説明

光受信器

【課題】受信信号や受信データを分岐せずに、DQPSKなどの光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相を互いに90度異なる点に安定化する
【解決手段】光遅延検波器から出力される干渉光を受光する受光器の電流源端子に流れる低速の光電流を検出し、該光遅延検波器の干渉位相に対する該光電流の交流成分や直流成分の変化を利用して干渉位相を判定し、2つの光遅延検波器の干渉位相の差を90度に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信器に係り、特に光通信システムにおいて、DQPSKなどで位相変調された光信号を受信する光受信器に関し、より詳しくは、位相変調された信号光を強度変調信号光に変換する2つの光干渉計の動作点を安定化する光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の伝送容量を増加するための伝送符号として、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)を用いる位相変調方式が注目されている。また、高感度化の観点から、DQPSK変調された信号光の強度をパルス状に変調したRZ−DQPSK(Return−to−Zero DQPSK)がしばしば用いられる。
これらの伝送符号を受信するためには、DQPSK光受信器が必要になる。図1にDQPSK光受信器の構成例を示す。DQPSK光受信器101の入力ポート100に入力される信号光が光分波器110で分岐され、同じ構成の光位相受信器120、120bに入力される。光位相受信器120に入力された信号光は光遅延検波器130に入力される。光遅延検波器130は信号光を分岐し、一方を光遅延器131に入力し、もう一方を光位相シフタ132に入力し、分岐した2つの信号光間に適切な遅延時間差と位相差を与えてこの2つを干渉させ、異なるポートから互いに論理反転した強度パターンをもつ干渉光を出力する。なお、通常、光遅延器131の遅延量は入力される信号光の変調周期の整数倍とされる。また、光位相シフタ132は位相制御器133でその位相シフト量が適切に制御されている。なお、この位相シフト量のことを光遅延検波器130の干渉位相とよぶ。光遅延検波器130から出力される前記の2つの干渉光はバランスドレシーバ140に入力される。バランスドレシーバ140は、前記の2つの干渉光を2つの受光器141、142でそれぞれ受光し、干渉光の強度成分に応じた振幅の電気信号として検波信号143、144に変換する。そしてさらに、差分器145で検波信号143、144の差分をとり、受信信号146として出力する。なお、2つの検波信号143、144の一方を受信信号146として出力する構成でもよい。この場合、受信感度が半減するが、バランスドレシーバ140の2つの受光器141、142の一方および差分器145を省略できる。このようにして、入力ポート100に入力される信号光の位相成分が電気信号に変換される。受信信号146は識別器150で識別され、受信データ151として光位相受信器120から出力される。また、光位相受信器120bも光位相受信器120と同様にして、入力ポート100に入力される信号光を受信データ151bとして電気信号に変換する。
【0003】
なお、上述のように、光位相シフト132の位相シフト量は光遅延検波器130の干渉位相と呼ばれる。この干渉位相によって受信データ151のパターンが変化する。図2に入力ポート100に入力される信号光をDQPSK信号とした場合における、干渉位相と受信データパターンの関係図を示す。干渉位相45度、135度、225度、315度で受信データに出力パターンが現れ、その出力パターンはA、B、A、Bと変化する。なお、「」は、文字の真上に付されるものであるが、入力の都合上文字の右上に記載する。以下同様である。ここで、AとA、BとBはそれぞれ互い論理反転したパターンである。送信側ではパターンAとパターンBとを送信しており、DQPSK光受信器101はこのパターンA(ないしはA)とパターンB(ないしはB)を受信しなければならない。そこで、光位相受信器120と光位相受信器120bの光遅延検波器130、130bの干渉位相を90度変えることで、パターンA(ないしはA)とパターンB(ないしはB)を受信する。図1では省略したが、DQPSK光受信器では、このようにして得られた受信データ151、151bを同じタイミングで結合し、送信データを復調する。
【0004】
このように、DQPSK光受信器においては、2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相を適切な値に制御する必要がある。特許文献1に光遅延検波器の干渉位相を制御する方式が記載されている。この方式は、光遅延検波器130の干渉位相によって受信信号146の振幅が変化することを利用し、受信信号146の振幅が最小になるように干渉位相を制御することで、干渉位相を45度、135度、225度、315度のいずれかに安定化する方式である。本明細書では、このような干渉位相を得るための制御を「45度位相制御」とよぶことにする。また、受信信号146の振幅が最大になるように干渉位相を制御すれば、干渉位相を0度、90度、180度、270度のいずれかに安定化することもできる。本明細書では、このような干渉位相を得るための制御を「90度位相制御」とよぶことにする。しかし、この方式だけでは光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度となることは保障されない。
そこで、2つの光遅延検波器130、131bの干渉位相の差を90度に安定化する方式がさらに必要となる。本明細書では、このような干渉位相を得るための制御方式を「直交位相制御方式」とよぶことにする。
特許文献2にこの方式の一例が記載されている。この例では、受信データ151、151bの排他的論理和をとって相関性を検出する。2つの受信データ151、151bに相関がある場合、2つの光位相受信器120、120bは互いに同じ又は論理反転した受信データ151、151bを出力しており、光遅延検波器130、130bの干渉位相の差は90度ではない。そこで、2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相のうち一方を90度シフトさせる。反対に、2つの受信データ151、151bに相関がなければ、光遅延検波器130、131bの干渉位相の差は90度である。
また、特許文献3には、45度位相制御と直交位相制御を同時に行う方式が記載されている。この方式では、識別前の受信信号146と受信データ151bを乗算し、その時間平均を検出する。この検出信号が零になるように光遅延干渉器130の干渉位相を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−181171号公報
【特許文献2】特開2006−270909号公報
【特許文献3】特開2008−147861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの従来方式では高速に変調された受信信号や受信データの相関をとるため、高速な相関器を必要とする。また、受信信号や受信データを分岐して相関器に取り出す必要があるが、分岐部に遅延差があると、受信信号や受信データが劣化する。例えば、43Gbit/s DQPSK信号光を受信するDQPSK光受信器の場合、2つの受信データの分岐部に数mmの経路差があると、分岐部の後段で2つの受信データを正しく結合できなくなる場合がある。また、特許文献3のように受信信号を分岐して制御に用いる場合、分岐部のインピーダンス整合がとれていないと、信号反射が起こり、受信信号が劣化してしまう場合がある。このように、分岐部の設計が困難であった。
本発明は、以上の点に鑑み、受信信号や受信データを分岐せずに、DQPSKなどの光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相を互いに90度異なる点に安定化する光受信器を提供することを目的とする。
本発明は、受信信号や受信データに影響を与えることなく、また、高速な回路を用いずに、DQPSK光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相差を検出することを目的のひとつとする。また、本発明は、DQPSK光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相を互いに90度異なる最適値に制御することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、DQPSK光受信器において、2つの光遅延検波器から出力される干渉光をそれぞれ受光する受光器の電流源端子に流れる光電流を検出し、該光電流を用いて2つの光遅延検波器の干渉位相の差を90度に制御することを特徴のひとつとする。
なお、前記の電流源端子から前記の受光器に外乱が加わることを防ぐため、前記電流源端子の通過帯域は受光器の帯域よりも桁違いに小さく、前記電流源端子に流れる光電流の帯域は非常に小さい。例として、DQPSK光受信器101でRZ−DQPSK信号光を受信した場合に、光遅延検波器130の干渉位相に応じて変化する電流源端子161に流れる光電流および検波信号143の時間波形を図3(a)に示す。光電流は検波信号143の高周波成分が除去された波形であり、この光電流の交流成分は検波信号143のそれより小さい。図3(b)に光遅延検波器130の干渉位相に応じて変化するこの光電流の交流成分の時間波形を示す。干渉位相が90度異なる波形同士には相関がなく、180度異なる波形は互いに反転している。なお、光電流161の交流成分を検出する直流成分除去器には、入力信号から直流成分を除去する既知の方法を用いることができる。例えば、コンデンサや、入力信号から時間平均値を算出して該入力信号から減算する信号処理器などを直流成分除去器とし、電流源端子161に流れる光電流を該直流成分除去器に入力すればよい。
【0008】
本発明のひとつは、この光電流の交流成分を用いる。具体的には、DQPSK光受信器101の2つの光位相受信器120、120bのそれぞれの受光器の電流源端子に流れる光電流の交流成分の波形の相関を観測し、相関があれば光位相受信器120、120bの一方もしくは両方の光遅延検波器の干渉位相をシフトさせて、2つの光遅延検波器の干渉位相の差を90度にすることを特徴とする。なお、前記干渉位相を90度シフトさせる方法には、例えば、2つの光電流の交流成分の相関がなくなるまで干渉位相を徐々にシフトさせる方法や、干渉位相をおよそ90度シフトさせた後に45度位相制御など干渉位相の最適化制御を行う方法、予め作成した干渉位相の制御信号と干渉位相の関係を参照して干渉位相を制御する方法など、既知の方法を含めていくつかあり、いずれの方法であってもよい。
また、DQPSK光受信器101の入力ポート100に無変調成分を含む光信号が入力される場合、光遅延検波器の2つの出力ポートの出力パワー比が干渉位相に応じて変化する。その結果、受光器から得られる光電流の直流成分の振幅も干渉位相に応じて変化する。例として、入力ポート100にNRZ−DQPSK信号光が入力された場合の光遅延検波器の干渉位相と光電流の振幅の関係を図6に示す。
【0009】
本発明の他のひとつは、この干渉位相と光電流の振幅の関係を用い、干渉位相を特定する。例えば、45度位相制御されたDQPSK光受信器において、光電流の振幅および干渉位相の変化に対する光電流の増減の符号を用い、干渉位相が45±n・180度か135±n・180度かを特定できる。また、90度位相制御されたDQPSK光受信器において、光遅延検波器の2つの出力を受光する2つの受光器の光電流の振幅の一致で干渉位相を0±n・180度か90±n・180度かを特性することもできる。
本発明によれば、2つの光遅延検波器と、該光遅延検波器の出力光をそれぞれ受光して受信信号を出力する受光器と、該受光器の電流源端子に流れる光電流をそれぞれ検出する光電流検出器と、前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のいずれかにそれぞれ制御する2つの位相制御器と、前記光電流検出器で検出された光電流から前記2つの光遅延検波器の干渉位相の差を判定し、その差が90度となるように前期位相制御期を制御する直交位相制御器が提供される。
【0010】
本発明の第1の解決手段によると、
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記干渉光を受光して検波信号を出力する受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のいずれかに安定化する位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
前記2つの光位相受信器の各受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して各光電流に応じた光電流信号をそれぞれ出力する光電流検出器と、
前記光電流検出器から出力された各受光部の光電流信号又は該光電流信号に基づく信号をそれぞれ入力し、該光電流信号の交流成分の相関に応じた相関信号を出力する相関器と、
前記相関信号に基づき2つの前記光遅延検波器の干渉位相の差が90度であるか否かを判定し、90度でなければ前記2つの光位相受信器の前記位相制御器の一方又は双方に制御信号を出力する直交位相制御器と
を備え、
前記2つの光位相受信器の前記位相制御器の一方又は双方が、該制御信号に応じて前記光遅延検波器の干渉位相をシフトすることを特徴とする光受信器が提供される。
【0011】
本発明の第2の解決手段によると、
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が、
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記干渉光を受光して検波信号を出力する受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のひとつに安定化し、前記干渉位相を微小変動させてその変動成分であるディザ信号を出力し、入力される制御信号に応じて前記干渉位相をシフトさせる位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
該2つの光位相受信器の少なくともいずれかの前記受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して、該光電流に応じた光電流信号を出力する光電流検出器と、
干渉位相に応じて変化する該光電流信号の直流成分の振幅の平均値又は中間値を閾値として、光電流信号の直流成分の振幅が該閾値より大きいか否かを示す振幅比較信号を出力する振幅比較器と、
前記位相制御器からのディザ信号の増減と前記光電流検出器からの光電流信号の増減とを比較して、光電流信号の傾き情報を出力する同期検波器と、
該傾き情報と前記振幅比較信号に基づき、前記光遅延検波器の干渉位相を判定し、該干渉位相が所望の値になるように制御信号を前記位相制御器に出力する直交位相制御器と
を備えた光受信器が提供される。
【0012】
本発明の第3の解決手段によると、
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が、
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記干渉光を受光して検波信号を出力する受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のひとつに安定化し、前記干渉位相を微小変動させてその変動成分であるディザ信号を出力し、入力される制御信号に応じて前記干渉位相をシフトさせる位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
前記2つの光位相受信器の一方の前記受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して、該光電流に応じた第1の光電流信号を出力する第1の光電流検出器と、
前記2つの光位相受信器の他方の前記受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して、該光電流に応じた第2の光電流信号を出力する第2の光電流検出器と、
第1の光電流信号と第2の光電流信号の大小を比較していずれが大きいかを示す振幅比較信号を出力する振幅比較器と、
前記位相制御器からのディザ信号の増減と第1又は第2の光電流信号の増減とを比較して、第1又は第2の光電流信号の傾き情報を出力する同期検波器と、
該傾き情報と前記振幅比較信号に基づき、前記光遅延検波器の干渉位相を判定し、該干渉位相が所望の値になるように制御信号を前記位相制御器に出力する直交位相制御器と
を備えた光受信器が提供される。
【0013】
本発明の第4の解決手段によると、
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が、
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、互いに論理反転した強度成分を有する2つの干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記2つの干渉光をそれぞれ受光する2つの受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を0度、90度、180度、270度のいずれかに制御する位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
前記2つの光位相受信器の少なくともいずれかについて前記2つの受光器の電流源端子に流れる光電流をそれぞれ検出し、各光電流に応じた光電流信号をそれぞれ出力する光電流検出器と、
各光電流信号の直流成分を比較し、その差に応じた振幅比較信号を出力する振幅比較器と、
該振幅比較信号が零又は予め定められた閾値以下か否かにより前記光遅延検波器の干渉位相の値を判定し、判定結果に応じて干渉位相の差を90度にするための制御信号を前記位相制御器に出力する直交位相制御器と
を備えた光受信器が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信信号や受信データを分岐せずに、DQPSKなどの光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相を互いに90度異なる点に安定化する光受信器を提供することができる。
本発明によれば、受信信号や受信データに影響を与えることなく、また、高速な回路を用いずに、DQPSK光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相差を検出することができる。これにより、DQPSK光受信器の2つの光遅延検波器の干渉位相を互いに90度異なる最適値に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が対象とするDQPSK光受信器の構成例。
【図2】光遅延検波器の干渉位相と受信データパターンの関係の説明図。
【図3】干渉位相に応じて変化する検波信号と光電流の時間波形の説明図。
【図4】本発明の第1の実施形態における相関器の動作の説明図。
【図5】本発明の第1の実施形態を示す構成例。
【図6】光遅延検波器の干渉位相と光電流の直流成分の振幅の関係の説明図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す構成例(1)。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す構成例(2)。
【図9】本発明の第2の実施形態を示す構成例(3)。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す構成例。
【図11】第3の実施形態における干渉位相制御のフローチャートの例。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、上述の光電流の交流成分を用いる。
図5は、DQPSK光受信器の構成図である。
DQPSK光受信器101は、例えば、光位相受信器120、120bと、光分波器110と、光電流検出器171、171bと、相関器200と、直交位相制御器210とを備える。
2つの光遅延検波器130、130bの出力する干渉光を受光する2つの受光器141、141bの電流源端子161、161bに流れるそれぞれの光電流を検出し、直流成分除去器201、201bを用いて該2つの光電流の交流成分を得る。さらに、これらの相関をとり、2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差を検出する。
なお、電流源端子161、161bの光電流の交流成分の相関を検出し、相関信号を出力する相関器200には、入力信号の相関をとる既知の装置・方法を用いることができる。例えば、2つの入力信号を乗算する乗算器とその出力を時間平均する平均化器との組合せや、2つの入力信号を比較してその大小に応じた信号を出力する比較器や差分器(差動増幅器を含む)などの出力を時間平均する平均化器との組合せを相関器とし、2つの電流源端子161、161bに流れる光電流の交流成分を該相関器に入力すればよい。
前記相関器200を前記の乗算器202と平均化器204との組合せで構成した場合を例にして、前記相関器200の動作原理を説明する。なお、簡単のために、DQPSK光受信器101において、光遅延検波器130、130bの干渉位相が45度位相制御され、なおかつ光遅延検波器130bの干渉位相が45度に制御されているものとして、RZ−DQPSK信号光を受信する場合について説明する。
【0017】
図4(a)に、前記相関器200内の乗算器202の出力波形が光遅延検波器130の干渉位相によって変化する様子を示す。光遅延検波器130の干渉位相が45度の場合、前記乗算器202の出力波形は常に0より大きくなり、逆に225度の場合、常に0より小さくなる。そして、135度、315度の場合は、前記相関器の出力波形の符号は正負にランダムに変化する。そのため、前記乗算器出力の時間平均、つまり前記相関器出力である相関信号は、光遅延検波器130の干渉位相が45度、135度、225度、315度のそれぞれで、正、零、負、零と変化する。
図4(b)に、光遅延検波器130の干渉位相を連続的に変化させた場合の該相関信号の変化を示す。なお、光遅延検波器130bの干渉位相を30度に安定化している場合は、該相関信号は光遅延検波器130の干渉位相が30度のときに最大となり、210度で最小、120度および300度で0となる。つまり、光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が0度のときは該相関信号が正の最大値、90度のときは零、180度のときは負の最小値をとる。そのため、該相関信号の時間平均を零にすれば2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差は90度となる。
【0018】
なお、D8PSK(Differential 8 Phase Shift Kying)のような差動M値位相変調方式(Mは2以上の整数)や、staggered−D8PSKやQAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの直交振幅変調方式で変調された信号光を受信するDQPSK光受信器101であっても本実施の形態をそのまま適用し、2台の光遅延検波器130、130bの干渉位相の差を90度に制御することができる。例えば、干渉位相が90度位相制御され、0度、90度、180度、270度のいずれかに安定化された2つの光遅延検波器160、160bを具備したDQPSK光受信器101を用いてQAM信号光を受信する場合においても、本第1の実施の形態により2つの光遅延検波器160、160bの干渉位相の差を90度に制御することができる。
【0019】
図5に本発明の第1の実施形態におけるDQPSK光受信器101の構成図を示す。
図1に示すDQPSK光受信器101と同様、入力ポート100に入力される信号光が光遅延検波器とバランスドレシーバを備えた2つの光位相受信器120、120bによって受信データ151、151bに変換される。また、光位相受信器120のバランスドレシーバ140がもつ2つの受光器141、142の一方の電流源端子に流れる光電流を光電流検出器171、171bで検出する。例えば、受光器141の電流源端子161に流れる光電流を光電流検出器171が光電流信号181に変換して出力する。光電流検出器171、171bとしては、オペアンプを用いた電流電圧変換器など既知の手段を用いることができる。同様に、光位相受信器120bのバランスドレシーバ140bがもつ2つの受光器141b、142bの一方の電流源端子に流れる光電流を検出する。例えば、受光器141bの電流源端子161bに流れる光電流を光電流検出器171bが光電流信号181bに変換して出力する。これらの光電流信号181、181bは相関器200に入力される。
該相関器200では、直流成分除去器201、201bで光電流信号181、181bそれぞれの交流成分を抽出する。また、該光電流信号181、181bの交流成分を乗算器202で乗算して乗算信号203を算出し、さらに乗算信号203の時間平均を平均化器204で算出して相関信号205として出力する。ここで、相関器200の直流成分除去器201、201bは、コンデンサや、入力信号から時間平均値を算出して該入力信号から減算する信号処理器などとすればよい。前記の相関信号205は直交位相制御器210に入力される。
【0020】
直交位相制御器210では、相関信号205が零(又はその近傍の予め定められた範囲内)になるまで位相制御器133、133bの一方、もしくは双方に直交位相制御信号211を出力する。該位相制御器133、133bは、前記の直交位相制御信号211が入力されている間、光位相シフタ132、132bの位相シフト量を変化させる。
なお、直交位相制御信号211による位相シフト量は90度刻みである場合が効率がよい。ただし、直交位相制御信号211によって位相シフタ132、132bの位相シフト量を90度変化させた後、次に該直交位相制御器210が前記の相関信号205を判定して直交位相制御信号211を出力するまでの時間は、前記の位相制御器133、133bに対する位相シフタ132、132bの応答速度より長くする必要がある。
また、該相関器200の構成は、出力する相関信号205が2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差に応じて変化する信号となればどのような構成でもよい。例えば、光電流信号181、181bの差分をとる差分器と、光電流信号181、181bの差分の直流成分を除去して出力する直流成分除去器と、該直流成分除去器の出力信号の最大振幅を相関信号205として出力する振幅検出器とで構成することもできる。この構成の場合、2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相が0度のときは相関信号205が零となり、180度のときは最大となり、90度ないしは270度のときはその中間の値となる。
【0021】
ところで、バランスドレシーバ140の2つの受光器141、142の電流源端子に流れる光電流は、互いに交流成分が論理反転した波形をもつ。そのため、該2つの光電流を光電流検出器でそれぞれ検出して光電流信号に変換し、差分器で該2つの光電流信号の差分をとれば、交流成分の振幅が2倍で、且つ前記2つの光電流信号に共通する直流成分が除去された差分信号が得られる。そこで、該DQPSK光受信器101の2つの光位相受信器120、120bにおいて、差分信号をそれぞれ検出し、前記相関器200に光電流信号181、181bの代わりとして入力すれば、相関器200の検出感度を向上することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、光電流の直流成分を利用する。図7は、第2の実施の形態におけるDQPSK光受信器の構成図(1)である。装置の構成は後に詳述する。
図6に光遅延検波器130の干渉位相と、該光遅延検波器130から出力される干渉光を受光する受光器141の電流源端子161に流れる光電流の直流成分との関係を示す。該直流成分の振幅は光遅延検波器130の干渉位相に対して正弦波状に変化し、干渉位相が0度のときに最大(図6(a1))、180度のときに最小(図6(a5))となり、360度で最大に戻る。また、バランスドレシーバ140のもう一方の受光器141bの電流源端子161bに流れる光電流の直流成分の振幅も干渉位相に対して正弦波状に変化するが、干渉位相が0度のときに最小(図6(b1))、180度のときに最大(図6(b5))となり、360度で最小に戻る。ただし、図6に示すように前記光電流の直流成分が光遅延検波器の干渉位相によって変化する特性は、DQPSK光受信器101で受信する信号光がRZ変調されていない、もしくは光フィルタやDQPSK光受信器101がもつ光遅延検波器によって信号光のRZ変調成分が劣化している場合にのみ生じる。
本発明の第2の実施形態では、電流源端子161に流れる光電流の直流成分の振幅を検出する。しかし、該振幅だけでは干渉位相が一意に判定できないため、さらに干渉位相に対する光電流の直流成分の変化の傾きを検出し、干渉位相を一意に判定する。そして、DQPSK光受信器101の2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度になるようにそれぞれの干渉位相を制御する。なお、光遅延検波器の干渉位相に対する光電流の直流成分の変化の傾きは、光遅延検波器130の干渉位相を微小変動させ、そのときの光電流信号の直流成分の増減を検出することで検出できる。
【0023】
例えば、干渉位相が45度位相制御された光遅延検波器130の干渉位相を一意に判定する場合を説明する。まず、電流源端子161に流れる光電流の直流成分の振幅を図6(a3)の振幅(又は干渉位相に応じて変化する該光電流信号の直流成分の振幅の平均値又は中間値)と比較し、該光電流の直流成分の振幅が(a3)より大きければ、干渉位相は45度ないしは315度であり、(a3)より小さければ干渉位相は135度ないしは225度であると判定できる。一方、干渉位相を僅かに増加させ、それによって該光電流の直流成分の振幅が減少すれば、干渉位相は45度ないしは135度であり、増加すれば干渉位相は225度か315度であると判定できる。そのため、この2つの判定結果を合わせれば、光遅延検波器130の干渉位相を一意に判定できる。なお、上記特許文献1の干渉位相の45度位相制御では、干渉位相を常に微小変動させている。本実施の形態では、この干渉位相の微小変動も有効に利用することができる。
しかし、検出される光電流が電流源端子161、162に流れる光電流のどちらであるか明らかでない場合、上述の方法では干渉位相が一意に決まらない。上の例の場合においては、干渉位相が45度と225度、または135度と315度のどちらかを判定できなくなる。ただし、DQPSK光受信器101において、光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度であるかのみを判定する場合、判定される干渉位相が180度異なっても構わないため、上述の方式を適用することができる。
【0024】
また、検出される光電流が電流源端子161、162に流れる光電流のどちらであるか明らかでない場合においても干渉位相を一意に決めることもできる。ただし、電流源端子161、162に流れる光電流の双方を検出し、検出した2つの光電流の直流成分の振幅を比較する必要がある。
例えば、干渉位相が45度位相制御された光遅延検波器130をもつ光位相受信器において、検出される光電流が電流源端子161、162に流れる光電流のどちらか明らかでない場合、干渉位相が45度と225度、または135度と315度のどちらかを判定できなくなるが、さらに電流源端子161、162に流れるそれぞれの光電流の直流成分の振幅を比較することで該光遅延検波器130の干渉位相を一意に判定することができる。該2つの光電流の直流成分の振幅を比較し、干渉位相の判定に用いた光電流がもう一方よりも大きければ、干渉位相は45度ないしは315度、小さければ135度ないしは225度であることが判定できる。そのため、先の判定結果と合わせれば干渉位相を一意に判定することができる。
【0025】
なお、本実施の形態に限らず、2つの受光器の電流源端子に流れる光電流の振幅を比較する場合、該2つの受光器の受信感度や帯域の違いによる光電流の振幅の違いを補正する機構を備えることが望ましい。
また、DQPSK光受信器において、2つの光遅延検波器130、130bの出力する干渉光を受光する受光器141、141bの電流源端子161、161bに流れる光電流の直流成分と、前記の2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相に対する該2つの光電流の直流成分の変化の傾きから、該2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度か否かを判定することができる。
例えば、DQPSK光受信器101の2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相が45度位相制御されている場合、該干渉位相の増減に対して該2つの光電流端子161、161bに流れる光電流の直流成分の振幅が同じように増減し(傾きの符合が一致し)、なおかつ該2つの光電流端子161、161bに流れる光電流の直流成分の振幅に差がある場合は該2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度であると判定できる(例えば、図6のa2とa4など)。また、傾きが異なり振幅が同じ場合も、干渉位相の差が90で度であると判定できる(例えば、a2とa8など)。逆に、傾きが異なり振幅も異なる場合は該2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度ではないと判定できる(例えば、図6のa2とa6など)。また、傾きが同じで振幅も同じ場合も、干渉位相の差が90度でないと判定できる。
【0026】
図7に本発明の第2の実施形態におけるDQPSK光受信器101の構成図を示す。
DQPSK光受信器101は2つの被制御光位相受信器121、121bを有する。これら被制御光位相受信器121、121bは、図1に示すDQPSK光受信器101と同様、入力ポート100に入力される信号光が光遅延検波器とバランスドレシーバをもつ2つの光位相受信器によって受信データ151、151bに変換する。被制御光位相受信器121bの構成は、被制御光位相受信器121と同様であるので、図7では詳細を省略している。
また、被制御光位相受信器は光位相受信器の他に、光遅延検波器の干渉位相を制御する制御回路を有する。例えば、被制御光位相受信器121の制御回路では、第1の実施形態を示す図5と同様、光遅延検波器130の出力する2つの干渉光をそれぞれ受光するバランスドレシーバ140の2つの受光器141、142の電流源端子の一方の電流源端子161に流れる光電流が光電流検出器171で検出され光電流信号181として出力される。なお、光遅延検波器130の干渉位相は位相制御器133によって、例えば45度位相制御され、一意でない任意の干渉位相に安定化されている。また、該位相制御器133は干渉位相を微小変動し、その微小変動成分をディザ信号301として出力する。該ディザ信号301と前記の光電流信号181は同期検波器311でその同期がとられる。該ディザ信号301の増加に対し、光電流信号181の振幅の増減の正負が一致するか逆転するかを判定して同期信号(傾き情報)313を出力する。また、振幅比較器320が前記の光電流信号181の時間平均値を予め定められた閾値と比較し、その大小を判定して振幅比較信号321を出力する。該閾値は干渉位相に応じて変化する光電流信号181の平均振幅とすればよい。この値は、例えば干渉位相を0度から360度まで掃引し、光電流信号181の時間平均値の平均をとることで予め求めることができる。また、図8の構成例(2)のように、バランスドレシーバ140のもう一方の受光器142の電流源端子162に流れる光電流を検出して光電流信号182に変換する光電流検出器172をさらに備え、該光電流信号182の振幅、ないしはその時間平均値を前記の閾値として用いてもよい。前記の同期信号313と前記の振幅比較信号321は直交制御器330に入力され、それらの信号の組合せから光遅延検波器130の干渉位相が判定され、該干渉位相が任意の値になるまで直交制御信号331を位相制御器133に出力する。
【0027】
また、被制御光位相受信器121bも被制御光位相受信器121と同様の構成であり、被制御光位相受信器121、121bのそれぞれの光遅延検波器の干渉位相を90度異なるように制御する。例えば、光受信器は、被制御光位相受信器121、121bのそれぞれの光遅延検波器の干渉位相を90度異なるように予め設定しておき、この各干渉位相になるように位相制御器133を制御する。
図9に、第2の実施形態におけるDQPSK光受信器101の別の構成例(3)を示す。
図7に示すDQPSK光受信器101と同様、入力ポート100に入力される信号光が光遅延検波器とバランスドレシーバを有する2つの光位相受信器120、120bによって受信データ151、151bに変換される。また、光位相受信器120の光遅延検波器130が出力する2つの干渉光を受光する受光器141、142の電流源端子161、162のうち一方の電流源端子、例えば電流源端子161に流れる光電流を光電流検出器171で光電流信号181として検出する。また、同様に、光位相受信器120bの光遅延検波器130bが出力する2つの干渉光を受光する受光器141b、142bの電流源端子161b、162bのうち一方の電流源端子、例えば電流源端子161bに流れる光電流を光電流検出器171bで光電流信号181bとして検出する。
【0028】
なお、光遅延検波器130、130bの干渉位相は位相制御器133、133bにより、例えば45度位相制御され、一意でない任意の干渉位相に安定化されている。また、該位相制御器131、131bは干渉位相を微小変動し、その微小変動成分をディザ信号301、301bとして出力する。該ディザ信号301と該光電流信号181は同期検波器311に入力され、該ディザ信号301の増減に対して該光電流信号181の直流成分の増減の向き(正負)が一致するかを検出し、同期信号312を出力する。同様に、該ディザ信号301bと該光電流信号181bは同期検波器311bに入力され、該ディザ信号301bの増減に対して該光電流信号181bの直流成分の増減の向き(正負)が一致するかを検出し、同期信号312bを出力する。また、振幅比較器320で前記光電流信号181、181bの直流成分の振幅を比較し、その大小を判定して振幅比較信号321を出力する。
該振幅比較信号321と前記の同期信号313、313bは前記の直交制御器330に入力され、これらの入力信号から2つの光遅延検波器130、130bの干渉位相を判定し、干渉位相が任意の値になるまで位相制御器133、133bのそれぞれに直交制御信号331を出力する。前記の位相制御器133、133bは該直交制御信号331が入力される間、干渉位相をシフトし、干渉位相を設定値に制御する。この設定値を光位相受信器120、120bで90度ずらせばよい。なお、直交制御器330は、位相制御器133、133bのいずれか一方を制御して干渉位相の差が90度になるようにしてもよい。
【0029】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態も、光電流の直流成分を利用する。図10は、第3の実施の形態におけるDQPSK光受信器の構成図である。装置の構成は後に詳述する。
図6に示す光遅延検波器130の干渉位相と、受光器141の電流源端子161、162に流れる光電流の直流成分の振幅の関係を参照すると、干渉位相が0度、180度のときは該2つの光電流の直流成分の振幅に差があるのに対し、干渉位相が90度、270度のときは該2つの光電流の直流成分の振幅の差が零になる。被制御光位相受信器121bについても同様である。
そこで、光遅延検波器の干渉位相を90度位相制御して0度、90度、180度、270度のいずれかに安定化し、前記の電流源端子161、162に流れる2つの光電流の直流成分の振幅の差分をとり、これが零か否かを判定する。これにより、光遅延検波器の干渉位相が0度ないしは180度(0+n・180度)、もしくは90度ないしは270度(90+n・180度)のいずれかであることが判明する。その後、光遅延検波器の干渉位相を任意にシフトすれば、干渉位相をΦ+n・180度(Φは任意の値、nは整数)に制御することができる。なお、さらに必要に応じて干渉位相を設定値に安定化する制御を行ってもよい。
【0030】
例えば、光遅延検波器の干渉位相を45+n・180度ないしは−45+n・180度のうち任意の値(設定値)に制御する場合の干渉位相制御方式のフローチャートを図11に示す。まず、干渉位相を90度位相制御する(S101、S102)。前記の電流源端子161、162に流れる2つの光電流の直流成分の差分が予め定められた閾値以下か否かにより干渉位相が0+n・180度ないしは90+n・180度のいずれであるかを判定する(S103)。この判定結果と干渉位相の設定値に応じて、干渉位相が設定値となるように干渉位相をシフトさせる(S104〜S107)。その後、干渉位相を設定値に安定化する45度位相制御を行なう(S108)。
例えば、ステップS103で該2つの光電流の差分が閾値より大きく、光電流干渉位相が0+n・180度と判定された場合(S103、No)、干渉位相の設定値、つまり制御目標値が45+n・180度なら干渉位相を+45度ないしは+方向に僅かにシフトさせた後(S105、S107)、干渉位相を45度位相制御すれば(S108)、45度で安定する。このように光電流の差分と、干渉位相の設定値に基づき干渉位相のシフト方向を決めてシフトさせ、その後45度位相制御などをすればよい。
【0031】
図10に第3の実施形態におけるDQPSK光受信器101の構成図を示す。
DQPSK光受信器101は2つの被制御光位相受信器121、121bと光分波器110を備える。被制御光位相受信器は図1に示すDQPSK光受信器101と同様、入力ポート100に入力される信号光が光遅延検波器とバランスドレシーバをもつ2つの光位相受信器120、120bによって受信データ151、151bに変換される。光位相受信器120bの構成は、光位相受信器120と同様であるので図10では詳細を省略している。
また、被制御光位相受信器は光位相受信器の他に、光遅延検波器の干渉位相を制御する制御回路をもつ。例えば、被制御光位相受信器121の制御回路では、光遅延検波器130の出力する2つの干渉光をそれぞれ受光するバランスドレシーバ140の2つの受光器141、142の電流源端子161、162に流れる光電流が光電流検出器171、172で検出されそれぞれ光電流信号181、182として出力される。
なお、光遅延検波器130の干渉位相は位相制御器133により、90度位相制御され、0度、90度、180度、270度のいずれかに制御されている。
前記の光電流信号181、182は振幅比較器320に入力され、該光電流信号181、182の直流成分の振幅が比較され、その差が零(又はその近傍の予め定められた範囲内)か否かに応じて振幅比較信号321を出力する。
【0032】
該振幅比較信号321は直交制御器330に入力され、該光電流信号181、182の直流成分の振幅に差がなければ、前記光遅延検波器130の干渉位相が90度ないしは270度であり、差があれば干渉位相が0度ないしは180度であると判定する。そして、干渉位相が設定値に近づくように干渉位相をシフトするように、直交制御信号331を位相制御器133に出力する。
前記位相制御器133は該直交制御信号331に応じて位相をシフトさせ、位相を安定化させる。例えば、前記の干渉位相の設定値が45度、135度、225度、315度のいずれかであれば、45度位相制御によって安定化する。
また、被制御光位相受信器121bも被制御光位相受信器121と同様の構成であり、光DQPSK受信器101においては、被制御光位相受信器121、121bの光遅延検波器130、130bの干渉位相の差が90度となるように設定される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、例えば、光通信システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 入力ポート
101 DQPSK光受信器
110 光分波器
120、120b 光位相受信器
121、121b 被制御光位相受信器
130、130b 光遅延検波器
131、131b 光遅延器
132、132b 光位相シフタ
133、133b 位相制御器
140、140b バランスドレシーバ
141、141b、142、142b 受光器
143、143b、144、144b 検波信号
145、145b 差分器
146、146b 受信信号
150、150b 識別器
151、151b 受信データ
161、161b、162、162b 電流源端子
171、171b、172、172b 光電流検出器
181、181b、182、182b 光電流信号
200 相関器
201、201b 直流成分除去器
202 乗算器
203 乗算信号
204 平均化器
205 相関信号
210 直交位相制御器
211 直交制御信号
301、301b ディザ信号
311、311b 同期検波器
312、312b 同期信号
320 振幅比較器
321 振幅比較信号
330 直交位相制御器
331 直交制御信号
a1〜a8 光電流161の振幅
b1〜b8 光電流162の振幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記干渉光を受光して検波信号を出力する受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のいずれかに安定化する位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
前記2つの光位相受信器の各受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して各光電流に応じた光電流信号をそれぞれ出力する光電流検出器と、
前記光電流検出器から出力された各受光部の光電流信号又は該光電流信号に基づく信号をそれぞれ入力し、該光電流信号の交流成分の相関に応じた相関信号を出力する相関器と、
前記相関信号に基づき2つの前記光遅延検波器の干渉位相の差が90度であるか否かを判定し、90度でなければ前記2つの光位相受信器の前記位相制御器の一方又は双方に制御信号を出力する直交位相制御器と
を備え、
前記2つの光位相受信器の前記位相制御器の一方又は双方が、該制御信号に応じて前記光遅延検波器の干渉位相をシフトすることを特徴とする光受信器。
【請求項2】
請求項1記載の光受信器であって、
前記2つの光位相受信器の各光遅延検波器が、前記干渉光と論理反転した第2の干渉光を出力し、
前記2つの光位相受信器はそれぞれ、第2の干渉光を受光して第2の検出信号を出力する第2の受光器をさらに有し、
前記光受信器は、
前記2つの光位相受信器の各第2の受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して各光電流に応じた第2の光電流信号をそれぞれ出力する第2の光電流検出器と、
各光位相受信器について前記光電流信号と該第2の光電流信号との差分信号をそれぞれ前記相関器に出力する差分器と
をさらに備え、
前記相関器は、該差分信号をそれぞれ入力し、該差分信号に基づき光電流信号の交流成分の相関に応じた相関信号を出力することを特徴とする光受信器。
【請求項3】
請求項1記載の光受信器において、
前記相関器が、
入力される2つの光電流信号の交流成分を抽出する直流成分除去器と、
前記直流成分除去器で抽出した光電流信号の交流成分の相関をとって相関信号を出力する回路と
を有する光受信器。
【請求項4】
請求項3に記載の光受信器において、
前記直交位相制御器は、相関信号が前記相関器に入力される2つの光電流信号の交流成分に相関が予め定められた基準より小さいことを示す場合に、干渉位相の差が90度であると判定し、90度でなければ干渉位相をシフトされるための前記制御信号を出力する光受信器。
【請求項5】
請求項1記載の光受信器において、
前記相関器が、
入力される2つの光電流信号の差分をとる差分器と、
該差分の直流成分を除去して出力する直流成分除去器と、
該直流成分除去器の出力信号の最大振幅を相関信号として出力する振幅検出器と
を有する光受信器。
【請求項6】
請求項5に記載の光受信器において、
前記直交位相制御器は、干渉位相によって変動する前記相関信号が、零と該変動の最大値との中間値である場合に干渉位相の差が90度であると判定し、90度でなければ干渉位相をシフトされるための前記制御信号を出力する光受信器。
【請求項7】
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が、
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記干渉光を受光して検波信号を出力する受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のひとつに安定化し、前記干渉位相を微小変動させてその変動成分であるディザ信号を出力し、入力される制御信号に応じて前記干渉位相をシフトさせる位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
該2つの光位相受信器の少なくともいずれかの前記受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して、該光電流に応じた光電流信号を出力する光電流検出器と、
干渉位相に応じて変化する該光電流信号の直流成分の振幅の平均値又は中間値を閾値として、光電流信号の直流成分の振幅が該閾値より大きいか否かを示す振幅比較信号を出力する振幅比較器と、
前記位相制御器からのディザ信号の増減と前記光電流検出器からの光電流信号の増減とを比較して、光電流信号の傾き情報を出力する同期検波器と、
該傾き情報と前記振幅比較信号に基づき、前記光遅延検波器の干渉位相を判定し、該干渉位相が所望の値になるように制御信号を前記位相制御器に出力する直交位相制御器と
を備えた光受信器。
【請求項8】
請求項7記載の光受信器において、
前記光電流検出器と、前記振幅比較器と、前記同期検波器と、前記直交位相制御器とを光位相受信器毎に備える光受信器。
【請求項9】
請求項7記載の光受信器において、
前記2つの光位相受信器の少なくともいずれかは、
前記光遅延検波器が前記干渉光と論理反転した第2の干渉光を出力し、
第2の干渉光を受光して第2の検出信号を出力する第2の受光器をさらに有し、
前記光受信器は、前記第2の受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して該光電流に応じた第2の光電流信号を出力する第2の光電流検出器をさらに備え、
前記振幅比較器が、該第2の光電流信号の直流成分の振幅の平均値又は中間値を求めて前記閾値とすることを特徴とする光受信器。
【請求項10】
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が、
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記干渉光を受光して検波信号を出力する受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を予め定められた複数の値のひとつに安定化し、前記干渉位相を微小変動させてその変動成分であるディザ信号を出力し、入力される制御信号に応じて前記干渉位相をシフトさせる位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
前記2つの光位相受信器の一方の前記受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して、該光電流に応じた第1の光電流信号を出力する第1の光電流検出器と、
前記2つの光位相受信器の他方の前記受光器の電流源端子に流れる光電流を検出して、該光電流に応じた第2の光電流信号を出力する第2の光電流検出器と、
第1の光電流信号と第2の光電流信号の大小を比較していずれが大きいかを示す振幅比較信号を出力する振幅比較器と、
前記位相制御器からのディザ信号の増減と第1又は第2の光電流信号の増減とを比較して、第1又は第2の光電流信号の傾き情報を出力する同期検波器と、
該傾き情報と前記振幅比較信号に基づき、前記光遅延検波器の干渉位相を判定し、該干渉位相が所望の値になるように制御信号を前記位相制御器に出力する直交位相制御器と
を備えた光受信器。
【請求項11】
2つの光位相受信器であって、各光位相受信器が、
分岐された入力信号光に、遅延差と設定される干渉位相に応じた位相差とを与えて干渉させ、互いに論理反転した強度成分を有する2つの干渉光を出力する光遅延検波器と、
前記2つの干渉光をそれぞれ受光する2つの受光器と、
前記光遅延検波器の干渉位相を0度、90度、180度、270度のいずれかに制御する位相制御器と
を有する前記2つの光位相受信器と、
前記2つの光位相受信器の少なくともいずれかについて前記2つの受光器の電流源端子に流れる光電流をそれぞれ検出し、各光電流に応じた光電流信号をそれぞれ出力する光電流検出器と、
各光電流信号の直流成分を比較し、その差に応じた振幅比較信号を出力する振幅比較器と、
該振幅比較信号が零又は予め定められた閾値以下か否かにより前記光遅延検波器の干渉位相の値を判定し、判定結果に応じて干渉位相の差を90度にするための制御信号を前記位相制御器に出力する直交位相制御器と
を備えた光受信器。
【請求項12】
請求項11記載の光受信器において、
前記光電流検出器と、前記振幅比較器と、前記直交位相制御器とを光位相受信器毎に備える光受信器。
【請求項13】
請求項11記載の光受信器において、
前記直交位相制御器は、振幅比較信号から前記光遅延検波器の干渉位相が0度及び180度のいずれか、又は、90度又は270度のいずれかを判定した後、その判定結果と干渉位相の差が90度になる予め定められた設定値とに応じて干渉位相の増減の方向を決定し、該方向に干渉位相をシフトさせることを特徴とする光受信器。
【請求項14】
請求項13記載の光受信器において、
前記直交位相制御器は、決定された方向に干渉位相を45度シフトさせる制御信号を出力し、
前記位相制御器は、該制御信号に従い干渉位相を45度シフトさせ、干渉位相を前記予め定められた設定値である45度、135度、225度、315度のいずれかに制御する光受信器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−283727(P2010−283727A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137113(P2009−137113)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】