光増幅装置及び伝送路損失測定方法
【課題】 測定可能な信号光の伝送路損失の範囲を拡大する。
【解決手段】 本発明の光増幅装置は、ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する装置であり、ラマン増幅媒体にポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、ラマン増幅媒体に対するポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、ラマン増幅媒体に対するポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、ラマン増幅媒体におけるポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、ラマン増幅媒体におけるポンプ光の伝送路損失に対して、信号光の波長及びポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、ラマン増幅媒体における信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段とを備える。
【解決手段】 本発明の光増幅装置は、ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する装置であり、ラマン増幅媒体にポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、ラマン増幅媒体に対するポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、ラマン増幅媒体に対するポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、ラマン増幅媒体におけるポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、ラマン増幅媒体におけるポンプ光の伝送路損失に対して、信号光の波長及びポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、ラマン増幅媒体における信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムのノード間に設けられ、ラマン増幅により信号光の増幅を行う光増幅装置の技術分野に関し、特にノード間での信号損失である伝送路損失の測定を可能とする光増幅装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信トラフィック増加を背景として、光通信システムの需要が高まっている。この種の装置では、伝送路ごとに波長多重用光増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)を備え、伝送路を伝搬する信号光の増幅を行っており、大容量且つ長距離伝送を実現する光増幅中継システムが主流である。
【0003】
光増幅中継システムにおいて、伝送路長が長いなどの要因により伝送路損失が大きい条件では、EDFAへの信号光の入力パワーが低減するため、信号光パワーと雑音光パワーの比であるS/Nの劣化に伴い、伝送特性が劣化する可能性がある。以下の先行技術文献では、かかる伝送特性の劣化に鑑み、伝送路にポンプ光を注入し、誘導ラマン散乱の効果を用いた増幅作用を利用する分布ラマン増幅技術について記載されている。光増幅器への入力レベルが増加することでS/Nが増加し、伝送特性が改善され、伝送可能なスパン数及び距離が増えることになり、分布ラマン増幅技術は有効な手段として既に実用化に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−239813号公報
【特許文献2】特開2005−277044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伝送路における伝送路損失をラマン増幅により補償する場合、信号光の伝送路内での伝送路損失が精確に測定されることが求められる。しかしながら、上述したようにS/Nに劣化が生じるほど伝送路が長距離にわたる場合などでは、伝送路からの信号光の出力パワーを適切に測定出来ず、伝送路損失が測定出来ないとの技術的な問題がある。この場合、信号光の確実な伝送を可能とするために必要なラマン増幅による増幅効果を決定することが出来ず、適切な増幅を行えない可能性がある。
【0006】
先行技術文献には、信号光とは異なる監視光を伝送路内に供給し、該監視光を用いた伝送路損失の測定を行う構成が記載されている。しかしながら、かかる構成を実現するためには、長距離の伝送路における伝送路損失に対応した高出力の監視光源を用意する必要があり、装置構成上負荷を生じることになる。また、監視光が伝送路の後段のパワーモニタに混入することで、信号光のパワー検出精度が悪化するとの技術的な問題の要因となる場合がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み為されたものであり、伝送路が長距離にわたる場合など、伝送路損失が比較的大きい状況においても、信号光の伝送路損失を高精度に測定可能とする光増幅装置及び伝送路損失測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、開示の光増幅装置は、ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する装置であり、ポンプ光供給手段と、第1検出手段と、第2検出手段と、ポンプ光損失算出手段と、信号光損失算出手段とを備える。
【0009】
ラマン増幅媒体は、信号光の伝送路中に設けられる、充分な長さを有する媒体(例えば、光ファイバ)である。
【0010】
ポンプ光供給手段は、例えば光ダイオード(Laser Diode:LD)など、所定の波長の光を、供給される電力などに応じたパワーで出力可能な構成である。ポンプ光供給手段は、ラマン増幅媒体の信号光出力側に設けられ、例えばラマン増幅媒体を伝搬する信号光に逆行する方向でラマン増幅媒体中を伝搬する。
【0011】
第1検出手段は、ポンプ光供給手段とラマン増幅媒体との間に設けられ、ポンプ光供給手段より出力されるポンプ光の一部の入射を受けて、ラマン増幅媒体に入力されるポンプ光のパワーである入力パワーの検出を行う。このため、第1検出手段は、例えば光電効果によって入射される光のパワーを検出可能なフォトディテクタなどの装置であってよい。
【0012】
第2検出手段は、ラマン増幅媒体を伝搬したポンプ光の入射を受けて、ラマン増幅媒体より出力されるポンプ光のパワーである出力パワーの検出を行う。このため、第2検出手段は、ポンプ光供給手段からラマン増幅媒体に供給されるポンプ光の出力側(つまり、ラマン増幅媒体における信号光の入力側)に設けられる第1検出手段と同様のフォトディテクタなどであってよい。
【0013】
ポンプ光損失算出手段は、第1検出手段において検出されるポンプ光の入力パワーと、第2検出手段において検出されるポンプ光の出力パワーとを比較することで、ラマン増幅媒体におけるポンプ光の伝送路損失を算出する。
【0014】
信号光損失算出手段は、ポンプ光損失算出手段により算出されるポンプ光の伝送路損失に対して補正を行うことで、ラマン増幅媒体における信号光の伝送路損失の算出を行う。例えば、信号光損失算出手段は、ラマン増幅媒体における伝送路損失の周波数特性、並びにポンプ光の波長及び信号光の波長に基づいて、補正のための係数を算出する。信号光損失算出手段は、このように算出される補正係数をポンプ光の伝送路損失に対して適用することで、ラマン増幅媒体における信号光の伝送路損失を算出する構成であってよい。
【0015】
開示の伝送路損失測定方法は、上記課題を解決するために、上述した光増幅装置における伝送路損失を測定する方法である。具体的には、開示の伝送路損失測定方法は、光増幅装置が備えるポンプ光供給手段が実施するものと同様の処理を行うポンプ光供給工程と、第1検出手段が実施するものと同様の処理を行う第1検出工程と、第2検出手段が実施するものと同様の処理を行う第2検出工程と、ポンプ光損失算出手段が実施するものと同様の処理を行うポンプ光損失算出工程と、信号光損失算出手段が実施するものと同様の処理を行う信号光損失算出工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
開示の光増幅装置の動作によれば、ノード間のラマン増幅媒体に供給されるポンプ光について、ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定することで、信号光についての伝送路損失を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光通信システム内のラマン増幅装置の構成を示す図である。
【図2】光通信システムにおけるノード間の伝送路長と信号光パワーの関係を示すグラフである。
【図3】伝送路内を伝搬する光の波長と伝送路損失との関係を示すグラフである。
【図4】ラマン増幅装置内の演算部を構成する機能部を示すブロック図である。
【図5】ポンプ光のスパンロス測定に基づく信号光波長のスパンロス算出動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】伝送路の種別に応じた光の波長と伝送路損失との関係を示すグラフである。
【図7】光伝送路に応じた補正係数の算出動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】光伝送路の種別を判別する同定動作を行うための機能部の構成を示すブロック図である。
【図9】光伝送路に応じた補正係数の算出動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】伝送路内を伝搬する光の波長と伝送路損失との関係を示すグラフである。
【図11】伝送路損失に応じた光増幅装置の増幅利得の制御方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(1)構成例
開示の光増幅装置の実施形態であるラマン増幅装置1の構成について図1を参照しながら説明する。図1には、光ファイバを用いた光通信システム内に設けられるラマン増幅装置1の構造が模式的に示されている。
【0020】
ラマン増幅装置1は、ノード間に設けられる光伝送路30a及び30bの一端に対して光コネクタを介して接続される光装置10と、他端に対して光コネクタを介して接続される光装置20とを備える。
【0021】
尚、ラマン増幅装置1では、図1に示されるように、双方向に伝搬する信号光について分布ラマン増幅を実施している。具体的には、図1の左側から光伝送路30aを介して右側方向へ伝搬する信号光SL1と、図1の右側から光伝送路30bを介して右側方向へ伝搬する信号光SL2との二通りの信号光に対して、分布ラマン増幅を実施する構成である。
【0022】
各装置の構成について以下に具体的に説明する。
【0023】
光装置10は、光装置20と協働することにより、光伝送路30aを伝搬する信号光SL1に対する分布ラマン増幅を制御するとともに、光伝送路30bを伝搬する信号光SL2を分布ラマン増幅するためのポンプ光PL2を供給する。光装置10は、光モニタ部110、復調部120、演算部130、ポンプ光制御部140、ポンプ光源150、光モニタ部160及びWDMカプラ170を備える。
【0024】
光モニタ部110は、信号光SL1の伝送路上に設けられる分岐カプラ111を介して出力される光をPD−A112、又はPD−B113で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ111は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ111に対して入射する信号光SL1は、光伝送路30a方向へ出力されると共に、一部がPD−A112に出力される。PD−A112は、受光した信号光SL1のパワーをモニタし、信号光SL1の入力パワーPa1として演算部130に出力する。また、分岐カプラ111に対して光伝送路30a側より入射するポンプ光PL1は、更に光分岐部114において分岐され、復調部120へ出力されると共に、一部がPD−B113に出力される。PD−B113は、受光したポンプ光PL1のパワーをモニタし、ポンプ光PL1の出力パワーPb1として演算部130に出力する。
【0025】
復調部120は、受光したポンプ光PL1に施された変調を復調することで、ポンプ光PL1に重畳される変調データを取得し、演算部130へと入力する。尚、変調データとは、後述するように光装置20内で設定されるポンプ光PL1の光伝送路30aへの入力状態を示すデータであって、例えば、光装置20におけるPD−C262によりモニタされるポンプ光PL1の入力パワーPc1などである。
【0026】
演算部130は、例えばメモリなどのデータ格納手段と、CPU(Central Processing Unit)などの演算手段とを備える。これらの構成などにより、演算部130は、PD−B113において受光されるポンプ光PL1の出力パワーPb1及び復調部120において取得される変調データに含まれるポンプ光PL1の入力パワーPc1の入力を受け、光伝送路30aにおけるスパンロスの演算を行う。
【0027】
ポンプ光制御部140は、ポンプ光源150が出力するポンプ光PL2の態様を制御する装置である。例えば、ポンプ光制御部140は、ポンプ光源150に供給される駆動電流を調節することでポンプ光PL2の光量の制御を行う。また、ポンプ光制御部140は、PD−C162から入力されるポンプ光PL2の入力パワーPc2など、ポンプ光PL2の入力状態を示すデータをポンプ光PL2に重畳するよう、ポンプ光源150に供給される駆動電流を変調制御する。
【0028】
ポンプ光源150は、光伝送路30bを伝搬する信号光SL2を後方より分布ラマン増幅するためのポンプ光PL2を光伝送路30bに供給する光源である。ポンプ光源150より出力されるポンプ光PL2は、光モニタ部160及びWDMカプラ170を介して、光伝送路30bに出力される。
【0029】
光モニタ部160は、ポンプ光PL2の伝送路上に設けられる分岐カプラ161を介して出力される光をPD−C162、又はPD−D163で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ161は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ161に対してポンプ光源150より入射するポンプ光PL2は、光伝送路30a方向へ出力されると共に、一部がPD−C162に出力される。PD−C162は、受光したポンプ光PL2のパワーをモニタし、光伝送路30bに対するポンプ光PL2の入力パワーPc2として演算部130に出力する。また、光伝送路30b方向より反射され、分岐カプラ161に入射するポンプ光PL2は、PD−D163に出力される。PD−D163は、受光した反射されたポンプ光PL2のパワーをモニタし、光伝送路30bに対するポンプ光PL2の反射パワーPd2として演算部130に出力する。
【0030】
WDMカプラ170は、光伝送路30aの光装置20方向から出力される信号光SL2については、下流側(つまり、図1左方向)に出力する一方、ポンプ光源150からのポンプ光PL2については光伝送路30bへ出力する。更に、光伝送路30の光装置20方向から反射されるポンプ光PL2については、光モニタ部160方向へ出力する。
【0031】
光装置20は、光装置10と協働することにより、光伝送路30bを伝搬する信号光SL2に対する分布ラマン増幅を制御するとともに、光伝送路30aを伝搬する信号光SL1を分布ラマン増幅するためのポンプ光PL1を供給する。光装置20は、光モニタ部210、復調部220、演算部230、ポンプ光制御部240、ポンプ光源250、光モニタ部260及びWDMカプラ270を備える。
【0032】
光モニタ部210は、信号光SL2の伝送路上に設けられる分岐カプラ211を介して出力される光をPD−A212、又はPD−B213で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ211は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ211に対して入射する信号光SL2は、光伝送路30b方向へ出力されると共に、一部がPD−A212に出力される。PD−A212は、受光した信号光SL2のパワーをモニタし、信号光SL2の入力パワーPa2として演算部230に出力する。また、分岐カプラ211に対して光伝送路30b側より入射するポンプ光PL2は、更に光分岐部214において分岐され、復調部220へ出力されると共に、一部がPD−B213に出力される。PD−B213は、受光したポンプ光PL2のパワーをモニタし、ポンプ光PL2の出力パワーPb2として演算部230に出力する。
【0033】
復調部220は、受光したポンプ光PL2に施された変調を復調することで、ポンプ光PL2に重畳される変調データを取得し、演算部230へと入力する。尚、変調データとは、光装置10内で設定されるポンプ光PL2の光伝送路30bへの入力状態を示すデータであって、例えば、光装置10におけるPD−C162によりモニタされるポンプ光PL2の入力パワーPc2などである。
【0034】
演算部230は、例えばメモリなどのデータ格納手段と、CPUなどの演算手段とを備える。これらの構成などにより、演算部230は、PD−B213において受光されるポンプ光PL2の出力パワーPb2及び復調部220において取得される変調データに含まれるポンプ光PL2の入力パワーPc2の入力を受け、光伝送路30bにおけるスパンロスの演算を行う。
【0035】
ポンプ光制御部240は、ポンプ光源250が出力するポンプ光PL1の態様を制御する装置である。例えば、ポンプ光制御部240は、ポンプ光源250に供給される駆動電流を調節することでポンプ光PL1の光量の制御を行う。また、ポンプ光制御部240は、PD−C262から入力されるポンプ光PL1の入力パワーPc1など、ポンプ光PL1の入力状態を示すデータをポンプ光PL1に重畳するよう、ポンプ光源250に供給される駆動電流を変調制御する。
【0036】
ポンプ光源250は、光伝送路30aを伝搬する信号光SL1を後方より分布ラマン増幅するためのポンプ光PL1を光伝送路30aに供給する光源である。ポンプ光源250より出力されるポンプ光PL1は、光モニタ部260及びWDMカプラ270を介して、光伝送路30aに出力される。
【0037】
光モニタ部260は、ポンプ光PL1の光伝送路上に設けられる分岐カプラ261を介して出力される光をPD−C262、又はPD−D263で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ261は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ261に対してポンプ光源250より入射するポンプ光PL1は、光伝送路30a方向へ出力されると共に、一部がPD−C262に出力される。PD−C262は、受光したポンプ光PL1のパワーをモニタし、光伝送路30aに対するポンプ光PL1の入力パワーPc1として演算部230に出力する。また、光伝送路30a方向より反射され、分岐カプラ261に入射するポンプ光PL1は、PD−D263に出力される。PD−D263は、受光した反射されたポンプ光PL1のパワーをモニタし、光伝送路30aに対するポンプ光PL1の反射パワーPd1として演算部230に出力する。
【0038】
WDMカプラ270は、光伝送路30aの光装置10方向から出力される信号光SL1については、下流側(つまり、図1右方向)に出力する一方、ポンプ光源250からのポンプ光PL1については光伝送路30a方向へ出力する。更に、光伝送路30aの光装置10方向において反射されるポンプ光PL1については、光モニタ部260方向へ出力する。
【0039】
光伝送路30aは、光装置10を介して入射する信号光SL1を伝搬させ、光装置20へ入射させる一方、光装置20より入射されるポンプ光PL1を伝搬させ、光装置10へ入射させる。光伝送路30a内を伝搬する信号光SL1は、ポンプ光PL1によるラマン増幅を受ける。
【0040】
光伝送路30bは、光装置20を介して入射する信号光SL2を伝搬させ、光装置10へ入射させる一方、光装置10より入射されるポンプ光PL2を伝搬させ、光装置20へ入射させる。光伝送路30b内を伝搬する信号光SL2は、ポンプ光PL2によるラマン増幅を受ける。
【0041】
図2を参照して、光装置10及び光装置20によるラマン増幅効果について説明する。尚、以下では、説明の便宜のため、信号光SL1を伝搬するための構成に着目して説明する。特に記載のない限りは、信号光SL2の伝送のための構成についても同様のものであってよい。
【0042】
図2は、光伝送路30aの長さと、該光伝送路30a中を伝搬する信号光パワー及びラマン増幅による増幅効果を示すグラフである。図2に示されるように、信号光SL1は、光伝送路30a内の伝搬距離が長くなるにつれて、スパンロスにより信号光パワーが低減していく。光伝送路30aは、ノードの設置条件などに応じて、比較的長距離に構成することが求められる場合もあり、長さによっては信号光SL1のS/Nなどの光性能を大きく悪化させる。そこで、ラマン増幅装置1では、ポンプ光PL1を光伝送路30a内に注入することで、分布ラマン増幅を生じさせ、信号光SL1の信号光パワーの増幅を行っている。
【0043】
一方で、ラマン増幅による適切な信号光SL1の信号光パワーの増幅を実施するためには、光伝送路30a内でのスパンロスによる信号光SL1の信号光パワーの損失がモニタされていることが好ましい。例えば、光装置20は、信号光SL1の信号光パワーの損失に応じてラマン増幅による利得を決定することで、より適切な態様で信号光SL1の信号光パワーの増幅が可能となる。このため、スパンロスが適切に求められることが好ましい。しかしながら、スパンロスによる損失が大きい光伝送路30aでは、信号光SL1の信号光パワーが低減し、出力側の光装置20などに備えられるPDでの暗電流に信号光パワーが埋もれて、スパンロスの測定が出来なくなる場合がある。
【0044】
開示のラマン増幅装置1においては、上述したように、ポンプ光PL1を用いて測定される光伝送路30aでのスパンロスに対して補正を行うことで、信号光SL1に係る光伝送路30aでのスパンロスを取得可能としている。
【0045】
図3に、光伝送路内を伝搬する光の波長と、光伝送路の単位長さ当たりのスパンロスとの関係を示す。光伝送路は、単位長さ当たりのスパンロスによる光損失が伝搬する光の波長に応じて大きく変化するという損失波長特性を有する。例えば、図3に示されるように、ポンプ光PL1の帯域は、信号光SL1の帯域から離れているため、光伝送路内での単位長さ当たりのスパンロスによる光損失が大きく異なる。
【0046】
他方で、同一のドーパント材料を含んで成る光伝送路は、損失波長特性が一定であるという性質を有する。光伝送路は、所定の波長分散特性を均一に保つために屈折率が均一となることが求められ、かかる要求に合致した光伝送路が製造されることが好ましい。具体的には、光伝送路は、スパンロスの波長特性の一要因となるガラス母材に対するドーパントの添加度合いが均一となるよう製造されることが好ましい。尚、光伝送路の製造工程において高温での処理が行われることが一般的であり、該処理によって光伝送路中のドーパント材料が光伝送路中に均一に拡散される。これらの根拠に基づいて、上述の性質が成立すると見なすことが出来る。
【0047】
従って、ポンプ光PL1帯域における単位長さ当たりのスパンロスをPとし、信号光SL1帯域における単位長さ当たりのスパンロスをSとすると、両者の比S/Pは一定であると見なすことが出来る。このため、ポンプ光PL1帯域におけるスパンロスをLp1、信号光SL1帯域におけるスパンロスをLs1とする場合、比S/Pを補正値として、Lp1に適用することで、Ls1を算出することが出来る。
【0048】
図4は、光装置10の演算部130内における、信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1の算出を行う機能部の構成を示すブロック図である。演算部130は、加算器131と、補正部132とを備える。
【0049】
加算器131は、光装置10の復調部120において取得されるポンプ光PL1の入力パワーPc1と、光装置10のPD−B113より入力されるポンプ光PL1の出力パワーPb1との差分より、ポンプ光PL1帯域におけるスパンロスLp1(=Pc1−Pb1)を算出する。
【0050】
補正部132は、ポンプ光PL1帯域におけるスパンロスLp1に対して、光伝送路30aのドーパント材料などに基づいて決定される比S/Pを乗算することで、信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1(=Lp1*S/P)を算出する。このために、補正部132は、メモリ133内に格納されるデータを参照することなどにより、光伝送路30aにおける損失波長特性に基づく補正係数S/Pの取得を行う。
【0051】
ラマン増幅装置1による、光伝送路30aにおける信号光SL1帯域のスパンロスLs1の取得に係る動作について、以下に詳述する。
【0052】
(2)基本動作例
ラマン増幅装置1による信号光SL1に係る光伝送路30aでのスパンロスの算出動作例について以下に説明する。図5は、ラマン増幅装置1によるスパンロス取得の流れを示すフローチャートである。尚、該動作によれば、後述するように、光伝送路30a内でのコネクタ外れなどに起因する無信号状態の発生を検出することも可能となる。
【0053】
スパンロスの取得動作においては、先ず、光装置20のポンプ光制御部240の制御の下、ポンプ光源250がポンプ光PL1を光伝送路30aに対して出力する。ポンプ光PL1の一部は、分岐カプラ261によりPD−C262に出力され、入力パワーPc1が測定される(ステップS101)。尚、一方で、光伝送路30aより反射されたポンプ光PL1が分岐カプラによりPD−D263に出力され、反射パワーPd1が測定される。
【0054】
光装置20のポンプ光制御部240は、PD−C262より入力されるポンプ光PL1の入力パワーPc1を示す情報をポンプ光PL1に重畳するよう、ポンプ光源PL1の駆動電流を変調する(ステップS102)。
【0055】
光装置20の演算部230は、PD−C262より入力されるポンプ光PL1の入力パワーPc1と、PD−D263より入力されるポンプ光PL1の反射パワーPd1との比較を行う(ステップS103)。該閾値は、例えば、光伝送路30a内での通常のポンプ光PL1の反射による反射パワーPd1と比較して小さい、光伝送路30a内でのコネクタ外れなどによる空気層からのポンプ光PL1の反射による反射パワーを検出可能に設定される。つまり、閾値と比較して入力パワーPc1とポンプ光PL1の反射パワーPd1との差分が高い場合、PD−D263は、空気層により反射されたポンプ光PL1の反射パワーPd1をモニタしている状態となる。
【0056】
ポンプ光PL1の入力パワーPc1とポンプ光PL1の反射パワーPd1との差分が閾値以上に高い場合(ステップS103:Yes)、演算部230は、その旨をポンプ光制御部240に通知する。ポンプ光制御部240は、該通知を受信することで、光伝送路30a内でコネクタ外れなどによる無信号状態が生じていると判断する(ステップS104)。そこで、ポンプ光制御部240は、ポンプ光源250によるポンプ光PL1の停止や、アラームによる報知など、異常時処理を実施して、動作を終了する(ステップS105)。
【0057】
他方で、ポンプ光PL1の入力パワーPc1とポンプ光PL1の反射パワーPd1との差分が閾値より低い場合(ステップS103:No)、コネクタ外れなどが生じていないため、ポンプ光PL1は光伝送路30a内を伝搬して光装置10内に入射する。ポンプ光PL1の一部は、分岐カプラ111によりPD−B113に出力され、出力パワーPb1が測定される(ステップS106)。また、ポンプ光PL1の残りは、復調部120にて受光され、光装置20のポンプ光制御部240において施された変調が復調されることで、入力パワーPc1が取得される(ステップS107)。
【0058】
演算部130は、変調部120において取得されるポンプ光PL1の入力パワーPc1と、PD−B113において測定されたポンプ光PL1の出力パワーPb1との差分より、光伝送路30aにおけるポンプ光PL1帯域のスパンロスLp1を算出する(ステップS108)。
【0059】
次に、演算部130は、内部のメモリなどに格納されるデータベースなどを参照し、光伝送路30aに応じた補正係数S/Pを決定する(ステップS109)。演算部130は、決定された補正係数S/Pを光伝送路30aにおけるポンプ光PL1帯域のスパンロスLp1に適用することで、信号光SL1帯域のスパンロスLs1を算出する(ステップS110)。
【0060】
以上、説明した一連の動作により、光伝送路30aにおける信号光SL1帯域のスパンロスLs1が算出される。特に、光伝送路30aが長距離にわたり、光伝送路30aの出力側で、ポンプ光による増幅を受けていない状態の信号光SL1が確認出来ない程スパンロスが大きくなる場合であっても、信号光SL1帯域のスパンロスLs1を算出することが可能となる。
【0061】
具体的には、ポンプ光PL1のパワーは、信号光SL1の信号光パワーと比較して大幅に高いため、上述のようにスパンロスが大きい長距離にわたる光伝送路30aであっても、スパンロスLp1を測定可能となる。尚、図3に示されるように、ポンプ光帯域における光伝送路30aの単位長さ当たりのスパンロスは、信号光帯域における光伝送路30aの単位長さ当たりのスパンロスと比較して高いものの、ポンプ光のパワーは、信号光のパワーと比較して更に高いものとなる。このため、信号光SL1帯域のスパンロスLs1を求めることが可能なスパンロス範囲をよりスパンロスが大きい領域まで拡張することが出来る。
【0062】
近年の光通信システムの長距離化の需要の影響により、光伝送路30aは長距離化する傾向にあるため、スパンロスLs1も拡大傾向にある。上述した光増幅装置1を用いることで、拡大するスパンロスLs1を高精度に算出することが可能となり、光伝送路30aの長距離化の観点から有益となる。光伝送路30aを長距離化することで、光通信システムの中継間隔を長くとって中継局を減らすことが可能となるため、システム全体の構築や維持に要するコストの低減に繋がるとの利点もある。また、長距離にわたって中継局設置出来ないような環境においても、光伝送路30aの長距離化により光通信システムを設置可能となるという点で更に有益である。
【0063】
更に、ラマン増幅装置1は、光装置20からポンプ光PL1を供給することで光伝送路30aを後方ポンプすることによるラマン増幅を実現しているため、光伝送路30aにおける信号光SL1の入力側でのラマン利得は殆どない。このため、光伝送路30a内で生じた雑音光がポンプ光PL1の出力パワーPb1を測定するためのPD−B113や、ポンプ光PL1の入力パワーPc1を測定するためのPD−C262などの受光装置に漏れ込むことを好適に抑制出来る。従って、スパンロス測定のための各受光装置における測定値に対する雑音光の影響を排除可能となり、高精度の測定が可能となる。
【0064】
ポンプ光PL1の波長は、増幅利得が波長によって変動することを抑制するために、ポンプ光制御部140によって信号光SL1の波長に応じて固定される。このため、補正係数S/Pに対する信号光SL1及びポンプ光PL1の波長の変動が生じることを抑制することが可能となり、補正係数S/Pによる補正精度は精確となる。
【0065】
このように高精度に求められた信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1の値を、様々な好ましい制御や情報伝達に利用することで、信号光SL1の伝送性能を向上させることが可能になる。
【0066】
(3)光伝送路に応じた補正係数の算出動作
光伝送路におけるスパンロスの損失波長特性の変化に応じた補正係数の算出動作を行うための光増幅装置1の変形例について図を参照して説明する。
【0067】
光伝送路中を伝搬する光の波長に対する光伝送路の単位長さ当たりのスパンロスを示す損失波長特性は、光伝送路内の光の波長分散の値によって変化する。このため、光伝送路の屈折率やコア径を変化させることで、光伝送路内の光の波長分散の態様を変化させて、所望の損失波長特性を実現することが出来る。光伝送路の屈折率は、光伝送路内のコアやクラッドに含まれるドーパント材料に応じて変化する。また、光伝送路のコア径によってシングルモード光ファイバやマルチモード光ファイバなど、用途に応じた様々な光伝送路が用いられる。以下では、このような光伝送路の屈折率やコアの形状の差異などによって損失波長特性の夫々異なる光伝送路について、種別の異なる光伝送路と称して説明する。
【0068】
図6は、このような光伝送路の種別の差異に応じた損失波長特性の差異を示すグラフの一例であって、シングルモード光ファイバ(点線)及び分散シフト光ファイバ(実線)の損失波長特性を示している。図6に示されるように、シングルモード光ファイバと分散シフト光ファイバでは、内部を伝搬する光の波長に対する光伝送路の単位長さ当たりのスパンロスが異なる。具体的には、一般的にポンプ光の帯域として知られる1400nmから1500nm強の帯域では、分散シフト光ファイバの方が単位長さ当たりのスパンロスが大きい。他方で、一般的に信号光の帯域として知られる1500nm強以上の帯域では、シングルモード光ファイバの方が単位長さ当たりのスパンロスが大きい。
【0069】
このため、シングルモード光ファイバにおけるポンプ光波長の単位長さ当たりのスパンロスをP1とすると、分散シフト光ファイバにおけるポンプ光波長の単位長さ当たりのスパンロスはP2(>P1)となるように、夫々異なる値となる。従って、このように損失波長特性が異なる光伝送路に対して、上述した補正係数S/Pを単に適用するだけでは、適切な信号光波長におけるスパンロスの算出は困難である。
【0070】
光増幅装置1の変形例は、かかる光伝送路の種別の差異に応じて、適用する補正係数を変更する処理を行う。図7は、光増幅装置1の変形例が備える演算部130内における、信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1の算出を行う機能部の構成を示すブロック図である。かかる機能部は、図4に示される機能部の代わりに演算部130内に設けられる。
【0071】
該機能部は、図4に示される構成に更に特性照合部134を備える構成となる。また、この変形例におけるメモリ132は、内部に光伝送路30aの種別に応じた複数通りの損失波長特性についてのデータベースを有している。特性照合部134は、演算部130に入力されるポンプ光PL1について、波長λ、及び入力パワーPc1と出力パワーPb1との差分より算出されるスパンロスLp1の入力を受ける。特性照合部134は、入力内容に基づいて光伝送路30aの種別をメモリ134内のデータベースと照合し、該光伝送路30aの種別における補正係数S/Pを補正部132に入力する。
【0072】
以上、説明した構成によれば、光伝送路30aの種別に応じて、適切な補正係数S/Pを用いた補正を行うことが可能となり、種々の光伝送路30aに対しても上述したように信号光SL1帯域のスパンロスLs1の測定可能範囲を拡張することが出来る。
【0073】
(4)光伝送路の同定動作
光増幅装置1に用いられる光伝送路30aの種別を判別する同定動作と、該同定動作を行うための変形例について図を参照して説明する。図8は、かかる光増幅装置1の変形例が備える演算部130内の、光伝送路30aの種別を判別する同定動作を行うための機能部の構成を示すブロック図である。図9は、光増幅装置1の変形例による、光伝送路に応じた補正係数の算出動作の流れを示すフローチャートである。尚、図9のフローチャートの中で、図5に示されるフローチャートに示されるものと同様の動作については同一の番号を付して説明を省略する。図10は、複数通りの波長のポンプ光PL1(つまり、PL1a、PL1b、PL1c)と、各波長に対する光伝送路30aの単位長さ当たりのスパンロスを示すグラフである。
【0074】
図8に示されるように、光伝送路の同定動作を行うための光増幅装置1の変形例では、ラマン増幅装置10の演算部130内の機能部は、図4に示される構成に更に特性演算部135を備える構成となる。特性演算部135は、演算部130に入力されるポンプ光PL1について、波長λ、及び入力パワーPc1と出力パワーPb1との差分より算出されるスパンロスLp1を、複数通りの波長分の入力を受ける。特性演算部135は、入力される複数通りのデータに基づき、メモリ134内に格納される光伝送路30aの種別に応じた損失波長特性についてのデータベースと照合することなどにより、該光伝送路30aの種別の同定を行う。
【0075】
図9を参照して、光伝送路の同定動作について説明する。光伝送路の同定動作を行うための光増幅装置1の変形例では、複数通りの波長λについて測定されたスパンロスLp1に基づき、光伝送路30aの同定が可能と判断されるまで繰り返し実行する。具体的には、ポンプ光PL1を伝送路30aに入射する工程(ステップS101)からポンプ光PL1のスパンロスLp1を測定する工程(ステップS108)の各工程を実施した後、補正係数S/Pが算出可能であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0076】
取得されたポンプ光PL1の波長λと、単位長さ当たりのスパンロスLp1との組み合わせが少なく、同定を行うことが出来ない場合(ステップS201:No)、演算部130は、ポンプ光PL1の出力を停止させる。その後、ポンプ光制御部140に対して、ポンプ光PL1の波長λを、ポンプ光帯域内の他の波長に変更して再度出力させ、該波長におけるスパンロスLp1の測定を実施させる(ステップS202)。
【0077】
演算部130は、例えば、図10のグラフに示されるように、先ずポンプ光帯域内の波長λaのポンプ光PL1を出力させ、該波長λaにおける単位長さ当たりのスパンロスPaを算出する。続いて、演算部130は、ポンプ光帯域内の波長λbのポンプ光PL1を出力させ、該波長λbにおける単位長さ当たりのスパンロスPbを算出する。続いて、演算部130は、ポンプ光帯域内の波長λcのポンプ光PL1を出力させ、該波長λcにおける単位長さ当たりのスパンロスPcを算出する。取得されたデータが蓄積され、光伝送路30aの同定が可能と判断される場合(ステップS201:Yes)、演算部130における特性演算部135は、メモリ134内のデータベースと照合し、該光伝送路30aの同定を行う(ステップS203)。特性演算部135は、例えば、波長λ(λa、λb、λcなど)毎に得られた複数の単位長さ当たりのスパンロスP(Pa、Pb、Pcなど)の比を、データベース内の光伝送路のデータと照合することで、光伝送路30aの同定を行う。
【0078】
同定された光伝送路30aにおけるスパンロスの補正係数S/Pの入力を受けて、補正部132は、ポンプ光PL1のスパンロスLp1を補正して、信号光SL1のスパンロスLs1を算出する。
【0079】
以上、説明した構成によれば、ポンプ光PL1を用いたスパンロスLp1の測定を行うことで、光伝送路30aの種別を好適に同定することが可能となる。これにより、光伝送路30aの種別に応じて、適切な補正係数S/Pを用いた補正を行うことが可能となり、種々の光伝送路30aに対しても上述したように信号光SL1帯域のスパンロスLs1の測定可能範囲を拡張することが出来る。光伝送路30aに用いられる光ファイバの種別は限られていることから、比較的簡単に光伝送路30aの同定が可能となる。
【0080】
尚、光伝送路の同定動作を行うための光増幅装置1の変形例では、光伝送路30aを同定する代わりに、得られたデータに基づいて演算を行うことで、光伝送路30aの損失波長特性を算出する構成であってもよい。図10などに示されるように、光伝送路30aの損失波長特性は、2次又は3次の比較的低次の関数により近似可能な性質である。従って、得られたデータに対して比較的簡単な近似を施すことで、光増幅装置1に用いられる光伝送路30aにおける損失波長特性を推測する近似曲線を作成することが可能となる。
【0081】
作成された近似曲線を用いることで、該光伝送路30aにおける補正係数S/Pの算出が可能となる。このように構成する場合、同定を行うことが出来ない未知の光伝送路30aに対しても、損失波長特性を推測することが可能となり、補正係数S/Pの算出が行える。このため、信号光SL1についても、好適なスパンロスの測定が可能となる。
【0082】
ポンプ光PL1帯域でのスパンロスの実測値より光伝送路30aにおける損失波長特性を推測する近似曲線を作成しているため、例えば光伝送路30aが、夫々種別の異なる複数の光伝送路を含んでいる場合でも、近似曲線に基づく補正係数S/Pの算出は有効である。従って、光装置10及び20の間に、複数の相異なる種別の光伝送路が混在する場合であっても、近似曲線を用いて信号光SL1の帯域におけるスパンロスを求めることが可能となる。
【0083】
(5)分布ラマン増幅利得の制御
光増幅装置1の光装置10及び20による信号光SL1のラマン増幅の増幅利得の制御を行うための光増幅装置1の変形例について説明する。
【0084】
光伝送路30aでは、上述したスパンロスの影響により、信号光SL1のパワーが低減し、信号光SL1の伝送特性が劣化する。このため、信号光SL1のパワーが、光伝送路30aの後段に設けられるEDFAなどの光装置の入力ダイナミックレンジを下回る場合などがあり、適切な信号伝送が行えなくなる場合がある。このような場合に鑑み、光伝送路の前段及び後段に設けられる光装置10及び20による信号光SL1の増幅利得は、信号光SL1のパワーが、後段のEDFAの入力ダイナミックレンジ内となるよう、光伝送路30aのスパンロスに応じて設定されることが好ましい。
【0085】
後段のEDFAの入力ダイナミックレンジ内となる信号光SL1のパワーを確保するために、信号光SL1の増幅利得を、後段のEDFAの入力ダイナミックレンジ内の所定のパワーを一意のターゲットとして設定する、所謂出力一定制御が考えられる。このような制御によれば、スパンロスの大きさに応じて光増幅装置1における増幅利得を変化させることが求められる。
【0086】
分布ラマン増幅を行うラマン増幅装置では、増幅の対象となる信号光SL1の波長に応じた利得の特性である利得波長特性を等化するために光フィルタが用いられるが、増幅利得が変化することで、波長偏差が大きく生じ、信号光SL1の伝送品質が劣化する技術的な問題がある。特に、光伝送路30aが複数の光伝送路から成る、多スパン構成の場合、波長偏差の影響が蓄積するため、一部の波長領域で後段EDFAの入力ダイナミックレンジを外れるなど、伝送特性の劣化が生じる。かかる問題を解消するためには、光伝送路30a内のスパン数を制限することや、増幅利得に応じて光フィルタの特性を変更することが考えられるが、装置運用上適しているとは言えない。
【0087】
また、目標となる出力を決定するために、信号光SL1の波長数情報の通知を受け、トータルパワーの測定値に対する一波あたりの出力パワーを算出し、該値に基づく出力パワーの制御が求められる。これには、波長数情報の取得や演算などの制御が必要となるため、応答が遅いという技術的な問題もある。
【0088】
光増幅装置1における信号光SL1の波長偏差の影響を排除するために、信号光SL1の増幅利得を一定とすることで、利得波長特性の平坦化を実現する利得一定制御が用いられることが好ましい。スパンロスが大きい場合でも小さい場合でも光増幅装置1の増幅利得が一定に制御されることで、増幅利得の波長偏差を小さく抑制することが可能となる。
【0089】
しかしながら、かかる利得一定制御では、スパンロスが大きくなるに従って、後段EDFAに入射する信号光SL1の入射パワーが低減し、後段EDFAの入力ダイナミックレンジ下限より小さくなる場合が考えられる。特に、上述のようにポンプ光PL1のスパンロスLp1に基づいて算出される比較的スパンロスの大きい光伝送路30aの場合、このような信号光SL1の増幅効果の不足による伝送効率の劣化が生じることが考えられる。
また、スパンロスの大きい領域では、波長偏差が最小となる所定の増幅利得より大きい増幅利得で動作することが求められるため、少なからず波長偏差が増加する。この状態でレベル演算による波長偏差の平均処理を行う場合、処理結果に制御誤差が生じるため、波長偏差をより増加させる可能性がある。
【0090】
そこで、光増幅装置1では、光伝送路30aのスパンロスLs1が比較的大きい領域において、信号光SL1の後段EDFAに対する入射パワーが、入力ダイナミックレンジの下限値となるよう出力を一定とする制御が実施されることが好ましい。尚、上述した信号光SL1の波長数情報の取得による目標増幅利得の算出による処理の遅延が生じないよう、算出されるスパンロスLs1の値に基づいて、増幅利得が変更されることが好ましい。
【0091】
図11のグラフを参照して、目標増幅利得の設定に係る処理について説明する。図11では、上述した従来の出力一定制御(点線部)、利得一定制御(実線部)、及び後段EDFAの入力ダイナミックレンジ下限を目標出力とするスパンロスLs1の値に基づく増幅利得変更制御(実線部)の夫々について、横軸に光伝送路30aのスパンロスLs1、縦軸に光増幅装置1の増幅利得が示される。
【0092】
図11の例では、後段EDFAの入力ダイナミックレンジの上限を、光増幅装置1に入射される信号光SL1の入力パワーPa1に対して、30dBのスパンロス及び10dBの増幅利得を適用した値(つまり、Pa1−30+10=Pa1−20[dB])としている。他方で、後段EDFAの入力ダイナミックレンジの下限を、光増幅装置1に入射される信号光SL1の入力パワーPa1に対して、40dBのスパンロス及び10dBの増幅利得を適用した値(つまり、Pa1−40+10=Pa1−30[dB])としている。
【0093】
光増幅装置1では、光伝送路30aのスパンロスLs1が30dBから40dBの領域では、信号光SL1の増幅利得が10dBとなるよう利得が一定に制御される。他方で、光伝送路30aのスパンロスLs1が40dBを上回る場合には、算出されるスパンロスLs1の増加に対して一対一で増幅利得が増加するよう、制御される。スパンロスLs1の測定値に応じて増幅利得を変更する場合、信号光SL1の波長数情報を取得し、該波長数情報に基づくトータルパワーに対する一波あたりの出力パワーを算出する必要がなく、従来の出力一定制御と比較して処理時間が短縮される。
【0094】
以上、説明したように光伝送路30aのスパンロスLs1の大きさに応じて、従来の利得一定制御とスパンロスLs1の値に基づく増幅利得変更制御とを切り替えることで、比較的スパンロスLs1の大きい光伝送路30aに対しても適切な増幅利得を設定可能となる。このとき、従来の出力一定制御と比較して光装置10の演算部130などにおいて実施される処理量が抑制可能となるため、比較的高速に入力ダイナミックレンジの下限値を目標とする増幅利得の制御が可能となる。従来の出力一定制御では、任意に変化する信号光SL1の波長数情報を取得し、トータルパワーを波長数で割ることで、一波あたりの平均出力パワーを算出することが求められ、該処理に数秒程度の処理時間が必要とされていた。他方で、光増幅装置1の変形例において実施される、スパンロスLs1の測定値に基づく増幅利得の変更制御によれば、信号光SL1の波長特性の平坦化をマイクロ秒単位で実施することが出来る。
【0095】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光増幅装置及び伝送路損失の測定方法などもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0096】
(付記1)
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段と
を備えることを特徴とする光増幅装置。
【0097】
(付記2)
前記ポンプ光供給手段は、前記ポンプ光の駆動電流を変調することで、前記ラマン増幅媒体に供給される前記ポンプ光に前記入力パワーを示す情報を重畳し、
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力側において、前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする付記1に記載の光増幅装置。
【0098】
(付記3)
前記ラマン増幅媒体からの前記ポンプ光の反射パワーを検出する第3検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び反射パワーを比較することで前記ラマン増幅媒体における前記信号光の入力断を判断する入力断検出手段とを更に備えることを特徴とする付記1又は2に記載の光増幅装置。
【0099】
(付記4)
前記ポンプ光供給手段が供給する前記ポンプ光のパワーを調整することで、前記信号光の増幅利得を制御する利得制御手段を更に備え、
前記利得制御手段は、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値を下回る場合、前記増幅利得を一定値に設定し、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値以上となる場合、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失の増加量に応じて、前記増幅利得の目標値を増加させることを特徴とする付記1乃至3に記載の光増幅装置。
【0100】
(付記5)
前記ラマン増幅媒体内を伝搬する光の波長と、該光に対する伝送路損失との関係を示す損失波長特性を取得する特性取得手段を更に備え、
前記ポンプ光供給手段は、ポンプ光帯域に含まれる相異なる波長を有する複数の前記ポンプ光を前記ラマン増幅媒体に供給し、
前記ポンプ光損失算出手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定し、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々の前記ラマン増幅媒体における伝送路損失に基づいて、前記ラマン増幅媒体の損失波長特性を推測することを特徴とする付記1乃至4に記載の光増幅装置。
【0101】
(付記6)
複数通りの前記ラマン増幅媒体の波長特性を示す損失波長特性データを参照する参照手段を更に備え、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失及び前記ポンプ光の波長を、前記損失波長特性データに含まれるデータと照合することで、前記ラマン増幅媒体を同定することを特徴とする付記5に記載の光増幅装置。
【0102】
(付記7)
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長、前記ポンプ光の波長、及び前記ラマン増幅媒体の損失波長特性に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする付記5又は6に記載の光増幅装置。
【0103】
(付記8)
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置における伝送路損失測定方法であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出工程と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出工程と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出工程と
を備えることを特徴とする伝送路損失測定方法。
【0104】
(付記9)
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段と
前記ラマン増幅媒体内を伝搬する光の波長と、該光に対する伝送路損失との関係を示す損失波長特性を取得する特性取得手段と
を備え、
前記ポンプ光供給手段は、ポンプ光帯域に含まれる相異なる波長を有する複数の前記ポンプ光を前記ラマン増幅媒体に供給し、
前記ポンプ光損失算出手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定し、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々の前記ラマン増幅媒体における伝送路損失に基づいて、前記ラマン増幅媒体の損失波長特性を推測することを特徴とする光増幅装置。
【0105】
(付記10)
複数通りの前記ラマン増幅媒体の波長特性を示す損失波長特性データを参照する参照手段を更に備え、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失及び前記ポンプ光の波長を、前記損失波長特性データに含まれるデータと照合することで、前記ラマン増幅媒体を同定することを特徴とする付記9に記載の光増幅装置。
【0106】
(付記11)
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長、前記ポンプ光の波長、及び前記ラマン増幅媒体の損失波長特性に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする付記9又は10に記載の光増幅装置。
【符号の説明】
【0107】
1 光増幅装置、
10、20 光装置、
110、210 光モニタ部
120、220 復調部、
130、230 演算部、
140、240 ポンプ光制御部、
150、250 ポンプ光源、
160、260 光モニタ部、
170、270 WDMカプラ、
30a、30b 光伝送路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムのノード間に設けられ、ラマン増幅により信号光の増幅を行う光増幅装置の技術分野に関し、特にノード間での信号損失である伝送路損失の測定を可能とする光増幅装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信トラフィック増加を背景として、光通信システムの需要が高まっている。この種の装置では、伝送路ごとに波長多重用光増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)を備え、伝送路を伝搬する信号光の増幅を行っており、大容量且つ長距離伝送を実現する光増幅中継システムが主流である。
【0003】
光増幅中継システムにおいて、伝送路長が長いなどの要因により伝送路損失が大きい条件では、EDFAへの信号光の入力パワーが低減するため、信号光パワーと雑音光パワーの比であるS/Nの劣化に伴い、伝送特性が劣化する可能性がある。以下の先行技術文献では、かかる伝送特性の劣化に鑑み、伝送路にポンプ光を注入し、誘導ラマン散乱の効果を用いた増幅作用を利用する分布ラマン増幅技術について記載されている。光増幅器への入力レベルが増加することでS/Nが増加し、伝送特性が改善され、伝送可能なスパン数及び距離が増えることになり、分布ラマン増幅技術は有効な手段として既に実用化に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−239813号公報
【特許文献2】特開2005−277044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伝送路における伝送路損失をラマン増幅により補償する場合、信号光の伝送路内での伝送路損失が精確に測定されることが求められる。しかしながら、上述したようにS/Nに劣化が生じるほど伝送路が長距離にわたる場合などでは、伝送路からの信号光の出力パワーを適切に測定出来ず、伝送路損失が測定出来ないとの技術的な問題がある。この場合、信号光の確実な伝送を可能とするために必要なラマン増幅による増幅効果を決定することが出来ず、適切な増幅を行えない可能性がある。
【0006】
先行技術文献には、信号光とは異なる監視光を伝送路内に供給し、該監視光を用いた伝送路損失の測定を行う構成が記載されている。しかしながら、かかる構成を実現するためには、長距離の伝送路における伝送路損失に対応した高出力の監視光源を用意する必要があり、装置構成上負荷を生じることになる。また、監視光が伝送路の後段のパワーモニタに混入することで、信号光のパワー検出精度が悪化するとの技術的な問題の要因となる場合がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み為されたものであり、伝送路が長距離にわたる場合など、伝送路損失が比較的大きい状況においても、信号光の伝送路損失を高精度に測定可能とする光増幅装置及び伝送路損失測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、開示の光増幅装置は、ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する装置であり、ポンプ光供給手段と、第1検出手段と、第2検出手段と、ポンプ光損失算出手段と、信号光損失算出手段とを備える。
【0009】
ラマン増幅媒体は、信号光の伝送路中に設けられる、充分な長さを有する媒体(例えば、光ファイバ)である。
【0010】
ポンプ光供給手段は、例えば光ダイオード(Laser Diode:LD)など、所定の波長の光を、供給される電力などに応じたパワーで出力可能な構成である。ポンプ光供給手段は、ラマン増幅媒体の信号光出力側に設けられ、例えばラマン増幅媒体を伝搬する信号光に逆行する方向でラマン増幅媒体中を伝搬する。
【0011】
第1検出手段は、ポンプ光供給手段とラマン増幅媒体との間に設けられ、ポンプ光供給手段より出力されるポンプ光の一部の入射を受けて、ラマン増幅媒体に入力されるポンプ光のパワーである入力パワーの検出を行う。このため、第1検出手段は、例えば光電効果によって入射される光のパワーを検出可能なフォトディテクタなどの装置であってよい。
【0012】
第2検出手段は、ラマン増幅媒体を伝搬したポンプ光の入射を受けて、ラマン増幅媒体より出力されるポンプ光のパワーである出力パワーの検出を行う。このため、第2検出手段は、ポンプ光供給手段からラマン増幅媒体に供給されるポンプ光の出力側(つまり、ラマン増幅媒体における信号光の入力側)に設けられる第1検出手段と同様のフォトディテクタなどであってよい。
【0013】
ポンプ光損失算出手段は、第1検出手段において検出されるポンプ光の入力パワーと、第2検出手段において検出されるポンプ光の出力パワーとを比較することで、ラマン増幅媒体におけるポンプ光の伝送路損失を算出する。
【0014】
信号光損失算出手段は、ポンプ光損失算出手段により算出されるポンプ光の伝送路損失に対して補正を行うことで、ラマン増幅媒体における信号光の伝送路損失の算出を行う。例えば、信号光損失算出手段は、ラマン増幅媒体における伝送路損失の周波数特性、並びにポンプ光の波長及び信号光の波長に基づいて、補正のための係数を算出する。信号光損失算出手段は、このように算出される補正係数をポンプ光の伝送路損失に対して適用することで、ラマン増幅媒体における信号光の伝送路損失を算出する構成であってよい。
【0015】
開示の伝送路損失測定方法は、上記課題を解決するために、上述した光増幅装置における伝送路損失を測定する方法である。具体的には、開示の伝送路損失測定方法は、光増幅装置が備えるポンプ光供給手段が実施するものと同様の処理を行うポンプ光供給工程と、第1検出手段が実施するものと同様の処理を行う第1検出工程と、第2検出手段が実施するものと同様の処理を行う第2検出工程と、ポンプ光損失算出手段が実施するものと同様の処理を行うポンプ光損失算出工程と、信号光損失算出手段が実施するものと同様の処理を行う信号光損失算出工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
開示の光増幅装置の動作によれば、ノード間のラマン増幅媒体に供給されるポンプ光について、ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定することで、信号光についての伝送路損失を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光通信システム内のラマン増幅装置の構成を示す図である。
【図2】光通信システムにおけるノード間の伝送路長と信号光パワーの関係を示すグラフである。
【図3】伝送路内を伝搬する光の波長と伝送路損失との関係を示すグラフである。
【図4】ラマン増幅装置内の演算部を構成する機能部を示すブロック図である。
【図5】ポンプ光のスパンロス測定に基づく信号光波長のスパンロス算出動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】伝送路の種別に応じた光の波長と伝送路損失との関係を示すグラフである。
【図7】光伝送路に応じた補正係数の算出動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】光伝送路の種別を判別する同定動作を行うための機能部の構成を示すブロック図である。
【図9】光伝送路に応じた補正係数の算出動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】伝送路内を伝搬する光の波長と伝送路損失との関係を示すグラフである。
【図11】伝送路損失に応じた光増幅装置の増幅利得の制御方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(1)構成例
開示の光増幅装置の実施形態であるラマン増幅装置1の構成について図1を参照しながら説明する。図1には、光ファイバを用いた光通信システム内に設けられるラマン増幅装置1の構造が模式的に示されている。
【0020】
ラマン増幅装置1は、ノード間に設けられる光伝送路30a及び30bの一端に対して光コネクタを介して接続される光装置10と、他端に対して光コネクタを介して接続される光装置20とを備える。
【0021】
尚、ラマン増幅装置1では、図1に示されるように、双方向に伝搬する信号光について分布ラマン増幅を実施している。具体的には、図1の左側から光伝送路30aを介して右側方向へ伝搬する信号光SL1と、図1の右側から光伝送路30bを介して右側方向へ伝搬する信号光SL2との二通りの信号光に対して、分布ラマン増幅を実施する構成である。
【0022】
各装置の構成について以下に具体的に説明する。
【0023】
光装置10は、光装置20と協働することにより、光伝送路30aを伝搬する信号光SL1に対する分布ラマン増幅を制御するとともに、光伝送路30bを伝搬する信号光SL2を分布ラマン増幅するためのポンプ光PL2を供給する。光装置10は、光モニタ部110、復調部120、演算部130、ポンプ光制御部140、ポンプ光源150、光モニタ部160及びWDMカプラ170を備える。
【0024】
光モニタ部110は、信号光SL1の伝送路上に設けられる分岐カプラ111を介して出力される光をPD−A112、又はPD−B113で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ111は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ111に対して入射する信号光SL1は、光伝送路30a方向へ出力されると共に、一部がPD−A112に出力される。PD−A112は、受光した信号光SL1のパワーをモニタし、信号光SL1の入力パワーPa1として演算部130に出力する。また、分岐カプラ111に対して光伝送路30a側より入射するポンプ光PL1は、更に光分岐部114において分岐され、復調部120へ出力されると共に、一部がPD−B113に出力される。PD−B113は、受光したポンプ光PL1のパワーをモニタし、ポンプ光PL1の出力パワーPb1として演算部130に出力する。
【0025】
復調部120は、受光したポンプ光PL1に施された変調を復調することで、ポンプ光PL1に重畳される変調データを取得し、演算部130へと入力する。尚、変調データとは、後述するように光装置20内で設定されるポンプ光PL1の光伝送路30aへの入力状態を示すデータであって、例えば、光装置20におけるPD−C262によりモニタされるポンプ光PL1の入力パワーPc1などである。
【0026】
演算部130は、例えばメモリなどのデータ格納手段と、CPU(Central Processing Unit)などの演算手段とを備える。これらの構成などにより、演算部130は、PD−B113において受光されるポンプ光PL1の出力パワーPb1及び復調部120において取得される変調データに含まれるポンプ光PL1の入力パワーPc1の入力を受け、光伝送路30aにおけるスパンロスの演算を行う。
【0027】
ポンプ光制御部140は、ポンプ光源150が出力するポンプ光PL2の態様を制御する装置である。例えば、ポンプ光制御部140は、ポンプ光源150に供給される駆動電流を調節することでポンプ光PL2の光量の制御を行う。また、ポンプ光制御部140は、PD−C162から入力されるポンプ光PL2の入力パワーPc2など、ポンプ光PL2の入力状態を示すデータをポンプ光PL2に重畳するよう、ポンプ光源150に供給される駆動電流を変調制御する。
【0028】
ポンプ光源150は、光伝送路30bを伝搬する信号光SL2を後方より分布ラマン増幅するためのポンプ光PL2を光伝送路30bに供給する光源である。ポンプ光源150より出力されるポンプ光PL2は、光モニタ部160及びWDMカプラ170を介して、光伝送路30bに出力される。
【0029】
光モニタ部160は、ポンプ光PL2の伝送路上に設けられる分岐カプラ161を介して出力される光をPD−C162、又はPD−D163で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ161は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ161に対してポンプ光源150より入射するポンプ光PL2は、光伝送路30a方向へ出力されると共に、一部がPD−C162に出力される。PD−C162は、受光したポンプ光PL2のパワーをモニタし、光伝送路30bに対するポンプ光PL2の入力パワーPc2として演算部130に出力する。また、光伝送路30b方向より反射され、分岐カプラ161に入射するポンプ光PL2は、PD−D163に出力される。PD−D163は、受光した反射されたポンプ光PL2のパワーをモニタし、光伝送路30bに対するポンプ光PL2の反射パワーPd2として演算部130に出力する。
【0030】
WDMカプラ170は、光伝送路30aの光装置20方向から出力される信号光SL2については、下流側(つまり、図1左方向)に出力する一方、ポンプ光源150からのポンプ光PL2については光伝送路30bへ出力する。更に、光伝送路30の光装置20方向から反射されるポンプ光PL2については、光モニタ部160方向へ出力する。
【0031】
光装置20は、光装置10と協働することにより、光伝送路30bを伝搬する信号光SL2に対する分布ラマン増幅を制御するとともに、光伝送路30aを伝搬する信号光SL1を分布ラマン増幅するためのポンプ光PL1を供給する。光装置20は、光モニタ部210、復調部220、演算部230、ポンプ光制御部240、ポンプ光源250、光モニタ部260及びWDMカプラ270を備える。
【0032】
光モニタ部210は、信号光SL2の伝送路上に設けられる分岐カプラ211を介して出力される光をPD−A212、又はPD−B213で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ211は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ211に対して入射する信号光SL2は、光伝送路30b方向へ出力されると共に、一部がPD−A212に出力される。PD−A212は、受光した信号光SL2のパワーをモニタし、信号光SL2の入力パワーPa2として演算部230に出力する。また、分岐カプラ211に対して光伝送路30b側より入射するポンプ光PL2は、更に光分岐部214において分岐され、復調部220へ出力されると共に、一部がPD−B213に出力される。PD−B213は、受光したポンプ光PL2のパワーをモニタし、ポンプ光PL2の出力パワーPb2として演算部230に出力する。
【0033】
復調部220は、受光したポンプ光PL2に施された変調を復調することで、ポンプ光PL2に重畳される変調データを取得し、演算部230へと入力する。尚、変調データとは、光装置10内で設定されるポンプ光PL2の光伝送路30bへの入力状態を示すデータであって、例えば、光装置10におけるPD−C162によりモニタされるポンプ光PL2の入力パワーPc2などである。
【0034】
演算部230は、例えばメモリなどのデータ格納手段と、CPUなどの演算手段とを備える。これらの構成などにより、演算部230は、PD−B213において受光されるポンプ光PL2の出力パワーPb2及び復調部220において取得される変調データに含まれるポンプ光PL2の入力パワーPc2の入力を受け、光伝送路30bにおけるスパンロスの演算を行う。
【0035】
ポンプ光制御部240は、ポンプ光源250が出力するポンプ光PL1の態様を制御する装置である。例えば、ポンプ光制御部240は、ポンプ光源250に供給される駆動電流を調節することでポンプ光PL1の光量の制御を行う。また、ポンプ光制御部240は、PD−C262から入力されるポンプ光PL1の入力パワーPc1など、ポンプ光PL1の入力状態を示すデータをポンプ光PL1に重畳するよう、ポンプ光源250に供給される駆動電流を変調制御する。
【0036】
ポンプ光源250は、光伝送路30aを伝搬する信号光SL1を後方より分布ラマン増幅するためのポンプ光PL1を光伝送路30aに供給する光源である。ポンプ光源250より出力されるポンプ光PL1は、光モニタ部260及びWDMカプラ270を介して、光伝送路30aに出力される。
【0037】
光モニタ部260は、ポンプ光PL1の光伝送路上に設けられる分岐カプラ261を介して出力される光をPD−C262、又はPD−D263で受光することにより、パワーをモニタする構成である。分岐カプラ261は、4つのポートを有し、入射する光を分波して出力する構成である。具体的には、分岐カプラ261に対してポンプ光源250より入射するポンプ光PL1は、光伝送路30a方向へ出力されると共に、一部がPD−C262に出力される。PD−C262は、受光したポンプ光PL1のパワーをモニタし、光伝送路30aに対するポンプ光PL1の入力パワーPc1として演算部230に出力する。また、光伝送路30a方向より反射され、分岐カプラ261に入射するポンプ光PL1は、PD−D263に出力される。PD−D263は、受光した反射されたポンプ光PL1のパワーをモニタし、光伝送路30aに対するポンプ光PL1の反射パワーPd1として演算部230に出力する。
【0038】
WDMカプラ270は、光伝送路30aの光装置10方向から出力される信号光SL1については、下流側(つまり、図1右方向)に出力する一方、ポンプ光源250からのポンプ光PL1については光伝送路30a方向へ出力する。更に、光伝送路30aの光装置10方向において反射されるポンプ光PL1については、光モニタ部260方向へ出力する。
【0039】
光伝送路30aは、光装置10を介して入射する信号光SL1を伝搬させ、光装置20へ入射させる一方、光装置20より入射されるポンプ光PL1を伝搬させ、光装置10へ入射させる。光伝送路30a内を伝搬する信号光SL1は、ポンプ光PL1によるラマン増幅を受ける。
【0040】
光伝送路30bは、光装置20を介して入射する信号光SL2を伝搬させ、光装置10へ入射させる一方、光装置10より入射されるポンプ光PL2を伝搬させ、光装置20へ入射させる。光伝送路30b内を伝搬する信号光SL2は、ポンプ光PL2によるラマン増幅を受ける。
【0041】
図2を参照して、光装置10及び光装置20によるラマン増幅効果について説明する。尚、以下では、説明の便宜のため、信号光SL1を伝搬するための構成に着目して説明する。特に記載のない限りは、信号光SL2の伝送のための構成についても同様のものであってよい。
【0042】
図2は、光伝送路30aの長さと、該光伝送路30a中を伝搬する信号光パワー及びラマン増幅による増幅効果を示すグラフである。図2に示されるように、信号光SL1は、光伝送路30a内の伝搬距離が長くなるにつれて、スパンロスにより信号光パワーが低減していく。光伝送路30aは、ノードの設置条件などに応じて、比較的長距離に構成することが求められる場合もあり、長さによっては信号光SL1のS/Nなどの光性能を大きく悪化させる。そこで、ラマン増幅装置1では、ポンプ光PL1を光伝送路30a内に注入することで、分布ラマン増幅を生じさせ、信号光SL1の信号光パワーの増幅を行っている。
【0043】
一方で、ラマン増幅による適切な信号光SL1の信号光パワーの増幅を実施するためには、光伝送路30a内でのスパンロスによる信号光SL1の信号光パワーの損失がモニタされていることが好ましい。例えば、光装置20は、信号光SL1の信号光パワーの損失に応じてラマン増幅による利得を決定することで、より適切な態様で信号光SL1の信号光パワーの増幅が可能となる。このため、スパンロスが適切に求められることが好ましい。しかしながら、スパンロスによる損失が大きい光伝送路30aでは、信号光SL1の信号光パワーが低減し、出力側の光装置20などに備えられるPDでの暗電流に信号光パワーが埋もれて、スパンロスの測定が出来なくなる場合がある。
【0044】
開示のラマン増幅装置1においては、上述したように、ポンプ光PL1を用いて測定される光伝送路30aでのスパンロスに対して補正を行うことで、信号光SL1に係る光伝送路30aでのスパンロスを取得可能としている。
【0045】
図3に、光伝送路内を伝搬する光の波長と、光伝送路の単位長さ当たりのスパンロスとの関係を示す。光伝送路は、単位長さ当たりのスパンロスによる光損失が伝搬する光の波長に応じて大きく変化するという損失波長特性を有する。例えば、図3に示されるように、ポンプ光PL1の帯域は、信号光SL1の帯域から離れているため、光伝送路内での単位長さ当たりのスパンロスによる光損失が大きく異なる。
【0046】
他方で、同一のドーパント材料を含んで成る光伝送路は、損失波長特性が一定であるという性質を有する。光伝送路は、所定の波長分散特性を均一に保つために屈折率が均一となることが求められ、かかる要求に合致した光伝送路が製造されることが好ましい。具体的には、光伝送路は、スパンロスの波長特性の一要因となるガラス母材に対するドーパントの添加度合いが均一となるよう製造されることが好ましい。尚、光伝送路の製造工程において高温での処理が行われることが一般的であり、該処理によって光伝送路中のドーパント材料が光伝送路中に均一に拡散される。これらの根拠に基づいて、上述の性質が成立すると見なすことが出来る。
【0047】
従って、ポンプ光PL1帯域における単位長さ当たりのスパンロスをPとし、信号光SL1帯域における単位長さ当たりのスパンロスをSとすると、両者の比S/Pは一定であると見なすことが出来る。このため、ポンプ光PL1帯域におけるスパンロスをLp1、信号光SL1帯域におけるスパンロスをLs1とする場合、比S/Pを補正値として、Lp1に適用することで、Ls1を算出することが出来る。
【0048】
図4は、光装置10の演算部130内における、信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1の算出を行う機能部の構成を示すブロック図である。演算部130は、加算器131と、補正部132とを備える。
【0049】
加算器131は、光装置10の復調部120において取得されるポンプ光PL1の入力パワーPc1と、光装置10のPD−B113より入力されるポンプ光PL1の出力パワーPb1との差分より、ポンプ光PL1帯域におけるスパンロスLp1(=Pc1−Pb1)を算出する。
【0050】
補正部132は、ポンプ光PL1帯域におけるスパンロスLp1に対して、光伝送路30aのドーパント材料などに基づいて決定される比S/Pを乗算することで、信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1(=Lp1*S/P)を算出する。このために、補正部132は、メモリ133内に格納されるデータを参照することなどにより、光伝送路30aにおける損失波長特性に基づく補正係数S/Pの取得を行う。
【0051】
ラマン増幅装置1による、光伝送路30aにおける信号光SL1帯域のスパンロスLs1の取得に係る動作について、以下に詳述する。
【0052】
(2)基本動作例
ラマン増幅装置1による信号光SL1に係る光伝送路30aでのスパンロスの算出動作例について以下に説明する。図5は、ラマン増幅装置1によるスパンロス取得の流れを示すフローチャートである。尚、該動作によれば、後述するように、光伝送路30a内でのコネクタ外れなどに起因する無信号状態の発生を検出することも可能となる。
【0053】
スパンロスの取得動作においては、先ず、光装置20のポンプ光制御部240の制御の下、ポンプ光源250がポンプ光PL1を光伝送路30aに対して出力する。ポンプ光PL1の一部は、分岐カプラ261によりPD−C262に出力され、入力パワーPc1が測定される(ステップS101)。尚、一方で、光伝送路30aより反射されたポンプ光PL1が分岐カプラによりPD−D263に出力され、反射パワーPd1が測定される。
【0054】
光装置20のポンプ光制御部240は、PD−C262より入力されるポンプ光PL1の入力パワーPc1を示す情報をポンプ光PL1に重畳するよう、ポンプ光源PL1の駆動電流を変調する(ステップS102)。
【0055】
光装置20の演算部230は、PD−C262より入力されるポンプ光PL1の入力パワーPc1と、PD−D263より入力されるポンプ光PL1の反射パワーPd1との比較を行う(ステップS103)。該閾値は、例えば、光伝送路30a内での通常のポンプ光PL1の反射による反射パワーPd1と比較して小さい、光伝送路30a内でのコネクタ外れなどによる空気層からのポンプ光PL1の反射による反射パワーを検出可能に設定される。つまり、閾値と比較して入力パワーPc1とポンプ光PL1の反射パワーPd1との差分が高い場合、PD−D263は、空気層により反射されたポンプ光PL1の反射パワーPd1をモニタしている状態となる。
【0056】
ポンプ光PL1の入力パワーPc1とポンプ光PL1の反射パワーPd1との差分が閾値以上に高い場合(ステップS103:Yes)、演算部230は、その旨をポンプ光制御部240に通知する。ポンプ光制御部240は、該通知を受信することで、光伝送路30a内でコネクタ外れなどによる無信号状態が生じていると判断する(ステップS104)。そこで、ポンプ光制御部240は、ポンプ光源250によるポンプ光PL1の停止や、アラームによる報知など、異常時処理を実施して、動作を終了する(ステップS105)。
【0057】
他方で、ポンプ光PL1の入力パワーPc1とポンプ光PL1の反射パワーPd1との差分が閾値より低い場合(ステップS103:No)、コネクタ外れなどが生じていないため、ポンプ光PL1は光伝送路30a内を伝搬して光装置10内に入射する。ポンプ光PL1の一部は、分岐カプラ111によりPD−B113に出力され、出力パワーPb1が測定される(ステップS106)。また、ポンプ光PL1の残りは、復調部120にて受光され、光装置20のポンプ光制御部240において施された変調が復調されることで、入力パワーPc1が取得される(ステップS107)。
【0058】
演算部130は、変調部120において取得されるポンプ光PL1の入力パワーPc1と、PD−B113において測定されたポンプ光PL1の出力パワーPb1との差分より、光伝送路30aにおけるポンプ光PL1帯域のスパンロスLp1を算出する(ステップS108)。
【0059】
次に、演算部130は、内部のメモリなどに格納されるデータベースなどを参照し、光伝送路30aに応じた補正係数S/Pを決定する(ステップS109)。演算部130は、決定された補正係数S/Pを光伝送路30aにおけるポンプ光PL1帯域のスパンロスLp1に適用することで、信号光SL1帯域のスパンロスLs1を算出する(ステップS110)。
【0060】
以上、説明した一連の動作により、光伝送路30aにおける信号光SL1帯域のスパンロスLs1が算出される。特に、光伝送路30aが長距離にわたり、光伝送路30aの出力側で、ポンプ光による増幅を受けていない状態の信号光SL1が確認出来ない程スパンロスが大きくなる場合であっても、信号光SL1帯域のスパンロスLs1を算出することが可能となる。
【0061】
具体的には、ポンプ光PL1のパワーは、信号光SL1の信号光パワーと比較して大幅に高いため、上述のようにスパンロスが大きい長距離にわたる光伝送路30aであっても、スパンロスLp1を測定可能となる。尚、図3に示されるように、ポンプ光帯域における光伝送路30aの単位長さ当たりのスパンロスは、信号光帯域における光伝送路30aの単位長さ当たりのスパンロスと比較して高いものの、ポンプ光のパワーは、信号光のパワーと比較して更に高いものとなる。このため、信号光SL1帯域のスパンロスLs1を求めることが可能なスパンロス範囲をよりスパンロスが大きい領域まで拡張することが出来る。
【0062】
近年の光通信システムの長距離化の需要の影響により、光伝送路30aは長距離化する傾向にあるため、スパンロスLs1も拡大傾向にある。上述した光増幅装置1を用いることで、拡大するスパンロスLs1を高精度に算出することが可能となり、光伝送路30aの長距離化の観点から有益となる。光伝送路30aを長距離化することで、光通信システムの中継間隔を長くとって中継局を減らすことが可能となるため、システム全体の構築や維持に要するコストの低減に繋がるとの利点もある。また、長距離にわたって中継局設置出来ないような環境においても、光伝送路30aの長距離化により光通信システムを設置可能となるという点で更に有益である。
【0063】
更に、ラマン増幅装置1は、光装置20からポンプ光PL1を供給することで光伝送路30aを後方ポンプすることによるラマン増幅を実現しているため、光伝送路30aにおける信号光SL1の入力側でのラマン利得は殆どない。このため、光伝送路30a内で生じた雑音光がポンプ光PL1の出力パワーPb1を測定するためのPD−B113や、ポンプ光PL1の入力パワーPc1を測定するためのPD−C262などの受光装置に漏れ込むことを好適に抑制出来る。従って、スパンロス測定のための各受光装置における測定値に対する雑音光の影響を排除可能となり、高精度の測定が可能となる。
【0064】
ポンプ光PL1の波長は、増幅利得が波長によって変動することを抑制するために、ポンプ光制御部140によって信号光SL1の波長に応じて固定される。このため、補正係数S/Pに対する信号光SL1及びポンプ光PL1の波長の変動が生じることを抑制することが可能となり、補正係数S/Pによる補正精度は精確となる。
【0065】
このように高精度に求められた信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1の値を、様々な好ましい制御や情報伝達に利用することで、信号光SL1の伝送性能を向上させることが可能になる。
【0066】
(3)光伝送路に応じた補正係数の算出動作
光伝送路におけるスパンロスの損失波長特性の変化に応じた補正係数の算出動作を行うための光増幅装置1の変形例について図を参照して説明する。
【0067】
光伝送路中を伝搬する光の波長に対する光伝送路の単位長さ当たりのスパンロスを示す損失波長特性は、光伝送路内の光の波長分散の値によって変化する。このため、光伝送路の屈折率やコア径を変化させることで、光伝送路内の光の波長分散の態様を変化させて、所望の損失波長特性を実現することが出来る。光伝送路の屈折率は、光伝送路内のコアやクラッドに含まれるドーパント材料に応じて変化する。また、光伝送路のコア径によってシングルモード光ファイバやマルチモード光ファイバなど、用途に応じた様々な光伝送路が用いられる。以下では、このような光伝送路の屈折率やコアの形状の差異などによって損失波長特性の夫々異なる光伝送路について、種別の異なる光伝送路と称して説明する。
【0068】
図6は、このような光伝送路の種別の差異に応じた損失波長特性の差異を示すグラフの一例であって、シングルモード光ファイバ(点線)及び分散シフト光ファイバ(実線)の損失波長特性を示している。図6に示されるように、シングルモード光ファイバと分散シフト光ファイバでは、内部を伝搬する光の波長に対する光伝送路の単位長さ当たりのスパンロスが異なる。具体的には、一般的にポンプ光の帯域として知られる1400nmから1500nm強の帯域では、分散シフト光ファイバの方が単位長さ当たりのスパンロスが大きい。他方で、一般的に信号光の帯域として知られる1500nm強以上の帯域では、シングルモード光ファイバの方が単位長さ当たりのスパンロスが大きい。
【0069】
このため、シングルモード光ファイバにおけるポンプ光波長の単位長さ当たりのスパンロスをP1とすると、分散シフト光ファイバにおけるポンプ光波長の単位長さ当たりのスパンロスはP2(>P1)となるように、夫々異なる値となる。従って、このように損失波長特性が異なる光伝送路に対して、上述した補正係数S/Pを単に適用するだけでは、適切な信号光波長におけるスパンロスの算出は困難である。
【0070】
光増幅装置1の変形例は、かかる光伝送路の種別の差異に応じて、適用する補正係数を変更する処理を行う。図7は、光増幅装置1の変形例が備える演算部130内における、信号光SL1帯域におけるスパンロスLs1の算出を行う機能部の構成を示すブロック図である。かかる機能部は、図4に示される機能部の代わりに演算部130内に設けられる。
【0071】
該機能部は、図4に示される構成に更に特性照合部134を備える構成となる。また、この変形例におけるメモリ132は、内部に光伝送路30aの種別に応じた複数通りの損失波長特性についてのデータベースを有している。特性照合部134は、演算部130に入力されるポンプ光PL1について、波長λ、及び入力パワーPc1と出力パワーPb1との差分より算出されるスパンロスLp1の入力を受ける。特性照合部134は、入力内容に基づいて光伝送路30aの種別をメモリ134内のデータベースと照合し、該光伝送路30aの種別における補正係数S/Pを補正部132に入力する。
【0072】
以上、説明した構成によれば、光伝送路30aの種別に応じて、適切な補正係数S/Pを用いた補正を行うことが可能となり、種々の光伝送路30aに対しても上述したように信号光SL1帯域のスパンロスLs1の測定可能範囲を拡張することが出来る。
【0073】
(4)光伝送路の同定動作
光増幅装置1に用いられる光伝送路30aの種別を判別する同定動作と、該同定動作を行うための変形例について図を参照して説明する。図8は、かかる光増幅装置1の変形例が備える演算部130内の、光伝送路30aの種別を判別する同定動作を行うための機能部の構成を示すブロック図である。図9は、光増幅装置1の変形例による、光伝送路に応じた補正係数の算出動作の流れを示すフローチャートである。尚、図9のフローチャートの中で、図5に示されるフローチャートに示されるものと同様の動作については同一の番号を付して説明を省略する。図10は、複数通りの波長のポンプ光PL1(つまり、PL1a、PL1b、PL1c)と、各波長に対する光伝送路30aの単位長さ当たりのスパンロスを示すグラフである。
【0074】
図8に示されるように、光伝送路の同定動作を行うための光増幅装置1の変形例では、ラマン増幅装置10の演算部130内の機能部は、図4に示される構成に更に特性演算部135を備える構成となる。特性演算部135は、演算部130に入力されるポンプ光PL1について、波長λ、及び入力パワーPc1と出力パワーPb1との差分より算出されるスパンロスLp1を、複数通りの波長分の入力を受ける。特性演算部135は、入力される複数通りのデータに基づき、メモリ134内に格納される光伝送路30aの種別に応じた損失波長特性についてのデータベースと照合することなどにより、該光伝送路30aの種別の同定を行う。
【0075】
図9を参照して、光伝送路の同定動作について説明する。光伝送路の同定動作を行うための光増幅装置1の変形例では、複数通りの波長λについて測定されたスパンロスLp1に基づき、光伝送路30aの同定が可能と判断されるまで繰り返し実行する。具体的には、ポンプ光PL1を伝送路30aに入射する工程(ステップS101)からポンプ光PL1のスパンロスLp1を測定する工程(ステップS108)の各工程を実施した後、補正係数S/Pが算出可能であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0076】
取得されたポンプ光PL1の波長λと、単位長さ当たりのスパンロスLp1との組み合わせが少なく、同定を行うことが出来ない場合(ステップS201:No)、演算部130は、ポンプ光PL1の出力を停止させる。その後、ポンプ光制御部140に対して、ポンプ光PL1の波長λを、ポンプ光帯域内の他の波長に変更して再度出力させ、該波長におけるスパンロスLp1の測定を実施させる(ステップS202)。
【0077】
演算部130は、例えば、図10のグラフに示されるように、先ずポンプ光帯域内の波長λaのポンプ光PL1を出力させ、該波長λaにおける単位長さ当たりのスパンロスPaを算出する。続いて、演算部130は、ポンプ光帯域内の波長λbのポンプ光PL1を出力させ、該波長λbにおける単位長さ当たりのスパンロスPbを算出する。続いて、演算部130は、ポンプ光帯域内の波長λcのポンプ光PL1を出力させ、該波長λcにおける単位長さ当たりのスパンロスPcを算出する。取得されたデータが蓄積され、光伝送路30aの同定が可能と判断される場合(ステップS201:Yes)、演算部130における特性演算部135は、メモリ134内のデータベースと照合し、該光伝送路30aの同定を行う(ステップS203)。特性演算部135は、例えば、波長λ(λa、λb、λcなど)毎に得られた複数の単位長さ当たりのスパンロスP(Pa、Pb、Pcなど)の比を、データベース内の光伝送路のデータと照合することで、光伝送路30aの同定を行う。
【0078】
同定された光伝送路30aにおけるスパンロスの補正係数S/Pの入力を受けて、補正部132は、ポンプ光PL1のスパンロスLp1を補正して、信号光SL1のスパンロスLs1を算出する。
【0079】
以上、説明した構成によれば、ポンプ光PL1を用いたスパンロスLp1の測定を行うことで、光伝送路30aの種別を好適に同定することが可能となる。これにより、光伝送路30aの種別に応じて、適切な補正係数S/Pを用いた補正を行うことが可能となり、種々の光伝送路30aに対しても上述したように信号光SL1帯域のスパンロスLs1の測定可能範囲を拡張することが出来る。光伝送路30aに用いられる光ファイバの種別は限られていることから、比較的簡単に光伝送路30aの同定が可能となる。
【0080】
尚、光伝送路の同定動作を行うための光増幅装置1の変形例では、光伝送路30aを同定する代わりに、得られたデータに基づいて演算を行うことで、光伝送路30aの損失波長特性を算出する構成であってもよい。図10などに示されるように、光伝送路30aの損失波長特性は、2次又は3次の比較的低次の関数により近似可能な性質である。従って、得られたデータに対して比較的簡単な近似を施すことで、光増幅装置1に用いられる光伝送路30aにおける損失波長特性を推測する近似曲線を作成することが可能となる。
【0081】
作成された近似曲線を用いることで、該光伝送路30aにおける補正係数S/Pの算出が可能となる。このように構成する場合、同定を行うことが出来ない未知の光伝送路30aに対しても、損失波長特性を推測することが可能となり、補正係数S/Pの算出が行える。このため、信号光SL1についても、好適なスパンロスの測定が可能となる。
【0082】
ポンプ光PL1帯域でのスパンロスの実測値より光伝送路30aにおける損失波長特性を推測する近似曲線を作成しているため、例えば光伝送路30aが、夫々種別の異なる複数の光伝送路を含んでいる場合でも、近似曲線に基づく補正係数S/Pの算出は有効である。従って、光装置10及び20の間に、複数の相異なる種別の光伝送路が混在する場合であっても、近似曲線を用いて信号光SL1の帯域におけるスパンロスを求めることが可能となる。
【0083】
(5)分布ラマン増幅利得の制御
光増幅装置1の光装置10及び20による信号光SL1のラマン増幅の増幅利得の制御を行うための光増幅装置1の変形例について説明する。
【0084】
光伝送路30aでは、上述したスパンロスの影響により、信号光SL1のパワーが低減し、信号光SL1の伝送特性が劣化する。このため、信号光SL1のパワーが、光伝送路30aの後段に設けられるEDFAなどの光装置の入力ダイナミックレンジを下回る場合などがあり、適切な信号伝送が行えなくなる場合がある。このような場合に鑑み、光伝送路の前段及び後段に設けられる光装置10及び20による信号光SL1の増幅利得は、信号光SL1のパワーが、後段のEDFAの入力ダイナミックレンジ内となるよう、光伝送路30aのスパンロスに応じて設定されることが好ましい。
【0085】
後段のEDFAの入力ダイナミックレンジ内となる信号光SL1のパワーを確保するために、信号光SL1の増幅利得を、後段のEDFAの入力ダイナミックレンジ内の所定のパワーを一意のターゲットとして設定する、所謂出力一定制御が考えられる。このような制御によれば、スパンロスの大きさに応じて光増幅装置1における増幅利得を変化させることが求められる。
【0086】
分布ラマン増幅を行うラマン増幅装置では、増幅の対象となる信号光SL1の波長に応じた利得の特性である利得波長特性を等化するために光フィルタが用いられるが、増幅利得が変化することで、波長偏差が大きく生じ、信号光SL1の伝送品質が劣化する技術的な問題がある。特に、光伝送路30aが複数の光伝送路から成る、多スパン構成の場合、波長偏差の影響が蓄積するため、一部の波長領域で後段EDFAの入力ダイナミックレンジを外れるなど、伝送特性の劣化が生じる。かかる問題を解消するためには、光伝送路30a内のスパン数を制限することや、増幅利得に応じて光フィルタの特性を変更することが考えられるが、装置運用上適しているとは言えない。
【0087】
また、目標となる出力を決定するために、信号光SL1の波長数情報の通知を受け、トータルパワーの測定値に対する一波あたりの出力パワーを算出し、該値に基づく出力パワーの制御が求められる。これには、波長数情報の取得や演算などの制御が必要となるため、応答が遅いという技術的な問題もある。
【0088】
光増幅装置1における信号光SL1の波長偏差の影響を排除するために、信号光SL1の増幅利得を一定とすることで、利得波長特性の平坦化を実現する利得一定制御が用いられることが好ましい。スパンロスが大きい場合でも小さい場合でも光増幅装置1の増幅利得が一定に制御されることで、増幅利得の波長偏差を小さく抑制することが可能となる。
【0089】
しかしながら、かかる利得一定制御では、スパンロスが大きくなるに従って、後段EDFAに入射する信号光SL1の入射パワーが低減し、後段EDFAの入力ダイナミックレンジ下限より小さくなる場合が考えられる。特に、上述のようにポンプ光PL1のスパンロスLp1に基づいて算出される比較的スパンロスの大きい光伝送路30aの場合、このような信号光SL1の増幅効果の不足による伝送効率の劣化が生じることが考えられる。
また、スパンロスの大きい領域では、波長偏差が最小となる所定の増幅利得より大きい増幅利得で動作することが求められるため、少なからず波長偏差が増加する。この状態でレベル演算による波長偏差の平均処理を行う場合、処理結果に制御誤差が生じるため、波長偏差をより増加させる可能性がある。
【0090】
そこで、光増幅装置1では、光伝送路30aのスパンロスLs1が比較的大きい領域において、信号光SL1の後段EDFAに対する入射パワーが、入力ダイナミックレンジの下限値となるよう出力を一定とする制御が実施されることが好ましい。尚、上述した信号光SL1の波長数情報の取得による目標増幅利得の算出による処理の遅延が生じないよう、算出されるスパンロスLs1の値に基づいて、増幅利得が変更されることが好ましい。
【0091】
図11のグラフを参照して、目標増幅利得の設定に係る処理について説明する。図11では、上述した従来の出力一定制御(点線部)、利得一定制御(実線部)、及び後段EDFAの入力ダイナミックレンジ下限を目標出力とするスパンロスLs1の値に基づく増幅利得変更制御(実線部)の夫々について、横軸に光伝送路30aのスパンロスLs1、縦軸に光増幅装置1の増幅利得が示される。
【0092】
図11の例では、後段EDFAの入力ダイナミックレンジの上限を、光増幅装置1に入射される信号光SL1の入力パワーPa1に対して、30dBのスパンロス及び10dBの増幅利得を適用した値(つまり、Pa1−30+10=Pa1−20[dB])としている。他方で、後段EDFAの入力ダイナミックレンジの下限を、光増幅装置1に入射される信号光SL1の入力パワーPa1に対して、40dBのスパンロス及び10dBの増幅利得を適用した値(つまり、Pa1−40+10=Pa1−30[dB])としている。
【0093】
光増幅装置1では、光伝送路30aのスパンロスLs1が30dBから40dBの領域では、信号光SL1の増幅利得が10dBとなるよう利得が一定に制御される。他方で、光伝送路30aのスパンロスLs1が40dBを上回る場合には、算出されるスパンロスLs1の増加に対して一対一で増幅利得が増加するよう、制御される。スパンロスLs1の測定値に応じて増幅利得を変更する場合、信号光SL1の波長数情報を取得し、該波長数情報に基づくトータルパワーに対する一波あたりの出力パワーを算出する必要がなく、従来の出力一定制御と比較して処理時間が短縮される。
【0094】
以上、説明したように光伝送路30aのスパンロスLs1の大きさに応じて、従来の利得一定制御とスパンロスLs1の値に基づく増幅利得変更制御とを切り替えることで、比較的スパンロスLs1の大きい光伝送路30aに対しても適切な増幅利得を設定可能となる。このとき、従来の出力一定制御と比較して光装置10の演算部130などにおいて実施される処理量が抑制可能となるため、比較的高速に入力ダイナミックレンジの下限値を目標とする増幅利得の制御が可能となる。従来の出力一定制御では、任意に変化する信号光SL1の波長数情報を取得し、トータルパワーを波長数で割ることで、一波あたりの平均出力パワーを算出することが求められ、該処理に数秒程度の処理時間が必要とされていた。他方で、光増幅装置1の変形例において実施される、スパンロスLs1の測定値に基づく増幅利得の変更制御によれば、信号光SL1の波長特性の平坦化をマイクロ秒単位で実施することが出来る。
【0095】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光増幅装置及び伝送路損失の測定方法などもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0096】
(付記1)
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段と
を備えることを特徴とする光増幅装置。
【0097】
(付記2)
前記ポンプ光供給手段は、前記ポンプ光の駆動電流を変調することで、前記ラマン増幅媒体に供給される前記ポンプ光に前記入力パワーを示す情報を重畳し、
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力側において、前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする付記1に記載の光増幅装置。
【0098】
(付記3)
前記ラマン増幅媒体からの前記ポンプ光の反射パワーを検出する第3検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び反射パワーを比較することで前記ラマン増幅媒体における前記信号光の入力断を判断する入力断検出手段とを更に備えることを特徴とする付記1又は2に記載の光増幅装置。
【0099】
(付記4)
前記ポンプ光供給手段が供給する前記ポンプ光のパワーを調整することで、前記信号光の増幅利得を制御する利得制御手段を更に備え、
前記利得制御手段は、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値を下回る場合、前記増幅利得を一定値に設定し、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値以上となる場合、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失の増加量に応じて、前記増幅利得の目標値を増加させることを特徴とする付記1乃至3に記載の光増幅装置。
【0100】
(付記5)
前記ラマン増幅媒体内を伝搬する光の波長と、該光に対する伝送路損失との関係を示す損失波長特性を取得する特性取得手段を更に備え、
前記ポンプ光供給手段は、ポンプ光帯域に含まれる相異なる波長を有する複数の前記ポンプ光を前記ラマン増幅媒体に供給し、
前記ポンプ光損失算出手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定し、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々の前記ラマン増幅媒体における伝送路損失に基づいて、前記ラマン増幅媒体の損失波長特性を推測することを特徴とする付記1乃至4に記載の光増幅装置。
【0101】
(付記6)
複数通りの前記ラマン増幅媒体の波長特性を示す損失波長特性データを参照する参照手段を更に備え、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失及び前記ポンプ光の波長を、前記損失波長特性データに含まれるデータと照合することで、前記ラマン増幅媒体を同定することを特徴とする付記5に記載の光増幅装置。
【0102】
(付記7)
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長、前記ポンプ光の波長、及び前記ラマン増幅媒体の損失波長特性に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする付記5又は6に記載の光増幅装置。
【0103】
(付記8)
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置における伝送路損失測定方法であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出工程と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出工程と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出工程と
を備えることを特徴とする伝送路損失測定方法。
【0104】
(付記9)
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段と
前記ラマン増幅媒体内を伝搬する光の波長と、該光に対する伝送路損失との関係を示す損失波長特性を取得する特性取得手段と
を備え、
前記ポンプ光供給手段は、ポンプ光帯域に含まれる相異なる波長を有する複数の前記ポンプ光を前記ラマン増幅媒体に供給し、
前記ポンプ光損失算出手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定し、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々の前記ラマン増幅媒体における伝送路損失に基づいて、前記ラマン増幅媒体の損失波長特性を推測することを特徴とする光増幅装置。
【0105】
(付記10)
複数通りの前記ラマン増幅媒体の波長特性を示す損失波長特性データを参照する参照手段を更に備え、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失及び前記ポンプ光の波長を、前記損失波長特性データに含まれるデータと照合することで、前記ラマン増幅媒体を同定することを特徴とする付記9に記載の光増幅装置。
【0106】
(付記11)
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長、前記ポンプ光の波長、及び前記ラマン増幅媒体の損失波長特性に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする付記9又は10に記載の光増幅装置。
【符号の説明】
【0107】
1 光増幅装置、
10、20 光装置、
110、210 光モニタ部
120、220 復調部、
130、230 演算部、
140、240 ポンプ光制御部、
150、250 ポンプ光源、
160、260 光モニタ部、
170、270 WDMカプラ、
30a、30b 光伝送路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段と
を備えることを特徴とする光増幅装置。
【請求項2】
前記ポンプ光供給手段は、前記ポンプ光の駆動電流を変調することで、前記ラマン増幅媒体に供給される前記ポンプ光に前記入力パワーを示す情報を重畳し、
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力側において、前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記ラマン増幅媒体からの前記ポンプ光の反射パワーを検出する第3検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び反射パワーを比較することで前記ラマン増幅媒体における前記信号光の入力断を判断する入力断検出手段とを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記ポンプ光供給手段が供給する前記ポンプ光のパワーを調整することで、前記信号光の増幅利得を制御する利得制御手段を更に備え、
前記利得制御手段は、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値を下回る場合、前記増幅利得を一定値に設定し、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値以上となる場合、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失の増加量に応じて、前記増幅利得の目標値を増加させることを特徴とする請求項1乃至3に記載の光増幅装置。
【請求項5】
前記ラマン増幅媒体内を伝搬する光の波長と、該光に対する伝送路損失との関係を示す損失波長特性を取得する特性取得手段を更に備え、
前記ポンプ光供給手段は、ポンプ光帯域に含まれる相異なる波長を有する複数の前記ポンプ光を前記ラマン増幅媒体に供給し、
前記ポンプ光損失算出手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定し、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々の前記ラマン増幅媒体における伝送路損失に基づいて、前記ラマン増幅媒体の損失波長特性を推測することを特徴とする請求項1乃至4に記載の光増幅装置。
【請求項6】
複数通りの前記ラマン増幅媒体の波長特性を示す損失波長特性データを参照する参照手段を更に備え、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失及び前記ポンプ光の波長を、前記損失波長特性データに含まれるデータと照合することで、前記ラマン増幅媒体を同定することを特徴とする請求項5に記載の光増幅装置。
【請求項7】
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長、前記ポンプ光の波長、及び前記ラマン増幅媒体の損失波長特性に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載の光増幅装置。
【請求項8】
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置における伝送路損失測定方法であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出工程と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出工程と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出工程と
を備えることを特徴とする伝送路損失測定方法。
【請求項1】
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出手段と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出手段と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出手段と
を備えることを特徴とする光増幅装置。
【請求項2】
前記ポンプ光供給手段は、前記ポンプ光の駆動電流を変調することで、前記ラマン増幅媒体に供給される前記ポンプ光に前記入力パワーを示す情報を重畳し、
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力側において、前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記ラマン増幅媒体からの前記ポンプ光の反射パワーを検出する第3検出手段と、
前記ポンプ光の入力パワー及び反射パワーを比較することで前記ラマン増幅媒体における前記信号光の入力断を判断する入力断検出手段とを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記ポンプ光供給手段が供給する前記ポンプ光のパワーを調整することで、前記信号光の増幅利得を制御する利得制御手段を更に備え、
前記利得制御手段は、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値を下回る場合、前記増幅利得を一定値に設定し、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失が閾値以上となる場合、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失の増加量に応じて、前記増幅利得の目標値を増加させることを特徴とする請求項1乃至3に記載の光増幅装置。
【請求項5】
前記ラマン増幅媒体内を伝搬する光の波長と、該光に対する伝送路損失との関係を示す損失波長特性を取得する特性取得手段を更に備え、
前記ポンプ光供給手段は、ポンプ光帯域に含まれる相異なる波長を有する複数の前記ポンプ光を前記ラマン増幅媒体に供給し、
前記ポンプ光損失算出手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失を測定し、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々の前記ラマン増幅媒体における伝送路損失に基づいて、前記ラマン増幅媒体の損失波長特性を推測することを特徴とする請求項1乃至4に記載の光増幅装置。
【請求項6】
複数通りの前記ラマン増幅媒体の波長特性を示す損失波長特性データを参照する参照手段を更に備え、
前記特性取得手段は、前記相異なる波長を有する複数のポンプ光の夫々について、前記ラマン増幅媒体における伝送路損失及び前記ポンプ光の波長を、前記損失波長特性データに含まれるデータと照合することで、前記ラマン増幅媒体を同定することを特徴とする請求項5に記載の光増幅装置。
【請求項7】
前記信号光損失算出手段は、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長、前記ポンプ光の波長、及び前記ラマン増幅媒体の損失波長特性に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載の光増幅装置。
【請求項8】
ラマン増幅媒体にポンプ光を供給することで、前記ラマン増幅媒体を伝搬する信号光をラマン増幅する光増幅装置における伝送路損失測定方法であって、
前記ラマン増幅媒体に前記ポンプ光を供給するポンプ光供給工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の入力パワーを検出する第1検出工程と、
前記ラマン増幅媒体に対する前記ポンプ光の出力パワーを検出する第2検出工程と、
前記ポンプ光の入力パワー及び出力パワーを比較することで、前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失を算出するポンプ光損失算出工程と、
前記ラマン増幅媒体における前記ポンプ光の伝送路損失に対して、前記信号光の波長及び前記ポンプ光の波長に基づく補正を行うことで、前記ラマン増幅媒体における前記信号光の伝送路損失を算出する信号光損失算出工程と
を備えることを特徴とする伝送路損失測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−22260(P2012−22260A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161931(P2010−161931)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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