説明

光反射性樹脂被覆金属板

【課題】 低コストで白色反射フィルムに対する耐固着性、加工性の良い白色反射フィルムと組み合わせて使用される光反射性樹脂被覆金属板を得る。
【解決手段】 両面に化成皮膜を有する金属板の少なくとも一方の面の化成皮膜上に、二酸化チタンを含有し、少なくとも最外層の皮膜のガラス転移温度(Tg)が20℃〜150℃である皮膜厚30μm〜150μmの白色樹脂皮膜を施す。
またさらに光反射性白色樹脂皮膜の表面粗さ(Ra)を0.3〜2.0μmに制御するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用液晶モニターにおける、主に交換可能なサイド型バックライト用ランプリフレクターなどとして、安価で白色反射フィルムに対する耐固着性、加工性に優れた光反射性樹脂被覆金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランプリフレクターに使用される光反射板としては、(1)白色のフィルムを接着剤等を用いて金属板に貼り付けたフィルム被覆金属板(例えば、特許文献1参照)、白色の塗装を施した白色塗装金属板(例えば、特許文献2参照)、等が提案されている。
【特許文献1】特開平10−177805号公報
【特許文献2】特開2002−172735号公報
【0003】
しかしながら、前記(1)のフィルム被覆金属板の場合、成形加工時に曲げ部等でのシワの発生、フィルムの剥がれが生じる成形加工性の問題およびフィルムの厚みが厚く、さらにフィルム貼付け工程が必要なため、トータルコストが非常に高いという問題がある。
【0004】
そこで、酸化チタン含有量、白色塗装皮膜の厚みを規定することにより比較的低コストで反射性を向上させている前記(2)の白色塗装金属板が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術分野である産業用液晶モニターの構造を図1に示す。産業用液晶モニターは主に液晶パネルのサイドに図中1に示した冷陰極ランプ,その後部に図中2に示した白色塗装金属板よりなるランプリフレクターが並び、そして液晶パネルの真後ろに図中3に示した導光板、さらにその後ろに図中4に示した白色反射フィルムが位置する構造となっていることが多い。そして、多くの場合に白色反射フィルムとランプリフレクターの反射表面が接する。そして、産業用液晶モニターはランプ交換が必要な場合があり、このときに白色フィルムと白色塗装金属板よりなるランプリフレクターの反射表面に接した状態で長時間使用すると固着してしまい、ランプリフレクターにランプが固定されているためランプ交換ができなくなり大問題となる。
【0006】
前記(2)の白色塗装金属板の場合、比較的低コストで、反射性を向上させているが、使用される熱硬化性樹脂に関しては特に規制はなく耐光性等から主にアクリル樹脂が使用されている。また、塗装後に加工が行われるプレコートと呼ばれるタイプの樹脂系のため耐熱性(ガラス転移温度)の低い場合が多く、このため産業用液晶モニターのランプリフレクターに使用すると、白色反射フィルムとランプリフレクターの反射表面、つまり白色塗装表面が固着しやすいという問題がある。
【0007】
したがって、低コストで白色反射フィルムに対する耐固着性、加工性の良い反射板が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このようなことから、本発明者らは金属板上に化成皮膜を設け、ガラス転移温度(Tg)が特定の範囲内の白色樹脂被覆を設けることで光反射性が低下することなく白色反射フィルムに対する耐固着性、加工性が向上することを見出し、また表面粗さを特定の範囲に制御することで上記特性が向上することを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち請求項1記載の発明は、両面に化成皮膜を有する金属板の少なくとも一方の面の化成皮膜上に、二酸化チタンを含有し、少なくとも最外層の皮膜のガラス転移温度(Tg)が20℃〜150℃である皮膜厚30μm〜150μmの白色樹脂皮膜を施したことを特徴とする、白色反射フィルムに対する耐固着性、および加工性に優れた白色反射フィルムと組み合わせて使用される光反射性樹脂被覆金属板である。
【0010】
また、請求項2は、請求項1において白色樹脂皮膜の表面粗さ(Ra)を0.3〜2.0μmと規定した発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光反射性樹脂被覆金属板は、良好な反射性を有しかつ加工性に優れ、また、他の接触する部品等との固着がほとんど生じないため、特に交換可能なサイド型バックライト用反射板として好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、基材の金属板は特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム板、ステンレス鋼板、低炭素鋼、高炭素鋼、高張力鋼板等に使用される低合金鋼からなる鋼板、あるいは、これらの鋼板を母材としてその表面にめっきを施しためっき鋼板等が用いられる。特に、照明装置や反射部材を形成し保持するに足る強度を有し、また絞り加工、曲げ加工時において充分な成形加工性を有し、かつ内部で発生した熱をより速やかに外部に発散させることができる熱伝導性に優れる1000系、3000系、5000系のアルミニウム板が好ましい。
【0013】
前記アルミニウム材上に設ける化成皮膜は、塗布型と反応型があり、特に制限されないが、アルミニウムと樹脂皮膜の両方に密着性が良好な反応型化成皮膜が好適に用いられる。反応型化成皮膜とは、具体的にはリン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等の処理液で形成される皮膜である。特にリン酸クロメート処理皮膜が、コスト、汎用性の点で好ましい。
【0014】
前記化成皮膜上に設ける白色樹脂皮膜には、樹脂100質量部に対して二酸化チタンを70〜150質量部を含有させる。二酸化チタンは一般的に可視光線を反射する性質を有する。すなわち、二酸化チタンの含有量が70質量部未満では、光反射性が低下し、含有量が150質量部を超えると皮膜が硬くなり加工性が低下する。
【0015】
前記白色樹脂皮膜の基材樹脂は、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、フッ素系のいずれの樹脂を使用しても良く、制限するものではないがアクリル系樹脂がコスト、耐光性の点で好ましい。
【0016】
前記白色樹脂皮膜の少なくとも最外層の皮膜のガラス転移温度(Tg)は20℃〜150℃とする。20℃未満では、使用雰囲気温度での塗膜の柔軟性が高く、白色フィルム表面と白色樹脂皮膜表面の固着に関する有効接触面積が増大し、その結果耐固着性が低下する。150℃を超えると耐固着性は向上するものの、白色樹脂皮膜の柔軟性が大きく低下し、その結果加工性が劣るためである。ちなみに、白色反射フィルムとは、一例として、ポリエステルフィルムに白色顔料を添加したり、フィルム中に微細な発泡を設けた白色反射フィルムなどが挙げられる。
【0017】
前記白色樹脂皮膜の表面粗さ(Ra)を、0.3μm〜2.0μmとすることによりさらに耐固着性が向上する。表面粗さ調整方法には、シリカ等の無機微粒子を添加する方法、またはアクリルビーズ等の有機微粒子を添加する方法等何れでも良い。表面粗さが大きいと、白色フィルム表面と白色樹脂皮膜表面の固着に関する有効接触面積が減少し、結果耐固着性が向上する。0.3μm未満では、固着に関する有効接触面積の減少が充分ではなく耐固着性の向上の効果が小さくなる。2.0μmを超えると、粗面化するために添加する微粒子の量が増大、または粒径が大きくなるため、その結果塗膜に亀裂や微粒子の脱落が生じやすくなり、加工性が低下する。また表面外観が低下するため液晶反射板としては好ましくない。
【0018】
前記白色樹脂皮膜の厚みは30〜150μmとする。30μm未満では塗膜中の可視光線を反射する白色顔料の総量が少なく、その結果光反射性が低下し、150μmを超えると塗膜にクラックが入りやすくなり曲げ加工性が低下する。
前記二酸化チタンの平均一次粒子径は100〜1000nmとする。100nm未満では粒子径が可視光線の波長よりも小さすぎるため、可視光線が白色顔料粒子に反射される確率が低下し、その結果光反射性が低下する。1000nmを超えると同一含有量の場合白色顔料粒子の絶対数が不足し光反射性が低下する。また粒子径が大きくなると塗膜に亀裂が生じやすくなり曲げ加工性が低下する。
【0019】
前記二酸化チタンの粒子径分布に関しては特に制限されないが、一次粒子径400nm以上のものが全白色顔料中40%以下とすることによりさらに光反射性が向上する。40%を超えると白色顔料粒子の絶対量が不足し光反射性が低下する。同じ理由でより好ましくは20%以下である。
【0020】
また、本発明に使用する光反射性白色樹脂皮膜の塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般性能を確保するために通常塗料で使用される、溶剤、レベリング剤、顔料分散剤、ワキ防止剤等を適宜使用しても良い。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0022】
アルミニウム板(材質:JIS A5052、板厚:0.5mm)に対し、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗後、市販のリン酸クロメート処理液にて下地処理を行い、その上にガラス転移温度(Tg)の異なるアクリル系樹脂をベース樹脂とし表1に示す条件で塗料をロールコーターで塗装し、PMT(最高到達板温度)200℃にて焼付した。また、本発明例3〜5は最外層の皮膜のガラス転移温度(Tg)のみを110℃とし、それ以外の皮膜のガラス転移温度(Tg)は0℃とした。ここで、塗料は各アクリル系樹脂100質量部に対して平均一次粒子径300nmのルチル型二酸化チタンを100質量部含有する塗料を用いた。なお、こうして図2に模式的に断面図を示す光反射性樹脂被覆金属板を製造した。図中1は、光反射性白色樹脂皮膜、2は化成皮膜、3は金属板である。
【0023】
得られた耐固着性、加工性に優れた光反射性樹脂被覆金属板について下記の試験方法にて性能試験を行なった。
【0024】
(光反射性)
全反射率はスガ試験機社製多光源分光測色計MSC−IS−2DH(積分球使用、拡散光照明8°方向受光)を用い、波長550nmでの全反射率(正反射成分を含む)を
BaSO白板を標準板とした時の百分率で表した。なお、液晶反射板として用いるため、全反射率が90%以上であることが適しており、90%以上を使用可能レベルとした。
【0025】
(曲げ加工性)
曲げ加工性は評価面を外側にして180度5T曲げを行い、樹脂皮膜層の割れを目視で観察し、○:塗膜の割れなし、○△:小さな塗膜の割れ、△:大きな割れがあるが使用可能、×:大きな塗膜割れ多数あり使用不可、の基準で評価した。
更に、割れ観察後、曲げ部にセロハンテープを密着させ、テープを急激に剥離した際の塗膜の剥れ具合を観察し、○:剥離なし、△:剥離少なく使用可能、×:剥離多く使用不可の基準で評価した。
【0026】
(耐固着性)
耐固着性は、作成した各サンプル板と市販の白色PETフィルムとを重ね合わせ、100g/cmの荷重にて、140℃乃至は160℃に設定した精密恒温器DH62(ヤマト科学株式会社製)にて2時間保温した後、水平に引っ張ることで行ない、◎:160℃で固着なし、○:160℃では固着するが140℃では固着しない、△:140℃でわずかに固着する、×:140℃で非常に固着し剥離困難なため使用不可、の基準で評価した。
【0027】
得られた性能試験結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示される結果から明らかなように、本発明例1〜15は光反射性、曲げ加工性、耐固着性のいずれも良好である。
【0030】
一方、比較例であるNo.16〜19は、光反射性、曲げ加工性、耐固着性のいずれかが劣り、反射板用光反射性樹脂被覆金属板としては不適当である。すなわち、No.16は、最外層の皮膜のガラス転移温度が低いため耐固着性が劣る。No.17は、膜厚が小さいため光反射性が劣る。No.18は、膜厚が大きいため曲げ加工性が劣る。No.19は、最外層の皮膜のガラス転移温度が高いため曲げ加工性が劣る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の光反射性樹脂被覆金属板が用いられる産業用液晶モニターを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の耐固着性、加工性に優れた光反射性樹脂被覆金属板を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 冷陰極ランプ
2 ランプリフレクター
3 導光板
4 白色反射フィルム
5 フレーム
6 光反射性白色樹脂皮膜
7 化成皮膜
8 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に化成皮膜を有する金属板の少なくとも一方の面の化成皮膜上に、二酸化チタンを含有し、少なくとも最外層の皮膜のガラス転移温度(Tg)が20℃〜150℃である皮膜厚30μm〜150μmの白色樹脂皮膜を施したことを特徴とする、白色反射フィルムに対する耐固着性、および加工性に優れた白色反射フィルムと組み合わせて使用される光反射性樹脂被覆金属板。
【請求項2】
前記白色樹脂皮膜の表面粗さ(Ra)が0.3〜2.0μmである請求項1に記載の耐固着性、加工性に優れた白色反射フィルムと組み合わせて使用される光反射性樹脂被覆金属板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−98869(P2007−98869A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294319(P2005−294319)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】