説明

光モジュール

【課題】下筐体や上筐体の形状を複雑化せずにガスケット部材を配置でき、製造コストを低減することが可能な光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュールである光トランシーバ1は、光素子2,2と、光素子2,2を収容する収容部17を有する下筐体4と、下筐体4に取り付けられた上筐体5と、薄板状の金属素材から形成されると共に、下筐体4と上筐体5との隙間に配置されたガスケット部材6と、を備える。ガスケット部材6は、収容部17の外縁に配置される外縁部8と、外縁部8と一体化され、収容部17を覆うように配置された補強部9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子や受光素子等の光素子を有する光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているように、光素子と、光素子を収容する収容部を有する下筐体と、下筐体に取り付けられた上筐体と、弾力性のある樹脂材料からなる導電性ガスケット部材と、を備え、導電性ガスケット部材によって下筐体と上筐体との隙間を封止し、光モジュールの放射ノイズを抑制したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−210931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、導電性ガスケット部材を収容する溝部等を下筐体や上筐体に設ける必要があるため、下筐体や上筐体の形状が複雑化して製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、下筐体や上筐体の形状を複雑化せずにガスケット部材を配置でき、製造コストを低減することが可能な光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光モジュールは、光素子と、光素子を収容する収容部を有する下筐体と、下筐体に取り付けられた上筐体と、薄板状の金属素材から形成されると共に、下筐体と上筐体との隙間に配置されたガスケット部材と、を備え、ガスケット部材は、収容部の外縁に配置される外縁部と、外縁部と一体化され、収容部を覆うように配置された補強部とを有することを特徴とする。
【0007】
このような光モジュールにおいては、ガスケット部材が薄板状の金属素材から形成されるため、ガスケット部材の外縁部を下筐体と上筐体との隙間に配置することができ、下筐体や上筐体の形状を単純化することができる。ガスケット部材は、補強部を有するため、外縁部のみを有するのに比べ強度が高く且つ製造しやすい。以上により、下筐体、上筐体、及びガスケット部材の製造コストが低減される。
【0008】
好ましくは、補強部は略矩形状をなし、外縁部は、補強部の4辺のうち光素子に近接する3辺に対応して設けられている。この場合、ガスケット部材によって、光素子から放射されたノイズが重点的に遮蔽される。
【0009】
また、好ましくは、補強部は、上筐体に結合されている。この場合、上筐体とガスケット部材とが一体化し、ガスケット部材が無いのと同様の取り扱いが可能となるため、光モジュールの組み立てが容易になる。
【0010】
また、好ましくは、収容部に収容される電子回路基板と、電子回路基板上で発生した熱を上筐体へ導く放熱シートと、を更に備え、補強部は、孔部を有し、放熱シートは、孔部を通し上筐体に貼付されている。この場合、放熱シートを有効に活用し、部品点数を増やすことなく補強部と上筐体とが結合される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下筐体や上筐体の形状を複雑化せずにガスケット部材を配置でき、製造コストを低減することが可能な光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる光モジュールの一実施形態の全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】上筐体の下側を上に向けた斜視図である。
【図3】上筐体にガスケット部材が組み付けられた状態を示す斜視図である。
【図4】上筐体とガスケット部材とが放熱シートで結合された状態を示す斜視図である。
【図5】ガスケット部材と上筐体及び下筐体との接触状態を示す断面図である。
【図6】ガスケット部材の変形例を示す斜視図である。
【図7】ガスケット部材の他の変形例を示す断面図である。
【図8】ガスケット部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【図9】ガスケット部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【図10】ガスケット部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係わる光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明に係わる光モジュールの一実施形態の全体構成を示す分解斜視図である。本実施形態では、光モジュールを光トランシーバとして説明する。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の光トランシーバ1は、一対の光素子2,2と、電子回路基板3と、下筐体4と、上筐体5と、ガスケット部材6と、放熱シート7とを備えている。以下の説明において、光トランシーバ1の上下、前後、左右とは、一対の光素子2,2の配置されている側を前、上筐体5側を上、下筐体4側を下としたときの方向を意味するものとする。
【0016】
一対の光素子2,2の一方は、ROSA(ReceiverOptical Sub-Assembly)であり、光信号を受信する。他方は、TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)であり、電子回路基板3に実装されたドライバに駆動されて光信号を送信する。電子回路基板3は、後端部に電気コネクタ部3aを有し、電気コネクタ部3aでの電気信号の入出力と、光素子2,2での光信号の入出力とを相互に変換する。光トランシーバ1には、前側から光コネクタが接続され、その光コネクタと一対の光素子2,2との間で光の送受信が行われる。
【0017】
下筐体4は、上側に開いた収容部17を有する箱状体である。収容部17は、平面形状が略矩形状をなす凹状部であり、収容部17の前側には光素子2,2が収容され、収容部17の後側には電子回路基板3が収容される。平面視における収容部17の外縁の角部には、上筐体5を固定するためのビス穴18がそれぞれ設けられている。下筐体4は、金属材料からなる部分を含んでいる。本実施形態では、下筐体4はダイカスト品である。
【0018】
上筐体5は、下筐体4に取り付けられた蓋状部材であり、下筐体4の収容部17及びその外縁部の上側を覆う。上筐体5の平面形状は、収容部17の平面形状に対応し略矩形状をなしている。平面視における上筐体5の角部には、下筐体4のビス穴18に対応する挿通孔19がそれぞれ設けられている。図2に示されるように、上筐体5の前側には、下側に突出し、光素子2,2の位置を決める前壁13が設けられている。また、上筐体5の左側及び右側には、下側に突出し、下筐体4の収容部17と嵌合して上筐体5と下筐体4との位置を決める凸部14a,14bがそれぞれ設けられている。上筐体5は、金属材料からなる部分を含んでいる。本実施形態では、上筐体5はダイカスト品である。
【0019】
ガスケット部材6は、薄板状の金属素材から一体的に形成されている。本実施形態では、ガスケット部材6の金属素材として、例えば、鉄合金、銅合金、アルミ合金等からなる板金素材を用いている。金属素材の厚みは、下筐体4と上筐体5との間に、下筐体4及び上筐体5の加工精度に由来して生じる隙間の大きさに合わせて設定されるのが好ましく、本実施形態では20μm〜50μmの厚みに設定されている。図1に示されるように、ガスケット部材6は、下筐体4と上筐体5との隙間に配置され、電子回路基板3及び光素子2,2で発生する放射ノイズを遮蔽する。ガスケット部材6は、下筐体4の収容部17の外縁に配置される外縁部8と、外縁部8と一体化され、収容部17を覆うように配置された補強部9とを有する。
【0020】
補強部9は、収容部17の平面形状に対応し、略矩形状をなす。外縁部8は、収容部17の前側の外縁に配置される前側外縁部8aと、収容部17の左側の外縁に配置される左側外縁部8bと、収容部17の右側の外縁に配置される右側外縁部8cとを含んでいる。すなわち、外縁部8は、補強部9の4辺のうち光素子2,2に近接する3辺に対応して設けられており、光素子2,2から放射されたノイズが重点的に遮蔽される。左側外縁部8b及び右側外縁部8cには、左右方向に延びる複数のスリット16が設けられている。
【0021】
補強部9と前側外縁部8aとの間には、上筐体5の前壁13を挿通するための開口部10が設けられている。補強部9と左側外縁部8bとの間には、上筐体5の凸部14aを収容するための凹部11aが設けられている。補強部9と右側外縁部8cとの間には、上筐体5の凸部14bを収容するための凹部11bが設けられている。外縁部8の角部のうちの一部には、上筐体5の挿通孔19に対応する挿通孔12が設けられている。本実施形態では、外縁部8の前側の角部に挿通孔12がそれぞれ設けられている。
【0022】
補強部9には、一つ又は複数(本実施形態では三つ)の孔部15が設けられている。放熱シート7の上側の面は、補強部9の下側の面に貼付されると共に、孔部15を通して上筐体5の内壁面に貼付される。放熱シート7の下側の面は、例えば、電子回路基板3上に配置された電子回路素子等に貼付されており、放熱シート7は、電子回路基板3上で発生した熱を上筐体5へ導き、放熱させる。放熱シート7は、熱伝導性に優れた材料(ここではシリコーン系材料)からなる柔軟なシート状部材であり、表面に粘着性を有する。
【0023】
光トランシーバ1の組み立てに際しては、まずガスケット部材6と上筐体5とが位置を合わせて重ねられ(図3参照)、ガスケット部材6側から放熱シート7が貼付される。放熱シート7は、ガスケット部材6の補強部9に貼付されると共に、孔部15を通して上筐体5に貼付され、補強部9は上筐体5に結合される(図4参照)。これにより、上筐体5とガスケット部材6とが一体化し、ガスケット部材6が無いのと同様の取り扱いが可能となるため、光トランシーバ1の組み立てが容易になる。また、放熱シート7を有効に活用し、部品点数を増やすことなく補強部9と上筐体5とが結合される。
【0024】
上筐体5、ガスケット部材6、及び放熱シート7が一体化したユニットは、上筐体5の各挿通孔19及びガスケット部材6の各挿通孔12に挿通されたビス(不図示)を、下筐体4の各ビス穴18に締結することで下筐体4に固定される。
【0025】
図5は、ガスケット部材6と上筐体5及び下筐体4との接触状態を示す断面図である。図5(a)に示されるように、ガスケット部材6の外縁部8には、端が下方に向かうように傾斜している部分と、端が上方に向かうように傾斜している部分とが混在して形成されている。このため、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近する前に、上記端が下方に向かうように傾斜している部分は下筐体4に当接し、上記端が上方に向かうように傾斜している部分は上筐体5に当接する。すなわち、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近する前に、ガスケット部材6と下筐体4とが当接し、ガスケット部材6と上筐体5とが当接する。そして、図5(b)に示されるように、上記ビスの締結によって下筐体4と上筐体5とが最接近すると、外縁部8は上下方向に圧縮され、外縁部8及びその近傍の少なくとも一方が変形して反発力を生じる。このため、ガスケット部材6と下筐体4及び上筐体5との当接状態が保持される。以上により、ガスケット部材6と下筐体4及び上筐体5との電気的な接触が確保され、ガスケット部材6で遮蔽されたノイズが、下筐体4及び上筐体5に素早く逃がされる。なお、本実施形態では、左側外縁部8b及び右側外縁部8cにスリット16が設けられているため、左側外縁部8b及び右側外縁部8cには、上記端が下方に向かうように傾斜している部分と、上記端が上方に向かうように傾斜している部分とをより混在させやすくなっている。
【0026】
以上のように構成された光トランシーバ1においては、ガスケット部材6が薄板状の金属素材から形成されるため、ガスケット部材6の外縁部8を下筐体4と上筐体5との隙間に配置することができ、下筐体4や上筐体5の形状を単純化することができる。ガスケット部材6は、補強部9を有するため、外縁部8のみを有するのに比べ強度が高く且つ製造しやすい。以上により、下筐体4、上筐体5、及びガスケット部材6の製造コストが低減される。このように、本実施形態では、下筐体4や上筐体5の形状を複雑化せずにガスケット部材6を配置でき、光トランシーバ1の製造コストを低減することができる。
【0027】
なお、本実施形態は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1に示されるガスケット部材6を、図6に示されるようにスリット16の無いガスケット部材6に代えてもよい。
【0028】
また、ガスケット部材6と下筐体4及び上筐体5との接触状態を保つための形態は、図5に示されるものに限られず、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近する前にガスケット部材6と下筐体4及び上筐体5とが当接し、且つ下筐体4と上筐体5とが互いに最接近すると、外縁部8及びその近傍の少なくとも一方が変形するものであればよい。
【0029】
例えば、図7(a)に示されるように、左側外縁部8bと凹部11aとの間及び右側外縁部8cと凹部11bとの間に、傾斜部20a,20bをそれぞれ設け、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近する前に、下筐体4の左側壁と傾斜部20a、下筐体4の右側壁と傾斜部20b、上筐体5の凸部14aと傾斜部20a、上筐体5の凸部14bと傾斜部20b、がそれぞれ当接するようにしてもよい。この場合、図7(b)に示されるように、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近すると、傾斜部20a,20bは傾斜が急になるように変形する。
【0030】
また、図8(a)に示されるように、外縁部8を、上方から下方へ折り返すように曲げて形成し、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近する前に、外縁部8の端と下筐体4とが当接し、外縁部8の曲げの頂部と上筐体5とが当接するようにしてもよい。この場合、図8(b)に示されるように、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近すると、外縁部8は、その曲げ形状が伸びるように変形する。
【0031】
また、図9に示されるように、ガスケット部材6を平板状に形成してもよい。この場合、下筐体4と上筐体5との間の形状に合うようにガスケット部材6が変形する。また、図10に示されるように、平板状のガスケット部材6の外縁を上方に曲げ、更に下方へ折り返すように曲げて曲部21を形成てもよい。この場合、下筐体4と上筐体5との間の形状に合うようにガスケット部材6の平板部分が変形する。更に、下筐体4と上筐体5とが互いに最接近すると、曲部21は、その曲げ形状が伸びるように変形する。
【符号の説明】
【0032】
1…光トランシーバ(光モジュール)、2,2…光素子、4…下筐体、5…上筐体、6…ガスケット部材、7…放熱シート、8…外縁部、9…補強部、15…孔部、17…収容部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子と、
前記光素子を収容する収容部を有する下筐体と、
前記下筐体に取り付けられた上筐体と、
薄板状の金属素材から形成されると共に、前記下筐体と前記上筐体との隙間に配置されたガスケット部材と、を備え、
前記ガスケット部材は、前記収容部の外縁に配置される外縁部と、前記外縁部と一体化され、前記収容部を覆うように配置された補強部とを有することを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記補強部は略矩形状をなし、
前記外縁部は、前記補強部の4辺のうち前記光素子に近接する3辺に対応して設けられていることを特徴とする請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記補強部は、前記上筐体に結合されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光モジュール。
【請求項4】
前記収容部に収容される電子回路基板と、
前記電子回路基板上で発生した熱を前記上筐体へ導く放熱シートと、を更に備え、
前記補強部は、孔部を有し、
前記放熱シートは、前記孔部を通し前記上筐体に貼付されていることを特徴とする請求項3記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−59728(P2012−59728A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198176(P2010−198176)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】