に変形が可能である。本押さえ部7の裏面には、第2の弾性部材である弾性部材15が長手方向に渡って形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバ心線を容易に整列させて保持することが可能な光ファイバの保持部材およびこれを用いた光ファイバのリボン化方法、光ファイバの保持構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の光ファイバ心線を整列させてリボン化する場合がある。リボン化とは、例えば、4本の光ファイバを順番に並べて整列させ、整列させた状態で接着材等により固定して一体化するものである。しかしながら、線径の細い複数の光ファイバ心線を、例えば色によって識別し、順序良く整列させて一体化することが困難であるため、通常、光ファイバ心線を整列状態で保持可能な光ファイバ保持部材が用いられる。
【0003】
このような、光ファイバ心線を整列状態で保持可能な装置として、例えば、基体部材に一対のプレート部材を配置し、一方のプレート部材を基体部材に対して摺動可能にするとともに、他方のプレート部材に対して付勢して、プレート部材の間に光ファイバ心線を整列させる結束装置がある(特許文献1)。
【0004】
また、光ファイバ整列溝が形成される基台上に、開閉可能な蓋部を設け、蓋部に光ファイバ心線を押さえる押さえ部材が設けられた、光ファイバホルダがある(特許文献2)。
【0005】
また、複数の単心ファイバのそれぞれに所定方向への撓み力を付与する付勢部と、付勢部に隣接配置され、各単心ファイバを撓み力を利用して所定の順序に導入して整列させると共に、整列させた複数の単心ファイバを把持して仮固定する整列部と、整列部に隣接配置され、整列させた複数の単心ファイバを幅寄せする幅寄部とを備えた光ファイバの整列治具がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−25806号公報
【特許文献2】特開2007−171825号公報
【特許文献3】特開平7−159641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の装置は、部品点数も多く構造も複雑である。また、特許文献1、特許文献2のいずれの方法においても、細い光ファイバ心線を順序良く整列させるために、光ファイバ心線を部材に順番に配置する必要があるが、順次光ファイバを配置する際に、後に配置する光ファイバ心線を取り扱い中に前に配置した光ファイバ心線が保持部から抜け落ち、または、順番が入れ替わってしまう恐れがある。したがって、光ファイバ心線を保持しながら順次整列させることが困難である。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易な構造であり、光ファイバ心線を順番に配置する際に、光ファイバ心線が保持部から抜け落ちることがなく、従来に比べて小型化が可能な光ファイバ保持部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、光ファイバ保持部材であって、本体部と、前記本体部に対してヒンジで開閉可能な第1の押さえ部と、前記本体部の長手方向に対して前記第1の押さえ部に隣り合うように形成され、前記本体部に対してヒンジで開閉可能な第2の押さえ部と、を具備し、前記第1の押さえ部を閉じた状態で、前記第1の押さえ部と前記本体部との対向面の間には、ヒンジとは逆側の側端部であるファイバ挿入側から光ファイバを挿入可能な隙間が形成され、前記第1の押さえ部と前記本体部の対向面には、前記隙間を埋めるように第1の弾性部材が配置され、前記第2の押さえ部の前記本体部との対向面側には、第2の弾性部材が設けられ、前記第1の弾性部材は、前記第2の弾性部材よりも低硬度であることを特徴とする光ファイバ保持部材である。
【0010】
前記第1の押さえ部または前記本体部の対向面の少なくとも一方には段部が形成され、前記第1の押さえ部を閉じた状態で、前記第1の押さえ部と前記本体部との対向面の間には前記段部に応じた隙間が形成され、前記隙間は、前記ファイバ挿入側から所定範囲まで形成されてもよい。
【0011】
前記第2の押さえ部に対応する前記本体部の上面には、前記本体部の長手方向に光ファイバを保持可能な溝が形成され、前記段部は前記第1の押さえ部に形成され、前記弾性部材は前記本体部に埋設されることが望ましい。前記隙間は、前記溝の深さよりも大きく、前記溝の深さの2倍よりも狭いことが望ましい。
【0012】
前記ファイバ挿入側の前記第1の押さえ部および/または前記前記本体部の端部には前記隙間が広がる方向にテーパ部が形成されてもよい。
【0013】
前記ファイバ挿入側の前記第1の弾性部材の端部には前記隙間が広がる方向にテーパ部が形成されてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、第1の押さえ部材側には、光ファイバの外径に相当する隙間が設けられ、当該隙間には弾性部材が形成される。このため、第1の押さえ部材を閉じた状態で光ファイバ心線を光ファイバの軸方向に垂直な方向に挿入すれば、弾性部材が変形し、光ファイバ心線が第1の押さえ部と本体部との隙間に挿入されるとともに弾性部材によって光ファイバ心線が保持される。したがって、挿入された光ファイバ心線がずれたり抜け落ちたりすることがない。
【0015】
また、隙間が光ファイバ心線の外径に対応するため、光ファイバ心線を順番に挿入すれば、挿入した順番に光ファイバ心線を整列させることができる。
【0016】
また、ファイバ挿入側の第1の押さえ部材、本体部、弾性部材等に対して、端部に向かって隙間が広がるようなテーパ形状が設けられれば、光ファイバ心線を挿入する際に引っかかりがなく、挿入作業が容易である。
【0017】
また、第1の押さえ部材の他に第2の押さえ部材が設けられ、低硬度である第1の押さえ部で仮押さえしながら光ファイバ心線を挿入後、より高硬度な弾性部材を有する第2の押さえ部で確実に整列された状態の光ファイバ心線を押さえることができる。
【0018】
第2の発明は、光ファイバの保持構造であって、第1の発明にかかる光ファイバ保持部材を用い、前記溝の深さに対応する外径の複数本の光ファイバが前記溝および前記隙間の内部で整列され、前記第1の弾性部材が前記複数本の光ファイバを覆うように変形するとともに、前記第2の弾性部材によって前記光ファイバが前記溝に対して押さえつけられて保持されることを特徴とする光ファイバの保持構造である。前記隙間は、保持される前記光ファイバの外径よりも大きく、かつ、前記光ファイバの外径の2倍よりも小さく、前記隙間に挿入されて整列する光ファイバの整列順序が、前記隙間の内部で入れ替わることを防止可能であることが望ましい。
【0019】
第3の発明は、光ファイバのリボン化方法であって、第1の発明にかかる光ファイバ保持部材を用い、前記第1の押さえ部を閉じ、前記第2の押さえ部を開いた状態で、前記ファイバ挿入側から、前記隙間に対応する外径の光ファイバを軸方向に垂直な方向に複数本挿入し、複数の光ファイバが前記本体部の溝に整列した状態で、前記第2の押さえ部を閉じ、前記第2の押さえ部で前記光ファイバを保持しつつ、複数の光ファイバを整列状態で一体化することを特徴とする光ファイバのリボン化方法である。
【0020】
光ファイバの融着方法であって、第1の発明にかかる光ファイバ保持部材を用い、一対の前記光ファイバ保持部材のそれぞれに複数の光ファイバを保持し、一対の前記光ファイバ保持部材を互いに対向するように設置して、それぞれの光ファイバの先端同士を対向させ、それぞれの光ファイバ同士の先端部に放電電極によって放電することで、光ファイバ同士を融着することを特徴とする光ファイバの融着方法である。
【0021】
第2の発明から第4の発明によれば、確実に光ファイバ心線を保持することができるとともに、容易に光ファイバをリボン化することができ、または容易に光ファイバ同士を融着することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な構造であり、光ファイバ心線を順番に配置する際に、光ファイバ心線が保持部から抜け落ちることがなく、従来に比べて小型化が可能な光ファイバ保持部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】押さえ部を開いた状態の光ファイバ保持部材1を示す斜視図。
【図2】押さえ部を閉じた状態の光ファイバ保持部材1を示す斜視図。
【図3】光ファイバ保持部材1に光ファイバ25を挿入する状態を示す斜視図。
【図4】光ファイバ保持部材1に光ファイバ25が挿入された状態を示す図で(a)は全体斜視図、(b)は(a)のC−C線断面図。
【図5】図4(b)のD部拡大図であり、光ファイバ25の挿入状態を示す図。
【図6】本押さえ部7を閉じた状態を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)は(a)のG−G線断面図。
【図7】図6(b)のH部拡大図であり、光ファイバ25の整列状態を示す図。
【図8】光ファイバリボン化装置30を示す概略図。
【図9】光ファイバ被覆除去装置40を示す概略図。
【図10】光ファイバ融着装置50を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態にかかる光ファイバ保持部材1について説明する。図1、図2は、光ファイバ保持部材1を示す図であり、図1は仮押さえ部5、本押さえ部7が開いた状態を示す図、図2は、仮押さえ部5、本押さえ部7が閉じた状態を示す図である。光ファイバ保持部材1は、主に、本体部3、仮押さえ部5、本押さえ部7、弾性部材9、15等から構成される。
【0025】
本体部3は、略平滑な上面3aを有する部材である。本体部3の長手方向(保持対象の光ファイバの軸方向)の側方には、ヒンジ23aにより開閉可能な仮押さえ部5が設けられる。また、仮押さえ部5と併設され、ヒンジ23bによって仮押さえ部5と同様な向きに開閉可能な本押さえ部7が設けられる。
【0026】
なお、本体部3、仮押さえ部5、本押さえ部7は全て金属製であり、図示を省略した磁石等によって、仮押さえ部5、本押さえ部7と本体部3とが互いに固定することができる。すなわち、本体部3または仮押さえ部5、本押さえ部7に磁石を埋設することで、仮押さえ部5および本押さえ部7それぞれは、閉じた状態で保持される。また、本体部3には、必要に応じて、ストリッパ等の他の部材等に対して位置決めが可能な、位置決め孔等を形成することもできる。
【0027】
仮押さえ部5の裏面には段部11が設けられる。段部11は、本体部3の長手方向にまっすぐに形成される。したがって、裏面には、段部11によって2段の平面が形成され、ヒンジ23a側から他方の側(以後、ヒンジ23a側と反対側の端部方向を「ファイバ挿入側」と称する)に対して一段下がる(仮押さえ部の肉厚が肉薄となる方向の段となる)ように構成される。なお、仮押さえ部5の裏面視において、ファイバ挿入側の一段下がった部位の面を裏面5aとする。
【0028】
仮押さえ部5は、閉じた状態で裏面5aと上面3aとが略平行となるように調整される。すなわち、仮押さえ部5を閉じると、仮押さえ部5の裏面5aと本体部3の上面3aとの間には、略平行な隙間が形成される。隙間の大きさは、保持対象となる光ファイバの外径よりもわずかに大きく設定される。なお、平行な隙間を形成するためには、必要に応じて、本体部3に図示を省略した高さ調整ねじ等を設け、仮押さえ部5を閉じた際に、段部11の上段部(裏面5aと異なる方の面)との接触高さを調整できるようにすればよい。
【0029】
仮押さえ部5の先端(ファイバ挿入側)にはテーパ部19が設けられる。テーパ部19は、仮押さえ部5を閉じた状態で、前述した隙間が端部に向かって広がるように形成される。同様に、上面3aの側端部(仮押さえ部5の先端に対応する部位)にも同様のテーパ21が形成される。テーパ19、21は、光ファイバを挿入する際のガイドとして機能する。
【0030】
仮押さえ部5を閉じた際に、仮押さえ部5の裏面5aと対向する部位の上面3aには凹部が形成され、凹部には第1の弾性部材である弾性部材9が設けられる。弾性部材9は、後述する光ファイバ挿入作業において、光ファイバを挿入することができるよう、容易に変形が可能であるとともに、光ファイバの容易な抜けが防止できる程度の滑り止め効果と、さらに、後に述べる隙間27においてファイバが重ならない程度の厚みと弾力などの特性を有すればよい。例えば、クロロプレンゴムスポンジ、天然ゴムスポンジ、ニトリルゴムスポンジ、フッ素スポンジ、シリコーンスポンジ等のゴムスポンジを用いることができ、特にエチレン・プロピレンゴムスポンジが望ましい。好ましい例として多孔質弾性体である各種スポンジを挙げたが、前述の特性を有する部材であれば、いずれの弾性材料を用いることできる。
【0031】
なお、光ファイバの挿入性および保持性を考慮すると、弾性部材9は低硬度な弾性体であることが望ましく、例えば、日本ゴム協会標準規格で規定されるASKER C8程度の柔らかいゴムを用いることも可能である。また、弾性部材9は、変形量を確保するため、ある程度の厚みがあることが望ましく、例えば3mm程度の厚みであればよい。なお、弾性部材9の上面(裏面5aとの対向面)は、本体部3の上面3aよりもわずかに突出するように形成されるが詳細は後述する。
【0032】
本押さえ部7の裏面には、第2の弾性部材である弾性部材15が長手方向に渡って形成される。弾性部材15は、例えばゴム製である。弾性部材15は、弾性部材9のように大きな変形量は不要であり、弾性部材9よりも高硬度な材質で構成される。例えば、中(高)硬度のゴムが望ましく、硬度60程度のものを使用することが可能であり、ファイバホルダのファイバ押さえとして慣用されている部材を利用することができる。また、大きな変形量が不要であるため、厚みは1mm程度でよい。なお、仮押さえ部5と同様に、本押さえ部7(弾性部材15)の裏面は、本体部3上面と略平行となるように調整される。
【0033】
上面3aの本押さえ部7(弾性部材15)との対向面には、本体部の長手方向に向けて溝17が設けられる。溝17の深さは、保持対象となる光ファイバの外径に対応し、光ファイバの外径よりもわずかに浅く設定される。したがって、溝17の深さよりも前述した隙間の大きさの方がわずかに大きく設定される。なお、溝17の軸方向の延長上に、弾性部材9が配置される。
【0034】
次に、光ファイバ保持部材1の使用方法について説明する。まず、図3に示すように、本押さえ部7を開いた状態で、光ファイバ保持部材1の仮押さえ部5のみを閉じる(図中矢印A)。この状態で、仮押さえ部5と本体部3との隙間に光ファイバ25を軸方向に垂直な方向に挿入する(図中矢印B方向)。
【0035】
光ファイバ25は、例えば着色等によってそれぞれ識別可能であり、所定の順序にしたがって、光ファイバ25を順次挿入する。なお、以下の図においては、光ファイバ25を4本挿入する例を示すが、本発明はこれに限られない。
【0036】
図4は、光ファイバ25が挿入された状態を示す図で、図4(a)は全体斜視図、図4(b)は図4(a)のC−C線断面図である。また、図5は、図4(b)のD部拡大図である。本体部3の上面3aと、仮押さえ部5の裏面5aとの間には、隙間27が形成される。図5(a)に示すように、光ファイバ25を隙間27の最奥部まで挿入すると、最初に挿入される光ファイバ25は段部11と接触するまで挿入される。その後に挿入される光ファイバ25は、隙間27の大きさが光ファイバ25の外径よりもわずかに大きいだけであるため、隙間27内で前後のファイバが入れ替わることがなく、挿入順に順次整列される。なお、隙間27は、例えば、溝17の深さよりも大きく、溝17の深さの2倍よりも小さく設定すればよい。
【0037】
ここで、弾性部材9は、隙間27を埋めるように、上面3aよりも上方に突出する。なお、「隙間27を埋めるように」とは、隙間27を完全に埋める必要はなく、例えば隙間27の高さの半分以上を埋めるように弾性部材9の厚み等を設定すれば良い。
【0038】
ここで、光ファイバが挿入され、上面3a近傍まで弾性部材9が収縮した際に、その収縮時の弾性部材9の硬度が、使用される光ファイバ被覆の硬度よりもやわらかいと都合が良い。また、弾性部材9の側部の少なくとも一方、好ましくは本押さえ部7側に上面3aと仮押さえ部5が対向する部分(弾性部材)9がない部分)を設けて、この間隔が使用される光ファイバよりも若干広い幅(光ファイバの2倍よりも小さい値)に設定されていると、効果的に光ファイバ同士の重なりが防がれる。さらに、段部11の端部、上面3aの弾性部材9との境界部の端部は面取りされていると光ファイバに傷が入ることがなく都合が良い。
【0039】
さらに、使用される光ファイバの同種の光ファイバを仮押さえ部5に挿入し、光ファイバの一端部におもりを取り付けて地面から浮かせた際に、光ファイバが仮押さえ部5をすべり、おもりが地面に落ちないおもりの最大値を「ファイバ保持力」とすると、光ファイバの固定の観点から、ファイバ保持力は30g以上、特に望ましくは10g以上であり、挿入性の観点からはファイバ保持力は、10kg以下、特に望ましくは100g以下となるように、弾性部材9の材料、および体積を設定すると都合が良い。さらに作業性を考慮すると、ファイバ保持力は10g以上、100g未満であると都合がよい。また、本押え部の把持力(被覆除去時に滑らない把持力)は、500g以上(1kg程度)あることが望ましい。
【0040】
なお、本実施例では隙間27の間隔は固定されているが、隙間27の調節手段、たとえば、ヒンジ基部を仮押さえ部5あるいは本体部3と別体でかつ間隔調整ねじなどを設けるか、あるいは仮押さえ部5に段差を設けるなどにより、複数の径の光ファイバに対応させることもできる。
【0041】
図5(a)に示すように、隙間27に光ファイバ25を挿入すると(図中矢印E方向)、弾性部材9は光ファイバ25の外形に追従して変形する。この際、前述のように、弾性部材9の硬度は低いため、光ファイバ25に過剰な力が付与されることはない。光ファイバ25は、弾性部材9を変形させながら奥方向に挿入されて、段部11または他の光ファイバ25と接触する位置まで挿入されて整列される(図5(b))。
【0042】
光ファイバ25が整列された状態では、光ファイバ25は、本体部3に対してまっすぐに保持され、溝17内に収められて整列される。すなわち、溝17の幅は、光ファイバ25の外径と保持本数に応じて設定される。また、隙間27の最奥部に挿入された光ファイバ25(最初に挿入される光ファイバ)は、段部11に接触するとともに、溝17の奥側(ヒンジ23b側)に配置される。したがって、溝17の奥側の側面と仮押さえ部5を閉じた状態における段部11の位置は、略一直線上となるように配置される。本実施例では、溝17で位置決めがされているが、V溝などの位置決め手段を用いても良い。
【0043】
光ファイバ25の挿入中は、すでに挿入された光ファイバ25が弾性部材9によって滑ることなく保持される。したがって、光ファイバ25の外径にばらつきがある場合や、裏面5aと上面3aとの平行度が悪い場合などにおいて、光ファイバの挿入作業中に一部の光ファイバが保持されずに、光ファイバ25が隙間27内でずれたり、軸方向に抜けてしまうなどの恐れがない。
【0044】
次に、図6に示すように本押さえ部7を閉じる(図中矢印F方向)。図6(a)は、本押さえ部7を閉じた状態を示す全体斜視図、図6(b)は図6(a)のG−G線断面図である。本押さえ部7の裏面側には、弾性部材15が設けられ、弾性部材15は本押さえ部7の裏面からわずかに突出する。
【0045】
図7は、図6(b)のH部拡大図である。前述の通り、光ファイバ25は溝17内部で整列し、上部がわずかに溝17から突出する。したがって、弾性部材15で光ファイバ25を確実に押さえつけることができる。弾性部材15は比較的硬度が高く、弾性部材9のように容易に変形することがない。したがって、本押さえ部7を閉じた状態で、磁石や作業者によって本押さえ部7を本体部側に押し付けることで、光ファイバ25を溝内に強く押さえつけることができる。すなわち、光ファイバ25のずれや抜けを確実に防止することができる。本実施例では弾性部材15は本押さえ部7側に設けられたが、これは光ファイバ保持部材1の底面と光ファイバの高さを溝17であわせるためで、高さあわせが本押さえ部7などの上面で行われる場合は溝17側に設けても良い。
【0046】
このように、光ファイバ25が整列した状態で確実に保持されるため、光ファイバ保持部材1の端面から突出する光ファイバ25を接着材等により一体化し、容易にリボン化することができる。また、必要に応じて、光ファイバ25の端部の切断、被覆除去、接続等の作業を行うこともできる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、仮押さえ部5と本押さえ部7とを分離し、仮押さえ部5においては光ファイバ25が挿入可能な隙間を形成するとともに、当該隙間を埋めるように変形容易な弾性部材9を配置することで、挿入作業における光ファイバ25のずれや抜けを防止することができる。
【0048】
また、光ファイバの挿入側においては、仮押さえ部5および本体部3においてテーパ部19、21が設けられるため、光ファイバ25の挿入性に優れる。なお、図示を省略したが、光ファイバ挿入側の弾性部材9の縁部にも同様のテーパ部を形成すれば、より光ファイバの挿入性を向上させることができる。
【0049】
また、段部11と溝17の側部位置を直線上に配置することで、光ファイバ25を隙間に挿入した際に、確実に光ファイバ25を溝17内に整列させることができる。また、溝17における光ファイバ25は、本押さえ部7で保持されるため、確実に光ファイバを押さえつけることができ、その後のリボン化作業等において光ファイバがずれたりすることがない。
【0050】
特に、弾性部材9は弾性部材15よりも低硬度であるため、光ファイバを挿入する際には容易に変形可能であるとともに、本押さえ部7で光ファイバを強く押さえる際には、より高い硬度の弾性部材15で光ファイバを押さえつけることができるため、弾性部材が変形することによる押さえつけ力の低下がなく、確実に光ファイバを保持することができる。
【0051】
このように、複数の光ファイバの順序が入れ替わることがなく整列され、整列した状態で保持されるため、容易に複数の光ファイバを一体化してリボン化することができる。
【0052】
次に、光ファイバ保持部材1の使用状態について説明する。図8は、光ファイバリボン化装置30を示す図である。光ファイバリボン化装置30は、主に、不活性ガス吹付装置27、コーティング部29、硬化炉31等から構成される。
【0053】
不活性ガス吹付装置27は、コーティング部29と連結しており、内部を通過する複数の光ファイバ25に対し不活性ガスを吹き付け、光ファイバ25に付着していた塵や埃などを除去する。コーティング部29は、光ファイバ25に対して例えばUV硬化性樹脂等を塗布する部位である。また、硬化炉31は、コーティング部31で塗布された樹脂を硬化する部位である。
【0054】
まず、光ファイバ保持部材1により、複数本の光ファイバ25を所定の順序で整列させた状態で保持し、光ファイバリボン化装置30内に導入する。この状態で、光ファイバリボン化装置30の前方に光ファイバ保持部材1を移動させながら、光ファイバ25をリボン化する。
【0055】
具体的には、まず、不活性ガス吹付装置29内で付着物を除去された光ファイバ25は、順次コーティング部29、硬化炉31に導入される。コーティング部29では、光ファイバ25は一括して樹脂が被覆される。さらに光ファイバ25は、硬化炉31導入され、樹脂が硬化されて光ファイバリボンとなる。この際、光ファイバ保持部材1によって、光ファイバ25は確実に整列状態で保持されるため、確実に光ファイバをリボン化することができる。
【0056】
次に、光ファイバ保持部材を用いて、被覆除去を行う方法を説明する。図9は、光ファイバ被覆除去装置40を示す図である。光ファイバ被覆除去装置40は、主に、ホルダ保持体41、支持体43等から構成される。なお、光ファイバについては、図示を省略する。
【0057】
ホルダ保持体41は、その上面に、光ファイバ保持部材1を確実に位置決めして保持することができる。なお、位置決めには、図示を省略した位置決めピンや、溝状、突起状などの位置決めガイド等を設ければよい。
【0058】
支持体43は、いずれも略直方体形状のカッタホルダ47a、47bから構成される。カッタホルダ47a、47bはそれぞれ対向する対向面が当接するように、互いに開閉自在に一側縁がヒンジ等で結合される。なお、カッタホルダ47a、47bのそれぞれの対向面には、互いの対向位置の位置決め用のガイド等(図示省略)が形成される。カッタホルダ47a、47bの対向面の幅方向の略中央には、ガイド溝49が設けられる。ガイド溝49には、例えば、V溝等が形成され、光ファイバを設置した際に、光ファイバが整列した状態でガイド溝49内に保持される。
【0059】
また、カッタホルダ47a、47bの対向面の長さ方向中間には、略矩形の孔48がガイド溝49に直交するように設けられる。孔48には、孔48の長さ方向に延在するカッタ(図示省略)が設けられる。すなわち、カッタホルダ47a、47bを対向させて互いの対向面を当接させると(図中矢印J方向)、それぞれのカッタホルダ47a、47bに設けられたカッタ同士が対向する。この際、カッタの刃先同士の間隔は、対象となる光ファイバの心線の外径よりもわずかに大きく設定される。このため、ガイド溝49に光ファイバを保持した状態でカッタホルダ47a、47bを当接させると、光ファイバの被覆部にのみカッタが切り込み、光ファイバ心線は切断されることはない。
【0060】
ホルダ保持部41と支持体43とは、それぞれの部材を貫通するガイド棒45によって連結される。ここで、支持体43は、ホルダ保持体41に対して、ガイド棒45の延設方向に相対的にスライド移動が可能である。したがって、前述のように、ガイド溝49に保持された光ファイバに対して、カッタによってその被覆部に切れ込みを入れた状態で、支持体43をホルダ保持体41から離れるように相対的に移動させることで、被覆部が切れ込み部で破断し、光ファイバの被覆部のみが支持体43の移動方向(ホルダ保持体41の移動方向と反対側)に除去される。以上により、光ファイバ保持部材1によって整列された複数の光ファイバの被覆を一括して除去することができる。
【0061】
次に、光ファイバ同士の融着方法を説明する。図10は、光ファイバ融着装置50を示す図である。光ファイバ融着装置50は、主に、ホルダ台51、ガイドブロック53、放電電極55等から構成される。
【0062】
ホルダ台51は、一対の光ファイバ保持部材1a、1bが互いに対向するように保持可能な略矩形上の台である。なお、ホルダ台51には、図示を省略した位置決めピンや、溝状、突起状などの位置決めガイド等が設けられる。
【0063】
ホルダ台51の略中央には、放電電極55が設けられる。放電電極55は通電により、電極間に放電アークを発生させることができる。放電電極の両側方(光ファイバホルダの設置方向)には、ガイドブロック53が設けられる。ガイドブロック53は、光ファイバの位置を正確にきめて保持することができる。例えば、ガイドブロック53上には、対象となる光ファイバの外径に応じたV溝等が設けられ、複数本の光ファイバを所定ピッチで配置することができる。
【0064】
光ファイバ25a、15bは、それぞれ一対の光ファイバ保持部材1a、1bによって、光ファイバ保持部材1a、1bの端部から所定長さだけ、被覆部が除去された部位が露出するように保持される。それぞれの光ファイバ25a、25bの端部近傍は、ガイドブロック53に形成されたV溝(図示省略)に保持される。このようにして、互いに先端位置が決められた状態で、放電電極55に通電することにより発生するアークによって、光ファイバ25a、25bが融着接続される。以上により、光ファイバ保持部材1a、1bによって整列された複数の光ファイバ同士をそれぞれ融着接続することができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、隙間の大きさや溝の深さ、幅は、光ファイバの本数やサイズに応じて適宜設定することができ、実施例に示した例には限られない。また、段部11が仮押さえ部5に設けた例を示したが、段部11を本体部3の上面側に形成し、弾性部材9を仮押さえ部5に埋設するようにしてもよい。しかし、弾性部材9を大きな変形量を確保するためには、弾性部材9をある程度厚くする必要があり、本体部側に形成することが望ましい。また、弾性部材9、弾性部材15は、少なくとも光ファイバを保持する範囲に形成されればよい。
【符号の説明】
【0067】
1………光ファイバ保持部材
3………本体部
3a………上面
5………仮押さえ部
5a………裏面
7………本押さえ部
9………弾性部材
11………段部
15………弾性部材
17………溝
19………テーパ部
21………テーパ部
23a、23b………ヒンジ
25………光ファイバ
27………不活性ガス吹付装置
29………コーティング部
30………光ファイバリボン化装置
31………硬化炉
40………光ファイバ被覆部除去装置
41………ホルダ本体
43………支持体
45………ガイド棒
47a、47b………カッタホルダ
48………孔
49………ガイド溝
50………光ファイバ融着装置
51………ホルダ台
53………ガイドブロック
55………放電電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ保持部材であって、
本体部と、
前記本体部に対してヒンジで開閉可能な第1の押さえ部と、
前記本体部の長手方向に対して前記第1の押さえ部に隣り合うように形成され、前記本体部に対してヒンジで開閉可能な第2の押さえ部と、
を具備し、
前記第1の押さえ部を閉じた状態で、前記第1の押さえ部と前記本体部との対向面の間には、ヒンジとは逆側の側端部であるファイバ挿入側から光ファイバを挿入可能な隙間が形成され、
前記第1の押さえ部と前記本体部の対向面には、前記隙間を埋めるように第1の弾性部材が配置され、
前記第2の押さえ部の前記本体部との対向面側には、第2の弾性部材が設けられ、前記第1の弾性部材は、前記第2の弾性部材よりも低硬度であることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
前記第1の押さえ部または前記本体部の対向面の少なくとも一方には段部が形成され、
前記第1の押さえ部を閉じた状態で、前記第1の押さえ部と前記本体部との対向面の間には前記段部に応じた隙間が形成され、
前記隙間は、前記ファイバ挿入側から所定範囲まで形成されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保持部材。
【請求項3】
前記第2の押さえ部に対応する前記本体部の上面には、前記本体部の長手方向に光ファイバを保持可能な溝が形成され、
前記段部は前記第1の押さえ部に形成され、前記弾性部材は前記本体部に埋設されることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項4】
前記隙間は、前記溝の深さよりも広く、前記溝の深さの2倍よりも狭いことを特徴とする請求項3記載の光ファイバ保持部材。
【請求項5】
前記ファイバ挿入側の前記第1の押さえ部および/または前記前記本体部の端部には前記隙間が広がる方向にテーパ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバ保持部材。
【請求項6】
前記ファイバ挿入側の前記第1の弾性部材の端部には前記隙間が広がる方向にテーパ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ファイバ保持部材。
【請求項7】
光ファイバの保持構造であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバ保持部材を用い、
前記溝の深さに対応する外径の複数本の光ファイバが前記溝および前記隙間の内部で整列され、
前記第1の弾性部材が前記複数本の光ファイバを覆うように変形するとともに、前記第2の弾性部材によって前記光ファイバが前記溝に対して押さえつけられて保持されることを特徴とする光ファイバの保持構造。
【請求項8】
前記隙間は、保持される前記光ファイバの外径よりも広く、かつ、前記光ファイバの外径の2倍よりも狭く、
前記隙間に挿入されて整列する光ファイバの整列順序が、前記隙間の内部で入れ替わることを防止可能であることを特徴とする請求項7記載の光ファイバの保持構造。
【請求項9】
光ファイバのリボン化方法であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバ保持部材を用い、
前記第1の押さえ部を閉じ、前記第2の押さえ部を開いた状態で、
前記ファイバ挿入側から、前記隙間に対応する外径の光ファイバを軸方向に垂直な方向に複数本挿入し、
複数の光ファイバが前記本体部の溝に整列した状態で、前記第2の押さえ部を閉じ、
前記第2の押さえ部で前記光ファイバを保持しつつ、複数の光ファイバを整列状態で一体化することを特徴とする光ファイバのリボン化方法。
【請求項10】
光ファイバの融着方法であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバ保持部材を用い、
一対の前記光ファイバ保持部材のそれぞれに複数の光ファイバを保持し、
一対の前記光ファイバ保持部材を互いに対向するように設置して、それぞれの光ファイバの先端同士を対向させ、
それぞれの光ファイバ同士の先端部に放電電極によって放電することで、光ファイバ同士を融着することを特徴とする光ファイバの融着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−128125(P2012−128125A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278709(P2010−278709)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】