説明

光変調器

【課題】偏波合成手段を含んだ光変調器や光学装置において、製造歩留まりを向上させ、且つ小型化を実現する。
【解決手段】光変調器1は、基板上に形成された第1及び第2の光変調器(LN光変調器101〜104)と、第1及び第2の光変調器による変調光の少なくとも一方の偏波を回転させる偏波回転部107と、基板の外部に設けられ、偏波回転部107によって偏波が回転した変調光を偏波合成する偏波合成素子110と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏波合成手段を含んだ光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速・大容量光ファイバ通信システムの進歩に伴い、外部変調器に代表されるように、導波路型光学素子を用いた高速光変調器が実用化され、広く用いられるようになってきている。
例えば、LiNbO(ニオブ酸リチウム、LNと略称されることもある)等の電気光学効果を有する材料を基板に用いた導波路型光学素子は、電圧変化によって屈折率変化を生じさせることができるので、光変調器(一般に、LN光変調器といわれている)や光スイッチに利用される。
【0003】
光ファイバ通信システムの高速化は、最近では10Gb/sから40Gb/sまで実用化が進んでおり、更に、100Gb/sへの対応に向けて開発が行われている。LN光変調器で100Gb/sを実現する方法としては、図5に示すように、4つの光変調器901〜904を用いてそれぞれ25Gb/sの変調を行い、光変調器901と光変調器902の出力、及び光変調器903と光変調器904の出力をそれぞれ合成して50Gb/sの変調光を得、更にこの2つの50Gb/sの変調光を、偏波回転手段905により相対的な偏波面の角度差を90°とした状態で合成することにより、50Gb/sの変調光が偏波合成されてなる100Gb/sの変調光を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、変調回路として25Gb/sに対応したものを使用できるというメリットがあるため、有望な方法と考えられている。
【特許文献1】特開2004−253931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図5のLN光変調器では、偏波合成部906において異なる偏波の光を合成するために、例えば、導波路を非対称X型の構造とすることによって、偏波間の伝搬速度とコア径を合わせる必要がある。しかしながら、非対称X型の導波路は、設計が複雑であり、また、その製造には高精度な製造技術を要するため、量産時の歩留まりが低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏波合成手段を含んだ光変調器や光学装置において、製造歩留まりを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、基板上に形成された第1及び第2の光変調部と、前記第1及び第2の光変調部による変調光の少なくとも一方の偏波を回転させる偏波回転部と、前記基板の外部に設けられ、前記偏波回転部によって偏波が回転した変調光を偏波合成する偏波合成素子を有する偏波合成部と、を備えることを特徴とする光変調器である。
【0007】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記偏波合成部は、前記変調光を出力導波路に集光する集光部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記偏波合成部は、逆分散特性を有する光学素子を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記偏波合成部は、2つの対向コリメータ系を配置した光学系を備えることを特徴とする。対向コリメータ光学系は、V溝ブロックを使用してもよい。
また、本発明は、上記の光変調器において、前記2つの対向コリメータ系は、ファイバコリメータで構成されていることを特徴とする。一般的には、ファイバコリメータは、光ファイバとコリメータレンズが一体となった構成のものであり、本願発明においてはファイバ径とレンズ径が等しいレンズドファイバを用いることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記ファイバコリメータは、前記第1及び第2の光変調部による変調光を入射する部分に2穴フェルールを用い、前記偏波合成素子の出力光を入射する部分に1穴フェルールを用いることを特徴とする。フェルール内にはレンズドファイバを内蔵させてファイバコリメータとしてもよい。この構成によれば、光変調器を小型化することが可能である。
【0011】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記1穴フェルールを用いたファイバコリメータは、その入射位置が、前記偏波合成素子の出力光の偏波によって異なる位置ずれのほぼ中心位置となるように配置されていることを特徴とする。この構成によれば、波長が変化したときに異なる偏波での入射位置の位置ずれによって生じる偏波間の出力差が小さいので、波長分散を補償することが可能である。
【0012】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記偏波合成素子はサバール板であることを特徴とする。この構成によれば、光変調器を小型化することが可能である。
【0013】
また、本発明は、上記の光変調器において、前記サバール板は、偏波合成する2つの偏波の光路差を補償するように構成されていることを特徴とする。なお、サバール板以外の偏波合成素子を用いて、2つの偏波の間に生じる光路差を補償する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、偏波合成手段を含んだ光変調器において、効果的に製造歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による光変調器1の構成を示す上面図である。光変調器1は、LN基板上に導波路及び変調電極が形成された変調器本体10と、変調器本体10からの出力光を偏波合成する空間コリメート光学系による偏波合成部20とを有している。なお、変調電極については図示を省略する。
【0016】
変調器本体10は、マッハツェンダー導波路MAの両アームにマッハツェンダー導波路MB,MCが設けられ、マッハツェンダー導波路MBの両アームにマッハツェンダー導波路101,102が、マッハツェンダー導波路MCの両アームにマッハツェンダー導波路103,104が、それぞれ設けられた入れ子構造を有する。即ち、入力ファイバ105からマッハツェンダー導波路MAの入力導波路106へ導入された入力光は、アーム上のマッハツェンダー導波路MBとMCへ分岐して入力される。また、マッハツェンダー導波路MBへの入力光は、マッハツェンダー導波路101と102へ分岐して入力され、マッハツェンダー導波路MCへの入力光は、マッハツェンダー導波路103と104へ分岐して入力される。更に、マッハツェンダー導波路101と102からの出力光は、マッハツェンダー導波路MBにより合波され、マッハツェンダー導波路MAのアーム108へ導入され、マッハツェンダー導波路103と104からの出力光は、マッハツェンダー導波路MCにより合波され、マッハツェンダー導波路MAのアーム109へ導入される。
【0017】
マッハツェンダー導波路101〜104は、それぞれに設けられた変調電極とともにLN光変調器を形成している。各LN光変調器101〜104の変調電極には、不図示の駆動回路から25Gb/sの駆動信号が与えられ、各LN光変調器101〜104は、25Gb/sで変調された変調光を出力する。ここで、マッハツェンダー導波路MBのLN光変調器101と102の変調方式は、DQPSK(差動四相位相偏移変調)を用いる。マッハツェンダー導波路MCのLN光変調器103と104の変調方式も同様である。これにより、マッハツェンダー導波路MAのアーム108,109へは、それぞれ50Gb/sの変調光が入力されることになる。
【0018】
マッハツェンダー導波路MAのアーム108の途中には、偏波回転手段107が設けられている。偏波回転手段107は、アーム108を伝搬する光の偏波面を90°回転させる機能を有する。これにより、マッハツェンダー導波路MAのアーム108とアーム109をそれぞれ伝搬する光は、互いに偏波面が90°傾いた状態になる。偏波回転手段107としては、例えば、LN基板に形成した溝に1/2波長板を埋め込んだ構成とすることができる。また、LN基板の導波路端面や2穴フェルールコリメータ111の端面に1/2波長板を貼り付けた構成とすることもできる。なお、1/2波長板を設けたことにより発生する2つの光路の光路差を補償するため、所定の光学的長さを有する板を光路中に挿入することが望ましい。
なお、アーム108を伝搬する光の偏波面を45°回転させ、アーム109を伝搬する光の偏波面を逆方向に45°回転させる構成とすることで、両者の偏波面を互いに90°傾かせるようにしてもよい。
【0019】
マッハツェンダー導波路MAのアーム108と109は、変調器本体(LN基板)10の出力側端面(図1において右側の端面)において、2穴フェルールコリメータ111の2穴の間隔と同じ間隔を持つようにして配置される。この配置間隔は、例えば125μm〜150μm程度である。なお、LN基板の出力側端面は、反射を防止するため、光の出射方向に対して5°程度の角度を有するように研磨するか、無反射(AR)コーティングを施すことが好ましい。
【0020】
偏波合成部20は、変調器本体10の側から順に、2穴フェルールコリメータ111と偏波合成素子110と1穴フェルールコリメータ112の各光学素子が配置されてなる空間コリメート光学系として構成されている。
【0021】
2穴フェルールコリメータ111は、2穴フェルールの2つの穴部にそれぞれ偏波保持ファイバからなるファイバコリメータを内蔵した構成を有する。このファイバコリメータは、ファイバと同じ直径を持つロッド状のレンズをファイバと融着して一体構造としたものであり、レンズドファイバとも呼ばれるものである。各偏波保持ファイバは、その偏波方向を、変調器本体10の2つの出力導波路108,109から出射される各変調光の偏波方向と合うように設定する。また、ファイバコリメータの両端面(図1において右側の入射端面及び左側の出射端面)には、無反射(AR)コーティングを施すことが好ましい。このような構成の2穴フェルールコリメータ111は、LN基板の導波路端面で出力導波路108,109と光軸が合った状態となるようにしてバットジョイントされている。これにより、変調器本体10の出力導波路108,109からの各変調光が、偏波合成部20の2穴フェルールコリメータ111のファイバコリメータへ入射され、更に、このファイバコリメータから偏波合成素子110へ向けて出射される。
【0022】
偏波合成素子110は、互いの偏波面が90°傾いた状態で異なる入射位置に入射された2つの光を、同一の光路上に出射する機能を有する。ここでは、偏波合成素子110は、互いの偏波面が90°傾いた状態で出力された2穴フェルールコリメータ111からの各変調光を、出射側(出力ファイバ113側)端面の同一位置から出力ファイバ113の光軸に沿って出射する。これにより、50Gb/sの変調光が偏波合成されてなる100Gb/sの変調光が得られる。
【0023】
偏波合成素子110としては、例えば、ルチルや方解石から作られたものを用いることができるが、特に、ルチル等の同一厚の2枚の板(偏光分離板110A,110B)をその光学軸が直交するように貼り合わせて構成されるサバール板を用いるのが好適である。サバール板を用いることにより、アーム108からの光とアーム109からの光の光路長が等しくなるので、2つの光を光路差ゼロで偏波合成することができる。なお、サバール板以外の偏波合成素子を用いて、2つの偏波の間に生じる光路差を補償する構成としてもよい。
【0024】
1穴フェルールコリメータ112は、1穴フェルールの穴部にシングルモードファイバを用いたファイバコリメータを内蔵した構成を有し、2穴フェルールコリメータ111と対向して配置される。
ここで、偏波合成素子110の波長分散によって、変調器本体10の出力導波路108から出射された変調光と出力導波路109から出射された変調光の偏波合成後の各位置、即ち、偏波合成素子110からの各出射位置が、波長とともに変化する。この様子を図2に示す。図から分かるように、短波長の場合と長波長の場合とで、出力導波路108からの変調光と出力導波路109からの変調光(図において一方がP偏波、他方がS偏波)の出力の中心の位置関係が逆転する。したがって、1穴フェルールコリメータ112の配置位置を、ファイバコリメータがP偏波とS偏波のほぼ中心となるように設定する。これにより、波長が変化して各偏波の結合位置が変化したとしても、両偏波の出力位置のずれ量がほぼ同程度となるので、図6に示すように偏波依存性損失(PDL)を低減することができる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、偏波合成により100Gb/sの変調光を得ることができる。また、偏波合成部20を2穴フェルールコリメータ111と偏波合成素子110と1穴フェルールコリメータ112の3点からなる空間光学系で構成しているので、図5のように非対称X型導波路を用いる場合と比べて設計及び製造が容易であるため歩留まりの向上が可能であるとともに、従来と比べて1/2以上の小型化、低コスト化が可能になる。またコリメート光学系の構成であるためアライメントのトレランスが大きく、高信頼性を確保することができる。また、偏波合成素子110をサバール板とすることでアーム108と109から出射される偏波面の異なる光の光路差がゼロになるので、偏波合成の際の偏波分散を抑えることができる。更に、高価な波長分散補償素子を用いることなく、2穴フェルールコリメータ111及び1穴フェルールコリメータ112によるファイバコリメータの対向光学系を採用して、1穴フェルールコリメータ112の配置位置を両偏波の出力のほぼ中心とすることによって、波長分散を補償することができる。
なお、フェルールの代わりに、V溝ブロックを使用してもよい。V溝ブロックは、石英系導波路素子とファイバのバットジョイントに広く利用されており、市販の自動アライメント装置を用いてアライメントの自動化をすることも容易である。
【0026】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による光変調器2の構成を示す上面図である。光変調器2は、第1の実施形態と同様、LN基板上に導波路及び変調電極が形成された変調器本体10と、変調器本体10からの出力光を偏波合成する空間コリメート光学系による偏波合成部21とを有している。なお、図3においても変調電極の図示は省略した。
【0027】
本実施形態による光変調器2は、偏波合成素子21を含む各光学部品を筐体118に収納して1×2偏波合成モジュールを構成している点が、第1の実施形態による光変調器1と異なっている。以下、光変調器1との相違点を中心に光変調器2の説明を行う。
【0028】
図3において、1×2偏波合成モジュールは、2穴フェルールコリメータ111と、偏波合成素子110と、1穴フェルールコリメータ112とを、例えば円筒型の金属性筐体118内にこの順序で配置して構成されている。なお、これら各光学部品(2穴フェルールコリメータ111、偏波合成素子110、1穴フェルールコリメータ112)は、第1の実施形態で用いられるものと同じものである。
【0029】
2穴フェルールコリメータ111は、1×2偏波合成モジュールの一方の先端部に設けられ、内部の2本のファイバコリメータの間隔が、変調器本体(LN基板)10の出力側端面(図3において右側の端面)におけるアーム108とアーム109の間隔と等しくなっている。
【0030】
第2の実施形態の光変調器2によれば、第1の実施形態の光変調器1と同様の効果に加えて、更に次のような効果を得ることができる。
即ち、1×2偏波合成モジュールを予め作製し、2穴フェルールコリメータ111部を導波路にバットジョイントさせることで、この1×2偏波合成モジュールを変調器本体10に接合させるという組立工程を採用できるので、光変調器2の全体を収容する筐体(不図示)に各光学部品を1つずつアライメントして組み立てていくのと異なり、筐体に蓋をして溶接する際の応力によって光学部品の位置ずれ等が発生してしまうおそれがなく、光変調器としての特性の信頼性を向上することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態による光変調器3の構成を示す上面図である。光変調器3は、LN基板上に導波路及び変調電極が形成された変調器本体11と、変調器本体11からの出力光を偏波合成する空間集光光学系による偏波合成部22とを有している。なお、図4においても変調電極の図示は省略した。
【0032】
本実施形態による光変調器3は、偏波合成部21を空間コリメート光学系ではなく空間集光光学系で構成している点が、第1の実施形態による光変調器1及び第2の実施形態による光変調器2と異なっている。
【0033】
図4において、1×2偏波合成モジュールは、2穴フェルールコリメータ111と、波長板115及び116と、プリズム117と、レンズ114と、偏波合成素子110と、1穴フェルールコリメータ112とを、例えば円筒型の金属性筐体118内にこの順序で配置して構成されている。なお、これら各光学部品のうち、2穴フェルールコリメータ111、偏波合成素子110、及び1穴フェルールコリメータ112は、第1,第2の実施形態で用いられるものと同じものである。
【0034】
2穴フェルールコリメータ111は、1×2偏波合成モジュールの一方の先端部に設けられ、内部の2本のファイバコリメータの間隔が、変調器本体(LN基板)11の出力側端面(図4において右側の端面)におけるアーム108とアーム109の間隔と等しくなっている。
【0035】
2穴フェルールコリメータ111のモジュール内側の端面には、波長板115と波長板116が、2穴フェルールコリメータ111の各ファイバ部の出射位置に対応するようにして取り付けられている。波長板115は、光の偏波面を45°回転させ、波長板116は、光の偏波面を波長板115と逆方向に45°回転させる。これにより、変調器本体11のアーム108を伝搬してきた光は偏波面が45°回転し、アーム109を伝搬してきた光は偏波面が逆方向に45°回転して、両者の偏波面が互いに90°傾くこととなる。このように、波長板115,116は図1の光変調器1における偏波回転手段107に相当するものであるため、本実施形態では、変調器本体11のアーム108の途中に偏波回転手段を設けない構成としている。なお、偏波回転手段を有しないことを除けば、変調器本体11の構成は図1の変調器本体10と同じである。
【0036】
プリズム117は、入射側(波長板115,116の側)の面が出力ファイバ113の光軸に対して傾いた2つの傾斜面で構成され、各傾斜面は、アーム108側の傾斜面の法線ベクトルがアーム108の方を向き、アーム109側の傾斜面の法線ベクトルがアーム109の方を向く(つまり、これら2つの傾斜面により山状の角部が形成される)ように傾斜角が設定されている。また、プリズム117の出射側(出力ファイバ113側)の面は、出力ファイバ113の光軸に垂直な面で構成されている。これにより、プリズム117は、アーム108を通り波長板115から出射された光とアーム109を通り波長板116から出射された光を、プリズム117の通過後に両者が交差するように屈折させる作用を持つ。
【0037】
レンズ114は、上記のように波長板115,116から出射されてプリズム117によって交差させられた光の交差点よりも後段側(出力ファイバ113側)に配置されている。その配置位置、及びレンズ114の焦点距離は、第1の実施形態と同様、レンズ114を通過した光が1穴フェルールコリメータ112のコア部に集光するように設定する。
【0038】
このように構成された第3の実施形態の光変調器3によれば、第1の実施形態の光変調器1と同様の効果を得ることができる。即ち、偏波合成部22で偏波合成をすることにより、100Gb/sの変調光を得ることができる。また、偏波合成部22を空間光学系で構成しているので、図5のように非対称X型導波路を用いる場合と比べて設計及び製造が容易であるため歩留まりの向上が可能であるとともに、小型化、低コスト化、高信頼性を実現することができる。また、偏波合成素子110をサバール板とすることでアーム108と109から出射される偏波面の異なる光の光路差がゼロになるので、偏波合成の際の偏波分散を抑えることができる。
【0039】
上記の効果に加えて、第3の実施形態の光変調器3によれば、更に次のような効果を得ることができる。
即ち、1×2偏波合成モジュールを予め作製し、2穴フェルールコリメータ111部を導波路にバットジョイントさせることで、この1×2偏波合成モジュールを変調器本体11に接合させるという組立工程を採用できるので、光変調器2の全体を収容する筐体(不図示)に各光学部品を1つずつアライメントして組み立てていくのと異なり、筐体に蓋をして溶接する際の応力によって光学部品の位置ずれ等が発生してしまうおそれがなく、光変調器としての特性の信頼性を向上することができる。
【0040】
また、プリズム117とレンズ114とを図2の配置としたので、波長が変化しても正確に偏波合成をすることができ、また、出力ファイバ113における結合損失の波長依存性を低減することができる。即ち、プリズム117とレンズ114が、波長が短いほど屈折率が高く、波長が長いほど屈折率が低い分散特性を有するとしたとき、波長が短くなると、プリズム117における屈折角が大きくなって、レンズ114へ入射する光の伝搬方向とレンズ114の光軸とのなす角度が大きくなるとともに、その入射位置はレンズ114の外周へ近づく。このとき、レンズ114における屈折角も大きいので、レンズ114の外周に近い位置に入射された光はより強く屈折させられて、レンズ114から出射された光の伝搬方向は、レンズ114の光軸に近づく方向を向くことになる。
【0041】
この結果、偏波合成素子110の出射側端面における2つの偏波の出射位置は一致したまま変化せず、また、1穴フェルールコリメータ112の入射側端面における集光位置も変化しない。波長が長くなった場合も同様である。
したがって、波長が変化したとしても、偏波合成素子110からの出射位置が一致したままであるので、異なる2つの偏波を同一光路上へ正確に偏波合成することができる。また、1穴フェルールコリメータ112の集光位置が変化しないので、結合損失の波長依存性を小さくすることができる。
【0042】
更に、第3の実施形態の光変調器3は集光光学系を用いた構成であるので、小型化の効果が大きい。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0044】
例えば、図4の偏波合成部22において、偏波合成素子110とレンズ114の配置を入れ換えた構成としてもよい。
また、本発明はLN光変調器101〜104を用いた構成に限定されるものではなく、2つの異なる偏波を合成するものであれば、LN光変調器101〜104に代えて他の光機能デバイスを用いた構成にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態による光変調器の構成を示す上面図である。
【図2】偏波合成された2つの光の出射位置の、波長及び偏波依存性を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による光変調器の構成を示す上面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による光変調器の構成を示す上面図である。
【図5】従来の光変調器の構成を示す上面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による光変調器の偏波依存性損失を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3…光変調器 10,11…変調器本体 20,21,22…偏波合成部 101〜104…LN光変調器 105…入力ファイバ 106…入力導波路 107…偏波回転手段 108,109…アーム 110…偏波合成素子 110A,110B…偏光分離板 111…2穴フェルール 112…1穴フェルール 113…出力ファイバ 114…レンズ 115,116…波長板 117…プリズム 118…筐体 MA,MB,MC…マッハツェンダー導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1及び第2の光変調部と、
前記第1及び第2の光変調部による変調光の少なくとも一方の偏波を回転させる偏波回転部と、
前記基板の外部に設けられ、前記偏波回転部によって偏波が回転した変調光を偏波合成する偏波合成素子を有する偏波合成部と、
を備えることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記偏波合成部は、前記変調光を出力導波路に集光する集光部を備えることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記偏波合成部は、逆分散特性を有する光学素子を備えることを特徴とする請求項2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記偏波合成部は、2つの対向コリメータ系を配置した光学系を備えることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記2つの対向コリメータ系は、ファイバコリメータで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
前記ファイバコリメータは、前記第1及び第2の光変調部による変調光を入射する部分に2穴フェルールを用い、前記偏波合成素子の出力光を入射する部分に1穴フェルールを用いることを特徴とする請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
前記1穴フェルールを用いたファイバコリメータは、その入射位置が、前記偏波合成素子の出力光の偏波によって異なる位置ずれのほぼ中心位置となるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光変調器。
【請求項8】
前記偏波合成素子はサバール板であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1の項に記載の光変調器。
【請求項9】
前記サバール板は、偏波合成する2つの偏波の光路差を補償するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156842(P2010−156842A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335097(P2008−335097)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】