説明

光ファイバ結合システム

引き伸ばされた入力部表面を有し、ファイバのコアの直径が入力部から離れて1つの寸法は縮小されるが、他の寸法は入力部から離れて増加し、入力部よりも円形である出力部に向かってそれぞれ収束表面および発散表面を形成するような形状である、光ファイバを含む光ファイバ結合構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ結合システムに関する。詳細には、しかし排他的ではなく、線形発光領域を有する高エネルギー半導体の出力を光ファイバへ高い結合効率および輝度で結合するための光ファイバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高エネルギー半導体レーザダイオードは、しばしばファイバレーザのポンピングのために用いられる。これらの用途において、ファイバレーザからの出力は、そのコアに形成されるブラッグ回折格子(Bragg Grating)を有するファイバのクラッディング層に加えられ、レーザダイオードからのエネルギーは活性ファイバ内にレーザ効果を誘起するポンピングエネルギーとして用いられる。
したがって、これらの高エネルギー半導体レーザダイオードの出力を光ファイバのクラッディング層に結合する手段が必要である。
【0003】
それらのレーザポンピングに適した高エネルギー半導体レーザダイオードは、しばしば線形発光領域を有する。最も一般的には、これらの寸法は約1μm×100μmである。そのようなエミッタ(発光素子)の出力は、簡単な高速軸コリメーション法を用いて典型的には約105μmのエミッタ幅よりもわずかに大きなコア直径の多重モード光ファイバに結合することができる。ワット当たり、より低コストでより大きな出力を生成することができるので、より大きな出力幅、典型的には1,000μmの大きさの出力幅を有するエミッタを用いるのが望ましい。しかし、そのようなレーザ出力が高速軸コリメーション法を用いて円形光ファイバに直接結合される場合、光ファイバコアの直径を非常に大きくしなければならず(すなわち、1000μmより大きく)、したがって出力部に結合したファイバの輝度(またはより正確には放射輝度)はファーバーレーザポンプ源として用いるには低すぎることがある。
【0004】
線形半導体レーザ源の出力部を円形化し、これをエミッタ幅よりもはるかに小さな直径の光ファイバに結合するために、様々な技術が開発されて来た。米国特許第4,688,884号はフェーズドアレイ半導体レーザのファイバ光結合システムを開示する。このシステムは半導体レーザのアレイからの出力を光ファイバへ結合するためであり、「押しつぶされた」入力端部を有し、略楕円形の断面を有する。出力端部は円形ファイバに結合するために略円形である。
しかし、この文献に示されたファイバカプラは、その入力端部を形成するために押しつぶされる。そのような押しつぶしは、カプラの損傷など製造中の問題を招き、または、信頼性がなく定量性のない(unquantifiable)伝播速度、または異なるカプラ間での繰り返し性のなさ(non−repeatability)を招くことがある。このカプラの結合効率は約77〜80%であるが、一般に所与の形状に対して最適ではない。
【特許文献1】米国特許第4,688,884号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は改善された光カプラを提供し、および結合効率を高める試みである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、引き伸ばされた入力部表面を有し、ファイバのコアの直径が入力部から離れて1つの寸法は縮小されるが、他の寸法は入力部から離れて増加し、入力部よりも円形である出力部に向かってそれぞれ収束表面および発散表面を形成するような形状にされた光ファイバを含む光ファイバ結合構造が提供される。
この構造は、入力部に向かう方向に外側へテーパが付きテーパ部分に形成されたウェッジ(楔)を有する光ファイバを含むのが好ましい。
光ファイバは、水平面と垂直面の間の入力端部で光放射入力部を結合するように、断面が円形ではないコアを有することが最も好ましい。
本発明は、光ファイバを必要な出力部直径までテーパを付け、材料を取り去ることによってテーパ部分にウェッジを形成して、ウェッジ部分の端部に引き伸ばされた入力部を形成することを含む、光ファイバ結合構造の形成方法をさらに提供する。
さらに他の態様において、結合構造を用いてレーザビームを出力部光ファイバに結合する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
添付図面を参照して、本発明の実施形態を単に例示として説明する。
ここで、図1を参照すれば、広い紐状の単一レーザエミッタ(例えば、レーザダイオードエミッタ)2および出力部光ファイバ3の間を結合する結合構造1が示される。
レーザエミッタ2は広い紐状の単一エミッタであり、典型的に約750×1μmの出力部開口を有するように配置される。レーザダイオードはクラッディングポンピングされた光ファイバレーザ3にファイバ3を経由してポンピングエネルギーを提供するのに用いることができる。結合構造1はレーザダイオード2と出力部ファイバ3の間に取り付けられる。構造1は、テーパが付けられてテーパ部分5に機械加工または研磨された小角度のウェッジ(楔)4を有する大直径の光ファイバを含む。図1〜図5に示すように、その一方向(水平方向)の直径がその入力部で最も大きく、全体的に連続的にテーパ部分5に沿って縮小するように、ファイバにはテーパが付けられる。同様に、他の方向の直径が端部6で最小であり、部分5に沿って入力部から離れる方向に外側へ発散するように、ウェッジ部分が形成される。したがって、入力部表面は略矩形であるが、それが他の主要寸法よりも実質上大きな1つの主要寸法(この場合水平寸法)を有するならば、他の形状を有することができる。
【0008】
光ファイバは中心コア7および少なくとも1つのクラッディング層8を含む。光放射(Optical Radiation)はコア−クラッディング界面の総内部反射によってファイバ内を伝播する。
放射はレーザダイオードまたは他のエミッタ2から高速アクセスコリメータ9を経由してカプラの入力部面6に放射される。カプラにおいて、略矩形または線形エミッタの引き伸ばされた出力部は円形にされ、エミッタの幅よりも小さなコア直径を有する出力部光ファイバ3に結合される。
【0009】
図2に示すように、カプラは非円形コアを有するのが最も好ましい。有利には、図2のコア7によって示されるように、それは切子面があり、六角形とすることができ、または平坦な側を有する他の多角形とすることができ、または他の非円形形状を有することができる。この理由は以下でさらに説明する。
図2および図3はカプラ製造の基本ステップを示す。第1に、比較的大きな直径の光ファイバ(典型的に製造後にカプラの入力部面6の最大直径を示す直径を有する)に加熱および引っ張りによって必要な出力部直径までテーパが付けられる。ファイバは非円形コアを有する。このステップは図2に示され、ファイバはその入力端部6からその出力端部に向かって直径が縮小する。一実施例においては、入力部直径は約800μm、および出力部直径は約400μmとすることができる。
第2に、図3に示すように、テーパ部分にウェッジ9が形成される。これは機械加工または平坦化作業などの材料除去の作業によって形成される。光学的研磨によって行われるのが好ましいが、他の方法によって行うこともできる。ウェッジはファイバの片側または両側に形成することができる。
カプラはウェッジ部分の最大直径部分10で終端することができ、または図2および図3に示すように、略円筒状の光ファイバ部分11で連続することができ、これは次いで出力部ファイバ3に接続することができる。
図3に示すように、また、図4で明瞭に示すように、ウェッジは図4の部分12に示すウェッジの少なくともより細い端部でコア7を直接空気に露出するように形成されるのが好ましい。
【0010】
周知のように、光ファイバ中の光伝播は、放射の入射角度がその界面の臨界角度未満である場合、コア/クラッディング界面での光の総内部反射によって起きる。コアが露出されるカプラ部分において、界面はコア−空気界面であり、この界面に関する臨界角度を超えない場合、内部反射はこの界面でも起きる。
基本的に、カプラの構造はファイバの直径が入力部から離れて1つの寸法が縮小し、入力部から離れて他の寸法が増加するものである。したがって、両方とも入力部から離れる方向に、テーパは水平方向の寸法を縮小させ(図に示される配置において)、ウェッジは垂直方向の寸法を増加させる。
【0011】
図6に示すように、収束構造の第1壁S1に臨界角度よりも小さい角度α1で入射する光線は、同じ角度α1でこの表面から反射される。それは次いで対向壁S2に衝突するが角度α2は増加する。再びこの角度が臨界角度よりも小さいならば、光線は表面S1に反射して戻される。この時、表面S1で、S1およびS2は収束するので、入射角度は再びより大きくなり、これは臨界角度よりも大きくなることがある。したがって、光線は内部反射せず、13で示すようにファイバを通貨して外に出ることがある。
【0012】
これを克服するために、図7に示すように、カプラが前記他の寸法で発散するならば、したがって光線をいわゆる水平面と垂直面の間で結合させるならば、頂部表面および側部表面から交互に反射する光線は収束表面と発散表面に交互に遭遇する。したがって、その都度、光線が(収束)表面S1またはS2の1つに接触した後、次いで(発散)表面S3およびS4の1つに接触するならば、図6に関して論じた効果は無効になる。このことはカプラの入力部面6に正しい角度で入射する任意の光線は確実に出力部10までファイバを伝播し続け、したがって、ファイバの残りを通って前進することを保証する。
【0013】
用語「臨界角度(critical angle)」の代わりに、用語「開口数(numeral aperture)」が光ファイバに関してしばしば用いられ、入射角度が光ファイバの開口数を超えるならば、それによって導光が中止され、13で示すようにファイバの側部を通って外側へ透過する。
【0014】
光ファイバは、例えば、図6および図7の収束表面と発散表面間により良好な結合を提供する、非円形のコアを有するようにされる。コアが円形であったならば、例えば水平配置に入るあらゆる光線はその都度単純に水平に反射され、したがって、おそらく最終的に上述のように導光は中止される。他方、この光線がその移動方向に垂直ではない表面に遭遇するならば、光線は水平ではない角度で反射し、したがって、最終的に全体的な発散表面および全体的な収束表面の両方に衝突し、したがって、光線は伝播を続けることが保証される。
【0015】
図2に示すように、六角形コア幾何形状はこの意味で特に効率的であることが見出されたが、他の非円形の任意のコア幾何形状を用いることができる。幾何形状は3辺以上の直線の辺を有する多角形を含む切子面であるのが好ましい。例えば、五角形、六角形、または他の任意の多角形とすることができる。あるいは、コアの1つ以上の表面を弓形とすることができ、または異なる構成では他の任意の非円形形状とすることができる。
六角形または他の非円形配列は水平面と垂直面の間の光線の結合を高め、したがって、性能を高める。これによってテーパの長さを短くすることができ、当該構造の製造がより容易になる。
【0016】
図8は3つの異なるサンプルについて計算した結合効率に対するテーパ長さ(すなわちウェッジ部分の長さ)をミリメートルで示したプロット図である。これらはそれぞれ開口数0.22の六角形コア、開口数0.15の六角形コア、開口数0.22の円形コアについてである。エミッタ寸法は750μm×1μmである。入力部コア幅は800μmであり出力部光ファイバコア直径は400μmである。
この結果は、一般により長いテーパ長がより高い結合効率をもたらすことを示す。しかし、長いテーパ部分は製造が困難であり、したがって、テーパ部分の長さを最小化するのが望ましい。示された実施例において、最も高い結合効率は約90%であることが分かり、これは六角形コアの開口数0.22を有する10mmテーパで得られる。この結果は、最も高い結合効率を得るために、六角形または他の切子または非円形コアが円形断面コアに好ましいことを示す。水平面と垂直面の光線間の結合が不十分であるため、円形コア幾何形状はより低い結合効率を与える。
【0017】
これらの表面のいくつかは反射防止コーティングを有することができ、これはさらに高い結合効率をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】単一のエミッタレーザと出力部ファイバ間の光カプラ結合を示す図である。
【図2】第1製造ステップを示す図である。
【図3】第2製造ステップを示す図である。
【図4】縦の断面を示す図である。
【図5】水平の断面を示す図である。
【図6】説明図である。
【図7】さらに他の説明図である。
【図8】異なる形状のコアについてテーパ長さに対する結合効率のプロット図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き伸ばされた入力部表面を有し、ファイバのコアの直径が前記入力部から離れて1つの寸法は縮小されるが、他の寸法は前記入力部から離れて増加し、前記入力部よりも円形である出力部に向かってそれぞれ収束表面および発散表面を形成するような形状である光ファイバを含む、光ファイバ結合構造。
【請求項2】
前記入力部に向かう方向に外側にテーパが付けられ、テーパ部分に形成されたウェッジを有する光ファイバを含む、請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記光ファイバが切子面であるコアを有する、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
前記コアが六角形断面である、請求項3に記載の構造。
【請求項5】
前記光ファイバが、非円形部分であるコアを有し、カプラの収束表面と発散表面の間の入力端部で光線入力部を結合するような形状である、請求項1から4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項6】
前記入力部に入るあらゆる光線が、前記光線が結合構造のテーパ部形成部分の端部に達する前に前記コアの頂部または底部表面に衝突するように、前記コアが垂直の変位を起こす形状である、請求項5に記載の光ファイバ結合構造。
【請求項7】
光ファイバを必要な出力部直径までテーパを付け、材料を取り去ることによって前記テーパ部分にウェッジを形成して、前記ウェッジ部分の前記端部に引き伸ばされた入力部を形成することを含む、光ファイバ結合構造を形成する方法。
【請求項8】
前記光ファイバが加熱および引っ張りによってテーパが付けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウェッジが、機械加工、好ましくは光学的研磨によって前記テーパ部分に形成される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記光ファイバが非円形コアを有する、請求項7、8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記コアが切子断面を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光ファイバの前記コアが露出される部分を含むように前記ウェッジが形成される、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の結合構造を用いることを含む、レーザビームを出力部光ファイバに結合する方法。
【請求項14】
前記レーザビームが単一ビームである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザビームがレーザダイオードの出力である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザビームがポンピングビームである、請求項13、14、または15に記載の方法。
【請求項17】
添付図面を参照して例示した、前述したような光カプラ。
【請求項18】
前述したようなレーザビームを光ファイバに結合する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−514002(P2009−514002A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537205(P2008−537205)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050357
【国際公開番号】WO2007/049077
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(507023500)ジーエスアイ グループ リミテッド (13)
【Fターム(参考)】