説明

光及び熱硬化性組成物、ソルダーレジスト組成物及びプリント配線板

【課題】塗布対象部材上に塗布されたときに、はじきが生じ難く、更に効率的に現像できる光及び熱硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、少なくとも1個の重合性不飽和基を有し、かつ2個以上のカルボキシル基を有する重合性炭化水素重合体と、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有する重合性炭化水素単量体と、無機フィラーと、25℃での表面張力が25dyn/cm以下であり、かつ20℃での蒸気圧が3kPa以下である溶媒とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にソルダーレジスト膜を形成したり、又は発光ダイオードチップが搭載される基板上に光を反射させるレジスト膜を形成したりするために好適に用いられる光及び熱硬化性組成物、ソルダーレジスト組成物、並びに該光及び熱硬化性組成物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板を高温のはんだから保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。
【0003】
上記ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例として、下記の特許文献1には、アクリレート化合物である紫外線硬化型プレポリマーと、顔料とを含み、かつ紫外線硬化型プレポリマーとオルガノポリシロキサンとアルミニウムキレート化合物との反応生成物をさらに含むソルダーレジスト材料が開示されている。
【0004】
また、発光ダイオード(以下、発光ダイオードをLEDと略す。)チップが搭載されたプリント配線基板の表面には、LEDから発せられた光を効率よく取り出すために、光の反射率が高い白色ソルダーレジスト膜が形成されている。
【0005】
上記白色ソルダーレジスト膜は、基板の表面を照らすLEDの光を効率よく反射するので、LEDから生じた光の利用率を高める。
【0006】
上記白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例として、下記の特許文献2には、エポキシ樹脂と加水分解性アルコキシシランとの脱アルコール反応により得られたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含み、かつ不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂と、希釈剤と、光重合開始剤と、硬化密着性付与剤とをさらに含むレジスト材料が開示されている。
【0007】
下記の特許文献3には、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ化合物と、ルチル型酸化チタンと、希釈剤とを含む白色ソルダーレジスト材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−25374号公報
【特許文献2】特開2007−249148号公報
【特許文献3】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3に記載のような従来のレジスト材料では、レジスト材料を現像する際に、現像速度が遅いという問題がある。また、最上層のレジスト膜は、可視域で高い反射率を有することが必要である。このため、レジスト材料にフィラーを添加する必要がある。しかしながら、従来のレジスト材料にフィラーを添加すると、現像速度が遅くなる傾向がある。特に、レジスト材料にフィラーを高濃度で添加すると、現像速度がかなり遅くなる傾向がある。
【0010】
さらに、従来のレジスト材料では、基板等の塗布対象部材上に塗布されたときに、はじきが生じやすいという問題もある。
【0011】
本発明の目的は、塗布対象部材上に塗布されたときに、はじきが生じ難い光及び熱硬化性組成物、ソルダーレジスト組成物、並びに該光及び熱硬化性組成物を用いたプリント配線板を提供することである。
【0012】
本発明の限定的な目的は、効率的に現像できる光及び熱硬化性組成物、ソルダーレジスト組成物、並びに該光及び熱硬化性組成物を用いたプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、光の照射及び熱の付与により硬化可能な光及び熱硬化性組成物であって、少なくとも1個の重合性不飽和基を有し、かつ2個以上のカルボキシル基を有する重合性炭化水素重合体と、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有する重合性炭化水素単量体と、無機フィラーと、25℃での表面張力が25dyn/cm以下であり、かつ20℃での蒸気圧が3kPa以下である溶媒とを含む、光及び熱硬化性組成物が提供される。
【0014】
上記重合性炭化水素重合体の重量平均分子量をXとし、かつ酸価(mgKOH/g)をAとし、上記重合性炭化水素単量体の25℃での粘度(Pa・s)をVとし、上記重合性炭化水素単量体のSP値をPとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記重合性炭化水素重合体の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記重合性炭化水素単量体の含有量(重量%)に対する比をWとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記無機フィラーの含有量(重量%)をTとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記溶媒の含有量(重量%)をFとしたときに、下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0015】
3.6≦(A・W・e(P−6))/(ln(V)・ln(X−7000)・T)≦19 ・・・式(1)
【0016】
上記重合性炭化水素重合体の重量平均分子量をXとし、上記重合性炭化水素単量体の25℃での粘度(Pa・s)をVとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記重合性炭化水素重合体の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記重合性炭化水素単量体の含有量(重量%)に対する比をWとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記無機フィラーの含有量(重量%)をTとし、上記溶媒の25℃での表面張力(dyn/cm)をSとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の上記溶媒の含有量(重量%)をFとしたときに、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0017】
4×10≦ln(X)・V・W・T/e(S−18)/F≦5×10 ・・・式(2)
【0018】
本発明に係る光及び熱硬化性組成物のある特定の局面では、上記重合性炭化水素単量体は、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有する重合性炭化水素単量体を含む。
【0019】
本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、第1の液と、第2の液とを有し、該第1,第2の液が混合されて用いられる2液混合型の光及び熱硬化性組成物であり、上記重合性炭化水素重合体と上記重合性炭化水素単量体と上記無機フィラーと上記溶媒とはそれぞれ、上記第1の液及び上記第2の液の内の少なくとも一方に含まれており、上記第1,第2の液が混合された混合物が、上記重合性炭化水素重合体と上記重合性炭化水素単量体と上記無機フィラーと上記溶媒とを含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、本発明に従って構成された光及び熱硬化性組成物である。本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、ソルダーレジスト組成物として好適に用いられる。
【0021】
本発明に係るプリント配線板は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、上記プリント配線板本体の上記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備えており、該レジスト膜が、本発明に従って構成された光及び熱硬化性組成物を用いて形成されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、光の照射及び熱の付与により硬化可能な光及び熱硬化性組成物であって、少なくとも1個の重合性不飽和基を有し、かつ2個以上のカルボキシル基を有する重合性炭化水素重合体と、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有する重合性炭化水素単量体と、無機フィラーと、25℃での表面張力が25dyn/cm以下であり、かつ20℃での蒸気圧が3kPa以下である溶媒とを含むので、塗布対象部材上に塗布されたときに、はじきが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光及び熱硬化性組成物を用いて形成されたレジスト膜を備えるLEDデバイスを模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、光の照射及び熱の付与により硬化可能である。本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、重合性炭化水素重合体(A)と、重合性炭化水素単量体(B)と、無機フィラー(C)と、溶媒(D)とを含む。重合性炭化水素重合体(A)は、少なくとも1個の重合性不飽和基を有し、かつ2個以上のカルボキシル基を有する。重合性炭化水素単量体(B)は、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有する。溶媒(D)の25℃での表面張力は25dyn/cm以下であり、かつ溶媒(D)の20℃での蒸気圧は3kPa以下である。
【0026】
上記組成の採用により、光及び熱硬化性組成物が塗布対象部材上に塗布されたときに、はじきが生じ難くなる。本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、後述の式(1A)を満たすことが好ましく、後述の式(1)を満たすことがより好ましい。上記組成を有し、かつ式(1A)を満たす光及び熱硬化性組成物は、現像性が比較的良好である。特に、上記組成を有し、かつ式(1)を満たす光及び熱硬化性組成物は、効率的に現像できる。
【0027】
以下、先ず本発明に係る光及び熱硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0028】
(重合性炭化水素重合体(A))
重合性炭化水素重合体(A)は、少なくとも1個の重合性不飽和基を有し、かつ2個以上のカルボキシル基を有すれば特に限定されない。重合性炭化水素重合体(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
重合性炭化水素重合体(A)としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びオレフィン樹脂が挙げられる。なお、「樹脂」は、固形樹脂に限定されず、液状樹脂及びオリゴマーも含む。
【0030】
重合性炭化水素重合体(A)は、下記のカルボキシル基含有樹脂(a)〜(e)であることが好ましい。
【0031】
(a)不飽和カルボン酸と重合性不飽和二重結合を有する化合物との共重合によって得
られるカルボキシル基含有樹脂
【0032】
(b)カルボキシル基含有(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)と、1分子中にオキシラン環及びエチレン性重合性不飽和二重結合を有する化合物(b2)との反応により得られるカルボキシル基含有樹脂
【0033】
(c)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物と、重合性不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した反応物の第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
【0034】
(d)水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボキシル基を有するポリマーに、1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる水酸基及びカルボキシル基含有樹脂
【0035】
(e)芳香環を有するエポキシ化合物と飽和多塩基酸無水物又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、飽和多塩基酸無水物又は不飽和多塩基酸無水物をさらに反応させて得られる樹脂
【0036】
重合性炭化水素重合体(A)は、芳香環を有するエポキシ化合物と飽和多塩基酸無水物又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、飽和多塩基酸無水物又は不飽和多塩基酸無水物をさらに反応させて得られる樹脂であることが好ましい。この場合には、硬化物又はレジスト膜の耐熱クラック性がより一層高くなる。
【0037】
上記芳香環を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型、トリスフェノールメタン型、ジシクロペンタジエン・フェニレン型、フェノール・ビフェニレン型、フェノキシ型、グリシジルアミン型、ビスフェノールS型などのエポキシ化合物や、フタル酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸グリシジル化物などの塩基酸のグリシジルエステル化物や、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0038】
重合性炭化水素重合体(A)の酸価は、好ましくは50mgKOH/g以上、好ましくは200mgKOH/g以下である。酸価が50mgKOH/g以上であると、現像時に弱アルカリ水溶液でも未露光部分の除去が容易である。酸価が200mgKOH/g以下であると、硬化物の耐水性及び電気特性がより一層高くなる。
【0039】
重合性炭化水素重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、好ましくは100000以下である。重量平均分子量が5000以上であると、指で触れたときの乾燥性がより一層良好になる。また、重量平均分子量が100000以下であると、光及び熱硬化性組成物の露光後の現像性、及び光及び熱硬化性組成物の貯蔵安定性がより一層高くなる。
【0040】
重合性炭化水素重合体(A)及び重合性炭化水素単量体(B)の合計100重量%中、重合性炭化水素重合体(A)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。重合性炭化水素重合体(A)の含有量が上記下限以上であると、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度が適度になり、かつ現像性がより一層高くなる。重合性炭化水素重合体(A)の含有量が上記上限以下であると、光及び熱硬化性組成物を充分に硬化させることができる。
【0041】
(重合性炭化水素単量体(B))
重合性炭化水素単量体(B)は、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有すれば特に限定されない。重合性炭化水素単量体(B)は、2個以上の重合性不飽和基と2個以上の環状エーテル基とを有していてもよい。重合性炭化水素単量体(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
重合性炭化水素単量体(B)における上記重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基及びビニルエーテル基などの重合性不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。中でも、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度を高めることができるため、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0043】
重合性炭化水素単量体(B)における上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタン基等が挙げられる。上記環状エーテル基はエポキシ基であることが好ましい。
【0044】
重合性炭化水素単量体(B)としては、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有する重合性炭化水素単量体(B1)、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有さない重合性炭化水素単量体(B2)が挙げられる。重合性炭化水素単量体(B2)としては、2個以上の重合性不飽和基を有し、2個以上の環状エーテル基を有さず、かつアルキレンオキシド骨格を有さない重合性炭化水素単量体(B2−1)、及び2個以上の重合性不飽和基を有するか又は2個以上の重合性不飽和基を有さず、2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有さない重合性炭化水素単量体(B2−2)が挙げられる。
【0045】
現像性を高める観点からは、重合性炭化水素単量体は、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有する重合性炭化水素単量体(B1)を含むことが好ましい。
【0046】
上記アルキレンオキシド骨格としては、エチレンオキシド骨格、プロピレンオキシド骨格等が挙げられる。
【0047】
重合性炭化水1単量体(B1)は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、多価アルコールのエチレンオキシド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート変性物や、フェノールのエチレンオキシド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート変性物や、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート変性物が挙げられる。
【0048】
上記多価アルコールとしては、例えば、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。
【0049】
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルとを意味する。「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを意味する。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを意味する。
【0050】
重合性炭化水素単量体(B2)は、アルキレンオキシド骨格を有さないので、重合性炭化水素単量体(B1)とは異なる。重合性炭化水素単量体(B2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基及びビニルエーテル基などの重合性不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。中でも、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度を高めることができるため、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0052】
重合性炭化水素単量体(B2−1)は、2個以上の重合性不飽和基を有し、2個以上の環状エーテル基を有さず、かつアルキレンオキシド骨格を有さなければ特に限定されない。重合性炭化水素単量体(B2−2)は、2個以上の重合性不飽和基を有するか又は2個以上の重合性不飽和基を有さず、2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有さなければ特に限定されない。重合性炭化水素単量体(B2−1)は、環状エーテル基を有さないので、重合性炭化水素単量体(B2−2)とは異なる。重合性炭化水素単量体(B2−1)及び重合性炭化水素単量体(B2−2)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基及びビニルエーテル基などの重合性不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。中でも、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度を高めることができるため、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0054】
重合性炭化水素単量体(B2−1)は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。重合性炭化水素単量体(B2−1)の具体例としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレート変性物や、多価アルコールの多価(メタ)アクリレート変性物や、フェノールの(メタ)アクリレート変性物や、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0055】
上記多価アルコールとしては、例えば、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。上記フェノールの(メタ)アクリレート変性物としては、例えば、フェノキシ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート変性物等が挙げられる。
【0056】
重合性炭化水素単量体(B2−2)の具体例としては、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート変性物等が挙げられる。
【0057】
さらに、重合性炭化水素単量体(B2−2)の具体例としては、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ化合物、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ化合物、キレート型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ化合物、シリコーン変性エポキシ化合物及びε−カプロラクトン変性エポキシ化合物等も挙げられる。
【0058】
重合性炭化水素重合体(A)及び重合性炭化水素単量体(B)の合計100重量%中、重合性炭化水素重合体(B)の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。重合性炭化水素重合体(B)の含有量が上記下限以上であると、光及び熱硬化性組成物を充分に
硬化させることができる。重合性炭化水素重合体(B)の含有量が上記上限以下であると、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度が適度になり、かつ現像性がより一層高くなる。
【0059】
重合性炭化水素重合体(A)及び重合性炭化水素単量体(B)の合計100重量%中、重合性炭化水素単量体(B1)の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。重合性炭化水素単量体(B1)の含有量が上記下限以上であると、光及び熱硬化性組成物を充分に硬化させることができる。重合性炭化水素単量体(B1)の含有量が上記上限以下であると、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度が適度になり、現像性がより一層高くなる。
【0060】
重合性炭化水素重合体(A)及び重合性炭化水素単量体(B)の合計100重量%中、重合性炭化水素単量体(B2)(重合性炭化水素単量体(B2−1)と重合性炭化水素単量体(B2−2)との合計)の含有量は、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。重合性炭化水素単量体(B2)の含有量が上記下限以上であると、光及び熱硬化性組成物を充分に硬化させることができる。重合性炭化水素単量体(B2)の含有量が上記上限以下であると、光及び熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度が適度になり、現像性がより一層高くなり、更に硬化物の黄変がより一層生じ難くなる。
【0061】
(無機フィラー(C))
本発明に係る光及び熱硬化性組成物に含まれている無機フィラー(C)は特に限定されない。無機フィラー(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
無機フィラー(C)の465nmでの屈折率は1.8以上であることが好ましい。無機フィラー(C)は白色フィラーであることが好ましい。これらの場合には、LED用プリント配線板等の白色ソルダーレジスト膜に好適な光及び熱硬化性組成物が得られる。なお、上記屈折率が1.8以上であると、LEDを搭載した基板に用いる白色ソルダーレジスト膜に要求されている高い反射性能を得ることができる。
【0063】
無機フィラー(C)としては、酸化チタン、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム及びチタン酸鉛等の白色フィラーが挙げられる。なかでも、光及び熱硬化性組成物の硬化物の反射率をより一層高めることができるので、酸化チタンがより好ましい。
【0064】
さらに、無機フィラー(C)として、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド粉末、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、タルク、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、雲母粉、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、窒化チタン、フッ化セリウム及び酸化セリウム等も用いることができる。
【0065】
無機フィラー(C)の数平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
【0066】
無機フィラー(C)は、ルチル型酸化チタン又はアナターゼ型酸化チタンであることが好ましい。ルチル型酸化チタンの使用により、耐熱黄変性が高く、かつ反射率が高い硬化物又はレジスト膜を形成できる。
【0067】
上記酸化チタンは、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含むことが望ましい。
【0068】
光及び熱硬化性組成物100重量%中の無機フィラー(C)の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは60重量%以下である。無機フィラー(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光及び熱硬化性組成物が高温に晒されたときに、黄変し難くなる。さらに、無機フィラー(C)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の反射率がより一層高くなる。特に無機フィラー(C)の含有量が15重量%以上であると、硬化物の反射率は充分に高くなる。無機フィラー(C)の含有量が上記上限以下であると、特に無機フィラーの含有量が60重量%以下であると、光及び熱硬化性組成物の現像性が高くなる。さらに、無機フィラー(C)の含有量が上記上限以下であると、塗布に適した粘度を有する光及び熱硬化性組成物を容易に調製できる。
【0069】
(溶媒)
一般的に、レジスト膜を形成するための組成物に用いられる溶媒として、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、並びに石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が用いられている。このような溶媒のなかから、本発明に係る光及び熱硬化性組成物では、25℃での表面張力が25dyn/cm以下であり、かつ溶媒(D)の20℃での蒸気圧が3kPa以下である溶媒が用いられる。
【0070】
すなわち、本発明に係る光及び熱硬化性組成物に含まれている溶媒(D)の25℃での表面張力は25dyn/cm以下であり、かつ溶媒(D)の20℃での蒸気圧は3kPa以下である。なお、溶媒(D)として、上述した溶媒以外の溶媒を用いてもよい。
【0071】
25℃での表面張力が25dyn/cm以下であり、及び20℃での蒸気圧が3kPa以下である溶媒(D)の幾つかの例を示す。
【0072】
ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(表面張力(25℃)24dyn/cm、蒸気圧(20℃)0.1kPa以下)
【0073】
ジエチレングリコールジエチルエーテル(表面張力(25℃)25dyn/cm、蒸気圧(20℃)1.4kPa)
【0074】
ジメチルプロピレンジグリコール(表面張力(25℃)22dyn/cm、蒸気圧(20℃)1.1kPa)
【0075】
プロピルプロピレングリコール(表面張力(25℃)23dyn/cm、蒸気圧(20℃)0.2kPa)
【0076】
イソブチルグリコール(表面張力(25℃)23dyn/cm、蒸気圧(20℃)0.1kPa)
【0077】
印刷時のハジキ発生の抑制効果をより一層高める観点からは、溶媒(D)の25℃での
表面張力は24dyn/cm以下であることが好ましい。印刷時のハジキ発生の抑制効果をより一層高める観点からは、溶媒(D)の20℃での蒸気圧は2.5kPa以下であることが好ましい。
【0078】
溶媒(D)の含有量は特に限定されない。光及び熱硬化性組成物の塗布性を考慮して、溶媒(D)は適宜の含有量で用いられる。溶媒(D)の好ましい含有量の一例を挙げると、光及び熱硬化性組成物100重量%中、溶媒(D)の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは2重量%以下である。
【0079】
(他の成分)
感光性をより一層高めるために、本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0080】
上記光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシム、及びこれらの誘導体が挙げられる。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記光重合開始剤が用いられる場合には、重合性炭化水素重合体(A)及び重合性炭化水素単量体(B)の合計100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。上記光重合開始剤の含有量が上記下限以上及び上限以下である場合には、光及び熱硬化性組成物の感光性がより一層高くなる。
【0082】
高温に晒されたときに硬化物又はレジスト膜が黄変するおそれを小さくするために、本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、ルイス塩基性部位を有することが好ましい。レジスト膜の黄変をより一層抑制する観点からは、上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0083】
また、本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、着色剤、無機フィラー以外の充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含んでいてもよい。
【0084】
(光及び熱硬化性組成物の詳細)
本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、第1の液と、第2の液とを有し、該第1,第2の液が混合されて用いられる2液混合型の光及び熱硬化性組成物であってもよい。2液混合型の光及び熱硬化性組成物の場合には、使用前に重合又は硬化反応が進行するのを抑制できる。このため、2液それぞれのポットライフを向上できる。
【0085】
2液混合型の光及び熱硬化性組成物の場合には、重合性炭化水素重合体(A)と重合性炭化水素単量体(B)と無機フィラー(C)と溶媒(D)とはそれぞれ、上記第1の液及び上記第2の液の内の少なくとも一方に含まれる。光重合開始剤が用いられる場合には、光重合開始剤は、上記第1の液及び上記第2の液の内の少なくとも一方に含まれる。
【0086】
上記第1,第2の液が混合された混合物は、光及び熱硬化性組成物であり、重合性炭化
水素重合体(A)と重合性炭化水素単量体(B)と無機フィラー(C)と溶媒(D)とを含み、必要に応じて光重合開始剤をさらに含む。
【0087】
本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製できる。
【0088】
光及び熱硬化性組成物を硬化させるために用いられる光源としては、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源としては、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ及びエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、光及び熱硬化性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は光及び熱硬化性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。
【0089】
重合性炭化水素重合体(A)の重量平均分子量をXとし、かつ酸価(mgKOH/g)をAとし、重合性炭化水素単量体(B)の25℃での粘度(Pa・s)をVとし、重合性炭化水素単量体(B)のSP値をPとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素重合体(A)の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B)の含有量(重量%)に対する比((A)/(B))をWとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の無機フィラー(C)の含有量(重量%)をTとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の溶媒(D)の含有量(重量%)をFとしたときに、下記式(1A)を満たすことが好ましく、下記式(1)を満たすことが特に好ましい。
【0090】
1.5≦(A・W・e(P−6))/(ln(V)・ln(X−7000)・T)≦19 ・・・式(1A)
【0091】
3.6≦(A・W・e(P−6))/(ln(V)・ln(X−7000)・T)≦19 ・・・式(1)
【0092】
上記式(1A)中の左辺の値が1.5すなわち上記式(1A)の中央部分の値が1.5以上であると、光及び熱硬化性組成物の現像時間が比較的良好になる。上記式(1)の左辺の値が3.6すなわち上記式(1)の中央部分の値が3.6以上であると、光及び熱硬化性組成物の現像時間が適度に短くなる。上記式(1)の右辺の値が19すなわち上記式(1)の中央部分の値が19以下であると、光及び熱硬化性組成物の現像時間が適度に速くなり、現像制御が容易になる。従って、上記式(1)は、光及び熱硬化性組成物の現像性の指標となる。なお、上記式(1)を満たすことにより光及び熱硬化性組成物の現像時間を適度な範囲に制御できることは、後述の実施例及び比較例により見出された。また、後述の実施例及び比較例から、アルカリ現像液への溶解性を考慮して、それぞれのパラメータの影響を実験的に算出することにより、上記式(1)は導き出された。
【0093】
光及び熱硬化性組成物の現像時間をより一層適度な範囲に制御する観点からは、上記式(1)中の左辺の値は好ましくは7であり、上記式(1)中の右辺の値は好ましくは20である。
【0094】
なお、複数の重合性炭化水素単量体(B)を用いる場合には、上記粘度V(Pa・s)は、平均粘度V(Pa・s)を示し、該平均粘度Vは重量平均値を示す。すなわち、例えば、2種の重合性炭化水素単量体(B1),(B2)を用いる場合には、重合性炭化水素単量体(B1)の粘度(Pa・s)をV1とし、重合性炭化水素単量体(B2)の粘度(Pa・s)をV2とし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B1)の含有量の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B1),(B2)の合計の含有量(重量%)に対する比((B1)/(B1)+(B2))を
b1とし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B2)の含有量の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B1),(B2)の合計の含有量(重量%)に対する比((B2)/(B1)+(B2))をb2としたときに、上記平均粘度V(Pa・s)は、「(b1×V1)+(b2×V2)」を示す。
【0095】
また、複数の重合性炭化水素単量体(B)を用いる場合には、上記SP値Pは、平均SP値を示し、該平均SP値は重量平均値を示す。すなわち、例えば、2種の重合性炭化水素単量体(B1),(B2)を用いる場合には、上記b1及びb2の定義に加えて、重合性炭化水素単量体(B1)のSP値をP1とし、重合性炭化水素単量体(B2)のSP値をP2としたときに、上記平均SP値Pは、「(b1×P1)+(b2×P2)」を示す。他の2種の重合性炭化水素単量体(B)を用いた場合にも、同様にして、平均粘度V及び平均SP値Pが求められる。
【0096】
なお、複数の重合性炭化水素重合体(A)を用いる場合には、重合性炭化水素重合体(A)の重量平均分子量X、重合性炭化水素重合体(A)の酸価A(mgKOH/g)はそれぞれ、重量平均値を示し、上記平均粘度V及び上記平均SP値Pと同様に、各重合性炭化水素重合体(A)の含有量を考慮して求められる。
【0097】
重合性炭化水素重合体(A)の重量平均分子量をXとし、重合性炭化水素単量体(B)の25℃での粘度(Pa・s)をVとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素重合体(A)の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B)の含有量(重量%)に対する比をWとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の無機フィラー(C)の含有量(重量%)をTとし、溶媒(D)の25℃での表面張力(dyn/cm)をSとし、光及び熱硬化性組成物100重量%中の溶媒(D)の含有量(重量%)をFとしたときに、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0098】
4×10≦ln(X)・V・W・T/e(S−18)/F≦5×10 ・・・式(2)
【0099】
上記式(2)の左辺の値が4×10すなわち上記式(2)の中央部分の値が4×10以上であると、光及び熱硬化性組成物を塗布したときに、光及び熱硬化性組成物のはじきがより一層生じ難くなる。上記式(2)の右辺の値が5×10すなわち上記式(2)の中央部分の値が5×10以下であると、光及び熱硬化性組成物の塗布時に溶媒が揮発し難くなり、レベリングが容易になる。従って、上記式(2)は、光及び熱硬化性組成物のはじき特性の指標となる。なお、上記式(2)を満たすことにより光及び熱硬化性組成物の塗布時のはじきの抑制と、塗布後のレベリング特性の向上とを達成できることは、後述の実施例及び比較例により見出された。また、後述の実施例及び比較例から、ハジキ特性を考慮して、それぞれのパラメータの影響性を実験的に算出することにより、上記式(2)は導き出された。
【0100】
光及び熱硬化性組成物の塗布時にはじきを抑制し、かつ塗布後にレベリング特性をより一層高める観点からは、上記式(2)中の左辺の値は好ましくは1×10であり、上記式(2)中の右辺の値は好ましくは1×10である。
【0101】
なお、複数の溶媒(D)を用いる場合には、溶媒(D)の25℃での表面張力(dyn/cm)Sは、重量平均値を示し、上記平均粘度V及び上記平均SP値Pと同様に、各溶媒(D)の含有量を考慮して求められる。
【0102】
(LEDデバイス)
本発明に係る光及び熱硬化性組成物は、LEDデバイスのレジスト膜を形成するために好適に用いられ、ソルダーレジスト膜を形成するためにより好適に用いられる。
【0103】
図1に、本発明の一実施形態に係る光及び熱硬化性組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を備えるLEDデバイスを模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0104】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2aに、光及び熱硬化性組成物により形成されたレジスト膜3が積層されている。レジスト膜3は、パターン膜である。よって、基板2の上面2aの一部の領域では、レジスト膜3は形成されていない。レジスト膜3が形成されていない部分の基板2の上面2aには、電極4a,4bが設けられている。基板2は、プリント配線板本体であることが好ましい。
【0105】
レジスト膜3の上面3aに、LEDパッケージ7が積層されている。レジスト膜3を介して、基板2上にLEDパッケージ7が積層されている。LEDパッケージ7の下面7aの外周縁には、端子8a,8bが設けられている。はんだ9a,9bにより、端子8a,8bが電極4a,4bと電気的に接続されている。この電気的な接続により、LEDパッケージ7に電力を供給できる。
【0106】
また、本発明に係るプリント配線板は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、該プリント配線板本体の回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備えている。該レジスト膜が本発明に従って構成された光及び熱硬化性組成物を用いて形成されている。
【0107】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0108】
(合成例1)重合性炭化水素重合体の合成
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶剤であるエチルカルビトールアセテートと、触媒であるアゾビスイソブチロニトリルとを入れ、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートとを30:70のモル比で混合したモノマーを2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、温度を120℃に上げた。その後、冷却した。得られた樹脂の全てのモノマー単位の総量のモル量に対するモル比が10となる量のグリシジルアクリレートを加え、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い100℃で30時間加熱して、グリシジルアクリレートとカルボキシル基とを付加反応させた。冷却後、フラスコから取り出して、重量平均分子量が21000、酸価が60mgKOH/gであり、かつ少なくとも1個の重合性不飽和基及び2個以上のカルボキシル基を有する重合性炭化水素重合体を50重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を重合性炭化水素重合体1と呼ぶ。
【0109】
(合成例2)重合性炭化水素重合体の合成
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒であるジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤であるハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量210、軟化点80℃のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「エポトートYDCN−704」、東都化成社製)210重量部と、アクリル酸50重量部と、酢酸18重量部とを反応させて、エポキシアクリレートを得た。得られたエポキシアクリレート278重量部と、テトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシアクリレートの水酸基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、重量平均分子量が9000、酸価が52mgKOH/gであり、かつ少なくとも1個の重合性不飽和基及び2個以上のカルボキシル基を有する重合性炭化水素重合体を65重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を重合性炭化水素重合体2と呼ぶ。
【0110】
また、実施例及び比較例では、下記の表1に示す材料を適宜用いた。
【0111】
【表1】

【0112】
(実施例1〜36及び比較例1〜3)
下記の表2〜5に示す各材料を配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、SP−500を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、光及び熱硬化性組成物であるレジスト材料を得た。
【0113】
(評価)
(1)現像性
80mm×90mm、厚さ0.8mmのFR−4である基板を用意した。この基板上に、スクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルバイアス製の版を用いて、ベ
タパターンでレジスト材料を印刷した。印刷後、80℃のオーブン内で20分間乾燥させ、レジスト材料層を基板上に形成した。次に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、紫外線照射装置を用い、レジスト材料層に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが400mJ/cmとなるように100mW/cmの紫外線照度で4秒間照射した。その後、未露光部のレジスト材料層を除去してパターンを形成するために、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト材料層を浸漬して現像し、基板上にレジスト膜を形成した。その後、150℃のオーブン内で1時間加熱しレジスト膜を後硬化させることにより、厚み20μmのレジスト膜を得た。
【0114】
上記現像の際に、未露光部のレジスト材料層を除去するために要した時間を評価した。現像性を下記の判定基準で判定した。
【0115】
×1:現像時間が10秒未満であるものの、現像性が良好となるように工程を制御することが難しい
○:現像時間が10秒以上、30秒未満
△:現像時間が30秒以上、60秒未満
×2:現像時間が60秒以上
【0116】
(2)はじき特性
銅箔付FR−4基板上に離型PETフィルムを貼り付けた。50回手攪拌した直後のレジスト材料を、離型PETフィルムが貼り付けられた基板の離型PETフィルム上に、スクリーン印刷により塗布した。その後、室温で1時間放置し、レジスト材料のはじきの状態を目視で確認した。その後、80℃で20分でプリベイクした後、パターン露光(400mJ/cm)、現像し、均一なパターンが形成可能か否かを確認した。はじき特性を下記の判定基準で判定した。
【0117】
[はじき特性の判定基準]
×1:はじき距離が10mm未満であるものの、均一なパターンを形成できなかった
○:はじき距離が10mm未満であり、かつ均一なパターンを形成可能
△:はじき距離が10mm以上、20mm未満
×2:はじき距離が20mm以上
【0118】
結果を下記の表2〜5に示す。下記の表2〜5の各パラメータに関しては、具体的には、「X」は重合性炭化水素重合体(A)の重量平均分子量を示し、「A」は重合性炭化水素重合体(A)の酸価(mgKOH/g)を示し、「V」は重合性炭化水素単量体(B)の25℃での粘度(Pa・s)(平均粘度(Pa・s)を示す)を示し、「P」は重合性炭化水素単量体(B)のSP値(平均SP値を示す)を示し、「W」は光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素重合体(A)の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の重合性炭化水素単量体(B)の含有量(重量%)に対する比((A)/(B))((A)/((B1)+(B2−1)+(B2−2))を示す)を示し、「T」は光及び熱硬化性組成物100重量%中の無機フィラー(C)の含有量(重量%)を示し、「S」は溶媒(D)の表面張力(dyn/cm)を示し、「F」は光及び熱硬化性組成物100重量%中の溶媒(D)又はその他の溶媒の含有量(重量%)を示す。また、下記の表2〜5において、「式(1)の中央部分の値」は「(A・W・e(P−6))/(ln(V)・ln(X−7000)・T)」の値を示し、「式(2)の中央部分の値」は「ln(X)・V・W・T/e(S−18)/F」の値を示す。また、下記の表2〜5において、「E+03」は、「×10」を示し、「E+04」は「×10」を示し、「E+05」は「×10」を示し、「E+06」は「×10」を示す。
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
なお、実施例1〜36のレジスト材料において、重合性炭化水素重合体(A)を第1の液に、重合性炭化水素単量体(B1),(B2−1)を第1の液に、重合性炭化水素単量体(B2−2)を第2の液に、無機フィラー(C)を第1の液に、溶媒(D)を第1の液に入れて、2液混合型のレジスト材料を別途調製した。この2液混合型のレジスト材料を塗布直前に混合して、上記(1)現像性及び上記(2)はじき特性を評価したところ、実施例1〜36と同様の傾向が見られた。
【符号の説明】
【0124】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…レジスト膜
3a…上面
4a,4b…電極
7…LEDパッケージ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射及び熱の付与により硬化可能な光及び熱硬化性組成物であって、
少なくとも1個の重合性不飽和基を有し、かつ2個以上のカルボキシル基を有する重合性炭化水素重合体と、
2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有する重合性炭化水素単量体と、
無機フィラーと、
25℃での表面張力が25dyn/cm以下であり、かつ20℃での蒸気圧が3kPa以下である溶媒とを含む、光及び熱硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合性炭化水素重合体の重量平均分子量をXとし、かつ酸価(mgKOH/g)をAとし、
前記重合性炭化水素単量体の25℃での粘度(Pa・s)をVとし、
前記重合性炭化水素単量体のSP値をPとし、
光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記重合性炭化水素重合体の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記重合性炭化水素単量体の含有量(重量%)に対する比をWとし、
光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記無機フィラーの含有量(重量%)をTとし、
光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記溶媒の含有量(重量%)をFとしたときに、
下記式(1)を満たす、請求項1に記載の光及び熱硬化性組成物。
3.6≦(A・W・e(P−6))/(ln(V)・(X−7000)・T)≦19 ・・・式(1)
【請求項3】
前記重合性炭化水素重合体の重量平均分子量をXとし、
前記重合性炭化水素単量体の25℃での粘度(Pa・s)をVとし、
光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記重合性炭化水素重合体の含有量(重量%)の、光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記重合性炭化水素単量体の含有量(重量%)に対する比をWとし、
光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記無機フィラーの含有量(重量%)をTとし、
前記溶媒の25℃での表面張力(dyn/cm)をSとし、
光及び熱硬化性組成物100重量%中の前記溶媒の含有量(重量%)をFとしたときに、
下記式(2)を満たす、請求項1又は2に記載の光及び熱硬化性組成物。
4×10≦ln(X)・V・W・T/e(S−18)/F≦5×10 ・・・式(2)
【請求項4】
前記重合性炭化水素単量体が、2個以上の重合性不飽和基又は2個以上の環状エーテル基を有し、かつアルキレンオキシド骨格を有する重合性炭化水素単量体を含む、請求項1〜3に記載の光及び熱硬化性組成物。
【請求項5】
第1の液と、第2の液とを有し、該第1,第2の液が混合されて用いられる2液混合型の光及び熱硬化性組成物であり、
前記重合性炭化水素重合体と前記重合性炭化水素単量体と前記無機フィラーと前記溶媒とはそれぞれ、前記第1の液及び前記第2の液の内の少なくとも一方に含まれており、
前記第1,第2の液が混合された混合物が、前記重合性炭化水素重合体と前記重合性炭化水素単量体と前記無機フィラーと前記溶媒とを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記
載の光及び熱硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光及び熱硬化性組成物である、ソルダーレジスト組成物。
【請求項7】
回路を表面に有するプリント配線板本体と、
前記プリント配線板本体の前記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備え、
前記レジスト膜が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光及び熱硬化性組成物を用いて形成されている、プリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−53254(P2012−53254A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195404(P2010−195404)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】