説明

光反応性重合体およびこの製造方法

【課題】光反応性重合体およびこの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、より迅速な光反応速度および優れた配向性を示す光反応性重合体、この製造方法およびこれを含む配向膜に関する。前記光反応性重合体は、アゾ系官能基が含まれている特定の繰り返し単位を全体の重合体中に50モル%以上の含量で含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より迅速な光反応速度および優れた配向性を示す光反応性重合体、この製造方法およびこれを含む配向膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは軽くて電力消耗が少ないという長所を有しており、ブラウン管を代替できる最も競争力のあるディスプレイとして登場している。特に、薄膜トランジスタによって駆動される薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)は、個々の画素をそれぞれ別々に駆動させるために液晶の応答速度に非常に優れ高画質の動画像を実現することができるので、現在ノートパソコン、壁掛けTVなどにその応用範囲を拡張しつつある。
【0003】
このようなTFT-LCDにおいて液晶が光スイッチとして使われるためには、ディスプレイセルの最も内側に薄膜トランジスタが形成された層上に液晶が一定方向に初期配向されなければならず、そのために液晶配向膜を用いている。
【0004】
このような液晶配向のために、ポリイミドなどの耐熱性高分子を透明ガラスの上に塗布して高分子配向膜を成膜し、ナイロン、レイヨンなどのラビング布を巻回した回転ローラーを高速回転させつつ配向膜をこすって配向させるラビング工程(rubbing process)が適用されている。
【0005】
しかしながら、ラビング工程は、ラビングの際に液晶配向剤の表面に機械的な傷つきを生じさせたり、高い静電気を発生させたりするため、薄膜トランジスタが破壊される虞がある。なお、ラビング布で発生する微細なファイバなどにより不良が発生し、これは、生産歩留まりの向上を妨げる障害になる。
【0006】
このようなラビング工程の問題点を克服して生産的な側面で革新を引き起こすために新たに講じられた液晶配向方式が、紫外線(UV)などの偏光による液晶配向(以下、「光配向」と称する。)である。
【0007】
光配向とは、線偏光したUVによって所定の光反応性高分子に結合された感光性基が光反応を起こし、この過程で高分子の主鎖が一定方向に配列することによって液晶が配向される光重合型液晶配向膜を成膜するメカニズムを言う。
【0008】
このような光配向の代表例が、M.Schadtら(Jpn.J.Appl.Phys.,Vol 31,1992,2155(非特許文献1))、Dae S.Kangら(米国特許第5,464,669号(特許文献1))、Yuriy Reznikov(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.34,1995,L1000(非特許文献2)が発表した光重合による光配向である。上述した特許および論文において使用された光配向重合体は、主としてPVCN(poly(vinyl cinnamate))またはPVMC(poly(vinyl methoxycinnamate))などのポリシンナマート系ポリマーである。これを光配向させる場合、照射されたUVによってシンナマートの二重結合が[2+2]環状付加([2+2]cycloaddition)反応を起こしてシクロブタン(cyclobutane)が形成され、これにより異方性が形成されて液晶分子を1方向に配列させて液晶の配向が誘導されるのである。
【0009】
しかしながら、上述した従来の光配向重合体は高分子主鎖の熱的安定性に劣っているため、配向膜の配向安定性または熱的安定性を低下させたり、液晶配向性が十分に得られなくなるなどの欠点があった。例えば、アクリル系主鎖を有する重合体の場合、低い熱的安定性によって配向膜の安定性が格段に低下してしまうという欠点があり、感光性基が主鎖に縛られる場合、配向膜に照射される偏光に速やかに反応し得ない結果、液晶配向性または配向速度が低下してしまうという欠点があった。このように、液晶配向性または配向速度が低下する場合、工程効率が落ちたり、液晶表示素子の液晶配向が不十分であるため二色比が小さく、しかも、コントラストが劣化する虞がある。
【0010】
一方、Bull.Korean Chem.Soc.2002,Vol.23,957(非特許文献3)には、繰り返し単位の一部としてアゾ基付き繰り返し単位を含む光反応性重合体が提案されている。ところが、このような光反応性重合体も、配向性が不十分であるだけではなく、光反応速度が遅くて工程効率が落ちたり、液晶表示素子のコントラストが劣化したりするなどの問題が依然として発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,464,669号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.,Vol 31,1992,2155
【非特許文献2】Jpn.J.Appl.Phys.Vol.34,1995,L1000
【非特許文献3】Bull.Korean Chem.Soc.2002,Vol.23,957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、より迅速な光反応速度および優れた配向性を示す光反応性重合体およびこの製造方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の目的は、前記光反応性重合体を含んで液晶表示素子などに好適に含まれ得る配向膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記の一般式3または4の繰り返し単位を全体の重合体中に50モル%以上の含量で含む光反応性重合体を提供する:
【0016】
【化1】

【0017】
式中、それぞれ独立して、nは50〜5000であり、pは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4のうちの少なくとも一つは下記の一般式1a、1bおよび1cよりなる群から選ばれたラジカルであり、残部は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素およびボロンの中から選ばれた少なくとも一種以上を含む極性官能基よりなる群から選ばれ、前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基ではない場合、R1とR2、またはR3とR4が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、R1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一種と連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成することができ、
【0018】
【化2】

【0019】
式中、それぞれ独立して、n1、p1、r1およびm1は0〜4の整数であり、n2、p2、r2およびm2は0〜5の整数であり、Aは、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、カルボキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン、または単純結合であり、Bは、酸素、硫黄、−NH−、または単純結合であり、R9は、単純結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニレン、置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン、または、置換もしくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレンであり、R10およびR11は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ、または、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリールである。
【0020】
また、本発明は、第10族の遷移金属を含むプレ触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、一般式1のモノマーを付加重合して一般式3の繰り返し単位を形成するステップを含む請求項1に記載の光反応性重合体の製造方法を提供する:
【0021】
【化3】

【0022】
式中、p、R1、R2、R3およびR4は、一般式3における定義の通りである。
【0023】
さらに、本発明は、第4族、第6族または第8族の遷移金属を含むプレ触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、一般式1のモノマーを開環重合して一般式4の繰り返し単位を形成するステップを含む前記光反応性重合体の製造方法を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、前記光反応性重合体を含む配向膜を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、前記配向膜と、配向膜上の液晶層と、を含む液晶位相差フィルムを提供する。
【0026】
さらに、本発明は、前記配向膜を含む表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明による光反応性重合体は、ガラス転移温度が高いノルボルネン系繰り返し単位を主な繰り返し単位として含むことにより、優れた熱的安定性を示すことができる。また、前記光反応性重合体は、特定のアゾ系光反応基が含まれているノルボルネン系繰り返し単位を相対的に高い含量で含むことにより、大幅に向上した光反応速度を示すだけではなく、優れた配向性および光の利用効率を示すことが確認された。
【0028】
これにより、前記光反応性重合体を用いて優れた特性を有する配向膜および液晶位相差フィルムなどを提供することが可能となり、しかも、工程効率を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に従い得られた重合体の1H NMRデータである。
【図2】比較例1に従い得られた重合体の1H NMRデータである。
【図3】試験例3において測定された異方性およびUV反応性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態による光反応性重合体、この製造方法および前記光反応性重合体を含む配向膜などについて具体的に説明する。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、下記の一般式3または4の繰り返し単位を全体の重合体中に50モル%以上の含量で含む光反応性重合体が提供される:
【0032】
【化4】

【0033】
式中、それぞれ独立して、nは50〜5000であり、pは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4のうちの少なくとも一つは下記の一般式1a、1bおよび1cよりなる群から選ばれたラジカルであり、残部は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素およびボロンの中から選ばれた少なくとも一種以上を含む極性官能基よりなる群から選ばれ、前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基ではない場合、R1とR2、またはR3とR4が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、R1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一種と連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成することができ、
【0034】
【化5】

【0035】
式中、それぞれ独立して、n1、p1、r1およびm1は0〜4の整数であり、n2、p2、r2およびm2は0〜5の整数であり、Aは、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、カルボキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン、または単純結合であり、Bは、酸素、硫黄、−NH−、または単純結合であり、R9は、単純結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニレン、置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン、または、置換もしくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレンであり、R10およびR11は、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ、または、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリールである。
【0036】
このような光反応性重合体は、一般式1a〜1cの特定のアゾ系光反応基が結合された一般式3または4のノルボルネン系繰り返し単位を主な繰り返し単位として含む。このようなノルボルネン系繰り返し単位は構造的に堅固であり、これを含む光反応性重合体は、ガラス転移温度(Tg)が約300℃以上、好ましくは、約300〜350℃と比較的に高いため、既知の光反応性重合体などに比べて優れた熱的安定性を示すことができる。また、前記光反応性重合体は、前記ノルボルネン系繰り返し単位に光反応基が結合された構造的特性から、光反応基が高分子主鎖内において比較的に自由に移動可能となるため、優れた配向性を示すことができる。
【0037】
さらに、後述する試験例などによっても裏付けられるように、本発明者らの実験結果、前記光反応性重合体は、特定のアゾ系光反応基が結合されることにより、既存よりも非常に迅速な光反応速度および配向速度を示すことが確認された。前記アゾ系光反応基は、アゾ基(−N=N−)が偏光を吸収して片側方向にトランス−シス異性質化反応(trans−cis isomerization)を引き起こし、これにより、液晶配向を誘導する役割を果たす。このような光反応および配向機序は、他の光反応基に比べて迅速な光反応速度および配向速度を得させることが予測される。
【0038】
特に、前記一実施形態の光反応性重合体は、前記アゾ系光反応基が結合された一般式3または4の繰り返し単位が約50モル%以上、具体的に、約50〜100モル%、より具体的に、約60〜100モル%あるいは約70〜100モル%の高い含量で含まれ得る。これにより、アゾ系光反応基による迅速な光反応速度が最大限に発現可能となる。これに対し、以下の比較例などによっても裏付けられるように、前記アゾ系光反応基付き繰り返し単位が約50モル%以下、約40モル%以下、例えば、約20モル%の低い含量で含まれている重合体の場合、前記アゾ系光反応基による迅速な光反応速度が実質的に実現され得ないことが判明された。これは、低い含量範囲により上述したアゾ系光反応基の光反応機序、例えば、トランス−シス異性質化反応(trans−cis isomerization)が一部起こるとはいえ、配向膜に含まれているアゾ系光反応基の低い含量によって液晶配向が正常に発現できないか、あるいは、無造作(randomly)に散在している他の繰り返し単位に影響されて所望の方向への配向がなされないことに起因すると予測される。
【0039】
これとは異なり、一実施形態の光反応性重合体は、非常に迅速な光反応速度および配向速度とともに、優れた配向性および熱安定性などを示すことができるので、液晶表示素子の配向膜などに非常に好適に適用可能であり、迅速な光反応速度に起因して工程効率をも格段に向上させることができる。
【0040】
以下、前記光反応性重合体について具体的に説明する。
【0041】
前記光反応性重合体は、前記一般式3および4の繰り返し単位よりなる群から選ばれた繰り返し単位のみを100モル%の含量で含む重合体からなってもよいが、前記一般式3および4の繰り返し単位による光反応性重合体の効果を損なわない範囲内において他の繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。例えば、前記光反応性重合体は、下記の一般式2aまたは2bの繰り返し単位をさらに含む共重合体からなってもよく、ノルボルネン系に属する前記一般式2aまたは2bの繰り返し単位をさらに含むことにより、優れた熱的安定性を示すことができる:
【0042】
【化6】

【0043】
式中、それぞれ独立して、mは50〜5000であり、q’は0〜4の整数であり、R1’、R2’、R3’およびR4’は、それぞれ独立して、一般式2cのラジカル;水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素およびボロンの中から選ばれた少なくとも一種以上を含む極性官能基よりなる群から選ばれ、前記R1’〜R4’が水素;ハロゲン;または極性官能基ではない場合、R1’とR2’、またはR3’とR4’が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、R1’またはR2’がR3’およびR4’のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成することができ、
【0044】
【化7】

【0045】
式中、lは0または1であり、DおよびD’は、それぞれ独立して、単純結合、窒素、酸素、硫黄、置換もしくは非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレン;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレンオキシド;および置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレンオキシドよりなる群から選ばれ、XおよびYは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;シアノ;および置換もしくは非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキルよりなる群から選ばれ、R10’〜R14’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;第14族、第15族または第16族のヘテロ元素を含む炭素数6〜40のヘテロアリール、および置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアルコキシアリールよりなる群から選ばれる。
【0046】
このような一般式2aまたは2bの繰り返し単位は、通常のノルボルネン系繰り返し単位からなってもよいが、前記一般式2cのシンナマート系光反応基付き光反応性繰り返し単位よりなってもよい。好ましくは、前記R1’、R2’、R3’およびR4’の少なくとも一つは一般式2cのラジカルからなって前記一般式2aまたは2bの繰り返し単位が光反応性繰り返し単位からなってもよい。
【0047】
前記光反応性重合体がこのようなシンナマート系光反応性繰り返し単位をさらに含むことにより、より優れた光反応性および配向性を示すことができる。特に、アゾ系光反応基は可視光線に一層近い長波長領域の光に対し光反応性を示すのに対し、シンナマート系光反応基は相対的に短波長UV領域の光に対し優れた光反応性を示す傾向にある。このため、前記光反応性重合体が一般式3または4の繰り返し単位と一緒にシンナマート系の一般式2aまたは2bの繰り返し単位をさらに含むことにより、通常の光源を使用したときの光の利用効率を一層高めることができ、一層優れた光反応性および配向性を示すことができる。
【0048】
前記一般式2aまたは2bの繰り返し単位は、前記一般式3または4の含量を除く含量、例えば、約0モル%超え50モル%以下の含量で含まれてもよく、より具体的に、約0モル%超え40モル%以下、あるいは、約0モル%超え20モル%以下の含量で含まれても良い。また、前記一般式2aまたは2bの繰り返し単位の少なくとも一部が一般式2cの光反応基を含む場合、このような繰り返し単位による光反応性が実現できるように、約10〜50モル%、より具体的に、約20〜50モル%の含量で含まれてもよい。
【0049】
一方、上述した光反応性重合体を形成する一般式3または4の繰り返し単位や一般式2aまたは2bの繰り返し単位において、前記極性官能基は、下記に示す官能基よりなる群から選ばれてもよく、これらに加えて、酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素またはボロンよりなる群から選ばれた一つ以上を含む様々な極性官能基からなってもよい:
−R5OR6、−OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)OR6、−R5C(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)r−OR6、−(OR5r−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6−、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2
【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
【化13】

【0056】
前記官能基において、それぞれ独立して、rは1〜10の整数であり、R5は、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニレン;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニレン;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシレン;または、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシレンであり、
6、R7およびR8は、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;および置換もしくは非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシよりなる群から選ばれる。
【0057】
また、前記光反応性重合体を形成する一般式3または4の繰り返し単位や一般式2aまたは2bの繰り返し単位は、約50〜5,000の重合度、好ましくは、約100〜4,000の重合度、より好ましくは、約1,000〜3,000の重合度を有できる。これらの繰り返し単位が上述した範囲の重合度を有することにより、前記光反応性重合体が配向膜の成膜のための配向剤組成物を適切に含んで優れたコート性を示すことができる。
【0058】
一方、上述した光反応性重合体の構造において、各置換基の定義を具体的に説明すれば、下記の通りである:
まず、「アルキル」とは、1〜20個、好ましくは、1〜10個、より好ましくは、1〜6個の炭素原子の線状または分枝状の飽和1価炭化水素部位をいう。アルキル基は、非置換のものだけではなく、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ヨードメチル、ブロモメチルなどが挙げられる。
【0059】
「アルケニル」とは、1以上の炭素−炭素の二重結合を含む2〜20個、好ましくは、2〜10個、より好ましくは、2〜6個の炭素原子の線状または分枝状の1価炭化水素部位をいう。アルケニル基は、炭素−炭素の二重結合を含む炭素原子を通じて、または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルケニル基は、非置換のものだけではなく、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。アルケニル基の例としては、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、ペンテニル、5−ヘキセニル、ドデセニルなどが挙げられる。
【0060】
「シクロアルキル」とは、3〜12個の環炭素の飽和または不飽和の非芳香族1価モノシクリック、ビシクリックまたはトリシクリック炭化水素部位のことをいい、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、アダマンチル、ノルボルニル(すなわち、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エニル)などが挙げられる。
【0061】
「アリール」とは、6〜40個、好ましくは、6〜12個の環原子を有する1価モノシクリック、ビシクリックまたはトリシクリック芳香族炭化水素部位のことをいい、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。アリール基の例としては、フェニル、ナフタレニルおよびフルオレニルなどが挙げられる。
【0062】
「アルコキシアリール」とは、前記定義されたアリール基の水素原子1以上がアルコキシ基で置換されているものを言う。アルコキシアリール基の例としては、メトキシフェニル、エトキシフェニル、プロポキシフェニル、ブトキシフェニル、ペントキシフェニル、ヘキソオキシフェニル、ヘプトキシ、オクトキシ、ナノキシ、メトキシビフェニル、メトキシナフタレニル、メトキシフルオレニルあるいはメトキシアントラセニルなどが挙げられる。
【0063】
「アラルキル」とは、前記定義されたアルキル基の水素原子1以上がアリール基で置換されているものをいい、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。例えば、ベンジル、ベンズヒドリルおよびトリチルなどが挙げられる。
【0064】
「アルキニル」とは、1以上の炭素−炭素の三重結合を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは、2〜10個、より好ましくは、2〜6個の線状または分枝状の1価炭化水素部位をいう。アルキニル基は、炭素−炭素の三重結合を含む炭素原子を通じて、または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルキニル基は、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。例えば、エチニルおよびプロピニルなどが挙げられる。
【0065】
「アルキレン」は、1〜20個、好ましくは、1〜10個、より好ましくは、1〜6個の炭素原子の線状または分枝状の飽和2価炭化水素部位をいう。アルキレン基は、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンなどが挙げられる。
【0066】
「アルケニレン」は、1以上の炭素−炭素の二重結合を含む2〜20個、好ましくは、2〜10個、より好ましくは、2〜6個の炭素原子の線状または分枝状の2価炭化水素部位をいう。アルケニレン基は、炭素−炭素の二重結合を含む炭素原子を通じて、および/または飽和炭素原子を通じて結合され得る。アルケニレン基は、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。
【0067】
「シクロアルキレン」とは、3〜12個の環炭素の飽和または不飽和の非芳香族2価モノシクリック、ビシクリックまたはトリシクリック炭化水素部位のことをいい、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレンなどが挙げられる。
【0068】
「アリーレン」とは、6〜20個、好ましくは、6〜12個の環原子を有する2価モノシクリック、ビシクリックまたはトリシクリック芳香族炭化水素部位のことをいい、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。芳香族部分は、炭素原子のみを含む。アリーレン基の例としては、フェニレンなどが挙げられる。
【0069】
「アラルキレン」とは、前記定義されたアルキル基の水素原子1以上がアリール基で置換されている2価部位のことをいい、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。アラルキレン基の例としては、ベンジレンなどが挙げられる。
【0070】
「アルキニレン」とは、1以上の炭素−炭素の三重結合を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは、2〜10個、より好ましくは、2〜6個の線状または分枝状の2価炭化水素部位をいう。アルキニレン基は、炭素−炭素の三重結合を含む炭素原子を通じて、または飽和炭素原子を通じて結合され得る。アルキニレン基は、後述する所定の置換基によってさらに置換されたものも網羅する。アルキニレン基の例としては、エチニレンまたはプロピニレンなどが挙げられる。
【0071】
上述した置換基が「置換もしくは非置換の」とは、これらの各置換基そのものだけではなく、所定の置換基によってさらに置換されることも包括されることを意味する。この明細書において、各置換基によってさらに置換可能な置換基の例としては、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルまたはシロキシなどが挙げられる。
【0072】
上述した光反応性重合体は、約150〜450nmの波長を有する偏光の露光下で光反応性を示すことができ、例えば、約200〜400nmの波長、より具体的に、約300〜390nmの波長を有する偏光の露光下で光反応性を示すことができる。一般的に、短波長のUV領域の偏光に対しのみ光反応性を示す他の種類の光反応基などとは異なり、前記一般式3または4の繰り返し単位に含まれている光反応基、すなわち、一般式1a〜1cのアゾ系官能基は可視光線領域に属するか、あるいは、これに近い長波長の偏光に対しも優れた光反応性および迅速な光反応速度を示すことができる。これにより、通常のi線などの光源を用いた前記光反応性重合体およびこれを含む配向膜は、優れた光の利用効率を示すことができる。これは、前記i線などの通常の光源の場合、可視光線に属するか、あるいは、これに近い波長の光もまた相当部分含めて発生させるためである。すなわち、前記光反応性重合体を用いる場合、このような光源から発せられる可視光線に属するか、あるいは、これに近い波長の光も併用して光反応および配向を行うことから、前記光の利用効率を一層高めることができる。ひいては、前記光反応性重合体がシンナマート系光反応基を有する一般式2aまたは2bの繰り返し単位をも含むことにより、光源から発せられる一層広い領域の光により光反応および配向が行われるので、前記光の利用効率を一層高めることができる。
【0073】
結果的に、前記光反応性重合体は、約150〜450nmの波長を有する偏光光を露光したときに、優れた光反応性および迅速な光反応速度を示すことができる。より具体的に、前記光反応性重合体に約150〜450nmの波長を有する偏光光を約50〜900mJ/cm2の強さで露光したとき、好ましくは、約50〜500mJ/cm2の強さで露光したとき、前記一般式1a〜1cに含まれているC=C結合のストレッチングモードの強さが初期値の半値になるまでの時間(t1/2)が約1.5分以下、より具体的に、約1〜1.5分となるといった迅速な光反応速度を示すことができる。
【0074】
一方、本発明の他の実施形態によれば、上述した光反応性重合体の製造方法が提供される。この製造方法の一実施形態は、第10族の遷移金属を含むプレ触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、一般式1のモノマーを付加重合して一般式3の繰り返し単位を形成するステップを含む:
【0075】
【化14】

【0076】
式中、p、R1、R2、R3およびR4は、一般式3における定義の通りである。
【0077】
このとき、前記重合反応は、10℃〜200℃の温度において行われ得る。前記反応温度が10℃よりも低い場合には重合活性が低下する虞があり、200℃よりも高い場合には触媒が分解される虞があるために好ましくない。
【0078】
また、前記助触媒は、前記プレ触媒の金属と弱く配位結合できるルイス塩基を提供する第1の助触媒;および第15族電子供与体リガンドを含む化合物を提供する第2の助触媒よりなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。好ましくは、前記助触媒は、前記ルイス塩基を提供する第1の助触媒、および選択的に中性の第15族電子供与体リガンドを含む化合物第2の助触媒を含む触媒混合物からなってもよい。
【0079】
このとき、前記触媒混合物は、前記プレ触媒1モルに対し前記第1の助触媒を1〜1000モルで含むことができ、前記第2の助触媒を1〜1000モルで含むことができる。第1の助触媒または第2の助触媒の含量が低過ぎる場合、触媒活性化が正常に行われない虞があり、逆に、第1の助触媒または第2の助触媒の含量が高過ぎる場合には、むしろ触媒活性が低下する虞がある。
【0080】
また、前記第10族遷移金属を含むプレ触媒としては、ルイス塩基を提供する第1の助触媒によって容易に離れ、中心遷移金属が触媒活性種に変わるように、ルイス酸−塩基反応に容易にあずかって中心金属から離れるルイス塩基官能基を有している化合物を用いることができる。例えば、[(Allyl)Pd(Cl)]2(Allylpalladiumchloride dimer)、(CH3CO22Pd[Palladium(II)acetate]、[CH3COCH=C(O−)CH32Pd[Palladi
um(II)acetylacetonate]、NiBr(NP(CH334、[P
dCl(NB)O(CH3)]2などがある。
【0081】
さらに、前記プレ触媒の金属と弱く配位結合できるルイス塩基を提供する第1の助触媒としては、ルイス塩基と容易に反応して遷移金属の空孔を形成し、また、このようにして生成された遷移金属を安定化させるために遷移金属化合物と弱く配位結合する化合物あるいはこれを提供する化合物が使用され得る。例えば、B(C653などのボランまたはジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)などのボラート、メチルアルミノキサン(MAO)またはAl(C253などのアルキルアルミニウム、あるいはAgSbF6などの遷移金属ハロゲン化物などがある。
【0082】
また、前記中性の第15族電子供与体リガンドを含む化合物を提供する第2の助触媒としては、アルキルホスフィン、シクロアルキルホスフィンまたはフェニルホスフィンなどが用いることができる。。
【0083】
さらに、前記第1の助触媒および第2の助触媒を別々に使用してもよいが、これらの2種類の助触媒を一つの塩にして触媒を活性化させる化合物として使用してもよい。例えば、アルキルホスフィンとボランまたはボラート化合物をイオン結合させて得られる化合物などが用いることができる。。
【0084】
上述した方法により、一般式3の繰り返し単位およびこれを含む一実施形態の光反応性重合体を製造することができる。また、このような製造方法により、一般式2aの繰り返し単位も製造することができ、これにより、一般式3および/または2aの繰り返し単位を含む共重合体の形態の光反応性重合体を形成することもできる。
【0085】
一方、光反応性重合体が一般式4の繰り返し単位を含むか、あるいは、選択的に一般式2bの繰り返し単位を含む場合、前記製造方法の他の実施形態により製造され得る。このような他の実施形態による製造方法は、第4族、第6族または第8族の遷移金属を含むプレ触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、前記一般式1のモノマーを開環重合して一般式4の繰り返し単位を形成するステップを含む。
【0086】
前記開環重合ステップにおいては、前記一般式1のモノマーに含まれているノルボルネン環中の二重結合に水素が添加されれば、開環が行われ、これと同時に重合が行われて前記一般式4の繰り返し単位およびこれを含む光反応性重合体が製造され得る。なお、このような製造方法は、一般式2bの繰り返し単位およびこれを含む光反応性重合体の製造にも適用可能である。
【0087】
前記開環重合は、第4族(例えば、Ti、Zr、Hf)、第6族(例えば、Mo、W)または第8族(例えば、Ru、Os)の遷移金属を含むプレ触媒、前記プレ触媒の金属と弱く配位結合できるルイス塩基を提供する助触媒、および選択的に前記プレ触媒金属の活性を増進できる中性の第15族および第16族の活性化剤などからなる触媒混合物の存在下で行うことができる。また、このような触媒混合物の存在下で、分子量の大きさを調節できる1−アルケン、2−アルケンなど線状アルケン(linear alkene)を単量体に対し1〜100モル%添加して、10℃〜200℃の温度において重合を行うことができ、第4族(例えば、Ti、Zr)あるいは第8族〜第10族(例えば、Ru、Ni、Pd)の遷移金属を含む触媒を単量体に対し1〜30重量%を添加して10℃〜250℃の温度においてノルボルネン環中の二重結合に水素添加する反応を行うことができる。
【0088】
前記反応温度が低過ぎると、重合活性が低下してしまうという問題が生じ、前記反応温度が高過ぎると、触媒が分解されてしまうという問題が生じるために好ましくない。なお、前記水素添加反応温度が低過ぎると、水素添加反応の活性が低下してしまうという問題が生じ、前記水素添加反応温度が高過ぎると、触媒が分解されてしまうという問題が生じるために好ましくない。
【0089】
前記触媒混合物は、第4族(例えば、Ti、Zr、Hf)、第6族(例えば、Mo、W)、または第8族(例えば、Ru、Os)の遷移金属を含むプレ触媒1モルに対し前記プレ触媒の金属と弱く配位結合できるルイス塩基を提供する助触媒を1〜100,000モル、および選択的にプレ触媒金属の活性を増進できる中性の第15族および第16族の元素を含む活性化剤をプレ触媒1モルに対し1〜100モル含む。
【0090】
前記助触媒の含量が1モルよりも小さい場合には触媒活性化がなされないという問題があり、前記助触媒の含量が100,000モルよりも大きい場合には触媒活性が低くなるという問題があるために好ましくない。前記活性化剤はプレ触媒の種類によっては必要でないこともある。活性化剤の含量が1モルよりも小さい場合には触媒活性化がなされないという問題があり、100モルよりも大きい場合には分子量が低くなるという問題があるために好ましくない。
【0091】
水素添加反応に用いられる第4族(例えば、Ti、Zr)あるいは第8族〜第10族(例えば、Ru、Ni、Pd)の遷移金属を含む触媒の含量がモノマーに対し1重量%よりも小さい場合には水素添加がよくなされないという問題があり、30重量%よりも大きい場合にはポリマーが変色してしまうという問題があるために好ましくない。
【0092】
前記第4族(例えば、Ti、Zr、Hf)、第6族(例えば、Mo、W)、第8族(例えば、Ru、Os)の遷移金属を含むプレ触媒はルイス酸を提供する助触媒によって容易に離れ、中心遷移金属が触媒活性種に変わるように、ルイス酸-塩基反応に容易にあずかって中心金属から離れる官能基を有する TiCl4、WCl6、MoCl5あるいはRuCl3やZrCl4などの遷移金属を意味する。
【0093】
また、前記プレ触媒の金属と弱く配位結合できるルイス塩基を提供する助触媒は、B(C653などのボランまたはホウ酸塩(ボラート)、メチルアルミノキサン(MAO)またはAl(C253、Al(CH3)Cl2などのアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルミニウムハロゲン化物を用いることができる。あるいは、アルミニウムの代わりにリチウム(lithium)、マグネシウム(magnesium)、ゲルマニウム(germanium)、鉛、亜鉛、スズ、ケイ素などの置換体を用いることができる。このようにルイス塩基と容易に反応して遷移金属の空孔を形成し、また、このように生成された遷移金属を安定化させるために遷移金属化合物と弱く配位結合する化合物あるいはこれを提供する化合物である。
【0094】
重合の活性化剤を添加することができるが、プレ触媒の種類によっては必要でないこともある。前記プレ触媒金属の活性を増進できる中性の第15族および第16族の元素を含む活性化剤としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、エチルメルカプタン(ethyl mercaptan)、2-クロロエタノール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン(pyridine)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、ベンゾイルパーオキシド(benzoyl peroxide)、t-ブチルパーオキシド(t-butyl peroxide)などがある。
【0095】
水素添加反応に用いられる第4族(例えば、Ti、Zr)あるいは第8族〜第10族(例えば、Ru、Ni、Pd)の遷移金属を含む触媒は溶媒と直ちに混合され得る均一な(homogeneous)形態であるか、前記金属触媒錯化合物を微粒子支持体上に担持させたものがある。前記微粒子支持体は、シリカ、チタニア、シリカ/クロミア、シリカ/クロミア/チタニア、シリカ/アルミナ、アルミニウムホスファートゲル、シラン化したシリカ、シリカヒドロゲル、モンモリロナイト粘土またはゼオライトであることが好ましい。
【0096】
上述した方法により、一般式4の繰り返し単位およびこれを含む一実施形態の光反応性重合体を製造することができる。また、このような製造方法により、一般式2bの繰り返し単位をも製造することができ、これにより、一般式4および/または2bの繰り返し単位を含む共重合体の形態の光反応性重合体を形成することもできる。
【0097】
一方、本発明のさらに他の実施形態によれば、上述した光反応性重合体を含む配向膜が提供される。このような配向膜には、薄膜状に加えて、フィルム状の配向膜(すなわち、配向フィルム)も含まれ得る。本発明のさらに他の実施形態によれば、このような配向膜と、配向膜上の液晶層と、を含む液晶位相差フィルムを提供する。
【0098】
かような配向膜および液晶位相差フィルムは、上述した光反応性重合体を光配向重合体として含める以外は、当業界における周知の構成成分および製造方法を用いて製造することができる。
【0099】
例えば、前記配向膜は、前記光反応性重合体、バインダー樹脂および光開始剤を混合し、有機溶媒に溶解させてコート組成物を得た後、かようなコート組成物を基材上にコートし、UV硬化を行うことで形成することができる。
【0100】
このとき、前記バインダー樹脂としては、アクリラート系樹脂を用いることができ、より具体的に、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌラートなどを用いることができる。
【0101】
また、前記光開始剤としては、配向膜に使用可能であると知られている通常の光開始剤を特に制限なしに用いることができ、例えば、商品名Irgacure 907、819と知られている光開始剤を用いることができる。
【0102】
さらに、前記有機溶媒としては、トルエン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、プロピレングリコールメチルエーテルアセタートなどを用いることができる。上述した光反応性ノルボルネン系共重合体は、様々な有機溶媒に対して優れた溶解度を示すため、これらの他にも様々な有機溶媒が特に制限なしに使用可能である。
【0103】
前記コート組成物において、前記光反応性重合体、バインダー樹脂および光開始剤を含む固形分の濃度は1〜15重量%であってもよく、前記配向膜をフィルム状に鋳造(キャスティング)するためには、10〜15重量%であることが好ましく、薄膜状に成膜するためには、1〜5重量%であることが好ましい。
【0104】
このようにして形成された配向膜は基材上に成膜されてもよく、液晶の下に成膜されてこれを配向させる作用をすることができる。このとき、前記基材としては、環状重合体を含む基材、アクリル重合体を含む基材またはセルロース重合体を含む基材などを用いることができ、前記コート組成物をバーコート、スピンコート、ブレードコートなどの様々な方法により基材上にコートした後、UV硬化を施して配向膜を成膜することができる。
【0105】
前記UV硬化によって光配向が起こり得るが、このステップにおいては、波長範囲が約150〜450nm領域の偏光したUVを照射して配向処理を施すことができる。このとき、露光の強さは、約50mJ/cm2〜10J/cm2のエネルギー、好ましくは、約500mJ/cm2〜5J/cm2のエネルギーであってもよい。
【0106】
前記UVとして、(1)石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコートされた基板を用いた偏光装置、(2)微細にアルミニウムまたは金属ワイヤーが蒸着された偏光板、または(3)石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射させる方法により偏光処理されたUVよりなる群から選ばれた偏光UVを適用することができる。
【0107】
前記UVを照射するときの基板温度は常温であることが好ましい。ところが、場合によっては、100℃以下の温度範囲内において加熱された状態でUVを照射することもできる。上記の一連の過程を経て得られる最終塗膜の膜厚は、30〜1000nmであることが好ましい。
【0108】
上述した方法により配向膜を成膜し、その上に液晶層を形成して、通常の方法により液晶位相差フィルムを製造することができる。
【0109】
上述した配向膜または液晶位相差フィルムは、立体映像を実現するための光学フィルムまたは光学フィルターに適用することができる。
【0110】
このため、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記配向膜を含む表示素子が提供される。このような表示素子は、前記配向膜が液晶の配向のために含まれている液晶表示装置や、前記配向膜が立体映像を実現するための光学フィルムまたはフィルターなどに含まれている立体映像表示装置などであってもよい。但し、これらの表示素子の構成は、上述した光反応性重合体および配向膜を含む以外は、通常の素子の構成によるため、これについてのそれ以上の具体的な説明は省略する。
【0111】
以下、本発明の理解を深めるために好適な実施例を挙げる。しかし、下記のの実施例は単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明がこれらに限定されることはない。
【0112】
以下の実施例において、空気や水に敏感な化合物を取り扱う全作業はスタンダードシュレンク技術(standard Schlenk technique)またはドライボックス技術を用いて行った。核磁気共鳴(NMR)スペクトルはBruker 300スペクトロメータを使って得たし、この時、1H NMRは300 MHzにおいて、そして13C NMRは75MHzにおいてそれぞれ測定した。開環水素添加重合体の分子量と分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)を用いて測定し、このとき、ポリスチレン(polystyrene)サンプルを標準にした。
【0113】
トルエンはカリウム/ベンゾフェノン(potassium/benzophenone)で蒸留して精製し、ジクロロメタンはCaH2で蒸留精製した。
【0114】
<実施例1>:
【0115】
【化15】

【0116】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0117】
【化16】

【0118】
1.26g(3mmol)と、溶媒として精製済みトルエン3mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン7.76mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0119】
反応18時間後に、、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して重合体1.19gを得た(Mw=31,000、PDI=1.7、収率=94%)。実施例1の重合体の1H NMRデータを図1に示す。
【0120】

<実施例2>:
【0121】
【化17】

【0122】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0123】
【化18】

【0124】
3.0g(6.69mmol)と、溶媒として精製済みトルエン4mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1ml溶かしたPd(OAc)20.75mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン0.86mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)0.72mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0125】
反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して重合体2.55gを得た(Mw=56,000、PDI=1.9、収率=85%)。
【0126】
<実施例3>:
【0127】
【化19】

【0128】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0129】
【化20】

【0130】
0.628g(1.5mmol)および
【0131】
【化21】

【0132】
0.249g(1.5mmol)と、溶媒として精製済みトルエン3mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン7.76mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0133】
反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して共重合体0.75gを得た(Mw=29,000、PDI=2.1、収率=86%)。
【0134】

<実施例4>:
【0135】
【化22】

【0136】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0137】
【化23】

【0138】
1.46g(3mmol)と、溶媒として精製済みトルエン3mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン7.76mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0139】
反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して黄色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して共重合体0.88gを得た(Mw=61,000、PDI=2.6、収率=64%)。
【0140】

<実施例5>:
【0141】
【化24】

【0142】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0143】
【化25】

【0144】
1.2g(3mmol)と、溶媒として精製済みトルエン3mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン7.76mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0145】
反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して黄色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して共重合体1.06gを得た(Mw=47,000、PDI=3.5、収率=51%)。
【0146】
<実施例6>:5−ノルボルネン−2−メタノールの開環重合(ring opening methathesis polymerization)および水素添加反応(hydrogenation)
Ar雰囲気下で、250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに5−ノルボルネン−2−メタノール6.20g(50mmol)を入れた後、溶媒として精製済みトルエン34gを投入した。このフラスコを重合温度である80℃に維持した状態で、助触媒としてのトリエチルアルミニウム(triethylaluminum)11.4mg(1.0mmol)を先に投入した。次いで、タングステンヘキサクロリド(WCl8)およびエタノールが1:3の割合で混ざっている0.01M(mol/L)トルエン溶液1ml(WCl80.01mmol、エタノール0.03mmol)をフラスコに添加した。最後に、分子量調節剤としての1−オクテン0.84g(7.5mmol)をフラスコに添加した後、18時間かけて80℃で攪拌しつつ反応させた。反応終結後、重合液に重合停止剤としてのエチルビニルエーテル(ethyl vinyl ether)を少量滴下し、5分間攪拌させた。
【0147】
前記重合液を300mL高圧反応器に移送した後、トリエチルアルミニウム(TEA)0.06mlを添加した。次いで、グレースラネーニッケル(grace raney Nickel(slurry phase in water))0.50gを添加した後、水素圧力を80atmに維持しつつ2時間かけて150℃で攪拌しつつ反応させた。反応終結後、重合液をアセトンに滴下して沈殿させた後、これをろ過して70℃真空オーブンで15時間かけて乾燥させた。その結果、5−ノルボルネン−2−メタノールの開環水素添加重合体(ring−opened hydrogenated polymer)5.62gを得た(収率=90.6%、Mw=69,900、PDI=4.92)。
【0148】
<実施例7>:
【0149】
【化26】

【0150】
の開環水素添加重合体(ring−opened hydrogenated polymer)の合成
250mLの2口フラスコ(neck flask)に、前記実施例6に従い得られた5−ノルボルネン−2−メタノールの開環水素添加重合体(15g、0.121mol)、トリエチルアミン(アルドリッチ社製、61.2g、0.605mol)、THF50mlを入れた後、0℃の氷水浴において攪拌した。
【0151】
【化27】

【0152】
(32.5g、0.133mol)を60mlのTHFに溶かした後、付加フラスコ(additional flask)を使って徐々に仕込んだ。10分後に反応物を常温まで上げた後、18時間さらに攪拌した。エチルアセタートで溶液を薄め、分液漏斗に移した後、水およびNaHC03で数回洗浄した後、反応液をアセトンに滴下して沈殿を取り、これをろ過して70℃真空オーブンで15時間かけて乾燥した(収率:93%)。
【0153】
<実施例8>:
【0154】
【化28】

【0155】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0156】
【化29】

【0157】
0.674g(1.5mmol)および
【0158】
【化30】

【0159】
0.43g(1.5mmol)と、溶媒として精製済みトルエン3mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン7.76mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0160】
反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して薄い黄色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して共重合体0.91gを得た(Mw=92,000、PDI=2.96、収率=82%)。
【0161】
<比較例1>:
【0162】
【化31】

【0163】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに、モノマーとして
【0164】
【化32】

【0165】
0.251g(0.6mmol)および
【0166】
【化33】

【0167】
0.398g(2.4mmol)と、溶媒として精製済みトルエン3mlを投入した。このフラスコに、触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgおよびトリシクロヘキシルホスフィン7.76mgと、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを入れ、18時間かけて90℃で攪拌しつつ反応させた。
【0168】
反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗によりろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間かけて乾燥して共重合体0.53gを得た(Mw=26,000、PDI=1.88、収率=82%)。比較例1の重合体の1H NMRデータを図2に示す。
【0169】
<製造例1>:実施例1に従い得られた重合体を用いた配向膜の製造
前記実施例1に従い合成された
【0170】
【化34】

【0171】
モノマーを用いた光反応性重合体をc−ペンタノン(c−pentanone)溶媒に2重量%の濃度で溶解させ、厚さ80ミクロンのポリエチレンテレフタラート(商品名:SH71、韓国のSKC社製)基板上に、乾燥後の厚さが1000Åになるようにコート方法によりコートした。その後、80℃オーブンで3分間加熱してコート膜内部の溶媒を除去してコート膜を成膜した。
【0172】
露光は、200mW/cm2の強さの高圧水銀灯を光源として、Moxtek社製のワイヤー−グリッド(Wire−grid)ポラライザを使ってフィルムの進行方向と垂直に偏光したUVが出射されるようにしてコートされた膜に5秒間照射して配向を与えて配向膜を成膜した。
【0173】
その後、UV重合性シアノビフェニルアクリラート95.0重量%と、光開始剤としてのIRGACURE907(スイスのCiba−Geigy社製)5.0重量%とが混合された固形分を液晶溶液100重量部当たりの液晶の含量が25重量部になるようにトルエンに溶解させて重合可能な反応性液晶溶液を製造した。
【0174】
製造された液晶溶液をロールコート方法によって前記成膜された光配向膜の上に乾燥後の厚さが1μmになるようにコートした後、80℃で2分間乾燥して液晶分子が配向されるようにした。配向された液晶フィルムには200mW/cm2の強さの高圧水銀灯を光源とする非偏光UVを照射して液晶の配向状態を固定化させて位相差フィルムを製造した。
【0175】
前記製造された位相差フィルムに対する配向性は、偏光板間の光漏れを透過度(transmittance)として測定して比較し、定量的な位相差値はAxoscan(Axomatrix社製)を使って測定した。
【0176】
<比較製造例1>
実施例1において使った純粋な100%
【0177】
【化35】

【0178】
モノマーの重合体を用いた光反応性重合体の代わりに、モノマーとして
【0179】
【化36】

【0180】
=2:8(投与したモノマーのモル比)の共重合体を用いた以外は、製造例1の方法と同様にして配向膜を製造した。
【0181】
<試験例1>
[光反応性評価−FT−IRスペクトル]
配向膜の光反応性は、製造例1から比較製造例1に従い製造された液晶配向膜のFT−IRスペクトルを観察して露光(20mW/cm2の強さを有する水銀灯を用いる)することにより、重合体の前記一般式1a〜1c中のC=C結合のストレッチングモードの強さが初期値の半値になるまでの時間(t1/2)とエネルギーに換算した値(E1/2=20mW/cm2×t1/2)を基準に比較評価した。その結果を下記表1に示す。
【0182】
1/2を比較してみれば、製造例1の場合が比較製造例1より約1/2以上短縮されることが分かり、それにより、実施例の重合体を使用したときに卓越した液晶配向膜の配向速度が得られることが確認できた。
【0183】
【表1】

【0184】
<試験例2>
[配向性評価(光漏れ度の評価)]
配向膜の配向性は、製造例1および比較製造例1に従い製造された液晶位相差フィルムを垂直に配置された2つの偏光子の間で偏光顕微鏡によって観察した。すなわち、透過度は、厚さ80ミクロンのポリエチレンテレフタラート(商品名:SH71、韓国のSKC社製)を基準に、垂直に配置された偏光子の間に製造例1および比較製造例1に従い製造された液晶位相差フィルムを挟み込み、入射した光が偏光板と位相差フィルムを通過してどれぐらい透過するかを偏光顕微鏡で観察し、光漏れ度を測定した。
【0185】
製造例1の位相差フィルムは入射した光の波長に関係なく液晶の配向方向が均一であったが、比較製造例1の配向膜を適用する場合には配向力が低下し、その結果、液晶の配向方向が揺れる現象を確認することができた。
【0186】
<試験例3>
実施例1に従い合成された光反応性重合体を用いて異方性およびUV反応性をテストした。前記重合体が溶解されている2重量%のシクロペンタン溶液をシリコンウェーハ上に1000rpmの速度でスピンコートした後、80℃のオーブンで1分間乾燥した。15mW/cm2の容量を有するUVランプ(leve l82%)から偏光したUVを約60秒間照射(365nmを基準に0.9J/cm2のエネルギーを照射)しつつその変化を測定し、その結果を図3に示す。図3を参照すれば、偏光UVの照射直後に異方性が形成されることが確認された。偏光UVと平行方向にサンプルが置かれたときよりは、直交方向にサンプルが置かれたときに、より大きい吸光度の値が得られることから、偏光UVの直交方向に異方性が形成されていることが分かる。なお、このような試験結果から、実施例の光反応性重合体は、既存の光反応性重合体が光反応性をよく示さない約365nmの長波長の偏光光に対しても優れた光反応性を示すことが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式3または4の繰り返し単位を重合体全体の50モル%以上の含量で含む光反応性重合体:
【化37】

式中、それぞれ独立して、
nは50〜5000であり、pは0〜4の整数であり、
1、R2、R3およびR4のうちの少なくとも一つは下記の一般式1a、1bおよび1cからなる群から選ばれたラジカルであり、
1、R2、R3およびR4の残部は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素およびボロンの中から選ばれた少なくとも一種以上を含む極性官能基からなる群から選ばれ、
前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基ではない場合、R1とR2、またはR3とR4が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、R1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環、または炭素数6〜24の芳香環を形成し、
【化38】

式中、
n1、p1、r1およびm1は、それぞれ独立して0〜4の整数であり、n2、p2、r2およびm2は、それぞれ独立して0〜5の整数であり、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、カルボキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン、または単結合であり、
Bは、酸素、硫黄、−NH−、または単結合であり、
9は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニレン、置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン、または、置換もしくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレンであり、
10およびR11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ、または、置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリールである。
【請求項2】
下記の一般式2aまたは2bの繰り返し単位をさらに含む請求項1に記載の光反応性重合体:
【化39】

式中、それぞれ独立して、
mは50〜5000であり、q’は0〜4の整数であり、
1’、R2’、R3’およびR4’は、それぞれ独立して、一般式2cのラジカル;水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素およびボロンの中から選ばれた少なくとも一種以上を含む極性官能基からなる群から選ばれ、
前記R1’〜R4’が水素;ハロゲン;または極性官能基ではない場合、R1’とR2’、またはR3’とR4’が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、R1’またはR2’がR3’およびR4’のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環、または炭素数6〜24の芳香環を形成し、
【化40】

式中、lは0または1であり、
DおよびD’は、それぞれ独立して、単結合、窒素、酸素、硫黄、置換もしくは非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレン;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレンオキシド;および置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレンオキシドからなる群から選ばれ、
XおよびYは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;シアノ;および置換もしくは非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキルからなる群から選ばれ、
10’〜R14’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;第14族、第15族または第16族のヘテロ元素を含む炭素数6〜40のヘテロアリール、および置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアルコキシアリールからなる群から選ばれる。
【請求項3】
1’、R2’、R3’およびR4’の少なくとも一つは、一般式2cのラジカルである、請求項2に記載の光反応性重合体。
【請求項4】
前記極性官能基は、下記に示す官能基からなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれかに記載の光反応性重合体:
−R5OR6、−OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)OR6、−R5C(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)r−OR6、−(OR5r−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6−、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2
【化41】

【化42】


【化43】


【化44】


【化45】


【化46】

前記官能基において、それぞれ独立して、rは1〜10の整数であり、R5は、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニレン;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニレン;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシレン;または、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシレンであり、
6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;および置換もしくは非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシからなる群から選ばれる。
【請求項5】
一般式3および4の繰り返し単位からなる群から選ばれた1種以上の繰り返し単位を100モル%含む、請求項1に記載の光反応性重合体。
【請求項6】
一般式3および4の繰り返し単位からなる群から選ばれた1種以上の繰り返し単位50モル%以上100モル%未満と、一般式2aおよび2bの繰り返し単位からなる群から選ばれた1種以上の繰り返し単位0モル%超え50モル%以下とを含む共重合体である、請求項2〜4のいずれかに記載の光反応性重合体。
【請求項7】
150〜450nmの波長を有する偏光の露光下で光反応性を示す、請求項1〜6のいずれかに記載の光反応性重合体。
【請求項8】
150〜450nmの波長を有する偏光を50〜900mJ/cm2のエネルギーで露光したとき、前記一般式1a〜1cに含まれているC=C結合のストレッチングモードの強さが初期値の半値になるまでの時間(t1/2)が1.5分以下である、請求項7に記載の光反応性重合体。
【請求項9】
第10族の遷移金属を含むプレ触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、一般式1のモノマーを付加重合して一般式3の繰り返し単位を形成するステップを含む請求項1に記載の光反応性重合体の製造方法:
【化47】

式中、p、R1、R2、R3およびR4は、一般式3における定義の通りである。
【請求項10】
第4族、第6族または第8族の遷移金属を含むプレ触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、一般式1のモノマーを開環重合して一般式4の繰り返し単位を形成するステップを含む請求項1に記載の光反応性重合体の製造方法:
【化48】

式中、p、R1、R2、R3およびR4は一般式4における定義の通りである。
【請求項11】
前記開環重合ステップにおいては、前記一般式1のモノマーに含まれているノルボルネン環中の二重結合に水素が添加されて開環および重合が行われる、請求項10に記載の光反応性重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の光反応性重合体を含む、配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の配向膜と、前記配向膜上の液晶層とを含む、液晶位相差フィルム。
【請求項14】
請求項12に記載の配向膜を含む、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−22317(P2012−22317A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150996(P2011−150996)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】