説明

光信号受信装置

【課題】コヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた光受信機における受信精度の良い光信号受信装置を提供する。
【解決手段】光信号受信装置は、受信した光信号を偏波分離する偏波ビームスプリッタと、偏波分離した各偏波の信号光のそれぞれと局部発振光を少なくとも2種類の光位相をもって混合し、それぞれの偏波と光位相の組み合わせに対応する少なくとも4系統の光信号を生成する光混合手段と、該光混合手段において得られた該少なくとも4系統の光信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、該光電気変換手段によって得られたそれぞれの電気信号を共通の利得で増幅する増幅手段と、該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、光信号の強度を検出し、該強度に応じて該増幅手段の利得を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及に伴い、基幹系通信システムにおいて、40G bit/sec以上の伝送容量を達成することの要求が高まっている。その実現手段として、従来10G bit/sec以下の光通信システムで適用されてきたNRZ (Non Return to Zero) 変調方式に対して、周波数利用効率・光信号対雑音比(OSNR)耐力・非線形性耐力が優れている様々な変調方式の採用が模索されている。なかでもRZ-DQPSK変調方式 (Return to Zero - Differential Quadrature Phase-Shift Keying) は、分散耐力、PMD耐力、フィルタリング耐力がある変調方式として有力な候補である。
【0003】
近年RZ-DQPSK変調方式の光信号対雑音比(OSNR)耐力と波長分散耐力を改善できる技術として、コヒーレント受信とデジタル信号処理(DSP)を組み合わせた受信方式が注目されている。
【0004】
特許文献1には、90°Hybrid回路の位相ずれを修正する技術が開示されている。非特許文献1、2には、90°Hybrid回路の構成およびコヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた受信器に関する記述がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6917031号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. Tsukamoto, et, al. "Optical Homodyne Receiver Comprising Phase and Polarization Diversities with Digital Signal Processing", ECOC, 2006, MO-4,2,1
【非特許文献2】M. Seimetz, et, al. "Options, Feasibility, and Availability of 2x4 90° Hybrids for Coherent Optical Systems", Journal of Lightwave Technology, Vol. 24, No. 3, March 2006, pp. 1317-1322
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図19は、コヒーレント受信とディジタルシグナルプロセッシング(DSP)を組み合わせた受信器の基本構成とその問題点を説明する図である。
【0008】
図19(a)にあるように、直交偏波成分Ex、Eyを持った信号光Esと、局部発振光ELoが、受信した光信号と局部発振光と受信した光信号と90°位相をずらした局部発振光を混合し、光信号の実部と虚部の成分を抽出する90°Hybrid回路10に入力され、Exの実成分Ex_Re、Exの虚成分Ex_Im、Eyの実成分Ey_Re、Eyの虚成分Ey_Imが抽出される。それぞれの成分は、Twin-PD11−1~11−4によって電気信号に変換され、AMP12−1〜12−4によって増幅された後、ADC13−1〜13−4によってデジタル信号に変換され、DSP14によって信号処理される。
【0009】
コヒーレント受信+DSP受信器で、90°Hybrid回路の90°位相がずれた場合、各AMPの利得が異なる場合、DSPにて、受信信号を正確に復調できないため位相誤差が生じ、信号品質が劣化する。図19(b)は、4値位相変調方式を用いた場合の位相誤差と信号品質の劣化を示す。これから分かるように、位相誤差が大きくなればなるほど、信号品質劣化の度合いは、位相誤差に比例して大きくなることが分かる。
【0010】
位相変調方式を用いた場合の、偏波ダイバシティ 90°Hybrid回路の出力信号(Ex_Re, Ex_Im, Ey_Re, Ey_Im)は下記のように表される。
【0011】
Ex_Re ∝ |Ex||ELO|cos(Δwt + θ(t))
Ex_Im ∝ |Ex||ELO|sin(Δwt +θ(t)) x cos(θh) + |Ex||ELO|cos(Δwt +θ(t)) x sin(θh)
Ey_Re ∝ |Ey||ELO|cos(Δwt +θ(t) +θp)
Ey_Im ∝ |Ey||ELO|sin(Δwt +θ(t)+ θp) x cos(qh) +|Ey||ELO|cos((Δwt +θ(t) +θp )x )sin(θh)
ここで、
Ex:信号光のx偏波の振幅
Ey:信号光のy偏波の振幅
ELO:局部発振光の振幅
θh : 90°Hybrid回路の位相誤差
θp : ExとEyの位相差 (位相誤差キャンセル回路で補償)*1
Δw : 信号光と局部発信光の周波数差 (位相誤差キャンセル回路で補償)*1
*1 : S.Tukamoto et al. ECOC2006, Mo.4.2.1
【0012】
受信信号はEx_Re, Ex_Im, Ey_Re, Ey_Imを用いて、下記のように復調することができる。
Es = (Ex_Re+ jEx_Im) + (Ey_Im+ jEy_Im)
θs = arg (Es)
ここで、θh≠0の場合、受信信号の虚部信号成分を正しく受信できないため、位相誤差が生じる。
【0013】
特許文献1は90°ハイブリッド回路の位相誤差を補償するための公知技術である。しかしながら、特許文献1のようなFeed-forward制御では、検出した制御信号そのまま使って制御するので、目標値付近だけでなく目標値からずれている場合も制御信号の検出精度が高くなければいけない。
【0014】
図20は、90°Hybrid回路の位相誤差と、実際の位相誤差と推定値との差をグラフにあらわしたものである。
【0015】
図20のグラフは、ADCの量子化誤差を考慮し、Feed-forward制御を用いた場合の制御誤差を示したグラフである。このグラフから分かるように量子化ビット数が制限される場合、90°Hybrid回路の位相が大きくずれているケースでは制御誤差が大きくなることが見て取れる。
【0016】
したがって、特許文献1の構成でも十分な位相誤差の補正手段としては不十分である。
また、ADCによる量子化誤差を最小限に抑えるためには、受信光パワーの変動等により変動するADCの入力信号パワー(AMP利得)を最適に制御する必要がある。
【0017】
AMPの利得を考慮した復調信号を下記に示す。
Es = (Ex_Re*G+ jEx_Im*G) + (Ey_Im*G+ jEy_Im*G)
θs = arg (Es)
【0018】
各AMP利得が異なる場合 qs を正確に復調することができないため、AMPの利得制御時は各AMPの利得が同利得にしなければならない。
【0019】
特に、偏波ダイバシティ構成の受信器では、伝送路で発生する偏波変動により、Ex,Eyの信号パワーは時間的に変動するため、ADCの入力信号光パワーが最適且つEx,EyのAMP利得が同等にするための制御が必要である。
【0020】
4値位相変調方式を用いた場合、4つのシンボルが同確率で出現する場合、実部と虚部の信号パワーは同等になり、個別制御してもAMPの利得は自動的にほぼ同等になるため、本機能は偏波ダイバシティを用いた受信器での効果が大きい。
【0021】
本発明の課題は、コヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた光受信機における受信精度の良い光信号受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下の実施形態の一側面による光信号受信装置は、光信号をコヒーレント受信し、デジタル処理して、光信号に載せられているデータを抽出する光信号受信装置において、受信した光信号を偏波分離する偏波ビームスプリッタと、偏波分離した各偏波の信号光のそれぞれと局部発振光を少なくとも2種類の光位相をもって混合し、それぞれの偏波と光位相の組み合わせに対応する少なくとも4系統の光信号を生成する光混合手段と、該光混合手段において得られた該少なくとも4系統の光信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、該光電気変換手段によって得られたそれぞれの電気信号を共通の利得で増幅する増幅手段と、該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、光信号の強度を検出し、該強度に応じて該増幅手段の利得を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、コヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた光受信機において、信号誤りを小さくし、最適な受信ができる光信号処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の全体を示す構成図である。
【図2】90°Hybrid回路の位相制御方法を説明する図(その1)である。
【図3】90°Hybrid回路の位相制御方法を説明する図(その2)である。
【図4】AMPの利得制御方法を説明する図(その1)である。
【図5】AMPの利得制御方法を説明する図(その2)である。
【図6】90°Hybrid回路の位相制御方法の第2の例を説明する図(その1)である。
【図7】90°Hybrid回路の位相制御方法の第2の例を説明する図(その2)である。
【図8】90°Hybrid回路の位相制御方法の第3の例を説明する図(その1)である。
【図9】90°Hybrid回路の位相制御方法の第3の例を説明する図(その2)である。
【図10】90°Hybrid回路及びAMPの利得制御の制御方法の詳細を説明する図である。
【図11】1/4波長板の制御方法について説明する図である。
【図12】図3あるいは図9の90°Hybrid回路の位相誤差補正を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【図13】図7の90°Hybrid回路の位相誤差補正を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【図14】図3あるいは、図9の90°Hybrid回路の位相誤差補正を行う場合の光受信装置の別の全体構成例を示す図である。
【図15】図5のAMPの利得制御を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【図16】光信号のアナログ値を検出して、AMPの利得制御を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【図17】Twin-PDのフォトカレントの検出のための回路例を示す図である。
【図18】本発明の実施形態に従った変復調装置に関する説明をする図である。
【図19】コヒーレント受信+DSP受信器の基本構成とその問題点を説明する図である。
【図20】90°Hybrid回路の位相誤差と、実際の位相誤差と推定値との差をグラフにあらわしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態の全体を示す構成図である。なお、下記実施形態は光混合器において0°と90°の2つの光位相を混合し、0°と90°の光位相に対応した2系統の信号を抽出する90°Hybrid回路を例として説明しているが、0°、120°、240°の光位相を混合する光混合器を用いた場合、得られた3系統信号からDSPによって0°と90°相当の信号を抽出することにより同様の効果を得ることができる。
【0026】
90°Hybrid回路10の位相ずれによる信号品質劣化を補償するために、90°Hybrid回路10の位相ずれ信号を検知し、90°Hybrid回路位相のフィードバック制御を行う。また、AMP12−1〜12−4の利得ずれによる信号品質劣化を補償するために、4つの90°Hybrid回路出力電気信号から光強度を算出し、算出した光強度が目標値になるように各AMPの利得をフィードバック制御する。
【0027】
図1においては、図19(a)と同じ構成には、同じ参照番号を付してある。DSP回路14内部には、AMP利得制御回路15が設けられ、デジタル化されたAMPの出力を検出して、フィードバック制御で、AMPの利得を制御するものである。AMP12−1〜12−4のそれぞれは、みな同じ利得を有するように制御する。また、DSP回路14には、90°Hybrid回路位相制御回路16が設けられ、デジタル信号となったEx_Re、Ex_Im、Ey_Re、Ey_Imを検出し、90°Hybrid回路10の位相制御信号を生成し、90°Hybrid回路10の位相誤差を修正する。位相誤差キャンセル回路17は、90°Hybrid回路の位相誤差、AMPの利得の影響以外の理由による位相誤差をデジタル処理で修正する回路である。識別回路18は、信号の識別を行う回路である。
【0028】
図1に示された90°Hybrid回路10の内部構成の例を説明する。
入力された信号光は、偏波ビームスプリッタPBS20によって、直交偏波に分離される。一方、局部発振光は、1/4波長板25において、円偏波に変換され、ハーフミラーによって2つに分岐される。各偏波の信号光と、円偏波に変換された局部発振光は、ハーフミラーで混合され、偏波ビームスプリッタ21、22、23、24によって、各偏波に分離され、Twin-PD11−1~11−4で受光される。Twin-PD11−1で検出される光成分がEx_Reであり、Twin-PD11−2で検出される光成分がEx_Imであり、Twin-PD11−3で検出される光成分がEy_Reであり、Twin-PD11−4で検出される光成分がEy_Imである。
【0029】
図2及び図3は、90°Hybrid回路の位相制御方法を説明する図である。
図2に90°位相ハイブリッド回路の位相ずれが0, 20, -20°の場合の受信信号のconstellationを示す。位相ずれがある場合に実部と虚部に相関が現れる。位相ずれがプラスの場合、実部と虚部の相関がプラス、位相ずれがマイナスの場合、実部と虚部の相関がマイナスとなる。位相ずれがない場合、実部と虚部の相関が0となるので、相関係数が0になるように90°Hybrid回路の位相 をフィードバック制御する。
【0030】
相関係数 r は下記のように表される。
r = Σ {Ex_Re*Ex_Im + Ey_Re*Ey_Im}
=Σ{ |Ex||ELO|/2 (sin (2θx) cos (θh) + cos (2θx) sin (θh) + sin (θh))
+ |Ey||ELO|/2 (sin (2θy) cos (θh) + cos (2θy) sin (θh) + sin (θh))}
= Σ{(|Ex|+|Ey|)*|ELO| /2*sin (θh) }
+ Σ{ |Ex||ELO|/2 (sin (2θx) cos (θh) + cos (2θx) sin (θh))+ |Ey||ELO|/2 (sin (2θy) cos (θh) + cos (2θy) sin (θh) )}
θx = Δwt +θ(t) , θy = Δwt +θ(t) +θp
【0031】
各シンボル(θ(t))の発生確率が等しい場合、相関係数 第2項は0になるため、
r = Σ{|Ex|*|ELO|+|Ey|*|ELO|) /2*sin (θh) }
となる。したがって、rを0にすることは、sin(θh)を0にすることであり、これは、θhを0にする、すなわち、90°Hybrid回路の位相誤差を0にすることになる。
【0032】
図3(a)は、上記rの式をグラフに表したものであり、90°Hybrid回路位相誤差に対する正規化した位相誤差信号の大きさを示している。ここで、位相誤差信号は、相関係数rに比例した値とするので、正規化した場合、位相誤差信号の大きさは、正規化した相関係数も表すことになる。
【0033】
図3(b)は、90°Hybrid回路位相制御回路の構成例である。
上記相関係数を求めるため、乗算器30でEx_ReとEx_Imとを乗算し、乗算器31で、Ey_ReとEy_Imとを乗算し、これらを加算器32で加算する。そして、得られた相関係数を平均回路33で複数シンボル分平均し、制御信号生成回路34で、平均された相関係数に比例した90°Hybrid回路の位相制御信号を生成する。生成された位相制御信号は、デジタル信号であるので、これをデジタル−アナログ変換器35でアナログ信号に変換し、90°Hybrid回路に与える。位相制御信号は、平均化された相関係数に比例した値とする。比例係数は、当業者が適切に定めるべきものである。
【0034】
図4及び図5は、AMPの利得制御方法を説明する図である。
4つのADC出力信号から入力信号光パワーを計算する。そして、この計算値が目標値となるように、4つのAGCアンプを同利得に設定する。ADC出力信号から入力信号光パワーを計算する式は、以下の式で与えられる。
【0035】
(Ex_Re^2+Ex_Im^2) +(Ey_Re^2+Ey_Im^2)
目標値は、ADCのダイナミックレンジを有効に使用できるように設定された値である。すなわち、信号光の最大パワーがADCのダイナミックレンジの最高値になるように調整する。例えば、受信光パワーと分散やDGD(Differential Group Delay)による波形劣化を考慮した電気信号の最大振幅の関係から、AMPにて電気信号の上限がカットされないように最適利得を決定する。各AMPの利得制御信号対AMP利得の特性にばらつきがある場合、AMP毎に制御信号vs利得のテーブルを参照してAMP利得を制御する。
【0036】
図4は、AMP利得制御回路の構成例を示す図である。
上記入力信号光パワーの計算を実行するために、2乗演算器40−1~40−4において、ADCからのEx_Re、Ex_Im、Ey_Re、Ey_Imのそれぞれの2乗を計算する。そして、これらを、加算器41、42、43で加算し、得られた値を利得制御信号決定回路44に入力する。利得制御信号決定回路44は、入力された値と目標値とを比較し、ADC出力値が目標値になるように、4つのAMPの利得を変更する利得制御信号を生成する。利得制御信号は、DAC45によってアナログ信号に変換され、各AMPに与えられる。4つのAMPの利得は全部同じ値に設定される。したがって、利得制御信号は、4つのAMPの利得を相互に同じ値とすると共に、4つのAMPの利得を同じように変更して、ADCの出力値が目標値に近い値となるようにする。
【0037】
また、AMP毎に、所定の利得を得るために制御信号としてどの値の信号を用いるべきかを示したLUTを利得制御信号決定回路44内に予め設けておき、このLUTを参照することによって、各AMPに与える利得制御信号の値を決定しても良い。
【0038】
図5は、制御信号vs利得のテーブルの作成方法を説明する図である。
出荷時に下記の調整を行うことにより制御信号vs利得のテーブルを作成する。まず、コヒーレント受信器内の局部発振光をoff、CW光を偏波スクランブルし入力することにより、 Ex_Re, Ex_Im, Ey_Re, Ey_Im信号光パワーを同じにする。そして、利得制御信号を可変し、利得制御信号対4つの信号パワーを測定し、信号ごとに利得制御信号vs利得のLUTを作成する。
【0039】
図6及び図7は、90°Hybrid回路の位相制御方法の第2の例を説明する図である。
この場合には、位相誤差信号として、デジタル化後の各偏波の実部と虚部の信号の識別前位相と識別後位相の位相差を使用する。図6は、90°Hybrid回路の位相誤差がある場合の識別前位相と識別後位相の位相差の時間変化を示している。位相誤差がある場合、受信された信号の複素平面上での位相が同心円上にならないため(図2参照)、位相誤差キャンセル回路で補償する位相に誤差が生じる。その結果、周期Dw/2の周期で位相誤差が変動する。本方式では、この位相誤差の変動を位相誤差信号として使用する。
【0040】
図7(a)は、90°Hybrid回路位相の制御回路の構成例を示す図である。
位相誤差キャンセル回路17の出力であり、識別回路18での識別前の位相θbと識別後の位相θaとの差を減算器50で演算し、これを2乗演算器51で2乗し、ローパスフィルタ52に通す。乗算器53は、制御信号に重畳した信号の同期検波を行い、重畳信号の位相を検出するための回路で、-1*cos(2πf0 t)を乗算することにより位相誤差の符号を検出する。図7(b)の90°Hybrid回路位相誤差と位相誤差信号の値の関係グラフである。90°Hybrid回路位相誤差が+側か−側かは同期検波により識別することができるので、制御信号生成回路54には符号付誤差信号が入力される。ここでディザリングの周波数はf0である。制御信号生成回路54からは、検出した信号に基づいて生成された制御信号が出力される。この制御信号に、乗算器55で、ディザリングを行うためのcos(2πf0 t)の信号を乗算し、DAC56でアナログ信号に変換して、90°Hybrid回路の位相制御信号とする。90°Hybrid回路に与えられる位相制御信号にディザリングがかけられているので、90°Hybrid回路の位相は、位相制御信号によって設定された値の周辺で振動することになる。位相誤差キャンセル回路17、減算器50、2乗演算器51、ローパルフィルタ52通過後に位相差信号を見ると、やはり、ディザリングのために所定値の周辺で、周波数f0で振動しているものとなる。これを、乗算器53で-1*cos(2πf0 t)を乗算することにより、打ち消して、90°Hybrid回路位相誤差の正負に応じた符号を持った直流値を得て、制御信号生成回路54が受け取るものである。なお、ローパスフィルタ52のカットオフ周波数は、f0<カットオフ周波数<Δw/2を満たすものとする。
【0041】
図8及び図9は、90°Hybrid回路の位相制御方法の第3の例を説明する図である。
この方式は、位相誤差信号として受信信号強度を使用する方式である。90°Hybrid回路の位相誤差がある場合の信号強度の時間変化を図8に示す。位相誤差がある場合、受信された信号の位相が同心円上にならないため(図2参照)、強度変化が生じる。その結果、周期Δw/2の周期で信号強度が変動する。本方式では、この強度変動を位相誤差信号として使用する。
【0042】
図9(b)は、90°Hybrid回路位相誤差と位相誤差信号の関係を示したグラフである。図7(b)と似たグラフとなっており、90°Hybrid回路位相誤差の正負を検出するのに、位相誤差信号にディザリングをかけるのが有効であることが分かる。図9(a)は、90°Hybrid回路位相制御回路の構成例である。ここでは、Ex_ReとEx_Imについてのみ記載したものを示す。2乗演算器60−1、60−2において、Ex_ReとEx_Imをそれぞれ2乗し、これらを加算器61で加算し、DC成分カット部62でDC成分をカットし、2乗演算器63で、これを2乗し、f0<カットオフ周波数<Δw/2を満たすカットオフ周波数を持ったローパスフィルタで高周波成分を取り除く。そして、乗算器65で、ディザリングによる振動を取り除くため、-1*cos(2πf0 t)を乗算し、結果を制御信号生成回路66に入力する。制御信号生成回路66は、制御信号を生成して出力する。出力制御信号には、cos(2πf0 t)のディザリングが乗算器67で乗算され、DAC68によってアナログ信号に変換されて、90°Hybrid回路に入力される。
【0043】
また、AMPの利得制御は、以下のようにして行うことも可能である。
すなわち、4つのTwinPDに流れるフォトカレントIX_Re, IX_Im, IY_Re, IY_Im,を検出し、受信光パワーを計算する。計算式は以下で与えられる。
(IX_Re ^2+ IX_Im ^2) + (IY_Re ^2+ IY_Im ^2)
【0044】
受信光パワーを検出したのち、図4と同様の方法でAMPの利得制御を行う。すなわち、図4では、デジタル化後の信号を使って制御を行っていたが、ここでは、フォトカレントというアナログ信号値をそのまま用いて制御を行う。なお、AMPの利得制御を行う構成として90°Hybrid回路の4つの出力信号(Ex_Re、Ex_Im、Ey_Re、Ey_Im)から光信号強度をモニタする方法を説明したが、90°Hybird回路前で光信号を分岐し、光パワーモニタにて光信号強度をモニタし、モニタされた光信号強度をAMP利得制御に用いてもよい。
【0045】
図10は、90°Hybrid回路及びAMPの利得制御の制御方法の詳細を説明する図である。
上記90°Hybrid回路およびAMPの制御方法の制御信号生成回路での動作を説明する。90°Hybrid回路、AMPの制御共に、制御信号生成回路での処理が類似しているので、下記では処理方法を一般化して説明する。なお、図10の説明では、AMPの利得をLUTを使って制御する場合は含まれない。
【0046】
図10は一般化するための簡単なブロック図である。制御信号生成回路は前段のError信号検出部で検出されたError信号を受け取り、制御信号を生成する。Error信号の検出部は、例えば90°Hybrid回路の制御では相関信号を計算するブロックであり、AMPの制御では入力信号光パワーを計算するブロックである。制御信号生成回路では、制御信号は Kp*ErrorSingalの式で生成される。この式は比例制御(P: Proportional制御)と呼ばれる基本的な制御方法で、Kpは比例ゲインと呼ばれ、制御対象(90°位相やAMPのゲイン)の特性や要求される応答速度等によって決定される。また、制御信号生成回路では、P制御にError信号の積分値を利用するI (Integral)制御を加えたPI制御や、Error信号の微分値を利用するD (Derivative)制御を加えたPID制御をもちいることによって、制御の精度や制御速度の向上することができる。
【0047】
図11は、1/4波長板の制御方法について説明する図である。
水平方向と垂直方向の位相差がπ/2となるように調整された複屈折媒質に、光学軸に対して偏向軸が角度45°で光を入射させることによって、1/4波長板を実現することができる。1/4波長板を90°Hybrid回路に使用する場合は、入射光(局部発振光)の光学軸の調整する場合は光学軸調整を、温度変動等により複屈折媒質の位相差がπ/2からずれる場合は複屈折媒質の位相差を調整する必要がある。
【0048】
光学軸の調整方法の例としては、波長板をステッピングモータを使って機械的に回転させる、あるいは、ファラデーローテータを用いて入射光の光学軸を磁場により調整する方法がある。
【0049】
複屈折媒質の位相差の調整方法の例としては、図11のような2つの複屈折媒質を用意し、二つの複屈折媒質の位置をステッピングモータで制御することにより複屈折媒質の厚さを調整する方法などがある。
【0050】
上記実施形態はPBSを用いた90°ハイブリッド回路を用いているが、MMIカプラや4つの3dBカプラと90°位相遅延部によって90°Hybrid回路を実現することも可能であり、本発明もそれらの90°Hybrid回路を用いてもよい。
【0051】
MMIカプラを用いた90°Hybrid回路はPLC技術で実現可能であり、この場合、受信された信号と局部発振光の位相はペルチェやヒータによる温度制御によって制御することができる。また、4つの3dBカプラと90°位相遅延部を備えた90°Hybrid回路はLN技術で実現することができ、この場合、受信された信号と局部発振光の位相は電圧により制御することができる。
【0052】
図12は、図3あるいは図9の90°Hybrid回路の位相誤差補正を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【0053】
図12において、図1と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図12においては、DSP回路14に90°Hybrid回路位相制御回路16が設けられている。図3の位相誤差補正方法を用いるので、90°Hybrid回路位相制御回路16は、4つのADC13−1~13−4の出力を入力として位相制御信号を生成し、90°Hybrid回路10に供給する。この構成図から明らかなように、ここでは、フィードバック制御を行っている。
【0054】
図13は、図7の90°Hybrid回路の位相誤差補正を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【0055】
図13において、図1と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図13においては、90°Hybrid回路位相制御回路16は、識別回路18の前後の信号を入力し、両者の位相の差を演算して、位相制御信号を生成する。この場合も、フィードバック制御を行う構成となっている。
【0056】
図14は、図3あるいは、図9の90°Hybrid回路の位相誤差補正を行う場合の光受信装置の別の全体構成例を示す図である。
【0057】
図14において、図1と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図14は、90°Hybrid回路が偏波ビームスプリッタを有していない場合の構成例である。信号光は、別に設けられた偏波ビームスプリッタ70で直交する偏波に分離され、それぞれの偏波の信号光が、90°Hybrid回路10−1と10−2に入力される。局部発振光は、3dBカプラ71によって2つに分岐され、それぞれ、90°Hybrid回路10−1と10−2に入力される。90°Hybrid回路10−1で得られた、x偏波の実部と虚部の信号は、Twin-PD11−1、11−2で電気信号に変換され、AMP12−1、12−2で増幅されて、ADC13−1、13−2でデジタル信号に変換されて、90°Hybrid回路位相制御回路16−1に入力される。90°Hybrid回路位相制御回路16−1では、図3あるいは、図9の方法により、位相制御信号を生成し、90°Hybrid回路10−1に位相制御信号を供給する。同様に、90°Hybrid回路10−2で得られた、y偏波の実部と虚部の信号は、Twin-PD11−3、11−4で電気信号に変換され、AMP12−3、12−4で増幅されて、ADC13−3、13−4でデジタル信号に変換されて、90°Hybrid回路位相制御回路16−2に入力される。90°Hybrid回路位相制御回路16−2では、図3あるいは、図9の方法により、位相制御信号を生成し、90°Hybrid回路10−2に位相制御信号を供給する。この場合にも、フィードバック制御を行っている。
【0058】
図15は、図5のAMPの利得制御を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【0059】
図15において、図1と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して、説明を省略する。
DSP回路14には、AMP利得制御回路15が設けられており、図5で説明した、ADC13−1~13−4からの出力を用いて、AMPの利得制御を行うものである。すなわち、デジタル信号になった光信号から光強度を算出し、AMPの利得を制御するものである。制御は、フィードバック制御となる。
【0060】
図16は、光信号のアナログ値を検出して、AMPの利得制御を行う場合の光受信装置の全体構成例を示す図である。
【0061】
図16において、図1と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図16においては、AMP利得制御回路15は、ADC13−1~13−4の後段でデジタル化された信号を検出するのではなく、Twin-PD11−1~11−4から直接フォトカレントを検出し、光強度を求める。そして、光強度からAMP12−1~12−4の後の信号の強度が目標強度値になるように、AMP12−1~12−4の利得を制御する。この場合、LUTを使用して、AMP12−1~12−4を制御しても良い。また、AMP利得制御回路15は、図16の場合、DSP回路14の外部にあるが、DSP回路14にADC(アナログ−デジタル変換器)を設け、ADCの後段にAMP利得制御回路15を設けるようにして、AMP利得制御回路15自身をDSP回路14内に組み込んでも良い。
【0062】
図17は、Twin-PDのフォトカレントの検出のための回路例を示す図である。
90°Hybrid回路10から出力された光信号は、PD75、76からなる、Twin-PD11において、電気信号に変換される。PD75と76のいずれがオンになるかによって、TIA(TransImpedance Amplifier)72の入力に現れる電圧の正負が決まる。この電気信号は、TIA72によって増幅され、AMP12に送られる。Twin-PD11に流れるフォトカレントは、抵抗73の部分に電圧として現れる。この電圧をアンプ74で増幅して、AMP利得制御回路15に入力する。
【0063】
図18は、本発明の実施形態に従った変復調装置に関する説明をする図である。
図18では、位相誤差キャンセル回路の動作原理から、システムに用いる変復調方式について提案を行う。
【0064】
図18において、クライアント信号は、送信側のフレーマ/FECエンコーダ80によって符号化され、DQPSKプリコーダ81で、DQPSK信号に符号化された電気信号が、位相変調器84−1、84−2に電極に印加される。光源82からの光は分岐され、一方がπ/2遅延器83によって遅延され、それぞれ、位相変調器84−1、84−2において変調される。位相変調器84−1、84−2からのDQPSK信号は、RZパルス化強度変調器85でRZパルスに変調され、RZ-DQPSK信号として送出される。伝送されたRZ-DQPSK信号は、90°Hybrid回路86において、局部発振光87と混合され、コヒーレント受信される。コヒーレント受信された光信号は、Twin-PD88によって電気信号に変換され、AMP89で増幅され、ADC90でデジタル信号に変換されて、DSP91に入力される。DSP91では、位相誤差キャンセル回路92が、位相誤差をキャンセルする演算を行い、識別回路93が、位相識別後1ビット前との位相差を出力する。この、位相誤差キャンセル回路92の後段の識別回路93において、位相識別後の1ビット前の信号との位相差を演算する点が以下に説明する提案の方法である。識別された信号は、フレーマ/FECデコーダ94において、復号され、クライアント信号として処理される。
【0065】
位相誤差キャンセル回路でのΔwの補償方法(フィードフォワード制御)は以下の式で示されるような演算を行うことによる。
Es = exp( j(Δwt+q(t)) )
Δwt = (arg((Es)^4)−p )/4
{Es}^4 = exp( j(4Δwt+4q(t)) )
q(t) = π/4, 3π/4, 5π/4, 7π/4, 4q(t) = (2N-1)π
Δwtは数ビットの平均値から算出する
q(t) = arg(Es) - Δwt
【0066】
しかしながら、Δwtがπ/4以上の時、識別後位相が別のシンボルに誤る可能性があるため、工夫が必要となる。
例えば、送信シンボル 45°の場合、
Δwt =42° q(t) = 87 - ( 348(348)−180 )/4 = 45, Δwt = 42
Δwt =48° q(t) = 93 - ( 12(372)−180 )/4 = 135, Δwt = -42
例えば、送信シンボル 135°の場合、
Δwt =42° q(t) = 177 - ( 348(708)−180 )/4 = 135, Δwt = 42
Δwt =48° q(t) = 183 - ( 12(732)−180 )/4 =225, Δwt = -42
【0067】
上記シンボルずれは、識別回路にて1ビット前との位相差を出力するDQPSK復調とした場合問題とならない。
【0068】
例えば、45°、135°のシンボルを順に送信した場合、上記の例を見るとΔwt =42° , 48°ともに位相差は90°である。
【0069】
したがって、位相誤差キャンセル回路で、上記のようなミスを起こさないためには、DQPSK変調方式を用いて送信し、受信側で、位相誤差キャンセル回路の処理のときに、前のシンボルとの位相差を出力するようにすれば良い。その場合、
・Δwはビットレートに対して十分小さい。
・送信側でDQPSKのプリコードされている。
という前提が必要である。
【0070】
以上の構成を採用すれば、90°シンボルずれを補償する回路が不要になるため回路規模の縮小が期待され、また、直接検波のDQSPK変調方式との入出力IFに互換性があるため、DSP回路のアップグレードが容易という利点が得られる。上記はDQSPK変調方式の実施形態だが、その他の差動符号化された信号、DPSK、DMPSK変調方式にも適用することができる。この場合、各変調方式に対応したプリコーダーが必要となる。
【0071】
以上述べたように、本発明のFeedback制御では、制御回路への入力値が目標値に収束するように制御を行うため、目標値付近での制御信号の検出精度が制御の精度を決定する。これに対して、特許文献1のFeed-forward制御では、検出した制御信号そのまま使って制御するので、目標値付近だけでなく目標値からずれている場合も制御信号の検出精度が高くなければいけない。しかし、本発明が念頭に置く光通信システムは、電気回路の限界に近い高速な信号を取り扱うため、ADCの量子化ビット数が制限され、ADCでの量子化誤差が大きくなる可能性がある。
【0072】
したがって、本発明で提案するFeedback制御を使った構成の方が、特許文献1のFeed-forward制御を使った構成に比べ、大幅な特性向上を見込むことができる。
【0073】
前述の図20のグラフは、ADCの量子化誤差を考慮し、Feed-forward制御を用いた場合の制御誤差を示したグラフである。このグラフから分かるように量子化ビット数が制限される場合、90°Hybrid回路の位相が大きくずれているケースでは制御誤差が大きくなることが見て取れる。本発明では、この制御誤差が大きくなる場合をなくし、精度良く、高速に90°Hybrid回路の位相誤差や、AMPの利得を制御することが出来る。
【0074】
なお、上記の実施形態において、3つの90°Hybrid回路の位相制御方法と、AMPの2つの利得制御方法とは、相互に、任意に組み合わせて実装可能である。
(付記1)
光信号をコヒーレント受信し、デジタル処理して、光信号に載せられているデータを抽出する光信号受信装置において、
受信した光信号と局部発振光を少なくとも2種類の位相をもって混合し、それぞれの光位相に対応した少なくとも2系統の光信号を抽出する光混合手段と、
該光混合手段において得られた少なくとも2系統の光信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、
該アナログ−デジタル変換手段によって得られたデジタル信号を処理することによって、該光混合手段の各系統間の光位相の差を検出し、該光位相の差に所望の値からのずれが存在する場合には、該光混合手段に系統間の光位相を補正する信号を供給し、該光位相の差が所望の値に近づくように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光信号受信装置。
(付記2)
前記コヒーレント受信手段は、光信号の直交する偏波成分それぞれについて実部成分と虚部成分を抽出することを特徴とする付記1に記載の光信号受信装置。
(付記3)
前記制御手段は、
光信号の直交する偏波成分のそれぞれの少なくとも2系統の信号成分を乗算する乗算手段と、
直交する偏波成分の少なくとも2系統の乗算結果の加算を行う加算手段と、
該加算結果を平均する平均手段と、
該平均結果を0となるように、前記光混合手段の各系統間の少なくとも1つの位相を制御する信号を生成する制御信号生成手段と、
を備えることを特徴とする付記2に記載の光信号受信装置。
(付記4)
前記制御手段は、前記直交する偏波成分のそれぞれの信号について別個に設けられていることを特徴とする付記2に記載の光信号受信装置。
(付記5)
前記制御手段は、デジタル信号として得られた光信号の少なくとも2系統の信号の相関値を演算し、該相関値が0に近づくように、前記光混合手段の系統間の位相を制御することを特徴とする付記1に記載の光信号受信装置。
(付記6)
前記デジタル信号を信号識別する識別手段を更に備え、
前記制御手段は、該識別手段による識別前のデジタル信号と、該識別手段による識別後のデジタル信号の位相差を検出し、該位相差の変動の大きさに応じた制御信号を、前記コヒーレント受信手段の各系統間の位相ずれ制御に用いることを特徴とする付記1に記載の光信号受信装置。
(付記7)
前記制御信号には、ディザリングがかけられており、前記位相差の符号から、前記コヒーレント受信手段の位相ずれが正の方向か負の方向かを検出することを特徴とする付記6に記載の光信号受信装置。
(付記8)
前記制御手段は、
前記識別手段の前段の信号と後段の信号の位相差を演算する減算手段と、
減算結果を2乗する2乗演算手段と、
ディザリングによる信号の振動を消去するディザリング消去手段と、
ディザリング消去後の信号から前記光混合手段の系統間の位相ずれ制御信号を生成する制御信号生成手段と、
該位相制御信号にディザリングを行うディザリング手段と、
からなることを特徴とする付記7に記載の光信号受信装置。
(付記9)
前記制御手段は、前記デジタル信号から、光信号の強度を求め、該強度の変動の大きさに応じた制御信号を、前記光混合手段の各系統間の位相ずれ制御に用いることを特徴とする付記1に記載の光信号受信装置。
(付記10)
前記制御信号には、ディザリングがかけられており、前記光信号の強度の変動の符号から、前記光混合手段の位相ずれが正の方向か負の方向かを検出することを特徴とする付記9に記載の光信号受信装置。
(付記11)
前記制御手段は、
光混合手段により抽出された各系統の信号から算出される光信号の実部成分と虚部成分の2乗を演算する2乗演算手段と、
該実部成分と該虚部成分の2乗演算結果を加算する加算手段と、
加算結果から直流成分を取り除く直流成分除去手段と、
該直流成分除去手段の出力からディザリングにより信号の振動を消去するディザリング消去手段と、
ディザリング消去後の信号から前記光混合手段の各系統間の位相ずれ制御信号を生成する制御信号生成手段と、
該位相制御信号にディザリングをかけるディザリング手段と、
からなることを特徴とする付記10に記載の光信号受信装置。
(付記12)
光信号をコヒーレント受信し、デジタル処理して、光信号に載せられているデータを抽出する光信号受信装置において、
受信した光信号と局部発振光をすくなくとも2つの位相をもって混合し、それぞれの位相に対応した少なくとも2系統の光信号を抽出する光混合手段と、
該光混合手段において得られた少なくとも2系統の光信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号を設定された利得で増幅する増幅手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、
光信号の強度を検出し、該強度に応じて該増幅手段の利得を最適に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光信号受信装置。
(付記13)
前記制御手段は、前記アナログ−デジタル変換手段でデジタル化された信号から光信号の強度を算出することを特徴とする付記12に記載の光信号受信装置。
(付記14)
前記コヒーレント受信手段は、光信号の直交する偏波それぞれについて少なくとも2系統の信号を抽出することを特徴とする付記12に記載の光信号受信装置。
(付記15)
前記制御手段は、
光混合手段により抽出された各系統の信号から算出される光信号のそれぞれの偏波成分の実部成分と虚部成分を2乗する2乗演算手段と、
それぞれの偏波の実部成分と虚部成分の2乗演算手段の出力を加算する加算手段と、
加算結果から前記増幅手段の利得制御信号を生成する制御信号生成手段と、
を備えることを特徴とする付記14に記載の光信号受信装置。
(付記16)
前記制御信号生成手段は、前記加算結果が目標値に近づくような利得制御信号を前記増幅手段に与えることを特徴とする付記15に記載の光信号受信装置。
(付記17)
前記制御信号生成手段は、
前記利得制御信号の大きさに対する前記増幅手段の利得を格納したテーブルを有し、
前記加算結果に基づいて、所定の利得をえるための利得制御信号の大きさを該テーブルを参照して設定することを特徴とする付記15に記載の光信号受信装置。
(付記18)
前記制御手段は、前記光電気変換手段の発生する電流値から光信号の強度を算出することを特徴とする付記12に記載の光信号受信装置。
(付記19)
前記光電気変換手段は、フォトダイオードであり、前記電流値は、フォトカレントの大きさであることを特徴とする付記18に記載の光信号受信装置。
(付記20)
前記増幅手段は、前記光信号の各系統の信号をそれぞれを増幅する複数の増幅器からなることを特徴とする付記12に記載の光信号受信装置。
(付記21)
差動符号化された光信号をコヒーレント受信し、デジタル処理して、光信号に載せられているデータを抽出する光信号受信装置において、
受信した光信号と局部発振光を少なくとも2つの位相をもって混合し、それぞれの位相に対応した少なくとも2系統の信号を抽出する光混合手段と、
該光混合手段において得られた少なくとも2系統の信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号を設定された利得で増幅する増幅手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、
デジタル化された信号の位相誤差をキャンセルする位相誤差キャンセル手段と、
該位相誤差キャンセル手段の出力を信号識別し、現在識別した信号と、以前に識別された1ビット前の信号との差を識別結果として出力する識別手段と、
を備えることを特徴とする光信号受信装置。
(付記22)
前記差動符号化方式は、DQPSK方式であることを特徴とする付記21に記載の光信号受信装置。
(付記23)
光信号をコヒーレント受信し、デジタル処理して、光信号に載せられているデータを抽出する光信号受信装置において、
受信した光信号と局部発振光を少なくとも2種類の位相をもって混合し、それぞれの位相に対応した少なくとも2系統の信号を抽出する光混合手段と、
該光混合手段において得られた少なくとも2系統の信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号を設定された利得で増幅する増幅手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、
該アナログ−デジタル変換手段によって得られたデジタル信号を処理することによって、該光混合手段において使用される受信した光信号と局部発振光の系統間の位相ずれを検出し、各系統間の位相ずれが存在する場合には、該光混合手段に少なくとも1つの系統間位相ずれ補正信号を供給し、系統間位相ずれをなくすように該光混合手段の各系統間の位相を制御する第1の制御手段と、
光信号の強度を検出し、該強度に応じて該増幅手段の利得を最適に制御する第2の制御手段と、
を備えることを特徴とする光信号受信装置。
【符号の説明】
【0075】
10 90°Hybrid回路
11−1〜11−4 Twin-PD
12−1〜12−4 AMP
13−1〜13−4 ADC
14 DSP回路
15 AMP利得制御回路
16 90°Hybrid回路位相制御回路
17 位相誤差キャンセル回路
18 識別回路
30、31、53、55、65、67 乗算器
32、41、42、43、61 加算器
33 平均回路
34 制御信号生成回路
35、45、56、68 DAC
40−1〜40−4、51、60−1、60−2、63 2乗演算回路
44 利得制御信号決定回路
50 減算器
52、64 ローパスフィルタ
54、66 制御信号生成回路
62 DC成分カット部
70 偏波ビームスプリッタ
71 3dBカプラ
72 TIA
73 抵抗
74 アンプ
75、76 PD
80 フレーマ/FECエンコーダ
81 DQPSKプリコーダ
82 光源
83 π/2遅延器
84−1、84−2 位相変調器
85 RZパルス化強度変調器
86 90°Hybrid回路
87 局部発振光
88 Twin-PD
89 AMP
90 ADC
91 DSP
92 位相誤差キャンセル回路
93 識別回路
94 フレーマ/FECデコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号をコヒーレント受信し、デジタル処理して、光信号に載せられているデータを抽出する光信号受信装置において、
受信した光信号を偏波分離する偏波ビームスプリッタと、
偏波分離した各偏波の信号光のそれぞれと局部発振光を少なくとも2種類の光位相をもって混合し、それぞれの偏波と光位相の組み合わせに対応する少なくとも4系統の光信号を生成する光混合手段と、
該光混合手段において得られた該少なくとも4系統の光信号を電気信号に変換する光電気変換手段と、
該光電気変換手段によって得られたそれぞれの電気信号を共通の利得で増幅する増幅手段と、
該光電気変換手段によって得られた電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換手段と、
光信号の強度を検出し、該強度に応じて該増幅手段の利得を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光信号受信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記アナログ−デジタル変換手段でデジタル化された信号から光信号の強度を算出することを特徴とする請求項1に記載の光信号受信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記光電気変換手段の発生する電流値から光信号の強度を算出することを特徴とする請求項1に記載の光信号受信装置。
【請求項4】
前記光電気変換手段は、フォトダイオードであり、前記電流値は、フォトカレントの大きさであることを特徴とする請求項3に記載の光信号受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−50140(P2012−50140A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254172(P2011−254172)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2007−120059(P2007−120059)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】