光モジュール、及び光分析装置
【課題】簡素な構成で、かつ所望のギャップを正確に設定でき、正確な分光特性を測定可能な光モジュール、及び光分析装置を提供すること。
【解決手段】第1基板及び第2基板に互いに対向配置されて、ギャップが可変されて最小となる最小ギャップにおいて互いに接触する一対の検出電極と、反射膜間のギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データ721が記憶された記憶部72と、検出電極の接触時での最小ギャップにおける静電アクチュエーターに印加している接触電圧を取得する接触検出部711と、相関データ721から1つのマップを選択するデータ選択部712とを備える。相関データ721は、最小ギャップに対する接触電圧が異なる複数のマップを備え、データ選択部712は、接触検出部711で取得した接触電圧に基づいて、マップを選択する。
【解決手段】第1基板及び第2基板に互いに対向配置されて、ギャップが可変されて最小となる最小ギャップにおいて互いに接触する一対の検出電極と、反射膜間のギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データ721が記憶された記憶部72と、検出電極の接触時での最小ギャップにおける静電アクチュエーターに印加している接触電圧を取得する接触検出部711と、相関データ721から1つのマップを選択するデータ選択部712とを備える。相関データ721は、最小ギャップに対する接触電圧が異なる複数のマップを備え、データ選択部712は、接触検出部711で取得した接触電圧に基づいて、マップを選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して出射する波長可変干渉フィルターを備えた光モジュール、及びこの光モジュールを備えた光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、所定寸法を有するギャップを介して、固定鏡及び可動鏡(一対の反射膜)が対向配置された波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1の波長可変干渉フィルターでは、ギャップを調整するために、一対の反射膜の互いに対向する面に、電極が対向配置されており、各電極に駆動電圧を印加することで、静電引力によりギャップを調整することが可能となる。これにより、波長可変干渉フィルターは、当該ギャップに応じた特定波長の光のみを透過させることが可能となる。すなわち、波長可変干渉フィルターは、入射光を一対の反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の光のみを透過させる。
【0003】
ところで、電極に駆動電圧が印加されていないときの初期ギャップが個々の波長可変干渉フィルターでばらつく場合がある。これは、製造工程によるものや、環境温度の変化により反射膜等に作用する膜応力が変化するためである。このため、各波長可変干渉フィルターの電極に同じ電圧を印加しても、各波長可変干渉フィルターでギャップが異なってしまい、所望のギャップに設定することができない。そこで、特許文献1では、個々の波長可変干渉フィルターで初期ギャップにばらつきがある場合でも所望のギャップに設定するための方法の1つとして、電極間の静電容量を測定して、この静電容量に基づいて測定したギャップと、このギャップにおける駆動電圧とに基づいて、所望のギャップに設定するための駆動電圧を算出する方法が例示されている。これにより、個々の波長可変干渉フィルターで初期ギャップにばらつきがある場合でも、所望のギャップに設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−14641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、静電容量に基づいて正確にギャップを測定するためには、配線等のノイズの影響を防止して、静電容量を正確に測定する必要がある。このため、電極面積を大きくする必要があり、この場合には基板が大型化してコストが高くなるという問題がある。または、電極間の寸法を微小にする必要があり、構造が複雑化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、簡素な構成で、かつ所望のギャップを正確に設定でき、正確な分光特性を測定可能な光モジュール、及び光分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光モジュールは、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と所定のギャップを介して対向する第2反射膜と、前記反射膜間のギャップを電圧が印加されることで可変するギャップ可変部と、前記第1基板及び前記第2基板に互いに対向配置されて、前記ギャップが可変されて最小となる最小ギャップにおいて互いに接触する一対の検出素子と、前記第1反射膜及び前記第2反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の検査対象光を受光する受光手段と、前記反射膜間のギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データが記憶された記憶部と、前記検出素子が接触したか否かを判定し、前記検出素子の接触時での前記最小ギャップにおける前記ギャップ可変部に印加している電圧である接触電圧を取得する接触検出部と、前記相関データを読み出し、前記複数のマップのうち、1つのマップを選択するデータ選択部と、選択された前記1つのマップに基づいて、所望のギャップに設定するための電圧を算出する電圧算出部とを備え、前記相関データは、前記最小ギャップに対する前記接触電圧が異なる複数の前記マップを備え、前記データ選択部は、前記接触検出部で取得した前記接触電圧を有する前記マップを選択することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データが記憶部に予め記憶されている。すなわち、この相関データは、検出素子の接触時の最小ギャップでの接触電圧が異なる複数のマップを備えている。そして、最小ギャップとなる場合の接触電圧を取得するために検出素子を設けて、接触検出部は、検出素子の接触時(最小ギャップ時)の接触電圧を取得している。そして、データ選択部は、相関データを参照し、最小ギャップ時の接触電圧に基づいて、複数のマップから1つのマップを選択するので、この選択されたマップからギャップ及び電圧の関係を得ることができる。電圧算出部は、選択されたマップに基づいて、所望のギャップに設定するための電圧を算出する。
従って、個々の波長可変干渉フィルターで初期ギャップのばらつきが製造工程や環境温度の変化によって生じた場合でも、最小ギャップ時の接触電圧に基づいて、ギャップ及び電圧の関係を有するマップを特定することができる。よって、単に検出素子を設けるのみの簡素化な構成で、特定したマップに基づいて、所望のギャップを正確に設定できる。
【0009】
本発明の光モジュールでは、前記一対の検出素子のうち少なくとも一方の検出素子は、他方の検出素子に向けて膨出した球面状に形成されていることが好ましい。
【0010】
ここで、例えば、両方の検出素子を平坦面に形成した場合において、検出素子が接触すると、面同士の接触となるため、検出素子の接触位置がギャップの間隔に応じて変化する。このため、接触の検出にタイミングのずれが生じて、接触の検出誤差が生じるおそれがある。ところが、本発明によれば、少なくとも一方の検出電極は他方の検出電極に向けて膨出した球面状に形成されているので、他方の検出電極が平坦面であった場合でも、検出電極同士が接触した際、ギャップの間隔に関係なく常に同じ1点で接触することとなり、接触の検出誤差が生じることなく、接触の検出精度を向上することができる。
【0011】
本発明の光モジュールでは、前記第1基板及び前記第2基板の互いに対向する面のいずれか一方の面に形成されて、対向する面に向けて突出する突出部を備え、前記突出部は、基板厚み方向に見る平面視において、前記第1基板と対向する可動面を有する可動部、及び前記可動部を前記第2基板の厚み方向に移動可能に保持する連結保持部で構成される変位部の領域内に形成され、前記一対の検出素子のうち一方の検出素子は、前記突出部の先端に設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、突出部の先端に検出素子が配置されているので、検出素子の接触時に反射膜及びギャップ可変部がそれぞれ先に接触しないように突出部の突出寸法を設定しておけばよく、反射膜及びギャップ可変部がそれぞれ接触することを確実に防止できる。
【0013】
本発明の光モジュールでは、前記検出素子は、前記第1反射膜及び前記第2反射膜上にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、検出素子を変位する反射膜上に直接形成したので、検出素子が接触した場合の反射膜間のギャップを最小ギャップとして測定すればよく、検出素子を突出部に設ける場合に比べて、反射膜間のギャップを直接検出しているため、最小ギャップと接触時に取得された電圧とに基づいてマップを選択する精度も向上する。
【0015】
本発明の光モジュールでは、前記ギャップ可変部は、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に前記第1電極と対向して設けられた第2電極とを備え、前記一対の検出素子は、前記第1電極及び前記第2電極の外側に設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、ギャップ可変部の各電極の外側に検出素子を設けたので、例えば、検出電極から引き出される検出電極引出部がギャップ可変部の電極の引出部と干渉することなく引き回すことができ、検出電極引出部の引き回し作業を簡素化できる。
【0017】
本発明の光分析装置は、前述の光モジュールと、前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前述の光モジュールを備えるので、精度の高い光量の測定を実施でき、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な光学特性の分析を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第1実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図4】前記第1実施形態のギャップと電圧との相関関係を示すデータ。
【図5】前記第1実施形態の測色方法を示すフローチャート。
【図6】本発明に係る第2実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図7】本発明に係る第3実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図8】本発明に係る第4実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図9】前記第4実施形態のギャップと電圧との相関関係を示すデータ。
【図10】本発明に係る変形例のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図11】本発明に係る変形例のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図12】本発明に係る変形例のエタロンの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、第1実施形態の測色装置1(光分析装置)の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する測色制御装置4とを備えている。この測色装置1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0021】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば被検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0022】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、エタロン5と、エタロン5を透過する光を受光する受光素子31(受光手段)と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する駆動回路6と、駆動回路6に制御信号を出力する制御回路部7とを備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を内部に導く図示しない入射光学レンズを備えている。エタロン5は、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光する。そして、測色センサー3は、エタロン5により分光された光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、測色制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として測色制御装置4に出力する。
【0023】
(3−1.エタロンの構成)
図2及び図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図2及び図3では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。
エタロン5は、例えば、平面視正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図2に示すように、第1基板51及び第2基板52を備え、これらの基板51,52が接合層53を介して互いに接合されて構成される。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、外周部近傍に形成される接合部が、例えば常温活性化接合やプラズマ重合膜を用いたシロキサン接合などにより、接合されることで、一体的に構成されている。
【0024】
また、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56(第1反射膜)、及び可動ミラー57(第2反射膜)が設けられる。ここで、固定ミラー56は、第1基板51の第2基板52に対向する面に固定され、可動ミラー57は、第2基板52の第1基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー56及び可動ミラー57は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。ここでのギャップGは、後述する静電アクチュエーター54(ギャップ可変部)に電圧が印加されていないときの初期ギャップG0である
さらに、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56及び可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54と、ギャップGが調整されて接触した際に検出信号を出力する一対の検出電極55(検出素子)とが設けられている。ここで、一対の検出電極55は、後述する第1検出電極551及び第2検出電極552で構成される。
【0025】
(3−1−1.第1基板の構成)
第1基板51は、厚みが例えば500μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この第1基板51には、図2に示すように、エッチングにより電極形成溝511及びミラー固定部512が形成される。
【0026】
電極形成溝511には、ミラー固定部512の外周縁から、当該電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状の第1電極固定面511Aが形成され、この第1電極固定面511Aには、第1電極541が形成される。この第1電極541は、図示しない第1電極引出部を介して駆動回路6(図1参照)に接続されている。
なお、第1電極541は、導電性を有し、後述する第2基板52の第2電極542との間で電圧を印加することで、第1電極541及び第2電極542間に静電引力を発生させることが可能なものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を用いるが、Au/Crなどの金属積層体を用いてもよい。
【0027】
ミラー固定部512は、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、第2基板52に対向する側の面にミラー固定面512Aを備えている。
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmで円形状のTiO2−SiO2系の誘電体多層膜により形成された固定ミラー56が固定されている。なお、本実施形態では、固定ミラー56として、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜のミラーを用いる例を示すが、分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAg合金単層のミラーを用いる構成としてもよい。
【0028】
さらに、ミラー固定面512Aにおいて、固定ミラー56の外側には、第2基板52に向けて突出する突出部512Bが形成され、この突出部512Bの先端に第1検出電極551が固定されている。この第1検出電極551において、後述する第2検出電極552と対向する側の面は膨出して球面状に形成されている。
また、突出部512Bは、基板厚み方向に見る平面視において、後述する変位部521の領域内に形成されており、より具体的には後述する可動部522の領域内に形成されている。突出部512Bの高さ寸法は、各検出電極551,552の接触時に、固定ミラー56及び可動ミラー57、第1電極541及び第2電極542がそれぞれ接触しないような寸法に形成されている。
【0029】
また、ミラー固定部512のミラー固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定ミラー56及び可動ミラー57の間の初期ギャップG0が450nmに設定されている。そして、図3に示すように、第1電極541及び第2電極542間に電圧を印加することにより、各検出電極551,552の接触時のギャップG(以下では、最小ギャップGcと記載)が例えば250nmになるまで可動ミラー57を変位させることが可能となっており、これにより、第1電極541及び第2電極542間の電圧を可変することで、可視光全域の波長の光を選択的に分光させて透過させることが可能となる。ここで、検出電極551,552が接触する際の電圧が本発明に係る接触電圧に相当する。
【0030】
ここで、第1基板51において、電極形成溝511及びミラー固定部512が形成されていない部分が第1基板51の接合面513となる。この接合面513には、図2及び図3に示すように、接合用の接合層53が膜状に形成されている。この接合層53には、主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜などを用いることができる。
【0031】
(3−1−2.第2基板の構成)
第2基板52は、厚みが例えば200μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この第2基板52には、例えば平面視で基板中心点を中心とした円形の変位部521が形成される。この変位部521は、図2に示すように、円柱状の可動部522と、可動部522と同軸であり可動部522を保持する連結保持部523とを備えている。
【0032】
変位部521は、第2基板52の形成素材である平板状のガラス基材をエッチングにより溝を形成することで形成される。すなわち、変位部521は、第2基板52の第1基板51に対向しない入射側面に、連結保持部523を形成するための円環状の溝部523Aをエッチング形成することで形成されている。
【0033】
可動部522は、連結保持部523よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第2基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。この可動部522の径寸法は、第1基板51のミラー固定部512の径寸法よりも大きく形成されている。
可動部522の第1基板51に対向する面には、第1基板51のミラー固定面512Aに平行な可動面522Aを備え、この可動面522Aには、固定ミラー56と同一構成の可動ミラー57が固定されている。
【0034】
さらに、可動面522Aにおいて、可動ミラー57の外側には、第1検出電極551と対向する第2検出電極552が固定されている。この第2検出電極552も第1検出電極551と同様に、第1検出電極551と対向する側の面は膨出して球面状に形成されている。
【0035】
連結保持部523は、可動部522の周囲を囲うダイヤフラムであり、厚み寸法が例えば50μmに形成されている。この連結保持部523の第1基板51に対向する第2電極固定面523Bには、リング状に形成され、第1電極541に所定の電磁ギャップを介して対向する第1電極541と同一構成の第2電極542が形成されている。この第2電極542は、図示しない第2電極引出部を介して駆動回路6(図1参照)に接続されている。
第2電極542の上面には、第1電極541及び第2電極542の間の放電等によるリークを防止するために絶縁膜543が形成されている。この絶縁膜543としては、SiO2やTEOS(TetraEthoxySilane)などを用いることができ、特に第2基板52を形成するガラス基板と同一光学特性を有するSiO2が好ましい。絶縁膜543として、SiO2を用いる場合、第1基板51及び絶縁膜543の間での光の反射等がないため、第2基板52上に第2電極542を形成した後、第2基板52の第1基板51に対向する側の面の全面に絶縁膜を形成することができる。
【0036】
ここで、第2基板52の第1基板51に対向する面において、第1基板51の接合面513と対向する領域が、第2基板52における接合面524となる。この接合面524には、第1基板51の接合面513と同様に、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた接合層53が設けられている。
【0037】
(3−2.駆動回路の構成)
駆動回路6は、エタロン5の第1電極引出部、第2電極引出部、及び制御回路部7に接続される。この駆動回路6は、制御回路部7から入力される駆動制御信号に基づいて、第1電極引出部及び第2電極引出部を介して、第1電極541及び第2電極542間に駆動電圧を印加し、変位部521を移動させる。
【0038】
(3−3.制御回路部の構成)
制御回路部7は、測色制御装置4、駆動回路6、及び検出電極55に接続され、測色センサー3の全体動作を制御する。この制御回路部7は、図1に示すように、制御部71及び記憶部72等により構成されている。
ここで、記憶部72は、例えばメモリーなどの記録媒体を備えて構成され、制御部71での処理に必要な各種プログラム及びデータを適宜読み出し可能に記憶する。このようなプログラムとして、詳しくは後述するが、例えば、制御部71にて実行され、検出電極55の接触の有無を判定し、接触時の静電アクチュエーター54に印加している電圧Vを検出する接触検出プログラムや、記憶部72に記憶された後述する相関データ721から適切なマップMを選択するデータ選択プログラムや、選択したマップMに基づいて、所望のギャップGに設定するための電圧Vを算出する電圧算出プログラム等が挙げられる。
【0039】
また、記憶部72には、図4に示すギャップGと電圧Vとの関係を示す複数のマップM(M1、M2、M3・・・MN)を有する相関データ721が記憶されている。すなわち、この相関データ721は、最小ギャップGcに対する接触電圧V(V1,V2・・・VN)が異なる複数のマップMを有しており、例えば、マップM1は、最小ギャップGcに対して、接触電圧V1の関係を有するものである。
最小ギャップGcは、検出電極55の接触時のミラー間のギャップであり、製造時に予め測定しておくことで取得できるものである。
【0040】
相関データ721は、電圧Vを静電アクチュエーター54に印加した際に第1電極541及び第2電極542間に発生する静電力F1と、静電力F1により変位した変位部521が初期ギャップG0の位置まで戻ろうとする復元力F2との釣り合いの関係から得られる。そして、相関データ721は、図4に示すように、ギャップGと電圧Vとの相関関係を示すグラフを有して、複数のマップMを含んだデータとなる。
具体的には、静電力F1は以下の式(1)で求められ、復元力F2は以下の式(2)で求められる。そして、これらの釣り合いの関係を示す以下の式(3)に基づいて、相関データ721が得られる。
【0041】
【数1】
・・・(1)
【0042】
ここで、ε0は、真空の誘電率、Vは、電極間に印加される電圧、G0は、初期ギャップである。xは、初期ギャップG0と、電圧Vが印加された際のギャップGとの差であり、x=G0−Gで求めることができる。
【0043】
【数2】
・・・(2)
【0044】
ここで、kは、バネ定数であり、xは、前述の式(1)と同様である。
【0045】
【数3】
・・・(3)
【0046】
制御部71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、記憶部72に記憶されたプログラムを実行する。すなわち、制御部71は、記憶部72に記憶されたプログラム及びデータを処理することにより、各種機能を実現する。このような制御部71は、被検査対象Aの色を測定する際には、当該プログラムを処理することにより、図1に示すように、接触検出部711と、データ選択部712と、電圧算出部713とを機能として実現する。
【0047】
接触検出部711は、検出電極55に接続され、駆動回路6により所定電圧が印加された際に、第1検出電極551及び第2検出電極552が接触したか否かを判定する。そして、接触検出部711は、第1検出電極551及び第2検出電極552が接触したと判定すると、この接触時に静電アクチュエーター54に印加していた接触電圧Vを駆動回路6から取得する。
【0048】
データ選択部712は、記憶部72から相関データ721を読み出して、接触検出部711で取得した接触電圧Vに基づいて、相関データ721のうち適切なマップMを選択する。具体的に、データ選択部712は、例えば、取得した接触電圧がV1である場合において、最小ギャップGcとなるマップM1を選択する。このように、選択するマップM1が決まれば、初期ギャップG1も一義的に決まる。
【0049】
電圧算出部713は、データ選択部712で選択されたマップMに基づいて、利用者が所望する光の波長に対応する所望のギャップGに設定するための電圧Vを算出し、駆動制御信号として駆動回路6に出力する。
【0050】
〔4.測色制御装置の構成〕
測色制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この測色制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、測色制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、及び測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0051】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を被検査対象Aに出射させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、測色装置1が測色処理を行う前に、駆動回路6に駆動制御信号を出力して、検出電極551,552が接触する程度の所定電圧を静電アクチュエーター54へ印加させる。具体的に、制御回路部7の接触検出部711から入力される接触信号を検知するまで、所定電圧を徐々に大きくする旨の駆動制御信号を駆動回路6へ出力する。また、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3の制御回路部7に出力する。これにより、測色センサー3の制御回路部7は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5のミラー間ギャップを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、被検査対象Aにより反射された光の色度を算出する。
【0052】
〔5.測色装置の動作〕
次に、本実施形態における測色装置1の動作について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
測色装置1は、被検査対象Aで反射された光の色度を測定する前に、測色制御装置4の測色センサー制御部42から駆動回路6に駆動制御信号を出力して、検出電極551,552が接触する程度の所定電圧を静電アクチュエーター54に印加させる(ステップS1)。
そして、制御回路部7の接触検出部711は、検出電極551,552が接触したか否かを判定する(ステップS2)。接触検出部711が検出電極551,552の接触を検出しない場合、ステップS1に戻って、測色センサー制御部42は、駆動回路6に前に印加した所定電圧よりも大きい電圧を静電アクチュエーター54に印加させる。
一方、接触検出部711は、検出電極551,552が接触すると、接触した旨の接触信号を測色センサー制御部42に入力し、測色センサー制御部42に対して駆動回路6への駆動制御信号の出力を停止させる。
【0053】
次に、測色センサー制御部42は、駆動回路6に対して駆動制御信号の出力を停止すると、接触検出部711に対して検出電極551,552の接触時の駆動制御信号を出力し、接触検出部711は、当該駆動制御信号に基づいて、検出電極551,552の接触時の接触電圧Vを取得する(ステップS3)。
そして、データ選択部712は、記憶部72から相関データ721を読み出して、接触検出部711が取得した接触電圧V及び最小ギャップGcに基づいて、相関データ721から適切なマップMを選択する(ステップS4)。
【0054】
また、測色装置1は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色制御装置4の光源制御部41から光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を被検査対象Aに出射させる。
また、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、所望の波長の光の受光量を検出する旨の検出信号を制御回路部7に出力する。
【0055】
そして、制御部71の電圧算出部713は、選択されたマップMを参照し、検出信号に基づいて、所望の波長に対するギャップGに設定するための電圧Vを算出する(ステップS5)。そして、電圧算出部713は、算出された電圧Vに基づく駆動制御信号を駆動回路6に入力し、静電アクチュエーター54に電圧Vを印加させる。これにより、エタロン5のギャップGを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。
次に、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、被検査対象Aにより反射された光の色度を算出する(ステップS6)。
【0056】
〔6.第1実施形態の作用効果〕
(1)ギャップG及び電圧Vの関係を示すマップMを複数有する相関データ721が記憶部72に予め記憶されている。すなわち、この相関データ721は、最小ギャップGcに対する接触電圧Vが異なる複数のマップMを備えている。そして、最小ギャップGcとなる場合の接触電圧Vを取得するために検出電極55を設け、接触検出部711は、検出電極55の接触時(最小ギャップGc時)の接触電圧Vを取得している。そして、データ選択部712は、相関データ721を参照し、最小ギャップGc時の接触電圧Vに基づいて、複数のマップMから1つのマップMを選択するので、この選択されたマップMからギャップG及び電圧Vの関係を得ることができる。電圧算出部713は、選択されたマップMに基づいて、所望のギャップGに設定するための電圧Vを算出する。
従って、個々のエタロン5で初期ギャップG0のばらつきが製造工程や環境温度の変化によって生じた場合でも、最小ギャップGc時の接触電圧Vに基づいて、ギャップG及び電圧Vの関係を有するマップMを特定することができる。よって、単に検出電極55を設けるのみの簡素化な構成で、特定したマップMに基づいて、所望のギャップGを正確に設定できる。
【0057】
(2)検出電極55の互いに対向する側の面がそれぞれ球面状に形成されているので、検出電極55同士が接触した際、ギャップGの間隔に関係なく常に同じ1点で接触することとなり、接触の検出誤差が生じることなく、接触の検出精度を向上することができる。
(3)第1電極固定面511Aよりも第1基板51に近接するミラー固定面512Aに第1基板51に向けて突出する突出部512Bを設け、その先端に第1検出電極551が配置されているので、検出電極55の接触時に各電極541,542が先に接触することを確実に防止できる。さらに、突出部512Bの高さ寸法を検出電極55の接触時に各ミラー56,57が先に接触しない寸法に予め設定しておけば、各ミラー56,57の接触も確実に防止できる。
【0058】
[第2実施形態]
以下、本発明に係る第2実施形態について図6を参照して説明する。
本実施形態のエタロン5Aは、前記第1実施形態のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記第1実施形態でのエタロン5では、第1検出電極551は突出部512Bの先端に設けられ、第1検出電極551に対向配置される第2検出電極552は可動面522Aに設けられていた。これに対し、本実施形態のエタロン5Aでは、突出部512Bを形成せずに、第1検出電極551を固定ミラー56の中央に設け、第2検出電極552を可動ミラー57の中央に設けている点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
第1検出電極551及び第2検出電極552は、図6に示すように、各ミラー56,57の中央に対向配置されている。すなわち、本実施形態においても、各検出電極551,552は、平面視で可動部522の領域内に位置している。このような構成では、検出電極55が互いに接触した際のミラー間ギャップGが最小ギャップGcとなる。
【0060】
上述した第2実施形態のエタロン5Aによれば、前記第1実施形態の作用効果(1)、(2)と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、検出電極55をミラー56,57の中央に設けたことで、検出電極55が接触した際のミラー間ギャップGを最小ギャップGcとすることができる。すなわち、最小ギャップGcの値が前記第1実施形態と比べて、ミラー間のギャップを直接検出しているため、最小ギャップGcと電圧Vとに基づいてマップMを選択する精度が向上する。
【0061】
[第3実施形態]
以下、本発明に係る第3実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態のエタロン5Bは、前記第1実施形態のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記第1実施形態でのエタロン5では、第1検出電極551は突出部512Bの先端に設けられ、第1検出電極551に対向配置される第2検出電極552は可動面522Aに設けられていた。これに対し、本実施形態のエタロン5Bでは、第1検出電極551を電極形成溝511の外側に設け、第2検出電極552を第2電極固定面523Bに設けている点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
電極形成溝511の外側には、ミラー固定面512Aよりも高い位置に段差部514が形成される。この段差部514は、連結保持部523と対向して、第1検出電極551が形成される。そして、第1検出電極551を平面視で変位部521の領域内に位置させるために、連結保持部523の領域が各実施形態よりも大きく形成されている。また、第2検出電極552は、第1検出電極551と対向配置され、連結保持部523の第1基板51に対向する側の面(第2電極固定面523B)に形成される。すなわち、検出電極55は、平面視で電極541,542の外側に配置されることとなり、また、変位部521の領域内に位置している。
【0063】
上述した第3実施形態のエタロン5Bによれば、前記第1実施形態の作用効果(1)、(2)と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、検出電極55は電極541,542の外側に配置されることとなるので、検出電極55から引き出される図示しない検出電極引出部が電極541,542の引出部と干渉することなく引き回すことができ、検出電極引出部の引き回し作業を簡素化できる。
【0064】
[第4実施形態]
以下、本発明に係る第4実施形態について図8を参照して説明する。
本実施形態のエタロン5Cは、前記第1実施形態のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記エタロン5では静電アクチュエーター54により変位部521を変動させていた。これに対し、本実施形態のエタロン5Cでは圧電アクチュエーター58(ギャップ可変部)により変位部521を変動させる点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第1基板51は、前記各実施形態のように電極形成溝511が形成されておらず、第1電極固定面511Aが第1基板51の外周縁まで形成されている。
第2基板52は、前記各実施形態のように連結保持部523を形成するためのエッチング加工が施されておらず、平板状に形成されている。
そして、圧電アクチュエーター58は、第1電極固定面511Aと第2基板52の第1基板51に対向する面との間に配置されている。この圧電アクチュエーター58は、一対の電極581,582と、この電極581,582に挟持された圧電体583とを備えている。
これにより、一対の電極581,582に電圧が印加されると、圧電体583は印加された電圧を力に変換することで、伸縮するので変位部521を変動させる。
【0066】
また、本実施形態のエタロン5Bは圧電アクチュエーター58により変位部521を変動させるものであるため、本実施形態の測色装置1は、図9に示すように、前記第1実施形態の相関データ721とは異なる相関データ721Aを有する。この相関データ721Aは、以下の式(5)の関係から導かれるものである。この相関データ721Aも前記第1実施形態の相関データ721と同様に、ギャップGと電圧Vとの関係を示す複数のマップM(M1、M2、M3・・・MN)を有しており、この相関データ721Aは、最小ギャップGcに対する接触電圧V(V1,V2・・・VN)が異なる複数のマップMを有している。
具体的には、電圧Vを一対の電極581,582に印加した際に圧電体583に発生する力F3は以下の式(4)で求められ、変位部521が初期ギャップG0の位置まで戻ろうとする復元力F2は前述の式(2)で求められる。そして、これらの釣り合いの関係を示す以下の式(5)に基づいて、相関データ721Aが得られる。
【0067】
【数4】
・・・(4)
【0068】
ここで、αは、比例定数、Eは、圧電体のヤング率、dは、圧電定数、tは、圧電体の厚み寸法、Vは、電極間に印加される駆動電圧である。
【0069】
【数5】
・・・(5)
【0070】
上述した第4実施形態のエタロン5Cによれば、前記第1実施形態の作用効果(1)、(2)と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、ミラー固定面512Aよりも第1基板51に近接する第1電極固定面511Aに第1基板51に向けて突出する突出部512Bを設け、その先端に第1検出電極551が配置されているので、検出電極55の接触時に各ミラー56,57が先に接触することを確実に防止できる。また、本発明のギャップ可変部として圧電アクチュエーター58を用いることができ、可変方法の汎用性を向上できる。
【0071】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
図10は、本発明に係る前記第1実施形態の変形例を示す図である。
図10に示すように、ミラー固定面512Aが第1電極固定面511Aの中心部に形成された、例えば平面視円形状の溝部512Cの底面に形成される構成であってもよい。すなわち、このミラー固定面512Aは、第1電極固定面511Aよりも深い位置にある。そして、第1電極固定面511Aは、ミラー固定面512Aよりも第2基板52に近接して形成されている。
このような構成によれば、ミラー固定面512Aよりも第1基板51に近接する第1電極固定面511Aに第1基板51に向けて突出する突出部512Bを設け、その先端に第1検出電極551が配置されているので、検出電極55の接触時に各ミラー56,57が先に接触することを確実に防止できる。さらに、突出部512Bの高さ寸法を検出電極55の接触時に各電極541,542が先に接触しない寸法に予め設定しておけば、各電極541,542の接触も確実に防止できる。
【0072】
図11は、本発明に係る前記第2実施形態の変形例を示す図である。
図11に示すように、検出電極55をミラー56,57の端部に設ける構成であってもよい。このような構成によれば、検出電極55から引き出される検出電極引出部55Lがミラー56,57の外側から引き出せばよいので、前述の検出電極55をミラー56,57の中央に配置する場合と比べて、検出電極引出部55Lの引き回し作業を簡素化できる。
【0073】
図12は、本発明に係る前記第1実施形態及び第4実施形態の変形例を示す図である。
図12に示すように、電磁アクチュエーター59(ギャップ可変部)により変位部521を変動させてもよい。
第1基板51及び第2基板52と間には、電磁アクチュエーター59が設けられている。この電磁アクチュエーター59は、電流が通流される電磁コイル591と、電磁力により電磁コイル591に対して移動する永久磁石592とを備えている。電磁コイル591は、第1基板51の第1電極固定面511Aに設けられ、永久磁石592は、連結保持部523の第2電極固定面523Bに設けられ、電磁コイル591及び永久磁石592は対向配置されている。
これによれば、電磁コイル591に電流を通流し、永久磁石592からの磁束とこの磁束と電流との相互作用による電磁力により、永久磁石592が電磁コイル591に向けて移動するので、変位部521が変動する。
【0074】
前記各実施形態では、第1電極固定面511Aとミラー固定面512Aとの深さ位置が異なっていたが、第1電極固定面511Aとミラー固定面512Aとを同一面に形成する構成としてもよい。
前記各実施形態では、突出部512Bが第1基板51のみに形成されていたが、第2基板52にのみ形成される構成であってもよく、また、第1基板51及び第2基板52の両方に形成される構成であってもよい。
【0075】
前記各実施形態では、本発明に係る検出素子の一例として検出電極を用いたが、これに限定されるものではなく、接触したことを検出できる構成であればよく、例えば、接触した際に信号を出力する接触センサー等を用いてもよい。
前記各実施形態では、検出電極55が球面状に形成されていたが、この形状に限定されるものではなく、平面状であってもよく、接触可能な形状であれば、他の形状であってもよい。また、第1検出電極551及び第2検出電極552の両方が球面状であったが、いずれか一方の検出電極55を球面状に形成した構成であってもよい。
【0076】
前記各実施形態において、接合面513,524では、接合層53により接合されるとしたが、これに限られない。例えば、接合層53が形成されず、接合面513,524を活性化し、活性化された接合面513,524を重ね合わせて加圧することにより接合する、いわゆる常温活性化接合により接合させる構成などとしてもよく、いかなる接合方法を用いてもよい。
【0077】
前記各実施形態では、本発明の光モジュールとして、測色センサー3を例示し、光分析装置として、測色センサー3を備えた測色装置1を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いてもよく、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の光分析装置としてもよい。さらに、光分析装置は、このような光モジュールを備えた分光カメラ、分光分析器、医療機器(例えば、血糖値測定センサや内視鏡)などであってもよい。
また、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられたエタロン5により特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた光通信装置を本発明の光分析装置としてもよい。これにより、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1…測色装置(光分析装置)、3…測色センサー(光モジュール)、5…エタロン、31…受光素子(受光手段)、43…測色処理部(分析処理部)、51…第1基板、52…第2基板、54…静電アクチュエーター(ギャップ可変部)、55…検出電極(検出素子)、56…固定ミラー(第1反射膜)、57…可動ミラー(第2反射膜)、58…圧電アクチュエーター(ギャップ可変部)、59…電磁アクチュエーター(ギャップ可変部)、72…記憶部、512B…突出部、541…第1電極、542…第2電極、711…接触検出部、712…データ選択部、713…電圧算出部、721,721A…相関データ、G…ギャップ、Gc…最小ギャップ、M…マップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して出射する波長可変干渉フィルターを備えた光モジュール、及びこの光モジュールを備えた光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、所定寸法を有するギャップを介して、固定鏡及び可動鏡(一対の反射膜)が対向配置された波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1の波長可変干渉フィルターでは、ギャップを調整するために、一対の反射膜の互いに対向する面に、電極が対向配置されており、各電極に駆動電圧を印加することで、静電引力によりギャップを調整することが可能となる。これにより、波長可変干渉フィルターは、当該ギャップに応じた特定波長の光のみを透過させることが可能となる。すなわち、波長可変干渉フィルターは、入射光を一対の反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の光のみを透過させる。
【0003】
ところで、電極に駆動電圧が印加されていないときの初期ギャップが個々の波長可変干渉フィルターでばらつく場合がある。これは、製造工程によるものや、環境温度の変化により反射膜等に作用する膜応力が変化するためである。このため、各波長可変干渉フィルターの電極に同じ電圧を印加しても、各波長可変干渉フィルターでギャップが異なってしまい、所望のギャップに設定することができない。そこで、特許文献1では、個々の波長可変干渉フィルターで初期ギャップにばらつきがある場合でも所望のギャップに設定するための方法の1つとして、電極間の静電容量を測定して、この静電容量に基づいて測定したギャップと、このギャップにおける駆動電圧とに基づいて、所望のギャップに設定するための駆動電圧を算出する方法が例示されている。これにより、個々の波長可変干渉フィルターで初期ギャップにばらつきがある場合でも、所望のギャップに設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−14641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、静電容量に基づいて正確にギャップを測定するためには、配線等のノイズの影響を防止して、静電容量を正確に測定する必要がある。このため、電極面積を大きくする必要があり、この場合には基板が大型化してコストが高くなるという問題がある。または、電極間の寸法を微小にする必要があり、構造が複雑化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、簡素な構成で、かつ所望のギャップを正確に設定でき、正確な分光特性を測定可能な光モジュール、及び光分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光モジュールは、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と所定のギャップを介して対向する第2反射膜と、前記反射膜間のギャップを電圧が印加されることで可変するギャップ可変部と、前記第1基板及び前記第2基板に互いに対向配置されて、前記ギャップが可変されて最小となる最小ギャップにおいて互いに接触する一対の検出素子と、前記第1反射膜及び前記第2反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の検査対象光を受光する受光手段と、前記反射膜間のギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データが記憶された記憶部と、前記検出素子が接触したか否かを判定し、前記検出素子の接触時での前記最小ギャップにおける前記ギャップ可変部に印加している電圧である接触電圧を取得する接触検出部と、前記相関データを読み出し、前記複数のマップのうち、1つのマップを選択するデータ選択部と、選択された前記1つのマップに基づいて、所望のギャップに設定するための電圧を算出する電圧算出部とを備え、前記相関データは、前記最小ギャップに対する前記接触電圧が異なる複数の前記マップを備え、前記データ選択部は、前記接触検出部で取得した前記接触電圧を有する前記マップを選択することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データが記憶部に予め記憶されている。すなわち、この相関データは、検出素子の接触時の最小ギャップでの接触電圧が異なる複数のマップを備えている。そして、最小ギャップとなる場合の接触電圧を取得するために検出素子を設けて、接触検出部は、検出素子の接触時(最小ギャップ時)の接触電圧を取得している。そして、データ選択部は、相関データを参照し、最小ギャップ時の接触電圧に基づいて、複数のマップから1つのマップを選択するので、この選択されたマップからギャップ及び電圧の関係を得ることができる。電圧算出部は、選択されたマップに基づいて、所望のギャップに設定するための電圧を算出する。
従って、個々の波長可変干渉フィルターで初期ギャップのばらつきが製造工程や環境温度の変化によって生じた場合でも、最小ギャップ時の接触電圧に基づいて、ギャップ及び電圧の関係を有するマップを特定することができる。よって、単に検出素子を設けるのみの簡素化な構成で、特定したマップに基づいて、所望のギャップを正確に設定できる。
【0009】
本発明の光モジュールでは、前記一対の検出素子のうち少なくとも一方の検出素子は、他方の検出素子に向けて膨出した球面状に形成されていることが好ましい。
【0010】
ここで、例えば、両方の検出素子を平坦面に形成した場合において、検出素子が接触すると、面同士の接触となるため、検出素子の接触位置がギャップの間隔に応じて変化する。このため、接触の検出にタイミングのずれが生じて、接触の検出誤差が生じるおそれがある。ところが、本発明によれば、少なくとも一方の検出電極は他方の検出電極に向けて膨出した球面状に形成されているので、他方の検出電極が平坦面であった場合でも、検出電極同士が接触した際、ギャップの間隔に関係なく常に同じ1点で接触することとなり、接触の検出誤差が生じることなく、接触の検出精度を向上することができる。
【0011】
本発明の光モジュールでは、前記第1基板及び前記第2基板の互いに対向する面のいずれか一方の面に形成されて、対向する面に向けて突出する突出部を備え、前記突出部は、基板厚み方向に見る平面視において、前記第1基板と対向する可動面を有する可動部、及び前記可動部を前記第2基板の厚み方向に移動可能に保持する連結保持部で構成される変位部の領域内に形成され、前記一対の検出素子のうち一方の検出素子は、前記突出部の先端に設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、突出部の先端に検出素子が配置されているので、検出素子の接触時に反射膜及びギャップ可変部がそれぞれ先に接触しないように突出部の突出寸法を設定しておけばよく、反射膜及びギャップ可変部がそれぞれ接触することを確実に防止できる。
【0013】
本発明の光モジュールでは、前記検出素子は、前記第1反射膜及び前記第2反射膜上にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、検出素子を変位する反射膜上に直接形成したので、検出素子が接触した場合の反射膜間のギャップを最小ギャップとして測定すればよく、検出素子を突出部に設ける場合に比べて、反射膜間のギャップを直接検出しているため、最小ギャップと接触時に取得された電圧とに基づいてマップを選択する精度も向上する。
【0015】
本発明の光モジュールでは、前記ギャップ可変部は、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に前記第1電極と対向して設けられた第2電極とを備え、前記一対の検出素子は、前記第1電極及び前記第2電極の外側に設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、ギャップ可変部の各電極の外側に検出素子を設けたので、例えば、検出電極から引き出される検出電極引出部がギャップ可変部の電極の引出部と干渉することなく引き回すことができ、検出電極引出部の引き回し作業を簡素化できる。
【0017】
本発明の光分析装置は、前述の光モジュールと、前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前述の光モジュールを備えるので、精度の高い光量の測定を実施でき、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な光学特性の分析を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第1実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図4】前記第1実施形態のギャップと電圧との相関関係を示すデータ。
【図5】前記第1実施形態の測色方法を示すフローチャート。
【図6】本発明に係る第2実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図7】本発明に係る第3実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図8】本発明に係る第4実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図9】前記第4実施形態のギャップと電圧との相関関係を示すデータ。
【図10】本発明に係る変形例のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図11】本発明に係る変形例のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図12】本発明に係る変形例のエタロンの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、第1実施形態の測色装置1(光分析装置)の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する測色制御装置4とを備えている。この測色装置1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0021】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば被検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0022】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、エタロン5と、エタロン5を透過する光を受光する受光素子31(受光手段)と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する駆動回路6と、駆動回路6に制御信号を出力する制御回路部7とを備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を内部に導く図示しない入射光学レンズを備えている。エタロン5は、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光する。そして、測色センサー3は、エタロン5により分光された光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、測色制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として測色制御装置4に出力する。
【0023】
(3−1.エタロンの構成)
図2及び図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図2及び図3では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。
エタロン5は、例えば、平面視正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図2に示すように、第1基板51及び第2基板52を備え、これらの基板51,52が接合層53を介して互いに接合されて構成される。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、外周部近傍に形成される接合部が、例えば常温活性化接合やプラズマ重合膜を用いたシロキサン接合などにより、接合されることで、一体的に構成されている。
【0024】
また、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56(第1反射膜)、及び可動ミラー57(第2反射膜)が設けられる。ここで、固定ミラー56は、第1基板51の第2基板52に対向する面に固定され、可動ミラー57は、第2基板52の第1基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー56及び可動ミラー57は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。ここでのギャップGは、後述する静電アクチュエーター54(ギャップ可変部)に電圧が印加されていないときの初期ギャップG0である
さらに、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56及び可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54と、ギャップGが調整されて接触した際に検出信号を出力する一対の検出電極55(検出素子)とが設けられている。ここで、一対の検出電極55は、後述する第1検出電極551及び第2検出電極552で構成される。
【0025】
(3−1−1.第1基板の構成)
第1基板51は、厚みが例えば500μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この第1基板51には、図2に示すように、エッチングにより電極形成溝511及びミラー固定部512が形成される。
【0026】
電極形成溝511には、ミラー固定部512の外周縁から、当該電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状の第1電極固定面511Aが形成され、この第1電極固定面511Aには、第1電極541が形成される。この第1電極541は、図示しない第1電極引出部を介して駆動回路6(図1参照)に接続されている。
なお、第1電極541は、導電性を有し、後述する第2基板52の第2電極542との間で電圧を印加することで、第1電極541及び第2電極542間に静電引力を発生させることが可能なものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を用いるが、Au/Crなどの金属積層体を用いてもよい。
【0027】
ミラー固定部512は、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、第2基板52に対向する側の面にミラー固定面512Aを備えている。
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmで円形状のTiO2−SiO2系の誘電体多層膜により形成された固定ミラー56が固定されている。なお、本実施形態では、固定ミラー56として、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜のミラーを用いる例を示すが、分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAg合金単層のミラーを用いる構成としてもよい。
【0028】
さらに、ミラー固定面512Aにおいて、固定ミラー56の外側には、第2基板52に向けて突出する突出部512Bが形成され、この突出部512Bの先端に第1検出電極551が固定されている。この第1検出電極551において、後述する第2検出電極552と対向する側の面は膨出して球面状に形成されている。
また、突出部512Bは、基板厚み方向に見る平面視において、後述する変位部521の領域内に形成されており、より具体的には後述する可動部522の領域内に形成されている。突出部512Bの高さ寸法は、各検出電極551,552の接触時に、固定ミラー56及び可動ミラー57、第1電極541及び第2電極542がそれぞれ接触しないような寸法に形成されている。
【0029】
また、ミラー固定部512のミラー固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定ミラー56及び可動ミラー57の間の初期ギャップG0が450nmに設定されている。そして、図3に示すように、第1電極541及び第2電極542間に電圧を印加することにより、各検出電極551,552の接触時のギャップG(以下では、最小ギャップGcと記載)が例えば250nmになるまで可動ミラー57を変位させることが可能となっており、これにより、第1電極541及び第2電極542間の電圧を可変することで、可視光全域の波長の光を選択的に分光させて透過させることが可能となる。ここで、検出電極551,552が接触する際の電圧が本発明に係る接触電圧に相当する。
【0030】
ここで、第1基板51において、電極形成溝511及びミラー固定部512が形成されていない部分が第1基板51の接合面513となる。この接合面513には、図2及び図3に示すように、接合用の接合層53が膜状に形成されている。この接合層53には、主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜などを用いることができる。
【0031】
(3−1−2.第2基板の構成)
第2基板52は、厚みが例えば200μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この第2基板52には、例えば平面視で基板中心点を中心とした円形の変位部521が形成される。この変位部521は、図2に示すように、円柱状の可動部522と、可動部522と同軸であり可動部522を保持する連結保持部523とを備えている。
【0032】
変位部521は、第2基板52の形成素材である平板状のガラス基材をエッチングにより溝を形成することで形成される。すなわち、変位部521は、第2基板52の第1基板51に対向しない入射側面に、連結保持部523を形成するための円環状の溝部523Aをエッチング形成することで形成されている。
【0033】
可動部522は、連結保持部523よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第2基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。この可動部522の径寸法は、第1基板51のミラー固定部512の径寸法よりも大きく形成されている。
可動部522の第1基板51に対向する面には、第1基板51のミラー固定面512Aに平行な可動面522Aを備え、この可動面522Aには、固定ミラー56と同一構成の可動ミラー57が固定されている。
【0034】
さらに、可動面522Aにおいて、可動ミラー57の外側には、第1検出電極551と対向する第2検出電極552が固定されている。この第2検出電極552も第1検出電極551と同様に、第1検出電極551と対向する側の面は膨出して球面状に形成されている。
【0035】
連結保持部523は、可動部522の周囲を囲うダイヤフラムであり、厚み寸法が例えば50μmに形成されている。この連結保持部523の第1基板51に対向する第2電極固定面523Bには、リング状に形成され、第1電極541に所定の電磁ギャップを介して対向する第1電極541と同一構成の第2電極542が形成されている。この第2電極542は、図示しない第2電極引出部を介して駆動回路6(図1参照)に接続されている。
第2電極542の上面には、第1電極541及び第2電極542の間の放電等によるリークを防止するために絶縁膜543が形成されている。この絶縁膜543としては、SiO2やTEOS(TetraEthoxySilane)などを用いることができ、特に第2基板52を形成するガラス基板と同一光学特性を有するSiO2が好ましい。絶縁膜543として、SiO2を用いる場合、第1基板51及び絶縁膜543の間での光の反射等がないため、第2基板52上に第2電極542を形成した後、第2基板52の第1基板51に対向する側の面の全面に絶縁膜を形成することができる。
【0036】
ここで、第2基板52の第1基板51に対向する面において、第1基板51の接合面513と対向する領域が、第2基板52における接合面524となる。この接合面524には、第1基板51の接合面513と同様に、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた接合層53が設けられている。
【0037】
(3−2.駆動回路の構成)
駆動回路6は、エタロン5の第1電極引出部、第2電極引出部、及び制御回路部7に接続される。この駆動回路6は、制御回路部7から入力される駆動制御信号に基づいて、第1電極引出部及び第2電極引出部を介して、第1電極541及び第2電極542間に駆動電圧を印加し、変位部521を移動させる。
【0038】
(3−3.制御回路部の構成)
制御回路部7は、測色制御装置4、駆動回路6、及び検出電極55に接続され、測色センサー3の全体動作を制御する。この制御回路部7は、図1に示すように、制御部71及び記憶部72等により構成されている。
ここで、記憶部72は、例えばメモリーなどの記録媒体を備えて構成され、制御部71での処理に必要な各種プログラム及びデータを適宜読み出し可能に記憶する。このようなプログラムとして、詳しくは後述するが、例えば、制御部71にて実行され、検出電極55の接触の有無を判定し、接触時の静電アクチュエーター54に印加している電圧Vを検出する接触検出プログラムや、記憶部72に記憶された後述する相関データ721から適切なマップMを選択するデータ選択プログラムや、選択したマップMに基づいて、所望のギャップGに設定するための電圧Vを算出する電圧算出プログラム等が挙げられる。
【0039】
また、記憶部72には、図4に示すギャップGと電圧Vとの関係を示す複数のマップM(M1、M2、M3・・・MN)を有する相関データ721が記憶されている。すなわち、この相関データ721は、最小ギャップGcに対する接触電圧V(V1,V2・・・VN)が異なる複数のマップMを有しており、例えば、マップM1は、最小ギャップGcに対して、接触電圧V1の関係を有するものである。
最小ギャップGcは、検出電極55の接触時のミラー間のギャップであり、製造時に予め測定しておくことで取得できるものである。
【0040】
相関データ721は、電圧Vを静電アクチュエーター54に印加した際に第1電極541及び第2電極542間に発生する静電力F1と、静電力F1により変位した変位部521が初期ギャップG0の位置まで戻ろうとする復元力F2との釣り合いの関係から得られる。そして、相関データ721は、図4に示すように、ギャップGと電圧Vとの相関関係を示すグラフを有して、複数のマップMを含んだデータとなる。
具体的には、静電力F1は以下の式(1)で求められ、復元力F2は以下の式(2)で求められる。そして、これらの釣り合いの関係を示す以下の式(3)に基づいて、相関データ721が得られる。
【0041】
【数1】
・・・(1)
【0042】
ここで、ε0は、真空の誘電率、Vは、電極間に印加される電圧、G0は、初期ギャップである。xは、初期ギャップG0と、電圧Vが印加された際のギャップGとの差であり、x=G0−Gで求めることができる。
【0043】
【数2】
・・・(2)
【0044】
ここで、kは、バネ定数であり、xは、前述の式(1)と同様である。
【0045】
【数3】
・・・(3)
【0046】
制御部71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、記憶部72に記憶されたプログラムを実行する。すなわち、制御部71は、記憶部72に記憶されたプログラム及びデータを処理することにより、各種機能を実現する。このような制御部71は、被検査対象Aの色を測定する際には、当該プログラムを処理することにより、図1に示すように、接触検出部711と、データ選択部712と、電圧算出部713とを機能として実現する。
【0047】
接触検出部711は、検出電極55に接続され、駆動回路6により所定電圧が印加された際に、第1検出電極551及び第2検出電極552が接触したか否かを判定する。そして、接触検出部711は、第1検出電極551及び第2検出電極552が接触したと判定すると、この接触時に静電アクチュエーター54に印加していた接触電圧Vを駆動回路6から取得する。
【0048】
データ選択部712は、記憶部72から相関データ721を読み出して、接触検出部711で取得した接触電圧Vに基づいて、相関データ721のうち適切なマップMを選択する。具体的に、データ選択部712は、例えば、取得した接触電圧がV1である場合において、最小ギャップGcとなるマップM1を選択する。このように、選択するマップM1が決まれば、初期ギャップG1も一義的に決まる。
【0049】
電圧算出部713は、データ選択部712で選択されたマップMに基づいて、利用者が所望する光の波長に対応する所望のギャップGに設定するための電圧Vを算出し、駆動制御信号として駆動回路6に出力する。
【0050】
〔4.測色制御装置の構成〕
測色制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この測色制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、測色制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、及び測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0051】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を被検査対象Aに出射させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、測色装置1が測色処理を行う前に、駆動回路6に駆動制御信号を出力して、検出電極551,552が接触する程度の所定電圧を静電アクチュエーター54へ印加させる。具体的に、制御回路部7の接触検出部711から入力される接触信号を検知するまで、所定電圧を徐々に大きくする旨の駆動制御信号を駆動回路6へ出力する。また、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3の制御回路部7に出力する。これにより、測色センサー3の制御回路部7は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5のミラー間ギャップを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、被検査対象Aにより反射された光の色度を算出する。
【0052】
〔5.測色装置の動作〕
次に、本実施形態における測色装置1の動作について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
測色装置1は、被検査対象Aで反射された光の色度を測定する前に、測色制御装置4の測色センサー制御部42から駆動回路6に駆動制御信号を出力して、検出電極551,552が接触する程度の所定電圧を静電アクチュエーター54に印加させる(ステップS1)。
そして、制御回路部7の接触検出部711は、検出電極551,552が接触したか否かを判定する(ステップS2)。接触検出部711が検出電極551,552の接触を検出しない場合、ステップS1に戻って、測色センサー制御部42は、駆動回路6に前に印加した所定電圧よりも大きい電圧を静電アクチュエーター54に印加させる。
一方、接触検出部711は、検出電極551,552が接触すると、接触した旨の接触信号を測色センサー制御部42に入力し、測色センサー制御部42に対して駆動回路6への駆動制御信号の出力を停止させる。
【0053】
次に、測色センサー制御部42は、駆動回路6に対して駆動制御信号の出力を停止すると、接触検出部711に対して検出電極551,552の接触時の駆動制御信号を出力し、接触検出部711は、当該駆動制御信号に基づいて、検出電極551,552の接触時の接触電圧Vを取得する(ステップS3)。
そして、データ選択部712は、記憶部72から相関データ721を読み出して、接触検出部711が取得した接触電圧V及び最小ギャップGcに基づいて、相関データ721から適切なマップMを選択する(ステップS4)。
【0054】
また、測色装置1は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色制御装置4の光源制御部41から光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を被検査対象Aに出射させる。
また、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、所望の波長の光の受光量を検出する旨の検出信号を制御回路部7に出力する。
【0055】
そして、制御部71の電圧算出部713は、選択されたマップMを参照し、検出信号に基づいて、所望の波長に対するギャップGに設定するための電圧Vを算出する(ステップS5)。そして、電圧算出部713は、算出された電圧Vに基づく駆動制御信号を駆動回路6に入力し、静電アクチュエーター54に電圧Vを印加させる。これにより、エタロン5のギャップGを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。
次に、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、被検査対象Aにより反射された光の色度を算出する(ステップS6)。
【0056】
〔6.第1実施形態の作用効果〕
(1)ギャップG及び電圧Vの関係を示すマップMを複数有する相関データ721が記憶部72に予め記憶されている。すなわち、この相関データ721は、最小ギャップGcに対する接触電圧Vが異なる複数のマップMを備えている。そして、最小ギャップGcとなる場合の接触電圧Vを取得するために検出電極55を設け、接触検出部711は、検出電極55の接触時(最小ギャップGc時)の接触電圧Vを取得している。そして、データ選択部712は、相関データ721を参照し、最小ギャップGc時の接触電圧Vに基づいて、複数のマップMから1つのマップMを選択するので、この選択されたマップMからギャップG及び電圧Vの関係を得ることができる。電圧算出部713は、選択されたマップMに基づいて、所望のギャップGに設定するための電圧Vを算出する。
従って、個々のエタロン5で初期ギャップG0のばらつきが製造工程や環境温度の変化によって生じた場合でも、最小ギャップGc時の接触電圧Vに基づいて、ギャップG及び電圧Vの関係を有するマップMを特定することができる。よって、単に検出電極55を設けるのみの簡素化な構成で、特定したマップMに基づいて、所望のギャップGを正確に設定できる。
【0057】
(2)検出電極55の互いに対向する側の面がそれぞれ球面状に形成されているので、検出電極55同士が接触した際、ギャップGの間隔に関係なく常に同じ1点で接触することとなり、接触の検出誤差が生じることなく、接触の検出精度を向上することができる。
(3)第1電極固定面511Aよりも第1基板51に近接するミラー固定面512Aに第1基板51に向けて突出する突出部512Bを設け、その先端に第1検出電極551が配置されているので、検出電極55の接触時に各電極541,542が先に接触することを確実に防止できる。さらに、突出部512Bの高さ寸法を検出電極55の接触時に各ミラー56,57が先に接触しない寸法に予め設定しておけば、各ミラー56,57の接触も確実に防止できる。
【0058】
[第2実施形態]
以下、本発明に係る第2実施形態について図6を参照して説明する。
本実施形態のエタロン5Aは、前記第1実施形態のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記第1実施形態でのエタロン5では、第1検出電極551は突出部512Bの先端に設けられ、第1検出電極551に対向配置される第2検出電極552は可動面522Aに設けられていた。これに対し、本実施形態のエタロン5Aでは、突出部512Bを形成せずに、第1検出電極551を固定ミラー56の中央に設け、第2検出電極552を可動ミラー57の中央に設けている点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
第1検出電極551及び第2検出電極552は、図6に示すように、各ミラー56,57の中央に対向配置されている。すなわち、本実施形態においても、各検出電極551,552は、平面視で可動部522の領域内に位置している。このような構成では、検出電極55が互いに接触した際のミラー間ギャップGが最小ギャップGcとなる。
【0060】
上述した第2実施形態のエタロン5Aによれば、前記第1実施形態の作用効果(1)、(2)と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、検出電極55をミラー56,57の中央に設けたことで、検出電極55が接触した際のミラー間ギャップGを最小ギャップGcとすることができる。すなわち、最小ギャップGcの値が前記第1実施形態と比べて、ミラー間のギャップを直接検出しているため、最小ギャップGcと電圧Vとに基づいてマップMを選択する精度が向上する。
【0061】
[第3実施形態]
以下、本発明に係る第3実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態のエタロン5Bは、前記第1実施形態のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記第1実施形態でのエタロン5では、第1検出電極551は突出部512Bの先端に設けられ、第1検出電極551に対向配置される第2検出電極552は可動面522Aに設けられていた。これに対し、本実施形態のエタロン5Bでは、第1検出電極551を電極形成溝511の外側に設け、第2検出電極552を第2電極固定面523Bに設けている点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
電極形成溝511の外側には、ミラー固定面512Aよりも高い位置に段差部514が形成される。この段差部514は、連結保持部523と対向して、第1検出電極551が形成される。そして、第1検出電極551を平面視で変位部521の領域内に位置させるために、連結保持部523の領域が各実施形態よりも大きく形成されている。また、第2検出電極552は、第1検出電極551と対向配置され、連結保持部523の第1基板51に対向する側の面(第2電極固定面523B)に形成される。すなわち、検出電極55は、平面視で電極541,542の外側に配置されることとなり、また、変位部521の領域内に位置している。
【0063】
上述した第3実施形態のエタロン5Bによれば、前記第1実施形態の作用効果(1)、(2)と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、検出電極55は電極541,542の外側に配置されることとなるので、検出電極55から引き出される図示しない検出電極引出部が電極541,542の引出部と干渉することなく引き回すことができ、検出電極引出部の引き回し作業を簡素化できる。
【0064】
[第4実施形態]
以下、本発明に係る第4実施形態について図8を参照して説明する。
本実施形態のエタロン5Cは、前記第1実施形態のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記エタロン5では静電アクチュエーター54により変位部521を変動させていた。これに対し、本実施形態のエタロン5Cでは圧電アクチュエーター58(ギャップ可変部)により変位部521を変動させる点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第1基板51は、前記各実施形態のように電極形成溝511が形成されておらず、第1電極固定面511Aが第1基板51の外周縁まで形成されている。
第2基板52は、前記各実施形態のように連結保持部523を形成するためのエッチング加工が施されておらず、平板状に形成されている。
そして、圧電アクチュエーター58は、第1電極固定面511Aと第2基板52の第1基板51に対向する面との間に配置されている。この圧電アクチュエーター58は、一対の電極581,582と、この電極581,582に挟持された圧電体583とを備えている。
これにより、一対の電極581,582に電圧が印加されると、圧電体583は印加された電圧を力に変換することで、伸縮するので変位部521を変動させる。
【0066】
また、本実施形態のエタロン5Bは圧電アクチュエーター58により変位部521を変動させるものであるため、本実施形態の測色装置1は、図9に示すように、前記第1実施形態の相関データ721とは異なる相関データ721Aを有する。この相関データ721Aは、以下の式(5)の関係から導かれるものである。この相関データ721Aも前記第1実施形態の相関データ721と同様に、ギャップGと電圧Vとの関係を示す複数のマップM(M1、M2、M3・・・MN)を有しており、この相関データ721Aは、最小ギャップGcに対する接触電圧V(V1,V2・・・VN)が異なる複数のマップMを有している。
具体的には、電圧Vを一対の電極581,582に印加した際に圧電体583に発生する力F3は以下の式(4)で求められ、変位部521が初期ギャップG0の位置まで戻ろうとする復元力F2は前述の式(2)で求められる。そして、これらの釣り合いの関係を示す以下の式(5)に基づいて、相関データ721Aが得られる。
【0067】
【数4】
・・・(4)
【0068】
ここで、αは、比例定数、Eは、圧電体のヤング率、dは、圧電定数、tは、圧電体の厚み寸法、Vは、電極間に印加される駆動電圧である。
【0069】
【数5】
・・・(5)
【0070】
上述した第4実施形態のエタロン5Cによれば、前記第1実施形態の作用効果(1)、(2)と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、ミラー固定面512Aよりも第1基板51に近接する第1電極固定面511Aに第1基板51に向けて突出する突出部512Bを設け、その先端に第1検出電極551が配置されているので、検出電極55の接触時に各ミラー56,57が先に接触することを確実に防止できる。また、本発明のギャップ可変部として圧電アクチュエーター58を用いることができ、可変方法の汎用性を向上できる。
【0071】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
図10は、本発明に係る前記第1実施形態の変形例を示す図である。
図10に示すように、ミラー固定面512Aが第1電極固定面511Aの中心部に形成された、例えば平面視円形状の溝部512Cの底面に形成される構成であってもよい。すなわち、このミラー固定面512Aは、第1電極固定面511Aよりも深い位置にある。そして、第1電極固定面511Aは、ミラー固定面512Aよりも第2基板52に近接して形成されている。
このような構成によれば、ミラー固定面512Aよりも第1基板51に近接する第1電極固定面511Aに第1基板51に向けて突出する突出部512Bを設け、その先端に第1検出電極551が配置されているので、検出電極55の接触時に各ミラー56,57が先に接触することを確実に防止できる。さらに、突出部512Bの高さ寸法を検出電極55の接触時に各電極541,542が先に接触しない寸法に予め設定しておけば、各電極541,542の接触も確実に防止できる。
【0072】
図11は、本発明に係る前記第2実施形態の変形例を示す図である。
図11に示すように、検出電極55をミラー56,57の端部に設ける構成であってもよい。このような構成によれば、検出電極55から引き出される検出電極引出部55Lがミラー56,57の外側から引き出せばよいので、前述の検出電極55をミラー56,57の中央に配置する場合と比べて、検出電極引出部55Lの引き回し作業を簡素化できる。
【0073】
図12は、本発明に係る前記第1実施形態及び第4実施形態の変形例を示す図である。
図12に示すように、電磁アクチュエーター59(ギャップ可変部)により変位部521を変動させてもよい。
第1基板51及び第2基板52と間には、電磁アクチュエーター59が設けられている。この電磁アクチュエーター59は、電流が通流される電磁コイル591と、電磁力により電磁コイル591に対して移動する永久磁石592とを備えている。電磁コイル591は、第1基板51の第1電極固定面511Aに設けられ、永久磁石592は、連結保持部523の第2電極固定面523Bに設けられ、電磁コイル591及び永久磁石592は対向配置されている。
これによれば、電磁コイル591に電流を通流し、永久磁石592からの磁束とこの磁束と電流との相互作用による電磁力により、永久磁石592が電磁コイル591に向けて移動するので、変位部521が変動する。
【0074】
前記各実施形態では、第1電極固定面511Aとミラー固定面512Aとの深さ位置が異なっていたが、第1電極固定面511Aとミラー固定面512Aとを同一面に形成する構成としてもよい。
前記各実施形態では、突出部512Bが第1基板51のみに形成されていたが、第2基板52にのみ形成される構成であってもよく、また、第1基板51及び第2基板52の両方に形成される構成であってもよい。
【0075】
前記各実施形態では、本発明に係る検出素子の一例として検出電極を用いたが、これに限定されるものではなく、接触したことを検出できる構成であればよく、例えば、接触した際に信号を出力する接触センサー等を用いてもよい。
前記各実施形態では、検出電極55が球面状に形成されていたが、この形状に限定されるものではなく、平面状であってもよく、接触可能な形状であれば、他の形状であってもよい。また、第1検出電極551及び第2検出電極552の両方が球面状であったが、いずれか一方の検出電極55を球面状に形成した構成であってもよい。
【0076】
前記各実施形態において、接合面513,524では、接合層53により接合されるとしたが、これに限られない。例えば、接合層53が形成されず、接合面513,524を活性化し、活性化された接合面513,524を重ね合わせて加圧することにより接合する、いわゆる常温活性化接合により接合させる構成などとしてもよく、いかなる接合方法を用いてもよい。
【0077】
前記各実施形態では、本発明の光モジュールとして、測色センサー3を例示し、光分析装置として、測色センサー3を備えた測色装置1を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いてもよく、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の光分析装置としてもよい。さらに、光分析装置は、このような光モジュールを備えた分光カメラ、分光分析器、医療機器(例えば、血糖値測定センサや内視鏡)などであってもよい。
また、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられたエタロン5により特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた光通信装置を本発明の光分析装置としてもよい。これにより、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1…測色装置(光分析装置)、3…測色センサー(光モジュール)、5…エタロン、31…受光素子(受光手段)、43…測色処理部(分析処理部)、51…第1基板、52…第2基板、54…静電アクチュエーター(ギャップ可変部)、55…検出電極(検出素子)、56…固定ミラー(第1反射膜)、57…可動ミラー(第2反射膜)、58…圧電アクチュエーター(ギャップ可変部)、59…電磁アクチュエーター(ギャップ可変部)、72…記憶部、512B…突出部、541…第1電極、542…第2電極、711…接触検出部、712…データ選択部、713…電圧算出部、721,721A…相関データ、G…ギャップ、Gc…最小ギャップ、M…マップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と所定のギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記反射膜間のギャップを電圧が印加されることで可変するギャップ可変部と、
前記第1基板及び前記第2基板に互いに対向配置されて、前記ギャップが可変されて最小となる最小ギャップにおいて互いに接触する一対の検出素子と、
前記第1反射膜及び前記第2反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の検査対象光を受光する受光手段と、
前記反射膜間のギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データが記憶された記憶部と、
前記検出素子が接触したか否かを判定し、前記検出素子の接触時での前記最小ギャップにおける前記ギャップ可変部に印加している電圧である接触電圧を取得する接触検出部と、
前記相関データを読み出し、前記複数のマップのうち、1つのマップを選択するデータ選択部と、
選択された前記1つのマップに基づいて、所望のギャップに設定するための電圧を算出する電圧算出部とを備え、
前記相関データは、前記最小ギャップに対する前記接触電圧が異なる複数の前記マップを備え、
前記データ選択部は、前記接触検出部で取得した前記接触電圧を有する前記マップを選択する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記一対の検出素子のうち少なくとも一方の検出素子は、他方の検出素子に向けて膨出した球面状に形成されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記第1基板及び前記第2基板の互いに対向する面のいずれか一方の面に形成されて、対向する面に向けて突出する突出部を備え、
前記突出部は、
基板厚み方向に見る平面視において、前記第1基板と対向する可動面を有する可動部、及び前記可動部を前記第2基板の厚み方向に移動可能に保持する連結保持部で構成される変位部の領域内に形成され、
前記一対の検出素子のうち一方の検出素子は、前記突出部の先端に設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記検出素子は、前記第1反射膜及び前記第2反射膜上にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記ギャップ可変部は、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に前記第1電極と対向して設けられた第2電極とを備え、
前記一対の検出素子は、前記第1電極及び前記第2電極の外側に設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光モジュールと、
前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部とを備える
ことを特徴とする光分析装置。
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と所定のギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記反射膜間のギャップを電圧が印加されることで可変するギャップ可変部と、
前記第1基板及び前記第2基板に互いに対向配置されて、前記ギャップが可変されて最小となる最小ギャップにおいて互いに接触する一対の検出素子と、
前記第1反射膜及び前記第2反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の検査対象光を受光する受光手段と、
前記反射膜間のギャップ及び電圧の関係を示すマップを複数有する相関データが記憶された記憶部と、
前記検出素子が接触したか否かを判定し、前記検出素子の接触時での前記最小ギャップにおける前記ギャップ可変部に印加している電圧である接触電圧を取得する接触検出部と、
前記相関データを読み出し、前記複数のマップのうち、1つのマップを選択するデータ選択部と、
選択された前記1つのマップに基づいて、所望のギャップに設定するための電圧を算出する電圧算出部とを備え、
前記相関データは、前記最小ギャップに対する前記接触電圧が異なる複数の前記マップを備え、
前記データ選択部は、前記接触検出部で取得した前記接触電圧を有する前記マップを選択する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記一対の検出素子のうち少なくとも一方の検出素子は、他方の検出素子に向けて膨出した球面状に形成されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記第1基板及び前記第2基板の互いに対向する面のいずれか一方の面に形成されて、対向する面に向けて突出する突出部を備え、
前記突出部は、
基板厚み方向に見る平面視において、前記第1基板と対向する可動面を有する可動部、及び前記可動部を前記第2基板の厚み方向に移動可能に保持する連結保持部で構成される変位部の領域内に形成され、
前記一対の検出素子のうち一方の検出素子は、前記突出部の先端に設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記検出素子は、前記第1反射膜及び前記第2反射膜上にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記ギャップ可変部は、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に前記第1電極と対向して設けられた第2電極とを備え、
前記一対の検出素子は、前記第1電極及び前記第2電極の外側に設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光モジュールと、
前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部とを備える
ことを特徴とする光分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−88419(P2012−88419A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233339(P2010−233339)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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