光変調装置および光送信器、並びに、光変調装置の制御方法
【課題】多重変調方式の光変調装置について、前後に接続された各光変調器の駆動に用いられる信号間の位相ずれをその方向も含めて、伝送特性に影響を及ぼすことなくモニタして制御する技術を提供する。
【解決手段】光変調装置は、第1および第2の光変調部より多重変調された信号光の一部をモニタ光とし、該モニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低周波側の周波数成分と高周波側の周波数成分とを抽出し、各々の周波数成分のパワーをモニタする。そして、各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて各光変調部の駆動に用いる信号間の相対的な位相の関係を制御する。
【解決手段】光変調装置は、第1および第2の光変調部より多重変調された信号光の一部をモニタ光とし、該モニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低周波側の周波数成分と高周波側の周波数成分とを抽出し、各々の周波数成分のパワーをモニタする。そして、各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて各光変調部の駆動に用いる信号間の相対的な位相の関係を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重変調方式の信号光を生成する光変調装置および光送信器、並びに、光変調装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術の導入により、長距離光伝送網においてはテラビット級の大容量伝送が実現されている。WDM方式における1波長当たりの伝送速度は、現状では10ギガビット毎秒(Gbps)が中心となっているが、今後の更なる大容量化の実現に向けて、40Gbps以上の高速伝送技術の導入が強く求められている。40Gbpsの伝送では、信号光の変調方式として、光雑音耐力の向上や伝送路における非線形効果の抑圧が可能であるなどの理由により、非強度変調と強度変調を組み合わせた多重変調方式が注目されており、特に、RZ−DPSK(Return-to-Zero Differential Phase Shift Keying)方式やRZ−DQPSK(Return-to-Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式などのRZパルス化された位相変調方式が有力視されている。(例えば、非特許文献1,2参照)
【0003】
図1は、RZ−DQPSK方式における一般的な光送信器の構成例を示すブロック図である。図1において、光送信器は、光源(LD)100と、該光源100の出力光をRZ−DQPSK方式に従って変調する光変調装置200と、を備える。また、光変調装置200は、前後に接続されたDQPSK変調器210およびRZ変調器220と、駆動部230と、を備える。
【0004】
光源100は、連続(CW:Continuous Wave)光を発生し、該CW光を光変調装置200のDQPSK変調器210に出力する。DQPSK変調器210は、マッハツェンダ干渉計(MZI:Mach-Zender Interferometer)を用いた2つの位相変調部211,212および位相シフト部213を有し、光源100からのCW光を2分岐してIアームおよびQアームに送る。Iアーム上には一方の位相変調部211が配置され、Qアーム上には他方の位相変調部212および位相シフト部213が配置されている。
【0005】
各位相変調部211,212は、駆動部230から出力されるデータ信号DAT1,DAT2に対応した各駆動信号が、各々のMZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、IアームおよびQアームをそれぞれ伝搬するCW光に対して、2値の位相変調を行う。位相シフト部213は、Qアーム側の位相変調部212で位相変調された光の位相をπ/2だけシフトさせる。この位相シフト部213の出力光が、Iアーム側の位相変調部211の出力光と合波されることで、4値の位相変調光(DQPSK信号光)が生成される。
【0006】
RZ変調器220は、MZIを用いた強度変調器であり、駆動部230から出力されるクロック信号CLKに対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、DQPSK変調器210から出力されるDQPSK信号光をパルス化する。これにより、RZ−DQPSK信号光が光変調装置200から出力される。
【0007】
駆動部230は、信号発生器(SER)231と、DQPSK変調器210の位相変調部211,212に対応したドライバ回路(DRV)232,233と、位相シフタ234と、RZ変調器220に対応したドライバ回路(DRV)235と、を有する。信号発生器231は、外部から与えられるデータ信号DATに対して、DQPSK方式に対応した所要の信号処理を実行し、1組のデータ信号DAT1,DAT2および該データ信号DAT1,DAT2に同期したクロック信号CLKを生成する。各ドライバ回路232,233は、信号発生器231から出力される各データ信号DAT1,DAT2に従って、DQPSK変調器210の各位相変調部211,212を駆動するための駆動信号をそれぞれ生成する。位相シフタ234は、信号発生器231から出力されるクロック信号CLKの位相をシフトさせることで、データ信号DAT1,DAT2およびクロック信号CLK間の相対的な遅延量を調整する。ドライバ回路235は、位相シフタ234を通過したクロック信号CLKに従って、RZ変調器220を駆動するための駆動信号を生成する。
【0008】
図2は、上記のような一般的な光送信器において、DQPSK変調器210から出力されるDQPSK信号光、および、RZ変調器220から出力されるRZ−DQPSK信号光の各アイパターン(eye pattern)波形を例示した図である。図2において、DQPSK信号光の波形(上段)には、位相の切り替え時に、データ信号の立ち上がり時間および立下り時間(Tr/Tf)に応じた出力光強度の変化が見られる。しかし、このDQPSK信号光の強度変化成分(以下、「Tr/Tf成分」とする)は、RZ変調器220によるパルス化により削られるため、RZ−DQPSK信号光の波形(下段)は、Tr/Tf成分を含まないパルス列となる。
【0009】
ところで、上記のようなRZ−DQPSK方式などの多重変調方式に対応した光変調装置は、上記図1に示したように非強度変調器(DQPSK位相変調器)と強度変調器(RZ変調器)とを前後に接続した構成であるため、各変調器の駆動に用いられる信号(データ信号およびクロック信号)の遅延量の温度変動により、当該光変調装置から出力される信号光の伝送特性が劣化してしまうという問題がある。この問題について具体例を挙げて詳しく説明する。
【0010】
図3は、44.6GbpsのRZ−DQPSK信号光を生成する光変調装置(図1参照)について、DQPSK変調器の駆動に用いられるデータ信号の位相に対し、RZ変調器の駆動に用いられるクロック信号の位相が最適状態から10psずれた場合に、該光変調装置から出力される信号光の波形(アイパターン)を例示した図である。また、図4は、RZ−DQPSK信号光の伝送時における、データ信号およびクロック信号の位相ずれに対するOSNR耐力の劣化をシミュレーションした結果である。なお、OSNR耐力の劣化は、データ信号およびクロック信号間の位相ずれが0psの場合を基準としたOSNRペナルティを用いて評価している。
【0011】
図3より、データ信号およびクロック信号間の位相にずれが発生すると、RZ−DQPSK信号光の波形歪みが顕著になる様子が分かる。このようなRZ−DQPSK信号光の伝送特性は、送信端の光変調装置でのデータ信号およびクロック信号間の位相ずれが増大することで指数関数的に劣化することが、図4のシミュレーション結果より分かる。このため、光変調装置の実際の運用においては、データ信号およびクロック信号間の位相差をモニタし、該位相差が出来る限り小さくなるように、データ信号およびクロック信号の相対的な位相の関係を常時制御する必要がある。
【0012】
従来の光変調装置におけるデータ信号およびクロック信号間の位相差をモニタして制御する技術として、例えば特許文献1には、光変調装置から出力される信号光の一部を分岐し、該分岐光を光検出器で光電変換した電気信号のうちの特定の周波数成分、特に低周波数成分のパワー(電力)をモニタして、該モニタパワーが最小になるようにデータ信号およびクロック信号間の位相差をフィードバック制御する方式(以下、従来方式1と呼ぶ)が開示されている。
【0013】
また、例えば特許文献2には、強度変調器を駆動するクロック信号の位相を特定の周波数f0で変動(ディザリング)させておき、光変調装置から出力される信号光の一部を分岐して光電変換した電気信号の周波数f0に同期した強度変動成分をモニタし、該モニタした周波数f0成分が最小になるようにデータ信号およびクロック信号間の位相差をフィードバック制御する方式(以下、従来方式2と呼ぶ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−329886号公報
【特許文献2】特開2008−172714号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A. H. Gnauck, et al., "2.5 Tb/s (64 × 42.7 Gb/s) transmission over 40 × 100 km NZDSF using RZ-DPSK format and all-Raman-amplified spans", Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2002, Post-Deadline Paper FC2
【非特許文献2】C. Wree, et al., "RZ-DQPSK format with high spectral efficiency and high robustness towards fiber nonlinearities", 28th European Conference on Optical Communication (ECEC) 2002, Paper 9.6.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来方式1については、モニタされたパワー成分によってデータ信号およびクロック信号間の位相差の絶対値(位相ずれの大きさ)は判定可能であるが、データ信号に対してクロック信号の位相が進む方向にずれているのか、遅れる方向にずれているのかが分からないという課題がある。このため、従来方式1を採用した光変調装置では、結局のところ何らかの方法でクロック信号(またはデータ信号)の位相を変動させながらモニタパワーの変化を見ることで、位相ずれの方向を検出しなくてはならない。
【0017】
また、上記従来方式1では、データ信号およびクロック信号間の位相のずれと、他の制御パラメータのずれとの区別が付かないという問題もある。例えば、上述の図1に示した光変調装置200に従来方式1を採用した場合を想定すると、上記他の制御パラメータの一つとして、DQPSK変調器210におけるIアームおよびQアーム間の光位相の差(理想的にはπ/2)が該当する。図5は、上記想定におけるデータ信号およびクロック信号間の位相ずれと、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果である。また、図6は、上記想定におけるIアームおよびQアーム間の光位相の差と、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果である。図5および図6から明らかなように、データ信号およびクロック信号間の位相の関係が最適状態からずれた場合も、IアームおよびQアーム間の光位相の差が90°の最適状態からずれた場合も、どちらも最適状態をボトムとしてモニタパワーが増加するため、従来方式1のモニタ方法では両者の区別がつかない。
【0018】
上記従来方式2については、ディザリングによりクロック信号の位相が常に変化することに起因して、光変調装置から出力される信号光の伝送特性劣化が避けられないという問題がある。つまり、従来方式2では、クロック信号の位相を最適値に留めておくことが原理的に不可能であり、ディザリングを与えることによる伝送上のペナルティを予め見込んでおかなくてはならない。光伝送システムの設計では、システム全体で発生する信号光の伝送特性劣化を考慮すると、送信端に起因する伝送ペナルティは極僅かしか許容されないため、従来方式2を採用して光変調装置を実際に設計することが困難になる可能性がある。
【0019】
また、上述の図1に示したようなRZ−DQPSK方式に対応した光変調装置では、構成の複雑化に伴って調整を要する箇所も多くなる。このような光変調装置に従来方式2を適用した場合、ディザリングによる制御が必要なパラメータが、データ信号およびクロック信号間の位相差の他にも複数存在するようになることが想定される。この場合、全てのパラメータをディザリングで制御することが前述のペナルティの観点から不可能、或いは、可能であっても非常に複雑な構成および制御アルゴリズムが必要になるという問題もある。
【0020】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、多重変調方式の信号光を生成する光変調装置について、前後に接続された各光変調器の駆動に用いられる信号間の位相ずれをその方向も含めて、伝送特性に影響を及ぼすことなくモニタして制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明は入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置を提供する。この光変調装置の一態様は、前後に接続された第1および第2の光変調部と、前記第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐する分岐部と、前記分岐部で分岐されたモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出された低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタする光検出部と、前記光検出部でモニタされた各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
上記光変調装置によれば、第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光とし、該モニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低周波側の周波数成分のパワーと高周波側の周波数成分のパワーとの差分値を求めることにより、各光変調部の駆動に用いられる第1および第2の信号の間の位相ずれをその方向も含めて、他の制御パラメータとは独立に検出することができるようになる。よって、上記差分値に基づいて第1および第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御することで、ディザリングを行うことなく位相ずれを補償することができ、高品位な多重変調信号光を簡略な制御アルゴリズムで生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一般的なRZ−DQPSK方式の光送信器の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のDQPSK変調器およびRZ変調器から出力される信号光の波形を例示した図である。
【図3】図1の光変調装置においてデータ信号およびクロック信号間に位相ずれが生じた場合に生成される信号光の波形を例示した図である。
【図4】RZ−DQPSK信号光の伝送時における、データ信号およびクロック信号の位相ずれに対するOSNR耐力の劣化をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】データ信号およびクロック信号間の位相ずれと、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果を示す図である。
【図6】IアームおよびQアーム間の光位相の差と、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による光変調装置を適用した光送信器の構成を示すブロック図である。
【図8】上記実施形態におけるRZ−DQPSK信号光のスペクトルと各光フィルタの透過特性の一例を示す図である。
【図9】上記実施形態において周期フィルタを適用した場合の信号光の中心周波数と各光フィルタの透過特性を模式的に示した図である。
【図10】上記実施形態において光変調装置から出力される信号光のスペクトル形状の変化をシミュレーションした結果を示す図である。
【図11】図10のスペクトルにおいて各光検出器でモニタされるサイドローブ成分のパワーを計算した結果を示す図である。
【図12】低周波側および高周波側の各サイドローブ成分のモニタパワーに差異が生じる原因を説明する図である。
【図13】上記実施形態における減算回路の出力値とデータ信号およびクロック信号間の位相ずれとの関係を示す図である。
【図14】IアームおよびQアーム間の光位相の差を最適値からずらした場合のRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状を示す図である。
【図15】図9に関連した各光フィルタの他の透過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図7は、本発明の一実施形態による光変調装置を適用した光送信器の構成を示すブロック図である。
図7において、光送信器は、例えば、光源(LD)1と、該光源1の出力光をRZ−DQPSK方式に従って変調する光変調装置2と、を備える。この光変調装置2は、前後に接続された第1および第2の光変調部としてのDQPSK変調器21およびRZ変調器22と、該DQPSK変調器21およびRZ変調器22を駆動する駆動部23と、データ信号およびクロック信号間の位相差をモニタして制御するモニタ制御部24と、を具備する。
【0025】
光源1は、CW光を発生して光変調装置2のDQPSK変調器21に出力する。この光源1は、好ましくは発振周波数が可変であり、例えばITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication sector )等の規格に従う周波数グリットに対応させてCW光の中心周波数が設定される。なお、光源1の発振周波数は固定であってもよい。
【0026】
光変調装置2のDQPSK変調器21は、例えば、マッハツェンダ干渉計(MZI)を用いた2つの位相変調部21A,21Bおよび位相シフト部21Cを有し、光源1からのCW光を2分岐してIアームおよびQアームに送る。Iアーム上には一方の位相変調部21Aが配置され、Qアーム上には他方の位相変調部21Bおよび位相シフト部21Cが配置される。
【0027】
位相変調部21Aは、駆動部23の後述するドライバ回路23Bから出力される、データ信号DAT1に対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、Iアームを伝搬するCW光に対して2値の位相変調を行う。また、位相変調部21Bは、駆動部23の後述するドライバ回路23Cから出力される、データ信号DAT2に対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、Qアームを伝搬するCW光に対して2値の位相変調を行う。
【0028】
位相シフト部21Cは、Qアーム側の位相変調部21Bで位相変調された光の位相をπ/2だけシフトさせる。この位相シフト部21Cの出力光が、Iアーム側の位相変調部21Aの出力光と合波されることで、4値の位相変調光(DQPSK信号光)が生成される。なお、ここでは位相シフト部21CがQアーム側に配置される構成例を示したが、Iアーム側に位相シフト部21Cを配置することも可能である。また、光の位相を+π/4だけシフトさせる位相シフト部を一方のアーム上に配置し、光の位相を−π/4だけシフトさせる位相シフト部を他方のアーム上に配置してもよい。
【0029】
RZ変調器22は、MZIを用いた強度変調器であり、駆動部23の後述するドライバ回路23Eから出力される、クロック信号CLKに対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、DQPSK変調器21から出力されるDQPSK信号光をパルス化する。これにより、RZ−DQPSK信号光が光変調装置2から出力される。なお、ここではDQPSK変調器21の後段にRZ変調器22が接続される一例を示したが、DQPSK変調器21およびRZ変調器22の接続順は任意であり、RZ変調器22をDQPSK変調器21の前段に接続することも可能である。
【0030】
駆動部23は、例えば、信号発生器(SER)23Aと、DQPSK変調器21の位相変調部21A,21Bに対応したドライバ回路(DRV)23B,23Cと、位相シフタ23Dと、RZ変調器22に対応したドライバ回路(DRV)23Eと、を有する。
【0031】
信号発生器23Aは、外部から与えられるデータ信号DATに対して、DQPSK方式に対応した所要の信号処理を実行し、1組のデータ信号DAT1,DAT2および該データ信号DAT1,DAT2に同期したクロック信号CLKを生成する。DQPSK方式ではボーレートがビットレートの1/2となるため、例えば、40Gbpsのデータ信号DATが信号発生器231に入力される場合、該信号発生器23Aから出力される、データ信号DAT1,DAT2およびクロック信号CLKの周波数は20GHzとなる。ただし、キャリア抑圧RZ(CSRZ:Carrier Suppressed Return to Zero)−DQPSK方式が適用される場合には、クロック信号CLKの周波数は10GHzとなる。
【0032】
ドライバ回路23Bは、信号発生器23Aから出力される各データ信号DAT1に従って、DQPSK変調器21の位相変調部21Aを駆動するための駆動信号を生成する。また、ドライバ回路23Cは、信号発生器23Aから出力される各データ信号DAT2に従って、DQPSK変調器21の位相変調部21Bを駆動するための駆動信号を生成する。
【0033】
位相シフタ23Dは、信号発生器23Aから出力されるクロック信号CLKの位相をシフトさせることで、データ信号DAT1,DAT2およびクロック信号CLK間の相対的な位相の関係を調整する。この位相シフタ23Dにおける位相シフト量は、モニタ制御部24から出力される制御信号に従って制御される。上記位相シフタ23Dを通過したクロック信号CLKに従って、ドライバ回路23Eは、RZ変調器22を駆動するための駆動信号を生成する。
【0034】
モニタ制御部24は、例えば、分岐部としての光カプラ24Aと、抽出部としての光カプラ24Bおよび2つの光フィルタ(FIL)24C,24Dと、光検出部としての2つの光検出器(PD)24E,24Fと、制御部としての減算回路24Gおよび制御回路(CONT)24Hと、を有する。
【0035】
光カプラ24Aは、RZ変調器22から出力されるRZ−DQPSK信号光の一部をモニタ光として分岐し、該モニタ光を光カプラ24Bに出力する。この光カプラ24Aにおけるモニタ光の分岐比は、各光検出器24E,24Fの受光感度に応じて適宜に設定することが可能である。
【0036】
光カプラ24Bは、光カプラ24Aで分岐されたモニタ光を、更に2つに分岐して、一方のモニタ光を光フィルタ24Cに出力し、他方のモニタ光を光フィルタ24Dに出力する。この光カプラ24Bの分岐比は、1:1とするのが望ましい。分岐比が1:1からずれた光カプラ24Bを用いる場合には、減算回路24G若しくは制御回路24Hにおいて、光カプラ24Bの分岐比のずれに対応したモニタ値の補正を行うようにする。
【0037】
光フィルタ24Cは、RZ変調器22から出力されるRZ−DQPSK信号光の中心周波数に対して、予め設定した周波数−Δだけ離れた位置に透過帯の中心周波数を有し、光カプラ24Bで分岐された一方のモニタ光のスペクトルのうちの、低周波側のサイドローブ成分を抽出して光検出器24Eに出力する。一方、光フィルタ24Dは、上記RZ−DQPSK信号光の中心周波数に対して、予め設定した周波数+Δだけ離れた位置に透過帯の中心周波数を有し、光カプラ24Bで分岐された他方のモニタ光のスペクトルのうちの、高周波側のサイドローブ成分を抽出して光検出器24Eに出力する。
【0038】
図8は、RZ−DQPSK信号光のスペクトルと各光フィルタ24C,24Dの透過特性の一例を示す図である。図8のように、2つの光フィルタ24C,24Dの周波数に対する透過特性は、RZ−DQPSK信号光の中心周波数をfcとした場合、光フィルタ24Cの透過帯の中心周波数がfc−Δとなり、光フィルタ24Dの透過帯の中心周波数がfc+Δとなるように設定されている。なお、図中の斜線部分は、各光フィルタ24C,24Dの3dB帯域幅を表している。上記周波数−Δおよび+Δの絶対値|Δ|、すなわち、RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcに対する、各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数の離間量は、後述するようにRZ−DQPSK信号光のサイドローブの発生状態を考慮して、クロック信号CLKの周波数以上に設定するのが好ましい。
【0039】
上記RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcは、前述したITU−T等の周波数グリッド上の任意の周波数に設定される、つまり、所要の周波数間隔で配置された複数の中心周波数の候補のうちのいずれか1つが、光源1の発振周波数に応じて設定されることになる。このようなRZ−DQPSK信号光の中心周波数fcの設定に対応するためには、各光フィルタ24C,24Dとして、上記周波数グリッドの間隔に対応したフリースペクトラムレンジ(FSR:Free Spectrum Range)を有する周期フィルタを適用するのが望ましい。
【0040】
図9は、各光フィルタ24C,24Dに周期フィルタを適用した場合における、信号光の中心周波数と各光フィルタ24C,24Dの周期的な透過特性を模式的に示した図である。図9のように、各光フィルタ24C,24Dの透過特性は、RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcが配置される周波数グリッド(破線)の間隔に略等しい周期で透過帯が繰り返し出現する周期性を有する。つまり、各光フィルタ24C,24Dは、周波数グリッドの間隔に略等しいFSRを持つ。また、各光フィルタ24C,24Dの周期的な透過特性は、周波数グリッドに対して、光フィルタ24Cの各透過帯が低周波側にΔだけシフトし、光フィルタ24Dの各透過帯が高周波側にΔだけシフトするように設計される。これにより、RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcが周波数グリッド上のいずれのチャネルに設定されても、該RZ−DQPSK信号光の低周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Cにより抽出され、高周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Dにより抽出されるようになる。上記のような周期性を有する光フィルタ24C,24Dの具体例としては、エタロン(etalon)またはファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)などを用いた周期フィルタが、サイズや特性等の観点より好適である。
【0041】
光検出器24Eは、光フィルタ24Cを透過した低周波側のサイドローブ成分を受光して当該パワーをモニタし、そのモニタパワーに応じてレベルが変化する電気信号を減算回路24Gに出力する。また、光検出器24Fは、光フィルタ24Dを透過した高周波側のサイドローブ成分を受光して当該パワーをモニタし、そのモニタパワーに応じてレベルが変化する電気信号を減算回路24Gに出力する。
【0042】
減算回路24Gは、一方の入力端子に与えられる光検出器24Eの出力信号レベルと、他方の入力端子に与えられる光検出器24Fの出力信号レベルとの差分値を求め、該差分値を示す信号を制御回路24Hに出力する。
【0043】
制御回路24Hは、減算回路24Gの出力信号により示される差分値が零になるように、駆動部23の位相シフタ23Dにおける位相シフト量をフィードバック制御する。これにより、データ信号DAT1、DAT2およびクロック信号CLK間の位相ずれが補償される。
【0044】
次に、上記光変調装置2の動作について説明する。
上記のような構成の光変調装置2では、上述の図1に示した一般的な光変調器200の場合と同様にして、光源1からのCW光が、データ信号DAT1,DAT2に従って駆動されるDQPSK変調器21によりDQPSK変調された後に、クロック信号CLKに従って駆動されるRZ変調器22によりパルス化されることで、RZ−DQPSK信号光が生成される。
【0045】
このRZ−DQPSK信号光は、モニタ制御部24の光カプラ24Aに与えられ、その一部がモニタ光として分岐される。光カプラ24Aで分岐されたモニタ光は、更に光カプラ24Bで2分岐されて光フィルタ24C,24Dに与えられる。そして、一方の光フィルタ24Cでは、モニタ光の低周波側のサイドローブ成分が抽出され、該サイドローブ成分のパワーが光検出器24Eでモニタされる。また、他方の光フィルタ24Dでは、モニタ光の高周波側のサイドローブ成分が抽出され、該サイドローブ成分のパワーが光検出器24Fでモニタされる。
【0046】
ここで、各光検出器24E,24Fによってそれぞれモニタされるサイドローブ成分のパワーについて具体例を挙げて詳しく説明する。
図10は、44.6GbpsのRZ−DQPSK信号光が光変調装置2で生成される場合において、データ信号およびクロック信号間の位相差を0ps,5psおよび10psと変化させたときに、光変調装置2から出力されるRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状の変化をシミュレーションした結果である。図10のシミュレーション結果より、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値(0ps)からずれる程、低周波側および高周波側の各サイドローブのレベルが高くなることが分かる。
【0047】
このサイドローブのレベル上昇は、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値にある場合、上述の図2下段に示したようにDQPSK信号光のTr/Tf成分がRZ変調によって切り取られるのに対して、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値からずれると、上述の図3に示したようにDQPSK信号光のTr/Tf成分がRZパルス化後の信号光に現れることに起因する。つまり、DQPSK信号光のTr/Tf成分は、RZパルス化におけるクロック周波数に対して、相対的に速い成分であるため、結果としてスペクトルが広がる(サイドローブが大きくなる)ことになる。
【0048】
図11は、上記図10で示したRZ−DQPSK信号光のスペクトルにおいて、データ信号およびクロック信号間の位相差を変化させながら、信号光の中心周波数から−100GHzおよび+100GHzだけ離れた周波数領域を光フィルタ24C,24Dで抽出した場合に、各光検出器24E,24Fでモニタされるサイドローブ成分のパワーを計算した結果である。図11の横軸はデータ信号およびクロック信号間の位相ずれ、縦軸はサイドローブ成分のモニタパワーを表す。なお、各光フィルタ24C,24Dは、1次のガウス型光バンドパスフィルタとし、3dB帯域幅を50GHzとしている(図8参照)。
【0049】
図11の計算結果より、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値にある場合、低周波側のサイドローブ成分のモニタパワー(例えば、図中の黒丸)および高周波側のサイドローブ成分のモニタパワー(例えば、図中の白丸)の双方が最小になることが分かる。また、データ信号およびクロック信号間の位相ずれが大きくなると、低周波側および高周波側の各サイドローブ成分のモニタパワーが増加することが分かる。さらに、低周波側のサイドローブ成分のモニタパワーと、高周波側のサイドローブ成分のモニタパワーとでは、データ信号およびクロック信号間の位相ずれの方向に依存した差異が生じていることも分かる。この差異は、図12に例示するようなRZ変調器22によるパルス化の際に生じるチャープ(周波数変動)の影響に起因する。すなわち、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値にある場合、パルス化の際に生じる正および負のチャープが相殺されるため、RZ−DQPSK信号光のスペクトルが左右対称な形状になる。一方、データ信号およびクロック信号間に位相ずれが生じている場合には、位相ずれの方向に依存してRZ−DQPSK信号光が正または負のチャープの影響を受けることになり、RZ−DQPSK信号光のスペクトルが左右非対称となってモニタパワーに差異が生じる。
【0050】
図13は、上記図11の計算結果をより分かり易くするために、低周波側のサイドローブ成分のモニタパワーと高周波側のサイドローブ成分のモニタパワーとの差分値、つまり、減算回路24Gの出力信号によって示される差分値を、データ信号およびクロック信号間の位相のずれ量に対応させてプロットした一例である。図13より、減算回路24Gの出力値は、その符号(+または−)が位相ずれの方向によって変化することが分かる。したがって、上述した従来方式2のようにクロック信号をディザリングすることなく、減算回路24Gの出力値の符号により、データ信号およびクロック信号間の位相ずれの方向を判定することができる。また、減算回路24Gの出力値は、データ信号およびクロック信号間の位相差が0psの状態を境界として急峻に変化するので、この減算回路24Gの出力値が零になるように、データ信号およびクロック信号間の相対的な位相の関係(ここでは、位相シフタ23Dにおける位相シフト量)をフィードバック制御することにより、高精度な位相制御が可能である。
【0051】
なお、上記図10に示したRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状(サイドローブの発生状態)は、DQPSK変調器21の駆動信号のTr/Tf等に依存して変化する。このため、RZ−DQPSK信号光の中心周波数(光源1の発振周波数)に対する各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数の離間量|Δ|は、光源1および光変調装置2を含む光送信器全体の特性に応じて、低周波側および高周波側の各サイドローブ成分のモニタ感度が最も良くなるように設定すればよい。具体的には、先に図10を参照して説明したように、RZ変調器22におけるクロック周波数よりも速いTr/Tf成分が、光変調装置2の出力に現れることによるスペクトルの広がりに着目して、低周波側および高周波側の各サイドローブ成分をモニタしていることを考慮すると、離間量|Δ|はクロック信号CLKの周波数以上に設定することが望ましい。
【0052】
また、上記図12で示したRZ変調器22によって発生するチャープの大きさや符号は、RZ変調器22の消光比、具体的にはマッハツェンダ干渉計(MZI)における入力側の光分岐比および出力側の光結合比に依存する。このため、データ信号およびクロック信号間の位相ずれの方向と、減算回路24Gの出力値の符号との関係は、上記図13に示した例の通りとは限らない。この関係は、光変調装置2に実際に適用されるRZ変調器22の消光比(MZIの構造)と減算回路24Gの回路構成とが定まることにより一意に決まる。
【0053】
上述したように光変調装置2によれば、データ信号およびクロック信号間に位相ずれが生じた場合に該位相ずれを補償するための位相調整が自動的に行われるようになるため、ディザリングによる伝送特性の劣化を回避して、常に高品位なRZ−DQPSK信号光を生成することが可能である。また、光変調装置2が採用するデータ信号およびクロック信号間の位相ずれのモニタ技術は、上述した従来方式1の場合のように光変調装置の他の制御パラメータのずれとの区別がつかなくなるようなことも無い。
【0054】
図14は、光変調装置の他の制御パラメータの一例として、DQPSK変調器21におけるIアームおよびQアーム間の光位相の差を90°(最適値)から100°までずらした場合のRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状を示した図である。図14より、RZ−DQPSK信号光のスペクトル形状は、IアームおよびQアーム間の光位相の差には殆ど依存しないことが分かる。すなわち、光変調装置2が採用するモニタ技術によれば、データ信号およびクロック信号間の位相差のみを独立にモニタすることができる。これにより、簡略なアルゴリズムに従って、データ信号およびクロック信号間の位相差をフィードバック制御することが可能である。
【0055】
さらに、光変調装置2の各光フィルタ24C,24Dとして、上述の図9に示したような信号光の周波数グリッドに対応した透過特性を有する周期フィルタが適用されていれば、RZ−DQPSK信号光の中心周波数(光源1の発振周波数)が周波数グリッド上のいずれのチャネルに設定されても、データ信号およびクロック信号間の位相ずれを補償することができる。このような光変調装置2を適用した光送信器を用いてWDM光伝送システムを構築することにより、柔軟なシステム運用が可能になる。
【0056】
なお、上述した図9では、各光フィルタ24C,24Dが信号光の周波数グリッド間隔に略等しいFSRを持つ一例を示したが、例えば図15に示すように、各光フィルタ24C,24DのFSRが、周波数グリッド間隔の2倍に略等しくなるように設定することも可能である。この場合、各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数は、隣り合う周波数グリッドの中央付近となるように設定される。図15の例では、周波数グリッド上の奇数チャネル(CH.1,CH.3,CH.5…)について、低周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Cにより抽出され、高周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Dにより抽出される一方、偶数チャネル(CH.2,CH.4,CH.6…)については、低周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Dにより抽出され、高周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Cにより抽出される。このように、各光フィルタ24C,24DのFSRを周波数グリッド間隔の2倍にした場合、奇数チャンネルと偶数チャンネルとでは、信号光の中心周波数に対する各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数の差Δの符号が逆になる。
【0057】
また、上述した実施形態では、RZ−DQPSK信号光を生成する光変調装置の構成例について説明したが、本発明はこれに限らず、非強度変調および強度変調を組み合わせた多重変調方式の信号光を生成する光変調装置についても上述した実施形態の場合と同様にして本発明を適用することが可能である。
【0058】
以上説明した実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部と、
前記第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐されたモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタする光検出部と、
前記光検出部でモニタされた各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする光変調装置。
【0059】
(付記2) 付記1に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、入力される光をデータ信号に従って位相変調し、
前記第2の光変調部は、入力される光を前記データ信号に対応した周波数を有するクロック信号に従って強度変調してパルス化し、
前記制御部は、前記差分値に基づいて、前記データ信号および前記クロック信号間の位相ずれを制御することを特徴とする光変調装置。
【0060】
(付記3) 付記2に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、前記データ信号に従って駆動される少なくとも1つの位相変調器を有し、入力される光に対して多値の位相変調を行い、
前記第2の光変調部は、前記クロック信号に従って駆動される、マッハツェンダ干渉計を用いた強度変調器を有し、入力される光をRZパルス化することを特徴とする光変調装置。
【0061】
(付記4) 付記1〜3のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記抽出部は、
前記分岐部で分岐されたモニタ光を2つに分岐する光カプラと、
前記光カプラの一方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から予め設定した離間量だけ低周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第1の光フィルタと、
前記光カプラの他方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から前記離間量だけ高周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第2の光フィルタと、を含み、
前記光検出部は、
前記第1の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第1の光検出器と、
前記第2の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第2の光検出器と、を含むことを特徴とする光変調装置。
【0062】
(付記5) 付記4に記載の光変調装置であって、
前記離間量は、前記第1および第2の光変調部のいずれかで行われる強度変調に用いられるクロック信号の周波数以上に設定されることを特徴とする光変調装置。
【0063】
(付記6) 付記4または5に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記多重変調された信号光の中心周波数が配置される周波数グリッドの間隔に応じた周期で透過帯が繰り返し出現する透過特性を有することを特徴とする光変調装置。
【0064】
(付記7) 付記6に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記周波数グリッドの間隔に略等しいフリースペクトラムレンジを有する周期フィルタであることを特徴とする光変調装置。
【0065】
(付記8) 付記6に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記周波数グリッドの間隔の2倍に略等しいフリースペクトラムレンジを有する周期フィルタであることを特徴とする光変調装置。
【0066】
(付記9) 付記1〜8のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の信号間の相対的な位相の関係を調整する位相シフタを備え、
前記制御部は、前記差分値が零になるように、前記位相シフタにおける位相シフト量をフィードバック制御することを特徴とする光変調装置。
【0067】
(付記10) 連続光を発生する光源と、該光源からの連続光が入力される付記1〜9のいずれか1つに記載の光変調装置と、を備えたことを特徴とする光送信器。
【0068】
(付記11) 付記10に記載の光送信器であって、
前記光源は、発振波長が可変であることを特徴とする光送信器。
【0069】
(付記12) 入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置の制御方法であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐し、
該分岐したモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出し、
該抽出した低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタし、
該モニタした各周波数成分のパワーの差分値を求め、
該求めた差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する、
ことを特徴とする光変調装置の制御方法。
【符号の説明】
【0070】
1…光源
2…光変調装置
21…DQPSK変調器
21A,21B…位相変調部
21C…位相シフト部
22…RZ変調器
23…駆動部
23A…信号発生器(SER)
23B,23C,23E…ドライバ回路(DRV)
23D…位相シフタ
24…モニタ制御部
24A,24B…光カプラ
24C,24D…光フィルタ(FIL)
24E,24F…光検出器(PD)
24G…減算回路
24H…制御回路(CONT)
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重変調方式の信号光を生成する光変調装置および光送信器、並びに、光変調装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術の導入により、長距離光伝送網においてはテラビット級の大容量伝送が実現されている。WDM方式における1波長当たりの伝送速度は、現状では10ギガビット毎秒(Gbps)が中心となっているが、今後の更なる大容量化の実現に向けて、40Gbps以上の高速伝送技術の導入が強く求められている。40Gbpsの伝送では、信号光の変調方式として、光雑音耐力の向上や伝送路における非線形効果の抑圧が可能であるなどの理由により、非強度変調と強度変調を組み合わせた多重変調方式が注目されており、特に、RZ−DPSK(Return-to-Zero Differential Phase Shift Keying)方式やRZ−DQPSK(Return-to-Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式などのRZパルス化された位相変調方式が有力視されている。(例えば、非特許文献1,2参照)
【0003】
図1は、RZ−DQPSK方式における一般的な光送信器の構成例を示すブロック図である。図1において、光送信器は、光源(LD)100と、該光源100の出力光をRZ−DQPSK方式に従って変調する光変調装置200と、を備える。また、光変調装置200は、前後に接続されたDQPSK変調器210およびRZ変調器220と、駆動部230と、を備える。
【0004】
光源100は、連続(CW:Continuous Wave)光を発生し、該CW光を光変調装置200のDQPSK変調器210に出力する。DQPSK変調器210は、マッハツェンダ干渉計(MZI:Mach-Zender Interferometer)を用いた2つの位相変調部211,212および位相シフト部213を有し、光源100からのCW光を2分岐してIアームおよびQアームに送る。Iアーム上には一方の位相変調部211が配置され、Qアーム上には他方の位相変調部212および位相シフト部213が配置されている。
【0005】
各位相変調部211,212は、駆動部230から出力されるデータ信号DAT1,DAT2に対応した各駆動信号が、各々のMZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、IアームおよびQアームをそれぞれ伝搬するCW光に対して、2値の位相変調を行う。位相シフト部213は、Qアーム側の位相変調部212で位相変調された光の位相をπ/2だけシフトさせる。この位相シフト部213の出力光が、Iアーム側の位相変調部211の出力光と合波されることで、4値の位相変調光(DQPSK信号光)が生成される。
【0006】
RZ変調器220は、MZIを用いた強度変調器であり、駆動部230から出力されるクロック信号CLKに対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、DQPSK変調器210から出力されるDQPSK信号光をパルス化する。これにより、RZ−DQPSK信号光が光変調装置200から出力される。
【0007】
駆動部230は、信号発生器(SER)231と、DQPSK変調器210の位相変調部211,212に対応したドライバ回路(DRV)232,233と、位相シフタ234と、RZ変調器220に対応したドライバ回路(DRV)235と、を有する。信号発生器231は、外部から与えられるデータ信号DATに対して、DQPSK方式に対応した所要の信号処理を実行し、1組のデータ信号DAT1,DAT2および該データ信号DAT1,DAT2に同期したクロック信号CLKを生成する。各ドライバ回路232,233は、信号発生器231から出力される各データ信号DAT1,DAT2に従って、DQPSK変調器210の各位相変調部211,212を駆動するための駆動信号をそれぞれ生成する。位相シフタ234は、信号発生器231から出力されるクロック信号CLKの位相をシフトさせることで、データ信号DAT1,DAT2およびクロック信号CLK間の相対的な遅延量を調整する。ドライバ回路235は、位相シフタ234を通過したクロック信号CLKに従って、RZ変調器220を駆動するための駆動信号を生成する。
【0008】
図2は、上記のような一般的な光送信器において、DQPSK変調器210から出力されるDQPSK信号光、および、RZ変調器220から出力されるRZ−DQPSK信号光の各アイパターン(eye pattern)波形を例示した図である。図2において、DQPSK信号光の波形(上段)には、位相の切り替え時に、データ信号の立ち上がり時間および立下り時間(Tr/Tf)に応じた出力光強度の変化が見られる。しかし、このDQPSK信号光の強度変化成分(以下、「Tr/Tf成分」とする)は、RZ変調器220によるパルス化により削られるため、RZ−DQPSK信号光の波形(下段)は、Tr/Tf成分を含まないパルス列となる。
【0009】
ところで、上記のようなRZ−DQPSK方式などの多重変調方式に対応した光変調装置は、上記図1に示したように非強度変調器(DQPSK位相変調器)と強度変調器(RZ変調器)とを前後に接続した構成であるため、各変調器の駆動に用いられる信号(データ信号およびクロック信号)の遅延量の温度変動により、当該光変調装置から出力される信号光の伝送特性が劣化してしまうという問題がある。この問題について具体例を挙げて詳しく説明する。
【0010】
図3は、44.6GbpsのRZ−DQPSK信号光を生成する光変調装置(図1参照)について、DQPSK変調器の駆動に用いられるデータ信号の位相に対し、RZ変調器の駆動に用いられるクロック信号の位相が最適状態から10psずれた場合に、該光変調装置から出力される信号光の波形(アイパターン)を例示した図である。また、図4は、RZ−DQPSK信号光の伝送時における、データ信号およびクロック信号の位相ずれに対するOSNR耐力の劣化をシミュレーションした結果である。なお、OSNR耐力の劣化は、データ信号およびクロック信号間の位相ずれが0psの場合を基準としたOSNRペナルティを用いて評価している。
【0011】
図3より、データ信号およびクロック信号間の位相にずれが発生すると、RZ−DQPSK信号光の波形歪みが顕著になる様子が分かる。このようなRZ−DQPSK信号光の伝送特性は、送信端の光変調装置でのデータ信号およびクロック信号間の位相ずれが増大することで指数関数的に劣化することが、図4のシミュレーション結果より分かる。このため、光変調装置の実際の運用においては、データ信号およびクロック信号間の位相差をモニタし、該位相差が出来る限り小さくなるように、データ信号およびクロック信号の相対的な位相の関係を常時制御する必要がある。
【0012】
従来の光変調装置におけるデータ信号およびクロック信号間の位相差をモニタして制御する技術として、例えば特許文献1には、光変調装置から出力される信号光の一部を分岐し、該分岐光を光検出器で光電変換した電気信号のうちの特定の周波数成分、特に低周波数成分のパワー(電力)をモニタして、該モニタパワーが最小になるようにデータ信号およびクロック信号間の位相差をフィードバック制御する方式(以下、従来方式1と呼ぶ)が開示されている。
【0013】
また、例えば特許文献2には、強度変調器を駆動するクロック信号の位相を特定の周波数f0で変動(ディザリング)させておき、光変調装置から出力される信号光の一部を分岐して光電変換した電気信号の周波数f0に同期した強度変動成分をモニタし、該モニタした周波数f0成分が最小になるようにデータ信号およびクロック信号間の位相差をフィードバック制御する方式(以下、従来方式2と呼ぶ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−329886号公報
【特許文献2】特開2008−172714号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A. H. Gnauck, et al., "2.5 Tb/s (64 × 42.7 Gb/s) transmission over 40 × 100 km NZDSF using RZ-DPSK format and all-Raman-amplified spans", Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2002, Post-Deadline Paper FC2
【非特許文献2】C. Wree, et al., "RZ-DQPSK format with high spectral efficiency and high robustness towards fiber nonlinearities", 28th European Conference on Optical Communication (ECEC) 2002, Paper 9.6.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来方式1については、モニタされたパワー成分によってデータ信号およびクロック信号間の位相差の絶対値(位相ずれの大きさ)は判定可能であるが、データ信号に対してクロック信号の位相が進む方向にずれているのか、遅れる方向にずれているのかが分からないという課題がある。このため、従来方式1を採用した光変調装置では、結局のところ何らかの方法でクロック信号(またはデータ信号)の位相を変動させながらモニタパワーの変化を見ることで、位相ずれの方向を検出しなくてはならない。
【0017】
また、上記従来方式1では、データ信号およびクロック信号間の位相のずれと、他の制御パラメータのずれとの区別が付かないという問題もある。例えば、上述の図1に示した光変調装置200に従来方式1を採用した場合を想定すると、上記他の制御パラメータの一つとして、DQPSK変調器210におけるIアームおよびQアーム間の光位相の差(理想的にはπ/2)が該当する。図5は、上記想定におけるデータ信号およびクロック信号間の位相ずれと、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果である。また、図6は、上記想定におけるIアームおよびQアーム間の光位相の差と、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果である。図5および図6から明らかなように、データ信号およびクロック信号間の位相の関係が最適状態からずれた場合も、IアームおよびQアーム間の光位相の差が90°の最適状態からずれた場合も、どちらも最適状態をボトムとしてモニタパワーが増加するため、従来方式1のモニタ方法では両者の区別がつかない。
【0018】
上記従来方式2については、ディザリングによりクロック信号の位相が常に変化することに起因して、光変調装置から出力される信号光の伝送特性劣化が避けられないという問題がある。つまり、従来方式2では、クロック信号の位相を最適値に留めておくことが原理的に不可能であり、ディザリングを与えることによる伝送上のペナルティを予め見込んでおかなくてはならない。光伝送システムの設計では、システム全体で発生する信号光の伝送特性劣化を考慮すると、送信端に起因する伝送ペナルティは極僅かしか許容されないため、従来方式2を採用して光変調装置を実際に設計することが困難になる可能性がある。
【0019】
また、上述の図1に示したようなRZ−DQPSK方式に対応した光変調装置では、構成の複雑化に伴って調整を要する箇所も多くなる。このような光変調装置に従来方式2を適用した場合、ディザリングによる制御が必要なパラメータが、データ信号およびクロック信号間の位相差の他にも複数存在するようになることが想定される。この場合、全てのパラメータをディザリングで制御することが前述のペナルティの観点から不可能、或いは、可能であっても非常に複雑な構成および制御アルゴリズムが必要になるという問題もある。
【0020】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、多重変調方式の信号光を生成する光変調装置について、前後に接続された各光変調器の駆動に用いられる信号間の位相ずれをその方向も含めて、伝送特性に影響を及ぼすことなくモニタして制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明は入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置を提供する。この光変調装置の一態様は、前後に接続された第1および第2の光変調部と、前記第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐する分岐部と、前記分岐部で分岐されたモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出された低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタする光検出部と、前記光検出部でモニタされた各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
上記光変調装置によれば、第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光とし、該モニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低周波側の周波数成分のパワーと高周波側の周波数成分のパワーとの差分値を求めることにより、各光変調部の駆動に用いられる第1および第2の信号の間の位相ずれをその方向も含めて、他の制御パラメータとは独立に検出することができるようになる。よって、上記差分値に基づいて第1および第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御することで、ディザリングを行うことなく位相ずれを補償することができ、高品位な多重変調信号光を簡略な制御アルゴリズムで生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一般的なRZ−DQPSK方式の光送信器の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のDQPSK変調器およびRZ変調器から出力される信号光の波形を例示した図である。
【図3】図1の光変調装置においてデータ信号およびクロック信号間に位相ずれが生じた場合に生成される信号光の波形を例示した図である。
【図4】RZ−DQPSK信号光の伝送時における、データ信号およびクロック信号の位相ずれに対するOSNR耐力の劣化をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】データ信号およびクロック信号間の位相ずれと、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果を示す図である。
【図6】IアームおよびQアーム間の光位相の差と、従来方式1によるモニタパワーとの関係を計算した結果を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による光変調装置を適用した光送信器の構成を示すブロック図である。
【図8】上記実施形態におけるRZ−DQPSK信号光のスペクトルと各光フィルタの透過特性の一例を示す図である。
【図9】上記実施形態において周期フィルタを適用した場合の信号光の中心周波数と各光フィルタの透過特性を模式的に示した図である。
【図10】上記実施形態において光変調装置から出力される信号光のスペクトル形状の変化をシミュレーションした結果を示す図である。
【図11】図10のスペクトルにおいて各光検出器でモニタされるサイドローブ成分のパワーを計算した結果を示す図である。
【図12】低周波側および高周波側の各サイドローブ成分のモニタパワーに差異が生じる原因を説明する図である。
【図13】上記実施形態における減算回路の出力値とデータ信号およびクロック信号間の位相ずれとの関係を示す図である。
【図14】IアームおよびQアーム間の光位相の差を最適値からずらした場合のRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状を示す図である。
【図15】図9に関連した各光フィルタの他の透過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図7は、本発明の一実施形態による光変調装置を適用した光送信器の構成を示すブロック図である。
図7において、光送信器は、例えば、光源(LD)1と、該光源1の出力光をRZ−DQPSK方式に従って変調する光変調装置2と、を備える。この光変調装置2は、前後に接続された第1および第2の光変調部としてのDQPSK変調器21およびRZ変調器22と、該DQPSK変調器21およびRZ変調器22を駆動する駆動部23と、データ信号およびクロック信号間の位相差をモニタして制御するモニタ制御部24と、を具備する。
【0025】
光源1は、CW光を発生して光変調装置2のDQPSK変調器21に出力する。この光源1は、好ましくは発振周波数が可変であり、例えばITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication sector )等の規格に従う周波数グリットに対応させてCW光の中心周波数が設定される。なお、光源1の発振周波数は固定であってもよい。
【0026】
光変調装置2のDQPSK変調器21は、例えば、マッハツェンダ干渉計(MZI)を用いた2つの位相変調部21A,21Bおよび位相シフト部21Cを有し、光源1からのCW光を2分岐してIアームおよびQアームに送る。Iアーム上には一方の位相変調部21Aが配置され、Qアーム上には他方の位相変調部21Bおよび位相シフト部21Cが配置される。
【0027】
位相変調部21Aは、駆動部23の後述するドライバ回路23Bから出力される、データ信号DAT1に対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、Iアームを伝搬するCW光に対して2値の位相変調を行う。また、位相変調部21Bは、駆動部23の後述するドライバ回路23Cから出力される、データ信号DAT2に対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、Qアームを伝搬するCW光に対して2値の位相変調を行う。
【0028】
位相シフト部21Cは、Qアーム側の位相変調部21Bで位相変調された光の位相をπ/2だけシフトさせる。この位相シフト部21Cの出力光が、Iアーム側の位相変調部21Aの出力光と合波されることで、4値の位相変調光(DQPSK信号光)が生成される。なお、ここでは位相シフト部21CがQアーム側に配置される構成例を示したが、Iアーム側に位相シフト部21Cを配置することも可能である。また、光の位相を+π/4だけシフトさせる位相シフト部を一方のアーム上に配置し、光の位相を−π/4だけシフトさせる位相シフト部を他方のアーム上に配置してもよい。
【0029】
RZ変調器22は、MZIを用いた強度変調器であり、駆動部23の後述するドライバ回路23Eから出力される、クロック信号CLKに対応した駆動信号が、MZIの一方の分岐アームに沿う電極に印加されることにより、DQPSK変調器21から出力されるDQPSK信号光をパルス化する。これにより、RZ−DQPSK信号光が光変調装置2から出力される。なお、ここではDQPSK変調器21の後段にRZ変調器22が接続される一例を示したが、DQPSK変調器21およびRZ変調器22の接続順は任意であり、RZ変調器22をDQPSK変調器21の前段に接続することも可能である。
【0030】
駆動部23は、例えば、信号発生器(SER)23Aと、DQPSK変調器21の位相変調部21A,21Bに対応したドライバ回路(DRV)23B,23Cと、位相シフタ23Dと、RZ変調器22に対応したドライバ回路(DRV)23Eと、を有する。
【0031】
信号発生器23Aは、外部から与えられるデータ信号DATに対して、DQPSK方式に対応した所要の信号処理を実行し、1組のデータ信号DAT1,DAT2および該データ信号DAT1,DAT2に同期したクロック信号CLKを生成する。DQPSK方式ではボーレートがビットレートの1/2となるため、例えば、40Gbpsのデータ信号DATが信号発生器231に入力される場合、該信号発生器23Aから出力される、データ信号DAT1,DAT2およびクロック信号CLKの周波数は20GHzとなる。ただし、キャリア抑圧RZ(CSRZ:Carrier Suppressed Return to Zero)−DQPSK方式が適用される場合には、クロック信号CLKの周波数は10GHzとなる。
【0032】
ドライバ回路23Bは、信号発生器23Aから出力される各データ信号DAT1に従って、DQPSK変調器21の位相変調部21Aを駆動するための駆動信号を生成する。また、ドライバ回路23Cは、信号発生器23Aから出力される各データ信号DAT2に従って、DQPSK変調器21の位相変調部21Bを駆動するための駆動信号を生成する。
【0033】
位相シフタ23Dは、信号発生器23Aから出力されるクロック信号CLKの位相をシフトさせることで、データ信号DAT1,DAT2およびクロック信号CLK間の相対的な位相の関係を調整する。この位相シフタ23Dにおける位相シフト量は、モニタ制御部24から出力される制御信号に従って制御される。上記位相シフタ23Dを通過したクロック信号CLKに従って、ドライバ回路23Eは、RZ変調器22を駆動するための駆動信号を生成する。
【0034】
モニタ制御部24は、例えば、分岐部としての光カプラ24Aと、抽出部としての光カプラ24Bおよび2つの光フィルタ(FIL)24C,24Dと、光検出部としての2つの光検出器(PD)24E,24Fと、制御部としての減算回路24Gおよび制御回路(CONT)24Hと、を有する。
【0035】
光カプラ24Aは、RZ変調器22から出力されるRZ−DQPSK信号光の一部をモニタ光として分岐し、該モニタ光を光カプラ24Bに出力する。この光カプラ24Aにおけるモニタ光の分岐比は、各光検出器24E,24Fの受光感度に応じて適宜に設定することが可能である。
【0036】
光カプラ24Bは、光カプラ24Aで分岐されたモニタ光を、更に2つに分岐して、一方のモニタ光を光フィルタ24Cに出力し、他方のモニタ光を光フィルタ24Dに出力する。この光カプラ24Bの分岐比は、1:1とするのが望ましい。分岐比が1:1からずれた光カプラ24Bを用いる場合には、減算回路24G若しくは制御回路24Hにおいて、光カプラ24Bの分岐比のずれに対応したモニタ値の補正を行うようにする。
【0037】
光フィルタ24Cは、RZ変調器22から出力されるRZ−DQPSK信号光の中心周波数に対して、予め設定した周波数−Δだけ離れた位置に透過帯の中心周波数を有し、光カプラ24Bで分岐された一方のモニタ光のスペクトルのうちの、低周波側のサイドローブ成分を抽出して光検出器24Eに出力する。一方、光フィルタ24Dは、上記RZ−DQPSK信号光の中心周波数に対して、予め設定した周波数+Δだけ離れた位置に透過帯の中心周波数を有し、光カプラ24Bで分岐された他方のモニタ光のスペクトルのうちの、高周波側のサイドローブ成分を抽出して光検出器24Eに出力する。
【0038】
図8は、RZ−DQPSK信号光のスペクトルと各光フィルタ24C,24Dの透過特性の一例を示す図である。図8のように、2つの光フィルタ24C,24Dの周波数に対する透過特性は、RZ−DQPSK信号光の中心周波数をfcとした場合、光フィルタ24Cの透過帯の中心周波数がfc−Δとなり、光フィルタ24Dの透過帯の中心周波数がfc+Δとなるように設定されている。なお、図中の斜線部分は、各光フィルタ24C,24Dの3dB帯域幅を表している。上記周波数−Δおよび+Δの絶対値|Δ|、すなわち、RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcに対する、各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数の離間量は、後述するようにRZ−DQPSK信号光のサイドローブの発生状態を考慮して、クロック信号CLKの周波数以上に設定するのが好ましい。
【0039】
上記RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcは、前述したITU−T等の周波数グリッド上の任意の周波数に設定される、つまり、所要の周波数間隔で配置された複数の中心周波数の候補のうちのいずれか1つが、光源1の発振周波数に応じて設定されることになる。このようなRZ−DQPSK信号光の中心周波数fcの設定に対応するためには、各光フィルタ24C,24Dとして、上記周波数グリッドの間隔に対応したフリースペクトラムレンジ(FSR:Free Spectrum Range)を有する周期フィルタを適用するのが望ましい。
【0040】
図9は、各光フィルタ24C,24Dに周期フィルタを適用した場合における、信号光の中心周波数と各光フィルタ24C,24Dの周期的な透過特性を模式的に示した図である。図9のように、各光フィルタ24C,24Dの透過特性は、RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcが配置される周波数グリッド(破線)の間隔に略等しい周期で透過帯が繰り返し出現する周期性を有する。つまり、各光フィルタ24C,24Dは、周波数グリッドの間隔に略等しいFSRを持つ。また、各光フィルタ24C,24Dの周期的な透過特性は、周波数グリッドに対して、光フィルタ24Cの各透過帯が低周波側にΔだけシフトし、光フィルタ24Dの各透過帯が高周波側にΔだけシフトするように設計される。これにより、RZ−DQPSK信号光の中心周波数fcが周波数グリッド上のいずれのチャネルに設定されても、該RZ−DQPSK信号光の低周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Cにより抽出され、高周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Dにより抽出されるようになる。上記のような周期性を有する光フィルタ24C,24Dの具体例としては、エタロン(etalon)またはファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)などを用いた周期フィルタが、サイズや特性等の観点より好適である。
【0041】
光検出器24Eは、光フィルタ24Cを透過した低周波側のサイドローブ成分を受光して当該パワーをモニタし、そのモニタパワーに応じてレベルが変化する電気信号を減算回路24Gに出力する。また、光検出器24Fは、光フィルタ24Dを透過した高周波側のサイドローブ成分を受光して当該パワーをモニタし、そのモニタパワーに応じてレベルが変化する電気信号を減算回路24Gに出力する。
【0042】
減算回路24Gは、一方の入力端子に与えられる光検出器24Eの出力信号レベルと、他方の入力端子に与えられる光検出器24Fの出力信号レベルとの差分値を求め、該差分値を示す信号を制御回路24Hに出力する。
【0043】
制御回路24Hは、減算回路24Gの出力信号により示される差分値が零になるように、駆動部23の位相シフタ23Dにおける位相シフト量をフィードバック制御する。これにより、データ信号DAT1、DAT2およびクロック信号CLK間の位相ずれが補償される。
【0044】
次に、上記光変調装置2の動作について説明する。
上記のような構成の光変調装置2では、上述の図1に示した一般的な光変調器200の場合と同様にして、光源1からのCW光が、データ信号DAT1,DAT2に従って駆動されるDQPSK変調器21によりDQPSK変調された後に、クロック信号CLKに従って駆動されるRZ変調器22によりパルス化されることで、RZ−DQPSK信号光が生成される。
【0045】
このRZ−DQPSK信号光は、モニタ制御部24の光カプラ24Aに与えられ、その一部がモニタ光として分岐される。光カプラ24Aで分岐されたモニタ光は、更に光カプラ24Bで2分岐されて光フィルタ24C,24Dに与えられる。そして、一方の光フィルタ24Cでは、モニタ光の低周波側のサイドローブ成分が抽出され、該サイドローブ成分のパワーが光検出器24Eでモニタされる。また、他方の光フィルタ24Dでは、モニタ光の高周波側のサイドローブ成分が抽出され、該サイドローブ成分のパワーが光検出器24Fでモニタされる。
【0046】
ここで、各光検出器24E,24Fによってそれぞれモニタされるサイドローブ成分のパワーについて具体例を挙げて詳しく説明する。
図10は、44.6GbpsのRZ−DQPSK信号光が光変調装置2で生成される場合において、データ信号およびクロック信号間の位相差を0ps,5psおよび10psと変化させたときに、光変調装置2から出力されるRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状の変化をシミュレーションした結果である。図10のシミュレーション結果より、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値(0ps)からずれる程、低周波側および高周波側の各サイドローブのレベルが高くなることが分かる。
【0047】
このサイドローブのレベル上昇は、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値にある場合、上述の図2下段に示したようにDQPSK信号光のTr/Tf成分がRZ変調によって切り取られるのに対して、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値からずれると、上述の図3に示したようにDQPSK信号光のTr/Tf成分がRZパルス化後の信号光に現れることに起因する。つまり、DQPSK信号光のTr/Tf成分は、RZパルス化におけるクロック周波数に対して、相対的に速い成分であるため、結果としてスペクトルが広がる(サイドローブが大きくなる)ことになる。
【0048】
図11は、上記図10で示したRZ−DQPSK信号光のスペクトルにおいて、データ信号およびクロック信号間の位相差を変化させながら、信号光の中心周波数から−100GHzおよび+100GHzだけ離れた周波数領域を光フィルタ24C,24Dで抽出した場合に、各光検出器24E,24Fでモニタされるサイドローブ成分のパワーを計算した結果である。図11の横軸はデータ信号およびクロック信号間の位相ずれ、縦軸はサイドローブ成分のモニタパワーを表す。なお、各光フィルタ24C,24Dは、1次のガウス型光バンドパスフィルタとし、3dB帯域幅を50GHzとしている(図8参照)。
【0049】
図11の計算結果より、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値にある場合、低周波側のサイドローブ成分のモニタパワー(例えば、図中の黒丸)および高周波側のサイドローブ成分のモニタパワー(例えば、図中の白丸)の双方が最小になることが分かる。また、データ信号およびクロック信号間の位相ずれが大きくなると、低周波側および高周波側の各サイドローブ成分のモニタパワーが増加することが分かる。さらに、低周波側のサイドローブ成分のモニタパワーと、高周波側のサイドローブ成分のモニタパワーとでは、データ信号およびクロック信号間の位相ずれの方向に依存した差異が生じていることも分かる。この差異は、図12に例示するようなRZ変調器22によるパルス化の際に生じるチャープ(周波数変動)の影響に起因する。すなわち、データ信号およびクロック信号間の位相差が最適値にある場合、パルス化の際に生じる正および負のチャープが相殺されるため、RZ−DQPSK信号光のスペクトルが左右対称な形状になる。一方、データ信号およびクロック信号間に位相ずれが生じている場合には、位相ずれの方向に依存してRZ−DQPSK信号光が正または負のチャープの影響を受けることになり、RZ−DQPSK信号光のスペクトルが左右非対称となってモニタパワーに差異が生じる。
【0050】
図13は、上記図11の計算結果をより分かり易くするために、低周波側のサイドローブ成分のモニタパワーと高周波側のサイドローブ成分のモニタパワーとの差分値、つまり、減算回路24Gの出力信号によって示される差分値を、データ信号およびクロック信号間の位相のずれ量に対応させてプロットした一例である。図13より、減算回路24Gの出力値は、その符号(+または−)が位相ずれの方向によって変化することが分かる。したがって、上述した従来方式2のようにクロック信号をディザリングすることなく、減算回路24Gの出力値の符号により、データ信号およびクロック信号間の位相ずれの方向を判定することができる。また、減算回路24Gの出力値は、データ信号およびクロック信号間の位相差が0psの状態を境界として急峻に変化するので、この減算回路24Gの出力値が零になるように、データ信号およびクロック信号間の相対的な位相の関係(ここでは、位相シフタ23Dにおける位相シフト量)をフィードバック制御することにより、高精度な位相制御が可能である。
【0051】
なお、上記図10に示したRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状(サイドローブの発生状態)は、DQPSK変調器21の駆動信号のTr/Tf等に依存して変化する。このため、RZ−DQPSK信号光の中心周波数(光源1の発振周波数)に対する各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数の離間量|Δ|は、光源1および光変調装置2を含む光送信器全体の特性に応じて、低周波側および高周波側の各サイドローブ成分のモニタ感度が最も良くなるように設定すればよい。具体的には、先に図10を参照して説明したように、RZ変調器22におけるクロック周波数よりも速いTr/Tf成分が、光変調装置2の出力に現れることによるスペクトルの広がりに着目して、低周波側および高周波側の各サイドローブ成分をモニタしていることを考慮すると、離間量|Δ|はクロック信号CLKの周波数以上に設定することが望ましい。
【0052】
また、上記図12で示したRZ変調器22によって発生するチャープの大きさや符号は、RZ変調器22の消光比、具体的にはマッハツェンダ干渉計(MZI)における入力側の光分岐比および出力側の光結合比に依存する。このため、データ信号およびクロック信号間の位相ずれの方向と、減算回路24Gの出力値の符号との関係は、上記図13に示した例の通りとは限らない。この関係は、光変調装置2に実際に適用されるRZ変調器22の消光比(MZIの構造)と減算回路24Gの回路構成とが定まることにより一意に決まる。
【0053】
上述したように光変調装置2によれば、データ信号およびクロック信号間に位相ずれが生じた場合に該位相ずれを補償するための位相調整が自動的に行われるようになるため、ディザリングによる伝送特性の劣化を回避して、常に高品位なRZ−DQPSK信号光を生成することが可能である。また、光変調装置2が採用するデータ信号およびクロック信号間の位相ずれのモニタ技術は、上述した従来方式1の場合のように光変調装置の他の制御パラメータのずれとの区別がつかなくなるようなことも無い。
【0054】
図14は、光変調装置の他の制御パラメータの一例として、DQPSK変調器21におけるIアームおよびQアーム間の光位相の差を90°(最適値)から100°までずらした場合のRZ−DQPSK信号光のスペクトル形状を示した図である。図14より、RZ−DQPSK信号光のスペクトル形状は、IアームおよびQアーム間の光位相の差には殆ど依存しないことが分かる。すなわち、光変調装置2が採用するモニタ技術によれば、データ信号およびクロック信号間の位相差のみを独立にモニタすることができる。これにより、簡略なアルゴリズムに従って、データ信号およびクロック信号間の位相差をフィードバック制御することが可能である。
【0055】
さらに、光変調装置2の各光フィルタ24C,24Dとして、上述の図9に示したような信号光の周波数グリッドに対応した透過特性を有する周期フィルタが適用されていれば、RZ−DQPSK信号光の中心周波数(光源1の発振周波数)が周波数グリッド上のいずれのチャネルに設定されても、データ信号およびクロック信号間の位相ずれを補償することができる。このような光変調装置2を適用した光送信器を用いてWDM光伝送システムを構築することにより、柔軟なシステム運用が可能になる。
【0056】
なお、上述した図9では、各光フィルタ24C,24Dが信号光の周波数グリッド間隔に略等しいFSRを持つ一例を示したが、例えば図15に示すように、各光フィルタ24C,24DのFSRが、周波数グリッド間隔の2倍に略等しくなるように設定することも可能である。この場合、各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数は、隣り合う周波数グリッドの中央付近となるように設定される。図15の例では、周波数グリッド上の奇数チャネル(CH.1,CH.3,CH.5…)について、低周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Cにより抽出され、高周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Dにより抽出される一方、偶数チャネル(CH.2,CH.4,CH.6…)については、低周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Dにより抽出され、高周波側のサイドローブ成分が光フィルタ24Cにより抽出される。このように、各光フィルタ24C,24DのFSRを周波数グリッド間隔の2倍にした場合、奇数チャンネルと偶数チャンネルとでは、信号光の中心周波数に対する各光フィルタ24C,24Dの透過帯の中心周波数の差Δの符号が逆になる。
【0057】
また、上述した実施形態では、RZ−DQPSK信号光を生成する光変調装置の構成例について説明したが、本発明はこれに限らず、非強度変調および強度変調を組み合わせた多重変調方式の信号光を生成する光変調装置についても上述した実施形態の場合と同様にして本発明を適用することが可能である。
【0058】
以上説明した実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部と、
前記第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐されたモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタする光検出部と、
前記光検出部でモニタされた各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする光変調装置。
【0059】
(付記2) 付記1に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、入力される光をデータ信号に従って位相変調し、
前記第2の光変調部は、入力される光を前記データ信号に対応した周波数を有するクロック信号に従って強度変調してパルス化し、
前記制御部は、前記差分値に基づいて、前記データ信号および前記クロック信号間の位相ずれを制御することを特徴とする光変調装置。
【0060】
(付記3) 付記2に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、前記データ信号に従って駆動される少なくとも1つの位相変調器を有し、入力される光に対して多値の位相変調を行い、
前記第2の光変調部は、前記クロック信号に従って駆動される、マッハツェンダ干渉計を用いた強度変調器を有し、入力される光をRZパルス化することを特徴とする光変調装置。
【0061】
(付記4) 付記1〜3のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記抽出部は、
前記分岐部で分岐されたモニタ光を2つに分岐する光カプラと、
前記光カプラの一方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から予め設定した離間量だけ低周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第1の光フィルタと、
前記光カプラの他方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から前記離間量だけ高周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第2の光フィルタと、を含み、
前記光検出部は、
前記第1の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第1の光検出器と、
前記第2の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第2の光検出器と、を含むことを特徴とする光変調装置。
【0062】
(付記5) 付記4に記載の光変調装置であって、
前記離間量は、前記第1および第2の光変調部のいずれかで行われる強度変調に用いられるクロック信号の周波数以上に設定されることを特徴とする光変調装置。
【0063】
(付記6) 付記4または5に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記多重変調された信号光の中心周波数が配置される周波数グリッドの間隔に応じた周期で透過帯が繰り返し出現する透過特性を有することを特徴とする光変調装置。
【0064】
(付記7) 付記6に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記周波数グリッドの間隔に略等しいフリースペクトラムレンジを有する周期フィルタであることを特徴とする光変調装置。
【0065】
(付記8) 付記6に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記周波数グリッドの間隔の2倍に略等しいフリースペクトラムレンジを有する周期フィルタであることを特徴とする光変調装置。
【0066】
(付記9) 付記1〜8のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の信号間の相対的な位相の関係を調整する位相シフタを備え、
前記制御部は、前記差分値が零になるように、前記位相シフタにおける位相シフト量をフィードバック制御することを特徴とする光変調装置。
【0067】
(付記10) 連続光を発生する光源と、該光源からの連続光が入力される付記1〜9のいずれか1つに記載の光変調装置と、を備えたことを特徴とする光送信器。
【0068】
(付記11) 付記10に記載の光送信器であって、
前記光源は、発振波長が可変であることを特徴とする光送信器。
【0069】
(付記12) 入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置の制御方法であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐し、
該分岐したモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出し、
該抽出した低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタし、
該モニタした各周波数成分のパワーの差分値を求め、
該求めた差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する、
ことを特徴とする光変調装置の制御方法。
【符号の説明】
【0070】
1…光源
2…光変調装置
21…DQPSK変調器
21A,21B…位相変調部
21C…位相シフト部
22…RZ変調器
23…駆動部
23A…信号発生器(SER)
23B,23C,23E…ドライバ回路(DRV)
23D…位相シフタ
24…モニタ制御部
24A,24B…光カプラ
24C,24D…光フィルタ(FIL)
24E,24F…光検出器(PD)
24G…減算回路
24H…制御回路(CONT)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部と、
前記第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐されたモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタする光検出部と、
前記光検出部でモニタされた各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、入力される光をデータ信号に従って位相変調し、
前記第2の光変調部は、入力される光を前記データ信号に対応した周波数を有するクロック信号に従って強度変調してパルス化し、
前記制御部は、前記差分値に基づいて、前記データ信号および前記クロック信号間の位相ずれを制御することを特徴とする光変調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、前記データ信号に従って駆動される少なくとも1つの位相変調器を有し、入力される光に対して多値の位相変調を行い、
前記第2の光変調部は、前記クロック信号に従って駆動される、マッハツェンダ干渉計を用いた強度変調器を有し、入力される光をRZパルス化することを特徴とする光変調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記抽出部は、
前記分岐部で分岐されたモニタ光を2つに分岐する光カプラと、
前記光カプラの一方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から予め設定した離間量だけ低周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第1の光フィルタと、
前記光カプラの他方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から前記離間量だけ高周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第2の光フィルタと、を含み、
前記光検出部は、
前記第1の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第1の光検出器と、
前記第2の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第2の光検出器と、を含むことを特徴とする光変調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光変調装置であって、
前記離間量は、前記第1および第2の光変調部のいずれかで行われる強度変調に用いられるクロック信号の周波数以上に設定されることを特徴とする光変調装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記多重変調された信号光の中心周波数が配置される周波数グリッドの間隔に応じた周期で透過帯が繰り返し出現する透過特性を有することを特徴とする光変調装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の信号間の相対的な位相の関係を調整する位相シフタを備え、
前記制御部は、前記差分値が零になるように、前記位相シフタにおける位相シフト量をフィードバック制御することを特徴とする光変調装置。
【請求項8】
連続光を発生する光源と、該光源からの連続光が入力される請求項1〜7のいずれか1つに記載の光変調装置と、を備えたことを特徴とする光送信器。
【請求項9】
請求項8に記載の光送信器であって、
前記光源は、発振波長が可変であることを特徴とする光送信器。
【請求項10】
入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置の制御方法であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐し、
該分岐したモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出し、
該抽出した低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタし、
該モニタした各周波数成分のパワーの差分値を求め、
該求めた差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する、
ことを特徴とする光変調装置の制御方法。
【請求項1】
入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部と、
前記第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐されたモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタする光検出部と、
前記光検出部でモニタされた各周波数成分のパワーの差分値を求め、該差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、入力される光をデータ信号に従って位相変調し、
前記第2の光変調部は、入力される光を前記データ信号に対応した周波数を有するクロック信号に従って強度変調してパルス化し、
前記制御部は、前記差分値に基づいて、前記データ信号および前記クロック信号間の位相ずれを制御することを特徴とする光変調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調装置であって、
前記第1の光変調部は、前記データ信号に従って駆動される少なくとも1つの位相変調器を有し、入力される光に対して多値の位相変調を行い、
前記第2の光変調部は、前記クロック信号に従って駆動される、マッハツェンダ干渉計を用いた強度変調器を有し、入力される光をRZパルス化することを特徴とする光変調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記抽出部は、
前記分岐部で分岐されたモニタ光を2つに分岐する光カプラと、
前記光カプラの一方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から予め設定した離間量だけ低周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第1の光フィルタと、
前記光カプラの他方の分岐光が入力され、前記多重変調された信号光の中心周波数から前記離間量だけ高周波側に離れた位置に透過帯の中心周波数を有する第2の光フィルタと、を含み、
前記光検出部は、
前記第1の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第1の光検出器と、
前記第2の光フィルタを透過した光のパワーをモニタする第2の光検出器と、を含むことを特徴とする光変調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光変調装置であって、
前記離間量は、前記第1および第2の光変調部のいずれかで行われる強度変調に用いられるクロック信号の周波数以上に設定されることを特徴とする光変調装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の光フィルタは、前記多重変調された信号光の中心周波数が配置される周波数グリッドの間隔に応じた周期で透過帯が繰り返し出現する透過特性を有することを特徴とする光変調装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の光変調装置であって、
前記第1および第2の信号間の相対的な位相の関係を調整する位相シフタを備え、
前記制御部は、前記差分値が零になるように、前記位相シフタにおける位相シフト量をフィードバック制御することを特徴とする光変調装置。
【請求項8】
連続光を発生する光源と、該光源からの連続光が入力される請求項1〜7のいずれか1つに記載の光変調装置と、を備えたことを特徴とする光送信器。
【請求項9】
請求項8に記載の光送信器であって、
前記光源は、発振波長が可変であることを特徴とする光送信器。
【請求項10】
入力光を非強度変調および強度変調の組み合わせにより多重変調する光変調装置の制御方法であって、
前後に接続された第1および第2の光変調部により多重変調された信号光の一部をモニタ光として分岐し、
該分岐したモニタ光のスペクトルについて、中心周波数よりも低い周波数成分および中心周波数よりも高い周波数成分を抽出し、
該抽出した低周波側および高周波側の各周波数成分のパワーをモニタし、
該モニタした各周波数成分のパワーの差分値を求め、
該求めた差分値に基づいて、前記第1の光変調部の駆動に用いる第1の信号および前記第2の光変調部の駆動に用いる第2の信号の間の相対的な位相の関係を制御する、
ことを特徴とする光変調装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−2640(P2011−2640A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145344(P2009−145344)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
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