説明

光ファイバ用擬似コードの端末処理構造、及び当該擬似コードの保持体並びに光ファイバ接続用簡易端末処理構造体

【課題】光ファイバ心線を保護する為の擬似コードを使用し、これを光成端箱に保持する為の保持体を提供して、光ファイバ同士の接続点および/または接続回数を減じることのできる構造体および方法の提供。
【解決手段】光ファイバ心線50が挿通されるチューブ51の外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる擬似コード20の端末処理構造であって、擬似コード20の端部側に剛性を有する筒状体54を外装すると共に、当該筒状体54から出ている擬似コード20の端部側の補強繊維層を露出させ、更に当該補強繊維層を前記筒状体54の外面に沿って折り返して、その外側を熱収縮チューブ55にて一体に固定したことを特徴とする光ファイバ用擬似コード20の端末処理構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を挿通させることのできる光ファイバ用擬似コードの端末処理構造に関し、更にこの端末処理構造を有する光ファイバ用擬似コードを光成端箱に保持する保持体、当該光ファイバ用擬似コード内に光ファイバ心線を挿通してなる光ファイバ接続用簡易端末処理構造体、並びに当該光ファイバ接続用簡易端末処理構造体を用いて形成された光成端箱に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などに利用されている光ファイバケーブル(以下では、「光ファイバ」又は「光ケーブル」ということもある)は、屋外から建物等の内部に設けられた光成端箱に導かれて、当該光成端箱において、屋内配線用の光ファイバコネクター(ジャック)が接続されたり、或いは先端に光ファイバコネクター(プラグ)が接続された光ファイバコードと接続されている。しかしながら、多心光ファイバケーブルで引き込まれた光ファイバを1心の光ファイバコードに接続変換するには1心毎に接続加工しなければ成らず、非常に煩雑な加工を強いられていた。例えば、外部から光成端箱内に多心光ファイバケーブルを導き、これに屋内配線用の光ファイバコード(先端に光ファイバプラグが接続された光ケーブル)心線を接続する際には、外部から導かれた多心光ファイバケーブルを心線毎に分割し、分割したそれぞれの心線について屋内配線用の光ファイバコード心線を接続加工しなければならなかった。
【0003】
また、光成端箱内に導かれた光ファイバケーブルは、ケーブル同士の接続がし易いように余長部分が設けられており、この余長部分は、光成端箱の小型化を図るために被覆樹脂が除去された心線の状態で光成端箱内に巻回して収納されている。
【0004】
このような心線同士の接続方法は、例えば特許文献1(特開昭62−212607号公報)に開示されている。この特許文献は、光ファイバ心線の接続部を補強材からなる筒状部材で囲繞して、その外周部に熱収縮シリコンゴムチューブを設ける光ファイバ心線接続部の補強方法に関するものであるが、この補強方法を実施する前提として、2本のプラスチック被覆光ファイバ心線同士を融着接続する事が記載されている。
【0005】
また特許文献2(特開昭63―149622号公報)には、光ファイバケーブル端子の形成方法が開示されており、当該端子の形成に際して剛性スリーブを使用することが提案されている。しかし、これは電気光学部品ハウジング内に光ファイバを引き込む為の端末構造に関するものであり、云わば屋内配線用の光ケーブルを光成端箱内に導く際に、当該ケーブルの光成端箱側に端子を形成するものである。
【0006】
更に、光成端箱に関する先行文献として、特許文献3(特開2006−220978号公報)が存在する。この特許文献は、分電盤内に設置することができるようにコンパクトに構成した分電盤実装用光コンセントに関するものであるが、その中に、4心のファイバ心線を4つに分岐して、それぞれに光ファイバジャックに接続することが記載されている。
【特許文献1】特開昭62−212607号公報
【特許文献2】特開昭63―149622号公報
【特許文献3】特開2006−220978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光ファイバを現場で融着接続することは非常に難しく、接続点が増えればそれだけ融着コストが嵩み、また光信号の減衰に繋がる。このため光ケーブルを配線する際には、光ファイバ同士の接続回数をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0008】
そこで本発明は、第一に、可能な限り光ファイバ同士の接続点および/または接続回数を減じることのできる構造体および方法を提供することを課題とし、さらには、例えば一般家庭での使用にあたって、一般的に住戸内に引き込みが必要とされる4心光ファイバケーブルは二次被覆を剥ぐと4心光ファイバ心線が出てくるので、4心光ファイバケーブルと4心光ファイバ心線は一括融着接続でき、融着工数が削減できるが、その接続した他端の4心光ファイバ心線を分割して4本の1心光ファイバコードに加工するには擬似コードを使用して、光ファイバ擬似コードにする必要があった。
しかしながら、擬似コードはチューブに光ファイバ心線を挿通し、ケブラ補強し外被を施す構造である為、光ファイバ擬似コードの外側を締め付け固定してもチューブが変形する為に内部の光ファイバ心線に悪影響を及ぼす可能性があり、従来の光ファイバコードを固定する外被の外側を締め付ける手段では光ファイバ擬似コードを確実に固定することはできなかった。
【0009】
また光成端箱から屋内配線用の光ケーブルを引き出す際には、心線内の光ファイバが切断されたり、光信号の送信に好ましくない屈曲部分などが生じることの無い様に、心線の外側を保護する為のコードが必要になり、更にこのコードが光成端箱から抜け出ることの無い様に、これを光成端箱に保持することが必要になる。
【0010】
そこで本発明では、光ファイバ心線を保護する為の擬似コードを使用し、擬似コードの固定手段としての外被端末処理構造を提供し、この外被端末処理部を光成端箱に保持するための保持体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の少なくとも1つを解決する為に、本発明は光ファイバ用の擬似コード(以下、単に「擬似コード」ともいう)を光成端箱に保持・固定できるようにする端末処理構造を提供する。
【0012】
即ち、光ファイバ心線が挿通されるチューブの外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる擬似コードの端末処理構造であって、擬似コードの一端部側に剛性を有する筒状体を外装すると共に、当該筒状体から出ている擬似コードの端部側の補強繊維層を露出させ、更に当該補強繊維層を前記筒状体の外面に沿って折り返して、その外側を熱収縮チューブにて一体に固定したことを特徴とする光ファイバ用擬似コードの端末処理構造である。
【0013】
上記の光ファイバ用擬似コードは、コードの外被の中にケブラー(登録商標)等のような比較的柔軟性のある抗張力体の合成繊維からなる層(補強繊維層)を形成し、その中に、光ファイバ心線を通す事のできる、外径約0.9mm程度のチューブを設けたものである。このような擬似コードのチューブ内に光ケーブル心線を通すことにより、光ファイバケーブルと略同様に配線し、かつ使用することができる。
【0014】
擬似コードの一端部側に外装される筒状体は、所定の長さを有する筒状に形成されたものであり、或る程度の剛性を有するものとして形成される。擬似コードを光成端箱に保持する際に一定の圧力を加えた場合であっても、擬似コード内のチューブの変形を阻止できるようにする為である。このような筒状体としては、金属、セラミックスおよび合成樹脂などで形成することができる。特に合成樹脂で形成する場合は、当該筒状体の外側には熱収縮チューブを外装する関係上、加熱処理が施されることから、当該加熱処理時に変形することの無い程度の耐熱性を有することが望ましい。かかる筒状体は、その内部空間に擬似コードを通し、擬似コードの外被を剥いで補強繊維層を露出させた部分が当該筒状体から突出するようにして配置される。この筒状部から突出している補強繊維層は、当該筒状部の外周面に沿うように折り返される。
【0015】
そして筒状部の外周面に沿うように折り返された補強繊維層の外側には、熱収縮チューブを被せ、当該熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより、擬似コードと筒状体とを一体化させる。かかる熱収縮チューブとしては、ポリオレフィン、弾性ネオプレン、フロロプラスチック等から形成された市販のものを使用することができ、望ましくは擬似コードの耐熱温度よりも低い温度で熱収縮するものが使用される。
【0016】
以上の様な端末処理構造を光ファイバ用の擬似コードに施せば、当該擬似コードのチューブ内に光ファイバ心線を挿通した後、これを光成端箱に挟持などにより保持・固定した場合であっても、当該光ファイバ心線に損傷を生じさせることなく、確実に保持・固定することができる。
【0017】
また本発明における端末処理構造においては、上記熱収縮チューブとして、収縮後の長さが前記筒状体よりも長くなる様に構成したものを使用し、且つ筒状体を覆う部分とチューブ又はコードを覆う部分との間には段差部を設けることが望ましい。
【0018】
熱収縮チューブとして、収縮後の軸方向長さが筒状体よりも長くなる様なものを用いることにより、当該熱収縮チューブは、擬似コードの外被と、筒状体から突出して内側に心線を通したチューブとを覆うことができる。また段差部を設けることにより、当該段差部を支持固定する構造体によって、摩擦力に頼らない保持を実現することができる。このような段差部は、筒状体の厚みによって形成する他、熱収縮チューブの厚みや、他の部材を外装することによっても形成することができる。
【0019】
更に、収縮後の長さが前記筒状体よりも長くなる様に調整された熱収縮チューブは、筒状体よりも擬似コード側に伸びる熱収縮チューブの長さが、筒状体よりもチューブ側(心線が挿通されるコード)に伸びる熱収縮チューブの長さよりも長く形成されている事が望ましい。当該端末処理構造が形成された部分を、光成端箱に設置される保持体内に収容した際、当該保持体と擬似コード外被との間に熱収縮チューブを存在させることにより、当該擬似コードの外被を保護する為である。
【0020】
前記擬似コードの外被と熱収縮チューブとの間に接着剤を充填すれば、当該接着剤の接着力によって、一層確実に熱収縮チューブと擬似コードとを一体化することができる。特に、光成端箱に設置される保持体が熱収縮チューブを保持する場合においては、当該擬似コードだけが抜け出てしまう虞を極力なくすことができる。なお、擬似コードの外被と熱収縮チューブとの間に接着剤を充填する以外にも、予め接着剤を内面に付着させた市販の接着剤付熱収縮チューブを使用してもよい。
【0021】
また本発明では、前記課題の少なくとも1つを解決する為の光ファイバ擬似コードの保持体を提供する。即ち、上記本発明にかかる端末処理構造を有する光ファイバ用擬似コードを光成端箱に保持する保持体であって、当該保持体は、ケースとカバーとで保持体が形成されると共に、保持体形状を光成端箱に設けられる光ファイバコネクタと略同一のモジュールに形成した光ファイバ擬似コードの保持体である。
【0022】
当該保持体は、ケースとカバーとで保持体を構成していることから、前記光ファイバ用擬似コードにおける、端末処理構造が形成された部分をケース内に収容した後に、その収容された空間をカバーで閉塞することができる。更に、この保持体形状を光ファイバコネクターと略同一形状に形成することにより、光成端箱に光ファイバコネクターを設置するか、あるいは光ファイバ用擬似コードを保持した保持体を設置するかを任意に選択することが可能になる。例えば、光ファイバコネクターの装着部が4つ形成されている光成端箱において、その内の2つの装着部に光ファイバコネクターを設置し、残りの2つの装着部に、先端に光ファイバプラグが設けられた光ファイバ用擬似コードを保持する保持体を設置するなど、コネクターと保持体の設置個数を任意に調整することができる。
【0023】
特に、擬似コードを確実に光成端箱(直接的には保持体内)に保持する為には、当該保持体内に、擬似コードに張力が掛かった時に前記端末処理構造の段差部を支持する張力受部を設ける事が望ましい。かかる張力受部は、端末処理構造に形成された段差部を支える部分であり、例えば段差部の外形よりも小径になっている部分を形成して、当該段差部のすり抜けを阻止するように形成することができる。
【0024】
また、擬似コードを確実に光成端箱(直接的には保持体内)に保持する構造として、当該保持体内収容される端末処理構造部分の熱収縮チューブ(特に、筒状体を被覆している部分)外側を把持する外被把持部を、当該保持体内に形成することが望ましい。かかる外被把持部は楔状に突起する1又は2以上の突起部からなるものとして形成することができ、例えば当該突起部を前記張力受部間に形成することができる。
【0025】
上記保持体を、光成端箱における光ファイバコネクタの装着部に装着することにより、従来の光ファイバコネクタの装着部を利用して、先端に光ファイバプラグが設置された擬似コードなどを確実に保持することが可能になる。
【0026】
そして本発明では、前記課題の少なくとも1つを解決する為に、簡易に屋内配線を行うことのできる光ファイバ接続用簡易端末処理構造体を提供する。
【0027】
即ち、単位長さに切断された複数心の光ファイバ心線と、光ファイバ心線が挿通されるチューブの外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる複数の光ファイバ用擬似コードとを備え、前記複数心の光ファイバ心線の一端を心数分に分割して夫々を前記擬似コードのチューブ内に挿通させると共に、当該光ファイバ用擬似コードの基端側には前記本発明にかかる端末処理構造を形成して、当該端末処理構造体を保持体内に収容固定し、更に、当該光ファイバ心線を挿通させた光ファイバ用擬似コードの先端側に光ファイバプラグを接続した、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体である。
【0028】
かかる光ファイバ接続用簡易端末処理構造体では、複数心の光ファイバ心線の先端側を心数分に分割し、分割した心線の夫々を、端末処理構造体が形成されている光ファイバ用擬似コードのチューブ内を通し、そして夫々の擬似コードの先端に光ファイバプラグが形成される。このような光ファイバ接続用簡易端末処理構造体を使用する場合には、端末処理構造体の加工、及び光ファイバプラグの接続加工は製造工場内にて加工され、光成端箱を設置する建物の施行現場における作業を低減させることが出来、施行現場での作業としては、当該構造体における基部は複数心の光ファイバ心線であることから、外部から引き込まれた複数心の光ファイバ心線とは1箇所で融着するだけで、先端に光ファイバプラグが設けられて分岐された複数心線を、外部から引き込んだケーブルに接続することができる。これにより心線同士の接続回数を大幅に減らすことができ、現場における施工工程、および施工費用の削減を果たすことができる。
【0029】
また、上記光ファイバ接続用簡易端末処理構造体に関連し、分岐した複数の心線のうちの何れか1つ以上に光ファイバジャックを設置し、他の心線を光ファイバ用擬似コード内に導くこともできる。
【0030】
即ち、単位長さに切断された複数心の光ファイバ心線と、光ファイバ心線が挿通されるチューブの外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる1又は2以上の光ファイバ用擬似コードとを備え、前記複数心の光ファイバ心線の一端を心数分に分割し、少なくとも一本の光ファイバ心線の先端に光ファイバジャックを接続すると共に、残りの光ファイバ心線の夫々を前記擬似コードのチューブ内に挿通させ、当該光ファイバ用擬似コードの基端側には前記本発明にかかる端末処理構造を形成して、当該端末処理構造体を保持体内に収容固定し、更に、当該光ファイバ心線を挿通させた光ファイバ用擬似コードの先端側に光ファイバプラグを接続した、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体である。
【0031】
かかる態様の光ファイバ接続用簡易端末処理構造体によれば、光成端箱に、光ファイバジャックと、先端に光ファイバプラグが形成された擬似コードとを任意の個数で設けることができる。
【0032】
そして、上記本発明にかかる光ファイバ接続用簡易端末処理構造体を用いた光成端箱を設置する際には、外部から引き込まれた複数心線の光ファイバと、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体の複数心の光ファイバ心線とを一括融着し、融着部を光成端箱内に収装すればよい。即ち、このような光成端箱の施工方法によれば、外部から引き込んだ複数心線の光ファイバと、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体の複数心線の光ファイバとを一括して融着することができ、これにより心線同士の接続回数を大幅に減らし、現場における施工工程、および施工費用の削減をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下図面に示す1つの実施の形態に基づいて、本発明にかかる擬似コード20の端末処理構造21、これを用いた光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66、および光成端箱1を具体的に説明する。
【0034】
先ず、図1〜3に基づいて、本実施の形態にかかる光成端箱1の全体構造を具体的に示す。図1は、この実施例にかかる光成端箱1を示す分解斜視図であり、図2は当該光成端箱1を分解した状態における正面図、図3はこの光成端箱1の(I)正面図、(II)底面図、(III)右側面図、(IV)背面図、(V)A−A断面図、(VI)B−B断面図、(VII)C−C断面図である。
【0035】
この実施例に示す光成端箱1は、規格化された配線器具用プレートと略同じ大きさに形成され、建築物の壁面や分電盤内に設置することができるように構成されている。この光成端箱1は入力側の光ファイバケーブル心線を、複数心の光ファイバ心線を分割してなる出力側の光ファイバコードや出力側の光ファイバジャック40に接続するとともに、心線の余長部分を収容することができるように構成されている。
【0036】
かかる光成端箱1の筐体10は、ボックス本体11と、このボックス本体11に収容される光ファイバ心線50のガイドトレー12と、その上から被さる内カバー13と、この内カバー13上に取り付けられる化粧カバー14とで構成されており、夫々は螺子18や嵌め込み構造19等によって着脱自在に一体化されている。またこの筐体10の下面には、光ファイバケーブルを外部から筐体10内に導くと共に、これを把持するケーブル案内部15が形成されており、更に後述する光ファイバジャック40や、端末処理構造21を有する擬似コード20を保持する保持体30が装着される装着部16が設けられている。
【0037】
装着部16には先端にフックが形成されたコ字状の係止部(図示せず)が立設され、擬似コード20の保持体30や、光ファイバジャック40を両側から係止して光成端箱1の筐体10に固定できるようになっている。また、装着部16及び内カバー13には、擬似コード20の保持体30および光ファイバジャック40の上下面に形成されている凸部17が係合する係合溝41がそれぞれ設けられ、これら保持体30や光ファイバジャック40の進退方向への移動を阻止している。すなわちこの装着部16に設置された保持体30や光ファイバジャック40は、内カバー13が取り付けられることにより、当該凸部17と係合溝41とが嵌り合い、その抜け出しが阻止されて確実の光成端箱1に固定されることになる。
【0038】
図1および2に示すように、光成端箱1の筐体10内には、複数心の光ファイバ心線(光ファイバコードの心線)が巻き回されている。この複数心の光ファイバ心線は、その先端側が1本毎の心線50に分割され、その内の3本を端末処理構造21が施された擬似コード20内を通した状態で筐体10の外に引き出されている。そしてその先端には光ケーブルプラグ60を設けて、電子機器や他の光成端箱に接続される光ファイバコードとして利用されている。
【0039】
一方、擬似コード20の基端側には端末処理構造21が設けられており、この端末処理構造21が設けられた領域は、保持体30内に収容された状態で、前記の光成端箱1の装着部16に収容されている。そして1本の心線毎に分割された残りの1本の光ファイバ心線50には、光ファイバジャック40が設けられ、当該光ファイバジャック40も光成端箱1における装着部16に収容されている。
【0040】
このように構成された光成端箱1には、これを組み立てた状態において、図3(I)(II)に示すように、正面に化粧カバー14が出現し、その下面には1つの光ファイバジャック40と、先端に光ファイバプラグ60が設けられた3つの出力用光ファイバコード(心線50が挿通された擬似コード20)が出現する。またボックス本体11の背面には、図3(III)に示すように、螺子によって環状の磁石61が固定されており、更にこの光成端箱1を固定する為の螺子孔62が形成されている。ボックス本体11内に収容される心線は、図3(V)〜(VII)に示すように、当該ボックス本体11内に収容された光ファイバ心線がガイドトレー12に巻き回されている。図3(V)のA−A断面図の下方には光ファイバジャック40が現れ、図3(VI)のB−B断面図の下方には出力用光ファイバコードを保持する保持体30が現れている。
【0041】
本実施の形態にかかる光成端箱1は以上のような構成を有しており、複数心からなる光ファイバ心線の先端側を心数分に分割して、その内の少なくとも1つ以上の心線50を出力側の光ファイバコードとして利用できる様にするものである。ここで光ファイバコードとして光成端箱1から引き出す場合には、心線50の曲折や断線などを阻止する為に、その外側を保護する必要がある。しかしながら、従来は複数心の光ファイバ心線を分けて引き出したとしても、その外側を被覆する有効な手段がなく、さらに心線50を被覆する外被53を光成端箱1に対して確実に固定する方法が存在しなかった。
【0042】
そこで本発明では、分割した心線50の外被53を形成するものとして、心線50を挿通させることのできるチューブ51と、このチューブ51の外周を覆う補強繊維層52と、この補強繊維層52の外側を被覆する外被53とからなる光ファイバ用擬似コード20を使用し、この擬似コード20を光成端箱1に保持・固定する為の構造および部品を提供するものである。
【0043】
以下、この擬似コード20を光成端箱1に保持・固定する為の構造(端末処理構造21)および部品(保持体30)の具体例を、図4〜7に基づいて説明する。
【0044】
図4は、この実施の形態における光ファイバ用擬似コード20の端末処理構造21を示す(I)正面図、(II)A−A断面図、(III)B−B断面図であり、図5は、この端末処理構造21を収容する保持体30を構成するケース31とカバー32の夫々を4方向からみた分解斜視図であり、図6はこの端末処理構造21を収容した保持体30を示す(I)正面図、(II)側面図、(III)カバー32を外した状態の正面図、(IV)A−A断面図、(V)底面図であり、図7は、光ファイバ用擬似コード20の端部に形成された端末処理構造21を保持体30に収容した状態を示す斜視図であり、図8は、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66の1つの実施形態を示す略図であり、図9は、他の形態の保持体30に端末処理構造21を収容した(I)正面図、(II)A−A断面図、(III)底面図である。
【0045】
本実施の形態では、前記の通り、心線50が挿入されるチューブ51の外側を、内側に補強繊維層52を設けた外被53で被覆してなる光ファイバ用擬似コード20を用いて、光成端箱1の外に引き出される心線50を保護し、その先端に光ファイバプラグ60を設けて、出力用光ファイバコードとするものである。そして、この擬似コード20を光成端箱1に固定する為の構造として、当該擬似コード20の基端側に端末処理構造21を形成する。
【0046】
かかる端末処理構造21は、図4に示すように、擬似コード20の外被53の外に一定の厚みを有する筒状体54を被せ、当該筒状体54よりも基端側に突出する擬似コード20の外被53を剥がして補強繊維層52を露出させてから、これを前記筒状体54の外側に折り返し、更にその外側に熱収縮チューブ55を被せてこれを収縮させ、擬似コード20と筒状体54とを一体化している。擬似コード20に外装される筒状体54は、金属などの様に一定の保形強度を有するものとして形成され、その長さは後述の保持体30内に確保される収容空間33の内に収まる長さに形成されている。より具体的には、熱収縮チューブ55の外周面に出現する段差部56(筒状体54の厚みによって形成される段差部56)が、保持体30内に確保される収容空間33の内におさまり、更に当該空間内に形成される張力受部34によって支持される長さに形成される。
【0047】
特に、この態様における熱収縮チューブ55の内側には、擬似コード20の外被53を覆う部分に接着剤57が充填されており、これにより熱収縮チューブ55と擬似コード20との一体性が高められている。更に、熱収縮チューブ55は、筒状体54よりも先端側(擬似コード20側)に延伸する領域(L2)が、筒状体54よりも基端側(心線50が通されるチューブ51側)に延伸する領域(L1)よりも長く形成されている。これにより、接着剤57による熱収縮チューブ55と擬似コード20の外被53との接合は一層強固なものとなる。なお、この接着剤57は、擬似コード20の外被53を覆う部分に接着剤57を充填した後に熱収縮チューブ55を外装する他、予め接着剤57を内面に付着させた接着剤付熱収縮チューブを使用してもよい。
【0048】
また、上記端末処理構造21が形成された部分を収容する保持体30は、図5および図6に示すように、ケース31とカバー32とで構成されており、ケース31の側面に形成された、外側に突起する爪部38が、カバー32の側面に形成された開口39に内側から嵌って両者が一体化されるように形成されている。このケース31およびカバー32の端面には、組み合わさった状態において、擬似コード20を通す孔部を形成する窪み35と、擬似コード20内のチューブ51を通す孔部を形成する窪み36が対向する位置に形成されており、またその内部には端末処理構造21を収容する収容空間33が確保されている。この収容空間33内には、端末処理構造21の段差部56を支持する張力受部34が形成され、またこの張力受部34間には、端末処理構造21の熱収縮チューブ55の外面に噛み合う鋸刃形状に形成された複数の突起部からなる外被把持部37が形成されている。この実施の形態において、張力受部34は、収容空間33内に突出する様に形成され、その突出幅は段差部56の通り抜けを阻止する程度に調整されておりこの端末処理構造21が支持体内から抜け出ることを阻止している。
【0049】
このように形成された保持体30内に収容された端末処理構造21は、その側面が外被把持部37で支持され、また段差部56が張力受部34で支持されることから、当該保持体30内に確実に保持されることになる。
【0050】
またこの保持体30は、ケース31とカバー32が組み合わさった状態において、保持体30の正面となる面には、内カバー13の裏側に形成された係合溝41に係合する凸部17が形成され、また保持体30の背面となる面には、光ファイバ心線のガイドトレー12に形成された係合溝41に係合する凸部17が夫々形成されている。各凸部と係合溝41とは、この保持体30の底面が、光成端箱1の底面と略面一になるように当該保持体30を保持する位置に形成され、凸部と係合溝41との係合により、この保持体30は確実に光成端箱1に保持されることになる。
【0051】
以上の様に形成された保持体30は、図7に示すように、前記した擬似コード20の端末処理構造21を覆うようにして取り付けられる。具体的には端末処理構造をケース31内に収容してからカバー32を被せ、側面における爪部38と開口39とを係合させて両者を一体化している。これにより、端末処理構造21を有する擬似コード20の内部を心線50が通ると共に、その先端側に光ファイバプラグ60が接続され、基端部側の端末処理構造21には保持体30が設けられた光ファイバコード用配線単位65が形成される。
【0052】
このような光ファイバコード用配線単位65における擬似コード20を通る光ファイバ心線50は、複数心の光ファイバ心線を1本毎の心線50に分割したものであることから、複数心の光ファイバ心線全体としてみた場合には、図8に示すように、当該複数心の光ファイバ心線の先端側に、前記光ファイバコード用配線単位65が複数設けられた、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66が形成されることになる。なお、この光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66においては、保持体30だけを別にしておき、施工現場において組合わせることも可能である。即ち、単位長さに切断された複数心の光ファイバ心線と、光ファイバ心線50が挿通されるチューブ51の外側に、内側を補強繊維層52で補強した外被53を被覆してなる複数の光ファイバ用擬似コード20とを備え、前記複数心の光ファイバ心線の一端を心数分に分割して夫々を前記擬似コード20のチューブ51内に挿通させると共に、当該光ファイバ用擬似コード20の基端側には本発明にかかる端末処理構造21を形成し、更に、当該光ファイバ心線50を挿通させた光ファイバ用擬似コード20の先端側に光ファイバプラグ60を接続した光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66、或いは分岐した複数の心線50のうちの何れか1つ以上に光ファイバジャック40を設置し、他の心線50を光ファイバ用擬似コード20内に導いた光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66として提供することもできる。
【0053】
かかる光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66は、これを光成端箱1内に設置する場合には、複数心の心線になっている基部をガイドトレイ12に巻き回し、各光ファイバコード用配線単位65の保持体30を、この光成端箱1の装着部16に配置・固定することにより設置することができる。
【0054】
そして、この光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66を、外部から引き込んだ光ファイバケーブル心線に接続する場合には、複数心の光ファイバ心線同士を光ファイバ融着器により、複数心を一括融着すれば完了することになる。
【0055】
また、この光ファイバ接続用簡易端末処理構造体66は、4心の光ファイバ心線を4本に分割して、その内の3本の心線50について光ファイバコード用配線単位65を形成し、残りの1本の心線50には光ケーブルジャックを設けているが、その他にも分割した心線50の全てについて光ファイバコード用配線単位65を形成したり、あるいは2本の心線50について光ファイバコード用配線単位65を形成するなど、その数は任意に調整することができる。
【0056】
図9は、保持体30の他の実施の形態を示しており、この図に示す保持体30も、前記端末処理構造21をカバー32するものとして使用することができる。この図9に示す保持体30は、ケース31とカバー32とが側面において嵌合するのではなく、カバー32はケース31に収容された端末処理構造21に被さってこれを覆い、下面に形成された窪みで熱収縮チューブ55乃至は擬似コード20の外被53に噛合することで固定されている。なお、図9中、図6に示した保持体と同一の作用効果を奏する部分乃至構造については、同一符号を付してその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施の形態にかかる光成端箱1を示す分解斜視図
【図2】当該光成端箱1を分解した状態における正面図
【図3】当該光成端箱1の(I)正面図、(II)底面図、(III)右側面図、(IV)背面図、(V)A−A断面図、(VI)B−B断面図、(VII)C−C断面図
【図4】本実施の形態における光ファイバ用擬似コードの端末処理構造を示す(I)正面図、(II)A−A断面図、(III)B−B断面図
【図5】当該端末処理構造を収容する保持体を構成するケースとカバーの夫々を4方向からみた分解斜視図
【図6】当該端末処理構造を収容した保持体を示す(I)正面図、(II)側面図、(III)カバーを外した状態の正面図、(IV)A−A断面図、(V)底面図
【図7】光ファイバ用擬似コードの端部に形成された端末処理構造を保持体に収容した状態を示す斜視図
【図8】光ファイバ接続用簡易端末処理構造体の1つの実施形態を示す略図
【図9】他の形態の保持体に端末処理構造を収容した(I)正面図、(II)A−A断面図、(III)底面図
【符号の説明】
【0058】
1 光成端箱
10 筐体
11 ボックス本体
12 ガイドトレー
13 内カバー
14 化粧カバー
16 装着部
17 凸部
20 光ファイバ用擬似コード
21 端末処理構造
30 保持体
31 ケース
32 カバー
33 収容空間
34 張力受部
37 外被把持部
38 爪部
40 光ファイバジャック
50 光ファイバ心線
51 チューブ
52 補強繊維層
53 外被
54 筒状体
55 熱収縮チューブ
56 段差部
57 接着剤
60 光ケーブルプラグ
65 光ファイバコード用配線単位
66 光ファイバ接続用簡易端末処理構造体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線が挿通されるチューブの外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる擬似コードの端末処理構造であって、
擬似コードの端部側に剛性を有する筒状体を外装すると共に、当該筒状体から出ている擬似コードの端部側の補強繊維層を露出させ、更に当該補強繊維層を前記筒状体の外面に沿って折り返して、その外側を熱収縮チューブにて一体に固定したことを特徴とする光ファイバ用擬似コードの端末処理構造。
【請求項2】
前記熱収縮チューブは、収縮後の長さが前記筒状体よりも長くなる様に構成され、且つ
筒状体を覆う部分とチューブ又はコードを覆う部分との間には段差部が設けられている、請求項1記載の光ファイバ用擬似コードの端末処理構造。
【請求項3】
前記熱収縮チューブは、収縮後の長さが前記筒状体よりも長くなる様に構成されており、且つ
筒状体よりも擬似コード側に伸びる熱収縮チューブの長さは、筒状体よりもチューブ側(心線が挿通されるコード)に伸びる熱収縮チューブの長さよりも長く形成されている、請求項1又は2記載の光ファイバ用擬似コードの端末処理構造。
【請求項4】
前記擬似コードの外被と熱収縮チューブとの間に接着剤が充填されている、請求項1乃至3記載の光ファイバ用擬似コードの端末処理構造。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の端末処理構造を有する光ファイバ用擬似コードを光成端箱に保持する保持体であって、
当該保持体は、ケースとカバーとで形成されると共に、
当該保持体形状を光成端箱に設けられる光ファイバコネクタと略同一のモジュールに形成したことを特徴とする光ファイバ擬似コードの保持体。
【請求項6】
前記保持体内には光ファイバ用擬似コードの端末処理構造部分を収容し、
当該保持体内には、擬似コードに張力が掛かった時に前記端末処理構造の段差部を支持する張力受部を設けた、請求項5記載の光ファイバ擬似コードの保持体。
【請求項7】
前記保持体内には光ファイバ用擬似コードの端末処理構造部分を収容し、
当該保持体内には、前記筒状体を被覆している熱収縮チューブの外側を把持する外被把持部を設けた、請求項5又は6記載の光ファイバ擬似コードの保持体。
【請求項8】
光ファイバコネクタの装着部を備える光成端箱であって、
当該光ファイバコネクタの装着部に、請求項5乃至7記載の光ファイバ擬似コードの保持体を装着したことを特徴とする、光成端箱。
【請求項9】
単位長さに切断された複数心の光ファイバ心線と、
光ファイバ心線が挿通されるチューブの外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる複数の光ファイバ用擬似コードとを備え、
前記複数心の光ファイバ心線の一端を心数分に分割して夫々を前記擬似コードのチューブ内に挿通させると共に、
当該光ファイバ用擬似コードの基端側には請求項1乃至4記載の端末処理構造を形成して、当該端末処理構造体を保持体内に収容固定し、
更に、当該光ファイバ心線を挿通させた光ファイバ用擬似コードの先端側に光ファイバプラグを接続したことを特徴とする、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体。
【請求項10】
単位長さに切断された複数心の光ファイバ心線と、
光ファイバ心線が挿通されるチューブの外側に、内側を補強繊維層で補強した外被を被覆してなる1又は2以上の光ファイバ用擬似コードとを備え、
前記複数心の光ファイバ心線の一端を心数分に分割し、少なくとも一本の光ファイバ心線の先端に光ファイバジャックを接続すると共に、残りの光ファイバ心線の夫々を前記擬似コードのチューブ内に挿通させ、
当該光ファイバ用擬似コードの基端側には請求項1乃至4記載の端末処理構造を形成して、当該端末処理構造体を保持体内に収容固定し、
更に、当該光ファイバ心線を挿通させた光ファイバ用擬似コードの先端側に光ファイバプラグを接続したことを特徴とする、光ファイバ接続用簡易端末処理構造体。
【請求項11】
前記保持体として、請求項5乃至7に記載の保持体が使用されている請求項9又は10記載の光ファイバ接続用簡易端末処理構造体。
【請求項12】
光ファイバコネクタの装着部が複数形成されている光成端箱であって、
当該装着部の1又は2以上には、前記請求項9乃至11記載の光ファイバ接続用簡易端末処理構造体における、保持体又は光ファイバジャックが装着されていることを特徴とする、光成端箱。
【請求項13】
請求項12に記載の光成端箱を使用した光成端箱の施工方法であって、
外部から引き込まれた複数心の光ファイバ心線と、前記光成端箱を構成する光ファイバ接続用簡易端末処理構造体の複数心の光ファイバ心線とを融着する工程を含むことを特徴とする、光成端箱の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−96847(P2008−96847A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280725(P2006−280725)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(390015244)日本モレックス株式会社 (37)
【出願人】(390005038)神保電器株式会社 (50)
【Fターム(参考)】