光レセプタクル
【課題】本発明の態様は、圧入時にばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる光レセプタクルを提供するものである。
【解決手段】スタブを保持するブッシュと、前記ブッシュが圧入される孔部を有したハウジングと、を備えた光レセプタクルであって、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、圧入部と、凹部と、が軸方向に交互に設けられたことを特徴とする光レセプタクルが提供される。
【解決手段】スタブを保持するブッシュと、前記ブッシュが圧入される孔部を有したハウジングと、を備えた光レセプタクルであって、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、圧入部と、凹部と、が軸方向に交互に設けられたことを特徴とする光レセプタクルが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、光レセプタクルに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などの分野においては、光ファイバコネクタを受光素子や発光素子などの光素子と光学的に接続させるために、光レセプタクルが用いられている。
光レセプタクルには、ジルコニアなどからなるフェルールの中心を軸方向に貫通する貫通孔に光ファイバを固定したファイバスタブが設けられている。ファイバスタブの後端部にはブッシュが設けられ、ファイバスタブの先端部が光レセプタクルのハウジング内部に挿入されるとともに、ブッシュがハウジングの孔に圧入、固定されている。
【0003】
ここで、ブッシュをハウジングの孔に圧入する際に、ブッシュの外周面やハウジングの孔の内周面が削り取られ、屑やバリなどが発生する場合がある。
この様な屑やバリなどが発生すると、受光素子や発光素子などが設けられた光電変換素子パッケージとの接合が困難となったり、光電変換素子パッケージの内部に屑などが侵入して光レセプタクルの機能に障害が発生したりするおそれがある。
【0004】
そのため、圧入する部分に放射状に多数の歯車突状が設けられたブッシュ(特許文献1では隆起筒部92)が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示がされた技術においては、ブッシュを圧入する際に歯車突状が切り放され屑となるが、この屑はエアブローなどにより吹き飛ばされることで除去される(特許文献1の図5や[0023]段落、[0024]段落などを参照)。
そのため、屑の除去が完全に行われないと屑の噛み込みなどが発生して不良品となるおそれがある。また、屑の除去の検査を行うようにすれば、工程が煩雑となり生産コストの増加を招くおそれもある。
【0005】
また、ファイバスタブの後端部を圧入固定するブッシュ(特許文献2ではホルダ7)の内周面の端部にばり溜まりを設けて、ファイバスタブをブッシュの孔に圧入する際に、ばりが突き出ることを抑制する技術が提案されている(特許文献2を参照)。
この特許文献2に開示がされた技術においては、光電変換素子パッケージ(特許文献2ではケース11)側の内径部付近の端面において圧入時にばりが突き出ることを抑制することができる。
しかしながら、ばりが突出したり、ばりが切り放され屑となって放出されたりすることを防止することが難しく、特許文献1の場合と同様に、ばりや切り屑の噛み込みなどにより不良品が発生したり、ばりや切り屑の検査を行うことで生産コストの増加を招いたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−265507号公報
【特許文献2】特開2003−241025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、圧入時にばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる光レセプタクルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、スタブを保持するブッシュと、前記ブッシュが圧入される孔部を有したハウジングと、を備えた光レセプタクルであって、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、圧入部と、凹部と、が軸方向に交互に設けられたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入の際に削り取られた屑が凹部の内部に収納、保持されるので、ばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる。
また、凹部を設けることで圧入荷重、ブッシュの後端部からハウジングの後端部までの寸法Lである圧入位置寸法などの適正化を図ることができる。
例えば、圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。また、圧入位置寸法を所定の値の近傍とすることができ、圧入位置寸法のばらつきを小さくすることができる。すなわち、圧入位置の精度の向上を図ることができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、少なくとも2つの前記圧入部と、前記2つの圧入部の間に設けられた溝状の前記凹部と、が設けられたことを特徴とする光レセプタクルである。 この光レセプタクルによれば、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものが凹部の内部に確実に収納、保持されるので、発塵が生じることがない。
また、ブッシュの圧入方向における先端側においてブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れるので、後端側になるほど削られる量が少なくなる。そのため、ブッシュの圧入方向における後端側からばりが突出したり、屑が放出されたりすることがない。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.02mm以上、0.13mm以下であることを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をより確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることを抑制することができる。
【0011】
また、第4の発明は、第1または第2の発明において、前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.03mm以上、0.11mm以下であることを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をさらに確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることをさらに抑制することができる。
【0012】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記圧入部のピッチ寸法は、0.05mm以上であることを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れることにより発生したバリが凹部を超えて隣の圧入部に干渉することを抑制することができる。そのため、円滑な圧入を行うことができる。また、屑の収納、保持をより確実に行うことができるようになるので、発塵などによる汚れを抑制することができる。
【0013】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記凹部の前記軸方向に直交する方向の寸法は、4μm以上であることを特徴とする光レセプタクルである。 この光レセプタクルによれば、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れることにより発生したバリが凹部を超えて隣の圧入部に干渉することを抑制することができる。そのため、円滑な圧入を行うことができる。また、屑の収納、保持をより確実に行うことができるようになるので、発塵などによる汚れを抑制することができる。
【0014】
また、第7の発明は、第1の発明において、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、有底の孔状の前記凹部が互いに離隔されて複数設けられたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、前述した第2の発明と同様の効果を享受することができる。
すなわち、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものが凹部の内部に確実に収納、保持されるので、発塵が生じることがない。
また、ブッシュの圧入方向における先端側においてブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れるので、後端側になるほど削られる量が少なくなる。そのため、ブッシュの圧入方向における後端側からばりが突出したり、屑が放出されたりすることがない。
またさらに、後述する図9において説明するように、圧入荷重の適正化をさらに適切に行うようにすることができる。すなわち、圧入荷重をさらに小さくすることができるとともに、圧入荷重のばらつきもさらに小さくすることができる。
【0015】
また、第8の発明は、第7の発明において、前記凹部が設けられることで、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をより確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることを抑制することができる。
【0016】
また、第9の発明は、第1の発明において、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をより確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることを抑制することができる。
【0017】
また、第10の発明は、第7〜第9のいずれか1つの発明において、前記凹部は、バレル研磨法を用いて形成されたことを特徴とする光レセプタクルである。
バレル研磨法によれば、互いに離隔した有底の孔状の凹部を容易、かつ確実に形成することができるので、第6または第7の発明における光レセプタクルを容易、かつ確実に得ることができる。
【0018】
また、第11の発明は、第1〜第10のいずれか1つの発明において、前記凹部は、圧入の際に生じる屑を収納することを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入の際に発生した屑が凹部の内部に収納、保持されるので、ばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、圧入時にばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる光レセプタクルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る光レセプタクルを例示するための模式断面図である。
【図2】ブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための模式断面図である。
【図3】ステンレス製のブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための写真である。
【図4】凹部を設けた場合の効果を例示するための模式図である。
【図5】ステンレス製のブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
【図6】圧入前と圧入後におけるブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
【図7】ブッシュの圧入とブッシュの圧入位置とを例示するための模式断面図である。
【図8】圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
【図9】圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
【図10】圧入部の軸方向の寸法Wと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
【図11】複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13の外周面の最大高さ粗さと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
【図12】締め代と圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光レセプタクルを例示するための模式断面図である。
図1に示すように、光レセプタクル1には、ハウジング2、ブッシュ3、スリーブ4、スタブ5が設けられている。
光レセプタクル1のスタブ5が設けられる側の端部には、受光素子や発光素子などが設けられた光電変換素子パッケージ100が接合される。光レセプタクル1のスタブ5が設けられる側とは反対の側の端部から、光ファイバ110aが設けられたフェルール110がスリーブ4内に挿入できるようになっている。
【0022】
ハウジング2は、円筒状を呈し、その基端側には円板状の基部2aが設けられている。また、ハウジング2の内部には円形断面を有する空間2bが設けられている。空間2bは、ハウジング2の両端面に開口されており、基端とは反対側の開口部には開口部に突出するように顎部2cが設けられている。
また、基端側にはブッシュが圧入される孔部2eが設けられている。
【0023】
ここで、ブッシュ3を基端側の孔部2eに圧入する際に、ブッシュ3の外周部分やハウジング2の孔部2eの内周部分が削り取られ、屑やバリなどが発生するおそれがある。 そのため、ブッシュ3の外周面3b、およびハウジング2の孔部2eの内周面2dの少なくともいずれかには、圧入の際に削り取られた屑を収納、保持する凹部を設けるようにしている。
なお、凹部に関する詳細は後述する。
【0024】
ブッシュ3には、中心を軸方向に貫通する孔3aが設けられ、孔3aにスタブ5が保持されている。なお、スタブ5は孔3aに圧入されるようにしてもよいし、接着剤や機械的な保持手段などにより保持されるようにしてもよい。
ハウジング2、ブッシュ3の材質は、例えば、ステンレス、銅、鉄、ニッケルなどの金属とすることができる。
【0025】
空間2bのうちブッシュ3と顎部2cとにより画される部分には、スリーブ4が設けられている。
スリーブ4には、中心を軸方向に貫通する孔4aが設けられている。スリーブ4は、円筒形状を有したものとすることもできるし、いわゆる割スリーブとすることもできる。スリーブ4を割スリーブとする場合には、スリーブ4の軸方向に沿ってスリットが設けられ半径方向に弾性的に拡縮可能とされる。
スタブ5は、ジルコニアやアルミナなどの酸化物系セラミックスからなるフェルール5aと、フェルール5aの貫通孔に挿通固定された光ファイバ5bとからなる。
なお、光ファイバ5bを有するスタブ5を例示するが、ガラスまたは樹脂などのような透明体からなり光ファイバ5bを有さないスタブとすることもできる。
【0026】
次に、ブッシュ3の外周面3b、およびハウジング2の孔部2eの内周面2dの少なくともいずれかに設けられ、圧入の際に削り取られた屑などを収納、保持する凹部について例示する。
なお、ブッシュ3の外周面3bおよびハウジング2の孔部2eの内周面2dのうち、圧入に関与する部分を圧入部と称することにする。
ここでは、一例として、ブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するが、ハウジングの孔部の内周面に設けられた凹部も同様である。すなわち、ブッシュの外周面およびハウジングの孔部の内周面の少なくともいずれかに凹部が設けられるようにすることができる。
【0027】
図2は、ブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための模式断面図である。なお、図2(a)は外周面に溝状の凹部が設けられたブッシュ、図2(b)は外周面に有底の孔状の凹部が設けられたブッシュを例示するための模式断面図である。
図3は、ステンレス製のブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための写真である。なお、図3(a)は外周面に凹部が設けられていないブッシュ、図3(b)は凹部が設けられていないブッシュの外周面の拡大写真、図3(c)は外周面に溝状の凹部が設けられたブッシュ、図3(d)は外周面に有底の孔状の凹部が設けられたブッシュを例示するための写真である。
【0028】
図3(a)、(b)に示すブッシュは、最大高さ粗さがRmax1.5μm程度となるように外周面を平滑に加工した場合である。すなわち、光レセプタクルに用いられている外周面に凹部が設けられていない一般的なブッシュを例示するものである。
図2(a)、図3(c)に示すように、ブッシュ3は、外周面3bの周方向に設けられた溝状の凹部3cを有している。
すなわち、ブッシュ3の外周面3bには、圧入部と、凹部3cと、が軸方向に交互に設けられている。
また、ブッシュ3の外周面3bには、少なくとも2つの圧入部と、2つの圧入部の間に設けられた溝状の凹部3cと、が設けられている。
【0029】
凹部3cは、閉ループ状に形成された溝とすることもできるし、螺旋状に形成された溝とすることもできる。
この様な溝状の凹部3cは、例えば、切削加工法により形成するようにすることができる。
また、凹部3cを閉ループ状に形成された溝とする場合には、ブッシュ3の端部に開口しない凹部3cを少なくとも1つ形成するようにすることができる。
【0030】
この様な凹部3cを形成するものとすれば、圧入時に凹部3cに隣接する外周部分が削れることにより自動的に適正な嵌め合い寸法が形成されることになるので、理想的な圧入状態を実現することができる。
【0031】
この場合、圧入部の軸方向の寸法Wが大きすぎると外周部分が削れにくくなるので、カジリ現象が発生する。これとは逆に、圧入部の軸方向の寸法Wが小さすぎると外周部分が削れすぎて嵌め合い寸法が小さくなり保持強度が弱く抜けやすくなるおそれがある。
そのため、圧入部の軸方向の寸法Wは、0.02mm以上、0.13mm以下とすることが好ましい。
また、圧入部の軸方向の寸法Wを0.03mm以上、0.11mm以下とすることがより好ましい。
【0032】
また、凹部3cが設けられていない部分間のピッチ寸法である圧入部のピッチ寸法Pが十分でないと、外周部分が削れることにより発生したバリが凹部3cを超えて隣の圧入部に干渉し、円滑な圧入が阻害されるおそれがある。また、圧入部のピッチ寸法Pを十分確保するようにすれば、屑14の収納、保持をより確実に行うことができるようになるので、発塵などによる汚れを抑制することができる。
そのため、圧入部のピッチ寸法Pは、0.05mm以上とすることが好ましい。
また、凹部3cの高さ寸法H(軸方向に直交する方向の寸法)は4μm以上とすることが好ましい。
【0033】
図2(b)、図3(d)に示すように、ブッシュ13は、外周面13bに有底の孔状の凹部13cが互いに離隔されて複数設けられている。すなわち、ブッシュ13の外周面13bには、圧入部と、凹部13cと、が軸方向に交互に設けられている。
この場合、凹部13cは、図2(b)に示すように規則的に設けられるようにすることもできるし、図3(d)に示すように不規則に設けられるようにすることもできる。
規則的な凹部13cは、例えば、エッチング法により形成するようにすることができる。不規則な凹部13cは、例えば、バレル研磨法により形成するようにすることができる。 なお、中心を軸方向に貫通する孔13aは前述したブッシュ3の孔3aと同様とすることができ、材質も前述したブッシュ3と同様とすることができる。すなわち、ブッシュ3とブッシュ13とでは凹部の形態のみが異なっている。
【0034】
ここで、外周面に設けられる凹部13cが小さすぎると外周部分が削れにくくなるので、カジリ現象が発生する。これとは逆に、外周面に設けられる凹部13cが大きすぎると外周部分が削れすぎて嵌め合い寸法が小さくなり保持強度が弱く抜けやすくなるおそれがある。
そのため、凹部13cが設けられることで、ブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となるようにすることが好ましい。
ただし、必ずしも規則的な凹部13cが明確に形成されている必要はなく、ブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となっていればよい。
【0035】
図4は、凹部を設けた場合の効果を例示するための模式図である。
なお、ここでは一例として、ブッシュ3の外周面に凹部3cを設けた場合の効果について例示をする。
図4(a)に示すようにブッシュ3をハウジング2の孔部2eに圧入すると、図4(b)に示すようにブッシュ3の外周部分、ハウジング2の孔部2eの内周部分が削れて屑14となったものが凹部3cの内部に収納される。この場合、屑14は凹部3cの内部に保持されることになるので、図4(c)に示すように、ばりとなって突出したり、屑14が放出されたりすることが抑制されることになる。この場合、ブッシュ3の圧入方向における先端側においてブッシュ3の外周部分、ハウジング2の孔部2eの内周部分が削れるので、後端側になるほど削られる量が少なくなる。そのため、ブッシュ3の圧入方向における後端側からばりが突出したり、屑14が放出されたりすることがない。
【0036】
この様な効果は、特許文献1や特許文献2に開示された技術では得ることができない。 例えば、特許文献1に開示された技術では、圧入方向に垂直な方向の断面において放射状に多数の歯車突状が設けられたブッシュ(特許文献1では隆起筒部92)が開示されているが、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものは外部に放出されることになる(例えば、特許文献1の図4、図5、[0023]段落、[0024]段落などを参照)。この場合、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものがばりとなって突出するおそれもある。
【0037】
また、特許文献2に開示された技術では、内周面の端部にばり溜まりが設けられたブッシュ(特許文献2ではホルダ7)が開示されている。しかしながら、この様な技術では、仮に圧入時にばりが突き出ることを抑制することができたとしても屑となったものが外部に放出されることに変わりはない。
また、特許文献1や特許文献2に開示された技術では、後述する圧入荷重の低減、圧入荷重のばらつきの低減、圧入位置寸法のばらつきの低減(圧入位置の精度の向上)などの効果を得ることもできない。
【0038】
図5は、ステンレス製のブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
なお、ここでは一例として、ブッシュ13の外周面の表面状態について例示をする。
図5(a)はブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax6μmの場合の写真、図5(b)は図5(a)の外周面表面を拡大した写真、図5(c)はブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合の写真、図5(d)は図5(c)の外周面表面を拡大した写真、図5(e)はブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax3μmの場合の写真、図5(f)は図5(e)の外周面表面を拡大した写真である。
図6は、圧入前と圧入後におけるブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
なお、ここでは一例として、ブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合について例示をする。図6(a)は圧入前のブッシュ13の外周面の表面状態について例示するための写真であり、図6(b)は圧入後のブッシュ13の外周面の表面状態について例示するための写真である。
図6(b)においては図6(a)と比べて表面が削れたために平面状となった面状部分15が多くなり、窪んだ部分(凹部13c)に屑14が収納されていることが分かる。
【0039】
以上に例示をした凹部を設けた場合の効果は、ばりの突出や屑14の放出を抑制することであるが、さらに、圧入荷重の低減、圧入荷重のばらつきの低減、圧入位置寸法のばらつきの低減(圧入位置の精度の向上)という効果をも享受することができる。
【0040】
図7は、ブッシュの圧入とブッシュの圧入位置とを例示するための模式断面図である。 なお、図7(a)、(b)はブッシュの圧入の様子を例示するための模式断面図、図7(c)はブッシュの圧入位置を例示するための模式断面図である。
また、図7は、一例として、ブッシュ3を圧入する場合を例示するがブッシュ13の場合も同様である。
【0041】
図7(a)に示すように、ブッシュ3を圧入する際にはハウジング2を保持する治具200と、ブッシュ3を押圧する治具201とが用いられる。治具201には、ブッシュ3の圧入位置が規定されるように突部201aが設けられている。突部201aの高さ寸法は、ブッシュ3の後端部からハウジング2の後端部までの寸法(以下、圧入位置寸法Lと称する)と同じとなっている。
【0042】
まず、図7(a)に示すように、治具200によりハウジング2を保持し、治具201でブッシュ3を押圧してハウジング2の孔部2e内にブッシュ3を圧入する。
この際、図7(b)に示すように、治具201に設けられた突部201aによりブッシュ3の圧入位置が規定される。
すなわち、図7(c)に示すもののように圧入位置寸法Lが一定となるようにブッシュ3の圧入位置が規定される。
この場合、圧入するために余り大きな圧入荷重が必要になるとハウジング2などが変形してしまいブッシュ3が所定の位置に圧入されないことが生じ得る。また、ブッシュ3が所定の位置の近傍に圧入されたとしても、圧入位置寸法Lにばらつきが生じることになる。
【0043】
ここで、圧入位置寸法Lのばらつきが大きくなるとスタブ5の位置のばらつきが大きくなることになる。そのため、スタブ5と光電変換素子パッケージ100との間における寸法関係のばらつきが大きくなり、光レセプタクル1の特性のばらつきが大きくなるおそれがある。
また、圧入荷重が余り大きくなると破損などが発生するおそれがあり、圧入荷重のばらつきが大きくなると製造上の管理が困難となるおそれがある。
【0044】
図8は、圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図8(a)は外周面に凹部が設けられていないブッシュ(例えば、図3(a)、(b)を参照)の場合、図8(b)は外周面3bに溝状の凹部3cが設けられたブッシュ3の場合である。また、図8(b)における「■」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.03mmの場合、「▲」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.07mmの場合、「×」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.11mmの場合、「*」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.15mmの場合である。
【0045】
図8(a)に示すように、凹部が設けられていないブッシュの場合には、圧入荷重が大きくなるとともに圧入荷重のばらつきも大きくなる。この場合、圧入荷重が大きくなるほど圧入位置寸法が小さくなり所定の位置までブッシュを圧入することができないことが分かる。また、圧入位置寸法のばらつきも大きくなる。
これに対して、図8(b)に示すように、外周面3bに溝状の凹部3cを設けるようにすれば、圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。また、圧入位置寸法を所定の値の近傍とすることができ、圧入位置寸法のばらつきを小さくすることもできる。
【0046】
図9も、圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図9(a)は外周面に凹部が設けられていないブッシュ(例えば、図3(a)、(b)を参照)の場合、図9(b)は外周面13bに複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13の場合である。また、図9(b)における「■」は外周面の最大高さ粗さがRmax6μmの場合、「▲」は外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合、「×」は外周面の最大高さ粗さがRmax3μmの場合である。
【0047】
図9(a)に示すように、凹部が設けられていないブッシュの場合には、圧入荷重が大きくなるとともに圧入荷重のばらつきも大きくなる。この場合、圧入荷重が大きくなるほど圧入位置寸法が小さくなり所定の位置までブッシュを圧入することができないことが分かる。また、圧入位置寸法のばらつきも大きくなる。
これに対して、図9(b)に示すように、外周面13bに複数の有底の孔状の凹部13cを設けるようにすれば、圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。また、圧入位置寸法を所定の値の近傍とすることができ、圧入位置寸法のばらつきを小さくすることもできる。
また、図8(b)と図9(b)とから分かるように、複数の有底の孔状の凹部13cを設けるようにすれば、若干ではあるが溝状の凹部3cを設ける場合よりも圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。
【0048】
図10は、圧入部の軸方向の寸法Wと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
表1は、図10に示すデータをまとめたものである。
【表1】
図10、表1から分かるように、圧入部の軸方向の寸法Wを変化させれば圧入荷重の大きさとばらつきを変化させることができる。
この場合、圧入部の軸方向の寸法Wを小さくするほど圧入荷重は小さくなり、ばらつきも小さくなる傾向がある。
なお、前述したように、圧入部の軸方向の寸法Wは、0.02mm以上、0.13mm以下とすることが好ましく、0.03mm以上、0.11mm以下とすることがより好ましいが、このことは図10、表1に示すデータからも分かる。
【0049】
図11は、複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13の外周面の最大高さ粗さと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、前述したように、最大高さ粗さがRmax1.5μmの場合は、凹部13cが設けられていない場合である。
表2は、図11に示すデータをまとめたものである。
【表2】
図11、表2から分かるように、外周面の最大高さ粗さを変化させれば圧入荷重の大きさとばらつきを変化させることができる。
この場合、外周面の最大高さ粗さを大きくするほど(表面粗さを粗くするほど)圧入荷重は小さくなり、ばらつきも小さくなる傾向がある。
なお、前述したように、凹部13cが設けられた外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となるようにすることが好ましいが、このことは図11、表2に示すデータからも分かる。
【0050】
図12は、締め代と圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図12は、一例として、複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13に関する締め代と圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
図中の「◆」は外周面に凹部が設けられていないブッシュの場合、「■」は外周面の最大高さ粗さがRmax6μmの場合、「▲」は外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合、「●」は外周面の最大高さ粗さがRmax3μmの場合である。
また、図12(a)は締め代のレンジが0.012mmまでの場合、図12(b)は締め代のレンジが0.03mmまでの場合である。
【0051】
図12(a)、(b)から分かるように、凹部13cを設けるようにすれば、締め代の値を高くしたり、締め代の値の範囲を広くしたりしても圧入荷重を小さくすることができる。また、圧入荷重のばらつきを小さくすることもできる。
この場合、外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となるようにすれば、締め代の値を高くしたり、締め代の値の範囲を広くしたりしても圧入荷重をより小さくすることができる。また、圧入荷重のばらつきをより小さくすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 光レセプタクル、2 ハウジング、2a 基部、2b 空間、2c 顎部、2d 内周面、2e 孔部、3 ブッシュ、3a 孔、3b 外周面、3c 凹部、4 スリーブ、4a 孔、5 スタブ、5a フェルール、5b 光ファイバ、13 ブッシュ、13a 孔、13b 外周面、13c 凹部、14 屑、15 面状部分、100 光電変換素子パッケージ、110 フェルール、110a 光ファイバ、200 治具、201 治具、201a 突部、L 圧入位置寸法、W 幅寸法
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、光レセプタクルに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などの分野においては、光ファイバコネクタを受光素子や発光素子などの光素子と光学的に接続させるために、光レセプタクルが用いられている。
光レセプタクルには、ジルコニアなどからなるフェルールの中心を軸方向に貫通する貫通孔に光ファイバを固定したファイバスタブが設けられている。ファイバスタブの後端部にはブッシュが設けられ、ファイバスタブの先端部が光レセプタクルのハウジング内部に挿入されるとともに、ブッシュがハウジングの孔に圧入、固定されている。
【0003】
ここで、ブッシュをハウジングの孔に圧入する際に、ブッシュの外周面やハウジングの孔の内周面が削り取られ、屑やバリなどが発生する場合がある。
この様な屑やバリなどが発生すると、受光素子や発光素子などが設けられた光電変換素子パッケージとの接合が困難となったり、光電変換素子パッケージの内部に屑などが侵入して光レセプタクルの機能に障害が発生したりするおそれがある。
【0004】
そのため、圧入する部分に放射状に多数の歯車突状が設けられたブッシュ(特許文献1では隆起筒部92)が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示がされた技術においては、ブッシュを圧入する際に歯車突状が切り放され屑となるが、この屑はエアブローなどにより吹き飛ばされることで除去される(特許文献1の図5や[0023]段落、[0024]段落などを参照)。
そのため、屑の除去が完全に行われないと屑の噛み込みなどが発生して不良品となるおそれがある。また、屑の除去の検査を行うようにすれば、工程が煩雑となり生産コストの増加を招くおそれもある。
【0005】
また、ファイバスタブの後端部を圧入固定するブッシュ(特許文献2ではホルダ7)の内周面の端部にばり溜まりを設けて、ファイバスタブをブッシュの孔に圧入する際に、ばりが突き出ることを抑制する技術が提案されている(特許文献2を参照)。
この特許文献2に開示がされた技術においては、光電変換素子パッケージ(特許文献2ではケース11)側の内径部付近の端面において圧入時にばりが突き出ることを抑制することができる。
しかしながら、ばりが突出したり、ばりが切り放され屑となって放出されたりすることを防止することが難しく、特許文献1の場合と同様に、ばりや切り屑の噛み込みなどにより不良品が発生したり、ばりや切り屑の検査を行うことで生産コストの増加を招いたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−265507号公報
【特許文献2】特開2003−241025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、圧入時にばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる光レセプタクルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、スタブを保持するブッシュと、前記ブッシュが圧入される孔部を有したハウジングと、を備えた光レセプタクルであって、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、圧入部と、凹部と、が軸方向に交互に設けられたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入の際に削り取られた屑が凹部の内部に収納、保持されるので、ばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる。
また、凹部を設けることで圧入荷重、ブッシュの後端部からハウジングの後端部までの寸法Lである圧入位置寸法などの適正化を図ることができる。
例えば、圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。また、圧入位置寸法を所定の値の近傍とすることができ、圧入位置寸法のばらつきを小さくすることができる。すなわち、圧入位置の精度の向上を図ることができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、少なくとも2つの前記圧入部と、前記2つの圧入部の間に設けられた溝状の前記凹部と、が設けられたことを特徴とする光レセプタクルである。 この光レセプタクルによれば、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものが凹部の内部に確実に収納、保持されるので、発塵が生じることがない。
また、ブッシュの圧入方向における先端側においてブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れるので、後端側になるほど削られる量が少なくなる。そのため、ブッシュの圧入方向における後端側からばりが突出したり、屑が放出されたりすることがない。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.02mm以上、0.13mm以下であることを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をより確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることを抑制することができる。
【0011】
また、第4の発明は、第1または第2の発明において、前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.03mm以上、0.11mm以下であることを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をさらに確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることをさらに抑制することができる。
【0012】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記圧入部のピッチ寸法は、0.05mm以上であることを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れることにより発生したバリが凹部を超えて隣の圧入部に干渉することを抑制することができる。そのため、円滑な圧入を行うことができる。また、屑の収納、保持をより確実に行うことができるようになるので、発塵などによる汚れを抑制することができる。
【0013】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記凹部の前記軸方向に直交する方向の寸法は、4μm以上であることを特徴とする光レセプタクルである。 この光レセプタクルによれば、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れることにより発生したバリが凹部を超えて隣の圧入部に干渉することを抑制することができる。そのため、円滑な圧入を行うことができる。また、屑の収納、保持をより確実に行うことができるようになるので、発塵などによる汚れを抑制することができる。
【0014】
また、第7の発明は、第1の発明において、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、有底の孔状の前記凹部が互いに離隔されて複数設けられたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、前述した第2の発明と同様の効果を享受することができる。
すなわち、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものが凹部の内部に確実に収納、保持されるので、発塵が生じることがない。
また、ブッシュの圧入方向における先端側においてブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れるので、後端側になるほど削られる量が少なくなる。そのため、ブッシュの圧入方向における後端側からばりが突出したり、屑が放出されたりすることがない。
またさらに、後述する図9において説明するように、圧入荷重の適正化をさらに適切に行うようにすることができる。すなわち、圧入荷重をさらに小さくすることができるとともに、圧入荷重のばらつきもさらに小さくすることができる。
【0015】
また、第8の発明は、第7の発明において、前記凹部が設けられることで、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をより確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることを抑制することができる。
【0016】
また、第9の発明は、第1の発明において、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入荷重の適正化をより確実に行うことができる。
そのため、圧入の際にカジリ現象が発生したり、保持強度が弱く抜けやすくなったりすることを抑制することができる。
【0017】
また、第10の発明は、第7〜第9のいずれか1つの発明において、前記凹部は、バレル研磨法を用いて形成されたことを特徴とする光レセプタクルである。
バレル研磨法によれば、互いに離隔した有底の孔状の凹部を容易、かつ確実に形成することができるので、第6または第7の発明における光レセプタクルを容易、かつ確実に得ることができる。
【0018】
また、第11の発明は、第1〜第10のいずれか1つの発明において、前記凹部は、圧入の際に生じる屑を収納することを特徴とする光レセプタクルである。
この光レセプタクルによれば、圧入の際に発生した屑が凹部の内部に収納、保持されるので、ばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、圧入時にばりが外部に向けて突出したり、屑が外部に向けて放出されたりすることを抑制することができる光レセプタクルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る光レセプタクルを例示するための模式断面図である。
【図2】ブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための模式断面図である。
【図3】ステンレス製のブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための写真である。
【図4】凹部を設けた場合の効果を例示するための模式図である。
【図5】ステンレス製のブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
【図6】圧入前と圧入後におけるブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
【図7】ブッシュの圧入とブッシュの圧入位置とを例示するための模式断面図である。
【図8】圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
【図9】圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
【図10】圧入部の軸方向の寸法Wと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
【図11】複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13の外周面の最大高さ粗さと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
【図12】締め代と圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光レセプタクルを例示するための模式断面図である。
図1に示すように、光レセプタクル1には、ハウジング2、ブッシュ3、スリーブ4、スタブ5が設けられている。
光レセプタクル1のスタブ5が設けられる側の端部には、受光素子や発光素子などが設けられた光電変換素子パッケージ100が接合される。光レセプタクル1のスタブ5が設けられる側とは反対の側の端部から、光ファイバ110aが設けられたフェルール110がスリーブ4内に挿入できるようになっている。
【0022】
ハウジング2は、円筒状を呈し、その基端側には円板状の基部2aが設けられている。また、ハウジング2の内部には円形断面を有する空間2bが設けられている。空間2bは、ハウジング2の両端面に開口されており、基端とは反対側の開口部には開口部に突出するように顎部2cが設けられている。
また、基端側にはブッシュが圧入される孔部2eが設けられている。
【0023】
ここで、ブッシュ3を基端側の孔部2eに圧入する際に、ブッシュ3の外周部分やハウジング2の孔部2eの内周部分が削り取られ、屑やバリなどが発生するおそれがある。 そのため、ブッシュ3の外周面3b、およびハウジング2の孔部2eの内周面2dの少なくともいずれかには、圧入の際に削り取られた屑を収納、保持する凹部を設けるようにしている。
なお、凹部に関する詳細は後述する。
【0024】
ブッシュ3には、中心を軸方向に貫通する孔3aが設けられ、孔3aにスタブ5が保持されている。なお、スタブ5は孔3aに圧入されるようにしてもよいし、接着剤や機械的な保持手段などにより保持されるようにしてもよい。
ハウジング2、ブッシュ3の材質は、例えば、ステンレス、銅、鉄、ニッケルなどの金属とすることができる。
【0025】
空間2bのうちブッシュ3と顎部2cとにより画される部分には、スリーブ4が設けられている。
スリーブ4には、中心を軸方向に貫通する孔4aが設けられている。スリーブ4は、円筒形状を有したものとすることもできるし、いわゆる割スリーブとすることもできる。スリーブ4を割スリーブとする場合には、スリーブ4の軸方向に沿ってスリットが設けられ半径方向に弾性的に拡縮可能とされる。
スタブ5は、ジルコニアやアルミナなどの酸化物系セラミックスからなるフェルール5aと、フェルール5aの貫通孔に挿通固定された光ファイバ5bとからなる。
なお、光ファイバ5bを有するスタブ5を例示するが、ガラスまたは樹脂などのような透明体からなり光ファイバ5bを有さないスタブとすることもできる。
【0026】
次に、ブッシュ3の外周面3b、およびハウジング2の孔部2eの内周面2dの少なくともいずれかに設けられ、圧入の際に削り取られた屑などを収納、保持する凹部について例示する。
なお、ブッシュ3の外周面3bおよびハウジング2の孔部2eの内周面2dのうち、圧入に関与する部分を圧入部と称することにする。
ここでは、一例として、ブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するが、ハウジングの孔部の内周面に設けられた凹部も同様である。すなわち、ブッシュの外周面およびハウジングの孔部の内周面の少なくともいずれかに凹部が設けられるようにすることができる。
【0027】
図2は、ブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための模式断面図である。なお、図2(a)は外周面に溝状の凹部が設けられたブッシュ、図2(b)は外周面に有底の孔状の凹部が設けられたブッシュを例示するための模式断面図である。
図3は、ステンレス製のブッシュの外周面に設けられた凹部について例示するための写真である。なお、図3(a)は外周面に凹部が設けられていないブッシュ、図3(b)は凹部が設けられていないブッシュの外周面の拡大写真、図3(c)は外周面に溝状の凹部が設けられたブッシュ、図3(d)は外周面に有底の孔状の凹部が設けられたブッシュを例示するための写真である。
【0028】
図3(a)、(b)に示すブッシュは、最大高さ粗さがRmax1.5μm程度となるように外周面を平滑に加工した場合である。すなわち、光レセプタクルに用いられている外周面に凹部が設けられていない一般的なブッシュを例示するものである。
図2(a)、図3(c)に示すように、ブッシュ3は、外周面3bの周方向に設けられた溝状の凹部3cを有している。
すなわち、ブッシュ3の外周面3bには、圧入部と、凹部3cと、が軸方向に交互に設けられている。
また、ブッシュ3の外周面3bには、少なくとも2つの圧入部と、2つの圧入部の間に設けられた溝状の凹部3cと、が設けられている。
【0029】
凹部3cは、閉ループ状に形成された溝とすることもできるし、螺旋状に形成された溝とすることもできる。
この様な溝状の凹部3cは、例えば、切削加工法により形成するようにすることができる。
また、凹部3cを閉ループ状に形成された溝とする場合には、ブッシュ3の端部に開口しない凹部3cを少なくとも1つ形成するようにすることができる。
【0030】
この様な凹部3cを形成するものとすれば、圧入時に凹部3cに隣接する外周部分が削れることにより自動的に適正な嵌め合い寸法が形成されることになるので、理想的な圧入状態を実現することができる。
【0031】
この場合、圧入部の軸方向の寸法Wが大きすぎると外周部分が削れにくくなるので、カジリ現象が発生する。これとは逆に、圧入部の軸方向の寸法Wが小さすぎると外周部分が削れすぎて嵌め合い寸法が小さくなり保持強度が弱く抜けやすくなるおそれがある。
そのため、圧入部の軸方向の寸法Wは、0.02mm以上、0.13mm以下とすることが好ましい。
また、圧入部の軸方向の寸法Wを0.03mm以上、0.11mm以下とすることがより好ましい。
【0032】
また、凹部3cが設けられていない部分間のピッチ寸法である圧入部のピッチ寸法Pが十分でないと、外周部分が削れることにより発生したバリが凹部3cを超えて隣の圧入部に干渉し、円滑な圧入が阻害されるおそれがある。また、圧入部のピッチ寸法Pを十分確保するようにすれば、屑14の収納、保持をより確実に行うことができるようになるので、発塵などによる汚れを抑制することができる。
そのため、圧入部のピッチ寸法Pは、0.05mm以上とすることが好ましい。
また、凹部3cの高さ寸法H(軸方向に直交する方向の寸法)は4μm以上とすることが好ましい。
【0033】
図2(b)、図3(d)に示すように、ブッシュ13は、外周面13bに有底の孔状の凹部13cが互いに離隔されて複数設けられている。すなわち、ブッシュ13の外周面13bには、圧入部と、凹部13cと、が軸方向に交互に設けられている。
この場合、凹部13cは、図2(b)に示すように規則的に設けられるようにすることもできるし、図3(d)に示すように不規則に設けられるようにすることもできる。
規則的な凹部13cは、例えば、エッチング法により形成するようにすることができる。不規則な凹部13cは、例えば、バレル研磨法により形成するようにすることができる。 なお、中心を軸方向に貫通する孔13aは前述したブッシュ3の孔3aと同様とすることができ、材質も前述したブッシュ3と同様とすることができる。すなわち、ブッシュ3とブッシュ13とでは凹部の形態のみが異なっている。
【0034】
ここで、外周面に設けられる凹部13cが小さすぎると外周部分が削れにくくなるので、カジリ現象が発生する。これとは逆に、外周面に設けられる凹部13cが大きすぎると外周部分が削れすぎて嵌め合い寸法が小さくなり保持強度が弱く抜けやすくなるおそれがある。
そのため、凹部13cが設けられることで、ブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となるようにすることが好ましい。
ただし、必ずしも規則的な凹部13cが明確に形成されている必要はなく、ブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となっていればよい。
【0035】
図4は、凹部を設けた場合の効果を例示するための模式図である。
なお、ここでは一例として、ブッシュ3の外周面に凹部3cを設けた場合の効果について例示をする。
図4(a)に示すようにブッシュ3をハウジング2の孔部2eに圧入すると、図4(b)に示すようにブッシュ3の外周部分、ハウジング2の孔部2eの内周部分が削れて屑14となったものが凹部3cの内部に収納される。この場合、屑14は凹部3cの内部に保持されることになるので、図4(c)に示すように、ばりとなって突出したり、屑14が放出されたりすることが抑制されることになる。この場合、ブッシュ3の圧入方向における先端側においてブッシュ3の外周部分、ハウジング2の孔部2eの内周部分が削れるので、後端側になるほど削られる量が少なくなる。そのため、ブッシュ3の圧入方向における後端側からばりが突出したり、屑14が放出されたりすることがない。
【0036】
この様な効果は、特許文献1や特許文献2に開示された技術では得ることができない。 例えば、特許文献1に開示された技術では、圧入方向に垂直な方向の断面において放射状に多数の歯車突状が設けられたブッシュ(特許文献1では隆起筒部92)が開示されているが、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものは外部に放出されることになる(例えば、特許文献1の図4、図5、[0023]段落、[0024]段落などを参照)。この場合、ブッシュの外周部分、ハウジングの孔部の内周部分が削れて屑となったものがばりとなって突出するおそれもある。
【0037】
また、特許文献2に開示された技術では、内周面の端部にばり溜まりが設けられたブッシュ(特許文献2ではホルダ7)が開示されている。しかしながら、この様な技術では、仮に圧入時にばりが突き出ることを抑制することができたとしても屑となったものが外部に放出されることに変わりはない。
また、特許文献1や特許文献2に開示された技術では、後述する圧入荷重の低減、圧入荷重のばらつきの低減、圧入位置寸法のばらつきの低減(圧入位置の精度の向上)などの効果を得ることもできない。
【0038】
図5は、ステンレス製のブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
なお、ここでは一例として、ブッシュ13の外周面の表面状態について例示をする。
図5(a)はブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax6μmの場合の写真、図5(b)は図5(a)の外周面表面を拡大した写真、図5(c)はブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合の写真、図5(d)は図5(c)の外周面表面を拡大した写真、図5(e)はブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax3μmの場合の写真、図5(f)は図5(e)の外周面表面を拡大した写真である。
図6は、圧入前と圧入後におけるブッシュの外周面の表面状態を例示するための写真である。
なお、ここでは一例として、ブッシュ13の外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合について例示をする。図6(a)は圧入前のブッシュ13の外周面の表面状態について例示するための写真であり、図6(b)は圧入後のブッシュ13の外周面の表面状態について例示するための写真である。
図6(b)においては図6(a)と比べて表面が削れたために平面状となった面状部分15が多くなり、窪んだ部分(凹部13c)に屑14が収納されていることが分かる。
【0039】
以上に例示をした凹部を設けた場合の効果は、ばりの突出や屑14の放出を抑制することであるが、さらに、圧入荷重の低減、圧入荷重のばらつきの低減、圧入位置寸法のばらつきの低減(圧入位置の精度の向上)という効果をも享受することができる。
【0040】
図7は、ブッシュの圧入とブッシュの圧入位置とを例示するための模式断面図である。 なお、図7(a)、(b)はブッシュの圧入の様子を例示するための模式断面図、図7(c)はブッシュの圧入位置を例示するための模式断面図である。
また、図7は、一例として、ブッシュ3を圧入する場合を例示するがブッシュ13の場合も同様である。
【0041】
図7(a)に示すように、ブッシュ3を圧入する際にはハウジング2を保持する治具200と、ブッシュ3を押圧する治具201とが用いられる。治具201には、ブッシュ3の圧入位置が規定されるように突部201aが設けられている。突部201aの高さ寸法は、ブッシュ3の後端部からハウジング2の後端部までの寸法(以下、圧入位置寸法Lと称する)と同じとなっている。
【0042】
まず、図7(a)に示すように、治具200によりハウジング2を保持し、治具201でブッシュ3を押圧してハウジング2の孔部2e内にブッシュ3を圧入する。
この際、図7(b)に示すように、治具201に設けられた突部201aによりブッシュ3の圧入位置が規定される。
すなわち、図7(c)に示すもののように圧入位置寸法Lが一定となるようにブッシュ3の圧入位置が規定される。
この場合、圧入するために余り大きな圧入荷重が必要になるとハウジング2などが変形してしまいブッシュ3が所定の位置に圧入されないことが生じ得る。また、ブッシュ3が所定の位置の近傍に圧入されたとしても、圧入位置寸法Lにばらつきが生じることになる。
【0043】
ここで、圧入位置寸法Lのばらつきが大きくなるとスタブ5の位置のばらつきが大きくなることになる。そのため、スタブ5と光電変換素子パッケージ100との間における寸法関係のばらつきが大きくなり、光レセプタクル1の特性のばらつきが大きくなるおそれがある。
また、圧入荷重が余り大きくなると破損などが発生するおそれがあり、圧入荷重のばらつきが大きくなると製造上の管理が困難となるおそれがある。
【0044】
図8は、圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図8(a)は外周面に凹部が設けられていないブッシュ(例えば、図3(a)、(b)を参照)の場合、図8(b)は外周面3bに溝状の凹部3cが設けられたブッシュ3の場合である。また、図8(b)における「■」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.03mmの場合、「▲」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.07mmの場合、「×」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.11mmの場合、「*」は圧入部の軸方向の寸法Wが0.15mmの場合である。
【0045】
図8(a)に示すように、凹部が設けられていないブッシュの場合には、圧入荷重が大きくなるとともに圧入荷重のばらつきも大きくなる。この場合、圧入荷重が大きくなるほど圧入位置寸法が小さくなり所定の位置までブッシュを圧入することができないことが分かる。また、圧入位置寸法のばらつきも大きくなる。
これに対して、図8(b)に示すように、外周面3bに溝状の凹部3cを設けるようにすれば、圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。また、圧入位置寸法を所定の値の近傍とすることができ、圧入位置寸法のばらつきを小さくすることもできる。
【0046】
図9も、圧入荷重と圧入位置寸法との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図9(a)は外周面に凹部が設けられていないブッシュ(例えば、図3(a)、(b)を参照)の場合、図9(b)は外周面13bに複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13の場合である。また、図9(b)における「■」は外周面の最大高さ粗さがRmax6μmの場合、「▲」は外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合、「×」は外周面の最大高さ粗さがRmax3μmの場合である。
【0047】
図9(a)に示すように、凹部が設けられていないブッシュの場合には、圧入荷重が大きくなるとともに圧入荷重のばらつきも大きくなる。この場合、圧入荷重が大きくなるほど圧入位置寸法が小さくなり所定の位置までブッシュを圧入することができないことが分かる。また、圧入位置寸法のばらつきも大きくなる。
これに対して、図9(b)に示すように、外周面13bに複数の有底の孔状の凹部13cを設けるようにすれば、圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。また、圧入位置寸法を所定の値の近傍とすることができ、圧入位置寸法のばらつきを小さくすることもできる。
また、図8(b)と図9(b)とから分かるように、複数の有底の孔状の凹部13cを設けるようにすれば、若干ではあるが溝状の凹部3cを設ける場合よりも圧入荷重を小さくすることができるとともに圧入荷重のばらつきをも小さくすることができる。
【0048】
図10は、圧入部の軸方向の寸法Wと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
表1は、図10に示すデータをまとめたものである。
【表1】
図10、表1から分かるように、圧入部の軸方向の寸法Wを変化させれば圧入荷重の大きさとばらつきを変化させることができる。
この場合、圧入部の軸方向の寸法Wを小さくするほど圧入荷重は小さくなり、ばらつきも小さくなる傾向がある。
なお、前述したように、圧入部の軸方向の寸法Wは、0.02mm以上、0.13mm以下とすることが好ましく、0.03mm以上、0.11mm以下とすることがより好ましいが、このことは図10、表1に示すデータからも分かる。
【0049】
図11は、複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13の外周面の最大高さ粗さと圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、前述したように、最大高さ粗さがRmax1.5μmの場合は、凹部13cが設けられていない場合である。
表2は、図11に示すデータをまとめたものである。
【表2】
図11、表2から分かるように、外周面の最大高さ粗さを変化させれば圧入荷重の大きさとばらつきを変化させることができる。
この場合、外周面の最大高さ粗さを大きくするほど(表面粗さを粗くするほど)圧入荷重は小さくなり、ばらつきも小さくなる傾向がある。
なお、前述したように、凹部13cが設けられた外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となるようにすることが好ましいが、このことは図11、表2に示すデータからも分かる。
【0050】
図12は、締め代と圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図12は、一例として、複数の有底の孔状の凹部13cが設けられたブッシュ13に関する締め代と圧入荷重との関係を例示するためのグラフ図である。
図中の「◆」は外周面に凹部が設けられていないブッシュの場合、「■」は外周面の最大高さ粗さがRmax6μmの場合、「▲」は外周面の最大高さ粗さがRmax4μmの場合、「●」は外周面の最大高さ粗さがRmax3μmの場合である。
また、図12(a)は締め代のレンジが0.012mmまでの場合、図12(b)は締め代のレンジが0.03mmまでの場合である。
【0051】
図12(a)、(b)から分かるように、凹部13cを設けるようにすれば、締め代の値を高くしたり、締め代の値の範囲を広くしたりしても圧入荷重を小さくすることができる。また、圧入荷重のばらつきを小さくすることもできる。
この場合、外周面の最大高さ粗さがRmax4μm以上となるようにすれば、締め代の値を高くしたり、締め代の値の範囲を広くしたりしても圧入荷重をより小さくすることができる。また、圧入荷重のばらつきをより小さくすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 光レセプタクル、2 ハウジング、2a 基部、2b 空間、2c 顎部、2d 内周面、2e 孔部、3 ブッシュ、3a 孔、3b 外周面、3c 凹部、4 スリーブ、4a 孔、5 スタブ、5a フェルール、5b 光ファイバ、13 ブッシュ、13a 孔、13b 外周面、13c 凹部、14 屑、15 面状部分、100 光電変換素子パッケージ、110 フェルール、110a 光ファイバ、200 治具、201 治具、201a 突部、L 圧入位置寸法、W 幅寸法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタブを保持するブッシュと、
前記ブッシュが圧入される孔部を有したハウジングと、
を備えた光レセプタクルであって、
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、圧入部と、凹部と、が軸方向に交互に設けられたことを特徴とする光レセプタクル。
【請求項2】
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、少なくとも2つの前記圧入部と、前記2つの圧入部の間に設けられた溝状の前記凹部と、が設けられたことを特徴とする請求項1記載の光レセプタクル。
【請求項3】
前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.02mm以上、0.13mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光レセプタクル。
【請求項4】
前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.03mm以上、0.11mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光レセプタクル。
【請求項5】
前記圧入部のピッチ寸法は、0.05mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項6】
前記凹部の前記軸方向に直交する方向の寸法は、4μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項7】
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、有底の孔状の前記凹部が互いに離隔されて複数設けられたことを特徴とする請求項1記載の光レセプタクル。
【請求項8】
前記凹部が設けられることで、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする請求項7記載の光レセプタクル。
【請求項9】
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする請求項1記載の光レセプタクル。
【請求項10】
前記凹部は、バレル研磨法を用いて形成されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項11】
前記凹部は、圧入の際に生じる屑を収納することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項1】
スタブを保持するブッシュと、
前記ブッシュが圧入される孔部を有したハウジングと、
を備えた光レセプタクルであって、
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、圧入部と、凹部と、が軸方向に交互に設けられたことを特徴とする光レセプタクル。
【請求項2】
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、少なくとも2つの前記圧入部と、前記2つの圧入部の間に設けられた溝状の前記凹部と、が設けられたことを特徴とする請求項1記載の光レセプタクル。
【請求項3】
前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.02mm以上、0.13mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光レセプタクル。
【請求項4】
前記圧入部の前記軸方向の寸法は、0.03mm以上、0.11mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光レセプタクル。
【請求項5】
前記圧入部のピッチ寸法は、0.05mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項6】
前記凹部の前記軸方向に直交する方向の寸法は、4μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項7】
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかには、有底の孔状の前記凹部が互いに離隔されて複数設けられたことを特徴とする請求項1記載の光レセプタクル。
【請求項8】
前記凹部が設けられることで、前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする請求項7記載の光レセプタクル。
【請求項9】
前記ブッシュの外周面および前記孔部の内周面の少なくともいずれかの最大高さ粗さがRmax4μm以上とされたことを特徴とする請求項1記載の光レセプタクル。
【請求項10】
前記凹部は、バレル研磨法を用いて形成されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項11】
前記凹部は、圧入の際に生じる屑を収納することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図5】
【図6】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−255923(P2012−255923A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129062(P2011−129062)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【特許番号】特許第5051628号(P5051628)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【特許番号】特許第5051628号(P5051628)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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