説明

光伝送装置、管理装置および光伝送システム

【課題】 通信経路の切替制御を簡単にすることを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる光伝送装置は、切り替え可能な複数の通信経路を有するネットワークを構成し、TCM(Tandem Connection Monitoring)が設定された区間に配置され、OTN(Optical Transport Network)フレームのODU(Optical Data Unit)オーバヘッドにおけるTCM領域内のTTI(Trail Trace Identifier)値と、前記通信経路を切り替えた後のデータ送信先とを対応付けて格納するテーブルと、前記通信経路を切り替える時に、前記テーブルに格納された、切り替え先の前記通信経路に対応する前記TTI値と前記データ送信先とに基づき、該TTI値を格納したデータを該データ送信先に送信する送信部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、OTN(Optical Transport Network)インタフェースを用いる光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ITU−T勧告G.709“Interfaces for the optical transport network”ではOTNインタフェースを用いる光伝送システムの規格を定めている。OTNでは、WDM(Wavelength Division Multiplexing)方式およびTDM(Time Division Multiplexing)方式により階層的に多重されたデータが、隣接する光伝送装置に転送される。ODU(Optical Data Unit)の階層では、複数の光伝送装置を経由するコネクションを複数に区切り、区切られた区間毎に警報、性能監視を可能とするTCM(Tandem Connection Monitoring)が規定されている。
【0003】
図12はG.709規格上のODUオーバヘッドの形式を示す図である。また、図13はG.709規格上のODUオーバヘッド内のTCMi(i=1〜6)領域の構成を示す図である。図12に示すようにODUオーバヘッドにはTCM1からTCM6までの監視制御領域が設けられている。このため、隣接する光伝送装置間のリンク上に、最大6つのレベルで並列して監視制御情報を転送し、警報、性能などの監視をすることができる。
【0004】
従来の技術では、ネットワークを複数の区間(サブネットワーク)に区切り、通信経路の切り替えを行う区間の障害や輻輳などの発生を監視するためにTCMを用いる。TCMコネクションが設定された区間(以下、TCM区間とする。)の端点となる光伝送装置で障害を検出すると、障害が発生していない通信経路への切り替えを実施する。通信経路の切替制御は、各光伝送装置において光スイッチなどによって転送先を切り替える動作が必要となるため、GMPLS(Generalized Multi−Protocol Label Switching)のようなパス制御手段を用い、切り替え対象となる通信経路上にある各光伝送装置の転送状態を変更する(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−36412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術では、TCM区間を管理する通信事業者や組織などがTCM区間によって異なる場合に、あるTCM区間を管理するための監視制御情報が、他の通信事業者や組織によって管理されている別のTCM区間を経由している間に廃棄または誤処理されるという問題があった。このため、TCM区間を管理する通信事業者や組織間で、共通した制御通信手段を持つか、異なる制御通信手段であっても混在可能にする取り決めをするか、または、制御通信用に別途通信経路を設けるなどの対応が必要になり、通信経路の切替制御が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ネットワーク内で障害や輻輳が発生した場合に、光伝送装置間の通信経路を切り替える制御パラメータとしてODUオーバヘッドのTCM領域のTTI(Trail Trace Identifier)値を活用することによって、通信経路の切替制御を簡単にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる光伝送装置は、切り替え可能な複数の通信経路を有するネットワークを構成し、TCMが設定された区間に配置される光伝送装置であって、OTNフレームのODUオーバヘッドにおけるTCM領域内のTTI値と、前記通信経路を切り替えた後のデータ送信先とを対応付けて格納するテーブルと、前記通信経路を切り替える時に、前記テーブルに格納された、切り替え先の前記通信経路に対応する前記TTI値と前記データ送信先とに基づき、該TTI値を格納したデータを該データ送信先に送信する送信部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信経路の切替制御を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1にかかるネットワークの構成例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる光伝送装置の構成例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1にかかる光伝送装置2の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1にかかる光伝送装置3の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1にかかる光伝送装置4の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1にかかる光伝送装置5の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1にかかるTCM区間の送信端となる光伝送装置において、通信経路を切り替える処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1にかかるTCM区間の中継点または受信端となる光伝送装置において、通信経路を切り替える処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態2にかかるネットワークの構成例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2にかかる光伝送装置35のTTI受信参照テーブルの一例を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3にかかるネットワークの構成例を示す図である。
【図12】G.709規格上のODUオーバヘッドの形式を示す図である。
【図13】G.709規格上のODUオーバヘッド内のTCMi(i=1〜6)領域の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、それぞれが本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するためのものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態にかかるネットワークの構成例を示す図である。図示するように、本実施の形態にかかるネットワークでは、光伝送装置1〜6を介してクライアント装置7、8が接続される。クライアント装置と光伝送装置または光伝送装置間を接続するインタフェース21〜29は、例えば、送受用の一対の光ファイバなどによって実現される。クライアント装置7とクライアント装置8との間でデータを送受信する通信経路は、ネットワークで発生する障害や輻輳を避けるように設定される。管理装置11は監視制御網12を介して光伝送装置1〜6を監視する。なお、図1では一例として、クライアント装置7からクライアント装置8へのデータ送信の場合を示している。
【0013】
図2は、本実施の形態にかかる光伝送装置の構成例を示す図である。図示するように、本実施の形態にかかる光伝送装置は、パス制御部100と、ラインインタフェース部200、210、220と、スイッチ部300とを備える。なお、図2の各部の構成は実施の形態の説明のために一例として示したものであり、各部の実装形態はこの限りではない。例えば、各部の機能が共通するハードウェアによって実現されることや、各部の機能が複数のハードウェアによって実現されるなどの変形を許容する。以降の実施の形態における光伝送装置も同様の構成とする。
【0014】
パス制御部100は、スイッチ設定テーブル101と、TTI受信参照テーブル102と、パス切替制御テーブル103を有する。これらのテーブルの内容は管理装置11の要求に基づいて変更される。図1における管理装置11から各光伝送装置への矢印はテーブル内容を変更する要求を示す。
【0015】
スイッチ設定テーブル101は、現在のスイッチ部300のスイッチ設定内容を格納する。TTI受信参照テーブル102は、ラインインタフェース部200にて受信したOTNフレームのODUオーバヘッドにおけるTCM領域内のTTI値に応じて、スイッチ設定テーブル101の内容を変更するために使用される。また、同テーブルには、光伝送装置がTCM区間の受信端であるかが登録されており、この情報に基づきTCM区間の信号伝送の監視を開始する。パス切替制御テーブル103は、障害などの検出を契機として、TCM区間の端点で現在使用している通信経路から他の通信経路への切り替えを実施する際に、切り替え先の通信経路のスイッチ設定内容を格納する。
【0016】
ラインインタフェース部200は、TCM TTI参照部201と、OTNフレーム処理部202と、バッファ203とを有する。また、ラインインタフェース部210は、TCM TTI設定部211と、OTNフレーム生成部212とを有する。ラインインタフェース部220はラインインタフェース部210と同様の構成である。
【0017】
ラインインタフェース部200、210、220はそれぞれ隣接する光伝送装置とデータを送受する。図2では説明を簡単にするために、ラインインタフェース部200は、隣接する光伝送装置から出力されたデータを受信する構成を示し、ラインインタフェース部210は隣接する光伝送装置にデータを送信する構成を示している。ラインインタフェース部200、210、220は隣接する光伝送装置から出力されるデータを受信する構成と隣接する光伝送装置に送信する構成の両方を備えていてもよい。なお、本実施の形態において、ラインインタフェース部200は受信部の一例である。ラインインタフェース部210は送信部の一例である。
【0018】
次に、光伝送装置の動作について説明する。ラインインタフェース部200のOTNフレーム処理部202は、データ列に対してフレーム同期をとりOTNフレームを取り出す。TCM TTI参照部201はOTNフレーム中のTCM領域のTTI値を参照する。ここで参照されたTTI値がTTI受信参照テーブル102に格納されたTTI値と一致していれば、一致したTTI値と対応付けられているデータ送信先に受信データが転送される。バッファ203はOTNフレームを一時的に保持する。上記参照により、TTI値が一致していれば、バッファ203からスイッチ部300にデータが送られる。
【0019】
スイッチ部300は、スイッチ設定テーブル101の内容に基づき、ラインインタフェース部200にて受信したデータをラインインタフェース部210またはラインインタフェース部220に転送する。
【0020】
ラインインタフェース部210、220では、スイッチ部300から転送されたデータに対して、TCM TTI設定部211がTTI値の設定を行い、OTNフレーム生成部212がそのデータからOTNフレームを生成する。生成されたOTNフレームは外部へ出力される。
【0021】
次に、図1に示すネットワークの構成例において、通信経路を切り替える時の光伝送装置の動作について説明する。この説明では、光伝送装置1、光伝送装置2、光伝送装置3、光伝送装置4、光伝送装置6を順に通る通信経路から、光伝送装置1、光伝送装置2、光伝送装置5、光伝送装置4、光伝送装置6を順に通る通信経路に切り替える場合を一例として説明する。
【0022】
管理装置11は、光伝送装置2〜5のパス制御部100の各テーブルの内容を予め登録する。例えば、光伝送装置2〜5の各テーブルには後述する図3〜6の上段(a)に示す通信経路切り替え前の内容となるように予め設定する。なお、各テーブルの内容は管理装置11の要求に応じて、信号伝送状況に対応するよう適時更新することができる。光伝送装置2〜5のスイッチ部300は、スイッチ設定テーブル101の内容に基づき、データを転送する。
【0023】
図3は、本実施の形態にかかる光伝送装置2の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。図3の上段(a)は通信経路が切り替わる前、下段(b)は通信経路が切り替わった後の各テーブルの内容を示す。図4、図5、図6についても同様とする。
【0024】
スイッチ設定テーブル101は、受信インタフェース番号、受信スロット番号、送信先インタフェース番号、送信先スロット番号を格納する。受信インタフェース番号はデータを受信するインタフェースの番号を示し、送信先インタフェース番号は、データの送信先となるインタフェースの番号を示す。なお、本実施の形態では説明のため、送信先インタフェース番号、受信インタフェース番号は図1に付された符号と対応させている。受信スロット番号は、受信するデータに割り当てられるタイムスロットを示し、送信先スロット番号は、送信するデータに割り当てられるタイムスロットの番号を示す。光伝送装置2は、スイッチ設定テーブル101に従い、受信インタフェース番号「22」、タイムスロット番号「7」によって特定される受信元から受信したデータを、送信先インタフェース番号「23」、タイムスロット番号「6」によって特定される送信先に送信する。すなわち、通信経路が切り替わる前では光伝送装置2は、光伝送装置1からデータを受信し、光伝送装置3にデータを転送する。
【0025】
パス切替制御テーブル103はTCMレベル、送信TTI値、送信先インタフェース番号、送信先スロット番号、切替先インタフェース番号、切替先スロット番号を格納する。ネットワークの障害や輻輳の発生などの信号伝送状況に応じて通信経路を切り替える時、図3の下段(b)に示すように、スイッチ設定テーブル101内の送信先インタフェースと送信先スロット番号は、切替先インタフェース番号と切替先スロット番号によって書き換えられる。切替先インタフェース番号は通信経路を切り替えた後のデータ送信先となるインタフェースの番号であり、切替先スロット番号は通信経路を切り替えた後に送信するデータに割り当てられるタイムスロット番号である。切替先インタフェース番号、切替先スロット番号はTCMレベル、送信TTI値に対応付けられてパス切替制御テーブル103に格納されている。本実施の形態では、パス切替制御テーブル103には切替先インタフェース番号「24」と切替先スロット番号「8」が格納されている。光伝送装置2において、光伝送装置1から受信したデータを光伝送装置3に転送する通信経路から光伝送装置5に転送する通信経路に切り替える場合には、送信先インタフェース番号が「23」から「24」に、送信先スロット番号が「6」から「8」にそれぞれ書き換えられる。
【0026】
TCMレベルと送信TTI値は通信経路の切り替えに用いる情報である。図3に示すように、TCMレベルは「2」、送信TTI値はAB_CD_EFである。すなわち、ODUオーバヘッドのTCM2に格納されるTTI値は文字列で表示した時にAB_CD_EFを表すビット列となる。なお、文字列AB_CD_EFは一例として示すものであり、使用するTCMレベルとそのTCM区間に対して、ユニークな値であればどのような値を用いてもよい。すなわち、ネットワークをいくつかの区間に分割して、その分割された1つの区間(サブネットワーク)に対して1つのTCMレベルを使用した場合、TCMレベルに対応するTTI値はサブネットワーク毎にユニークな値となる。
【0027】
本実施の形態では、切り替える通信経路を識別するためにTTI値がサブネットワーク上でユニークなことを前提とし、TTI値と切り替え先となる通信経路が対応付けられている。すなわち、後段の装置がTTI値を参照した時に、TTI値に基づいてスイッチ設定内容を書き換えることで、現状の通信経路から他の通信経路への部分的な切り替えが実現される。
【0028】
図4は、本実施の形態にかかる光伝送装置3の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。スイッチ設定テーブル101には、受信インタフェース番号「23」、受信スロット番号「6」、送信先インタフェース番号「25」、送信先スロット番号「5」が格納されている。すなわち、光伝送装置2からデータを受信し、受信したデータを光伝送装置4へ送信する内容を示す。光伝送装置2から受け取ったデータの転送先として光伝送装置4以外を指定していない場合、図示するように光伝送装置3のTTI受信参照テーブル102、パス切替制御テーブル103には何も格納していなくてもよい。
【0029】
図5は、本実施の形態にかかる光伝送装置4の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。通信経路が切り替わると、光伝送装置3からデータを受信する状態から、光伝送装置5からデータを受信する状態に切り替わる。このため、図5に示すようにスイッチ設定テーブル101の受信インタフェース番号は「25」から「27」に、受信スロット番号は「5」から「7」にそれぞれ書き換えられる。
【0030】
TTI受信参照テーブル102は、受信インタフェース番号、受信スロット番号、TCMレベル、受信TTI値、送信先インタフェース番号、送信先スロット番号、受信端を格納する。同テーブルにおける、受信インタフェース番号と受信スロット番号、送信先インタフェース番号と送信先スロット番号はそれぞれ、通信経路を切り替えた後のデータの送信先または受信元に対応するインタフェースの番号と、そのデータに割り当てられたタイムスロットの番号である。受信TTI値はTCM区間で受信データから抽出されると期待されるTTI値である。図5に示すように、TTI受信参照テーブル102の内容は、受信インタフェース番号「27」、受信スロット番号「7」によって特定される受信元からデータを受信し、受信データから抽出したODUオーバヘッドのTCMレベルが「2」、TTI値がAB_CD_EFである時、送信先インタフェース番号「28」、送信先スロット番号「1」によって特定される送信先に受信データを転送することを示す。また、光伝送装置がTCM区間の受信端であれば「1」が格納され、受信端でなければ「0」が格納される。光伝送装置4はTCMレベル「2」の区間の受信端であるので値「1」が格納されている。
【0031】
図6は、本実施の形態にかかる光伝送装置5の通信経路切替前後のスイッチ設定テーブル、TTI受信参照テーブル、パス切替制御テーブルの一例を示す図である。図6の上段(a)に示すように、TTI受信参照テーブル102の内容は、受信インタフェース番号「24」、受信スロット番号「8」によって特定される受信元からデータを受信し、受信データから抽出したOTNフレームのODUオーバヘッドにおけるTCMレベルが2、TTI値がAB_CD_EFである時、送信先インタフェース番号「27」、送信先スロット番号「7」によって特定される送信先に転送することを示す。通信経路切り替え前のスイッチ設定テーブル101は、図6の上段(a)に示すように、データの送受をしないので空の内容となっている。通信経路切り替え後のスイッチ設定テーブル101は、図6の下段(b)に示すように、受信インタフェース番号「24」、受信スロット番号「8」、送信先インタフェース番号「27」、送信先スロット番号「7」が格納されており、光伝送装置2からデータを受信し、光伝送装置4にデータを転送する内容を示す。
【0032】
次に、TCM区間内で障害や輻輳などが発生したときの光伝送装置の各動作について説明する。本実施の形態においては、光伝送装置3と光伝送装置4の間の伝送路で障害が発生し、光伝送装置4にて光入力断を検出したときの動作を一例として説明する。光伝送装置4は光入力断を検出すると図13に示すTCM2(i=2)のBDI(Backward Defect Indication)を用いて、光伝送装置2にTCM区間内に障害が発生したことを認識させる。
【0033】
光伝送装置2はTCM区間における通信経路の切替制御情報(送信TTI値)の送信端である。次に、光伝送装置2において、通信経路を切り替える処理について説明する。図7は、本実施の形態にかかるTCM区間の送信端である光伝送装置において、通信経路を切り替える処理の一例を示すフローチャートである。
【0034】
上記により、光伝送装置2はネットワーク内で光入力断などの通信経路の障害を検出する(ステップST71)。光伝送装置2が通信経路の障害を検出すると、光伝送装置2では、パス切替制御テーブル103の切替先インタフェース番号と切替先スロット番号を参照し(ステップST72)、切替先インタフェース番号と切替先スロット番号を取得する(ステップST73)。次に、送信するデータに、パス切替制御テーブル103に登録されている送信TTI値を格納し、切替先インタフェース番号によって特定されるデータ送信先にデータから生成したOTNフレームの送信を開始する(ステップST74)。このとき、切替先インタフェース番号と切替先スロット番号によって、送信先インタフェース番号と送信先スロット番号を書き換えてスイッチ設定テーブル101の内容が更新される(ステップST75)。なお、ステップST74とステップST75は並行して行われるものであってもよく、または、図7とは順序が逆になっていてもよい。
【0035】
この結果、図3の下段(b)に示すように、スイッチ設定テーブル101の内容は、送信先インタフェース番号「24」、送信先スロット番号「8」に書き換わり、データの転送先が、光伝送装置3から光伝送装置5に切り替わる。また、ODUオーバヘッドのTCM2のTTI値はAB_CD_EFとなる。
【0036】
次に、TCM区間の中継点または受信端である光伝送装置において、通信経路を切り替える処理を説明する。本実施の形態ではTCM区間の中継点となるのは光伝送装置5、受信端となるのは光伝送装置4である。図8は、本実施の形態にかかるTCM区間の中継点または受信端となる光伝送装置において、通信経路を切り替える処理の一例を示すフローチャートである。
【0037】
光伝送装置は、受信データから取り出したOTNフレームのODUオーバヘッドにおけるTCM領域のTTI値を受信する(ステップST81)。次に、TTI値が解除を示す予め決めた固定値(0xFFFFなど)であるか、または、TCM領域内のSTAT値(PM status)が、例えば、OCI(Open Connection Indication)「110」などの解除を示す値であるかを判定する(ST811)。これらが解除を示している場合には、データを受信した受信元に対応する受信インタフェース番号および受信スロット番号についてスイッチ設定を解除し(ステップST812)、処理を終了する。このとき受け取ったデータは他の光伝送装置に転送されない。一方、これらが解除を示していない場合には、TTI受信参照テーブル102を参照する(ステップST82)。次に、光伝送装置は、受信データから抽出したTCMレベルとTTI値と一致するTCMレベルとTTI値がTTI受信参照テーブル102に登録されているか判断する(ステップST821)。一致するTCMレベルとTTI値が登録されていない場合には、受信したデータは廃棄されて(ステップ822)、処理を終了する。一致するTCMレベルとTTI値が登録されている場合には、TTI受信参照テーブル102から受信インタフェース番号、受信スロット番号、送信先インタフェース番号、送信先スロット番号を取得する(ステップST83)。次に、光伝送装置は、取得したデータ送信先に対して、このデータから生成したOTNフレームの送信を開始する(ステップST84)。このとき、取得された受信インタフェース番号、受信スロット番号、送信先インタフェース番号、送信先スロット番号によってスイッチ設定テーブル101の内容が更新される(ステップST85)。また、光伝送装置は自身がTCM区間の受信端であるかをTTI受信参照テーブル102から判定する(ステップST831)。TTI受信参照テーブル102の受信端の値が「1」である場合には、受信したTTI値を切り替えた後の通信経路において受信すると期待される受信期待TTI値として、そのTCM区間の通信経路の誤接続の監視を開始する(ステップST86)。なお、ステップST84とステップST85は並行して行われるものであってもよく、または、図8とは順序が逆になっていてもよい。
【0038】
上記の動作により、光伝送装置5はデータからTTI値を受信し、スイッチ設定テーブル101の更新を行う。図6の下段(b)に示すように、スイッチ設定テーブル101の内容は、受信インタフェース番号「24」、受信スロット番号「8」、送信先インタフェース番号「27」、送信先スロット番号「7」に書き換わり、光伝送装置2から受け取ったデータを光伝送装置4へと転送する。また、送信するデータのODUオーバヘッド内のTCM2のTTI値はAB_CD_EFとなる。
【0039】
同様に、光伝送装置4はデータからTTI値を受信し、スイッチ設定テーブル101の更新を行う。図5の下段(b)に示すように受信インタフェース番号が「27」、受信スロット番号「7」に書き変わり、光伝送装置5からデータを受信するようにスイッチ設定テーブル101が更新される。さらに、光伝送装置4は受信端であるため、受信TTI値を切り替え後の通信経路において受信データから抽出されると期待される受信期待TTI値として設定する。通信経路切り替え後に受信したデータから抽出したTTI値と受信期待TTI値を照合し、一致していなければ通信経路に誤接続が発生したと判断する。このように、G.709規格に基づく受信TTI値と比較した誤接続検出や、ODUオーバヘッドのTCM内のその他の領域を使って障害の通知と検出を行う。
【0040】
上記により、障害発生を契機として、光伝送装置2、光伝送装置3、光伝送装置4を順に経由する通信経路は、光伝送装置2、光伝送装置5、光伝送装置4を順に経由する通信経路に切り替わる。
【0041】
以上のように、ネットワーク内で障害や輻輳が発生した場合に、通信経路を切り替える制御パラメータとしてOTNフレームのODUオーバヘッドにおけるTCM領域のTTI値を用い、TTI値に対応付けられたデータ送信先をテーブルに登録しておき、TTI値に基づいて通信経路を切り替える構成とした。TTI値はTCM区間毎にユニークな値であり、TCM区間毎に独立した制御通信をすることが可能となる。すなわち、あるTCMレベルのTTI値は他のTCMレベルが設定された区間では参照されないため、監視制御情報が他のTCM区間を経由している間に廃棄されるなどの制御通信の妨げを受けない。また、ある区間に複数のTCMレベルが重複して設定されていたとしても、TCMレベル毎にデータ転送先となる光伝送装置やインタフェース番号などの識別情報を定めることができ、装置の識別情報などの制御情報の仕様を統一的にする制限がなくなる。このため、TCM区間を管理する通信事業者や組織などがTCM区間によって異なることがあったとしても、他の通信事業者や組織などの制御通信を妨げず、他の通信事業者や組織などと制御情報の仕様を統一的にする取り決めも必要ない。これにより、通信経路の切替制御を簡単にすることができる。さらに、TTI値の読み取りとテーブルの照合によってTTI値に対応付けられたデータ転送先が特定できるため、障害や輻輳などの発生といった信号伝送状況に応じて高速な通信経路の切り替えを実現することが可能となる。またさらに、通信経路の切り替え後に、TTI情報をそのまま通信経路の誤接続の監視に使用し、G.709規格に基づくTCMの監視を自動的に継続することができるため、新たなTCMの設定が不要であり、切り替え後の運用を簡単にすることができる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1では、TTI受信参照テーブル102、パス切替制御テーブル103に登録される内容は1つのTCMレベルに関するものであったが、本実施の形態では複数登録するものとしている。
【0043】
図9は本実施の形態にかかるネットワークの構成例を示す図である。光伝送装置32と光伝送装置34を端点とする通信経路には、光伝送装置32、光伝送装置33、光伝送装置34を順に経由する通信経路と、インタフェース43にて障害が発生した場合に、光伝送装置32、光伝送装置35、光伝送装置33、光伝送装置34を順に経由する通信経路と、インタフェース44で障害が発生した場合に、光伝送装置32、光伝送装置35、光伝送装置36、光伝送装置34を順に経由する通信経路と、が存在する。
【0044】
このような通信経路において、図示するように、光伝送装置32、光伝送装置35、光伝送装置36、光伝送装置34の通信経路にTCM1のコネクションを設定し、さらに、光伝送装置32、光伝送装置35、光伝送装置33の通信経路にTCM2のコネクションを設定する。光伝送装置32のパス切替制御テーブル103にはTCMレベルが「1」と「2」についてユニークなTTI値が設定され、またそのTTI値毎に対応付けられた通信経路を切り替えた後のデータ送信先の内容が登録される。これによって、光伝送装置32がインタフェース43で障害が発生したと認識した場合には、TCM2の送信TTI値がTCM TTI領域に格納され、光伝送装置32、光伝送装置35、光伝送装置33の順の通信経路への切り替えがなされる。また、光伝送装置32がインタフェース44で障害が発生したと認識した場合には、TCM1の送信TTI値がTCM TTI領域に格納され、光伝送装置32、光伝送装置35、光伝送装置36、光伝送装置34の順の通信経路への切り替えがなされる。
【0045】
光伝送装置32からデータを受信した光伝送装置35では、データから抽出したTTI値に基づいて通信経路を切り替える。図10は、本実施の形態にかかる光伝送装置35のTTI受信参照テーブルの一例を示す図である。図示するように、受信インタフェース番号「47」、受信スロット番号「7」は共通している。しかし、インタフェース44に障害が発生した場合は、TCMレベル「1」、受信TTI値はAB_CD_EFであり、インタフェース43に障害が発生した場合は、TCMレベル「2」、受信TTI値はGH_IJ_KLである。受信TTI値は実施の形態1と同様にTCMレベルとそのTCM区間に応じてユニークな値である。光伝送装置35は受信データから抽出したTTI値に対応する送信先インタフェース番号、送信先スロット番号で特定されるデータ送信先にデータを送信する。以上によって、ネットワークの障害や輻輳が生じるなどの信号伝送状況に応じて所望の切り替え動作を実現することができる。なお、本実施の形態ではTTI受信参照テーブル102、パス切替制御テーブル103に登録される内容は2つのTCMレベルとTTI値に関するものであるが、切り替える通信経路が2つ以上ある場合は、2つ以上であってもよい。
【0046】
実施の形態3.
通信経路の切り替えの時に、切り替え先のインタフェース、タイムスロットを使用する別の通信経路がある場合は、通信経路の誤接続が発生する場合がある。図11は本実施の形態にかかるネットワーク構成の一例を示す図である。図示するネットワークにおいて、誤接続が発生する場合について説明する。クライアント装置66とクライアント装置67の間のデータ伝送のために、光伝送装置64、光伝送装置65を経由する低優先の通信経路が設定され、クライアント装置68とクライアント装置69との間のデータ伝送のために、光伝送装置61、光伝送装置62、光伝送装置63を経由する高優先の通信経路が設定されている。
【0047】
上記の高優先の通信経路において障害(例えばインタフェース72、または、インタフェース73)が発生し、通信経路は低優先の通信経路に切り替わるとする。この場合、光伝送装置61、光伝送装置64、光伝送装置65のスイッチ設定テーブル101の送信先インタフェース番号と送信先スロット番号は、通信経路の切り替えに対応する変更が順次行われる。しかしながら、光伝送装置64のスイッチ設定テーブル101が変更された直後の状態では、クライアント装置68が送信するデータは、その下流側の光伝送装置65のスイッチ設定テーブル101が切り替え前の設定内容から切り替え後の設定内容に変更されるまでの間、光伝送装置61、光伝送装置64、光伝送装置65を経由してクライアント装置67に転送される状態が一時的に発生する。
【0048】
このような誤接続を回避するために、光伝送装置64において、すでに設定済みのタイムスロットにデータを転送する場合は、OTNフレームを生成する際にOCI(ODUのSTAT値(PM Status)が110を表すビット列)などのスイッチ設定を解除する特定のパターンを挿入して送信する。このようにすると、光伝送装置64より下流側の光伝送装置65では、図8のステップST811、ST812の動作により、スイッチ設定が解除されるため、クライアント装置67にデータが誤って転送されることを防止することができる。また、図8のステップST821の動作により、TTI受信参照テーブル102に登録されていない受信TTI値のデータは廃棄されるようにバッファ203を制御する。
【0049】
以上のように、通信経路切り替えの時に、切り替え先の通信経路の上流側の光伝送装置が転送するデータに下流側の光伝送装置でのスイッチ設定を解除するパターンを挿入する構成とした。これにより、通信経路切り替えの際に起こる誤接続を防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
1〜6 光伝送装置
7、8 クライアント装置
11 管理装置
12 監視制御網
21〜29 インタフェース
31〜37 光伝送装置
38、39 クライアント装置
41〜50 インタフェース
61〜65 光伝送装置
66〜69 クライアント装置
71〜79 インタフェース
100 パス制御部
101 スイッチ設定テーブル
102 TTI受信参照テーブル
103 パス切替制御テーブル
200、210、220 ラインインタフェース部
201 TCM TTI参照部
202 OTNフレーム処理部
203 バッファ
211 TCM TTI設定部
212 OTNフレーム生成部
300 スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り替え可能な複数の通信経路を有するネットワークを構成し、TCM(Tandem Connection Monitoring)が設定された区間に配置される光伝送装置であって、
OTN(Optical Transport Network)フレームのODU(Optical Data Unit)オーバヘッドにおけるTCM領域内のTTI(Trail Trace Identifier)値と、前記通信経路を切り替えた後のデータ送信先とを対応付けて格納するテーブルと、
前記通信経路を切り替える時に、前記テーブルに格納された、切り替え先の前記通信経路に対応する前記TTI値と前記データ送信先とに基づき、該TTI値を格納したデータを該データ送信先に送信する送信部と、を備えることを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
前記テーブルは、切り替え先となる前記通信経路にそれぞれ対応する異なる複数の前記TTI値と、前記通信経路を切り替えた後のデータ送信先とを対応付けて格納することを特徴とする請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
切り替え可能な複数の通信経路を有するネットワークを構成し、TCM(Tandem Connection Monitoring)が設定された区間に配置される光伝送装置であって、
データを受信する受信部と、
OTN(Optical Transport Network)フレームのODU(Optical Data Unit)オーバヘッドにおけるTCM領域内のTTI(Trail Trace Identifier)値と、受信データの転送先となるデータ送信先とを対応付けて格納するテーブルと、
前記受信データから抽出した前記TTI値が、前記テーブルに格納された前記TTI値と一致する場合に、前記テーブルにおいて該TTI値に対応付けられた前記データ送信先に前記受信データを転送する送信部と、を備えることを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
前記テーブルは、切り替え先となる前記通信経路にそれぞれ対応する異なる複数の前記TTI値と、前記受信データの転送先となるデータ送信先とを対応付けて格納することを特徴とする請求項3に記載の光伝送装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光伝送装置は、
同一レベルの前記TCMが設定された区間の端点である場合に、前記テーブルに格納された前記TTI値と、前記受信データから抽出される前記TTI値とを照合して、前記区間における通信経路の誤接続を監視することを特徴とする光伝送装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1つに記載の光伝送装置は、
前記受信データから抽出される前記TTI値が前記テーブルに格納された前記TTI値以外の値である場合、または、前記受信データの前記TCM領域に、前記受信データの転送先を決定する設定を解除する値が格納されている場合には、該受信データを転送しないことを特徴とする光伝送装置。
【請求項7】
前記通信経路に切り替える時に、
切り替えた後の前記通信経路上にある下流側の光伝送装置において、前記光伝送装置の前記受信データの転送先を決定する設定が、前記通信経路を切り替える前の設定から前記通信経路を切り替えた後の設定に更新されるまでの間に、前記通信経路を切り替える前の設定を解除する値を前記TCM領域に格納したデータを前記下流側の光伝送装置に送信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の光伝送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の光伝送装置の前記テーブルに対して、前記TTI値および前記データ送信先を登録する管理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光伝送装置を送信端とし、請求項3に記載の光伝送装置を中継点または受信端とする光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−165110(P2012−165110A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22724(P2011−22724)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】