説明

光偏向器

【課題】 駆動マグネットと鉄心コイルからなるモータにより発生する駆動トルクの変動が、ポリゴンミラーの回転により感光体等に走査されるビームのドット間ピッチの変動になって現れるという問題がある。
【解決手段】 複数の鏡面が形成されたポリゴンミラーと、ポリゴンミラーを回転駆動させる駆動マグネットと鉄心コイルからなるモータを有する光偏向器において、ポリゴンミラーの鏡面の数をP(Pは4以上の偶数)としたときに、駆動マグネットの磁極の数はnP(nは自然数)であって、複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差を略90゜/nPまたは略270゜/nPとすることにより、感光体等に走査されるビームのドット間ピッチの変動量を最小にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられる光偏向器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられる光偏向器としては、図6に示されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この光偏向器は、ハウジング100に固定配設される円柱状の固定軸101と、この固定軸101に回転自在に支持される回転体110とを有している。
この回転体110は、固定軸101との間にわずかの隙間をもって配設されるスリーブ111と、このスリーブ111の上部内側に固定配設されるリング状のマグネット112と、スリーブ111の中央部外側に固定配設されるポリゴンミラー113と、スリーブ111の下部外側にフランジ114を介して固定配設されるリング状の駆動マグネット115とを備えている。
尚、符号116は、回転体110の重量の偏心を修正するためのバランスウェイト(図示せず)が取り付けられる溝である。
【0004】
また、固定軸101の上部外側には、回転体110に設けられたリング状マグネット112と対向するようにリング状マグネット102が固定配設されており、これらリング状マグネット102及び112によって回転体110をスラスト方向に軸受けするスラスト磁気軸受Sが構成されている。
【0005】
更に、ハウジング100には、回転体110に設けられたリング状マグネット115と対向するように鉄心コイル103が固定配設されており、これらリング状マグネット115及び鉄心コイル103によって回転体110を回転させるモータMが構成されている。
【0006】
また、回転体110のスリーブ111のうち、固定軸101と対向する内周面111aは、鏡面仕上げが施される一方、このスリーブ111の内周面111aと対向する固定軸101の外周面101aには図中破線で示すようにヘリングボーン状の溝104が形成されており、これらスリーブ111の内周面111a及び固定軸101の外周面101aに設けられた溝104によって、回転体110をラジアル方向に支持するラジアル動圧軸受Rが構成されている。
【0007】
この光偏向器では、モータMにより回転体110を回転させると、回転体110が、ラジアル動圧軸受Rにより固定軸101に対して一定距離をもって非接触に支持されると共に、スラスト磁気軸受Sにより固定軸101に対して一定高さに支持されることとなる。これにより、スラスト方向の軸受として動圧軸受を用いるタイプのものより、光偏向器の高さを低くできるという利点がある。
【0008】
かかる光偏向器において、駆動マグネットのN極とS極の境界位置と、ポリゴンミラーの鏡面が互いに隣接する稜線位置との位置関係は、組立上の都合等から略一致させることが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平5−71532号公報
【特許文献2】特開2000−94747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、かかる場合、モータMにより発生する駆動トルクの変動が、ポリゴンミラーの回転により感光体等に走査されるビームのドット間ピッチの変動になって現れるという問題がある。かかる問題は、画像の形成を高精度化するに伴い、顕著に現れてくる。
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、ポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差を所定角度に設定するという簡単な構成で、感光体等に走査されるビームのドット間ピッチの変動量を最小にする光偏向器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の光偏向器は、複数の鏡面が形成されたポリゴンミラーと、ポリゴンミラーを回転駆動させる駆動マグネットと鉄心コイルからなるモータを有する光偏向器において、ポリゴンミラーの鏡面の数をP(Pは4以上の偶数)としたときに、駆動マグネットの磁極の数はnP(nは自然数)であって、複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差を略90゜/nPまたは略270゜/nPとしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、感光体等に走査されるビームのドット間ピッチの変動量を最小にする光偏向器を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明に係る第1実施例を図1乃至図3を用いて説明する。
説明を簡単にするため、ポリゴンミラーの鏡面の数が4、駆動マグネットの磁極数が4の場合であり、図1は、Aに駆動マグネットの磁極、Bに3相モータのトルクのリップル、Cにポリゴンミラーの面を示したものである。
鉄心コイルを有するモータの場合、コギングトルクが発生するため、3相モータのトルクのリップルは、略正弦波形とすることができる。
【0016】
(比較例1)
まず、従来技術であるポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差がない場合(図1のCのa)を説明する。
【0017】
トルクのリップルを示す図1のBにおいて、1から3、5から7にかけてトルクが増大するため、ポリゴンミラーの回転は加速する。これに対し、3から5、7から9にかけてトルクが減少するため、ポリゴンミラーの回転が減速する。
その結果、レーザーダイオード等のビームをポリゴンミラーで走査したときの感光体等に形成されるビームのドット間ピッチは、1から3に向かうにつれて広くなり、3から5に向かうにつれて狭くなり、5から7に向かうにつれて広くなり、7から9も向かうにつれて狭くなるという現象が発生する。
つまり、ドット間ピッチが広い箇所と狭い箇所が交互に現れることになる。
【0018】
(比較例2)
また、同様に、前記稜線位置と、前記境界位置との角度差が45゜ある場合(図1のCのc)を説明する。
【0019】
トルクのリップルを示す図1のBにおいて、3から5、7から9にかけてトルクが減少するため、ポリゴンミラーの回転は減速する。これに対し、5から7にかけてトルクが増加するため、ポリゴンミラーの回転が加速する。
その結果、レーザーダイオード等のビームをポリゴンミラーで走査したときの感光体等に形成されるビームのドット間ピッチは、3から5に向かうにつれて狭くなり、5から7に向かうにつれて広くなり、7から9に向かうにつれて狭くなるという現象が発生する。
つまり、ドット間ピッチが広い箇所と狭い箇所が交互に現れることになる。
【0020】
前記した比較例1および比較例2は、高精度な印刷にとって大きな欠点となる。
これに対し、以下に示すように、前記稜線位置と、前記境界位置との角度差が略22.5゜(位相差1/4)または略67.5゜(位相差3/4)ある場合は、ドット間のピッチの変動量を最小にすることができる。
【0021】
(実施例1−1)
図2に示すように、ポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差αが略22.5゜の場合(図1のCのb)を説明する。
【0022】
トルクのリップルを示す図1のBにおいて、2から3、5から7にかけてトルクが増加するため、ポリゴンミラーの回転は加速する。これに対し、3から5、7から8にかけてトルクが減少するため、ポリゴンミラーの回転が減速する。
その結果、レーザーダイオード等のビームをポリゴンミラーで走査したときの感光体等に形成されるビームのドット間ピッチは、2から3に向かうにつれて広くなるが、3から4に向かうにつれて狭くなり4の時点でドットのピッチの変動は解消される。さらに4から5に向かうにつれて狭くなり、5から6に向かうにつれて広くなるから6の時点でドットのピッチの変動は解消される。さらに、6から7に向かうにつれて広くなり、7から8に向かうにつれて狭くなるから8の時点でドットのピッチの変動は解消される。
つまり、2から感光体等へのビームの露光をスタートすると、加減速を均等に繰り返すことになるから、ドットのピッチの変動を最小にすることができる。
【0023】
(実施例1−2)
また、図3に示すように、ポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差αが略67.5゜の場合(図1のCのd)を説明する。
【0024】
トルクのリップルを示す図1のBにおいて、4から5、7から8にかけてトルクが減少するため、ポリゴンミラーの回転は減速する。これに対し、5から7にかけてトルクが増加するため、ポリゴンミラーの回転が加速する。
【0025】
その結果、レーザーダイオード等のビームをポリゴンミラーで走査したときの感光体等に形成されるビームのドット間ピッチは、4から5に向かうにつれて狭くなるが、5から6に向かうにつれて広くなり6の時点でドットのピッチの変動は解消される。さらに6から7に向かうにつれて広くなり、7から8に向かうにつれて狭くなるから8の時点でドットのピッチの変動は解消される。
つまり、4から感光体等へのビームの露光をスタートすると、加減速を均等に繰り返すことになるから、ドットのピッチの変動を最小にすることができる。
【実施例2】
【0026】
本発明に係る第2実施例を図4を用いて説明する。
本実施例では、ポリゴンミラーの鏡面の数が4、駆動マグネットの磁極数が8の場合であり、図4は、Aに駆動マグネットの磁極、Bに3相モータのトルクのリップル、Cにポリゴンミラーの面を示したものである。
【0027】
(比較例)
実施例1の場合と同様に、ポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差αが略0゜(図4のCのa)および22.5゜の場合(図1のCのc)は、ドット間ピッチが広い箇所と狭い箇所が交互に現れることになる。
【0028】
(実施例2−1)
これに対し、以下に示すように、前記稜線位置と、前記境界位置との角度差が略11.25゜(位相差1/4)または略33.75゜(位相差3/4)ある場合は、ドット間のピッチの変動量を最小にすることができる。
【0029】
ポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差αが略11.25゜の場合(図4のCのb)を説明する。
【0030】
トルクのリップルを示す図4のBにおいて、2から3、5から7にかけてトルクが増加するため、ポリゴンミラーの回転は加速する。これに対し、3から5、7から8にかけてトルクが減少するため、ポリゴンミラーの回転が減速する。
その結果、レーザーダイオード等のビームをポリゴンミラーで走査したときの感光体等に形成されるビームのドット間ピッチは、2から3に向かうにつれて広くなるが、3から4に向かうにつれて狭くなり4の時点でドットのピッチの変動は解消される。さらに4から5に向かうにつれて狭くなり、5から6に向かうにつれて広くなるから6の時点でドットのピッチの変動は解消される。さらに、6から7に向かうにつれて広くなり、7から8に向かうにつれて狭くなるから8の時点でドットのピッチの変動は解消される。
つまり、2から感光体等へのビームの露光をスタートすると、加減速を均等に繰り返すことになるから、ドットのピッチの変動を最小にすることができる。
【0031】
(実施例2−2)
また、ポリゴンミラーの複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、駆動マグネットの磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差αが略33.75゜の場合(図4のCのd)を説明する。
【0032】
トルクのリップルを示す図4のBにおいて、4から5、7から8にかけてトルクが減少するため、ポリゴンミラーの回転は減速する。これに対し、5から7にかけてトルクが増加するため、ポリゴンミラーの回転が加速する。
その結果、レーザーダイオード等のビームをポリゴンミラーで走査したときの感光体等に形成されるビームのドット間ピッチは、4から5に向かうにつれて狭くなるが、5から6に向かうにつれて広くなり6の時点でドットのピッチの変動は解消される。さらに6から7に向かうにつれて広くなり、7から8に向かうにつれて狭くなるから8の時点でドットのピッチの変動は解消される。
つまり、4から感光体等へのビームの露光をスタートすると、加減速を均等に繰り返すことになるから、ドットのピッチの変動を最小にすることができる。
【0033】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0034】
実施例1および実施例2に示した効果は、ポリゴンミラーの鏡面の数をP(Pは4以上の偶数)としたときに、駆動マグネットの磁極の数はnP(nは自然数)であって、複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、前記磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差を略90゜/nPまたは略270゜/nPであるときに得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、画像形成装置等に使用される光偏向器に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るポリゴンミラーの稜線位置と駆動マグネットの磁極の境界位置の関係を示す図である(実施例1)
【図2】本発明に係るポリゴンミラーの稜線位置と駆動マグネットの磁極の境界位置の関係を示す図である(実施例1)
【図3】本発明に係るポリゴンミラーの稜線位置と駆動マグネットの磁極の境界位置の関係を示す図である(実施例1)
【図4】本発明に係るポリゴンミラーの稜線位置と駆動マグネットの磁極の境界位置の関係を示す図である(実施例2)
【図5】従来の光偏向器を示す図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鏡面が形成されたポリゴンミラーと、
該ポリゴンミラーを回転駆動させる駆動マグネットと鉄心コイルからなるモータを有する光偏向器において、
前記ポリゴンミラーの鏡面の数をP(Pは4以上の偶数)としたときに、
前記駆動マグネットの磁極の数はnP(nは自然数)であって、
前記複数の鏡面が互いに隣接する稜線位置と、前記磁極を構成するN極とS極の境界位置との角度差を略90゜/nPまたは略270゜/nPとしたことを特徴とする光偏向器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35477(P2006−35477A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215211(P2004−215211)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】