説明

光再生方法及び光再生装置

【課題】角度多重記録方式により高多重記録がなされている光記録媒体に対する、再生時の再生干渉像のずれが生ずることなく、高精度の再生画像が得られ、SNRの優れた再生が得られる光再生方法及び光再生装置の提供。
【解決手段】光記録媒体に対し情報光及び参照光を2光束干渉法により照射する際、角度多重方式により干渉像を形成し、前記情報を干渉像として前記記録層に記録した光記録媒体に対して、前記参照光と同じ再生光を前記干渉像に照射して生成した回折光を検出器で受光し、該干渉像に基づいて記録情報を再生する際、再生した再生干渉像が基準となる真正干渉像と不一致の場合に、一致するように、前記検出器の検出領域の修正、前記光記録媒体の角度の修正及び前記再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正を行うことにより再生することを特徴とする光再生方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを利用して情報が記録された光記録媒体の光再生方法及び光再生装置に関し、高密度多重記録の再生時における歪のない再生画像が得られ、SNR(信号とノイズとの比)の優れた再生が得られる光再生方法及び光再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを利用して光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法は、前記光記録媒体に記録に用いられた参照光と同じ再生光を、記録時と同じ方向から照射することにより行われる。該光照射により、前記光記録媒体に光情報としての干渉縞からなる干渉像から回折光が生成され、該回折光を受光することにより前記光情報が再生される。このような、光記録媒体への前記情報の記録方法としては、一般に、イメージ情報を持った情報光(物体光)と参照光とを前記光記録媒体の内部で干渉させ、その際に生成される干渉縞を前記光記録媒体に書き込むことによって行われる。前記光記録方法として、例えば、前記情報光の光軸と参照光の光軸とが所定の角度をもって、該情報光及び参照光が照射される方法が、2光束干渉法と称され、一般的な記録方法として用いられている。該2光束干渉法における情報光及び参照光の照射により光記録媒体に形成されている記録層内に前記干渉縞が生成され、光情報が該記録層に記録される。
【0003】
このような光情報の記録容量を増大させる方法として、前記干渉縞の記録密度を高める多重記録方法があり、具体的には、シフト多重記録、角度多重記録、波長多重記録、位相多重記録などの記録方法が用いられている。
これらの中でも、角度多重記録は、前記情報光の光記録媒体に対する入射角度を一定とし、前記参照光の入射角度を少しずつ変化させる変調を行い多重に記録する方法で一般的に用いられている(特許文献1参照)。前記情報光及び参照光は共にそのビーム形状は円形が一般的であり、該円形ビームの光照射毎に角度変調がなされ、該光照射に含まれる情報が1データページとして干渉像が生成されデータページ単位ごとに記録層に記録される。
【0004】
このような、角度多重記録がなされた光記録媒体の光情報を再生する方法として、前記参照光と同じ再生光を、記録時の前記参照光の入射角度と同じ入射角度で光記録媒体に照射すると、記録されている前記干渉像から、記録時に用いた前記情報光と同じ光が回折光として生成され、該回折光を、フォトディテクタアレイ、複数のCCDや撮像素子により構成される検出器で受光し、該データページに含まれる符号化された元の情報を処理して再生する。具体的には、目的の光記録媒体に記録しようとする前記情報が、イメージ情報であれば、記録時に、該情報は、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)により、イメージ情報からなる2次元画面をパターンデータの最小の単位である画素(ピクセル)に微細加工され「0」か「1」のデジタルデータとなり2次元画像になっているため、受光した該2次元画像を、例えば、フーリエ変換を利用したコンピュータデジタル処理により時間信号を周波数領域で表す演算処理が行われ、逆符号化(デコード)することにより、元のイメージ情報を再生することができる。
【0005】
しかし、前記再生方法の場合、図5に示すように、光記録媒体21の記録されている干渉像に対して再生光19を記録時と同じ入射角度で照射しようとした際に、該光記録媒体21の周囲温度の変化、湿度の変化、気圧の変化や機械的誤差などの影響により、前記入射角度がθだけずれてしまうことがある。このように前記入射角度がずれてしまった場合には、回折光20は、本来の再生すべき垂直方向から角度θ´分だけずれが生じ、検出器31により検出されるべき真正干渉像32からずれた再生干渉像33となってしまい、正確な再生ができないという問題がある。
【0006】
したがって、前記角度多重記録方式により高多重記録がなされている光記録媒体に対する、再生時の再生干渉像のずれや歪みが生ずることなく、高精度の再生画像が得られ、SNRの優れた再生が得られる光再生方法及び光再生装置は未だ実現されておらず、その提供が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特表2005−502918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、角度多重記録方式により高多重記録がなされている光記録媒体に対する、再生時の再生干渉像のずれが生ずることなく、高精度の再生画像が得られ、SNRの優れた再生が得られる光再生方法及び光再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を備えた光記録媒体であって、情報光及び参照光を2光束干渉法により照射する際、2光束のうち少なくとも一方の入射角を変化させることによって同一位置において多重記録を可能にする角度多重方式により干渉像を形成し、前記情報を干渉像として前記記録層に記録した光記録媒体に対して、前記参照光と同じ再生光を前記干渉像に照射して生成した回折光を検出器で受光し、該干渉像に基づいて記録情報を再生する際、再生した再生干渉像が基準となる真正干渉像と不一致の場合に、一致するように、前記検出器の検出領域の修正、前記光記録媒体の角度の修正及び前記再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正を行うことにより再生することを特徴とする光再生方法である。
<2> 検出器の検出領域の修正、光記録媒体の角度の修正及び再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正が、再生干渉像の真正干渉像に対する、回折光受光部の面方向の位置ずれ量の情報を検出し、検出された該情報に基づいて前記再生干渉像と前記真正干渉像とが一致するように行われる前記<1>に記載の光再生方法である。
<3> 情報の検出が、回折光の強度(W/cm)、SNR(信号とノイズとの比)、及び再生信号のエラー数から選択される少なくともいずれか1種に基づいて行われる前記<2>に記載の光再生方法である。
<4> 情報の検出が、データ信号を抽出する画像処理方法、データ信号の波形を成形する信号処理方法、及びデータ信号をデコードする演算処理方法から選択される少なくともいずれか1種により行われる前記<2>から<3>のいずれかに記載の光再生方法である。
<5> 再生光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度になるようにして、該再生光を干渉像に照射して記録情報を再生する前記<1>から<4>に記載の光再生方法である。
<6> 光記録媒体が、第一の基板、記録層及び第二の基板からなる透過型ホログラムである前記<1>から<5>のいずれかに記載の光再生方法である。
【0010】
<7> ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を備えた光記録媒体であって、情報光及び参照光を2光束干渉法により照射する際、2光束のうち少なくとも一方の入射角を変化させることによって同一位置において多重記録を可能にする角度多重方式により干渉像を形成し、前記情報を干渉像として前記記録層に記録した光記録媒体に対して、前記参照光と同じ再生光を前記干渉像に照射して生成した回折光を検出器で受光する手段と、該干渉像に基づいて記録情報を再生する際、再生した再生干渉像が基準となる真正干渉像とが不一致の場合に、一致するように、前記検出器の検出領域の修正、前記光記録媒体の角度の修正及び前記再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかを修正して再生する手段を有することを特徴とする光再生装置である。
<8> 検出器の検出領域の修正、光記録媒体の角度の修正及び再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正が、再生干渉像の真正干渉像に対する、回折光受光部の面方向の位置ずれ量の情報を検出し、検出された該情報に基づいて前記再生干渉像と前記真正干渉像とが一致するように行われる前記<7>に記載の光再生装置である。
<9> 情報の検出が、回折光の強度(W/cm)、SNR(信号とノイズとの比)、及び再生信号のエラー数から選択される少なくともいずれか1種に基づいて行われる<8>に記載の光再生装置である。
<10> 情報の検出が、データ信号を抽出する画像処理方法、データ信号の波形を成形する信号処理方法、及びデータ信号をデコードする演算処理方法から選択される少なくともいずれか1種により行われる前記<8>から<9>のいずれかに記載の光再生装置である。
<11> 再生光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度になるようにして、該再生光を干渉像に照射して記録情報を再生する前記<7>から<10>に記載の光再生装置である。
<12> 光記録媒体が、第一の基板、記録層及び第二の基板からなる透過型ホログラムである前記<7>から<11>のいずれかに記載の光再生装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、角度多重記録方式により高多重記録がなされている光記録媒体に対する、再生時の再生干渉像のずれが生ずることなく、高精度の再生画像が得られ、SNRの優れた再生が得られる光再生方法及び光再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(光再生方法)
本発明の光再生方法は、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を備えた光記録媒体であって、情報光及び参照光を2光束干渉法により照射する際、2光束のうち少なくとも一方の入射角を変化させることによって同一位置において多重記録を可能にする角度多重方式により照射して干渉像を形成し、前記情報を干渉像として前記記録層に記録した光記録媒体に対して、前記参照光と同じ再生光を前記干渉像に照射して生成した回折光を検出器で受光し、該干渉像に基づいて記録情報を再生する際、再生した再生干渉像が基準となる真正干渉像とが不一致の場合に、一致するように、前記検出器の検出領域の修正、前記光記録媒体の角度の修正及び前記再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかを修正することにより前記検出器で受光して再生し、必要に応じて適宜選択したその他の方法を含むことが特徴である。
本発明の光再生方法の以下の説明を通じて、本発明の光再生装置についても明らかにする。
【0013】
<情報光及び参照光>
前記情報光及び前記参照光の光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光源から出射される可干渉性のあるレーザ光などが好ましい。
【0014】
前記レーザ光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、波長が、360〜850nmから選択される1種以上の波長からなるレーザ光などが挙げられる。該波長は、380〜800nmが好ましく、400〜750がより好ましく、可視領域の中心が最も見え易い500〜600nmが最も好ましい。
前記波長が、360nm未満であると、光学系の設計が困難になり、850nmを超えると、記録容量が少なくなることがある。
【0015】
前記レーザ光の光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固体レーザ光発振器、半導体レーザ光発振器、液体レーザ光発振器、気体レーザ光発振器などが挙げられる。これらの中でも、気体レーザ光発振器、半導体レーザ光発振器などが好ましい。
【0016】
前記情報光及び前記参照光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、同一の光源から出射される一のレーザ光などを分割して、該情報光及び該参照光として照射してもよく、異なる光源から出射される二つのレーザ光などを照射してもよい。
前記情報光と前記参照光の照射方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記情報光の光軸と前記参照光の光軸の入射角の間隔、即ち、変調角度間隔が、10ミリ°〜1°の範囲に設定されている場合には、設定角度に基づいて照射される。
前記情報光(物体光)と参照光とを前記光記録媒体の内部で干渉させ、その際に生成される干渉縞を前記光記録媒体に書き込むことによって前記情報が記録される。
【0017】
前記情報光は、角度多重方式の場合、例えば、照射される1スポット単位で、記録すべき情報がデジタルデータに加工され、前記1スポットには数千bitのデータがページデータパターンとして形成される。目的の光記録媒体に記録しようとする前記情報が、例えば、イメージ情報であれば、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)により、画面を2次元パターンデータの最小の単位である画素(ピクセル)に微細加工される。前記加工により、前記イメージ情報は、フーリエ変換を利用したコンピュータデジタル処理により時間信号を周波数領域で表す演算処理が行われ、「0」か「1」のデジタルデータとなる。
【0018】
前記デジタルデータからなる前記情報光は、図2に示すように、対物レンズ12を透過し、光記録媒体21内の記録層4の記録部分で一定の大きさに集光され、該集光がなされた光照射スポット32単位で記録がなされる。
【0019】
本発明の光再生方法では、角度多重記録の再生時における、前述の問題点、即ち、再生光の照射角度や光軸方向における焦点距離が、光記録媒体や光再生装置の温度変化、湿度変化、気圧の変化、機械的な外力などの影響により、ずれたり、歪んだりすると検出器により検出される真正干渉像からずれた再生干渉像となってしまい、正確な再生ができないという問題点を改善するため、再生した再生干渉像が真正干渉像と一致するように該再生光の照射角度を修正して再生することが特徴である。
【0020】
具体的には、図1のフローチャートに示すように、ホログラム記録がなされている光記録媒体に対して、角度多重記録に用いられた参照光と同じ再生光を、記録時と同じ方向で照射すると、図4に示すように、光記録媒体21に記録されているホログラム、即ち、干渉像から回折光20が生成され、該回折光20を検出器31の受光部31aで検出する。該回折光20に基づく再生干渉像と基準となる真正干渉像32とが一致しているかを判定する。図4に示すように、一致している場合には、該再生干渉像からなる画像をデコードし記録情報を再生する。この場合には、適正な干渉像が再現されているので良好な再生が得られる。
他方、前記再生干渉像と真正干渉像とが一致していない場合は、図1に示すように、(1)検出器の位置、(2)光記録媒体の角度、(3)再生光の照射角度のいずれを制御するか判定する。
(1)検出器の位置を修正する場合には、検出器の移動量を演算処理により算出し、該検出器を正常な受光可能位置に移動し、再度光記録媒体に再生光を照射し、生成される回折光を検出器で受光し、再生干渉像と真性干渉像とが一致していることを確認し、画像をデコードし記録を再生する。
(2)光記録媒体の角度を修正する場合には、該光記録媒体の修正角度を演算処理により算出し、該光記録媒体の角度を適正な位置に修正し、再度光記録媒体に再生光を照射し、生成される回折光を検出器で受光し、再生干渉像と真性干渉像とが一致していることを確認し、画像をデコードし記録を再生する。
(3)再生光の照射角度を修正する場合は、再生光の照射角度のずれ量を演算処理により算出し、該再生光の照射角度を適正角度に修正し、再度光記録媒体に再生光を照射し、生成される回折光を検出器で受光し、再生干渉像と真性干渉像とが一致していることを確認し、画像をデコードし記録を再生する。
【0021】
−(1)検出器の検出領域の修正−
前記検出器の検出領域の修正方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図5に示すように、正常な回折光による再生干渉像32における該回折光の光軸からθ´だけ角度が変化し回折光20となった場合、再生干渉像33を受光するため、検出器31を矢印方向に平行移動して回折光を正常な受光部31a(即ち、検出領域)の中心位置で受光する修正などが挙げられる。
所定の平行移動をするためには、再生干渉像のずれ量の検出を行い、検出結果に基づいて、演算処理を実行し、移動量を求める。移動量が求まったら、本発明の光再生装置に設けた光記録媒体の移動機構により速やかに移動する。
前記移動機構としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボイスコイルモーター、ピエゾ素子、などを用いて設計することができる。
前記受光部31aに再生干渉像33が全く受光されないような、大きなずれが生じた場合には、ずれ量の検出ができないので、予め、光再生装置などの特性を把握し、このような場合に、検出器31をどの方向に移動させるかをメモリしておき、該メモリに基づいて、前記検出器31を移動させ、改めてすれ量を検出することができる。
なお、図6に示すように、予め、前記回折光受光部31a(検出領域)が通常の大きさよりも大きく、通常の前記回折光の受光部31aが(1/2)Lの場合には、その2倍のLとして受光部31aを装備しておけば、前記再生干渉像33の位置が大きくずれたとしても、該受光部31aに前記再生干渉像33の全体が収まるので、前記受光部31aに再生干渉像が全く写らなくなることはない。
【0022】
−(2)光記録媒体の角度の修正−
前記光記録媒体の角度の修正としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図8に示すように、光記録媒体自体の面方向の水平角度を修正し、回折光20を正常な受光部31aの中心位置で受光する修正などが挙げられる。
所定の水平角度を修正するためには、再生干渉像のずれ量の検出を行い、検出結果に基づいて、演算処理を実行し、修正すべき水平角度を求める。修正角度が求まったら、本発明の光再生装置に設けた光記録媒体の水平角度修正機構により速やかに移動する。
前記水平角度修正機構としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボイスコイルモーター、ピエゾ素子などを用いて設計することができる。
【0023】
−(3)再生光の照射角度の修正−
前記再生光の照射角度の修正としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図7に示すように、受光部31aにおいてずれてしまった一点鎖線で示す再生干渉像について、再生光の照射角度を修正し、回折光20を正常な受光部31aの中心位置で受光することにより正常な再生干渉像33を受光する修正などが挙げられる。
所定の照射角度を修正するためには、再生干渉像のずれ量の検出を行い、検出結果に基づいて、演算処理を実行し、修正すべき水平角度を求める。修正角度が求まったら、本発明の光再生装置の本来の再生光の照射装置により修正された照射角度で再度照射する。
【0024】
また、本発明の光再生方法では、検出器の位置の修正、光記録媒体の角度の修正及び再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正が、再生干渉像の真正干渉像に対する、回折光受光部の面方向の位置ずれ量の情報を検出し、検出された該情報に基づいて前記再生干渉像と前記真正干渉像とが一致するように行われるのが好ましい。
前記ずれ量の認定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、位置ずれの距離(μm)で表してもよい。
【0025】
<ずれ量の検出>
前記情報の検出、即ち、ずれ量の検出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真正干渉像を基準として用い、一定の計算式を最小にする値を求め、回折光受光部の面方向のX及びY方向のずれを求める方法などが挙げられる。前記最小値を求める方法として、逐次計算法、偏微分法、非線形最小二乗法などが挙げられる。
具体的には、例えば、D(x,y)を画素の濃度情報として表した場合、前記真正干渉像をD(x,y)、前記再生干渉像をD(x,y)と表す。
前記画素の濃度情報は、例えば、8bitのセンサであれば、0〜255の値をとる。スレッショルド・レベル(しきい値)を設けて、0と1の2値に分別すると、計算が簡単になるため好ましい。
前記x及びyは2次元センサ(検出器の回折光受光部)における縦軸及び横軸位置座標を表す。例えば、1,024×768画素の2次元センサではxは1〜1,024、yは1〜768の値をとることになる。また、xmax×ymaxの2次元センサでは、xは1〜xmax、yは1〜ymaxの範囲の値をとることになる。
ここで、前記再生干渉像と前記真性干渉像の画像のずれ量をΔx、Δy、拡大率をαとすると、理想的には、以下の式が成り立つ。
α×D(x−Δx、y−Δy)=D(x,y)
【0026】
前記再生干渉像のずれ量、Δx、Δyを求めるには、以下のKを最小にするように計算すればよい。
K=ΣΣ{D(x,y)−α×D(x−Δx、y−Δy)}
ただし、(x−Δx)や(y−Δy)が1より小さい場合や、xmax、ymaxより大きい場合は、足し合わせないで計算することが好ましい。
前記最小の値を求めるためには、以下の逐次計算法、偏微分法、非線形最小二乗法などが挙げられる。
【0027】
−−逐次計算法−−
前記逐次計算法は、Δx、Δy、αを一定の範囲内で変化させて、Kをそれぞれ計算し、Kが最小となったときにΔx、Δy、αを最も確からしい値とする方法である。演算処理時間は多少かかるが、最も確実に最小値を求めることができる。
【0028】
−−偏微分法−−
前記偏微分法は、前記Kを求める式を、それぞれのパラメータΔx、Δyで偏微分し、これを連立方程式として解く方法である。
演算処理時間は短縮することができるが、時として解が求まらなかったり、複数の解が得られたりするため、前記ずれ量が、ある程度少ない範囲内である場合に限定して用いることが好ましい。
【0029】
−−非線形最小二乗法−−
前記非線形最小二乗法は、計測値と計算値の残差の二乗和を最小にするように未知パラメータを決定する方法で、ある構造パラメータの組について残差二乗和を求め、残差二乗和の微分が負になるような構造パラメータの組を発生させ、それらの値に対する残差二乗和を計算する。この過程を繰り返して残差二乗和の最小値に到達する。例えば、最急降下法、Gauss−Newton法、(修正)Marquardt法などが挙げられる。
前記最急降下法は、反復の回数において、残差二乗和の減少が局所的に最大となる方向に沿って解を探索する方法であり、極小点の周りの収束領域は比較的広いが、収束速度は遅くなることがある。
前記Gauss−Newton法は、解くべき最小二乗問題が線形に近いと仮定した近似を用いて解を反復改良する方法で、推定の初期値が解に近い場合には早く収束することができるが、その収束領域は一般に狭い。
前記(修正)Marquardt法は、前記最急降下法と前記Gauss−Newton法を折衷した方法で、推定する変数が解から遠く離れ、非線形性の影響が大きい場合には最急降下法的な推定を行い、解に近づくにつれて、Gauss−Newton法的な推定となる。これにより安定かつ少ない回数の繰り返しで解を求めることができる。
【0030】
ここでの各計算は、x方向のずれ、y方向のずれが均一に起こるとした。しかし、実際には部分的にそのずれ量が変わる場合がある。その場合は、Δx、Δy、αが、xやyの関数となり、式が複雑になることがある。複雑になっても、前記逐次計算法を用いれば解くことができるが、演算処理時間を短縮するためには非線形最小二乗法を用いることが好ましい。
【0031】
前記Σを求めるときに、1からmax値の全てを計算しないで、(1/4)xmax〜(3/4)xmaxといった範囲のみを計算してもよい。この場合、演算ステップが減るため、計算が速くなるメリットがある。また、画像データの端部について計算しないため、画像データの端部で起きる画素からはずれた部分の影響を受けないメリットもある。
【0032】
前記ずれ量の検出の対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回折光の強度(W/cm)、SNR(信号とノイズとの比)、及び再生信号のエラー数などが挙げられる。
また、情報の検出方法としては、データ信号を抽出する画像処理方法、データ信号の波形を成形する信号処理方法、データ信号をデコードする演算処理方法、などが挙げられる。以下、詳細に説明する。
【0033】
前記回折光の強度(W/cm)に基づく検出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトダイオード、CCD、CMOSなどを用いた検出方法が挙げられる。
前記フォトダイオードを用いた検出方法としては、具体的には、光路の一部に光分岐ミラーを設置し、フォトダイオードに前記光分光ミラーからの分岐光を入射させることにより、回折光の強度を検出することができる。
前記回折光の強度の分布をもとに、ずれ量を検出する。
前記検出方法としては、更に、画像データから演算する検出方法が挙げられ、具体的には、画像データを検出する素子そのものに当たる光量の分布を、該画像データを演算することにより求め、該光量の分布によりずれ量を検出する方法である。前記算出された光量の分布をもとに、そのピーク値の位置により、ずれ量を検出する。
前記回折光の強度に基づく検出方法の中でも、画像データから演算する検出方法を用いるのが、機器を簡略化できるので好ましい。
【0034】
前記SNRに基づく検出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像データから演算する、SNR検出器を設ける、などの方法が挙げられる。
前記画像データから演算する検出方法としては、画像データをデコードし、その際のエラー数を演算することによりずれ量を検出することができる。
前記SNR検出器を設けた検出方法としては、画像データの明暗を判定する基準値を設け、その基準値と画像データとを比較し、Signal量とNoise量を計算し、その比率から、ずれ量を検出することができる。
前記SNRに基づく検出方法の中でも、画像データから演算する検出方法を用いるのが、機器を簡略化できる点で好ましい。
【0035】
前記再生信号のエラー数に基づく検出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像データから演算する検出方法などが挙げられる。
具体的には、画像データをデコードし、その際のエラー数を演算することにより、ずれ量を検出することができる。
【0036】
<再生光のフォーカスサーボ、トラッキングサーボ>
前記再生光の照射角度修正以外に、光記録媒体にトラック情報やアドレス情報などが設けられている場合には、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボなどにより、再生光のフォーカスやトラック検出について前記ずれ量に基づいて制御してもよい。
【0037】
前記トラッキングサーボを行う場合には、光記録媒体を形成する第一の基板及び第二の基板の少なくともいずれかに、サーボピットパターンなどからなるトラック情報やアドレス情報を形成しておくことが好ましい。
【0038】
前記フォーカスサーボ及びトラッキングサーボの方法として、例えば、図12に示すように、回折光受光部で検出した前記再生干渉像の画像データを画像センサ71に取り込み、更にCPU(中央処理装置)73に読み込む。前記真性干渉像の画像データは、メモリ74に格納され、必要に応じて前記CPU73に読み込まれる。読み込まれた前記再生干渉像の画像データ及び前記真性干渉像の画像データに基づいて、CPU73により演算処理がなされ、前記真性干渉像に対する前記再生干渉像の位置ずれ量などが求められる。フォーカス、トラッキング回路72において、前記ずれ量に基づいて、トラッキングが制御され、前記拡大率や縮小率に基づいて、フォーカス制御がなされる。前記拡大率(あるいは縮小率)に基づく補正は、フォーカス用のレンズを再生光の光路における深さ方向に制御することが好ましい。該深さ方向の制御以外に、再生光の光学系における拡大率を変える制御方法がより好ましい。例えば、再生光の光路内にエキスパンダを設置して前記再生光の拡大率を制御する方法がより好ましい。
【0039】
前記真性干渉像の画像データは、(ア)どのハード個体(光記録再生装置)にも共通する固定パターンとしてもよいし、(イ)ディスク(光記録媒体)個別毎に定める個別パターンとしてもよい。
前記(ア)の場合、ハード個体のROMにあらかじめ記録しておくのが好ましい。
前記(イ)の場合、ディスクにホログラム像(干渉像)以外の方法で記録しておくことが好ましい。例えば、誘導電磁界又は電波によって非接触で半導体メモリのデータを読み出し、書込みのために近距離通信を行うRFID(Radio Frequency−IDentification)をディスクやカートリッジに設置しておくことが好ましい。あるいは、ホログラム以外の記録層(例えば、DVD−R)をディスクに積層して、この積層部分に記録しておいてもよい。
【0040】
(光記録媒体)
本発明の光記録媒体は、支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層及び必要に応じて適宜選択したその他の層を有する光記録媒体である。
本発明の光記録媒体は、2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラムであってもよく、透過型及び反射型のいずれであってもよい。また、ホログラムの記録方式もいずれであってもよく、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなどでもよい。
本発明の光記録媒体は、少なくとも第一の基板と、第二の基板と、該第二の基板上に記録層と、前記第二の基板と該記録層との間にフィルタ層とを有し、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸になるようにして行われるコリニア方式に用いられる光記録媒体が好ましい。
【0041】
<第一の基板及び第二の基板>
前記第一の基板及び第二の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、同じ基板でもよく、異なる基板でもよいが、少なくとも形状及び大きさは同じものであることが好ましい。また、前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられ、光記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものを選定する必要がある。また、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要であり、光透過率としては、70〜99.9%が好ましく、80〜99%がより好ましく、90〜98%が特に好ましい。前記光透過率が、70%未満であると、信号の読み取り精度が低下することがあり、また前記光透過率は高いほど好ましいが、99.9%以上を求めると、生産効率が低下することがある。
前記第一の基板及び第二の基板の材料としては、いずれも通常、ガラス、石英、シリコン、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性、コストの点から、樹脂が特に好適である。また、精度の点から、ガラスも好適である。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電磁波硬化性樹脂などが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、が特に好ましい。
前記電磁波硬化性樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業社製のSD640などが挙げられる。
前記第一の基板及び第二の基板は、いずれも適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0042】
前記第一の基板及び第二の基板としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0043】
前記トラッキング制御を行う場合には、前記第一の基板及び第二の基板の少なくともいずれかにトラック情報やアドレス情報などを有するサーボピットパターンを形成しておくことが好ましい。
【0044】
−サーボピットパターン−
前記サーボピットパターンのトラックピッチとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーボ用光の波長が620〜700nmの場合、前記トラックピッチは0.85〜30μmが好ましく、1.1〜20μmがより好ましく、1.3〜10μmが特に好ましく、1.5〜2μmが最も好ましい。前記トラックピッチが0.85μm未満であると、記録層の途中の光の散乱でトラッキングが不安定になることがあり、30μmを超えると記録密度が下がることがある。
前記サーボ用光の波長が750〜1,000nmの場合、前記トラックピッチは1.7〜30μmが好ましく、1.9〜20μmがより好ましく、2.3〜5μmが特に好ましい。前記トラックピッチが1.7μm未満であると、記録層の途中の光の散乱でトラッキングが不安定になることがあり、30μmを超えると記録密度が下がることがある。
前記サーボ用光の波長が350〜500nmの場合、前記トラックピッチは0.4〜30μmが好ましく、0.6〜20μmがより好ましく、0.8〜5μmが特に好ましく、1〜2μmが最も好ましい。前記トラックピッチが0.4μm未満であると、記録層の途中の光の散乱でトラッキングが不安定になることがあり、30μmを超えると記録密度が下がることがある。
前記サーボ用光の波長が405nm近傍の場合、前記トラックピッチは0.32〜0.4μmが好ましい。
【0045】
前記サーボピットパターンの溝深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーボ用光の波長をλとすると、前記溝深さは、λ/(10n)〜λ/(3n)が好ましく、λ/(8n)〜λ/(4n)がより好ましく、λ/(7n)〜λ/(5n)が更に好ましい。nは、サーボピットパターンのピット部の媒体屈折率、即ち、ピット部の光入射面側の材料の屈折率を表す。
前記λが650nmであり、nが1.6の場合は、前記溝深さは135〜41nmが好ましい。通常、nが多少変動したとしても、650nmの場合、50〜120nmが好ましく、60〜110nmがより好ましく、70〜100nmが更に好ましく、80〜90nmが特に好ましい。他の波長の場合は、前記溝深さは、波長に比例した値であることが好ましい。例えば、サーボ用光の波長が780nmであり、nが1.6の場合は、163〜49nmが好ましく、前記サーボ用光の波長が405nmであり、nが1.6の場合は、84〜25nmが好ましい。
【0046】
前記サーボピットパターンの溝幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常のCD、DVD、BD、HD、DVDの幅よりは広いことが好ましい。具体的には、前記サーボ用光の波長が650nmの場合は、0.25〜1.05μmが好ましく、0.35〜0.95μmがより好ましく、0.45〜0.85μmが特に好ましく、0.55〜0.75が最も好ましい。
前記サーボ用光の波長が780nmの場合は、0.45〜2μmが好ましく、0.6〜1.6μmがより好ましく、0.8〜1.3μmが特に好ましく、1.0〜1.1が最も好ましい。
前記サーボ用光の波長が405nmの場合は、0.2〜1.0μmが好ましく、0.25〜0.8μmがより好ましく、0.3〜0.6μmが特に好ましく、0.35〜0.5が最も好ましい。
【0047】
前記サーボピットパターンの角度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、25〜90度が好ましく、35〜80がより好ましく、40〜70が特に好ましく、45〜60が最も好ましい。なお、前記角度が90度の場合は、パターン形状が矩形となる。
【0048】
前記第一の基板及び第二の基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターなどにより回転して用いる場合には、過剰な負荷をかけることがある。
【0049】
<記録層>
前記記録層は、ホログラフィを利用して情報が記録され得るものであり、所定の波長の電磁波(γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波など)を照射すると、その強度に応じて吸光係数や屈折率などの光学特性が変化する材料が用いられる。
【0050】
前記記録層の材料は、光熱変換材料、感光性樹脂、バインダー及び必要に応じて適宜選択したその他の成分が含まれる。
【0051】
−感光性樹脂−
前記感光性樹脂としては、ホログラフィに用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトポリマーが好ましい。
【0052】
−−フォトポリマー−−
前記(1)のフォトポリマーとしては、光照射で重合反応が起こり高分子化するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノマー、及び光開始剤を含有してなり、更に必要に応じて増感剤、オリゴマーなどのその他の成分を含有してなる。
【0053】
前記フォトポリマーとしては、例えば、「フォトポリマーハンドブック」(工業調査会、1989年)、「フォトポリマーテクノロジー」(日刊工業新聞社、1989年)、SPIE予稿集 Vol.3010 p354−372(1997)、及びSPIE予稿集 Vol.3291 p89−103(1998)に記載されているものを用いることができる。また、米国特許第5,759,721号明細書、同第4,942,112号明細書、同第4,959,284号明細書、同第6,221,536号明細書、米国特許第6,743,552号明細書、国際公開第97/44714号パンフレット、同第97/13183号パンフレット、同第99/26112号パンフレット、同第97/13183号パンフレット、特許第2880342号公報、同第2873126号公報、同第2849021号公報、同第3057082号公報、同第3161230号公報、特開2001−316416号公報、特開2000−275859号公報などに記載されているフォトポリマーを用いることができる。
【0054】
前記フォトポリマーに記録光を照射して光学特性を変化させる方法としては、低分子成分の拡散を利用した方法などが挙げられる。また、重合時の体積変化を緩和するため、重合成分とは逆方向へ拡散する成分を添加してもよく、あるいは、酸開裂構造を有する化合物を重合体のほかに別途添加してもよい。なお、前記低分子成分を含むフォトポリマーを用いて記録層を形成する場合には、記録層中に液体を保持可能な構造を必要とすることがある。また、前記酸開裂構造を有する化合物を添加する場合には、その開裂によって生じる膨張と、モノマーの重合によって生じる収縮とを補償させることにより体積変化を抑制してもよい。
【0055】
前記モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル基やメタクリル基のような不飽和結合を有するラジカル重合型のモノマー、エポキシ環やオキセタン環のようなエーテル構造を有するカチオン重合型系モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーは、単官能であっても多官能であってもよい。また、光架橋反応を利用したものであってもよい。
【0056】
前記ラジカル重合型のモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ナフト−1−オキシエチルアクリレート、2−カルバゾイル−9−イルエチルアクリレート、(トリメチルシリルオキシ)ジメチルシリルプロピルアクリレート、ビニル−1−ナフトエート、N−ビニルカルバゾール、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、ペンタブロムアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。
前記カチオン重合型系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサングリシジルエーテル、ビニルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、下記構造式(M1)〜(M6)で表される化合物、などが挙げられる。
これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化1】

【0057】
前記光開始剤としては、記録光に感度を有するものであれば特に制限はなく、光照射によりラジカル重合、カチオン重合、架橋反応などを引き起こす材料などが挙げられる。
前記光開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ビス(η−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)、ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニルチタニウム〕、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、照射する光の波長に合わせて増感色素を併用してもよい。
【0058】
前記記録層の貯蔵安定性を改良する目的でフォトポリマーの重合禁止剤や酸化防止剤を加えてもよい。重合禁止剤、酸化防止剤としては例えば、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシヤリ−ブチル−p−クレゾール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−ターシヤリ−ブチルフェノール)、トリフェルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト,フェノチアジン、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。使用量としては組成物に使用するモノマーの全量に対して3質量%以内であり、3質量%を越えると重合が遅くなるか、著しい場合は重合しなくなる。
【0059】
前記フォトポリマーは、前記モノマー、前記光開始剤、更に必要に応じてその他の成分を攪拌混合し、反応させることによって得られる。得られたフォトポリマーが十分低い粘度ならばキャスティングすることによって記録層を形成することができる。一方、キャスティングできない高粘度フォトポリマーである場合には、ディスペンサーを用いて第二の基板にフォトポリマーを盛りつけ、このフォトポリマー上に第一の基板で蓋をするように押し付けて、全面に広げて記録層を形成することができる。
【0060】
前記フォトポリマー以外の有用な感光性樹脂としては、(1)フォトリフラクティブ効果(光照射で空間電荷分布が生じて屈折率が変調する)を示すフォトリフラクティブ材料、(2)光照射で分子の異性化が起こり、屈折率が変調するフォトクロミック材料、(3)ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウムなどの無機材料、(4)カルコゲン材料、などが挙げられる。
【0061】
前記(1)のフォトリフラクティブ材料としては、フォトリフラクティブ効果を示すものであるならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷発生材、及び電荷輸送材を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0062】
前記電荷発生材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、又はそれらの誘導体などのフタロシアニン色素/顔料;ナフタロシアニン色素/顔料;モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ系色素/顔料;ペリレン系染料/顔料;インジゴ系染料/顔料;キナクリドン系染料/顔料;アントラキノン、アントアントロンなどの多環キノン系染料/顔料;シアニン系染料/顔料;TTF−TCNQで代表されるような電子受容性物質と電子供与性物質とからなる電荷移動錯体;アズレニウム塩;C60及びC70で代表されるフラーレン並びにその誘導体であるメタノフラーレン、などが挙げられる。これらの電荷発生材は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記電荷輸送材は、ホール又はエレクトロンを輸送する材料であり、低分子化合物であってもよく、又は高分子化合物であってもよい。
前記電荷輸送材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インドール、カルバゾール、オキサゾール、インオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサアジアゾール、ピラゾリン、チアチアゾール、トリアゾールなどの含窒素環式化合物、又はその誘導体;ヒドラゾン化合物;トリフェニルアミン類;トリフェニルメタン類;ブタジエン類;スチルベン類;アントラキノンジフェノキノンなどのキノン化合物、又はその誘導体;C60及びC70などのフラーレン並びにその誘導体;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどのπ共役系高分子又はオリゴマー;ポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系高分子又はオリゴマー;アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネンなどの多環芳香族化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記フォトリフラクティブ材料を用いて記録層を形成する方法としては、例えば、前記フォトリフラクティブ材料を溶媒中に溶解乃至は分散させてなる塗布液を用いて塗膜を形成し、この塗膜から溶媒を除去することにより記録層を形成することができる。また、加熱して流動化させた前記フォトリフラクティブ材料を用いて塗膜を形成し、この塗膜を急冷することにより記録層を形成することもできる。
【0065】
前記(2)のフォトクロミック材料としては、フォトクロミック反応を起こす材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾベンゼン化合物、スチルベン化合物、インジゴ化合物、チオインジゴ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、フルキド化合物、アントラセン化合物、ヒドラゾン化合物、桂皮酸化合物、ジアリールエテン化合物などが挙げられる。これらの中でも、光照射によりシス−トランス異性化により構造変化を起こすアゾベンゼン化合物、スチルベン化合物、光照射により開環−閉環の構造変化を起こすスピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物が特に好ましい。
【0066】
前記(4)のカルコゲン材料としては、例えば、カルコゲン元素を含むカルコゲナイドガラスと、このカルコゲナイドガラス中に分散されており光の照射によりカルコゲナイドガラス中に拡散可能な金属からなる金属粒子とを含む材料、などが挙げられる。
前記カルコゲナイドガラスは、S、Te又はSeのカルコゲン元素を含む非酸化物系の非晶質材料から構成されるものであり、金属粒子の光ドープが可能なものであれば特に限定されない。
前記カルコゲン元素を含む非晶質材料としては、例えば、Ge−S系ガラス、As−S系ガラス、As−Se系ガラス、As−Se−Ce系ガラスなどが挙げられ、これらの中ではGe−S系ガラスが好ましい。前記カルコゲナイドガラスとしてGe−S系ガラスを用いる場合には、ガラスを構成するGe及びSの組成比は照射する光の波長に応じて任意に変化させることができるが、主としてGeSで表される化学組成を有するカルコゲナイドガラスが好ましい。
前記金属粒子は、光の照射によりカルコゲナイドガラス中に光ドープされる特性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、Au、Cu、Cr、Ni、Pt、Sn、In、Pd、Ti、Fe、Ta、W、Zn、Agなどが挙げられる。これらの中では、Ag、Au又はCuが光ドープをより生じやすい特性を有しており、Agは光ドープを顕著に生じるため特に好ましい。
前記カルコゲナイドガラスに分散されている金属粒子の含有量としては、前記記録層の全体積基準で0.1〜2体積%が好ましく、0.1〜1.0体積%がより好ましい。前記金属粒子の含有量が、0.1体積%未満であると、光ドープによる透過率変化が不充分となって記録の精度が低下することがあり、2体積%を超えると、記録材料の光透過率が低下して光ドープを充分に生じさせることが困難となることがある。
【0067】
−バインダー−
前記バインダーは、塗膜性、膜強度、及びホログラム記録特性向上の効果を高める目的で使用されるものであり、ホログラム材料および光熱変換物質との相溶性、を考慮して適宜選択される。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸などの不飽和酸と、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、α−メチルスチレンなどとの共重合体;ポリメチルメタクリレートに代表されるメタクリル酸アルキルやアクリル酸アルキルの重合体;(メタ)アクリル酸アルキルとアクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレンなどとの共重合体;アクリロニトリルと塩化ビニルや塩化ビニリデンとの共重合体;側鎖にカルボキシル基を有するセルロース変性物;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;フェノール、o−、m−、p−クレゾール、及び/又はキシレノールとアルデヒド、アセトンなどとの縮合反応で得られるノボラック樹脂;エピクロロヒドリンとビスフェノールAとのポリエーテル;可溶性ナイロン;ポリ塩化ビニリデン;塩素化ポリオレフィン;塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体;酢酸ビニルの重合体;アクリロニトリルとスチレンとの共重合体;アクリロニトリルとブタジエン及びスチレンとの共重合体;ポリビニルアルキルエーテル;ポリビニルアルキルケトン;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレートイソフタレート;アセチルセルロース;アセチルプロピオキシセルロース;アセチルブトキシセルロース;ニトロセルロース;セルロイド;ポリビニルブチラール;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;フォルマリン樹脂などが挙げられる。なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
【0068】
前記記録層の固形分中のバインダーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜95質量%であることが好ましく、35〜90質量%であれることがより好ましい。前記含有量が、10質量%未満であると、安定な干渉像が得られないことがあり、95質量%を超えると、回折効率の点で望ましい性能が得られないことがある。
前記バインダーの感光層中における含有量は、全感光層固形分中、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。
【0069】
−記録層に含まれるその他の成分−
本発明においては、光熱変換効果を向上させる目的で、ニトロセルロースを記録層中に更に含有させることが好ましい。ニトロセルロースは、近赤外レーザ光を光吸収剤が吸収し発生した熱により分解し、効率よくフォトポリマーの重合反応を促進させることができる。
【0070】
前記ニトロセルロースは、常法により精製した天然のセルロースを混酸で硝酸エステル化し、セルロースの構成単位であるグルコピラノース環に存在する3個の水酸基の部分にニトロ基を一部又は全部導入することによって得ることができる。前記ニトロセルロースの硝化度としては、2〜13が好ましく、10〜12.5がより好ましく、11〜12.5が更に好ましい。ここで、硝化度とは、ニトロセルロース中の窒素原子の質量%を表す。硝化度が著しく高いと、フォトポリマーの重合反応の促進効果は高められるが、室温安定性が低下する傾向にある。また、ニトロセルロースが爆発性となり危険が伴う。硝化度が著しく低いと、フォトポリマーの重合反応の促進効果が充分得られない。
【0071】
また、ニトロセルロースの重合度は20〜200が好ましく、25〜150がより好ましい。重合度が著しく高いと、記録層の除去が不完全となる傾向にある。重合度が著しく低いと、記録層の塗膜性が不良になる傾向にある。ニトロセルロースの記録層中における含有率は、記録層全固形成分に対して0〜80質量%が好ましく、0.5〜50質量%がより好ましく、1〜25質量%が更に好ましい。
【0072】
前記記録層は、材料に応じて公知の方法に従って形成することができ、例えば、蒸着法、湿式成膜法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、分子積層法、LB法、印刷法、転写法などにより好適に形成することができる。また、米国特許6,743,552号明細書に記載されている2成分ウレタンマトリックス形成方法でもよい。
【0073】
前記湿式成膜法による前記記録層の形成は、例えば、前記記録層材料を溶剤に溶解乃至分散させた溶液(塗布液)を用いる(塗布し乾燥する)ことにより、好適に行うことができる。該湿式成膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法などが挙げられる。
【0074】
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜1,000μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。
前記記録層の厚みが、前記好ましい数値範囲であると、10〜300多重のシフト多重記録を行っても十分なS/N比を得ることができ、前記より好ましい数値範囲であるとそれが顕著である点で有利である。
【0075】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反射防止層、保護層などが挙げられる。
【0076】
<光記録再生装置>
前記光記録再生装置により、光記録媒体に記録された記録情報について、本発明の光再生方法が行われる。
前記光再生方法に用いられる光記録再生装置について、図2及び図11を参照して説明する。
図2は、本発明に係る光記録再生装置の概略構成図であり、図11は、本発明に係る光記録再生装置の概略ブロック図である。なお、光記録再生装置は、光記録装置と光再生装置を含んでなり、光記録媒体への記録及び再生が可能である。
【0077】
図2に示されるように、光記録再生装置は、レーザ光源10と、このレーザ光源10から出射されたレーザ光11のビーム径を拡大するためのビームエキスパンダ12と、このビームエキスパンダ12によってビーム径が拡大された前記レーザ光11を、透過光と反射光とに分岐するハーフミラー13と、該ハーフミラー13の透過光を参照光16として、光記録媒体21に導くための参照光学系と、前記反射光を情報光17として、前記光記録媒体21に導くための情報光学系と、前記情報光17の光軸の、光記録媒体21を通った延長線上に配置された結像光学系とを有している。
【0078】
前記ビームエキスパンダ12としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一体化されたモジュール型のレーザビームエキスパンダ、2枚のZnSeレンズを使用したガリレオ式ビームエキスパンダなどが挙げられる。これらの中でも、光軸調整が容易な上、レンズ間隔調整によって用途に合わせた発散角調整が可能なガリレオ式ビームエキスパンダが好ましい。
【0079】
前記ハーフミラー13としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロムハーフミラー、レーザライン誘多膜ハーフミラー、広帯域誘多膜ハーフミラー、ハイブリッドハーフミラー、誘多膜ハーフミラー、無偏光ハーフミラー、ビームスプリッター、誘多膜ビームスブリッターなどが挙げられる。これらの中でも、入射する光の偏光条件に関係なく、反射光:透過光を1:1に分割でき、単一波長に対してのみ有効な無偏光ハーフミラーが好ましい。
前記無偏光ハーフミラーの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレート型、キューブ型などが挙げられる。
【0080】
前記参照光学系は、前記ビーム整形光学レンズ14により、透過光のビームが所定のビーム径に整形され、該整形されたビームの照射角度を調整する角度変調装置15を備えて構成されている。前記角度変調装置15としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来から用いられているものと同様であってもよく、前記ビームの光軸上をスライドし、かつ入射したビームを、光記録媒体21の方向に反射し参照光16として照射するように、スライド位置に応じて回転されるミラーを備えている。
【0081】
前記ビーム整形光学レンズ14としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ビームエキスパンダ12と同様の光学モジュールを用いることができる。
【0082】
前記角度変調装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マッハツエンダー干渉計により構成される光強度変調器などが挙げられる。
【0083】
前記情報光学系は、前記ハーフミラー13側から、空間光変調器18、集光レンズ19をこの順で備えて構成されている。前記空間光変調器18としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、記録される情報に応じて情報光を振幅変調するものであればよく、これによって振幅変調された情報光17は、集光レンズ19を通って、前記参照光16と重なる位置に、光記録媒体21に照射されるようになっている。
【0084】
前記結像光学系は、撮像素子からなる2次元の検出器31と、この検出器31と前記光記録媒体21との間に配置された結像レンズ30とを備えて構成されている。前記参照光16と同一方向から再生光(再生用レーザ光)を光記録媒体21に照射したとき、記録されている前記干渉像から回折光が生成され該回折光の光路上に前記結像レンズ30及びCMOSセンサ又はCCDなどからなる前記検出器31が配置されている。
【0085】
図11に示すように、本発明の光記録再生装置100は、光記録媒体21が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体21の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。
また、光記録再生装置100は、光記録媒体21に対して情報光と参照光とを照射して情報を記録するピックアップ31と共に、光記録媒体21に対して再生光を照射し、生成される回折光を受光して検出する検出器93と、このピックアップ31と検出器93とを光記録媒体21の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。更に、前記回折光を受光し、真正干渉像に対する再生干渉像の位置ずれなどのずれ量を算出するための、図12に示すCPU(中央処理装置)73などからなるずれ量算出処理装置を備えている。
【0086】
光記録再生装置100は、検出器93の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を光記録媒体21の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体21の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31を光記録媒体21の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0087】
光記録再生装置100は、更に、検出器93の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、光記録媒体21のデータエリアに記録されたデータを再生し、前記歪量を補正するデータ補正回路(不図示)、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して、種々の指示を与える操作部91とを備えている。
コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、及びスライドサーボ回路88などを制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現するようになっている。
【0088】
(光記録媒体の製造方法)
本発明の光記録媒体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、組成物調製工程と、記録層積層工程と、積層体形成工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0089】
<組成物調製工程>
前記組成物調製工程は、光記録用組成物を調製する工程であり、モノマー、光開始剤、増感剤、オリゴマー及びバインダーなどからなるフォトポリマー及び必要に応じて適宜選択したその他の成分を含む光記録用組成物を、溶剤により、溶解、分散、混合などにより調製する。前記調製の条件としては、例えば、温度23℃、湿度10%、低温度乾燥の環境で行われる。
【0090】
<記録層積層工程>
前記記録層積層工程は、第二の基板上に、ホログラフィにより情報を記録する記録層を積層する工程であり、前記組成物調製工程において調製された光記録用組成物を積層する工程である。
前記記録層の積層方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式成膜法や注入法による積層方法などが挙げられる。前記湿式成膜法は、前記記録層材料を溶剤に溶解乃至分散させた溶液(塗布液)を用いる(塗布し乾燥する)ことにより形成する方法であり、該湿式成膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法などが挙げられる。
前記注入法とは、第一の基板と第二の基板との隙間に、記録層溶液を注入する方法である。外周スペーサ及び内周スペーサを予め第一の基板と第二の基板で挟み込みディスクセルを作り、前記外周スペーサの一部に切り欠きを設けてその口を注入口として、記録層溶液を注入する。
前記注入法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外周注入法、内周注入法、ギャップ注入法などが挙げられる。
前記注入の条件としては、温度23℃、粘度330mPa・s、0.5MPaの圧力、湿度10%、硬化時間として温度80℃、40分間などが挙げられる。
前記注入装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリンジ、エア圧ディスペンサーなどが挙げられる。
【0091】
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜1,000μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。
前記記録層の厚みが、前記好ましい数値範囲であると、10〜300多重のシフト多重を行っても十分なS/N比を得ることができ、前記より好ましい数値範囲であるとそれが顕著である点で有利である。
【0092】
−外周スペーサ−
前記外周スペーサの形状は、外周が光記録媒体の外周形状と略同一であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、四角形、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。これらの中でも、円形が好ましい。
前記外周スペーサの断面形状は、例えば、四角形、矩形、台形、円形、楕円形などが挙げられる。これらの中でも、厚みを一定にする作用の観点から四角形、台形、矩形などが好ましい。図10に示す外周スペーサ2及び内周スペーサ3は、その断面が四角形の一例である。
前記外周スペーサ2の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の厚みと略同一の厚みであることが好ましい。具体的には、前記記録層の厚みと同じ100〜1,000μmであることが好ましい。
前記外周スペーサ2の幅としては、少なくとも0.5mmあれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜5mmが好ましく、0.5〜3mmがより好ましく、0.5〜2mmが特に好ましい。前記幅が、0.5mm未満であると、前記記録層の厚みを一定にするための保持機能が機械強度の面や支持面積の面で低下することがあり、5mmを超えるとホログラム記録領域が狭められ、記録容量が損なわれることがある。
【0093】
前記外周スペーサ2の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができるが、成形性やコストの点から前記有機材料が好ましい。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロースなどのアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成形性、剥離性、コストの点から、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0094】
前記外周スペーサ2の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成形型押し出し加工、削り出し加工などが挙げられる。
【0095】
−内周スペーサ−
前記内周スペーサ3の形状は、内周が光記録媒体に設けられている開口部の形状と略同一であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、四角形、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。これらの中でも、円形が好ましい。
前記内周スペーサ3の断面形状は、前記外周スペーサ2と同じ形状が好ましく、例えば、四角形、矩形、台形、円形、楕円形などが挙げられる。これらの中でも、厚みを一定にする作用の観点から四角形、台形、矩形などが好ましい。
前記内周スペーサ3の厚みは、前記記録層の厚みの均一性の観点から前記外周スペーサ2と同一であることが求められる。
前記内周スペーサ2の幅は、前記記録層の厚みの均一性保持機能の観点、及び記録層の記録領域の確保の観点から前記外周スペーサ2と同一であってもよく、異なっていてもよい。
前記内周スペーサ3の材料及び製造方法は外周スペーサ2と異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0096】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、前記記録層積層工程により、前記スペーサを用いないで前記記録層が形成された第二の基板に、前記第一の基板を貼り合わせて積層体を形成し、必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む工程である。
前記貼り合わせ方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一の基板と前記第二の基板と必要に応じて適宜選択したその他の層とを、接着剤で接着する方法、接着剤を用いず圧着する方法、真空中で貼り合わせる方法などが挙げられる。
前記接着剤で接着する方法は、前記第一の基板と、前記第二の基板と、必要に応じて適宜選択したその他の層とを、各外周を合致させ、各層間に接着剤を塗布し、外側から0.01〜0.5MPaの圧力をかけて、23〜100℃で接着する。該接着の際に、気泡が無く密着させるためには、真空中で貼り合わせることが好ましい。
【0097】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤などが挙げられる。これらの中でも、透明性に優れていることから、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤がより好ましい。
【0098】
前記接着剤を用いず圧着する方法は、各層の有する接着性を利用して密着させて積層体を形成することも可能である。前記第一の基板と、前記第二の基板と、必要に応じて適宜選択したその他の層とを、各外周を合致させ、外側から0.01〜0.5MPaの圧力をかけて、23〜100℃で接着する。該密着の際に、気泡が無く密着させるためには、真空中で貼り合わせることが好ましい。
【0099】
<その他の工程>
前記その他の工程としてとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光記録媒体の側面周囲を接着剤で封止する側面封止工程などが挙げられる。
【0100】
<光記録媒体の具体例>
図9は、本発明の具体例における光記録媒体の構成を示す斜視図である。この具体例に係る光記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂又はガラスからなる第一の基板5及び第二の基板1と、外周スペーサ2と内周スペーサ3及び前記第一の基板5と第二の基板1に挟持されている記録層4により形成されている。この第一の基板5及び第二の基板1は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。また、この光記録媒体21では、第二の基板1は0.6mm、記録層4は0.6mm、第一の基板5は0.6mmの厚みであって、合計厚みは約1.8mmとなっている。
【0101】
次に、図2を参照して、光記録媒体21周辺での光学的動作を説明する。
まず、レーザ光源10から出射したレーザ光11は、ビームエキスパンダ12により、ビーム径が拡大され、ハーフミラー13に到達し、透過光と反射光とに分岐する。該反射光は、空間光変調器18に入射し、光の強度、位相、偏光などが記録される情報に応じて振幅変調などがなされ、情報光17として出射される。該情報光17は、更に集光レンズ19により、光記録媒体21における記録層内部で所定の大きさのスポットとして照射される。
他方、前記透過光は、ビーム整形光学レンズ14により、所定のビーム径に整形されて角度変調装置15に入射し、該角度変調装置15により、所定の角度で、参照光16として、前記情報光17の前記記録層内におけるスポット位置に照射され、図3に示すように、前記情報光17と該参照光16とにより干渉縞が生成され、干渉像として記録層に記録される。
【0102】
前記記録層に記録された前記干渉像を再生するには、図4に示すように、前記参照光16と同じ再生光25を、該参照光16と同じ照射角度で該干渉像に照射する。この照射により該干渉像から回折光20が生成され、図2に示す結像レンズ30によりビーム整形され、検出器31の回折光受光部31aで受光し、再生干渉像として、検出され画像データがデコードされて記録情報が再生される。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
<光記録媒体の作製>
実施例1の光記録媒体は、第一の基板と、記録層と、第二の基板とをこの順に積層することにより、以下のように作製した。
【0105】
−第一の基板−
前記第一の基板は、直径120mm、板厚0.6mmのポリカーボネート樹脂板を使用した。この基板の表面は滑らかであり、サーボピットパターンなどの凹凸のないものを用いた。
【0106】
−第二の基板−
前記第二の基板としては、直径120mm、板厚0.6mmの射出成型により成型したポリカーボネート樹脂製基板を使用した。この基板の表面は滑らかであり、サーボピットパターンなどの凹凸のないものを用いた。
【0107】
−外周スペーサ−
前記外周スペーサは、第一の基板及び第二の基板の外形と同一の直径120mmの円形で、面方向の幅は、0.5mm±100μm、厚みは記録層4の厚みと同じ600μm、したがって、断面形状は0.5mm×600μmの四角形となる。前記外周スペーサの材料は、成形性及び機械的強度に優れたポリカーボネートを用いて、射出成型(住友重工株式会社製)により作製した。
【0108】
−内周スペーサ−
前記内周スペーサは、図10に示すように、第一の基板5及び第二の基板1の開口部と同じ外形である15mmの円形で、面方向の幅は、0.5mm±100μm、厚みは記録層4の厚みと同じ600μm、したがって、断面形状は外周スペーサと同一の0.5mm×600μmの四角形となる。前記内周スペーサの材料は、外周スペーサと同一の、成形性及び機械的強度に優れたポリカーボネートを用いて、射出成型(住友重工株式会社社製)により作製した。
【0109】
−積層体の形成−
図10に示すように、前記第二の基板1の面上に、得られた外周スペーサ2を、第二の基板1の外形と外周スペーサ2の外形が合致するように接着し、更に、内周スペーサ3を、該内周スペーサ3の中心と、第二の基板1の中心が合致するように接着した。前記接着剤は、UV接着剤(型名SD−640、大日本インキ化学工業株式会社製)を用い、UV光を照射して接着した。
外周スペーサ2及び内周スペーサ3により形成された、深さ600μmの溝部に、前記注入法により、得られた光記録層用組成物塗布液を、シリンジにより注入した。前記注入の条件としては、温度23℃、液粘度300mPas、湿度50%とした。注入後に、温度80℃、40分間の条件の下、光記録層用組成物を硬化させ記録層4を形成した。該記録層4の厚みは600μmであった。
該記録層4上に、接着剤(型名GM−9002、ブレニー技研社製)を塗布し、前記第一の基板の外側及び前記第二の基板の外側を、0.08MPaの圧力で、80℃で、40分間、加圧し、積層体を形成し、最後に、端部を湿分硬化型の接着剤で封止し、45℃で24時間放置することにより、図9に示す光記録媒体21と同様の光記録媒体を作製した。
【0110】
−光記録媒体の記録−
得られた光記録媒体を、平面波テスターを用いて、情報光及び記録用参照光を照射し、記録ホログラムの焦点位置における記録スポットの大きさ直径200μmで一連の角度多重ホログラム(10多重)で光記録媒体の記録層に情報を干渉像として書き込みした。
【0111】
<記録の再生>
図4に示すように、前記書き込みがなされた光記録媒体に、記録用参照光と同じ再生光を、記録用参照光と同じ方向から照射し、記録されている干渉像から回折光20を生成し、該回折光20を検出器31で検出した。
図11に示す光記録再生装置100における検出回路85により、前記干渉像の検出器31の回折光受光部31a内の位置、大きさなどを検出し、該回折光20に基づく再生干渉像と基準となる真正干渉像とが一致しているかを前記回折光20の光強度(W/cm)の強弱を認識することにより検出した。
その結果、前記再生干渉像33が、1μm位置ずれし、その全体が検出器31の回折光受光部31aに入らないことが検出されたので、前記検出器31の回折光受光部31aを前記再生干渉像33の位置ずれしている方向へ移動し、前記再生干渉像33が該検出器31の回折光受光部31aの中心になるように調整した。前記再生光の照射角度を図12に示すCPU73により演算処理し、フォーカス及びトラッキングを制御し、再度再生光25を前記干渉像に照射し、該再生干渉像と前記真性干渉像が一致していることを確認し、画像データをデコードして記録を再生することができた。
【0112】
(実施例2)
実施例1において、前記検出器31の回折光受光部31aを前記再生干渉像33の位置ずれしている方向へ移動し、前記再生干渉像33が該検出器31の回折光受光部31aの中心になるような調整に代え、図6に示すように、前記検出器31の回折光受光部31aの大きさを実施例1(1/2L)の2倍の大きさであるLとした以外は実施例1と同様にし、記録を再生することができた。
【0113】
(実施例3)
実施例1において、前記検出器31の回折光受光部31aを前記再生干渉像33の位置ずれしている方向へ移動し、前記再生干渉像33が該検出器31の回折光受光部31aの中心になるような調整に代え、図7に示すように、前記検出器31を移動せずに、位置ずれ量を図12に示す構成の演算装置を用いて算出し、該算出結果に基づいて、再生光の照射角度を修正し、再度再生光を光記録媒体に照射して再生した以外は実施例1と同様にし、記録を再生することができた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の光再生方法は、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を備え、角度多重記録方式により高多重記録がなされている光記録媒体に対する、再生時の再生干渉像のずれが生ずることなく、高精度の再生画像が得られ、SNRの優れた再生が得られ、高密度の記録媒体に好適に用いられる。2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラム、透過型及び反射型のいずれにも好適に用いられる。また、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなど種々のホログラムを再生する方法として幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、本発明の光再生方法のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明による光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、光記録媒体に情報光及び参照光を集光照射して記録層に記録する概念図である。
【図4】図4は、光記録媒体に入射する再生光と干渉像から生成される回折光を受光する概念図である。
【図5】図5は、光記録媒体に入射する再生光の角度変化と干渉像から生成される回折光の角度変化を示す概念図である。
【図6】図6は、光記録媒体に入射する再生光の角度変化と干渉像から生成される回折光の角度変化を示す概念図である。
【図7】図7は、光記録媒体に入射する再生光の角度変化と干渉像から生成される回折光の角度変化を示す概念図である。
【図8】図8は、光記録媒体に入射する再生光の角度変化と干渉像から生成される回折光の角度変化を示す概念図である。
【図9】図9は、本発明の光再生方法に用いる光記録媒体の一例を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明の光再生方法に用いる一例の光記録媒体の積層体の分解斜視図である。
【図11】図11は、本発明の光再生方法に用いる一例の光記録再生装置のブロック図である。
【図12】図12は、本発明の光再生方法に用いる一例の演算処理装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0116】
1 第二の基板
2 外周スペーサ
3 内周スペーサ
4 記録層
5 第一の基板
10 光源
11 レーザ光
12 ビームエキスパンダ
13 ハーフミラー
14 ビーム整形光学レンズ
15 角度変調装置
16 参照光
17 情報光
18 空間光変調器
19 集光レンズ
20 回折光
21 光記録媒体
25 再生光
30 結像レンズ
31 検出器
31a 受光部
32 真性干渉像
33 再生干渉像
71 画像センサ
72 フォーカストラッキング回路
73 CPU
74 メモリ
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカスサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 操作部
93 検出器
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を備えた光記録媒体であって、情報光及び参照光を2光束干渉法により照射する際、2光束のうち少なくとも一方の入射角を変化させることによって同一位置において多重記録を可能にする角度多重方式により干渉像を形成し、前記情報を干渉像として前記記録層に記録した光記録媒体に対して、前記参照光と同じ再生光を前記干渉像に照射して生成した回折光を検出器で受光し、該干渉像に基づいて記録情報を再生する際、再生した再生干渉像が基準となる真正干渉像と不一致の場合に、一致するように、前記検出器の検出領域の修正、前記光記録媒体の角度の修正及び前記再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正を行うことにより再生することを特徴とする光再生方法。
【請求項2】
検出器の位置の修正、光記録媒体の角度の修正及び再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかの修正が、再生干渉像の真正干渉像に対する、回折光受光部の面方向の位置ずれ量の情報を検出し、検出された該情報に基づいて前記再生干渉像と前記真正干渉像とが一致するように行われる請求項1に記載の光再生方法。
【請求項3】
情報の検出が、回折光の強度(W/cm)、SNR(信号とノイズとの比)、及び再生信号のエラー数から選択される少なくともいずれか1種に基づいて行われる請求項2に記載の光再生方法。
【請求項4】
情報の検出が、データ信号を抽出する画像処理方法、データ信号の波形を成形する信号処理方法、及びデータ信号をデコードする演算処理方法から選択される少なくともいずれか1種により行われる請求項2から3のいずれかに記載の光再生方法。
【請求項5】
再生光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度になるようにして、該再生光を干渉像に照射して記録情報を再生する請求項1から4に記載の光再生方法。
【請求項6】
光記録媒体が、第一の基板、記録層及び第二の基板からなる透過型ホログラムである請求項1から5のいずれかに記載の光再生方法。
【請求項7】
ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を備えた光記録媒体であって、情報光及び参照光を2光束干渉法により照射する際、2光束のうち少なくとも一方の入射角を変化させることによって同一位置において多重記録を可能にする角度多重方式により干渉像を形成し、前記情報を干渉像として前記記録層に記録した光記録媒体に対して、前記参照光と同じ再生光を前記干渉像に照射して生成した回折光を検出器で受光する手段と、該干渉像に基づいて記録情報を再生する際、再生した再生干渉像が基準となる真正干渉像とが不一致の場合に、一致するように、前記検出器の検出領域の修正、前記光記録媒体の角度の修正及び前記再生光の照射方向の修正の少なくともいずれかを修正して再生する手段を有することを特徴とする光再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−207387(P2007−207387A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27724(P2006−27724)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】