説明

光ファイバ心線および光ファイバケーブル

【課題】温度低下による被覆層の収縮に起因する光ファイバの歪みを抑制することができる光ファイバ心線および光ファイバケーブルを提供すること。
【解決手段】光ファイバ2と、光ファイバを覆う複数の被覆層4、6とを備えた光ファイバ心線1であって、各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率の平均値が、30N/mm2以下に設定され、−40℃ないし70℃の温度範囲での温度変化による前記光ファイバの歪が0.02%以下に抑制されていることを特徴とする光ファイバ心線が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ心線および光ファイバケーブルに関し、より詳細には、温度変化による歪みを抑制することができる光通信用の光ファイバ心線および光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
コアとクラッド層からなるガラス製の光ファイバが樹脂製の保護層で覆われた光ファイバ心線を束ねることによって構成されている光ファイバケーブルが、光通信用ケーブルとして用いられている。
このような光ファイバケーブルに使用される光ファイバ心線のうち、基幹回線で多用されている外径0.25mmの光ファイバ心線では、直径0.125mmのガラス製の光ファイバが2層の被複層で覆われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような外径が0.25mm程度の光ファイバ心線では、被覆層の厚さが比較的、薄いため、温度低下によって被覆層を構成する被覆材が収縮しても、被覆層に覆われた光ファイバの歪みは、実用上の問題とはならない程、小さい。
【0004】
しかしながら、被覆層の厚さが0.5mmの光ファイバ心線においては、被覆層の厚さが厚くなるため、温度低下による被覆材の収縮に起因する光ファイバの歪みが無視できない大きさとなる。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、温度低下による被覆層の収縮に起因する光ファイバの歪みを抑制することができる光ファイバ心線および光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、光ファイバと、該光ファイバを覆う複数の被覆層とを備えた光ファイバ心線であって、前記各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率の平均値が、30N/mm2以下に設定され、−40℃ないし70℃の温度範囲での温度変化による前記光ファイバの歪が0.02%以下に抑制されている、ことを特徴とする光ファイバ心線が提供される。
【0007】
このような構成によれば、被覆層に使用される被覆材のヤング率を30N/mm2以下に設定することにより、光ファイバケーブルが使用される温度範囲において光ファイバの歪みが0.02%以下に抑制されるので、温度変化による性能低下が生じない光ファイバ心線および光ファイバケーブルが提供される。
【0008】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記複数の被覆層は3層の被覆層からなり、前記各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率が、内側の被覆層から順に、10N/mm2以下、50N/mm2以下、30N/mm2以下に設定されている。
【0009】
本発明の他の態様によれば、光ファイバと、該光ファイバを覆う複数の被覆層とを備えた多数の光ファイバ心線を撚りながら束ねることによって構成された光ファイバケーブルであって、前記撚りの1ピッチが、150mm以下に設定されていることを特徴とする光ファイバケーブルが提供される。
【0010】
このような構成によれば、光ファイバケーブル内での光ファイバ心線の所定ピッチの撚りによって温度変化によって光ファイバケーブルが伸縮しても、光ファイバ心線の撚りが強くなったり弱くなったりすることで吸収され、光ファイバケーブルを構成する光ファイバ心線自身の収縮は軽減され、温度変化による光ファイバの歪みを低減できる。
例えば、被覆層の伸縮率が0.2〜0.3%であったとしても、光ファイバ心線に発生する歪量を0.02%以下に抑制することができる。
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記撚りの1ピッチが130乃至140mmである。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記光ファイバ心線の各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率の平均値が、30N/mm2以下に設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度低下による被覆層の収縮に起因する光ファイバの歪みを抑制することができる光ファイバ心線および光ファイバケーブルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態の光ファイバ心線の構成を図面に沿って説明する。図1は、本発明の他の好ましい態様の光ファイバ心線1の構造を模式的に示す断面図である。
【0015】
光ファイバ心線1は、コアとクラッド層からなる直径0.125mmの光ファイバ2が第1被覆層4と第2被覆層6で囲まれた外径0.25mmの光ファイバ心線を、さらに、第3被覆層8で覆った構造を備えている。第1被覆層4の厚さは約0.0375mm、第2被覆層6の厚さは約0.025mm、第3被覆層8の厚さは約0.125mmである。
【0016】
第1被覆層4、第2被覆層6および第3被覆層8は、紫外線硬化樹脂で形成されている。これらの第1被覆層4、第2被覆層6および第3被覆層8を構成する紫外線硬化樹脂は、これらの樹脂の−40℃におけるヤング率の平均が30N/mm2以下となるように選択されている。
【0017】
第1被覆層4、第2被覆層6および第3被覆層8を構成する材料の−40℃におけるヤング率が、それぞれ、10N/mm2以下、50N/mm2以下、30N/mm2以下となるように設定されるのが好ましく、本実施形態では、第1被覆層4、第2被覆層6および第3被覆層8を構成する材料の−40℃におけるヤング率が、それぞれ、10N/mm2、50N/mm2、30N/mm2となるように設定されている。
【0018】
また、他の例として、第1被覆層4、第2被覆層6および第3被覆層8を構成する材料の−40℃におけるヤング率を、それぞれ、10N/mm2、50N/mm2、15N/mm2となるように、また、10N/mm2、50N/mm2、10N/mm2となるように設定してもよい。
【0019】
図2の温度温度(T)に対する光ファイバの歪み(ε)の測定結果を表すグラフに示されているように、本実施形態およびその他の光ファイバ心線は、−40℃における光ファイバの歪みを0.02%以下に抑えることができるが、被覆層のヤング率が本件発明の範囲外である例では0.02%以下に抑えることができないことが分かる。
【0020】
上記実施形態では、コアとクラッド層からなる光ファイバ2の直径が0.125mm、第1被覆層4の厚さが約0.0375mm、第2被覆層6の厚さが約0.025mm、第3被覆層8の厚さが約0.125mmに設定されていたが、本発明はこの寸法の限定されるものではなく、例えば、光ファイバ2の直径が0.08mm,第1被覆層4の厚さが約0.024mm、第2被覆層6の厚さが約0.016mm、第3被覆層の厚みが約0.08mmであってもよい。
【0021】
図1に示す構成を有する光ファイバ心線1は、多数本、例えば、24本または40本が束ねられ、光ファイバケーブルとして使用される。このような光ファイバケーブル10は、図3に示されているように、円柱状に束ねられた24本(24心)または40本(40心)の光ファイバ心線1によって構成されたケーブルコア12の周囲にクッション層14が環状に配置されている。24心のケーブルコア12の外径は約2.5mmであり、40心のケーブルコア12の外径は、約3.5mmである。
【0022】
クッション層14は、市販のポリプロピレン等の合成樹脂のテープによって形成されている。このテープには、テープの長手方向に延びる長さ約2ないし4cmの複数のスリットが千鳥状に形成され、柔軟性が増加させられている。24心のケーブルコア12では、5〜7枚のテープをケーブルコア12の周囲でケーブルコア12の長さ方向に沿って配置して、厚さ約1.2ないし1.5mmのクッション層14が形成されている。
【0023】
更に、クッション層14の外方に環状の外被16が設けられている。外被は、ポリエチレン等の合成樹脂で形成され、平均的な厚みは約1.2mmである。
【0024】
環状の外被16の直径方向に対向する位置には、2本のテンションメンバー18が埋設されている。テンションメンバー18は、直径約0.7mmのピアノ線であり、光ファイバケーブル10の全長にわたって延びている。
【0025】
外被16を含む光ファイバケーブル10の外径は、ケーブルコア12が24心の場合には約11mm、40心の場合には約12mmである。
【0026】
本実施形態の光ファイバケーブル10では、ケーブルコア12内に24本または40本が束ねて配置されている光ファイバ心線1は、一定の周期でコイル状に撚られている。本実施形態では、この撚りの周期(1ピッチ)Pが150mm以下に設定されることが好ましく、130乃至140mmであることがより好ましい。
【実施例】
【0027】
一実施例として、24本の外径0.5mmの光ファイバ心線をよりピッチ135mmで集合させ、外径が約2.5mmのケーブルコアを形成した。各心線は、コアおよびクラッド層からなる光ファイバを3層の被覆層で被覆した構成を備えている。各被覆層を構成する材料は、摂氏−40°でのヤング率が、内側の被覆層から10N/mm、50N/mm、30N/mmとなるように選択した。このようなケーブルコアを、上記実施形態の光ファイバケーブルと同様に、直径07mmの2本のテンションメンバーを配置した光ファイバケーブルとした。
【0028】
このようにして形成した光ファイバケーブルの摂氏−40ないし+70°の範囲における温度特性を計測した結果、心線の歪量は0.015%であり、ケーブルの歪、つまり2本のテンションを含むケーブル外被の伸び(歪)は0.02%であり、ケーブルの伸縮に対しても、ケーブルの切断端面における心線の引き込み、突き出し現象は発生しなかった。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の光ファイバ心線の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施形態の光ファイバ心線の温度と光ファイバの歪みとの関係を示すグラフである。
【図3】図1の光ファイバ心線が組み込まれた光ファイバケーブルの構造を示す模式的な断面図である。
【図4】図1の光ファイバ心線が組み込まれた光ファイバケーブルの破断した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1:光ファイバ心線
2:光ファイバ
4:第1被覆層
6:第2被覆層
8:第3被覆層
10:光ファイバケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、該光ファイバを覆う複数の被覆層とを備えた光ファイバ心線であって、
前記各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率の平均値が、30N/mm2以下に設定され、−40℃ないし70℃の温度範囲での温度変化による前記光ファイバの歪が0.02%以下に抑制されている、
ことを特徴とする光ファイバ心線。
【請求項2】
前記複数の被覆層は3層の被覆層からなり、
前記各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率が、内側の被覆層から順に、10N/mm2以下、50N/mm2以下、30N/mm2以下に設定されている、
請求項1に記載の光ファイバ心線。
【請求項3】
光ファイバと、該光ファイバを覆う複数の被覆層とを備えた多数の光ファイバ心線を撚りながら束ねることによって構成された光ファイバケーブルであって、
前記撚りの1ピッチが150mm以下に設定されている、
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記撚りの1ピッチが130乃至140mmである、
請求項3に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光ファイバ心線の各被覆層を構成する被覆材の−40℃におけるヤング率の平均値が、30N/mm2以下に設定されている、
請求項3または4に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−288479(P2009−288479A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140467(P2008−140467)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(504026856)株式会社アドバンスト・ケーブル・システムズ (64)
【Fターム(参考)】