説明

光信号モニタ装置

【課題】本発明は、AD変換器でのサンプリング周波数を電界吸収型光変調器でのサンプリング周波数に同期させることを目的とする。
【解決手段】本願発明の光信号モニタ装置は、光パルス発生器2と、光サンプリングゲートとしての電界吸収型光変調器3と、バイアス電圧発生器4と、受光器5と、AD変換器6と、光カプラ7と、クロック再生器21と、遅延器22と、を備え、等価サンプリング方式で被測定光信号Pxの波形評価を行なう光信号モニタ装置において、受光器5からの電気信号から被測定光信号Pxをサンプリングするサンプリング周波数のクロック信号Esを抽出するクロック再生器21をさらに備え、AD変換器6は、クロック再生器21からのクロック信号Esに同期して電気信号Eyをディジタル信号に変換することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号モニタ装置に関し、特に、自励発振型のパルス光源を用いて被測定光信号のサンプリングを行なう光信号モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分解能の等価サンプリングを行なうために、電界吸収型光変調器の相互吸収飽和特性を用いた光信号モニタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図2は、従来の電界吸収型光変調器の相互吸収飽和特性を用いた光信号モニタ装置の概略構成図である。従来の光信号モニタ装置は、一定周期のサンプリング用光パルスPsを発生する光パルス発生器102と、被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPsとの相互吸収飽和特性を利用して被測定光信号Pxをサンプリングする電界吸収型光変調器3と、電界吸収型光変調器3に直流バイアス電圧を印加するバイアス電圧発生器4と、電界吸収型光変調器3からのサンプリング後の光信号Pyを電気信号Eyに変換する受光器5と、電気信号Eyをアナログ信号からディジタル信号Dyに変換するAD(Analog−to−Digital)変換器6と、を備える。AD変換器6からのディジタル信号Dyを観察することで、等価サンプリング方式で被測定光信号Pxのアイ波形の評価を行なう。
【0004】
AD変換器6でのサンプリング周波数は、電界吸収型光変調器3でのサンプリング周波数と同期している必要がある。そのため、従来の光信号モニタ装置では、光パルス発生器102の外部に備わる基準信号発生器101から入力されるクロック信号に従ってサンプリング用光パルスPsを発生する光パルス発生器102を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/087809 A1
【特許文献2】特開2008−311423
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mathias Westlund,Henrik Sunnerud,Magnus Karlsson,and Peter A.Andrekson,"Software−Synchronized All−Optical Sampling for Fiber Communication Systems,"IEEE Journal of Lightwave Technology,vol.23,no.3,pp.1088−1099,March 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、外部から入力されるクロック信号に従ってサンプリング用光パルスを発生する光パルス発生器は構成が複雑で高価になる問題があった。
【0008】
受動モード同期ファイバレーザは安価な構成でサンプリング用光パルスを生成することができる。しかし、受動モード同期ファイバレーザは自励発振型のデバイスであるため、従来の構成では、AD変換器でのサンプリング周波数を電界吸収型光変調器でのサンプリング周波数に同期させることはできない。
【0009】
そこで、本発明は、AD変換器でのサンプリング周波数を電界吸収型光変調器でのサンプリング周波数に同期させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明の光信号モニタ装置は、被測定光信号を光電変換した電気信号からサンプリング周波数のクロックを抽出するクロック再生器を設け、電気信号のサンプリング及びAD変換を、クロック再生器が抽出したクロックで行なうことを特徴とする。
【0011】
具体的には、本願発明の光信号モニタ装置は、サンプリング用光パルスを出力する光パルス発生器と、前記サンプリング用光パルスに従って被測定光信号をサンプリングする光サンプリングゲートと、前記光サンプリングゲートから出力された光信号を電気信号に変換する受光器と、前記受光器からの前記電気信号をディジタル信号に変換するAD(Analog−to−Digital)変換器と、を備え、等価サンプリング方式で前記被測定光信号の波形評価を行なう光信号モニタ装置において、前記受光器からの前記電気信号から前記被測定光信号をサンプリングするサンプリング周波数のクロック信号を抽出するクロック再生器をさらに備え、前記AD変換器は、前記クロック再生器からの前記クロック信号に同期して前記電気信号を前記ディジタル信号に変換することを特徴とする。
【0012】
クロック再生器をさらに備えることで、光サンプリングゲートでのサンプリング周波数のクロックを抽出することができる。これにより、AD変換器でのサンプリング周波数を光サンプリングゲートでのサンプリング周波数に同期させることができる。
また、光学部品を用いることなく光サンプリングゲートでのサンプリング周波数のクロックを抽出することができる。これにより、簡易な構成で本願発明の光信号モニタ装置を提供することができる。
【0013】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記AD変換器は、前記受光器からの前記電気信号を前記クロック信号に同期してサンプリングする電気サンプリグゲートを含み、前記電気サンプリングゲートの出力信号をディジタル信号に変換することが好ましい。
【0014】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記光サンプリングゲートは、相互吸収飽和特性を利用して前記被測定光信号のサンプリングを行なう電界吸収型光変調器であることが好ましい。
【0015】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記光パルス発生器は、受動モード同期ファイバレーザであることが好ましい。
本発明により、簡易な構成でサンプリング用光パルスを発生させることができる。これにより、簡易な構成で本願発明の光信号モニタ装置を提供することができる
【0016】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、等価サンプリング方式で被測定光信号の波形評価を行なう光信号モニタ装置において、AD変換器でのサンプリング周波数を電界吸収型光変調器でのサンプリング周波数に同期させることができる。これにより、自励発振型の光パルス発生器を用い、高分解能の光信号モニタ装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る光信号モニタ装置の概略構成図である。
【図2】従来の光信号モニタ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
図1は、本実施形態に係る光信号モニタ装置の概略構成図である。本実施形態に係る光信号モニタ装置は、光パルス発生器2と、光サンプリングゲートとしての電界吸収型光変調器3と、バイアス電圧発生器4と、受光器5と、AD変換器6と、光カプラ7と、クロック再生器21と、遅延器22と、を備える。
【0021】
光パルス発生器2は、サンプリング用光パルスPsを出力する。バイアス電圧発生器4は、サンプリング用光パルスPsによって電界吸収型光変調器3において相互吸収飽和が生じるように電圧を調整し、電界吸収型光変調器3にバイアス電圧を印加する。電界吸収型光変調器3に、被測定光信号Px及びサンプリング用光パルスPsが入力される。これにより、電界吸収型光変調器3は、サンプリング用光パルスPsと被測定光信号Pxとの相互吸収飽和特性を利用して被測定光信号Pxのサンプリングを行なう。電界吸収型光変調器3は、サンプリング後の光信号Pyを出力する。
【0022】
光パルス発生器2は、共振器を利用してサンプリング用光パルスを出力する自励発振型の光源である。例えば、光ファイバ型のモード同期ファイバレーザ、又は、半導体型の集積化モード同期半導体レーザである。光パルス発生器2は、自励発振型の受動モード同期ファイバレーザであることが好ましい。これにより、短パルスのサンプリング用光パルスPsを簡易に生成することができる。
【0023】
電界吸収型光変調器3から出力された光信号Pyは、受光器5に入力される。受光器5は、光信号Pyを電気信号Eyに変換して出力する。AD変換器6は、電気信号Eyをサンプリングした後、ディジタル信号Dyに変換する。AD変換器6からのディジタル信号Dyを収集することで、被測定光信号Pxのアイ波形を観察することができる。これにより、等価サンプリング方式で被測定光信号Pxの波形評価を行なうことができる。
【0024】
非特許文献1や特許文献2に記載のソフトウェアによる同期法を用いると、サンプリング用光パルスの繰返し周波数を厳密に設定しなくてもディジタル信号Dyからアイ波形を生成することができる。
【0025】
受光器5から出力される電気信号Eyには、電界吸収型光変調器3でのサンプリング周波数fの成分が含まれている。そこで、クロック再生器21は、受光器5からの電気信号Eyから、電界吸収型光変調器3でのサンプリング周波数fのクロックを抽出して、周波数fのクロック信号Esを出力する。遅延器22は、受光器5からの電気信号EyのピークをAD変換器6で取得するように、クロック再生器21の出力するクロック信号Esの位相を合わせる。AD変換器6は、クロック再生器21からのクロック信号Esに同期して電気信号Eyをディジタル信号Dyに変換する。例えば、AD変換器6は、受光器5からの電気信号Eyをクロック信号Esに同期してサンプリングする電気サンプリグゲート61と、電気サンプリングゲート61の出力信号をディジタル信号Dyに変換するAD変換段62と、を備える。これにより、AD変換器6は、電界吸収型光変調器3でのサンプリング周波数に同期した周波数で、電気信号Eyのサンプリングを行なうことができる。したがって、自励発振型の光パルス発生器2を用いることができる。なお、遅延器22は、サンプリング周波数fの位相を変える移相器であってもよい。
【0026】
クロック再生器21は、例えば、電界吸収型光変調器3でのサンプリング周波数fで共振する共振器を用いたクロック再生回路や、位相比較器で電気信号Eyのパルス位相とVCO(Voltage Controlled Oscillator)の位相差を検出し、前記VCOの発振周波数又は位相を調整するPLL(Phase−Locked Loop)を用いたクロック再生回路である。
【0027】
本実施形態では、一例として、サンプリング用光パルスPsが後方(電界吸収型光変調器3の出力側)から入力され、光信号Pyが電界吸収型光変調器3の後方から出力される例を示したが、サンプリング用光パルスPsが前方(電界吸収型光変調器3の入力側)から入力され、光信号Pyが電界吸収型光変調器3の後方から出力される構成であってもよい。
【0028】
また、電界吸収型光変調器の相互吸収飽和特性を用いた光信号モニタ装置に限られるものではなく、他の方式の光サンプリングゲートを用いた光信号モニタ装置に使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、高分解能の光サンプリングを行なうことができるので、情報通信産業及び光を用いる各種産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
2,102:光パルス発生器
3:電界吸収型光変調器
4:バイアス電圧発生器
5:受光器
6:AD変換器
7:光カプラ
21:クロック再生器
22、103:遅延器
61 電気サンプリングゲート
62:AD変換段
101:基準信号発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング用光パルスを出力する光パルス発生器と、
前記サンプリング用光パルスに従って被測定光信号をサンプリングする光サンプリングゲートと、
前記光サンプリングゲートから出力された光信号を電気信号に変換する受光器と、
前記受光器からの前記電気信号をディジタル信号に変換するAD(Analog−to−Digital)変換器と、を備え、
等価サンプリング方式で前記被測定光信号の波形評価を行なう光信号モニタ装置において、
前記受光器からの前記電気信号から前記被測定光信号をサンプリングするサンプリング周波数のクロック信号を抽出するクロック再生器をさらに備え、
前記AD変換器は、前記クロック再生器からの前記クロック信号に同期して前記電気信号を前記ディジタル信号に変換することを特徴とする光信号モニタ装置。
【請求項2】
前記AD変換器は、
前記受光器からの前記電気信号を前記クロック信号に同期してサンプリングする電気サンプリグゲートを含み、
前記電気サンプリングゲートの出力信号をディジタル信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の光信号モニタ装置。
【請求項3】
前記光サンプリングゲートは、相互吸収飽和特性を利用して前記被測定光信号のサンプリングを行なう電界吸収型光変調器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光信号モニタ装置。
【請求項4】
前記光パルス発生器は、受動モード同期ファイバレーザであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光信号モニタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−217067(P2010−217067A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65557(P2009−65557)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】