説明

光モジュール

【課題】光コネクタの挿入時のフェルールとファイバスタブとの衝突によって生じる衝撃波を緩和させ、実装部品に対するダメージの発生を低減させた光モジュールを提供する。
【解決手段】光素子が搭載されたパッケージ本体部と光コネクタのフェルール41が挿入されるスリーブ部3を備えた光モジュールで、スリーブ部3内に光素子とフェルール41とを光学的に結合するファイバスタブを、スリーブ部3内で軸方向に摺動可能に配置した第1ファイバスタブ21とスリーブ部3に対して軸方向に固定配置した第2ファイバスタブ22から構成し、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22とを緩衝部材24によって軸方向に結合している。光コネクタ40の挿入による衝撃は、第1ファイバスタブ21の後退と緩衝部材24の変形によって緩和される。緩衝部材24は、例えば中空円筒状で、ブチルゴムなどから形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子等の光素子が搭載されたパッケージ本体部と光コネクタのフェルールが挿入されたスリーブ部を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光モジュールとしては、信号光を送信する光送信モジュール、信号光を受信する光受信モジュール、または、信号光の送信と受信の両方の機能を持つ光送受信モジュールがある。これらの光モジュールは、小型のプラガブル光トランシーバ等に搭載されて、高速(例えば、10Gbps)の光通信に用いられている。
【0003】
図6(A)は、例えば、特許文献1に開示されている光モジュール(光送信モジュール)の一例を示した図で、図6(B)はその内部構造の概略を示した図である。光送信モジュール1は、レーザダイオード等の発光素子が搭載されたパッケージ本体部2と、光伝送路となる光ファイバケーブルの光コネクタと光結合を形成するためのスリーブ部3とから成っている。パッケージ本体部2は、箱型の筐体4内に、光送信器を構成するレーザダイオード(LD)5、モニタ用のフォトダイオード(PD)6がキャリア部材7、8により実装されている。
【0004】
発熱源となるLD5が実装されるキャリア部材7は、電子冷却器9を介して搭載され、冷却制御のための測温素子10が実装されている。この他、キャリア部材7上には、LD5を高周波で駆動する回路素子11等が実装され、また、LD5からの信号光をコリメート光としてスリーブ部3に出射させるコリメートレンズ12が搭載されている。筐体4の外側面あるいは外端面には、外部回路の信号源や電源に接続するためのリードピン13が設けられている。
【0005】
スリーブ部3は、例えば、集光レンズ14、アイソレータ15を収納保持する結合部材16と、光コネクタのフェルールが挿入されるスリーブ部材17とで形成されている。スリーブ部材17には、フェルールが嵌入されるスリーブ18と光ファイバ素子20が埋設されたファイバスタブ19が挿着されている。ファイバスタブ19の光ファイバ素子20の内端には、LD5からの信号光が集光されて入射され、外端は光コネクタフェルールの光ファイバ端と光学的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−294808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示すように、光コネクタ40のフェルール41は、コネクタ筐体42内にバネ43により軸方向に可動で弾性的に保持されている。フェルール41が光モジュールのスリーブ部材17内に挿入されたとき、フェルール41の光ファイバ44がファイバスタブ19の端面に当接して光ファイバ素子20と物理的に接触するフィジカルコンタクト(PC)が成立するように構成されている。
【0008】
しかし、何らかの理由、例えばフェルール41とスリーブ部材17の軸ずれや挿入角度の変化等で、挿入に引っ掛かりが生じることがある。引っ掛かりが生じるとフェルール41の挿入に対する抑止力が働きスムーズな挿入が抑えられる。このため、光コネクタ40内でフェルール41を支えるバネ43が圧縮されて、フェルール41には挿入のための押込み力が増加される。
【0009】
そして、フェルール41の押込み力が抑止力より大きくなり、フェルールの挿入に対する引っ掛かりが解放されると、バネ43で付勢状態にあるフェルール41は勢い良く軸方向に飛び出し、ファイバスタブ19に衝突する。フェルール41とファイバスタブ19は、通常、ジルコニア等の硬いセラミック材で形成されているため、このフェルール41がファイバスタブ19に衝突すると、高加速度、高周波振動からなる衝撃波が発生する。この衝撃波は、20kHz〜60kHzの超音波周波数の成分をもつパルス波となる。
【0010】
図6で示したような、高出力の光モジュールでは、光パワーを効率よく集光するために2レンズ系の光学系が必要不可欠とされる。この光学系を構成するためには、同軸円筒構造のレンズ保持構造と光コネクタ用のスリーブ保持構造を必要とする。この構造に由来する構造体の固有振動数は、上記のパルス波の周波数成分とほぼ一致する場合があることが解明されている。
【0011】
このため、上記のような衝撃波の発生は、スリーブ部を伝搬してパッケージ本体部の筐体等を励振させ、内部の実装部品にダメージを与える恐れがある。例えば、フェルール41内に保持された光ファイバ44の端面、ファイバスタブ19に保持された光ファイバ素子20の端面、パッケージ本体部2内に内蔵するLD5やPD6の光素子、これら光素子のための電子・電気部品等が破損したり脱落したりする場合がある。
【0012】
このような、フェルール41の引っ掛かりをなくすために、スリーブ部材17の挿入口およびフェルール41の先端部分をテーパで形成して、挿入を滑らかにする方法があるが、引っ掛かりを完全になくすことはできない。また、実装部品の実装強度を高める方法もあるが限度がある。
【0013】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、光コネクタの挿入時のフェルールとファイバスタブとの衝突によって生じる衝撃を緩和させ、実装部品に対するダメージの発生を低減させた光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光モジュールは、光素子が搭載されたパッケージ本体部と光コネクタのフェルールが挿入されるスリーブ部を備えた光モジュールで、スリーブ部内で光素子とフェルールとを光学的に結合するファイバスタブを有し、ファイバスタブは、スリーブ部内で軸方向に摺動可能に配置された第1ファイバスタブとスリーブ部に対して軸方向に固定配置された第2ファイバスタブからなり、第1ファイバスタブと第2ファイバスタブとが緩衝部材を介して軸方向に結合されていることを特徴とする。
【0015】
この緩衝部材は中空円筒状であってよい。また、第1ファイバスタブと第2ファイバスタブとが共通の光ファイバ素子を保持しており、光ファイバ素子が第2ファイバスタブの貫通孔に沿って摺動可能に保持されていてもよい。さらに、光モジュールは緩衝部材の軸方向の変形を規制するストッパ部材を備えており、このストッパ部材が第2ファイバスタブに設けた突出部から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光モジュールによれば、光コネクタの挿入により、フェルールが第1ファイバスタブに衝突するが、第1ファイバスタブが軸方向に摺動し、第1ファイバスタブと第2ファイバスタブとの間に設けた緩衝部材を変形させるため、フェルールとファイバスタブの衝突による衝撃が緩和され、実装部品に対するダメージの発生を緩和することができる。また、第1ファイバスタブの軸方向の移動はストッパ部材によって規定されるため、第1ファイバスタブと第2ファイバスタブとに共通に保持させた光ファイバ素子が断線することがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による光モジュールのスリーブ部の一例を示す図である。
【図2】図1の光モジュールにおいて、フェルールとファイバスタブとの結合時の緩衝部材の作用について説明するための図である。
【図3】本発明における緩衝部材の一例を示す図である。
【図4】本発明による光モジュールの他の例において、フェルールとファイバスタブとの結合時の緩衝部材の作用について説明するための図である。
【図5】本発明による光モジュールのさらに他の例において、フェルールとファイバスタブとの結合時の緩衝部材の作用について説明するための図である。
【図6】従来の光モジュールの構成例を示す図である。
【図7】従来の光モジュールの解決すべき課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る光モジュールは、基本的な構造は図6で示したものと同様で、例えば、レーザダイオード等の発光素子が搭載されたパッケージ本体部2と、光伝送路となる光ファイバケーブルの光コネクタと光結合を形成するためのスリーブ部とから成っている。パッケージ本体部は、箱型の筐体内に、光送信器を構成するレーザダイオード(LD)、モニタ用のフォトダイオード(PD)等がキャリア部材により実装される。
【0019】
(実施態様1)
図1は本発明の一実施態様に係る光モジュールのスリーブ部を示す図である。スリーブ部3は、結合部材16と、光コネクタ40のフェルール41が挿入されるスリーブ部材17とで形成される。
スリーブ部材17は、スリーブ18、第1ファイバスタブ21、第2ファイバスタブ22、スリーブシェル23、緩衝部材24、光ファイバ素子25、ストッパ部材27を備えている。ここで、スリーブ18は割スリーブあるいは精密スリーブが用いられるが、後述するように第1ファイバスタブの21の光軸方向のスムーズな動きを実現するためには、精密スリーブとすることが望ましい。
【0020】
本実施態様において、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22は共通(1本)の光ファイバ素子25を保持しており、光ファイバ素子25は第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22にそれぞれ固定されている。第1ファイバスタブ21を貫通する光ファイバ素子25の外端は光コネクタ40のフェルール41の光ファイバ44端と光学的に接続される。また、第2ファイバスタブ22の中心穴を貫通する光ファイバ素子25の内端には、LDからの信号光が集光されて入射される。さらに、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22との間の光ファイバ素子25には、可撓性を持たせるために予め若干の撓みを持たせている。
【0021】
図2はフェルールとファイバスタブとの結合時における緩衝部材の作用について説明するための図である。図2(A)はフェルール41の挿入途中を示す図であるが、同図を用いて各構成部材の関係をさらに詳細に説明する。
第1ファイバスタブ21はスリーブ18内を軸方向に摺動可能に配置されており、第2ファイバスタブ22は、例えば図示しないスリーブシェルに固定されることで光モジュールに対して固定配置されている。そして、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22との間には、緩衝部材24が配設されている。
【0022】
この緩衝部材24は、図2(A)の正面図および図2(B)の断面図で示すように、第1ファイバスタブ21および第2ファイバスタブ22よりも外径が小さい中空円筒状の形状を有しているが、中空円筒状に限らず、複数の柱状の緩衝部材であってもよい。また、その材料としては、ブチル、シリコン等のゴム材料が用いられるが、衝撃による大きな力に対しては変形し、その後の押圧力に抗して形状が復帰するように材料の弾性を選定することが望ましい。
【0023】
緩衝部材24は、前後の第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22にそれぞれ接着剤で固定されている。したがって、第1ファイバスタブ21はスリーブ18内で軸方向に可動な状態で緩衝部材24によって支持されている。また、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22の間には、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22の最小間隔を規定するストッパ部材27を配置している。ストッパ部材27は、第1のファイバスタブ21に固定してもよく、第2のファイバスタブ22に固定してもよい。また、ストッパ部材27を緩衝部材24の外周側に設け、スリーブに固定してもよい。
【0024】
そして、フェルール41が図2(A)の状態からさらに挿入されると、図2(B)で示すように、フェルール41のPC面45が最初に第1ファイバスタブ21のPC面26に接触する。このとき、第1ファイバスタブ21は、フェルール41のPC面45から受ける押圧力に対して緩衝部材24の反発力で抗しており、第1ファイバスタブ21のPC面26は所定の力でフェルール41のPC面45と接触して、光ファイバ44と光ファイバ素子25との光結合が行われる。
【0025】
また、フェルール41が第1ファイバスタブ21に衝突した際には、衝撃による短時間の大きな力に抗しきれない緩衝部材24が圧縮変形して、第1ファイバスタブ21が軸方向に後退してフェルール41のPC面45を受け止める。このとき、第2ファイバスタブ22は光モジュールに対して固定されており動かないが、フェルール41のPC面45の衝突の衝撃は、第1ファイバスタブ21の後退と緩衝部材24の変形によって著しく減衰して第2ファイバスタブ22やさらには光モジュール本体側へ伝わるため、衝撃がこれらの部材へ直接伝わることがなく緩和される。
【0026】
フェルール41を付勢するバネ力によって、さらにフェルール41が挿入されると、緩衝部材24が圧縮変形されて第1ファイバスタブ21が後退する。第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22の間隔が小さくなるにしたがって、光ファイバ素子25もたわんで対応する。
【0027】
そして、図2(C)で示すように、第1ファイバスタブ21がストッパ部材27に当接したところで、第1ファイバスタブ21の動きは止まる。このように、緩衝部材24の圧縮変形に対する反発力だけでは、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22の最小間隔が規定しにくいため、ストッパ部材27を配置し、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22との間隔を規定することによって、光ファイバがたわみすぎて断線したり損失が過大になったりすることを防いでいる。
【0028】
なお、フェルール41がスリーブ18から抜かれた際は、圧縮変形されていた緩衝部材24の復元力によって、第1ファイバスタブ21を前進させるため、図2(A)に示す状態に戻る。
【0029】
(実施態様2)
図4は本発明の他の実施態様に係る光モジュールにおいて、フェルールとファイバスタブとの結合時の緩衝部材の作用について説明するための図である。
本実施態様は、図4(A)に示すように、実施態様1と同様に、第1ファイバスタブ21はスリーブ18内を軸方向に摺動可能に配置されており、第2ファイバスタブ22は、例えば図示されていないスリーブシェルに固定されることで光モジュールに対して固定配置されている。そして、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22との間には、緩衝部材24が配設されている。
【0030】
本実施態様では、ストッパ部材28は、第2ファイバスタブ22の小径部、換言すれば、第2ファイバスタブ22からの突出部で構成している。また、緩衝部材24は中空筒形状でゴム材料からなり、ストッパ部材28の外側に同心状に配置している。なお、緩衝部材24の形状は中空円筒状に限らず、複数本の円柱状のものを用いてもよいが、フェルール41の挿入完了時に、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22が接触する程度にまで形状が変化する硬度の材料を選択しておくことが望ましい。
【0031】
また、ファイバ素子25は、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22によって保持されるが、第1ファイバスタブ21の貫通孔21a内で固定(固着)される一方、ストッパ部材28を構成する突出部を含む第2ファイバスタブ22の貫通孔22a内では固定さていない。したがって、第1ファイバスタブ21の摺動に併せて光ファイバ素子25も第2ファイバスタブ22の貫通孔22aに沿って摺動する。
【0032】
そして、フェルール41が図4(A)の状態からさらに挿入されると、図4(B)で示すように、フェルール41のPC面45が第1ファイバスタブ21のPC面26に接触する。このとき、第1ファイバスタブ21は、フェルール41のPC面45から受ける押圧力に対して緩衝部材24の反発力で抗しており、第1ファイバスタブ21のPC面26は所定の力でフェルール41のPC面45と接触して、光ファイバ44と光ファイバ素子25との光結合が行われる。
【0033】
また、フェルール41が第1ファイバスタブ21に衝突した際には、衝撃による短時間の大きな力に抗しきれない緩衝部材24が圧縮変形して、第1ファイバスタブ21が軸方向に後退してフェルール41のPC面45を受け止める。このとき、第2ファイバスタブ22は光モジュールに対して固定されており動かないが、フェルール41のPC面45の衝突時の衝撃は、第1ファイバスタブ21の後退と緩衝部材24の変形によって著しく減衰して第2ファイバスタブ22やさらには光モジュール本体側へ伝わるため、衝撃がこれらの部材へ直接伝わることがなく緩和される。
【0034】
フェルール41を付勢するバネ力によって、さらにフェルール41がスリーブ18に沿って挿入されると、緩衝部材24が圧縮変形されて第1ファイバスタブ21が後退する。また、第1ファイバスタブ21の後退にともなって、第1ファイバスタブ21に固定された光ファイバ素子25も後退することになる。光ファイバ素子25は第2ファイバスタブ22に対しては摺動可能に設けられているため、光ファイバ素子25に大きなストレスがかかることはない。
【0035】
さらに、フェルール41が挿入されると、図4(C)で示すように、第1ファイバスタブ21がストッパ部材28に当接したところで、第1ファイバスタブ21の動きは止まる。このとき、緩衝部材24の圧縮変形量は最大となっている。また、光ファイバ素子25の後退距離も最大となるため、図4(C)右側の図示しない光ファイバ素子25の内端に、LDからの信号光が集光されるように光ファイバ素子25の長さが調整されている。
【0036】
なお、フェルール41がスリーブ18から抜かれた際は、圧縮変形されていた緩衝部材24の復元力によって、第1ファイバスタブ21を前進させるため、図4(A)に示す状態に戻る。
【0037】
(実施態様3)
図5は本発明のさらに他の実施態様に係る光モジュールにおいて、フェルールとファイバスタブとの結合時の緩衝部材の作用について説明するための図である。
本実施態様は、図5(A)に示すように、実施態様1、2と同様に、第1ファイバスタブ21はスリーブ18内を軸方向に摺動可能に配置されており、第2ファイバスタブ22は、例えば図示されていないスリーブシェルに固定されることで光モジュールに対して固定配置されている。そして、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22との間には、緩衝部材24が配設されている。
【0038】
また、ストッパ部材28は、第2ファイバスタブ22の小径部、換言すれば、第2ファイバスタブ22からの突出部で構成されている。第1ファイバスタブ21、第2ファイバスタブ22、ストッパ部材28、及び緩衝部材24の配置構成は、実施態様2と同様であるため、その説明は省略する。
【0039】
本実施態様では、第1ファイバスタブ21と第2ファイバスタブ22に設けたファイバ素子は共通ではなく、第1ファイバスタブ21の貫通孔21a内にファイバ素子25aを設け、ストッパ部材28を構成する突出部を含む第2ファイバスタブ22の貫通孔22a内にファイバ素子25bを設けている。また、ファイバ素子25a及びファイバ素子25bは、それぞれ第1ファイバスタブ21の貫通孔21a内およびで第2ファイバスタブ22の貫通孔22a内で固定(固着)されている。
【0040】
そして、フェルール41が図5(A)の状態からさらに挿入されると、図5(B)で示すように、フェルール41のPC面45が第1ファイバスタブ21のPC面26に接触する。このとき、第1ファイバスタブ21は、フェルール41のPC面45から受ける押圧力に対して緩衝部材24の反発力で抗しており、第1ファイバスタブ21のPC面26は所定の力でフェルール41のPC面45と接触して、光ファイバ44と光ファイバ素子25aとの光結合が行われる。
【0041】
また、フェルール41が第1ファイバスタブ21に衝突した際には、衝撃による短時間の大きな力に抗しきれない緩衝部材24が圧縮変形して、第1ファイバスタブ21が軸方向に後退してフェルール41のPC面45を受け止める。このとき、第2ファイバスタブ22は光モジュールに対して固定されており動かないが、フェルール41のPC面45の衝突時の衝撃は、第1ファイバスタブ21の後退と緩衝部材24の変形によって著しく減衰して第2ファイバスタブ22やさらには光モジュール本体側へ伝わるため、衝撃がこれらの部材へ直接伝わることがなく緩和される。
【0042】
フェルール41を付勢するバネ力によって、さらにフェルール41がスリーブ18に沿って挿入されると、緩衝部材24がさらに圧縮変形されて第1ファイバスタブ21が後退し、図4(C)で示すように、第1ファイバスタブ21のPC面29がストッパ部材28のPC面30に当接したところで、第1ファイバスタブ21の動きは止まる。
【0043】
そして、この時に、第1ファイバスタブ21に設けたファイバ素子25aと第2ファイバスタブに設けたファイバ素子25bとの光結合がなされ、その結果、光ファイバ44と光ファイバ素子25bとの光結合が行われる。
このため、緩衝部材24は、フェルール41の挿入完了時に、第1ファイバスタブ21とストッパ部材28とが接触する程度にまで形状が変化する硬度の材料を選択しておくことが望ましい。また、第1ファイバスタブ21のPC面29がストッパ部材28のPC面30に当接した際の衝撃は、第1ファイバスタブ21の動きが緩衝部材24の圧縮変形によって減速されているため、十分に減衰したものとなる。
【0044】
なお、フェルール41がスリーブ18から抜かれた際は、圧縮変形されていた緩衝部材24の復元力によって、第1ファイバスタブ21を前進させるため、図5(A)に示す状態に戻る。
【符号の説明】
【0045】
1…光モジュール、2…パッケージ本体部、3…スリーブ部、4…筐体、5…レーザダイオード(LD)、6…フォトダイオード、7、8…キャリア部材、9…電子冷却器、10…測温素子、11…回路素子、12…コリメートレンズ、13…リードピン、14…集光レンズ、15…アイソレータ、16…結合部材、17…スリーブ部材、18…スリーブ、19…ファイバスタブ、20,25…光ファイバ素子、21…第1ファイバスタブ、22…第2ファイバスタブ、23…スリーブシェル、24…緩衝部材、26,29,30,45…PC面、27,28…ストッパ部材、40…光コネクタ、41…フェルール、42…コネクタ筐体、43…バネ、44…光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子が搭載されたパッケージ本体部と光コネクタのフェルールが挿入されるスリーブ部を備えた光モジュールであって、
前記スリーブ部内で前記光素子と前記フェルールとを光学的に結合するファイバスタブを有し、該ファイバスタブは、前記スリーブ部内で軸方向に摺動可能に配置された第1ファイバスタブと前記スリーブ部に対して軸方向に固定配置された第2ファイバスタブからなり、前記第1ファイバスタブと第2ファイバスタブとが緩衝部材を介して軸方向に結合されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記緩衝部材は中空円筒状であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第1ファイバスタブと第2ファイバスタブとの軸方向の最小間隔を規定するストッパ部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記ストッパ部材が前記第2ファイバスタブに設けた突出部から構成されることを特徴とする請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第1のファイバスタブと第2のファイバスタブとが共通の光ファイバ素子を保持していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記共通の光ファイバ素子が前記第2ファイバスタブの貫通孔に沿って摺動可能に保持されていることを特徴とする請求項5に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第1のファイバスタブと第2のファイバスタブがそれぞれ個別に光ファイバ素子を有することを特徴とする請求項4に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−217706(P2010−217706A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66304(P2009−66304)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】