説明

光学システム、特に顕微鏡

【課題】光学ユニット(17)およびコリメータ(1)を備える光学システム、特に、顕微鏡を提供する。
【解決手段】コリメータは、光学システムのビーム経路において光学ユニット(17)の前方または後方に配置され、前記光学ユニット(17)は、所定の縦方向色収差を、前記ビーム経路に供給されるビームに付与する。前記ビームは、コリメータ(1)に、拡散ビームまたは平行ビームとして入射し、前記コリメータによって平行ビームまたは集束ビームに変換される。コリメータ(1)は、少なくとも1枚のレンズ(L)と、ビーム経路を折り曲げて、供給されるビームがレンズ(4)を2回通過するようにする湾曲ミラー(4)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学システムに関し、特に、光学ユニットおよびコリメータを備える顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような光学システムとしては、例えば、蛍光相関分光計またはレーザ走査顕微鏡がある。レーザ走査顕微鏡では、多くの場合、光学ユニット(対物レンズ)の縦方向色収差特性のために、望ましくないことに、サンプルの異なる深さで励起が起こるという問題が生ずる。
【0003】
独国特許出願公開DE102 17 544 A1により、異なる光学材料の少なくとも2枚のレンズを用いてコリメータを構成すると、このコリメータは、対物レンズの縦方向色収差を低減するように作用することが知られている。しかしながら、異なる光学材料の少なくとも2枚のレンズを用いてコリメータを構成するため、その生産は複雑であり費用が嵩む。
【特許文献1】独国特許出願公開DE102 17 544 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に鑑み、本発明の目的は、光学ユニットおよびコリメータを備える光学システムであって、前述の欠点を克服することができる光学システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、光学ユニットおよびコリメータを備える光学システム、特に、顕微鏡によって達成される。コリメータは、光学システムのビーム径路において光学ユニットの前方または後方に配置され、前記光学ユニットは、縦方向色収差を前記ビーム経路に供給されるビームに付与し、前記ビームはコリメータに拡散ビームまたは平行ビームとして入射し、前記コリメータによって平行ビームまたは集束ビームに変換され、コリメータは、少なくとも1枚のレンズと、ビーム経路を折り曲げて、供給されたビームがレンズを2回通過するようにする湾曲ミラーとを備える。これによって、安価なコリメータの製造が可能となる。
【0006】
特に、コリメータの縦方向色収差特性が、光学ユニットによってビームに付与される縦方向色収差を不変のままに維持するか、あるいは低減するように構成することができる。
したがって、本発明による光学システムは、コリメータを設け、拡散ビームを平行ビームに変換するか、あるいは平行ビームを集束ビームに変換し、そのように変換する際に、縦方向色収差を変換ビームに付与しないか、あるいは光学ユニットの縦方向色収差とは逆の縦方向色収差をそれに付与する。これによって、コリメータは、光学ユニットによって引き起こされる縦方向色収差を悪化させないという保証が得られる。好ましくは、コリメータは、光学ユニットによって引き起こされる縦方向色収差を低減する。
【0007】
光学システムのコリメータを、当該コリメータによって引き起こされる縦方向色収差が(波長が長くなるにつれて)単調に増加するか、あるいは(波長が長くなるにつれて)単調に減少するように構成することができる。これは、例えば、単に、所定のレンズ材料に対してレンズ形状を変更するのみにより達成され、レンズが拡散レンズとして作用する場合には、縦方向色収差は単調に増加し、レンズが集束レンズとして作用する場合には、縦方向色収差は単調に減少する。
【0008】
具体的には、本発明による光学システムを、レーザ走査顕微鏡または蛍光相関分光計とすることができる。コリメータは、小型(点状)光源から来るビームを平行化するように作用する。この場合、コリメータを顕微鏡の励起側に配置される。代わりに、平行ビームを一点に集束するために、コリメータを検出ビーム経路において用いることも可能である。この場合、コリメータを、ピンホール光学系として用いることができる。
【0009】
コリメータにおいて湾曲ミラーを用いることによって、必要なレンズの枚数を削減することが可能になる。特に、単一のレンズを用いて、コリメータの所望の縦方向色収差特性を設定することが可能となる。勿論、コリメータは、数枚のレンズを備えていてもよい。この場合、全てのレンズを同一の材料から製造することが好ましい。
【0010】
供給されるビームは、特定の帯域幅を有する所定の波長の放射線(好ましくは、光)から成るとよい。この場合、コリメータは、この波長領域に対して、本発明のように構成することが好ましい。しかしながら、供給されるビームは、重複せず離間した2つ以上の異なる波長または波長領域の光を含む場合もある。この場合、コリメータの縦方向色収差特性を、互いに異なる波長領域に関連付けることができる。
【0011】
特に、ミラーは、凹型の曲率を有する。これによって、拡散ビームから平行ビームへの所望の変換、または平行ビームから集束ビームへの所望の変換を、特に容易に実現することが可能となる。
【0012】
ミラーを、レンズの一方の側に背面ミラーとして設けることができる。これには、ミラーをもはやレンズに対して調整する必要がないという利点がある。更に、背面ミラーのために典型的なコーティングを採用し、ミラーの汚れを効果的に防止することもできる。
【0013】
光学システムのコリメータは、そのレンズを唯一のレンズとして、かつそのミラーを唯一のミラーとして有することができる。したがって、所望の縦方向色収差特性を有するコリメータを、非常に少数の光学素子を用いて実現することができる。
【0014】
好ましくは、レンズの両面は、球面として設けられている。ミラーも球面ミラーとしてもよい。これによって、コリメータの製造コストが削減されることは明らかである。何故なら、所望の精度で球面を製造するのは容易であるからである。
【0015】
本発明による光学システムの好適な実施形態は、供給ビームが、当該ビームの主光線がコリメータの光軸と一致するように、コリメータ光学系に入射することから成る。したがって、入射ビームは反射してそれ自体に戻って来る。この場合、コリメータ光学系の望ましくない撮像ずれを最小限に抑えることができる。
【0016】
更に、貫通孔を有する偏向ミラーをコリメータの前方または後方に配置することができ、ビームが拡散ビームである場合、そのビームは貫通孔を通過し、コリメータに入射し、コリメータから来る平行ビームは偏向ミラーによって偏向される。ビームが平行ビームである場合、そのビームは偏向ミラーによってコリメータに向けて偏向され、コリメータに入射し、コリメータから来る集束ビームは貫通孔を通過する。この実施形態では、供給ビームをコリメータ上に垂直に入射させることが特に容易に実現される。
【0017】
更に、本発明による光学システムのコリメータは、第1交換可能コリメータとして設けられ、光学システムの第2コリメータと交換され得るものである。前記第2コリメータは、第1コリメータとは異なる波長領域に対する縦方向色収差特性を有し、この別の波長領域に対して、光ユニットによって付与された長方向色収差を不変のままに維持するか、あるいは低減するようにしている。
【0018】
この交換可能なコリメータを有する変形例は、光学システムが、異なる波長を有するビームを連続的に用いる場合に特に便利である。
本発明による光学システムの更に別の好適な実施形態では、コリメータは、ミラーと、2枚または3枚のレンズとを備えており、そのレンズおよびミラーは、コリメータの光軸に沿って変位可能であり、コリメータの所望の縦方向色収差特性の調節を可能とする。したがって、光学システムの動作の間であっても、必要に応じてコリメータの縦方向色収差特性を変化させ、適合させることもできる。特に、この調節を、他の光学パラメータは変化せず一定であるように実行することができる。例えば、一定の焦点距離を有するコリメータを設けることもできる。
【0019】
全てのレンズは、同一の材料から製造されることが好ましい。これによって、製造コストは削減され、安価であるが非常に柔軟性のあるコリメータが得られる。
光学システムがレーザ走査顕微鏡として設けられる場合、偏向または走査ユニットをそれぞれ備えればよく、コリメータと光学ユニットとの間に配置される。
【0020】
光学システムでは、好ましくは、光学ユニット自体が、少なくとも第2レンズおよび第2湾曲ミラーを備える別のコリメータとして設けられてもよい。第2湾曲ミラーは、供給されたビームが第2レンズを2回通過するように、ビーム経路を折り曲げる。
【0021】
特に、貫通孔を有する偏向ミラーを介して両コリメータを結合し、供給されるビームが偏向ミラーによって第1のコリメータまたは別のコリメータに導かれるようにし、次いでビームは前記コリメータによって反射されてそれ自体に戻り、貫通孔上で合焦し、前記貫通孔を通過し、前記2つのコリメータの他方に入射し、後者によって反射してそれ自体に戻り、偏向ミラーに向けて導かれ、これによって再度偏向を受ける。これにより、特に、平行ビームのビーム断面を増減する手段を設けることができ、この手段は、同時に所望の縦方向色収差特性も有する。
【0022】
別のコリメータは、更に、本発明による光学システムの前述の好適な実施形態における第1コリメータと同様に具体化され得る。
光学システムは、励起ビーム経路および/または検出ビーム経路に配置されたコリメータを有するレーザ走査顕微鏡または蛍光相関分光計として設けられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示す実施形態において、本発明による光学システムはレーザ走査顕微鏡として設けられており、凹面2および凸面3を有する単一レンズLを含むコリメータ1を備えている。前記凸面3には銀メッキが施され、その上に背面ミラー4が形成される。
【0024】
更に、レーザ走査顕微鏡は、光源ユニット6と単一モード・ファイバ7とを備えている光源5を含み、光源ユニット6からの光は、単一モード・ファイバ7にその一端から入射し、他端9から出射する。したがって、端部9は点光源を形成し、偏向ミラー10の背後に配置され、前記端部が光を直接偏向ミラー10の貫通孔11に出射できるようになっている。勿論、光がファイバから出射する位置には、例えば、合焦光学系(図示せず)の焦点が存在するとよい。
【0025】
更に、レーザ走査顕微鏡は、主カラー・スプリッタ12、偏向ユニット13、2枚の偏向ミラー14および15、ならびに走査用光学系16、および円筒状レンズ(tube lens )18と対物レンズ19とを備えている顕微鏡光学系17を含む。勿論、偏向ユニット13は、2枚の偏向ミラー14および15の代わりに、1枚だけの偏向ミラー(図示せず)を備え、例えば、2本の軸を中心として枢動可能としてもよい。
【0026】
動作の間、発散照明ビーム20がファイバ7の端部9から出射し、発散照明ビーム20の主要な光線はコリメータ(または平行化光学系それぞれ)1の光軸OAと一致し、平行化光学系1に入射する。平行化光学系1は、照明ビーム20を平行ビーム21に変形し、平行ビーム21は偏向ミラー10に入射し、矢印P1で示すように、後者によって主カラー・スプリッタ12に向けて反射される。周知の態様で、平行ビーム21は次に主カラー・スプリッタ12、偏向ユニット13、および顕微鏡光学系17によって検査対象の物体OB上に合焦および移動し、例えば、蛍光発光を励起する。蛍光は、顕微鏡光学系17、偏向ユニット13を通過し、次いで、矢印P2で示すように、主カラー・スプリッタ12によって検出ビーム経路に導かれる。検出ビーム経路において、蛍光を周知の方法で分析する。
【0027】
平行化光学系1は、光源5の光に対するその縦方向色収差が、顕微鏡光学系17の縦方向色収差を低減するように構成されている。光源5の光は、例えば、565nm±15nmの波長を有する光とするとよい。この場合、この波長領域に対する平行化光学系1は、この波長領域における顕微鏡光学系17の縦方向色収差を低減するように構成されている。
【0028】
図2は、本発明による平行化光学系1の5つの変形の縦方向色収差特性を示す。横軸に沿って、波長λがnm単位で表されており、縦軸に沿って、縦方向色収差a02(λ)が、λの波面変形として分けて示されており、s(λ)=1.1*λ*a02(λ)/nAにより、物理的焦点切片(physical focal intercept)を計算することができる。Δs=s(λ)−s(546nm)は、波長λに対する焦点切片差を示し、nAは開口数であり、ここでは、1/2・dEp/fと定義する(dEpは入射瞳の直径であり、ここではdEp=3.2mmであり、fはコリメータの焦点距離である)。λ=350nmに対するa02(λ)の値は、この場合、単にa02で示し、コリメータの異なる縦方向色収差特性を区別するためのパラメータとして作用する。
【0029】
線分a02=−2は、図1のコリメータ1の縦方向色収差特性を示し、以下のパラメータを有する、背面銀メッキした単一レンズとして設けられる。
凹状前面2の曲率半径:54.13mm
凸状背面3の曲率半径:42.34mm
レンズの厚さD2:3.71mm
点光源から前面2の距離D1:17.14mm
材料パラメータ:n=1.58481,v=40.57
焦点距離f:20mm
顕微鏡光学系17の縦方向色収差のみ(曲線a02=0)、およびコリメータ1との組み合わせ(曲線a02=−2)を図3に示す。この場合も、波長λは、横軸に沿ってnm単位で示されており、縦方向色収差a02(λ)は縦軸に沿ってmm単位で示されている。
【0030】
図3における曲線a02=0およびa02=−2の比較から明らかなように、顕微鏡光学系17の縦方向色収差は、550nmよりも長い領域では単調に減少し(図3における曲線a02=0)、したがってコリメータ1の逆向きの縦方向色収差(図2における曲線a02=−2)によって、卓越した補償を行うことができる(図3における曲線a02=−2)。550から600nmの領域における縦方向色収差は、実際には0であり、つまり殆ど完全に排除されている。したがって、レーザ走査顕微鏡は、この波長領域においては、励起側において色消しされている。更に、600から650nmの領域における縦方向色収差は、顕微鏡光学系17のみの縦方向色収差特性(曲線a02=0)と比較すると、最大でも半分に過ぎない。
【0031】
図2には、図1によるコリメータの変更例の縦方向色収差特性を示したが、背面に銀メッキした凹凸単一レンズとしての基本構造は維持されており、その上、同一のレンズ材料を用いている。単に、曲率半径、ならびにレンズの厚さおよび距離D1が異なるだけである。
【0032】
以下の表は、対応する曲率半径および距離を、図1のコリメータ1の焦点距離f、および以下の表による変更例の焦点距離を各々20mmとした場合について示す。
【0033】
【表1】

図2におけるグラフから明らかなように、縦方向色収差特性は、単に曲率半径および距離を選択するか、あるいは幾何学的寸法を変更することによって、波長が長くなるにつれて(a02=6または2)単調な減少し、波長に無関係となる領域を経て、波長が長くなるにつれて(a02=−6または−2)単調に増加するように設定することができ、その際、材料を変更することはない。これによって、顕微鏡光学系17の所望の光学補正を、対応する用途の場合(即ち、対応する波長)に合わせて設定することが可能となる。
【0034】
また、図3は、a02=2として、コリメータ1と組み合わせた顕微鏡光学系17の縦方向色収差特性を示す。この場合、450から550nmの波長範囲において、縦方向色収差の卓越した低減が達成される。
【0035】
図1のコリメータ1および図2に示す変更は全て、次の条件を満たす。
【0036】
【数1】

R2は、背面3の曲率半径であり、fはコリメータ1の焦点距離であり、定数c0,c1,c2,b0,b1,b2は以下の値を有する。
【0037】
b0=−0.0010395 c0=0.00068469
b1=−0.003737 c1=−0.570058
b2=0.0844626 c2=1.679172
上述の条件によって、R2したがってミラー4の曲率半径を規定することができる。コリメータは、異なる焦点距離を有するように構成することもできる。次の不等式:0.002<1/f<0.1を満たす焦点距離を設定することができる。
【0038】
上述の条件は、構成したコリメータまたは光学システムの数値分析から、それぞれ、所定の限界条件(例えば、コリメータの焦点距離、レンズの材料...)の関数として導き出すことができる。
【0039】
更に、本発明による光学システムでは、距離D1を変更することも可能である。具体的には、これは、平行化光学系1を光軸OAに沿って移動させることにより実現することができる。図2のグラフにおいて、距離D1を延長すると、対応する曲線が縦軸に沿って低い値に向かって変位する。したがって、距離D1を短縮すると、曲線は上方に変位することになる。
【0040】
また、ミラー4を別個のミラーとして設けることも勿論可能である。また、平行化光学系1は、格子を備えてもよく、例えば、前面2、背面3またはミラー面4の上に配される。
【0041】
本発明による光学システムでは、供給される光が異なる波長領域(例えば、500nm±15nmおよび430nm±15nm)を含む場合、双方の波長領域に対するその縦方向色収差が、顕微鏡光学系の対応する縦方向色収差を補償するか、少なくとも低減するようにコリメータ光学系1を設けることができる。
【0042】
図4は、コリメータ1の更に別の変更例を示す。この実施形態では、コリメータ1は、2枚の凹凸レンズ20,21,および凹状ミラー23を備えている。レンズ20および21ならびにミラー23は、それらの距離が可変となるように、光軸に沿って移動可能である。例えば、図4におけるコリメータ1の焦点距離fを一定にすると、光学システム(即ち、顕微鏡光学系17およびコリメータ1)の縦方向色収差を、補償不足(顕微鏡光学系17の縦方向色収差が完全には補償されていない)から補償過剰(コリメータ1の縦方向色収差が非常に大きく、顕微鏡光学系17の縦方向色収差を補償するものの、この場合コリメータ1によって生じた縦方向色収差が光学システムに出てしまう)まで連続的に調整することが可能となる。
【0043】
図4の実施形態では、レンズ20および21は、同一の材料から製造され、アッベの分散数は36.16である。コリメータ1の入射瞳からレンズ20の凹状面までの距離はD1であり、互いに面するレンズ20および21の2面間の距離はD2であり、レンズ21の凸状面からミラー23までの距離はD3である。レンズ20および21の厚さは、D4およびD5である。焦点距離fは20mmである。この場合、ミラー23の曲率、レンズ20および21の屈折力、ならびに移動のダイナミクス(即ち、距離D1,D2,およびD3のばらつき)は、以下のように、システムの焦点距離の関数として記述することができる。この場合、焦点距離の合焦および調節は、3つの距離D1,D2,およびD3のうちの2つを選択することによって行い、縦方向色収差特性は、3番目の距離(この場合、D3)の値を選択することによって規定することができる。
【0044】
【数2】

Rは、ミラー23の曲率半径であり、f1およびf2はそれぞれレンズ20および21の焦点距離である。Δs(<0)は、Δsの値が0未満であることを表す。Δs(=0)は、Δsの値が0であることを表し、Δs(>0)は、Δsの値が0よりも大きいことを表す。ここに記載している実施形態では、Δs(<0)とすると、値a02は約−3.5となり、Δs(>0)とすると、値a02は約+3.5となる。
【0045】
図4のコリメータ1の正確なパラメータは、次の通りである。
凹面F1の曲率半径:13.10
凸面F2の曲率半径:48.39
凹面F3の曲率半径:18.44
凸面F4の曲率半径:12.78
凹状ミラー23の曲率半径:43.99
D4=2.00
D5=2.00
【0046】
【表2】

上の表は、Δsに対する特殊な値を示す。図5は、縦方向色収差特性の距離D1,D2,およびD3に対する依存性を、a02の値を横軸に沿って示し、対応する距離の値を縦軸に沿ってmm単位で示したグラフである。一方、パラメータa02の個々の各値には、縦方向色収差特性が関連付けられている。ここでは図示されていないが、定性的に図2に表したものに対応する。したがって、設定すべき距離D1〜D3は、図5のグラフから、所望の縦方向色収差特性の関数として取り込むことができる。a02の値が−3.5,3.5および0の場合の対応する距離を、上の表に示す。
【0047】
コリメータ4を、焦点距離fが次の不等式0.002<1/f<0.1を満足するように構成することができる。レンズ20および21のアッベの分散数は、60未満であることが好ましく、40未満であることが更に好ましい。全体的に、図4のコリメータ1は、負の屈折力および低いアッベの分散数を有するレンズ20、正の屈折力および低いアッベの分散数を有するレンズ21、および正の屈折力を有するミラー23を備えている。距離D1〜D3を調節することによって、システム全体の焦点距離は一定のままで、所望の縦方向色収差特性を設定および変更することができる。
【0048】
特に、図4のコリメータ1は、レンズ20および21用ならびにミラー23用の調節素子も備えることができ、縦方向色収差特性の変更を自動的に行うことができる。
図6は、正の屈折力を有するレンズ24、負の屈折力を有するレンズ25、および正の屈折力を有するミラー・レンズ26を備えているコリメータ1を示す。これらのレンズは、各々、例えば60未満、好ましくは40未満の低いアッベの分散数を有する。ここに記載する具体的な実施形態では、アッベの分散数は36.16である。図6におけるコリメータは、全システムの焦点距離を一定にして、縦方向色収差を補正過剰から補正不足まで連続的に調整することができるように構成されている。入射瞳からレンズ25の表面F5までの距離をD1とし、互いに面するレンズ24および25の表面F6およびF7間の距離をD2とし、レンズ25および26の表面F8およびF9間の距離をD3とする。レンズ24,25,および26の厚さは、それぞれ、D4,D5,およびD6である。
【0049】
図6のコリメータは、以下の条件を満たすように構成されている。
【0050】
【数3】

この実施形態でも、Δs(<0)の場合、値a02は約−3.5となり、Δs(>0)の場合、値a02は約3.5となる。レンズ面の正確な曲率は以下の通りである。
【0051】
凸面F5の曲率半径:71.76mm
凹面F6の曲率半径:51.07mm
凹面F7の曲率半径:8.90mm
凹面F8の曲率半径:254.88mm
凸面F9の曲率半径:49.08mm
凸面F10の曲率半径:40.94mm
D4=2.00
D5=5.52
D6=4.00
【0052】
【表3】

縦方向色収差特性の個々の距離D1〜D3に対する依存性を、図7のグラフ表現にて示す。この表現は、図5のそれに対応する。図7の表現により、距離D1〜D3を、所望の縦方向色収差a02に合わせて決定することが可能となる。
【0053】
記載した実施形態において特に有益なことは、全ての曲面レンズまたはミラー面をそれぞれ球面として設けられることである。
図4および図6の実施形態に示した条件は、それぞれのコリメータの光学特性の計算の数値分析から、当業者には容易に導き出すことができる。
【0054】
前述のコリメータにおける光路は、焦点面(この場合、例えば、偏向ミラー10における貫通孔11)から出射される拡散ビームをコリメータによって平行ビームに変形し、平行ビームを集束ビームに変換して焦点面に合焦するように、逆向きにすることもできる。
【0055】
図8は、本発明による光学システムの代替実施形態を示し、2つのコリメータ1および28が、偏向ミラー10を介して直列に結合され、これらが平行ビームのビーム断面を拡大または縮小する手段として作用するようにしている。この目的のために、第1コリメータを、例えば、図1の実施形態の場合と同様に設け、ミラー10にも同様に貫通孔11を設け、この場合ミラー10の両面に銀メッキを施す。
【0056】
ミラー10に続いて(即ち、図8の表示におけるミラーの上部に)配置されるのは、第2レンズ29を備えた第2コリメータ28であり、第2レンズ29の背面には銀メッキが施され、湾曲ミラー面30が設けられている。2枚のレンズLおよび29の偏向ミラーからの距離、およびレンズL、29の寸法は、矢印P3の方向に沿って伝搬する平行ビーム31が偏向ミラー10によって下方向に偏向されレンズLに向かうように選択する。コリメータ1によるビーム31の反射の後、前記ビームは集束ビーム32に変換され、貫通孔11上に合焦する(即ち、ビーム32はその最少ビーム断面を貫通孔11の近傍に有する)。
【0057】
ミラー10の後、貫通孔11を通過したビーム32は、拡散ビームとなり、コリメータ28によって反射されそれ自体に戻って、平行ビーム33に変換される。平行ビーム33は、ミラー10に入射し、後者によって右(矢印P4の方向)に偏向される。この場合、伝搬方向P3およびP4は一致し、ビーム31および33の主要光線が共通軸上に位置するようにしている。ビーム33がビーム31と異なるのは、そのビーム断面の方が小さいことである。したがって、図8の光学システムは、ビーム断面を縮小するための手段として作用し、勿論、この手段に対して逆方向に通過させることも可能であり、その場合前記手段はビーム拡大器となる。
【0058】
2つのコリメータ1および28は、勿論、図1から図7に関して説明したように、改良または具体化され得る。特に、レンズLおよび29は、同一の材料から形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による光学システムの一実施形態の模式図。
【図2】図1の光学システムのコリメータの縦方向色収差を例示する図。
【図3】図1の光学システム全体の縦方向色収差を例示する図。
【図4】第2実施形態によるコリメータ。
【図5】所望の縦方向色収差特性のために調節すべきレンズおよびミラーの位置を明示する図。
【図6】更に別の実施形態によるコリメータ。
【図7】図6のコリメータの調節可能なレンズ位置を、所望の縦方向色収差特性の関数として明示する図。
【図8】本発明による光学システムの別の実施形態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ユニット(17)およびコリメータ(1)を備える光学システム、特に、顕微鏡であって、前記コリメータは、前記光学システムのビーム径路において前記光学ユニット(17)の前方または後方に配置され、前記光学ユニット(17)は、所定の縦方向色収差を前記ビーム経路に供給されるビームに付与し、前記ビームは前記コリメータ(1)に拡散ビームまたは平行ビームとして入射し、前記コリメータによって平行ビームまたは集束ビームに変換され、前記コリメータ(1)は、少なくとも1枚のレンズ(L)と、前記ビーム経路を折り曲げて、前記供給されたビームが前記レンズ(4)を2回通過するようにする湾曲ミラー(4)とを備える、光学システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光学システムにおいて、前記コリメータ(1)の縦方向色収差特性は、前記光学ユニット(17)によってビームに付与される縦方向色収差を不変のままに維持するか、あるいは低減するように構成されている、光学システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学システムにおいて、前記ミラー(4)は、前記レンズ(L)の一方の側に背面ミラーとして設けられている、光学システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、前記コリメータ(1)は、前記レンズ(L)を唯一のレンズとして、前記ミラー(4)を唯一のミラーとして備える、光学システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、前記レンズ(L)の両面(2,3)は、球面として設けられている、光学システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、前記ビーム(20)は、当該ビーム(20)の主光線が前記コリメータ(1)の光軸(OA)と一致するように、前記コリメータ(1)に入射する、光学システム。
【請求項7】
請求項6に記載の光学システムにおいて、貫通孔(11)を備える偏向ミラー(10)が前記ビーム経路において前記コリメータ(1)の前方または後方に配置され、前記ビーム(20)が拡散ビームである場合、前記ビーム(20)は前記貫通孔(11)を通過し、前記コリメータ(1)に入射し、前記コリメータから来る平行ビーム(21)は前記偏向ミラー(10)によって偏向され、前記ビームが平行ビームである場合、前記ビームは前記偏向ミラー(10)によってコリメータ(1)に向けて偏向され、前記コリメータに入射し、前記コリメータから来る集束ビームは前記貫通孔(11)を通過する、光学システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、前記コリメータ(1)は、第1交換可能コリメータとして設けられ、第2コリメータに交換され得るものであり、該第2コリメータは、前記第1コリメータとは異なる波長領域に対する縦方向色収差特性を有し、前記別の波長領域に対して、前記光ユニット(17)によって付与された長方向色収差を不変のままに維持するか、あるいは低減するようにする、光学システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、前記コリメータ(1)は、前記ミラー(23;27)と、2枚または3枚のレンズ(20,21;24,25,26)とを備え、前記レンズ(20,21;24,25,26)および前記ミラー(23;27)は、前記コリメータ(1)の光軸(OA)に沿って変位可能であり、前記コリメータ(1)の所望の縦方向色収差特性の調節を可能とする、光学システム。
【請求項10】
請求項9に記載の光学システムにおいて、全てのレンズ(20,21;24,25,26)は同一の材料から製造される、光学システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、前記光学ユニット自体が、少なくとも第2レンズ(29)および第2湾曲ミラー(30)を備える別のコリメータ(28)として設けられ、おり、前記第2湾曲ミラー(30)は、供給されたビームが前記第2レンズ(29)を2回通過するように、前記ビーム経路を折り曲げる、光学システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学システムにおいて、当該光学システムは、レーザ走査顕微鏡または蛍光相関分光計であり、前記コリメータは励起ビーム経路および/または検出ビーム経路において用いられる、光学システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−133767(P2006−133767A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−309973(P2005−309973)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(597141922)カール ツァイス イェナ ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】