説明

光モジュール

【課題】光変調を制御するための高周波クロック信号を生成する回路を備えた光モジュールの小型化を実現しつつ、光モジュールからの電磁波の放射を抑制する。
【解決手段】多層プリント基板16には、接地されている複数の配線層とアンチパッドにより絶縁されている貫通ビアが形成されている。この多層プリント基板16には、同軸コネクタ18と、高周波クロック信号を生成する強度変調制御IC20と、が設置されており、多層プリント基板16上に形成されたマイクロストリップライン26aを介して高周波クロック信号が同軸コネクタ18に入力される。ここにおいて、上記複数の配線層のうちの第1の配線層と第2の配線層との間の配線層には、上記貫通ビアに接続されたオープンスタブが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器(例えば、LN変調器)による光変調(例えば、いわゆるRZ(Return to Zero)変調)を制御するための高周波クロック信号を生成する回路を備えた光送受信機などの光モジュールが知られている。特許文献1には、このような回路を備えた光送信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−82094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回路により生成された高周波クロック信号を同軸ケーブルを介して光変調器に供給する場合を想定する。この場合、光モジュールを小型化するためには、上記の回路と、同軸コネクタと、をプリント基板に設置した上で、該回路の出力端子と同軸コネクタとを信号ライン(例えば、マイクロストリップライン)で接続することが考えられる。この場合、上記同軸コネクタは、同軸ケーブルによって光変調器に接続されることとなる。
【0005】
また、信号ラインと同軸コネクタとの接続部分や信号ライン自身等から電磁波が放射されるので、光モジュールからの電磁波の放射を抑制するために、例えば、プリント基板に金属カバーを被せることが考えられる。
【0006】
しかしながら、金属カバーに覆われた上記回路などに外部から駆動電力を供給するためには、プリント基板に孔を開ける必要がある。そのため、高周波クロック信号の周波数が高い場合にはこの孔から電磁波が放射されてしまい、その結果、光モジュールからの電磁波の放射が期待するほど抑制されないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、光変調器による光変調を制御するための高周波クロック信号を生成する回路を備えた光モジュールの小型化を実現しつつ、光モジュールからの電磁波の放射を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光モジュールは、複数の接地導体層を含む多層プリント基板であって、前記複数の接地導体層のうちの第1の接地導体層と第2の接地導体層との双方とアンチパッドによって絶縁されているバイアホールが形成された多層プリント基板と、前記多層プリント基板に設置された同軸コネクタと、光変調器による光変調を制御するための高周波クロック信号を生成し、前記同軸コネクタへと出力する変調制御回路と、前記多層プリント基板上に形成された信号ラインであって、前記同軸コネクタと、前記多層プリント基板に設置された前記変調制御回路と、に接続された信号ラインと、を含み、前記バイアホールから伸びるオープンスタブが、前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層との間の層に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様では、前記オープンスタブの長さが、前記高周波クロック信号の周波数に応じた長さであってもよい。例えば、オープンスタブの長さが、前記周波数に基づいて定まる前記高周波クロック信号に対応する波長、を4分のn(nは奇数)倍した長さであてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る光送受信機の外観図である。
【図2】光送受信機の構成を示す図である。
【図3】強度変調制御部の構成を示す図である。
【図4】多層プリント基板の構造を示す図である。
【図5】強度変調制御部の断面図である。
【図6】放射される電力の算出結果を示す折れ線グラフである。
【図7】強度変調制御部の断面図である。
【図8】強度変調制御部の断面図である。
【図9】放射される電力の算出結果を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
【0012】
[光送受信機]
図1は、本発明の実施形態に係る光モジュールである光送受信機2の外観図である。同図に示すように、光送受信機には2つのブッシュ3,5が備えられ、各ブッシュには図示してない光ファイバが接続される。本実施形態の場合、ブッシュ3を介して光信号が受信され、ブッシュ5を介して光信号が送信されるようになっている。なお、ブッシュ3,5の材質は、例えば導電性ゴムである。
【0013】
図2は、光送受信機2の構成を示す図である。光送受信機2は、光信号の送信に用いる送信用モジュールを構成するデバイスと、光信号の受信に用いる受信用モジュールを構成するデバイスと、を含む。図2は、送信用モジュールを構成するデバイスを示している。
【0014】
同図に示すように、光送受信機2は、レーザ4と、位相変調器8と強度変調器10とを含む光変調器モジュール6と、位相変調制御部12と、強度変調制御部14等を含む。本実施形態の場合、強度変調制御部14を含む光送受信機2が「光モジュール」に相当する。
【0015】
レーザ4はレーザ光を出力する。そして、レーザ4から出力されたレーザ光が光変調器モジュール6により変調され、光信号として出力される。
【0016】
[光変調器モジュール]
この光送受信機2では、光変調器モジュール6により位相変調と強度変調とが行われる。例えば、光送受信機2が43Gbpsのビットレートで動作するRZ−DQPSK(Return to Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式の光送受信機である場合、RZ−DQPSK変調が行われる。
【0017】
具体的には、位相変調器8が、位相変調制御部12から供給される位相変調制御信号に従い、位相変調を行う。また、マッハツェンダ型ニオブ酸リチウム光変調器(いわゆるLN変調器)や半導体光変調器等の強度変調器である強度変調器10(光変調器)が、強度変調制御部14から供給される高周波クロック信号たる強度変調制御信号に従い、強度変調(例えば、RZ変調)を行う。すなわち、強度変調器10が、強度変調制御信号のクロック周波数で強度変調を行う。ここでは、強度変調制御信号は、正弦波信号であり、4Vpp以上の電圧振幅を有する。なお、強度変調制御信号は矩形波信号であってもよいし三角波信号であってもよい。
【0018】
ここで、強度変調器10と強度変調制御部14とは同軸ケーブルによって接続されており、強度変調制御信号は、この同軸ケーブルを介して、強度変調制御部14から強度変調器10へと供給される。また、強度変調制御信号のクロック周波数は、例えば、光送受信機2が43Gbpsのビットレートで動作するRZ−DQPSK方式の光送受信機である場合、21.5GHzである。
【0019】
なお、位相変調制御信号は、2チャネルのデータ信号(図2のデータAとデータBと)に基づき生成される。また、強度変調制御信号は、図示しないマルチプレクサICにより生成された高周波のクロック信号(図2参照)に基づいて、生成される。より詳しくは、強度変調制御部14においてこのクロック信号が増幅され、増幅されたクロック信号が上記強度変調制御信号として強度変調器10へと供給される。
【0020】
[強度変調制御部]
次に、本発明の実施形態に係る光モジュールである強度変調制御部14について説明する。
【0021】
図3は、強度変調制御部14の構成を示す図である。同図に示すように、強度変調制御部14は、多層プリント基板16、金属ケース17、同軸コネクタ18、強度変調制御IC20(変調制御回路)、及び増幅IC22等を含む。金属ケース17、同軸コネクタ18、強度変調制御IC20、及び増幅IC22は多層プリント基板16上に配置される。同軸コネクタ18はエッジマウント形式で多層プリント基板16上に配置される。また、ここでは、金属ケース17が、多層プリント基板16上に形成された表層銅箔パタン28の位置に合わせて配置されるようになっており、その結果として、同軸コネクタ18、強度変調制御IC20、及び増幅IC22は金属ケース17により覆われる。表層銅箔パタン28は、多層プリント基板16内部の、接地された配線層に接続されている。
【0022】
金属ケース17の意義については後述する。
【0023】
強度変調制御IC20の出力端子と、同軸コネクタ18の中心導体24と、は多層プリント基板16上に形成されたマイクロストリップライン26a(信号ライン)により接続される。また、強度変調制御IC20の入力端子と、増幅IC22の出力端子と、は、多層プリント基板16上に形成されたマイクロストリップライン26bにより接続される。また、増幅IC22の入力端子は、多層プリント基板16上に形成されたマイクロストリップライン26cと接続される。なお、マイクロストリップライン26a,26b,26cの代わりに、グランデッドコプレーナ導波路を用いてもよい。
【0024】
上述のクロック信号は、マイクロストリップライン26cを介して増幅IC22に入力される。このクロック信号に基づいて強度変調制御IC20が上記強度変調制御信号を生成し、この強度変調信号をマイクロストリップライン26aを介して同軸コネクタ18へと出力する。すなわち、上記クロック信号が、増幅IC22及び強度変調制御IC20とにより増幅され、強度変調制御信号として同軸コネクタ18へと出力される。強度変調制御信号は、同軸コネクタ18に接続された図示していない同軸ケーブルを介して強度変調器10へと供給されることとなる。なお、増幅IC22は、強度変調制御IC20の利得を補うものであるので、強度変調制御IC20の利得が高い場合には省略してもよい。
【0025】
ところで、マイクロストリップライン26aの代わりに、同軸ケーブル等の同軸線路を用いても中心導体24と、強度変調制御IC20と、を接続することは可能である。しかしながら、この場合、強度変調制御部14の小型化が困難になる。
【0026】
この点、中心導体24と強度変調制御IC20とをマイクロストリップラインにより接続することで、強度変調制御部14の小型化が図られている。また、強度変調制御部14の小型化を図ることで、ひいては、上記送信用モジュールや光送受信機2の小型化も図られている。
【0027】
[多層プリント基板]
次に多層プリント基板16の詳細について説明する。多層プリント基板16は、配線層である銅箔パタンを複数含む多層基板であり、各配線層の間の誘電体の材質は、例えば、FR4(Flame Retardant Type 4)である。配線層は、配線膜とも呼ばれる。
【0028】
多層プリント基板16には、層間接続を行うため貫通ビア(Through Hole Via)形式またはIVH(Interstitial Via Hole)形式のバイアホール31が複数形成されている(後述の図4参照)。本実施形態では略円筒状のバイアホール31が形成されているが、バイアホール31の形状は円筒形状に限らない。このバイアホール31により、強度変調制御部14の外部のIC等と、強度変調制御部14内部のIC等と、の接続が可能になる。例えば、このバイアホール31により、強度変調制御部14の外部に設けられた電源と、強度変調制御IC20と、の接続が可能になり、その結果として、この電源から出力される駆動電力を、強度変調制御IC20に供給することが可能になる。バイアホール31は、強度変調制御部20の外部からの電力を、強度変調制御部20内部のICに供給するための信号ラインの役割を有している。
【0029】
また、多層プリント基板16に含まれる配線層のうちの一部複数の配線層は、接地されている。本実施形態の場合、多層プリント基板16は、多層プリント基板16の上から数えて第1の配線層から第14の配線層までの14個の配線層を含み、これらのうちの5つの配線層(後述の配線層34a〜配線層34e)が接地されている。
【0030】
図4は、多層プリント基板16の構造を示す図である。配線層34cは、第7の配線層を示し、配線層34dは、第9の配線層を示す。同図に示すように、両配線層は、グラウンド・ビアと呼ばれる接地接続のためのバイアホール(例えば、グラウンド・ビア33)に接続されており、このグラウンド・ビアにより接地されている。また、図示していないが、第3の配線層である配線層34a、第5の配線層である配線層34b、及び第11の配線層である配線層34eも、グラウンド・ビアにより接地されている。
【0031】
また、同図に示すように、配線層34c、34dの各所には、アンチパッドと呼ばれる開口部30が形成されている。また、配線層34a,配線層34b、及び配線層34eの各所にも同様に、開口部30が形成されている。ここで、配線層34a〜配線層34eの銅箔パタンは、開口部30の内部にバイアホール31が形成されるように設計されるようになっている。本実施形態では、略同心円状の開口部30の半径がバイアホール31の半径よりも大きく、且つ、開口部30の中心の位置とバイアホール31の中心軸の位置とが一致するように、設計される。そのため、開口部30によってバイアホール31は配線層34a〜配線層34eと隔てられ、これらの配線層と電気的に絶縁される。このように、バイアホール31は、接地されていない。
【0032】
また、同図に示すように、バイアホール31には、該バイアホール31からの伸びるオープンスタブ32が接続されている。本実施形態の場合、各バイアホール31には、第4の配線層の銅箔パタンにより形成されたオープンスタブ32と、第6の配線層の銅箔パタンにより形成されたオープンスタブ32と、のうちの少なくとも一方が接続されている。本実施形態では、図4に示すように、扇形形状を有するオープンスタブ32を用いている。
【0033】
オープンスタブ32の意義については後述する。
【0034】
図5は、強度変調制御部14を図4に示す一点鎖線で切断したときの断面の概略を示す断面図である。上方のオープンスタブ32は、第4の配線層の銅箔パタンにより形成されたオープンスタブを示し、下方のオープンスタブ32は、第6の配線層の銅箔パタンにより形成されたオープンスタブを示している。同図からもわかるように、上方のオープンスタブ32は、第3の配線層である配線層32a(第1の接地導体層)と、第5の配線層である配線層32b(第2の接地導体層)と、の間の配線層(すなわち、第4の配線層)に設けられている。また、下方のオープンスタブ32は、第5の配線層である配線層32b(第1の接地導体層)と、第7の配線層である配線層32c(第2の接地導体層)と、の間の配線層(すなわち、第6の配線層)に設けられている。上述のように、両オープンスタブ32は、接地されている配線層32a〜32eと、開口部30により隔てられている。
【0035】
なお、ここでは、バイアホール31の半径を0.15ミリメートルとしている。また、配線層32aと上方のオープンスタブ32との距離、上方のオープンスタブ32と配線層32bとの距離、配線層32bと下方のオープンスタブ32との距離、及び下方のオープンスタブ32と配線層32cとの距離を、それぞれ0.1ミリメートルとしている。また、誘電体として比誘電率が3.96の材料を用いている。また、オープンスタブ32の長さR(図5参照)を、1.75ミリメートルとしている。
【0036】
[電磁波妨害の防止に関して]
ところで、発明者の検討によると、クロック周波数が21.5GHzと大きい場合、マイクロストリップライン26aと同軸コネクタ18との接続部分から多量の電磁波が放射されるため、電磁波妨害(いわゆるEMI)の発生を防止すべく、強度変調制御部14からの電磁波の放射を抑制する必要があることがわかっている。
【0037】
この点、この光送受信機2では、強度変調制御部14が金属ケース17で覆われているので、空気中を伝搬する電磁波の上方への放射が抑制される。また、多層プリント基板16には接地された配線層(すなわち、配線層34a〜配線層34e)が備えられているので、誘電体中を伝搬する電磁波の下方への放射が抑制される。
【0038】
そのため、金属ケース17や配線層34a〜配線層34eの存在だけで、強度変調制御部14からの電磁波の放射が十分抑制されると思われる。
【0039】
しかしながら、金属ケース17や配線層34a〜配線層34eが備えられていても、電磁波が配線層34a〜配線層34eの開口部30から下方へと放射されたり、電磁波がバイアホール31を伝搬して下方へと放射されたりしてしまう。そのため、金属ケース17や配線層34a〜配線層34eの存在だけでは、強度変調制御部14からの電磁波の放射が期待するほど抑制されない可能性がある。
【0040】
[オープンスタブの意義]
この点、この光送受信機2では、配線層34aと配線層34bとの間の配線層にオープンスタブ32が設けられているので(図5参照)、このオープンスタブ32と、配線層34aと、配線層34bと、により、「オープンスタブ32の長さRをn(nは奇数)分の4倍した長さの波長」を有する電磁波を減衰させる帯域阻止フィルタが構成されるようになっている。そのため、「オープンスタブ32の長さRをn(nは奇数)分の4倍した長さの波長」を有する電磁波が配線層34bの開口部30から下方へと放射されたり、「オープンスタブ32の長さRをn(nは奇数)分の4倍した長さの波長」を有する電磁波がバイアホール31を介して下方へと放射されたりすることが抑制される。さらに、配線層34bと配線層34cとの間の配線層にもオープンスタブ32が設けられているので(図5参照)、このオープンスタブ32と、配線層34bと、配線層34cと、によっても、上記の帯域阻止フィルタが構成されるようになっている。そのため、「オープンスタブ32の長さRをn(nは奇数)分の4倍した長さの波長」を有する電磁波が配線層34cの開口部30から下方へと放射されることも抑制されるだけでなく、「オープンスタブ32の長さRをn(nは奇数)分の4倍した長さの波長」を有する電磁波がバイアホール31を介して下方へと放射されたりすることがさらに抑制される。
【0041】
その結果、強度変調制御部14からの電磁波の放射がさらに抑制されるようになる。
【0042】
特に、この光送受信機2では、オープンスタブ32の長さRがクロック周波数(21.5GHz)に応じた長さになっている。すなわち、オープンスタブ32の長さRが、「誘電体の比誘電率(3.96)、クロック周波数、及び真空中の光速度等に基づいて算出される、クロック周波数を有する電磁波の波長λ(λは約7ミリメートル)」を4分のn(nは奇数)倍した長さになっている。より詳しくは、オープンスタブ32の長さRが、λを4分の1倍した長さである1.75ミリメートルになっている。そのため、「配線層34aと、配線層34bと、配線層34aと配線層34bとの間の配線層に設けられたオープンスタブ32(図5参照)と、で構成される帯域阻止フィルタ」の中心周波数がクロック周波数とほぼ一致するようになっている。また、「配線層34bと、配線層34cと、配線層34bと配線層34cとの間の配線層に設けられたオープンスタブ32(図5参照)と、で構成される帯域阻止フィルタ」の中心周波数もクロック周波数とほぼ一致するようになっている。
【0043】
そのため、クロック周波数を有する電磁波が配線層34bや配線層34cの開口部30から下方へと放射されたり、クロック周波数を有する電磁波がバイアホール31を介して下方へと放射されたりすることが抑制される。その結果として、強度変調制御部14からの電磁波の放射が効率よく抑制されるようになる。なお、オープンスタブ32の長さRがλを4分の1倍した長さである場合、クロック周波数が21.5GHzであるときに長さRが約1.75ミリメートル程度になるので、強度変調制御部14を小型化する上でも好適である。
【0044】
発明者は、電磁界解析を行い、オープンスタブ32を設けた場合に強度変調制御部14から放射される電力と、オープンスタブ32を設けない場合に強度変調制御部14から放射される電力と、を実際に算出した。図6は、放射される電力の算出結果を示す折れ線グラフである。菱形の点からなる折れ線は、オープンスタブ32を設けた場合の算出結果を示し、円形の点からなる折れ線は、オープンスタブ32を設けない場合の算出結果を示している。また、横軸は、クロック周波数を示し、縦軸は、強度変調制御部14から放射された電力を示している。
【0045】
図6を見てもわかるように、オープンスタブ32を設けた場合、オープンスタブ32を設けない場合に比べ、強度変調制御部14から放射される電力が低減されている。特にクロック周波数が21.5GHzである場合、強度変調制御部14から放射される電力を7.0dBも低減できている。
【0046】
以上が、本発明の実施形態に係る光モジュールの内容である。
【0047】
なお、本発明の実施形態は、上記実施形態だけに限らない。
【0048】
例えば、図5はバイアホール31にオープンスタブ32が2つ接続されている例を示しているが、接地されている2つの配線層(例えば、配線層34a〜34e)の間の配線層にオープンスタブ32が設けられているのであれば、バイアホール31にオープンスタブ32が何個接続されていてもよい。例えば、バイアホール31に1つのオープンスタブ32が接続されていてもよいし、バイアホール31に3つのオープンスタブ32が接続されていてもよい。
【0049】
図7は、バイアホール31に1つのオープンスタブ32が接続されている場合の強度変調制御部14の断面図である。同図に示すように、バイアホール31には、配線層34aと配線層34bとの間の配線層に設けられたオープンスタブ32だけが接続されている。また、図8は、バイアホール31に3つのオープンスタブ32が接続されている場合の強度変調制御部14の断面図である。同図に示すように、バイアホール31には、配線層34aと配線層34bとの間の配線層に設けられたオープンスタブ32と、配線層34bと配線層34cとの間の配線層に設けられたオープンスタブ32と、配線層34cと配線層34dとの間の配線層に設けられたオープンスタブ32とが接続されている。
【0050】
ちなみに、発明者は、電磁界解析を行い、バイアホール31に接続されるオープンスタブ32の数を変えながら、最下層の開口部30から放射される電力を算出した。図9は、放射される電力の算出結果を示す折れ線グラフである。横軸は、バイアホール31に接続されるオープンスタブ32の数を示し、縦軸は、放射された電力を示している。電磁界解析の結果、オープンスタブ32が数が多いほど、放射される電力が減少することがわかった(図9参照)。
【0051】
また、例えば、各バイアホール31に設けられるオープンスタブ32の数は、同じでなくてもよい。
【0052】
また、例えば、オープンスタブ32の形状はどのような形状であってもよい。例えば、2つの扇形を結合したような形状であってもよいし、半円形状であってもよいし、矩形形状であってもよい。
【0053】
また、例えば、金属ケース17と、強度変調制御IC20及び増幅IC22と、の間に電磁吸収体を配置してもよい。
【0054】
また、例えば、上記光送受信機2は、複数のビットレート(例えば43Gbps及び44.6Gbpsの2つのビットレート)で動作するRZ−DQPSK方式の光送受信機であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、光送受信機2が「光モジュール」であったが、以上に説明した強度変調制御部14を含む他のモジュールが「光モジュール」であってもよい。例えば、上記送信用モジュールが「光モジュール」であってもよい。また、強度変調制御部14を含む光伝送装置が「光モジュール」であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
2 光送受信機、3,5 ブッシュ、4 レーザ、6 光変調器モジュール、8 位相変調器、10 強度変調器、12 位相変調制御部、14 強度変調制御部、16 多層プリント基板、17 金属ケース、18 同軸コネクタ、20 強度変調制御IC、22 増幅IC、24 中心導体、26a,26b,26c マイクロストリップライン、28 表層銅箔パタン、30 開口部、31 バイアホール、32 オープンスタブ、33 グラウンド・ビア、34a,34b,34c,34d,34e 配線層。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接地導体層を含む多層プリント基板であって、前記複数の接地導体層のうちの第1の接地導体層と第2の接地導体層との双方とアンチパッドによって絶縁されているバイアホールが形成された多層プリント基板と、
前記多層プリント基板に設置された同軸コネクタと、
光変調器による光変調を制御するための高周波クロック信号を生成し、前記同軸コネクタへと出力する変調制御回路と、
前記多層プリント基板上に形成された信号ラインであって、前記同軸コネクタと、前記多層プリント基板に設置された前記変調制御回路と、に接続された信号ラインと、
を含み、
前記バイアホールから伸びるオープンスタブが、前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層との間の層に設けられていること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記オープンスタブの長さが、前記高周波クロック信号の周波数に応じた長さであること、
を特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記オープンスタブの長さが、前記周波数に基づいて定まる前記高周波クロック信号に対応する波長、を4分のn(nは奇数)倍した長さであること、
を特徴とする請求項2に記載の光モジュール。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159742(P2011−159742A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19362(P2010−19362)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】