説明

光モジュール

【課題】筐体の組み立てが容易な構造を有しており、筐体が外れたりがたついたりしない光モジュールを提供する。
【解決手段】下筐体5と、下筐体5を覆い下筐体5に組み付けられる上筐体4とを備え、下筐体5に底壁53と二枚の側壁とを設け、下筐体5の前側の側壁間に梁部55を架け、梁部55の下面に切り欠き部51を設け、側壁の後側に突起部を設け、突起部の上側を曲面形状とし、上筐体4には第1、第2の辺44を設け、上筐体4の前側に爪部41を設け、第1、第2の辺の後側の端部に凹部を設け、下筐体5の側壁の上側端面54aを上筐体4に、切り欠き部51を爪部41にそれぞれ当接させ、突起部を凹部に嵌め合わせることにより、筐体の組み立てが容易な構成を有しており、かつ、筐体が外れたりがたついたりしない光モジュール1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子および受光素子等の光素子を有し、光通信装置(ホスト装置)に取り付けられる光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光電子デバイス用の回転可能な上筐体が示されている。上筐体はその一端に、凹曲面を持つ爪を有している。下筐体は、上筐体の爪の凹曲面に合う凸曲面を有している。上筐体は、下筐体の凸曲面に沿って、開いた位置と閉じた位置の間で回転する。上筐体は、さらに、上筐体を下筐体に対して固定するための手段を有している。固定するための手段としては、例えば、筐体の辺に沿った突起部、下筐体に設けられた突起を収容する穴などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0203864号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、上筐体と下筐体とを固定する方法が曖昧にしか示されておらず、特に上筐体が下筐体から外れることを防ぐ方法が明らかでない。ダイカスト筐体を組み合わせて固定する方法としては、従来はネジ止め、あるいは別部品(例えば薄型板金プレス部品)を使う方法があった。しかし、このような方法では、部品コストと工数がかかる。また、このような方法には、組み立て時の検査など品質管理上の制約が存在する。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、筐体の組み立てが容易な構造を有しており、組み立てられた筐体が外れたりがたついたりすることのない光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る光モジュールは、光素子と、光素子を収容する下筐体と、下筐体を覆う板形の上筐体とを備え、上筐体が下筐体に組み付けられている光モジュールであって、下筐体は、一枚の底壁と、底壁から立ち上がり互いに対向する第1の側壁および第2の側壁と、第1の側壁から第2の側壁へ掛け渡される梁部とを有し、梁部は、下筐体において、底壁と第1の側壁および第2の側壁とに沿って延びている基準軸の方向の一端側に配置されており、梁部が有しており底壁に対向する側の面に切り欠き部が形成され、第1の側壁は、第1の突起部を有し、第1の突起部は、基準軸の他端側に設けられ、第2の側壁側に突出しており、第2の側壁は、第2の突起部を有し、第2の突起部は、基準軸の他端側に設けられ、第1の側壁側に突出しており、第1の突起部の表面は、曲面形状を成す第1の表面領域を有し、第2の突起部の表面は、曲面形状を成す第2の表面領域を有し、第1の表面領域は、第1の突起部において、底壁と逆の側に設けられ、第2の表面領域は、第2の突起部において、底壁と逆の側に設けられ、上筐体は、爪部と基準軸方向に延びる第1の辺および第2の辺とを有し、爪部は、上筐体の一端側の端部に設けられ、爪部は、上筐体の本体から、基準軸に沿って、一端側に突出しており、第1の辺の他端側の端部は、第2の辺側にくぼむ第1の凹部を有し、第2の辺の他端側の端部は、第1の辺側にくぼむ第2の凹部を有し、第1の辺は、第1の側壁上に位置し、第2の辺は、第2の側壁上に位置し、第1の側壁が有し底壁に沿って延びる端面は、上筐体に当接し、第2の側壁が有し底壁に沿って伸びる端面は、上筐体に当接し、切り欠き部は爪部に当接し、第1の突起部は第1の凹部に嵌め合わされ、第2の突起部は第2の凹部に嵌め合わされている、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、突起部の表面のうち底壁と逆の側にある領域の形状は曲面形状であるため、上筐体を下筐体に組み付ける時に上筐体を下筐体に押し込むと、2つの突起部の間隔が押し広げられ、その後、突起部の間隔が元に戻るのと同時に突起部が凹部に入る。このため、上筐体を下筐体に組み付けるために、特にネジ止めをしたり別部品を使ったりする必要がなく、筐体の組み立てが容易となる。また、上筐体が下筐体に組み付けられた状態において、下筐体の第1、第2の側壁が有する底壁に沿って延びる端面は上筐体に当接し、切り欠き部は爪部に当接し、突起部は凹部に当接するため、組み立てられた筐体が外れたりがたついたりすることがなくなる。
【0008】
また、上筐体は、第1の凹部に接続しており底壁側に延びている第1の壁部と、第2の凹部に接続しており底壁側に延びている第2の壁部とを有し、第1の壁部は、第1の凹部から底壁に向かうにつれて、第2の辺側に傾斜しており、第2の壁部は、第2の凹部から底壁に向かうにつれて、第1の辺側に傾斜していることが好ましい。これによれば、第1の凹部に接続する第1の壁部は底壁に向かうにつれて第2の辺側に傾斜しており、第2の凹部に接続する第2の壁部は底壁に向かうにつれて第1の辺側に傾斜しているため、組み立て時に上筐体を下筐体に押し込むときに、下筐体の第1の突起部と第2の突起部との間隔を、第1、第2の壁部の傾斜によって一層スムーズに広げることができる。したがって、上筐体を下筐体に組み付ける工程が一層容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体の組み立てが容易な構造を有しており、組み立てられた筐体が外れたりがたついたりすることのない光モジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る光モジュールを示す図である。
【図2】図1の光モジュールを分解して示す上方斜視図である。
【図3】図1の光モジュールを分解して示す下方斜視図である。
【図4】図1の光モジュールの側面を一部破断して示す図である。
【図5】図1の光モジュールの組み立て過程を示す図である。
【図6】図1の光モジュールの組み立て過程を示す図である。
【図7】図1の光モジュールの組み立て過程を示す図である。
【図8】図1の光モジュールを長手方向に切断して示す断面図である。
【図9】図1の光モジュールの後方部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る光モジュールを示す図である。図2は、図1に示した光モジュールを分解して示す上方斜視図である。図3は、図1に示した光モジュールを分解して示す下方斜視図である。光モジュール1は、ホスト装置(不図示)に取り付けられ、光通信に用いられるモジュールである。図1に示されるように、光モジュール1は、本体部2およびシールド部材3を備えている。
【0013】
図2および図3に示されるように、本体部2は、上筐体4と、下筐体5と、受光素子6(光素子)と、発光素子7(光素子)と、回路基板8と、基板ホルダ9と、放熱シート11と、前方シールド部材12と、アクチュエータ13と、ベール14と、を備えている。以下の説明において、光モジュール1の上下、前後、左右とは、上筐体4側を上、下筐体5側を下、受光素子6および発光素子7が配置されている側を前としたときの方位を意味するものとする。
【0014】
上筐体4および下筐体5は、前後方向に長尺な筐体であって、その内部に受光素子6、発光素子7、回路基板8、基板ホルダ9および放熱シート11を保持するための筐体である。上筐体4および下筐体5の材質は、例えば亜鉛などの金属である。上筐体4は、板形の筐体であって、下筐体5に組み付けられて下筐体5の上部を覆う蓋として機能する。また、下筐体5は、受光素子6と発光素子7とを収容する筐体であって、底壁および側壁として機能する。また、上筐体4および下筐体5は、本体部2の内部で生ずる電磁ノイズが本体部2の外部へ漏洩するのを遮蔽するための部材としても機能する。ここで、上筐体4と下筐体5との組み付け時にがたつきが生じた場合、上筐体4と下筐体5との間に隙間ができる。この上筐体4と下筐体5との間の隙間からは電磁ノイズが漏洩する。電磁ノイズが漏洩すると、光モジュール1の特性劣化につながる。そこで、上筐体4と下筐体5とはがたつきを生じないように組み付けられることが必要である。
【0015】
受光素子6は、光モジュール1の外部から光ファイバを介して受信した光信号を電気信号に変換するための素子である。受光素子6と回路基板8とは、所定形状のコネクタによって互いに接続されている。受光素子6によって変換された電気信号は、コネクタを介して回路基板8に伝送される。
【0016】
発光素子7は、回路基板8から受信した電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を光ファイバを介して光モジュール1の外部へ送信する素子である。発光素子7は、遠方に光信号を伝送するために、比較的大電流で駆動される。このため、発光素子7は、動作時には大きな熱を発生する。発光素子7と回路基板8とは、所定形状のコネクタによって互いに接続されている。回路基板8からの電気信号は、コネクタを介して発光素子7に伝送される。なお、受光素子6および発光素子7は、下筐体5の前側(一端側(図中の符号E1側))に左右方向に並んで収容されている。
【0017】
回路基板8は、本実施形態においては、上基板8Aおよび下基板8Bの2枚のプリント基板から構成される。これらの上基板8Aおよび下基板8Bには、複数の回路部品が実装されている。上基板8Aおよび下基板8Bでは、受光素子6から受信した信号に対して所定の処理が行われ、この処理された信号が電気信号として光モジュール1の外部に伝送される。また、上基板8Aおよび下基板8Bでは、光モジュール1の外部から伝送されてきた電気信号に対して所定の処理が行われ、この処理された信号が発光素子7に送信される。上基板8Aと下基板8Bとは、フレキシブルケーブルにより互いに電気的に接続されている。
【0018】
基板ホルダ9は、上基板8Aと下基板8Bとを相互に固定するための部材である。基板ホルダ9は、上基板8Aと下基板8Bとの間に配置される。なお、上基板8Aおよび下基板8Bに搭載される回路部品を1枚のプリント基板にまとめることも可能である。この場合には基板ホルダ9は不要である。
【0019】
放熱シート11は、受光素子6、発光素子7および回路基板8が発する熱を上筐体4および下筐体5に逃がすためのシートである。放熱シート11は、例えば発光素子7の上面および下面、下基板8Bの下面など、発熱量の大きい部品に接する場所に適宜設けられる。
【0020】
ここで、図4を用いて、放熱シート11についてより詳細に説明する。図4は、光モジュール1の側面を一部破断して示す図である。熱を上筐体4および下筐体5に効率良く逃がすために、放熱シート11は、筐体(上筐体4および下筐体5)と部品(発光素子7)との両方に密着する必要がある。一方、筐体と部品との間隔は、製造公差によって個体ごとに異なる。具体的には、筐体と部品との間隔の設計寸法が1.0mm程度であるのに対し、製造公差により、この間隔が最大の個体と最小の個体との間で0.4mm程度の差が生じる。この製造公差に対応するため、放熱シート11は、筐体と部品との間隔が最大となる個体においても筐体と部品とを密着させることができる程度の十分な厚さを有する。一方、放熱シート11は、筐体と部品との間隔が最小となる個体においても、その間隔内に収まるように十分に圧縮され得る。すなわち、放熱シート11は、その弾性によって、筐体と部品との間隔の製造公差を吸収する。したがって、放熱シート11の材質としては、例えばシリコ−ンゴムなどの弾性体が用いられる。なお、放熱シート11は、筐体と部品との間で圧縮されることによって、反発力を生じる。この反発力は上筐体4を上側の方向に押す力として作用する。
【0021】
図2および図3に戻り、説明を続ける。前方シールド部材12は、本体部2の内部で発生される電磁ノイズが外部に放射されるのを防ぐための部材である。アクチュエータ13およびベール14は、ケージ(不図示)への光モジュール1の係合時および脱着時に用いられる部材である。アクチュエータ13およびベール14は、下筐体5の前端に取り付けられる。アクチュエータ13は、その後端側にケージとの係合に用いられる係合突起を有している。光モジュール1をケージへ挿入すると、この係合突起がケージの凹部に係止される。ベール14は、左右方向を軸として回動可能に設けられている。光モジュール1をケージから取り外すときには、ベール14を回動操作することにより、アクチュエータ13に設けられた係合突起を動かして係止状態を解除する。係止状態が解除されると、光モジュール1をケージから取り外すことができる。
【0022】
続いて、上述した上筐体4についてさらに詳細に説明する。図5の(a)部は、上筐体4および下筐体5を示す図である。上筐体4は、爪部41と、基準軸AX1方向に延びる第1の辺44−1および第2の辺44−2とを有している。なお、基準軸AX1は、底壁53、第1の側壁54−1および第2の側壁54−2に沿って延びている。
【0023】
爪部41は、上筐体4の基準軸AX1方向の一端側の端部に設けられている。ここで、基準軸AX1方向の一端側とは、前側(図中の符号E1側)をいう。爪部41は、上筐体4の本体から、基準軸AX1に沿って、一端側に突出している。本実施形態では爪部41の個数は2個としている。しかし、爪部41は、少なくとも1個あればよい。爪部41の形状は、前端に向かうにつれて、やや上に上がるように形成される。また、爪部41は、上筐体4から前側に突出して先端に達するまでの間の途中部分の厚さを、他の部分よりも薄くされている。
【0024】
第1の凹部42−1は、第1の辺44−1の基準軸AX1方向の他端側(図中の符号E2側)、つまり後側の端部に形成される。第2の凹部42−2は、第2の辺44−2の基準軸AX1方向の他端側、つまり後側の端部に形成される。第1の凹部42−1の大きさは、第1の突起部52−1を収容できる程度の大きさである。第2の凹部42−2の大きさは、第2の突起部52−2を収容できる程度の大きさである。
【0025】
上筐体4の後側をより詳細に説明する(さらに図9を参照)。上筐体4は、第1の壁部43−1と第2の壁部43−2とを有している。第1の壁部43−1は、第1の凹部42−1に接続しており、底壁53側に延びている。第1の壁部43−1は、第1の凹部42−1から底壁53に向かうにつれて、第2の辺44−2側に傾斜している。第2の壁部43−2は、第2の凹部42−2に接続しており、底壁53側に延びている。第2の壁部43−2は、第2の凹部42−2から底壁53に向かうにつれて、第1の辺44−1側に傾斜している。
【0026】
第1の辺44−1および第2の辺44−2は、上筐体4において、基準軸AX1方向に延びる辺として設けられる。第1の辺44−1の他端側、つまり後側の端部は第1の凹部42−1を有しており、第2の辺44−1の他端側の端部は、第2の凹部42−2を有している。第1の辺44−1は、第1の側壁54−1上に位置し、第2の辺44−2は、第2の側壁54−2上に位置する。
【0027】
張出部45は、上筐体4の後側の端部において、下筐体5に対向する側の面から下筐体5に向けて張り出した部分である。張出部45が下筐体5の第1の側壁54−1と第2の側壁54−2とによって挟み込まれることにより、上筐体4が下筐体5に対して左右方向に動くことが制限される。
【0028】
続いて、上述した下筐体5についてさらに詳細に説明する。下筐体5は、一枚の底壁53と、底壁53から立ち上がり互いに対向する第1の側壁54−1および第2の側壁54−2と、第1の側壁54−1から第2の側壁54−2へ架け渡される梁部55とを有している。梁部55は、下筐体5において、基準軸AX1の方向の一端側に配置されている。この梁部55が有しており底壁53に対向する側の面、すなわち梁部55の下側の面に切り欠き部51が形成されている。切り欠き部51の幅は、爪部41の幅とほぼ等しくし、かつ、爪部41が切り欠き部51にはまり込むことが可能となるように定められる。また、切り欠き部51は爪部41に当接する。
【0029】
第1の側壁54−1は、第1の突起部52−1を有している。第1の突起部52−1は、基準軸AX1の他端側に設けられ、第2の側壁54−2側に突出している。また、図9に示すように、第1の突起部52−1の表面は、曲面形状を成す第1の表面領域52a−1を有している。第1の表面領域52a−1は、第1の突起部52−1において、底壁53と逆の側、つまり上側に設けられている。第1の突起部52−1は第1の凹部42−1に嵌め合わされる。
【0030】
第2の側壁54−2は、第2の突起部52−2を有している。第2の突起部52−2は、基準軸AX1の他端側に設けられ、第1の側壁54−1側に突出している。また、図9に示すように、第2の突起部52−2の表面は、曲面形状を成す第2の表面領域52a−2を有している。第2の表面領域52a−2は、第2の突起部52−2において、底壁53と逆の側、つまり上側に設けられている。第2の突起部52−2は第2の凹部42−2に嵌め合わされる。
【0031】
下筐体5の第1の側壁54−1および第2の側壁54−2が有する底壁53に沿って延びる端面54aは、上筐体4に当接する。
【0032】
続いて、光モジュール1の組み立て方について説明する。図5、図6および図7は、光モジュール1の組み立て工程を示す図である。まず、図5の(a)部のように、下筐体5に受光素子6、発光素子7、回路基板8、基板ホルダ9と放熱シート11とを収容し、また、下筐体5にアクチュエータ13とベール14とを組み付ける。次に、図5の(b)部のように、爪部41を切り欠き部51に差し込む。次に、爪部41と切り欠き部51との当接する辺を軸として上筐体4を矢印D1の向きに回転させ、上筐体4を下筐体5側に近づける。
【0033】
図6の(a)部は、上筐体4を下筐体5に近づけて、上筐体4の後端にある第1の壁部43−1が第1の突起部52−1に、第2の壁部43−2が第2の突起部52−2にそれぞれ接する直前の状態を示している。この状態からさらに上筐体4を下筐体5に近づけて、第1の壁部43−1が第1の突起部52−1に、第2の壁部43−2が第2の突起部52−2にそれぞれ接した後、上筐体4を矢印D2の向きに押して、下筐体5側へ押し込む。すると、第1の突起部52−1の上側の第1の表面領域52a−1と第2の突起部52−2の上側の第2の表面領域52a−2とが曲面形状を有していること、および、第1の壁部43−1が底壁に向かうにつれて第2の辺44−2側に傾斜しており、第2の壁部43−2が底壁に向かうにつれて第1の辺44−1側に傾斜していることから、下筐体5の後端部には、第1の壁部43−1が第1の突起部52−1を左へ、第2の壁部43−2が第2の突起部52−2を右に押すことによって、下筐体5には、第1の突起部52−1と第2の突起部52−2との間隔を押し広げようとする力F1が働く。
【0034】
図6の(b)部は、上筐体4を下筐体5に押し込み終えた後の状態を示している。上筐体4を下筐体5に押し込み終えると、下筐体5の後端部に、下筐体5の持つ弾性によって復元力F2が働き、第1の突起部52−1と第2の突起部52−2との間隔はほぼ元に戻る。このとき、第1の突起部52−1は第1の凹部42−1に収容され、第2の突起部52−2は第2の凹部42−2に収容される。ここまでで上筐体4と下筐体5の組み付けが終了する。この状態において、第1の側壁54−1が有し底壁53に沿って延びる第1の端面54a−1は、上筐体4に当接し、第2の側壁54−2が有し底壁53に沿って延びる第2の端面54a−2は、上筐体4に当接する。また、切り欠き部51は爪部41に当接し、第1の突起部52−1は第1の凹部42−1に嵌め合わされ、第2の突起部52−2は第2の凹部42−2に嵌め合わされる。
【0035】
次に、図7の(a)部のように、本体部2の後方からシールド部材3を本体部2に嵌め合わせる。シールド部材3と本体部2とは、シールド部材3に設けられた穴と本体部2に設けられた突起などにより、所定の位置に位置決めされる。このようにして、図7の(b)部のように光モジュール1が完成する。
【0036】
続いて、光モジュール1の作用効果について説明する。光モジュール1の組み立ては、下筐体5に受光素子6、発光素子7、回路基板8、基板ホルダ9および放熱シート11を収容し、また、下筐体5にアクチュエータ13とベール14とを組み付け、爪部41を切り欠き部51に差し込み、爪部41と切り欠き部51との当接する辺を軸として上筐体4を回転させ、上筐体4を下筐体5側に近づけ、上筐体4を下筐体5側へ上から押し込むという工程によってなされる。したがって、上筐体4を下筐体5に組み付けるために、特にネジ止めをしたり別部品を使ったりする必要がなく、筐体の組み立てが容易である。さらに、第1の壁部43−1は、底壁に向かうにつれて第2の辺44−2側に傾斜しており、第2の壁部43−2は、底壁に向かうにつれて第1の辺44−1側に傾斜している。したがって、組み立て時に上筐体4を下筐体5に押し込むときに、下筐体5の第1の突起部52−1が第1の壁部43−1に当たるとともに第2の突起部52−2が第2の壁部43−2に当たることにより、下筐体5の第1の突起部52−1と第2の突起部52−2の間隔をよりスムーズに広げることができるので、上筐体4を下筐体5に組み付ける工程が一層容易になる。
【0037】
図8の(a)部は、図5の(b)部をI−I線に沿って切断して示す断面図であり、爪部41を切り欠き部51に差し込んだ状態を示す図である。図8の(b)部は、図6の(a)部をII−II線に沿って切断して示す断面図であり、爪部41と切り欠き部51との当接する辺を軸に上筐体4を回転させて、上筐体4を下筐体5に近づけた状態を示す図である。図8の(c)部は、図8の(b)部のうち、破線によって囲まれた領域Aを拡大して示す図である。爪部41の先端はやや上に向いており、その上端が梁部55の下面と接している。したがって、上筐体4が下筐体5に組み付けられた状態においては、梁部55は爪部41に対して下向きの力をかける。また、第1の突起部52−1は第1の凹部42−1に対して下向きの力をかけ、第2の突起部52−2は第2の凹部42−2に対して下向きの力をかける。したがって、上筐体4は、前部の爪部41と後部の第1の凹部42−1および第2の凹部42−2とのそれぞれの箇所において、下筐体5から下向きの力を受ける。また、上筐体4は、下筐体5の第1の側壁54−1の上側の端面54a−1および第2の側壁54−2の上端の端面54a−2によって上向きの力を受ける。さらに、上筐体4は、発光素子7や回路基板8の上面にある放熱シート11によって上向きの力を受ける。したがって、上筐体4は、上向きの力と下向きの力との両方を受けており、図9に矢印D3で示す上下方向にがたつくことがない。なお、爪部41は、上筐体4から前側に突出して先端に達するまでの間の途中部分の厚さを、他の部分よりも薄くされているため、爪部41が梁部55から下向きの力を受けても、下向きの力を、爪部41内のうち、厚さを薄くされている部分で吸収できる。このため、下向きの力が上筐体4全体を変形させてしまうことが避けられる。
【0038】
さらに、第1の突起部52−1が第1の凹部42−1に、第2の突起部52−2が第2の凹部42−2にそれぞれ嵌め合わされ、第1の凹部42−1が第1の突起部52−1によって、第2の凹部42−2が第2の突起部52−2によって、それぞれ前後方向に動くことを制限されるため、上筐体4が図9に矢印D4で示す前後方向にがたつくこともない。そして、上筐体4の下面から下方へ張り出した張出部45が、下筐体5の側壁54によって挟み込まれるため、図9に矢印D5で示す左右方向への動きも制限される。以上のようにして、下筐体5に組み付けられた上筐体4は、外れたりがたついたりすることがなくなる。
【0039】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0040】
1…光モジュール、2…本体部、3…シールド部材、4…上筐体、5…下筐体、6…受光素子(光素子)、7…発光素子(光素子)、8…回路基板、9…基板ホルダ、11…放熱シート、12…前方シールド部材、13…アクチュエータ、14…ベール、41…爪部、42−1…第1の凹部、42−2…第2の凹部、43−1…第1の壁部、43−2…第2の壁部、44−1…第1の辺、44−2…第2の辺、51…切り欠き部、52−1…第1の突起部、52−2…第2の突起部、53…底壁、54−1…第1の側壁、54−2…第2の側壁、55…梁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子と、
前記光素子を収容する下筐体と、
前記下筐体を覆う板形の上筐体とを備え、
前記上筐体が前記下筐体に組み付けられている光モジュールであって、
前記下筐体は、一枚の底壁と、該底壁から立ち上がり互いに対向する第1の側壁および第2の側壁と、前記第1の側壁から前記第2の側壁へ架け渡される梁部とを有し、
前記梁部は、前記下筐体において、前記底壁と前記第1の側壁および前記第2の側壁とに沿って延びている基準軸の方向の一端側に配置されており、
前記梁部が有しており前記底壁に対向する側の面に切り欠き部が形成され、
前記第1の側壁は、第1の突起部を有し、
前記第1の突起部は、前記基準軸の他端側に設けられ、前記第2の側壁側に突出しており、
前記第2の側壁は、第2の突起部を有し、
前記第2の突起部は、前記基準軸の他端側に設けられ、前記第1の側壁側に突出しており、
前記第1の突起部の表面は、曲面形状を成す第1の表面領域を有し、
前記第2の突起部の表面は、曲面形状を成す第2の表面領域を有し、
前記第1の表面領域は、前記第1の突起部において、前記底壁と逆の側に設けられ、
前記第2の表面領域は、前記第2の突起部において、前記底壁と逆の側に設けられ、
前記上筐体は、爪部と前記基準軸の方向に延びる第1の辺および第2の辺とを有し、
前記爪部は、前記上筐体の前記一端側の端部に設けられ、
前記爪部は、前記上筐体の本体から、前記基準軸に沿って、前記一端側に突出しており、
前記第1の辺の前記他端側の端部は、前記第2の辺側にくぼむ第1の凹部を有し、
前記第2の辺の前記他端側の端部は、前記第1の辺側にくぼむ第2の凹部を有し、
前記第1の辺は、前記第1の側壁上に位置し、
前記第2の辺は、前記第2の側壁上に位置し、
前記第1の側壁が有し前記底壁に沿って延びる端面は、前記上筐体に当接し、
前記第2の側壁が有し前記底壁に沿って伸びる端面は、前記上筐体に当接し、
前記切り欠き部は前記爪部に当接し、
前記第1の突起部は前記第1の凹部に嵌め合わされ、
前記第2の突起部は前記第2の凹部に嵌め合わされている、ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記上筐体は、前記第1の凹部に接続しており前記底壁側に延びている第1の壁部と、前記第2の凹部に接続しており前記底壁側に延びている第2の壁部とを有し、
前記第1の壁部は、前記第1の凹部から前記底壁に向かうにつれて、前記第2の辺側に傾斜しており、
前記第2の壁部は、前記第2の凹部から前記底壁に向かうにつれて、前記第1の辺側に傾斜している、ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29539(P2013−29539A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163467(P2011−163467)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】