説明

光半導体装置

【課題】青色レーザのような短波長光の受光素子として高感度・高速応答の光半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型pの第1半導体層3の表面の一部を、第2導電型nのチャネル層10に反転させる反転手段9を備え、第1半導体層3とチャネル層10とで形成されるpn接合面を受光領域とするフォトダイオード20を備えたことを特徴とする光半導体装置を用いる。反転手段は、第1半導体層3の表層部に設けられた第2導電型nの第2半導体層5と;第1半導体層3の表層部に設けられ、第1半導体層3と第2半導体層5との間に逆バイアス電圧が印加された時に第2半導体層5に接して第1半導体層3の表面にチャネル層10を形成されるチャネル領域30と;チャネル領域30上に設けられた絶縁体膜6とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関し、特に光に対する感度を向上した光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録系デバイスの高密度記録化のため、青色レーザのような短波長の入射光の受光素子の開発が進められている。一方、光信号の光源として使用される半導体レーザ素子の発振中心波長を短くすると、そのレーザー光を受光する半導体(シリコン)の光吸収係数が大きくなり、半導体中への侵入長が短くなる。したがって、効率良く光キャリアを取り出すためには、半導体の表面近傍での光キャリアの再結合による量子効率の低下を防ぐ必要がある。
【0003】
短波長の光に対して高感度で高速応答な受光素子を得ることを目的とした技術として、例えば、特開2004−87979号公報に受光素子及びその製造方法並びに回路内蔵型受光素子が開示されている。図1は、その従来の回路内蔵受光素子の構造を示す断面図である。この回路内蔵受光素子120は、シリコンからなる比抵抗40Ω・cm程度のP型半導体基板101を有し、このP型半導体基板101上に、P型高濃度埋込拡散層102、比抵抗100Ω・cm以上のP型高比抵抗エピタキシャル層103、及び比抵抗1〜5Ω・cm程度のN型エピタキシャル層106が、この順に積層されている。この回路内蔵受光素子120は、フォトダイオード領域と、隣接して形成されたバイポーラトランジスタ素子領域とを有している。このフォトダイオード領域(図中、左側)とバイポーラ素子領域(図中、右側)とは、P型高濃度埋込拡散層102との界面からN型エピタキシャル層106との界面まで達するようにP型高比抵抗エピタキシャル層103に形成されたP型埋込分離拡散層104と、N型エピタキシャル層106の表面からP型埋込分離拡散層104まで達するように形成されたP型分離拡散層107とによって、素子分離されている。
【0004】
フォトダイオード領域には、N型エピタキシャル層106の表面から0.3μm以下(例えば0.3μm)の深さにわたって、かつ、不純物のピーク濃度が1×1020[cm−3]よりも低濃度(例えば8×1019[cm−3]程度)となるように、N型不純物が拡散されてN型不純物拡散層108が形成されている。
【0005】
バイポーラトランジスタ素子領域には、P型高比抵抗エピタキシャル層103の表面に埋め込まれるようにN型埋込拡散層105が形成されており、このN型埋込拡散層105上にコレクタ層であるN型ウェル拡散層109とN型不純物拡散層108とが互いに隣接して形成されている。N型ウェル拡散層109には、P−ベース拡散層110およびこのP−ベース拡散層110の両側に隣接するように形成されたP+ベース拡散層111が設けられている。P−ベース拡散層110の領域内には、N型エミッタ拡散層112が形成されている。
【0006】
このようにフォトダイオード領域の各層およびバイポーラトランジスタ素子領域の各層がそれぞれ形成されたN型エピタキシャル層106上には、全面にわたって表面保護絶縁膜が形成されている。この表面保護絶縁膜には、フォトダイオード領域のN型不純物拡散層108上とP型分離拡散層107上、バイポーラトランジスタ素子領域のコレクタ引き上げ層であるN型不純物拡散層108とP+ベース拡散層111上およびN型エミッタ拡散層112上に、それぞれ開口部が形成され、各開口部には配線(電極)金属層114がそれぞれ設けられている。
【0007】
N型不純物拡散層108内で発生した光キャリアは、N型不純物の濃度傾斜によって生じる内蔵電界により空乏層中まで移動し光電流が発生する。ところが、N型不純物拡散層108の不純物濃度が高濃度になると、光キャリアのライフタイムが短くなり、空乏層に到達するまでに光キャリアが再結合して消滅してしまう。このため、その光キャリアは光電流の生成に寄与することができず、受光素子の量子効率が低下する。特に既述のとおり、光の短波長化に伴って光の吸収係数が増加し、半導体層内への光の侵入長が短くなると、N型不純物拡散層108中で発生する光キャリアが増加する。そのため、N型不純物拡散層8の不純物濃度が高濃度である場合、受光素子の量子効率低下が顕著となる。このように、高濃度不純物拡散層内で光キャリアの再結合によって量子効率が低下することを防ぐために、濃度プロファイルを最適化している。
【0008】
最適化の第一の方法として、N型不純物拡散層108の不純物濃度が高濃度である場合に、N型不純物拡散層108を浅く形成して拡散プロファイルを急峻にすることによって内蔵電界を高くする。これにより、N型不純物拡散層108を深く形成した場合に比べて、光キャリアが空乏層に移動する速度が速くなり、再結合するまでに光キャリアを空乏層内まで移動させることができるようになる。
【0009】
最適化の第二の方法として、N型不純物拡散層108が深く形成されている場合に、不純物濃度を低くすることによって光キャリアのライフタイムを長くする。これにより、光キャリアが再結合せずに空乏層まで移動することができるようになる。
【0010】
上記第一、第二いずれの方法においても、N型不純物拡散層108でのキャリア再結合を抑制するため不純物濃度のピーク位置を半導体表面もしくは表面に可能な限り近づける必要がある。そのためには、スルー酸化膜を介したイオン注入法が不可欠である。しかしながら、スルー酸化膜の形成に伴って、リードタイムが長くなり生産コストが増大する。加えて、製造工程中には、回路素子のような受光部以外の領域での素子形成時の高温熱処理を行う必要があり、受光部の拡散層を精度良く制御することが困難である。従って、青色レーザのような短波長光に対しても高感度・高速応答で受光可能な受光素子を簡単且つ低コストなプロセスで製造可能な技術が望まれている。
【0011】
関連する技術として、特開2003−92424号公報に分割型受光素子および回路内蔵型受光素子および光ディスク装置が開示されている。この分割型受光素子は、第1導電型の半導体層上に互いに所定の間隔をあけて形成された複数の第2導電型の拡散層と、上記第1導電型の半導体層上の少なくとも上記複数の第2導電型の拡散層の間に形成され、上記複数の第2導電型の拡散層同士のリークを防止するリーク防止層と、上記複数の第2導電型の拡散層および上記リーク防止層を含む上記第1導電型の半導体層上の少なくとも光が入射する領域に形成された誘電体膜とを備えている。
【0012】
特開平11−214668号公報に固体撮像装置、並びに受光素子が開示されている。この固体撮像装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板に複数形成され、光の入射により信号電荷を蓄積する第2導電型の蓄積層と、前記蓄積層の上面に形成される絶縁層と、前記絶縁層の上面に形成される光透過電極と、前記光透過電極に電位を印加して、下方に位置する前記蓄積層の表面に反転層を形成する電圧印加手段と、前記蓄積層に蓄積された信号電荷を走査し、画像信号として外部へ出力する信号転送手段とを備えている。
【0013】
【特許文献1】特開2004−87979号公報
【特許文献2】特開2003−92424号公報
【特許文献3】特開平11−214668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、青色レーザのような短波長光に対しても高感度・高速応答で受光可能とする光半導体装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、青色レーザのような短波長光に対しても高感度・高速応答で受光可能な受光素子を簡単且つ低コストなプロセスで製造可能な光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下に、発明を実施するための最良の形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の光半導体装置は、第1導電型(p)の第1半導体層(3)の表面の一部を、第2導電型(n)のチャネル層(10)に反転させる反転手段(9)を備え、第1半導体層(3)とチャネル層(10)とで形成されるpn接合面を受光領域とするフォトダイオード(20)を備えたことを特徴とする。
【0018】
上記の光半導体装置において、前記反転手段は、前記第1半導体層(3)の表層部に設けられた第2導電型(n)の第2半導体層(5)と;前記第1半導体層(3)の表層部に設けられ、前記第1半導体層(3)と前記第2半導体層(5)との間に逆バイアス電圧が印加された時に前記第2半導体層(5)に接して前記第1半導体層(3)の表面に前記チャネル層(10)を形成されるチャネル領域(30)と;前記チャネル領域(30)上に設けられた絶縁体膜(6)とを備えることを特徴とする。
【0019】
上記の光半導体装置において、前記第2半導体層(5)は前記受光領域を取り囲んで配置されることを特徴とする。
【0020】
上記の光半導体装置において、前記第1半導体層(3)は、前記受光領域に前記第2導電型(n)の拡散層を含まないことを特徴とする。
【0021】
上記の光半導体装置において、前記第1半導体層(3)の導電型はp型であり、前記第2半導体層(5)の導電型はn型であることを特徴とする。
【0022】
上記の光半導体装置において、前記絶縁体膜(6)はシリコン酸化膜であることを特徴とする。
【0023】
上記の光半導体装置において、前記第1半導体層(3)の比抵抗が100Ω・cm以上であることを特徴とする。
【0024】
上記の光半導体装置において、前記第1半導体層(3)の下には隣接して第1導電型(pの第3半導体層(2)が設けられ;前記第3半導体層(2)から前記第1半導体層(3)を貫通するとともに前記第2半導体層(5)を取り囲んで配置された、第1導電型(p)の第4半導体層(4)が設けられ;更に、前記第1半導体層(3)の不純物濃度が前記第3半導体層(2)及び前記第4半導体層(4)の不純物濃度より低いことを特徴とする。
【0025】
上記の光半導体装置において、前記第2半導体層(5)上には第1電極(9)が、前記第4半導体層(4)上には第2電極(8)がそれぞれ設けられ;前記第1電極(9)は前記受光領域を、前記第2電極(8)は前記第2半導体層(5)をそれぞれ取り囲んで配置されることを特徴とする。
【0026】
上記の光半導体装置において、前記フォトダイオード(20)と、トランジスタ(40)とが同一半導体基板(1)上に集積されたことを特徴とする。
【0027】
上記課題を解決するために本発明の光半導体装置の動作方法は、(a)光半導体層を準備するステップと;(b)前記第1半導体層(3)と前記第2半導体層(5)との間に逆バイアス電圧を印加して前記第2半導体層(5)に接して前記第1半導体層(3)の表面に第2導電型(n)のチャネル層(10)を形成するステップと;(c)前記第1半導体層(3)と前記チャネル層(10)とで形成されるpn接合領域を受光領域として、前記受光領域に光が入射することで発生する光電流を検出するステップとを具備する。
ここで、光半導体装置は第1導電型(p)の第1半導体層(3)と、前記第1半導体層(3)の表層部に設けられた第2導電型(n)の第2半導体層(3)と、前記第1半導体層(3)の下部に隣接して設けられた第1導電型(p)の第3半導体層(2)と、前記第3半導体層(2)から前記第1半導体層(3)を貫通して設けられた第1導電型(p)の第4半導体層(4)と、前記第2半導体層(5)上に設けられた第1電極(9)と、前記第4半導体層(4)上に設けられた第2電極(8)とを備える。
【0028】
上記の光半導体装置の動作方法において、前記(c)ステップにおいて、前記光は、青色の波長又はそれより長い波長を有する光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、青色レーザのような短波長光の受光素子として高感度・高速応答の光半導体装置を提供することができる。短波長光の受光素子として高感度・高速応答であって、低コストで簡単なプロセスで製造可能な光半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の光半導体装置の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態の構成の一例として、フォトダイオードとMOSトランジスタとが同一半導体基板上に形成された光半導体装置を示す断面図である。このうち、フォトダイオード領域20は、P型半導体基板1、P+型埋込層2、P型エピタキシャル層3、P+型拡散層4、N+型拡散層5、反射防止膜6、フィールド膜7、アノード電極8及びカソード電極9を具備する。一方、MOSトランジスタ領域(40)は、Nウェル拡散層33、P+型拡散層34、ゲート酸化膜+ポリシリゲート35、保護絶縁膜36及びドレイン/ソース電極37を具備する。さらに、フォトダイオード領域とMOSトランジスタ間にLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)32を具備する。
【0031】
P型半導体基板1は、P型のシリコンに例示される。P+型埋込層2は、P型半導体基板1を覆うように設けられている。不純物濃度が高いP型のシリコンに例示される。P型エピタキシャル層3は、P+型埋込層を覆うように設けられている。不純物濃度が低い100Ω・cm以上の高比抵抗なシリコンに例示される。P+型拡散層4は、受光領域の外側における所定の位置に、P型エピタキシャル層3の表面からP+型埋込層2の表面まで貫通するように設けられている。P型エピタキシャル層3の不純物濃度は、P+型埋込層2及びP+型拡散層4の不純物濃度よりも小さい。不純物濃度が高いP型のシリコンに例示される。N+型拡散層5は、受光領域の外側における所定の位置に、P型エピタキシャル層3の表面に浅く埋め込まれている。不純物濃度が高いN型のシリコンに例示される。反射防止膜6は、受光領域におけるP型エピタキシャル層3の表面(チャネル領域30の表面)を覆うように設けられている。反射防止膜6は、酸化シリコンに例示される酸化膜6bと、窒化シリコンに例示される窒化膜6aを備える。その膜厚は、受光する光の波長に対応して光の反射を防止するように設定されている。フィールド膜7は、受光領域を除くP型エピタキシャル層3の表面を覆うように設けられている。フィールド膜7は、酸化シリコンに例示される酸化膜7bと、窒化シリコンに例示される窒化膜7aを備える。アノード電極8は、フィールド膜7のP+型拡散層4上に設けられた開口部を埋め、P+型拡散層4に達するように設けられている。カソード電極9は、フィールド膜7のN+型拡散層5上に設けられた開口部を埋め、N+型拡散層5に達するように設けられている。
【0032】
P型半導体基板1にN型ウェル拡散層33が設けられている。P+型拡散層34はN型ウェル拡散層33内に設けられている。ゲート酸化膜+ポリシリゲート35はP型半導体基板1上に設けられ、保護絶縁膜36によって埋め込まれている。ドレイン/ソース電極37は、P+型拡散層34上に設けられた開口部を埋め、P+型拡散層34に達するように設けられている。
【0033】
フォトダイオード領域20とMOSトランジスタ間及びMOSトランジスタ同士間を絶縁するLOCOS32は、酸化シリコンに例示される。
【0034】
図3は、本発明の光半導体装置の実施の形態の構成の一例のうち、フォトダイオード領域20を示す上面図である。フォトダイオード領域20は、反射防止膜6が上部に設けられた受光領域を囲むように、カソード電極9及びアノード電極8が設けられている。P型エピタキシャル層3の表面とカソード電極9とアノード電極8との間の絶縁は、フィールド膜7により行われている。
【0035】
次に、本発明の光半導体装置の実施の形態の動作について説明する。図4は、本発明の光半導体装置の実施の形態の動作原理を示す断面図である。本実施の形態では、受光領域に拡散層を形成せず、フィールド膜7、反射防止膜6直下において、アノード電極8とカソード電極9との間に逆バイアスを印加することで非常に浅い反転層10を形成し、これをカソード拡散層として利用している。以下、詳細に説明する。
【0036】
P型エピタキシャル層3に高比抵抗(100Ω・cm以上)のシリコンを使用し、アノード電極8とカソード電極9と間に一定以上の逆バイアスEを印加する。それにより、酸化膜7b、6bと窒化膜7a、6aとからなるフィールド膜7、反射防止膜6の直下におけるP型エピタキシャル層3表面(チャネル領域30)に、非常に浅い反転層(N+チャネル)10が形成される。この非常に浅い反転層10がカソード拡散層として機能する。すなわち、反転層10の内部で光の受光により光キャリアが発生し、その光キャリアが濃度傾斜による内蔵電界により空乏層11中まで移動することで、P+型埋込層2及びP+型拡散層4と反転層(N+チャネル)10との間のpn接合により光電流が発生する。このとき、逆バイアス印加時に空乏層11が高比抵抗層側に広げられる。そのため、フォトダイオード(P+型埋込層2及びP+型拡散層4と反転層(N+チャネル)10)の容量が低減されて高速応答も同時に可能となる。
【0037】
フィールド膜7、反射防止膜6の酸化膜(SiO)7b、6bは“+”の電荷が存在しやすいことが知られている。そのため、P型エピタキシャル層3と酸化膜7b、6bとの界面近傍では、酸化膜7b、6b内の“+”の電荷に押されて、P型エピタキシャル層3表面のホールが欠乏することがある。つまり、界面に沿ってホール濃度が極めて少ない薄い層が形成されている。このような状態で、アノード電極8とカソード電極9間に逆バイアスEを印加すると、酸化膜7b、6bを介して加えられた+電位のために、界面近傍のP−領域(P型エピタキシャル層3)が空乏層化する。更に、強い逆バイアスEを印加すると、界面に電子が集まりN型の反転層10が形成される。これにより、P+型埋込層2及びP+型拡散層4と反転層10との間でpn接合ができる。この反転層10を受光素子のカソード拡散層として利用することで、特別にイオン注入等によりカソード拡散層を形成する必要が無くなる。また、反転層10は非常に浅く形成されるため、P型エピタキシャル層3表面での再結合による量子効率の低下を防ぎ、高感度の受光素子を形成することができる。そのため、受光領域に非常に浅く拡散層を形成する必要が無くなる。そして、拡散層を形成しないため、その後の受光部以外を形成時の高温熱処理による影響を受けることがない。
【0038】
図5〜図8は、本発明の光半導体装置の実施の形態における製造方法を示す断面図である。図5(a)を参照して、まず、比抵抗30Ω・cm程度(不純物濃度:4.44×1014cm)のp型シリコンのP型半導体基板1を準備する。そして、そのP型半導体基板1を覆うように、P+型埋込層2を不純物拡散法により形成する。ここで、P+型埋込層2のシート抵抗は、100Ω/□程度である。その後、P+型埋込層2を覆うように、P型エピタキシャル層3をエピタキシャル成長法により形成する。ここで、P型エピタキシャル層3の比抵抗は、100Ω・cm以上(不純物濃度:1.33×1014cm以下)とする。その後、P型エピタキシャル層3の表面を熱酸化することにより、酸化シリコンの酸化膜12を形成する。
【0039】
図5(b)を参照して、次に、酸化膜12を覆うようにフォトレジスト13を形成して、そのフォトレジスト13のパターニングをリソグラフィ工程により行う。そして、フォトレジスト13の開口部において、イオン注入法又は不純物拡散法により、P型エピタキシャル層3表面からP型半導体基板1へ伸びるようにP+型拡散層4を形成する。ここで、P+型拡散層4の不純物濃度は、2.0×1019cm程度である。
【0040】
図5(c)を参照して、続いて、フォトレジスト13及び酸化膜12を除去した後、熱処理工程を行うことにより、P+型拡散層4のp型不純物とP+型埋込層2のp型不純物とが相互に拡散、活性化する。それにより、P+型拡散層4とP+型埋込層2とがつながる。
【0041】
図6(a)を参照して、その後、P型エピタキシャル層3及びP+型拡散層4の表面を熱酸化することにより、酸化シリコンの酸化膜14を形成する。図6(b)を参照して、次に、酸化膜14を覆うようにフォトレジスト15を形成して、そのフォトレジスト15のパターニングをリソグラフィ工程により行う。これにより、フォトレジスト15に開口部16が形成される。図6(c)を参照して、続いて、フォトレジスト15の開口部16において、イオン注入法又は不純物拡散法により、P型エピタキシャル層3表面領域にN+型拡散層5を形成する。ここで、N+型拡散層5の不純物濃度は、2.0×1019cm程度である。
【0042】
図7(a)を参照して、続いて、フォトレジスト15及び酸化膜14を除去した後、熱処理工程を行うことにより、N+型拡散層5のn型不純物が拡散、活性化する。その後、P型エピタキシャル層3及びP+型拡散層4の表面を熱酸化することにより、酸化シリコンの酸化膜7bを形成する。ここで、酸化膜7bの膜厚は、例えば50nm程度である。酸化は、例えば、1050℃、H:5%雰囲気でのISSG(In Situ Steam Generation)法で行う。続いて、酸化膜7bを覆うように、CVD法により窒化シリコンの窒化膜7aを形成する。ここで、窒化膜7aの膜厚は、例えば180nm程度である。
【0043】
図7(b)を参照して、次に、窒化膜7aを覆うようにフォトレジスト17を形成して、そのフォトレジスト17のパターニングをリソグラフィ工程により行う。続いて、フォトレジスト17の開口部18において、ドライエッチングにより、窒化膜7a及び酸化膜7bを除去する。その結果、開口部18において、P型エピタキシャル層3の表面が露出される。この露出された領域が、受光領域となる。また、酸化膜7b及び窒化膜7aの積層膜で構成されるフィールド膜7が形成される。
【0044】
図7(c)を参照して、その後、P型エピタキシャル層3の露出された領域を覆うように、CVD法により酸化シリコンの酸化膜6bを形成する。ここで、酸化膜6bの膜厚は、例えば10nm程度である。続いて、酸化膜6bを覆うように、CVD法により窒化シリコンの窒化膜6aを形成する。ここで、窒化膜7aは、膜厚が、例えば40nm程度である。その後、フォトレジスト17が除去されることにより、フォトレジスト17上の酸化膜6b及び窒化膜6aも除去される。その結果、受光領域に、酸化膜6b及び窒化膜6aの積層膜で構成される反射防止膜6が形成される。なお、酸化膜6b及び窒化膜6aの膜厚は、受光する光の波長に基づいて、予め設定される。
【0045】
図8(a)を参照して、次に、フィールド膜7及び反射防止膜6を覆うようにフォトレジスト19を形成して、そのフォトレジスト19のパターニングをリソグラフィ工程により行う。これにより、フォトレジスト19に開口部24、21が形成される。図8(b)を参照して、続いて、フォトレジスト19の開口部24、21において、ドライエッチングにより、フィールド膜7に貫通孔22、23を形成する。ここで、貫通孔22は、N+型拡散層5上に、N+型拡散層5表面が露出するように開口される。貫通孔23は、P+型拡散層4上に、P+型拡散層4表面が露出するように開口される。図8(c)を参照して、その後、リソグラフィ工程、金属成膜工程及びフォトレジスト除去工程により、開口部22を埋めてN+型拡散層5表面に達するようカソード電極9が設けられ、開口部23を埋めてP+型拡散層4表面に達するようにアノード電極8が設けられる。
【0046】
以上の工程により、フォトダイオード領域20が製造される。
【0047】
次に、本発明の光半導体装置の動作方法について説明する。図9は、本発明の光半導体の実施の形態における動作を示すフロー図である。まず、本発明の光半導体装置(図2)を準備する(ステップS01)。次に、アノード電極8とカソード電極9との間に逆バイアスEを印加して、光半導体装置(図4)を計測可能な状態にする(ステップS02)。これにより、フィールド膜7及び反射防止膜6の直下におけるP型エピタキシャル層3表面に、非常に浅い反転層(N+チャネル)10が形成される。この非常に浅い反転層10がカソード拡散層として機能する。測定対象の光が照射されることにより、光半導体装置(図4)はその光を受光する(ステップS03)。その光が受光領域のP型エピタキシャル層3表面に達すると、反転層10の内部で光の受光により光キャリアが発生し、その光キャリアが濃度傾斜による内蔵電界により空乏層11中まで移動することで、P+型埋込層2及びP+型拡散層4と反転層(N+チャネル)10との間のpn接合により光電流が発生する。この光電流が、P+型埋込層2及びP+型拡散層4を介してアノード電極8から取り出されて計測されることで、測定が行われる。
【0048】
本発明では、P型エピタキシャル層3に高比抵抗のシリコンを使用し、アノード電極8とカソード電極9との間に逆バイアスを印加することで、フィールド膜・反射防止膜下に非常に浅い反転層(N+チャネル)10を形成する。この形成されたN+チャネル(反転層10)は、P型拡散層(P+型埋込層2、P+型拡散層4)との間で、pn接合により受光領域として働く。それにより、短波長の入射光のシリコン中への侵入長が短くても、形成された非常に浅いN+チャネルがカソード拡散層となって、光キャリアの再結合による量子効率の低下を防ぐので、光キャリアは高効率に光電流に変換される。
【0049】
本発明により、青色レーザのような短波長光を高感度・高速応答で受光可能となる。また、青色レーザのような短波長光を高感度・高速応答で受光可能な受光素子を簡単且つ低コストなプロセスで製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、従来の回路内蔵受光素子の構造を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の光半導体装置の実施の形態の構成を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の光半導体装置の実施の形態の構成を示す上面図である。
【図4】図4は、本発明の光半導体装置の実施の形態の動作原理を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の光半導体装置の実施の形態の製造方法を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の光半導体装置の実施の形態の製造方法を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の光半導体装置の実施の形態の製造方法を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の光半導体装置の実施の形態の製造方法を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の光半導体の実施の形態における動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0051】
1 P型半導体基板
2 P+型埋込層
3 P型エピタキシャル層
4 P+型拡散層
5 N+型拡散層
6 反射防止膜
7 フィールド膜
8 アノード電極
9 カソード電極
10 反転層
11 空乏層
12、14 酸化膜
13、15、17、19 フォトレジスト
16、18、21、22、23、24 開口部
20 フォトダイオード領域
30 チャネル領域
32 LOCOS
33 Nウェル拡散層
34 P+型拡散層
35 ゲート酸化膜+ポリシリゲート
36 保護絶縁膜
37 ドレイン/ソース電極
40 MOSトランジスタ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層の表面の一部を第2導電型のチャネル層に反転させる反転手段を備え、前記第1半導体層と前記チャネル層とで形成されるpn接合領域を受光領域とするフォトダイオードを備えたことを特徴とする
光半導体装置。
【請求項2】
前記反転手段は、
前記第1半導体層の表層部に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層の表層部に設けられ、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に逆バイアス電圧が印加された時に前記第2半導体層に接して前記第1半導体層の表面に前記チャネル層が形成されるチャネル領域と、
前記チャネル領域上に設けられた絶縁体膜と
を備えることを特徴とする
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体層は前記受光領域を取り囲んで配置されることを特徴とする
請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記第1半導体層は、前記受光領域に前記第2導電型の拡散層を含まないことを特徴とする
請求項1乃至3に記載の半導体受光装置。
【請求項5】
前記第1半導体層の導電型はp型であり、前記第2半導体層の導電型はn型であることを特徴とする
請求項2乃至4に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁体膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする
請求項2乃至5に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体層の比抵抗が100Ω・cm以上であることを特徴とする
請求項2乃至6に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体層の下には隣接して第1導電型の第3半導体層が設けられ、
前記第3半導体層から前記第1半導体層を貫通するとともに前記第2半導体層を取り囲んで配置された、第1導電型の第4半導体層が設けられ、
更に、前記第1半導体層の不純物濃度が前記第3半導体層及び前記第4半導体層の不純物濃度より低いことを特徴とする
請求項3乃至7に記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記第2半導体層上には第1電極が、前記第4半導体層上には第2電極がそれぞれ設けられ、
前記第1電極は前記受光領域を、前記第2電極は前記第2半導体層をそれぞれ取り囲んで配置されることを特徴とする
請求項8に記載の光半導体装置。
【請求項10】
前記フォトダイオードと、トランジスタとが同一半導体基板上に集積されたことを特徴とする
請求項1乃至9に記載の光半導体装置。
【請求項11】
(a)光半導体層を準備するステップと、
ここで、光半導体装置は
第1導電型の第一半導体層と、
前記第1半導体層の表層部に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層の下部に隣接して設けられた第1導電型の第3半導体層と、
前記第3半導体層から前記第1半導体層を貫通して設けられた第1導電型の第4半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた第1電極と、
前記第4半導体層上に設けられた第2電極と、
を備え、
(b)前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に逆バイアス電圧を印加して前記第2半導体層に接して前記第1半導体層の表面に第2導電型のチャネル層を形成するステップと、
(c)前記第1半導体層と前記チャネル層とで形成されるpn接合領域を受光領域として、前記受光領域に光が入射することで発生する光電流を検出するステップと、
を具備する光半導体装置の動作方法。
【請求項12】
前記(c)ステップにおいて、前記光は、青色の波長又はそれより長い波長を有する光であることを特徴とする請求項11に記載の光半導体装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−317975(P2007−317975A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147642(P2006−147642)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】