説明

光受信回路

【課題】入力されるパルス幅の長短に拘らず、コンパレータにおけるパルス幅歪みおよび誤出力を低減させる光受信回路を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態にかかる光受信回路10は、入力光に応じて電流を出力する受光手段12と、入力端子に前記受光手段が接続された反転増幅器13と、反転増幅器13の入出力間に接続された帰還回路14を具備する。この帰還回路14は、反転増幅器13のトランスインピーダンス特性がポールとゼロの複数組が設けられるように、一方が反転増幅器13の入力端子に接続され、他方が抵抗R2と抵抗R3と抵抗R4と共通接続される抵抗R1と、他方が反転増幅器13の出力端子に接続される抵抗R2と、他方がキャパシタC1と接続される抵抗R3と、他方がキャパシタC2と接続される抵抗R4と、他方が接地されたキャパシタC1と、他方が接地されたキャパシタC2とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は光受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトダイオード(以下、PDという)などの受光素子の微小電流を増幅するためには、入力バイアス電流が少なく、入力オフセット電圧やドリフトの小さなアンプを用いて電流電圧変換するのが一般的である。その際に、アンプの入力にフォトダイオードを直接挿入するトランスインピーダンスアンプと呼ばれる回路方式が用いられる。
【0003】
従来の光受信回路は、入力端子と出力端子との間に帰還抵抗が接続された反転増幅器と、反転増幅器の入力端子に接続された受光素子と、反転増幅器の出力と閾値電圧とを比較し、比較結果に応じてハイレベルまたはロウレベルの電圧を出力するコンパレータを具備している。
具体的には、受光素子にパルスの光信号が入射すると、受光素子は光信号に応じた電流を反転増幅器に供給する。反転増幅器は供給された電流を電圧に変換し、光信号に応じたパルスの電圧を出力する。このパルスの電圧がコンパレータにより閾値電圧と比較され、閾値以上のパルスの電圧が光信号として検出される。
【0004】
しかしながら、コンパレータに入力される入力パルス信号の条件次第では、出力される出力パルス信号の波形に歪みが生じ、光受信回路が誤動作するおそれがある。
たとえば、受光素子としてフォトダイオードを使った場合、PDの空乏層の外側で発生した少数キャリヤが拡散することにより、時間遅れが生じ、入力パルス信号の終端が尾を引いた波形になる。特に、高速通信を行う場合、パルス幅の短いパルス信号が生成され、時間遅れが生じやすい。このため、パルス信号の波尾も引き易く、パルス幅歪みが頻発する。
【0005】
また、入力光の光源に安価なLED(Light Emitting Diode)を使用した場合、LEDの応答特性により、パルス幅によるが、光源のパルスが立ち上がり、または、立ち下がりが鈍った波形になる。このため、パルス信号の波尾が引く形になり、パルス幅歪みが頻発する。
【0006】
一方、パルス幅の長い信号を用いる場合、パルス信号の立下り後にパルス幅が持ち上がる現象が生じる。この持ち上がったパルス信号が基準電圧Vrefを超えてしまうと、コンパレータにおいて誤出力が生じ、システム全体の誤動作を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−182529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施形態にかかる光受信回路は、入力されるパルス幅の長短に拘らず、コンパレータにおけるパルス幅歪みおよび誤出力を低減させることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態にかかる光受信回路は、入力光に応じて電流を出力する受光手段と、入力端子に前記受光手段が接続された反転増幅器と、反転増幅器の入出力間に接続された帰還回路を具備する。この帰還回路は、反転増幅器のトランスインピーダンス特性が高周波側で高利得になるように、ラプラス平面の負の実軸上で極と零の組を複数設けられており、一方が反転増幅器の入力端子に接続され、他方が第2抵抗の一方と第3抵抗の一方と第4抵抗の一方と共通接続される第1抵抗と、他方が反転増幅器の出力端子に接続される第2抵抗と、他方が第1キャパシタの一方と接続される第3抵抗と、他方が第2キャパシタの一方と接続される第4抵抗と、他方が接地された第1キャパシタと、他方が接地された第2キャパシタとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は第1の実施形態にかかる光受信回路の回路図である。
【図2】図2は第1ないし第3の実施形態にかかる反転増幅器の回路図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかる帰還回路の変形例の一例示す回路図である。
【図4】図4は第1ないし第3の実施形態における反転増幅器のトランスインピーダンス特性を示すグラフである。
【図5】図5は第1の比較例にかかる回路図である。
【図6】図6は第1の比較例における反転増幅器のトランスインピーダンス特性を示すグラフである。
【図7】図7は第1の実施形態と第1の比較例とのパルス信号の波形を示すタイミングチャート図である。
【図8】図8は第1の実施形態と第1の比較例とのパルス信号の波形を示すタイミングチャート図である。
【図9】図9は第2の実施形態にかかる光受信回路を示す回路図である。
【図10】図10は、第2の実施形態にかかる帰還回路の変形例の一例を示す回路図である。
【図11】図11は、第3の実施形態にかかる光受信回路を示す回路図である。
【図12】図12は、第3の実施形態にかかる帰還回路の変形例の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態にかかる光受信回路10を示す回路図である。
光受信回路10は、入力光11の強度に応じた電流Ipを出力する受光素子12と、入力端子13aに受光素子12が接続された反転増幅器13と、トランスインピーダンスが低周波数側で小さくなり、且つ高周波数側で大きくなる周波数特性を有し、反転増幅器13の出力電圧Voを入力側に帰還する帰還回路14とを具備する。更に、非反転入力端子(+)が反転増幅器13の出力端子13bに接続され、反転入力端子(−)が所定の基準電圧Vrefを出力する基準電源15に接続されているコンパレータ16を具備している。
このコンパレータ16は、反転増幅器13の出力電圧Voと基準電圧Vrefとを比較し、比較結果に応じてハイレベルまたはロウレベルの電圧Voutを出力する。
【0013】
図2は、反転増幅器13の回路構成を例示した回路図である。図2に示すように、反転増幅器13は、npnバイポーラトランジスタQ1(以後、トランジスタQ1という)と、npnバイポーラトランジスタQ2(以後、トランジスタQ2という)と、抵抗R4と、定電流源20とを少なくとも有する。
【0014】
トランジスタQ1は、受光素子12がベースに接続され、電源Vccと接続された抵抗R4がコレクタに接続され、エミッタにおいて接地されている。トランジスタQ2は、ベースにトランジスタQ1のコレクタが接続され、コレクタに電源Vccが接続され、エミッタに接地された定電流源20が接続されている。トランジスタQ1はエミッタ接地アンプであり、トランジスタQ2は電圧増幅度がほぼ1のコレクタ接地アンプである。
【0015】
受光素子12は、受光した入力光11の強度に応じた電流Ipを出力し、反転増幅器13、すなわちトランジスタQ1のベースに供給する。トランジスタQ1は電流Ipを電圧に変換して増幅し、トランジスタQ2はトランジスタQ1の出力電圧を、低インピーダンス信号として出力端13bに出力する。この受光素子12は、入力光11の波長に応じて、シリコンフォトダイオード、InGaAs系のPINフォトダイオードまたはアバランェフォトダイオードであってもよい。
【0016】
帰還回路14は、反転増幅器13の入力端子13aと出力端子13bとの間に、第1抵抗R1と、第1抵抗R1と同値の第2抵抗R2と、第3抵抗R3と、第1キャパシタC1と、補正回路18とを有する。
【0017】
第1抵抗R1と第2抵抗R2は、反転増幅器13の入力端子13aと出力端子13bとの間において、接続点17を介して相互に直列接続されている。接続点17と接地との間には、直列接続された第3抵抗R3と第1キャパシタC1が接続されている。
【0018】
図1に示す例では、第3抵抗R3の一方の端子が接続点17に接続され、第3抵抗R3の他方の端子が接地された第1キャパシタC1に接続されている。
さらに、本実施形態では、接続点17と接地との間において、補正回路18が第3抵抗R3と第1キャパシタC1に対して並列に接続されている。
【0019】
補正回路18は、接続点17と接地との間に第4抵抗R4と第2キャパシタC2が接続されている。
図1に示す例では、第4抵抗のR4の一方の端子が接続点17に接続され、第4抵抗のR4の他方の端子が接地された第2キャパシタC2に接続される。
【0020】
図3は、第1の実施形態にかかる帰還回路14の変形例を示す回路図である。
図3に示すように、帰還回路14が備えるキャパシタと抵抗は逆転して配置されていてもよい。例えば、図3(a)に示すように、第1キャパシタC1は接続点17に接続されており、第3抵抗R3の一方の端子が第1キャパシタC1と接続され、他方の端子が接地されていてもよい。同様に、第2キャパシタC2は接続点17に接続されており、第4抵抗R4の一方の端子が第2キャパシタC2と接続され、他方の端子が接地されていてもよい。
【0021】
あるいは、第3抵抗R3と第1キャパシタC1と第4抵抗R4と第2キャパシタの接続関係が左右対称ではなく、対角線上に対象となっていてもよい。例えば、図3(b)に示すように、第3抵抗R3の一方の端子が接続点17に接続されており、第3抵抗R3の他方の端子が第1キャパシタC1と接続され、第1キャパシタC1は接地されていてもよい。同様に、第2キャパシタC2は接続点17に接続されており、第4抵抗R4の一方の端子が第2キャパシタC2と接続され、他方の端子が接地されていてもよい。
【0022】
以下、帰還回路14のインピーダンスについて説明する。
以下の説明では、トランジスタQ1によるエミッタ接地アンプのゲインが十分大きく、例えばゲインを50以上であることを条件とする。また、受光素子12の接合容量を無視し、反転増幅器13が周波数依存性を有しない理想的な増幅器であることを条件とする。
【0023】
さらに、反転増幅器13と帰還回路14のトランスインピーダンス特性は、帰還回路14の、トランスインピーダンス特性|Zf|に等しいことを前提とする。
【0024】
反転増幅器13の出力電圧信号はVo=Ip×|Zf|であることから、反転増幅器13のトランスインピーダンス特性は次式の伝達関数|Zf|で表される。なお、以下、sはラプラス変換子、すなわちラプラス平面を示す。
【数1】

【0025】
説明の便宜のため、上記式の第1抵抗R1、第2抵抗R2をR0=R1=R2=R、第1キャパシタC1、第1抵抗R1をC1R1=t0、第2キャパシタC2、第2抵抗R2をC2R2=t2とおくとトランスインピーダンス特性|Zf|は以下の式で表される。
【数2】

【0026】
さらにt0=α・t2=tとし、α>1とする。
【0027】
図4は、実施形態にかかる反転増幅器13のトランス特性インピーダンスを示すグラフであり、横軸が角周波数ω、縦軸がトランスインピーダンス特性|Zf|を示す。
一般に、このトランスインピーダンス特性|Zf|を伝達関数G(s)で表した場合、伝達関数の分子を零とおいた方程式の根を零(Zero)、分母を零とおいた方程式の根を極(Pole)という。
【0028】
図4に示される通り、本実施形態の回路構成では、零(zero)と極(pole)が夫々2組生じるため、第1の分子の根をω1、第1の分母の根をω2、第2の分子の根をω3、第2の分母の根をω4とする。以下、この2組の零と極の発生を式で示す。
【0029】
なお、第1抵抗R1と第2抵抗R2は便宜上、R1=R2=R0と表す。数1の伝達関数の分子を零とおいた方程式の根を零(Zero)、分母を零とおいた方程式の根を極(Pole)とすると、零(Zero)と極(Pole)は以下の式で表される。
【数3】

【0030】
零(zero)を表す式の√内は以下の式に変形でき必ず正になるため、虚数は想定されない。
【数4】

【0031】
原点から負の実軸上を−∞方向に零、極、零、極と並ぶ条件は以下の式がすべて正であることが条件となる。
【数5】

【0032】
式Aの場合、t>0なので[ ]内が正であればA>0となる。[ ]内の第1項、第2項はともに正なのでそれぞれ2乗して引き算すると式6が正であるからA>0となる。
【数6】

【0033】
式Bの場合、t>0であるから式Bを8t/3倍して正負を判定することが出来る。
【数7】

【0034】
数7について、1≦α≦5/3の時、第2項は正となるのでB>0となる。
また、α>5/3の時には第2項が負になるが、それぞれの項を2乗して引き算すると式8となり必ず正と成りこの場合もB>0となる。
【数8】

【0035】
式Cの場合、t>0であるから式Cを8t/3倍して正負を判定することが出来る。
【数9】

【0036】
α≧5/3の時には第2項は正となるのでC>0となる。
また、1≦α≦5/3の時には第2項が負になるが、それぞれの項を2乗して引き算すると式10となり必ず正と成りこの場合もC>0となる。
【数10】

【0037】
式Dの場合、t>0であるから式Dを8t/3倍して正負を判定することが出来る。
【数11】

【0038】
第1項は必ず正となるので、第1項、第2項をそれぞれ2乗して引き算すると式12となり必ず正となることからこの場合もD>0となる。
【数12】

【0039】
以上の通り、数5のA、B、C、Dの条件が、ゼロよりも大きいことが証明できる。
このことから、前述の条件を満たせばゼロとポールがラプラス平面(s)の負の実軸上にあり、原点からマイナス方向に向かって第1の零、第1の極、第2の零、第2の極というように交互に並ぶことがわかる。
【0040】
(比較例)
図5は比較例の回路図を示す。比較例の帰還回路14は、第1抵抗R1と第2抵抗R2の接続点と接地電位Gndとの間に、第3抵抗R3と第1キャパシタC1を有する所謂T型ネットワークを形成する。
【0041】
帰還回路14は、トランスインピーダンス特性は周波数に応じて変化する。
具体的には、第3抵抗R3とこれに直接接続された第1キャパシタC1を帰還回路14の構成とすることにより、帰還回路14のトランスインピーダンスが低周波側で小さくなり、且つ高周波側で大きくなる。
【0042】
図6は、比較例における反転増幅器13の周波数応答を示したグラフであり、横軸が角周波数ω、縦軸が電流電圧特性Vo/Ip、すなわち、トランスインピーダンス特性|Zf|を示す。このトランスインピーダンス特性から明らかなように比較例の回路構成ではω1とω2で、零(zero)と極(pole)が1組のみ生じる。
【0043】
しかしながら、受光回路の使用上において、入力光の周波数特性や受光素子内の拡散キャリアの影響等、複数の帯域制限要素がある場合には、比較例の構成ではパルス歪みの補正効果が不十分なうえ、後に示すような誤動作を起こすことがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、入力光と受光素子内の拡散キャリアの影響で低下した出力端子13bにおける周波数特性が高周波数帯域で高利得になるような構成にした。
【0045】
図7は、第1の比較例と本実施形態とのパルス信号の波形を示すタイミングチャート図である。
ここでは、一例として、パルス幅が100ns、PDの拡散キャリアによる時定数t1=3us、LEDの応答特性の時定数t2=20ns、PDの拡散キャリアによる利得の低下を20%としている。
【0046】
また、図7は、R1=R2=R3=R4=Rとし、C1=100pF、R=10kΩ、C2=6pFの場合を示す。
【0047】
まず、(a−1)、(a−2)は比較例のパルス波を表したものであり、(a−1)は反転増幅器13の出力Voを、(a−2)はコンパレータ16の出力Voutを示す。これらのグラフからわかるように、比較例は反転増幅器13の出力Voにおいて波尾を引くため、Δta分の時間遅れが生じ、コンパレータ16の出力Voutにおいてパルス幅の歪み(いわゆるパルス幅の太り)が生じる。
【0048】
これに対して、(b−1)、(b−2)は本実施形態のパルス波を表したものであり、(b−1)は反転増幅器13の出力Voを、(b−2)はコンパレータ16の出力Voutを示す。(b−1)に示す通り、本実施形態では、反転増幅器13の出力Voの波尾においてアンダーシュートを生じさせる。
この場合、(b−2)に示す通り、パルス波の立ち下がりと立ち上がりにおける時間の遅れΔtbが生じるものの、アンダーシュートを意図的に生じさせることで、Δta>Δtbとなり、時間遅れを軽減すると共に、パルス幅の歪みを減少させることが可能となる。
【0049】
図8は、第1の比較例と本実施形態とのパルス信号の波形を示すタイミングチャート図であり、パルス幅が1usの例を示す。図8は、R1=R2=R3=R4=R0とし、C1=100pF、R=10kΩ、C2=6pFの場合を例示する。
【0050】
ここで、PDの拡散キャリアによる時定数t1=3us、LEDの応答特性の時定数t2=20nsとした。また、PDの拡散キャリアによる利得の低下を20%とした。
【0051】
まず、(a−1)、(a−2)は比較例のパルス波を表したものであり、(a−1)は反転増幅器13の出力Voを、(a−2)はコンパレータ16の出力Voutを示す。これらのグラフからわかるように、比較例は反転増幅器13の出力Voの立ち下がり後の波尾が基準電圧Vrefより持ち上がるため、コンパレータ16の出力Voutにおいて誤出力が生じる。
【0052】
これに対して、(b−1)、(b−2)は本実施形態のパルス波を表したものであり、(b−1)は反転増幅器13の出力Voを、(b−2)はコンパレータ16の出力Voutを示す。
(b−1)に示す通り、本実施形態では、反転増幅器13の出力Voの波尾においてアンダーシュートを生じさせ、その後の立ち上がりにおいて基準電圧Vref以下になるように抑える。このように意図的にアンダーシュートを生じさせ、波尾を制御することで、(b−2)に示す通り、出力パルス信号Voutの誤出力を防止することが可能となる。
【0053】
(第2の実施形態)
図9は第2の実施形態にかかる光受信回路20を示す回路図である。
同図に示すように、本実施形態にかかる光受信回路20は、帰還回路24において第1の実施形態と異なる。すなわち、第1抵抗R1と第2抵抗R2の接続点27と接地の間に第3抵抗R3と第4抵抗R4と第1キャパシタC1が直接に接続され、第3抵抗R3と第4抵抗R4の接続点27aと接地の間に第2キャパシタC2が接続される。なお、本実施形態においても第1抵抗R1と第2抵抗R2は同値であるものとする。
【0054】
図10は、第2の実施形態にかかる帰還回路24の変形例を示す回路図である。
図10に示す通り、抵抗とキャパシタの配置が入れ替わってもよい。例えば、第1抵抗R1と第2抵抗R2の接続点27と接地との間に、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2と第3抵抗R3を直列に接続させ、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2の接続点と接地との間に第4抵抗R4が接続される。
【0055】
本実施形態においても、第1の実施形態にかかる図4のグラフ同様、2組の極(Pole)と零(Zero)を有するトランスインピーダンス特性|Zf|を示す。以下、この2組の零と極の発生を式で示す。なお、説明の便宜上R1=R2=R0とする。
【0056】
受光素子22の接合容量を無視し、反転増幅器13が周波数依存性を有しない理想的な増幅器であるとした場合、反転増幅器23のトランスインピーダンス特性|Zf|はラプラス変換を用いて次式で表される。
【数13】

【0057】
本実施形態も、第1の実施形態と同様、零(zero)と極(pole)が夫々2組生じる伝達関数が示される。
【0058】
したがって、式13の分母の根と分子の根を夫々出すことにより、第1の分子の根をω1、第1の分母の根をω2、第2の分子の根をω3、第2の分母の根ω4を夫々求めることが可能となる。
【0059】
本実施形態では、極と零の組が2組生じる場合を例示的に説明したが、これに限るものではない。
たとえば、図9において、接続点27と接地との間に第3抵抗R3と第2キャパシタC2の組み合わせを複数設けることで、極と零の組を3つ以上発生させることが可能となる。
このように、極と零の組み合わせを3以上にすることで、コンパレータ16における遅延時間をより短くし、出力パルスVoutの誤動作を軽減することが可能となる。
【0060】
(第3の実施形態)
図11は第3の実施形態にかかる光受信回路30を示す回路図である。
同図に示すように、本実施例の光受信回路30は、帰還回路34において第1の実施形態と異なる。すなわち、入力端子33aと出力端子33bの間に第1抵抗R1と第2抵抗R2とを直列に接続させ、第1抵抗R1と第2抵抗R2の接続点37aと接地との間に第3抵抗R3と第1キャパシタC1を直列に接続させる。
【0061】
さらに、入力端子33aと出力端子33bの間に、第1抵抗R1と第2抵抗R2に対して並列になるよう第4抵抗R4と第5抵抗R5を直列に接続させ、第4抵抗R4と第5抵抗R5の接続点37bと接地との間に第6抵抗R6と第2キャパシタC2が接続される。 本実施形態では、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第4抵抗R4および第5抵抗R5は同値である。
【0062】
図12は、第3の実施形態にかかる帰還回路34の変形例を示す回路図である。
図12に示す通り、抵抗とキャパシタの配置が入れ替わってもよい。例えば、接続点37aに第1キャパシタC1が接続され、第3抵抗R3の一方の端子が第1キャパシタC1に接続され、他方の端子が接地されていてもよい。同様に、接続点37bに第2キャパシタC2が接続され、第6抵抗R6の一方の端子が第2キャパシタC2に接続され、他方の端子が接地されていてもよい。
【0063】
本実施形態においても、第1の実施形態にかかる図4のグラフ同様、2組の極(Pole)と零(Zero)を有するトランスインピーダンス特性|Zf|を示す。以下、この2組の零と極の発生を式で示す。なお、説明の便宜上、R1=R2=R4=R5=R0とする。
【0064】
受光素子32の接合容量を無視し、反転増幅器33が周波数依存性を有しない理想的な増幅器であるとした場合、反転増幅器33のトランスインピーダンス特性|Zf|はラプラス変換を用いて次式で表される。
【数14】

【0065】
本実施形態も、第1の実施形態と同様、零(zero)と極(pole)が夫々2組生じる伝達関数が示される。したがって、数14の分母の根と分子の根を夫々出すことにより、第1の分子の根をω1、第1の分母の根をω2、第2の分子の根をω3、第2の分母の根ω4を夫々求めることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、極と零の組が2組生じる場合を例示的に説明したが、これに限るものではない。
たとえば、図11において、接続点33aと接続点33bとの間に、第4抵抗R4と第5抵抗R5と第6抵抗R6と第2キャパシタC2の組み合わせを複数設けることで、極と零の組を3つ以上発生させることが可能となる。
【0067】
このように、極と零の組み合わせを3以上にすることで、コンパレータ16における時間遅れをより短くすることが可能となる。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
10、20、30:光受信回路、11、21、31:入力光、12、21、31:受光素子、13、23、33:反転増幅器、14、24、34:帰還回路、15、25、35:基準電源、16、26、36:コンパレータ(比較器)、17、27、37:接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光に応じて電流を出力する受光手段と、
前記受光手段が接続された入力端子と、出力端子を有する反転増幅器と、
前記入力端子と前記出力端子の間に接続され、トランスインピーダンス特性が高周波側で複数段の高利得を得るように、ラプラス平面の負の実軸上で極と零の組を複数設けられた帰還回路と、を具備することを特徴とする光受信回路。
【請求項2】
前記極と零の複数組は、ラプラス平面の負の実軸上に、原点からマイナス方向に向かって零と極の順番で交互に並んでいることを特徴とする請求項1に記載の光受信回路。
【請求項3】
前記帰還回路は、
前記反転増幅器の前記入力端子と前記出力端子の間に直列接続された第1抵抗と第2抵抗と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と、接地との間に接続され、相互に直列接続された第3抵抗と第1キャパシタと、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と、接地との間に接続され、前記第3抵抗と前記第1キャパシタに対して並列に接続された補正回路と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の光受信回路。
【請求項4】
入力光に応じて電流を出力する受光素子と、
前記受光素子に接続された入力端子と、出力端子を有する反転増幅器と、
前記反転増幅器の前記入力端子と前記出力端子の間に直列接続された第1抵抗と第2抵抗と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と、接地との間に接続され、相互に直列接続された第3抵抗と第1キャパシタと、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と、接地との間に接続され、前記第3抵抗と前記第1キャパシタに対して並列に接続された補正回路と、を具備することを特徴とする光受信回路。
【請求項5】
入力光に応じて電流を出力する受光素子と、
前記受光素子に接続された入力端子と、出力端子を有する反転増幅器と、
前記反転増幅器の前記入力端子と前記出力端子の間に直列接続された第1抵抗と第2抵抗と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と、接地との間に接続され、相互に直列接続された第3抵抗と第4抵抗と第1キャパシタと、
前記第3抵抗と前記第4抵抗との接続点と、接地との間に接続された第2キャパシタと、を具備することを特徴とする光受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−90261(P2012−90261A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200034(P2011−200034)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】