説明

光出力検出システムおよび光出力検出方法

【課題】 複数の発光素子からなる光源において、光出力のばらつきを容易に確認する。
【解決手段】 本発明は、複数の発光素子からなる光源と、上記発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材と、上記複数の発光素子のうち、光出力が異なる発光素子を識別する光出力検出手段とを備え、上記光出力検出手段と上記光源との間に介在させた光変換部材からの光出力によって、上記光出力が異なる発光素子を識別することを特徴とする光出力検出システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を複数実装させた発光装置、特に面状光源において、各発光素子の光出力のバラツキを調べる光出力検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオードやレーザダイオードのような発光素子の高出力化が進み、紫外線など短波長の高出力光を発する発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)を複数実装させ、紫外線硬化樹脂などの光硬化性組成物を硬化させるための光源として利用することができるようになってきている。
【0003】
例えば、特開2002−303988号公報に開示される露光光源は、発光ダイオードが該発光ダイオードに電力を供給する導体配線が施された実装基板に多数配列されてなる。また、本発明における発光ダイオードは、200nmから400nmの発光ピーク波長を有する窒化物半導体発光素子である。このような露光光源とすることにより、均一な照度の光線を用いて広範囲の露光を行うことができる。
【0004】
ところで、半導体ウエハをチップ化することにより形成される発光ダイオードやレーザダイオードのような発光素子は、半導体ウエハの半導体積層面の各領域において均一な成膜を行うことは困難である。したがって、チップ化された発光素子においても発光効率や発光出力など、発光素子毎に種々のバラツキが生じている。さらに、このような発光素子は、長時間の使用により、発光出力が徐々に低下するが、発光素子毎に発光出力の低下の度合いが異なる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−303988号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、複数の発光素子が搭載されてなる光源は、いくつかの発光素子の出力が低下することにより、所定の被照射領域に対して均一な光強度で照射することができなくなることがある。さらに、複数の発光素子の幾つかに光出力の低下が起こると、光硬化性組成物の硬化ムラが生じるため、光硬化性組成物により形成される製品の品質低下を招くこととなる。そこで、光源を構成する発光素子のうち、どこに実装されている発光素子の光出力がどの程度低下しているのかを即座に検出し、光源を新しい光源に交換するなどの措置をとる時期を見極める必要がある。
【0007】
しかしながら、複数の発光素子が高密度に実装された光源を目視することにより、どこに実装されている発光素子の光出力がどの程度低下しているのかを検出することは極めて困難である。また、他の発光素子と光出力して、ある一定の値以上、光出力が低下している発光素子の存在の有無を認識することは困難である。また、紫外線を照射する発光素子からなる光源について、安全かつ確実に光出力のばらつき具合を検出する必要もある。
【0008】
そこで、本発明は、複数の発光素子からなる光源における各発光素子の光出力のばらつき具合を簡易な手段にて確実に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために本発明に係る光出力検出システムは、複数の発光素子からなる光源と、上記光源からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材と、上記光変換部材の発光を検出する光出力検出手段と、前記光出力検出手段からの出力により、上記複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別する識別手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、複数の発光素子からなる光源において、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合あるいは、ばらつきの程度を容易に確認することができる。
【0011】
また、上記蛍光物質は、発光スペクトルが異なる複数種の蛍光体を含む。これにより、複数の発光素子からなる光源における各発光素子の光出力ばらつきの程度を容易に検出することができる。すなわち、各種の蛍光体は、発光素子からの出力光の強度により発光色や発光強度が異なるため、各種蛍光体を組み合わせた光変換部材とすることにより、発光素子の光出力変化の程度を検出することが容易にできる。
【0012】
また、上記光変換部材は、上記蛍光物質を含有する樹脂がシート状に成型されてなることが好ましい。これにより、光源と、光出力検出手段との間に光変換部材を介在させることが容易となる。また、発光スペクトルが異なる複数種の蛍光体を、それぞれ異なる光変換部材に含有させた蛍光体シートとし、それらの蛍光体シートを適宜選択して組み合わせて光出力の検出を行うことができる。
【0013】
また、上記光源は、発光ピーク波長が300nmから450nmの窒化物半導体発光素子が配列されてなる。これにより、紫外線を含む光を出射する発光素子からなる光源について、安全かつ確実に光出力のばらつき具合を検出することができる。
【0014】
また、上記蛍光物質は、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、希土類アルミン酸塩系蛍光体、希土類酸硫化物蛍光体あるいは有機錯体蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体を有する。これにより、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合を容易に検出することができる。
【0015】
また、上記光出力検出手段は、CCDカメラあるいは上記複数の発光素子に対応するよう配列された受光素子である。これにより、発光素子が高密度に実装された光源においても光出力が他の発光素子と異なる発光素子を正確に識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合を正確に検出することができる。
【0016】
また、上記蛍光物質は、蓄光性蛍光物質とすることができる。また、蓄光性蛍光物質は、硫化物系蛍光体、アルミン酸塩系蛍光体、ホウ素を有するアルミン酸塩系蛍光体あるいは酸硫化物系蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体とすることができる。これにより、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を正確に識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合を正確に検出することができる。
【0017】
また、本発明は、複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別する光出力検出方法であって、上記発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材からの光出力によって、上記複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別することを特徴とする。さらに、光変換部材からの光出力は、CCDカメラあるいは上記複数の発光素子に対応するよう配列された受光素子により検出することが好ましい。
【0018】
これにより、複数の発光素子からなる光源において、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、複数の発光素子が配列された光源から出射された光を蛍光物質により波長変換させて認識することにより、他の発光素子と比較して発光出力が低下した発光素子を識別することが容易にできる。あるいは、複数の発光素子が配列された光源において、光出力が他の発光素子より低下した発光素子の有無を確認することが容易にできる。したがって、本発明にかかる検出システムを利用することにより、複数の発光素子が配列された光源を信頼性高く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための光出力検査方法を例示するものであって、本発明は光出力検査方法を以下に限定するものではない。また、各図面に示す部材の大きさや位置関係などは説明を明確にするために誇張しているところがある。
【0021】
複数の発光素子が高密度に実装されて面状光源とされた照射源を目視することにより、どこに実装されている発光素子の光出力がどの程度低下しているのかを検出することは極めて困難である。また、紫外線を照射する発光素子からなる光源について、安全かつ確実に光出力のばらつき具合を検出する必要もある。このような課題を解決すべく、本発明者らは種々の検討を行った結果、以下に述べる解決手段を見いだし本願発明とするに至った。
【0022】
すなわち、本発明に係る光出力検出システムは、複数の発光素子からなる光源と、発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材と、上記光変換部材の発光を検出する光出力検出手段と、上記複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別する識別手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る光出力検出システムにおいて、光変換部材に含有される蛍光物質は、励起エネルギー源となる光源からの光出力(例えば、発光強度、発光スペクトルあるいは発光ピーク波長)の相違により、その蛍光の出力、例えば発光強度、色合い、色度、色調あるいは濃淡などが異なる。したがって、光出力が他の発光素子と異なる発光素子は、その光出力が波長変換された蛍光の出力も他の発光素子と異なることとなる。これにより、複数の発光素子からなる光源において、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を、それに対応した光変換部材からの蛍光により識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合を容易に検出することができる。あるいは、光源を構成する複数の発光素子のうち、その光出力が他の発光素子より所定の値以下に低下した発光素子の有無を確認する。そして、光源を新しい光源に交換するなどの措置をとることが効率よくできる。
【0024】
本形態における蛍光物質は、発光スペクトルが異なる複数種の蛍光体を含むことができる。このような蛍光体として、例えば、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、希土類アルミン酸塩系蛍光体、希土類酸硫化物蛍光体あるいは有機錯体蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体とすることが好ましい。
【0025】
このように、蛍光物質を複数種の蛍光体とすることにより、複数の発光素子からなる光源における各発光素子の光出力ばらつきの程度を容易に検出することができる。すなわち、上述の各種蛍光体は、発光素子からの出力光の発光強度や発光スペクトルにより、その発光色や発光強度が異なる。したがって、各種蛍光体を組み合わせた光変換部材からの蛍光により、他の発光素子と比較して光出力が異なる発光素子を識別し、その発光素子の光出力の変化(発光強度、発光ピーク波長あるいは発光スペクトルの変化)の程度を大凡知ることができる。
【0026】
本形態における光変換部材は、上記蛍光物質を含有する透光性部材がシート状に成型された部材とすることが好ましい。このような蛍光物質を含有する透光性部材は、例えば、耐光性の高いガラスや石英などの透光性無機部材や、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂のような成型性の高い透光性樹脂とすることができる。これにより、光源と光出力検出手段の間の間隔を適宜調整しながら、その間に光変換部材を介在させることが容易となる。また、発光ピーク波長が異なる複数種の蛍光体を、それぞれ異なる光変換部材に含有させた蛍光体シートとし、それらを適宜選択して組み合わせて光出力の検出を行うことが容易にできる。このような種々の蛍光体シートから適宜選択して蛍光を出力させることにより、光出力が異なる発光素子を識別するだけでなく、その発光素子の光出力の変化(発光強度、発光ピーク波長あるいは発光スペクトルの変化)の程度を大凡知ることができる。
【0027】
また、面状光源の発光面と、蛍光体シートの主面とが略平行となるように配置させることにより、面状光源を構成する発光素子の発光面と蛍光体シートの主面までの最短距離を発光素子ごとに等しくし、光路長差を少なくすることが好ましい。これにより、光出力が異なる発光素子のより正確な識別を行うことができる。また、光源と光変換部材との間隔は、各発光素子に対応する蛍光がそれぞれ認識できるように、適宜調整することが好ましい。
【0028】
本形態における蛍光物質は、蓄光性蛍光物質とすることができる。蓄光性蛍光物質は、他の蛍光物質と比較して残光時間が長いため、光感度の高いCCDカメラや受光素子を必要とすることなく、目視にて、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を正確に識別し、各発光素子の光出力のばらつき具合を正確に検出することができる。このような蓄光性蛍光物質として例えば、硫化物系蛍光体、アルミン酸塩系蛍光体、ホウ素を有するアルミン酸塩系蛍光体あるいは酸硫化物系蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体とすることができる。以下、本形態における各構成部材について詳述する。
【0029】
[光出力検出手段、識別手段]
本形態における光出力検出手段とは、各発光素子の光出力に反応して電気信号などを出力するものである。このような光出力検出手段として、例えば、CCDカメラあるいは光源を構成する複数の発光素子に対応するよう配列された受光素子とすることができる。
【0030】
また、本形態における識別手段とは、光出力検出手段からの電気信号などの出力を受信して、光源を構成する複数の発光素子のうち、光出力が許容範囲外の発光素子を識別するものである。すなわち、光源を構成する複数の発光素子のうち、光出力が他の発光素子より小さい(あるいは大きい)発光素子を識別したり、複数の発光素子のうち、光出力が他の発光素子より小さい(あるいは大きい)発光素子の有無やその数を認識したりするものである。このような識別手段として、例えば、コンピュータなどの演算処理装置が挙げられる。なお、本形態における識別手段として、コンピュータなどの演算処理装置を利用する場合には、その出力結果を視覚的に表示させるための認識手段として、例えば、映像モニタなどを利用することができる。
【0031】
図1は、本形態における光出力検出システムの模式図を示す。光出力検出手段をCCDカメラとする一例として、図1に示されるように、光変換部材30の発光分布の状態をCCDカメラ50により撮影するものが挙げられる。さらに、撮影によりCCDカメラ50から出力された映像信号を画像処理装置に送信して、光変換部材の発光を映像モニタ画面にそのまま映像として映し出すことにより確認する。あるいは、コンピュータなどの演算処理装置70によって、画像処理装置に送信された映像信号を画像データとして所定の演算処理を施し、人間がより認識しやすいように、発光強度ごとに色分けされたドットパターンなどが映像モニタ60に視覚的に表示されるようにしてもよい。ここで、ある発光素子の光出力と他の発光素子の光出力との差(光出力ばらつき)の許容値を予め演算処理装置に記憶させておき、実測の光出力差と比較して、その許容値を超えた発光素子について表示されるようにすることもできる。また、本発明は、上述のように認識手段が映像モニタ画面に表示される形態に限定されることなく、印字、音声、警告ランプ、警告ブザー等あるいは、それらの組合せによって、光出力が許容範囲外となった発光素子の有無、あるいは光出力が許容範囲外となった発光素子の数が一定数を超えた状態を認識するようにすることもできる。これにより、発光素子が高密度に実装された光源においても、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を正確に識別することができる。あるいは、CCDカメラや通常のカメラにより撮影した画像を写真フィルムとする。この写真フィルムを確認することにより、光出力が他の発光素子と異なる発光素子を簡易な方法にて容易に識別することができる。
【0032】
光出力検出手段を受光素子とする一例として、発光素子の配列に対応するようドットマトリックス状に配列された受光素子とすることができる。すなわち、各発光素子に対応する各受光素子の出力電圧を測定し、他の受光素子の出力電圧と比較して許容値を超えた受光素子を特定する。これにより、その受光素子に対応する発光素子が特定され、光出力が許容範囲外となった発光素子を特定することができる。
【0033】
ここで、面状光源の発光面と、蛍光体シートとされた光変換部材の主面および受光素子の光入射面とが略平行となるように配置させることが好ましい。これにより、面状光源を構成する発光素子の発光面と蛍光体シートの主面および受光素子の光入射面までの最短距離を発光素子ごとに等しくする。このように、発光素子から受光素子までの光路長差を、発光素子ごとに少なくすることにより、光出力が異なる発光素子のより正確な識別を行うことができる。
【0034】
さらに、各受光素子の出力電圧を測定することにより、その受光素子に対応する発光素子の光出力が光源の使用開始時と比較して、どの程度変化したかを知ることもできる。すなわち、まず、各発光素子の光出力に対応する受光素子の出力電圧の初期値を予め測定しておく。ここで、予め測定された初期値は、コンピュータなどの演算処理装置70に備えられた記憶手段(例えば、メモリ)に記憶させておいてもよい。次に、光源の光出力ばらつき検査時において、光源から光を照射された各受光素子についての出力電圧を測定する。ここで、各受光素子についての出力電圧は、測定データとしてコンピュータなどの演算処理装置70に直接入力されるようにしてもよい。さらに、光源の検査時における各受光素子の出力電圧と、予め測定された初期値とを比較して変化の程度を確認する。あるいは、コンピュータなどの演算処理装置70によって、測定データに所定の演算処理を施し、人間がより認識しやすいように、所定の変化量ごとに色分けされたドットパターンなどが映像モニタ60に視覚的に表示されるようにしてもよい。これにより、その受光素子に対応する発光素子の光出力が光源の使用開始時と比較してどの程度変化したかを知ることもできる。
【0035】
このように、光出力検出手段をCCDカメラや受光素子とすることにより、発光素子が高密度に実装された光源においても光出力が他の発光素子と異なる発光素子を正確に確認し、各発光素子の光出力のばらつき具合を正確に検出することができ、信頼性高く光源を使用することができる。
【0036】
なお、本形態による光出力検出手段と、複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別する識別手段とは、それらの手段を併せて、人間による目視によるものとすることができることは言うまでもない。これにより、各発光素子の光出力のばらつき具合や出力が低下した発光素子の存在の有無を容易に検出することができ、信頼性高く光源を使用することができる。
【0037】
[光源]
図2は、本形態における光源の模式的な斜視図である。図2に示されるように、本形態における光源は、発光素子がドットマトリクス状に配列された面状光源とされている。ここで、各発光素子は、耐光性の高い金属パッケージやセラミックパッケージ、リード電極が成型樹脂によりインサート成型されたパッケージのような支持体に配置されていてもよい。各発光素子あるいは支持体に搭載された発光素子は、それらが実装される基板に施された導体配線と電気的に接続され、外部電源から電力が供給される。例えば、光源は、発光ピーク波長が300nmから450nmの窒化物半導体発光素子が複数配列されてなる。このような紫外線を含む光を出射する発光素子からなる光源についても、本発明は、安全かつ確実に光出力のばらつき具合を検出することができる。
【0038】
このように発光素子からなる光源の利点として、以下の事項が挙げられる。(1)水銀ランプと異なり、光源からの照射光自体が熱を持つことがない。したがって、被照射物の熱変形や熱劣化が生じることがない。(2)電力投入後、水銀ランプのように待機時間を必要とすることなく、直ちに光照射することができる。(4)発光素子を利用することにより装置の小型化および省電力化が可能である。(5)発光素子は、水銀ランプと比較して応答速度が速く、パルス駆動による光照射が可能である。以下、本形態における光源を構成することができる半導体発光素子について詳述する。
【0039】
(半導体発光素子)
本形態における半導体発光素子は、発光ダイオードやレーザダイオードとすることができる。ここでは、半導体発光素子の一例として、発光ダイオード(LEDチップ)について説明する。LEDチップを構成する半導体発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体を使用したものを挙げることができるが、短波長の高出力光が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。また、このような短波長の高出力光は、光変換部材に含有される蛍光物質を効率よく励起させることができる。
【0040】
半導体発光素子における半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0041】
窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAlN等のバッファ層を形成し、その上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
【0042】
窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子の例として、バッファ層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
【0043】
窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。
【0044】
p型半導体層には、発光素子に投入された電流をp型半導体層の全面に広げるための拡散電極が設けられる。さらに、拡散電極およびn型半導体層には、バンプや導電性ワイヤのような導電部材と接続するp側台座電極およびn側台座電極がそれぞれ設けられる。ここで、バンプの材料としては、例えばAuやAu−Sn共晶、鉛フリー半田が挙げられる。また、導電性ワイヤの材料としては、例えば、Al、Au、Cuあるいはそれらを含む合金からなる細線が挙げられる。
【0045】
拡散電極あるいはp側台座電極、およびn側台座電極の形成は、エッチング等の方法によりn型半導体を露出させた後、蒸着法やスパッタリング法により行う。また、拡散電極あるいはp側台座電極の形状は、発光素子全面に電流が均一に広がるように、種々の形状とされる。
【0046】
本形態において、p側およびn側台座電極の材料は、バンプや導電性ワイヤに含有される材料の少なくとも一種を含有することが好ましい。すなわち、バンプや導電性ワイヤがAuを材料とするときは、p側およびn側台座電極の材料、特にバンプや導電性ワイヤとの接合面となる最上層の材料は、AuまたはAuを含む合金とする。例えば、p側およびn側台座電極は、W/Pt/AuやRh/Pt/Auとされ、それぞれの金属の厚みは数百Å〜数千Åである。なお、本明細書中において、記号「A/B」は、金属Aおよび金属Bが順にスパッタリングあるいは蒸着のような方法により積層されることを示す。
【0047】
また、p型半導体層側全面に形成される拡散電極は、発光素子の出光を発光素子の透光性基板方向へ反射させる材料とすることが好ましい。例えば、Ag、Al、Rh、Rh/Irが挙げられる。さらに、これらの材料と組み合わせて、或いは単独で、p型半導体の全面にITO(インジウム(In)とスズ(Sn)の複合酸化物)、ZnOのような酸化物導電膜や、Ni/Au等の金属薄膜を透光性電極として形成させることができる。
【0048】
また、別の形態に係る半導体発光素子は、窒化物半導体層のみからなるものであって、半導体層の上面と下面に対向電極が形成されている。このような対向電極を有する半導体発光素子は、一方の電極が本形態にかかる支持基板に対向するように、導電性接着剤を介して固定される。したがって、発光素子の一方の電極は、支持基板の導体配線と電気的に接続し、他方の電極は、上記導体配線とは極性の異なる導体配線に対し導電性ワイヤを介して接続される。導電性接着剤の材料として、例えば、銀ペースト、Au−SnやAg−Snのような共晶材が挙げられる。
【0049】
以下、このような対向電極構造を有する半導体発光素子の形成方法を説明する。まずn型窒化物半導体層およびp型窒化物半導体層を上述の半導体素子と同様にして積層後、第1の電極であるp電極とp電極以外のp型窒化物半導体層上に絶縁膜を形成する。他方、この半導体層に貼り合わせる支持基板を準備する。支持基板の具体的な材料としては、Cu−W、Cu−Mo、AlN、Si、SiC等である。貼り合わせ面には密着層、バリア層、共晶層を備えた構造が好ましい。例えばTi−Pt−Au、又はTi−Pt−AuSn等の金属膜を形成する。このような金属膜は共晶により合金化され、後工程で導通層となる。
【0050】
次に支持基板の金属膜を形成した面と窒化物半導体層の表面とを向かい合わせて、プレスをしながら熱を加え合金化した後、異種基板側からエキシマレーザを照射するか、又は研削により異種基板を取り除く。その後、窒化物半導体素子を形成するためRIE等で外周エッチングを行い、外周の窒化物半導体層を除去した状態の窒化物半導体素子とする。また、光の取りだし効果を向上させるために窒化物半導体の露出面をRIE等で凹凸(ディンプル加工)を施してもよい。凹凸の断面形状はメサ型、逆メサ型があり、平面形状は、島状形状、格子状、矩形状、円状、多角形状などがある。次に、第2の電極であるn電極を窒化物半導体層の露出面に形成する。電極材料としては、Ti/Al/Ni/Au、W/Al/WPt/Auなどが挙げられる。
【0051】
[光変換部材]
本形態の光変換部材に含有される蛍光物質とは、発光素子から放出される可視光や紫外光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するものである。特に、本形態の蛍光体は、少なくとも半導体発光素子から発光された光によって励起され、波長変換した光を発する蛍光体をいい、該蛍光体を固着させる結着剤とともに光変換部材を構成する。
【0052】
本形態の光変換部材は、光源からの光出力の照射を受けることができる位置に配置される。特に、本形態の光変換部材は、光出力検出手段と光源との間に介されることが好ましい。光源からの光出力の影響を受けることなく、光変換部材の発光そのものを光検出手段に出力させることができるからである。なお、光出力検出手段は、光変換部材の発光が検出できる位置に配置されていればよいことはいうまでもない。例えば、蛍光体シートとさせた光変換部材において、光源の側に配置させた光出力検出手段により、光源からの光照射を受ける面側の発光を検出してもよい。これにより、紫外線など短波長の光を照射する光源に対して、発光素子の光出力のばらつきを確認することが安全かつ容易にできる。
【0053】
本形態の光変換部材における結着剤としては、例えば、エポキシ樹脂や耐光性の高いシリコーン樹脂のような透光性樹脂や、金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により生成される透光性無機材料や、ガラスとすることもできる。
【0054】
また、蛍光物質および結着剤の塗布方法は、スクリーン印刷、インクジェット塗布、ポッティング、孔版印刷など種々の形成方法とすることができる。例えば、光変換部材は、石英、ガラスや透光性樹脂からなる板材に蛍光物質および結着剤が上記形成方法により塗布されて形成される。あるいは、ガラスやエポキシ樹脂や耐光性の高いシリコーン樹脂のような透光性樹脂に含有させてシート状に成型した光変換部材とすることもできる。以下、本形態の光変換部材に含有させることができる蛍光物質について詳述する。
【0055】
<アルミニウム・ガーネット系蛍光体>
希土類アルミン酸塩系蛍光体として、以下に述べるアルミニウム・ガーネット系蛍光体や、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を挙げることができる。本形態におけるアルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、LEDチップから発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。
【0056】
例えば、YAlO:Ce、YAl12:Ce、YAl:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、Tb2.95Ce0.05Al12、Y2.90Ce0.05Tb0.05Al12、Y2.94Ce0.05Pr0.01Al12、Y2.90Ce0.05Pr0.05Al12等が挙げられる。さらに、本実施の形態において、特にYを含み、かつCeあるいはPrで付活され組成の異なる二種類以上のイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体(イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」と呼ぶ。))が利用される。特に、高輝度且つ長時間の使用時においては(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,Laからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)などが好ましい。
【0057】
(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークが470nm付近などにさせることができる。また、発光ピークも530nm付近にあり720nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持たせることができる。
【0058】
本形態の光変換部材において、蛍光体は、2種類以上の蛍光体を混合させてもよい。即ち、上述したYAG系蛍光体について言えば、Al、Ga、Y、La及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce蛍光体を混合させてRGBの波長成分を増やすことができる。また、現在のところ半導体発光素子の発光波長には、バラツキが生ずるものがあるため2種類以上の蛍光体を混合調整させて所望の白色系の混色光などを得ることができる。具体的には、発光素子の発光波長に合わせて色度点の異なる蛍光体の量を調整し含有させることでその蛍光体間と発光素子で結ばれる色度図上の任意の点を発光させることができる。
【0059】
発光層に窒化物系化合物半導体を用いた発光素子から発光した青色系の光と、青色光を吸収させるためボディーカラーが黄色である蛍光体から発光する緑色系の光と、赤色系の光とを混色表示させると所望の白色系発光色表示を行うことができる。発光装置はこの混色を起こさせるために蛍光体の粉体やバルクをエポキシ樹脂、アクリル樹脂或いはシリコーン樹脂などの各種樹脂や酸化珪素、酸化アルミニウムなどの透光性無機物中に含有させることもできる。このように蛍光体が含有されたものは、発光素子からの光が透過する程度に薄く形成させたドット状のものや層状ものなど用途に応じて種々用いることができる。蛍光体と透光性無機物との比率や塗布、充填量を種々調整すること及び発光素子の発光波長を選択することにより白色を含め電球色など任意の色調を提供させることができる。
【0060】
また、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子からの入射光に対して順に配置させることによって効率よく発光可能な発光装置とすることができる。即ち、反射部材を有する発光素子上には、長波長側に吸収波長があり長波長に発光可能な蛍光体が含有された色変換部材と、それよりも長波長側に吸収波長がありより長波長に発光可能な色変換部材とを積層などさせることで反射光を有効利用することができる。
【0061】
YAG系蛍光体を使用すると、放射照度として(Ee)=0.1W・cm−2以上1000W・cm−2以下の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率に十分な耐光性を有する発光装置とすることができる。
【0062】
本実施の形態に用いられるセリウムで付活された緑色系が発光可能なYAG系蛍光体では、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpも510nm付近にあり700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。一方、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体である赤色系が発光可能なYAG系蛍光体でも、ガーネット構造であり熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpが600nm付近にあり750nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0063】
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光スペクトルが長波長側へシフトする。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。したがって、長波長側の強度がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体の青色系発光を利用して白色系発光に変換するための理想条件を備えている。Yの置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなり、8割以上では、赤味成分が増えるものの輝度が急激に低下する。また、励起吸収スペクトルについても同様に、ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで励起吸収スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、励起吸収スペクトルが長波長側へシフトする。YAG系蛍光体の励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長より短波長側にあることが好ましい。このように構成すると、発光素子に投入する電流を増加させた場合、励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長にほぼ一致するため、蛍光体の励起効率を低下させることなく、色度ズレの発生を抑えた発光装置を形成することができる。
【0064】
アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、以下のような方法で製造することができる。まず、蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm、Pr、Tb及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Sm、Pr、Tbの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350〜1450°Cの温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。また、別の実施の形態の蛍光体の製造方法では、蛍光体の原料を混合した混合原料とフラックスからなる混合物を、大気中又は弱還元雰囲気中にて行う第一焼成工程と、還元雰囲気中にて行う第二焼成工程とからなる、二段階で焼成することが好ましい。ここで、弱還元雰囲気とは、混合原料から所望の蛍光体を形成する反応過程において必要な酸素量は少なくとも含むように設定された弱い還元雰囲気のことをいい、この弱還元雰囲気中において所望とする蛍光体の構造形成が完了するまで第一焼成工程を行うことにより、蛍光体の黒変を防止し、かつ光の吸収効率の低下を防止できる。また、第二焼成工程における還元雰囲気とは、弱還元雰囲気より強い還元雰囲気をいう。このように二段階で焼成すると、励起波長の吸収効率の高い蛍光体が得られる。従って、このように形成された蛍光体にて発光装置を形成した場合に、所望とする色調を得るために必要な蛍光体量を減らすことができ、光取り出し効率の高い発光装置を形成することができる。
【0065】
組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたアルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合させて用いても良いし、それぞれ独立して配置させても良い。蛍光体をそれぞれ独立して配置させる場合、発光素子から光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体の順に配置させることが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0066】
本形態における蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体やルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体に代表されるアルミニウム・ガーネット系蛍光体と、赤色系の光を発光可能な蛍光体、特に窒化物系蛍光体とを組み合わせたものを使用することもできる。これらのYAG系蛍光体および窒化物系蛍光体は、混合して光変換部材中に含有させてもよいし、複数の層から構成される光変換部材中に別々に含有させてもよい。以下、それぞれの蛍光体について詳細に説明していく。
【0067】
<ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体>
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、一般式(Lu1−a−b(Al1−cGa12(但し、RはCeを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素である。MはSc、Y、La、Gdから選択される少なくとも1種の元素であり、0.0001≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.0001≦a+b<1、0≦c≦0.8である。)で表される蛍光体である。例えば、組成式が(Lu0.99Ce0.01Al12、(Lu0.90Ce0.10Al12、(Lu0.99Ce0.01(Al0.5Ga0.512で表される蛍光体である。
【0068】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「LAG系蛍光体」と呼ぶことがある。)は、次のようにして得られる。蛍光体原料として、ルテチウム化合物、希土類元素Rの化合物、希土類元素Mの化合物、アルミニウム化合物及びガリウム化合物を用い、各化合物について上記一般式の割合になるように秤取し、混合するか、又はこれら蛍光体原料にフラックスを加えて混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をルツボに充填後、還元性雰囲気中、1200〜1600℃で焼成し、冷却後、分散処理することにより、上記一般式で表される本発明の蛍光体を得る。
【0069】
蛍光体原料として、酸化物又は熱分解により酸化物となる炭酸塩、水酸化物等の化合物が好ましく用いられる。また、蛍光体原料として、蛍光体を構成する各金属元素を全部又は一部含む共沈物を用いることもできる。例えば、これらの元素を含む水溶液にアルカリ、炭酸塩等の水溶液を加えると共沈物が得られるが、これを乾燥又は熱分解して用いることができる。また、フラックスとしてはフッ化物、ホウ酸塩等が好ましく、蛍光体原料100重量部に対し0.01〜1.0重量部の範囲で添加する。焼成雰囲気は、付活剤のセリウムが酸化されない還元性雰囲気が好ましい。水素濃度が3.0体積%以下の水素・窒素の混合ガス雰囲気がより好ましい。焼成温度は1200〜1600℃が好ましく、目的の中心粒径の蛍光体を得ることができる。より好ましくは1300〜1500℃である。
【0070】
上記一般式において、Rは付活剤であり、Ceを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素であって、具体的には、Ce、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lrである。RはCeのみでもよいが、CeとCe以外の希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素とを含んでいてもよい。Ce以外の希土類元素は、共付活剤として作用するためである。ここで、Rには、CeがR全量に対し70mol%以上含有されていることが好ましい。a値(R量)は、0.0001≦a≦0.5が好ましく、0.0001未満では発光輝度が低下し、0.5を越えても濃度消光によって発光輝度が低下する。より好ましくは、0.001≦a≦0.4、さらに好ましくは、0.005≦a≦0.2である。b値(M量)は、0≦b≦0.5が好ましく、より好ましくは0≦b≦0.4であり、さらに好ましくは0≦b≦0.3である。例えば、MがYの場合、b値が0.5を越えると長波長紫外線〜短波長可視光、特に360〜410nm励起による発光輝度が非常に低下してしまう。c値(Ga量)は、0≦c≦0.8が好ましく、より好ましくは0≦c≦0.5であり、さらに好ましくは0≦c≦0.3である。c値が0.8を越えると発光波長は短波長にシフトし、発光輝度が低下する。
【0071】
LAG系蛍光体の中心粒径は1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜15μmの範囲である。1μmより小さい蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。これに対し、5〜50μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高く、光変換部材も形成しやすい。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を含有させることにより、発光装置の量産性も向上する。また、上記中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0072】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は300nm〜550nmの波長域の紫外線又は可視光により効率よく励起され発光することから、光変換部材に含有される蛍光体として有効に利用することができる。さらに、組成式の異なる複数種のLAG系蛍光体、又はLAG系蛍光体を他の蛍光体とともに用いることにより、発光装置の発光色を種々変化させることができる。半導体発光素子からの青色系の発光と、該発光を吸収し黄色系の発光する蛍光体からの発光との混色により、白色系の混色光を発光する従来の発光装置は、発光素子からの光の一部を透過させて利用するため、構造自体を簡略化できると共に出力向上を行いやすいという利点がある。その一方、上記発光装置は、2色の混色による発光であるため、演色性が十分でなく、改良が求められている。そこで、LAG系蛍光体を利用して白色系の混色光を発する発光装置は、従来の発光装置と比較してその演色性を向上させることができる。また、LAG系蛍光体は、YAG系蛍光体と比較して温度特性に優れるため、劣化、色ずれの少ない発光装置を得ることができる。
【0073】
<窒化物系蛍光体>
本形態における窒化物系蛍光体とは、Nを含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選択された少なくとも一つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfから選択された少なくとも一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体である。また、本形態における窒化物系蛍光体としては、LEDチップから発光された可視光、紫外線、及びYAG系蛍光体からの発光を吸収することによって励起され発光する蛍光体をいう。
【0074】
例えば、SrSi:Eu,Pr、BaSi:Eu,Pr、MgSi:Eu,Pr、ZnSi:Eu,Pr、SrSi10:Eu,Pr、BaSi10:Eu,Ce、MgSi10:Eu,Ce、ZnSi10:Eu,Ce、SrGe:Eu,Ce、BaGe:Eu,Pr、MgGe:Eu,Pr、ZnGe:Eu,Pr、SrGe10:Eu,Ce、BaGe10:Eu,Pr、MgGe10:Eu,Pr、ZnGe10:Eu,Ce、Sr1.8Ca0.2Si:Eu,Pr、Ba1.8Ca0.2Si:Eu,Ce、Mg1.8Ca0.2Si:Eu,Pr、Zn1.8Ca0.2Si:Eu,Ce、Sr0.8Ca0.2Si10:Eu,La、Ba0.8Ca0.2Si10:Eu,La、Mg0.8Ca0.2Si10:Eu,Nd、Zn0.8Ca0.2Si10:Eu,Nd、Sr0.8Ca0.2Ge10:Eu,Tb、Ba0.8Ca0.2Ge10:Eu,Tb、Mg0.8Ca0.2Ge10:Eu,Pr、Zn0.8Ca0.2Ge10:Eu,Pr、Sr0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Pr、Ba0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Pr、Mg0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Y、Zn0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Y、SrSi:Pr、BaSi:Pr、SrSi:Tb、BaGe10:Ceなどが挙げられるがこれに限定されない。窒化物蛍光体に含有される希土類元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luのうち少なくとも1種以上が含有されていることが好ましいが、Sc、Sm、Tm、Ybが含有されていてもよい。これらの希土類元素は、単体の他、酸化物、イミド、アミド等の状態で原料中に混合する。Mnを用いると粒径を大きくすることができ、発光輝度の向上を図ることができる。
【0075】
特に本蛍光体は、Mnが添加されたSr−Ca−Si−N:Eu、Ca−Si−N:Eu、Sr−Si−N:Eu、Sr−Ca−Si−O−N:Eu、Ca−Si−O−N:Eu、Sr−Si−O−N:Eu系シリコンナイトライドである。この蛍光体の基本構成元素は、一般式LSi(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLSi(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。一般式中、X及びYは、X=2、Y=5又は、X=1、Y=7であることが好ましいが、任意のものも使用できる。具体的には、基本構成元素は、Mnが添加された(SrCa1−XSi:Eu、SrSi:Eu、CaSi:Eu、SrCa1−XSi10:Eu、SrSi10:Eu、CaSi10:Euで表される蛍光体を使用することが好ましいが、この蛍光体の組成中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれかである。SrとCaは、所望により配合比を変えることができる。蛍光体の組成にSiを用いることにより安価で結晶性の良好な蛍光体を提供することができる。
【0076】
本蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化ケイ素に対して、Eu2+を付活剤として用いる。添加物であるMnは、Eu2+の拡散を促進し、発光輝度、エネルギー効率、量子効率等の発光効率の向上を図る。Mnは、原料中に含有させるか、又は、製造工程中にMn単体若しくはMn化合物を含有させ、原料と共に焼成する。
【0077】
蛍光体には、基本構成元素中に、若しくは、基本構成元素とともに、Mg、Ga,In,Li、Na,K、Re、Mo、Fe,Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。これらの元素は、粒径を大きくしたり、発光輝度を高めたりする等の作用を有している。また、B、Al、Mg、Cr及びNiは、残光を抑えることができるという作用を有している。
【0078】
このような窒化物系蛍光体は、発光素子によって発光された光の一部を吸収して黄から赤色領域の光を発光する。窒化物系蛍光体をYAG系蛍光体と共に使用して、発光素子により発光された光と、窒化物系蛍光体による黄色から赤色光とが混色により暖色系の白色系の混色光を発光する発光装置を提供する。窒化物系蛍光体の他に加える蛍光体には、アルミニウム・ガーネット系蛍光体が含有されていることが好ましい。アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含有することにより、所望の色度に調節することができるからである。例えば、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質は、発光素子光の一部を吸収して黄色領域の光を発光する。ここで、発光素子により発光された光と、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の黄色光とが混色により白色系の混色光を発する。従って、このイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と赤色発光する蛍光体とを、透光性を有する光変換部材中に一緒に混合し、発光素子により発光された青色光、あるいは蛍光体により波長変換された青色光とを組み合わせることにより白色系の光を発光する発光装置を提供することができる。特に好ましいのは、色度が色度図における黒体放射の軌跡上に位置する白色系の発光装置である。但し、所望の色温度の発光装置を提供するため、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の蛍光体量と、赤色発光の蛍光体量を適宜変更することもできる。この白色系の混色光を発光する発光装置は、特殊演色評価数R9の改善を図っている。従来の青色発光素子とセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質との組合せのみの白色系発光装置は、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9がほぼ0に近く、赤味成分が不足していた。そのため特殊演色評価数R9を高めることが解決課題となっていたが、本発明において赤色発光の蛍光体をイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と共に用いることにより、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9を40付近まで高めることができる。
【0079】
次に、本発明に係る蛍光体((SrCa1−XSi:Eu)の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されない。上記蛍光体には、Mn、Oが含有されている。
【0080】
原料のSr、Caは、単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などの化合物を使用することもできる。また原料Sr、Caには、B、Al、Cu、Mg、Mn、MnO、Mn、Alなどを含有するものでもよい。原料のSr、Caは、アルゴン雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。粉砕により得られたSr、Caは、平均粒径が約0.1μmから15μmであることが好ましいが、この範囲に限定されない。より混合状態を良くするため、金属Ca、金属Sr、金属Euのうち少なくとも1以上を合金状態としたのち、窒化し、粉砕後、原料として用いることもできる。
【0081】
原料のSiは、単体を使用することが好ましいが、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。例えば、Si、Si(NH、MgSiなどである。原料のSiの純度は、3N以上のものが好ましいが、Al、Mg、金属ホウ化物(CoB、NiB、CrB)、酸化マンガン、HBO、B、CuO、CuOなどの化合物が含有されていてもよい。Siも、原料のSr、Caと同様に、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Si化合物の平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0082】
次に、Sr、Caを、窒素雰囲気中で窒化する。Sr、Caは、混合して窒化しても良いし、それぞれ個々に窒化しても良い。これにより、Sr、Caの窒化物を得ることができる。また、原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する。これにより、窒化ケイ素を得る。
【0083】
Sr、Ca若しくはSr−Caの窒化物を粉砕する。Sr、Ca、Sr−Caの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。
同様に、Siの窒化物を粉砕する。また、同様に、Euの化合物Euを粉砕する。Euの化合物として、酸化ユウロピウムを使用するが、金属ユウロピウム、窒化ユウロピウムなども使用可能である。このほか、原料のZは、イミド化合物、アミド化合物を用いることもできる。酸化ユウロピウムは、高純度のものが好ましいが、市販のものも使用することができる。粉砕後のアルカリ土類金属の窒化物、窒化ケイ素及び酸化ユウロピウムの平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0084】
上記原料中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。また、Mg、Zn、B等の上記元素を以下の混合工程において、配合量を調節して混合することもできる。これらの化合物は、単独で原料中に添加することもできるが、通常、化合物の形態で添加される。この種の化合物には、HBO、Cu、MgCl、MgO・CaO、Al、金属ホウ化物(CrB、Mg、AlB、MnB)、B、CuO、CuOなどがある。
【0085】
上記粉砕を行った後、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Euを混合し、Mnを添加する。これらの混合物は、酸化されやすいため、Ar雰囲気中、又は、窒素雰囲気中、グローブボックス内で、混合を行う。
【0086】
最後に、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Euの混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する。焼成により、Mnが添加された(SrCa1−XSi:Euで表される蛍光体を得ることができる。ただし、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0087】
焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことができるが、1400から1700℃の焼成温度が好ましい。焼成は、徐々に昇温を行い1200から1500℃で数時間焼成を行う一段階焼成を使用することが好ましいが、800から1000℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1200から1500℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質のるつぼ、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質のるつぼの他に、アルミナ(Al)材質のるつぼを使用することもできる。
【0088】
以上の製造方法を使用することにより、目的とする蛍光体を得ることが可能である。本発明の実施例において、赤味を帯びた光を発光する蛍光体として、特に窒化物系蛍光体を使用するが、本発明においては、上述したYAG系蛍光体と赤色系の光を発光可能な蛍光体とを備える発光装置とすることも可能である。このような赤色系の光を発光可能な蛍光体は、波長が400〜600nmの光によって励起されて発光する蛍光体であり、例えば、YS:Eu、LaS:Eu、CaS:Eu、SrS:Eu、ZnS:Mn、ZnCdS:Ag,Al、ZnCdS:Cu,Al等が挙げられる。このようにYAG系蛍光体とともに赤色系の光を発光可能な蛍光体を使用することにより発光装置の演色性を向上させることが可能である。
【0089】
以上のようにして形成されるアルミニウム・ガーネット系蛍光体、および窒化物系蛍光体に代表される赤色系の光を発光可能な蛍光体は、発光素子の周辺において一層からなる光変換部材中に二種類以上存在してもよいし、二層からなる光変換部材中にそれぞれ一種類あるいは二種類以上存在してもよい。このような構成にすると、異なる種類の蛍光体からの光の混色による混色光が得られる。この場合、各蛍光物質から発光される光をより良く混色しかつ色ムラを減少させるために、各蛍光体の平均粒径及び形状は類似していることが好ましい。また、窒化物系蛍光体は、YAG系蛍光体により波長変換された光の一部を吸収してしまうことを考慮して、窒化系蛍光体がYAG系蛍光体より発光素子に近い位置に配置されるように光変換部材を形成することが好ましい。このように構成することによって、YAG蛍光体により波長変換された光の一部が窒化物系蛍光体に吸収されてしまうことがなくなり、YAG系蛍光体と窒化物系蛍光体とを混合して含有させた場合と比較して、混色光の演色性を向上させることができる。
【0090】
<酸窒化物系蛍光体>
上述の蛍光物質の他、本形態における蛍光物質には、さらに下記の一般式で表される酸窒化物蛍光体を含有させることができる。
xyz{(2/3x+(4/3)y−(2/3)z}:R
ただし、LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有する。また、Nは窒素で、Oは酸素、Rは希土類元素である。x、y、zは以下の数値を満足する。
x=2、4.5≦y≦6、0.01<z<1.5
またはx=1、6.5≦y≦7.5、0.01<z<1.5
またはx=1、1.5≦y≦2.5、1.5≦z≦2.5
以下、酸窒化物蛍光体の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されないことは言うまでもない。まず、所定配合比となるように、Lの窒化物、Mの窒化物および酸化物、希土類元素の酸化物を原料として混合する。各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0091】
次に、上記原料の混合物を坩堝に投入し、焼成を行う。焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、特に限定されないが、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことが好ましく、1400から1700℃の焼成温度が、さらに好ましい。本蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質の坩堝、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質の坩堝の他に、アルミナ(Al)材質の坩堝を使用することもできる。また、焼成は、還元雰囲気中で行うことが好ましい。還元雰囲気は、窒素雰囲気、窒素−水素雰囲気、アンモニア雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等である。以上の製造方法を使用することにより、目的とするオキシ窒化物蛍光体を得ることができる。
【0092】
<アルカリ土類金属珪酸塩>
本実施の形態における発光装置は、発光素子が発光した光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する蛍光体として、ユウロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩を有することもできる。アルカリ土類金属珪酸塩は、青色領域の光を励起光とし、暖色系の混色光を発光する発光装置とすることができる。該アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0093】
本実施の形態における発光装置は、アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属−マグネシウム−二珪酸塩を有することもできる。
【0094】
Me(3−x−y)MgSi:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
次に、本実施の形態におけるアルカリ土類金属珪酸塩からなる蛍光体の製造工程を説明する。
【0095】
アルカリ土類金属珪酸塩の製造のために、選択した組成に応じて出発物質アルカリ土類金属炭酸塩、二酸化珪素ならびに酸化ユウロピウムの化学量論的量を密に混合し、かつ、蛍光体の製造に常用の固体反応で、還元性雰囲気のもと、温度1100℃および1400℃で所望の蛍光体に変換する。この際、0.2モル未満の塩化アンモニウムまたは他のハロゲン化物を添加することが好ましい。また、必要に応じて珪素の一部をゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、リンで置換することもできるし、ユウロピウムの一部をマンガンで置換することもできる。
【0096】
上述したような蛍光体、即ち、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、YS:Eu3+の一つまたはこれらの蛍光体を組み合わせることによって、所望の色温度を有する発光色および高い色再現性を得ることができる。
【0097】
<蓄光性蛍光物質>
本形態における蓄光性蛍光物質は、例えば、硫化物系蛍光体、アルミン酸塩系蛍光体、ホウ素を有するアルミン酸塩系蛍光体あるいは酸硫化物系蛍光体から選択される少なくとも一種の蓄光性蛍光体とすることができる。以下、蓄光性蛍光物質について詳述する。
【0098】
(1)硫化物系蛍光体とは、Mg、Ca、Ba、Sr、ZnおよびCdからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、Sとが、Cu、Mn、Eu、ClおよびAgからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素M’で付活された蛍光物質である。
【0099】
(2)アルミン酸塩系蛍光体とは、Mg、Ca、Ba、SrおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、Oと、Alとが、Euと、Pr、Nd、Dy、ErおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Qとで付活された蛍光物質である。
【0100】
(3)ホウ素を有するアルミン酸塩系蛍光体とは、Mg、Ca、Ba、SrおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、Oと、Alと、Bとが、Euと、Pr、Nd、Dy、ErおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Qとで付活された、ホウ素を有する蛍光物質である。
【0101】
(4)酸硫化物系蛍光物質とは、Y、La、GdおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Lnと、Oと、Sとが、Euと、Mg、Ti、Nb、TaおよびGaからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Mとで付活された蛍光物質である。
【0102】
本形態における蓄光性蛍光物質の製造方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
【0103】
1.原料混合物の作製
後述する化合物を各構成元素が所定の組成比となるように混合して、蛍光物質の原料混合物を得る。蛍光物質の原料混合物に用いられる化合物は、目的とする組成を構成する元素に応じて選択される。
【0104】
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。以下に、蓄光性蛍光物質の原料混合物に用いられる化合物を例示する。
【0105】
(硫化物系蛍光物質の場合)
Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、Cd、Cu、Mn、Eu、Cl、AgおよびSの化合物は、特に限定されないが、例えば、金属や酸化物等、Sと反応して容易に硫化物になり得る化合物が挙げられる。
【0106】
(アルミン酸塩系蛍光物質の場合)
Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、Eu、Pr、Nd、Dy、Er、HoおよびBの化合物は、特に限定されないが、例えば、酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物が挙げられる。
【0107】
(酸硫化物系蛍光物質の場合)
Y、La、Gd、Lu、Eu、Mg、Ti、Nb、TaおよびGaの化合物は、特に限定されないが、例えば、酸化物や炭酸塩等、Sと反応して容易に酸硫化物になり得る化合物が挙げられる。
【0108】
2.原料混合物の焼成および粉砕
ついで、原料混合物を焼成する。焼成の温度、時間、雰囲気等は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
【0109】
焼成温度は、800℃以上であるのが好ましい。焼成温度が低すぎると、未反応の原料が蛍光物質に残留し、蛍光物質の本来の特徴を生かせない場合があるが、上記範囲であればこのような問題は生じない。また、焼成温度は、1600℃以下であるのが好ましい。焼成温度が高すぎると、蛍光物質の粒径が大きくなり過ぎて特性が低下する場合があるが、上記範囲であればこのような問題は生じない。
【0110】
焼成時間は、一般に、1〜20時間程度であるのが好ましい。焼成時間が短すぎると、原料粒子間の拡散反応が進行し難く、焼成時間が長すぎると、拡散反応がほぼ完了した後の焼成が無駄となり、また、焼結による粗大粒子が形成されてしまう場合があるが、上記範囲であればこのような問題は生じない。
【0111】
焼成の雰囲気は、例えば、大気、酸素ガス、これらと窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガス、酸素濃度(酸素分圧)を制御した雰囲気、弱酸化雰囲気、還元雰囲気が挙げられる。ここで還元雰囲気とは、窒素雰囲気、水素雰囲気、窒素−水素雰囲気、アンモニア雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等である。中でも、H2,N2などの還元雰囲気が好ましい。
【0112】
焼成後、所望により、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル等を用いて粉砕し、目的とする粒度の粉体とすることもできる。篩に通してもよい。上述した製造方法により、本形態の蓄光性蛍光物質を得ることができる。
【0113】
<その他の蛍光体>
本実施の形態において、蛍光体として紫外から可視領域の光により励起されて発光する蛍光体も用いることができ、具体例として、以下の蛍光体が挙げられる。
(1)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体;例えば、M(PO(Cl、Br):Eu(但し、MはSr、Ca、Ba、Mgから選択される少なくとも一種)、Ca10(POClBr:Mn、Euなどの蛍光体。
(2)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体;例えば、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrAl1425:Eu、SrAl:Eu、CaAl:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnなどの蛍光体。
(3)Euで付活された希土類酸硫化物蛍光体;例えば、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Euなどの蛍光体。
(4)(Zn、Cd)S:Cu、ZnGeO:Mn、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、MgAs11:Mn、(Mg、Ca、Sr、Ba)Ga:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn
以下、本発明に係る光出力検出システムの一実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0114】
図1は、本実施例にかかる光出力検出システムの模式的な説明図である。また、図2は、本実施例における光源の模式的な斜視図である。
【0115】
本実施例にかかる光出力検出システム10は、複数の発光ダイオードからなる光源40と、発光ダイオードからの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材30と、該光変換部材30からの光出力を検出するCCDカメラ50と、複数の発光素子のうち光出力が許容範囲外の発光ダイオードを識別する識別手段としての演算処理装置60と、その演算処理装置60の出力結果を表示するための映像モニタ70とを備える。さらに、光変換部材30は、光源40とCCDカメラ50との間に介在させることができるように厚さ数mmの蛍光体シートとさせてある。
【0116】
本実施例における光変換部材30は、透光性樹脂からなる透明シートに発光ダイオード20からの光出力によって発光色がそれぞれ異なる蛍光体を混合させて塗布したものである。また、本実施例における光源40は、図2に示されるように、波長365nmの紫外線を照射する発光ダイオード20が1mm間隔でドットマトリックス状に配列されてなる。以下、本実施例における光出力検出システムの使用方法について詳述する。
【0117】
まず、光源40の光照射側とCCDカメラ50との間に、光変換部材30が介される。ここで、光変換部材30は、光源40を構成する各発光ダイオード20の発光面から光変換部材30までの最短距離がほぼ等しくなるように配置させることが好ましい。これにより、各発光ダイオード20から出射された光の光路長差を少なくし、より正確な識別をすることができるからである。
【0118】
次に、光源40に電力を供給し、光源40の光を光変換部材30に照射させる。このとき、各発光素子に対応する光変換部材30のそれぞれの位置から蛍光が発される。さらに、光源40からの光照射を受けて蛍光を発する光変換部材30を、光源40に対して反対側からCCDカメラ50にて撮影する。
【0119】
最後に、その撮影結果を映像モニタ70に出力することによって、蛍光の濃淡分布を確認し、光出力が他の発光ダイオードより許容値を超えて低下した発光ダイオードを識別する。あるいは、光出力が所定の許容値を超えて低下した発光ダイオードが光源に存在することを確認する。
【0120】
なお、本実施例においては光出力検出手段50としてCCDカメラを利用し、出力が低下した発光ダイオードの検出を正確に行ったが、目視での検出も可能であることは言うまでもない。
【実施例2】
【0121】
本実施例における光変換部材は、透光性樹脂からなる透明シートに発光ダイオードからの光出力によって発光強度が異なる畜光性蛍光体の混合物を塗布させたものである。
【0122】
上述の実施例1と同様の光源40の発光観測面側に、光変換部材を配置し、畜光性蛍光体の残光色の濃淡から、各発光ダイオードの出力の状態を目視にて把握し、光出力が他の発光ダイオードより低下した発光ダイオードを識別する。
【0123】
本実施例における光出力検出システムは、上述の実施例1のようにCCDカメラを必要とすることなく、容易に各発光ダイオードの出力の状態を把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、複数の発光素子を配列させてなる光源を利用する分野、例えば、光硬化性樹脂の硬化、露光、センサーなどの技術分野において、その光源の検査方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、本発明の一実施例における光出力検出システムの模式的な説明図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例の光出力検出システムにおける光源の斜視図である。
【符号の説明】
【0126】
10・・・光出力検出システム
20・・・発光素子
30・・・光変換部材
40・・・光源
50・・・光出力検出手段
60・・・演算処理装置
70・・・映像モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子からなる光源と、
前記光源からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材と、
前記光変換部材の発光を検出する光出力検出手段と、
前記光出力検出手段からの出力により、前記複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別する識別手段とを備えることを特徴とする光出力検出システム。
【請求項2】
前記蛍光物質は、発光スペクトルが異なる複数種の蛍光体を含む請求項1に記載の光出力検出システム。
【請求項3】
前記光変換部材は、前記蛍光物質を含有する透光性部材がシート状に成型されてなる請求項1または2に記載の光出力検出システム。
【請求項4】
前記光源は、発光ピーク波長が300nmから450nmの窒化物半導体発光素子が配列されてなる請求項1乃至3に記載の光出力検出システム。
【請求項5】
前記蛍光物質は、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、希土類アルミン酸塩系蛍光体、希土類酸硫化物蛍光体、窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体あるいは有機錯体蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体を有する請求項1乃至4に記載の光出力検出システム。
【請求項6】
前記光出力検出手段は、CCDカメラあるいは前記複数の発光素子に対応するよう配列された受光素子である請求項1乃至5に記載の光出力検出システム。
【請求項7】
前記蛍光物質は、蓄光性蛍光物質である請求項1乃至4に記載の光出力検出システム。
【請求項8】
前記蓄光性蛍光物質は、硫化物系蛍光体、アルミン酸塩系蛍光体、ホウ素を有するアルミン酸塩系蛍光体あるいは酸硫化物系蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体を有する請求項7に記載の光出力検出システム。
【請求項9】
複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別する光出力検出方法であって、
前記発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された光変換部材からの光出力によって、
前記複数の発光素子のうち光出力が異なる発光素子を識別することを特徴とする光出力検出方法。
【請求項10】
前記光変換部材からの光出力をCCDカメラあるいは前記複数の発光素子に対応するよう配列された受光素子により検出する請求項9に記載の光出力検出方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−173286(P2006−173286A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362122(P2004−362122)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】