光学フィルタ
【課題】 高性能かつ安価な光学フィルタを提供すること。
【解決手段】 光学ローパスフィルタ1は、入射光を分離して複数の出射光を形成する水晶板(複屈折板)10と、水晶板10から出射する複数の出射光の偏光状態を略円偏光に変換する1/4波長板30と、この1/4波長板30から出射する複数の出射光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する水晶板20と、を含んで構成される。1/4波長板30は、少なくとも可視光の範囲内において、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を備える。
【解決手段】 光学ローパスフィルタ1は、入射光を分離して複数の出射光を形成する水晶板(複屈折板)10と、水晶板10から出射する複数の出射光の偏光状態を略円偏光に変換する1/4波長板30と、この1/4波長板30から出射する複数の出射光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する水晶板20と、を含んで構成される。1/4波長板30は、少なくとも可視光の範囲内において、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似信号を抑制する光学フィルタと、この光学フィルタを含んで構成される撮像モジュール及び撮像装置(デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置は、CCDやCMOS等の撮像素子を含んで構成され、所定ピッチで配列される有限個の画素によって光学像を電気信号に変換し、映像を撮影する。このような撮像装置では、光学像の空間周波数が画素の配列ピッチにより決まるサンプリング周波数の1/2以下であれば、モアレなどの擬似信号を発生することがないが、光学像の空間周波数がサンプリング周波数の1/2を越えると、擬似信号を発生して画質を低下させる。
【0003】
上述したモアレ等の擬似信号の発生を抑制するために、従来の撮像装置では、撮像素子の前面に、光学像の空間周波数の高域成分を抑制する光学フィルタ(いわゆる光学ローパスフィルタ)が配置されている。従来の光学ローパスフィルタとしては、以下のようなものが知られている。
【0004】
例えば、1枚の水晶板を用いた構造の光学ローパスフィルタがある。これは、水晶板の複屈折性を利用し、入射光を常光線と異常光線に分離して撮像面に結像させるものである。このタイプの光学ローパスフィルタは、一方向の擬似信号の除去にしか有効でないものの、構造が簡単で安価に製造できる利点がある。
【0005】
また、2枚の水晶板を各々の光学軸が45度ずれるように配置した、いわゆる45度分離タイプの光学ローパスフィルタがある。このタイプの光学ローパスフィルタは、水晶板2枚を用いる構成のため比較的に安価であるが、画像の斜め方向にギザギザが出やすい。
【0006】
また、上述した45度分離タイプに対して、さらに光学軸を45度ずらしてもう1枚の水晶板を貼り合わせた、いわゆる45度交差タイプの光学ローパスフィルタがある。このタイプの光学ローパスフィルタは、擬似信号を抑制する効果が比較的に高く良好な画質を実現することができるが、3枚の水晶板を必要とするためにコストが高くなる。
【0007】
また、光学軸を直交させて配置した2枚の水晶板の間に1/4波長板を挿入して構成した、いわゆる垂直付加タイプの光学ローパスフィルタがある。このタイプの光学ローパスフィルタは、高価な波長板を用いるために高コストとなるが、上記各タイプの中で最も良好な画質を得ることができる。このような位相差板についての従来技術は、例えば、特開2000−137116号公報(特許文献1)に開示されている。
【0008】
また、従来の1/4波長板では波長依存性があるので、厳密には、特定の波長域以外の光の場合には1/4波長板としての性能が得られない。
【0009】
【特許文献1】特開2000−137116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、光学ローパスフィルタには各種タイプが存在するが、性能の高さと低コスト化を両立できるものはこれまで存在しなかった。このため、光学像の空間周波数の高域成分を抑制する性能に優れ、かつ安価な光学フィルタの実現が望まれている。
【0011】
本発明は、このような点に着目して創作されたものであり、高性能かつ安価な光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の光学フィルタは、入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、入射光を分離して複数の出射光を形成する第1の複屈折板と、複数の出射光の偏光状態を略円偏光に変換する高分子フィルムと、高分子フィルムから出射する複数の出射光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含んで構成されており、上述した高分子フィルムとして、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を備えるものを用いている。
【0013】
入射光の波長λが大きくなるほど複屈折率(Δn)が大きくなる特性を有する高分子フィルムを用いることにより、入射光の偏光状態を直線偏光から円偏光に変換する機能(別言すれば、1/4波長板としての機能)を広い波長範囲において実現することが可能となり、従来の光学ローパスフィルタよりも広い波長域で機能する光学フィルタを得ることができる。このような高分子フィルムを用いて光学フィルタを構成することにより、光学像の空間周波数の高域成分を抑制する性能に優れた光学フィルタを実現することができる。また、高分子フィルムを用いていることから、従来の水晶板を用いる場合に比較して、安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0014】
好ましくは、上記高分子フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において上記波長分散特性を備える。
【0015】
好ましくは、上記高分子フィルムは、一軸延伸したプラスチックを所定の厚さに形成してなる。
【0016】
好ましくは、上記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を入射光の進行方向に対応する軸の回りに所定角度だけ回転して配置し、第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する。これにより、隣接する各々の画素が任意の角度を持って斜め方向に配置されるような撮像素子(例えば、各画素が蜂の巣状に配置される撮像素子等)などと組み合わせて用いる場合に、撮像素子の配置位置に応じた任意の方向に光を導くことが可能となる。
【0017】
また、本発明の光学フィルタは、入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、第1の複屈折板から出射する光の偏光方向を略45度回転させて出射する偏光制御機能を備える偏光制御素子と、偏光制御素子から出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含んで構成される光学フィルタである。
【0018】
偏光制御素子は、例えば、高分子液晶フィルムなどの機能性フィルムを用いて実現することができる。このような偏光制御素子を用いて光学フィルタを構成することにより、従来の1/4波長板と比べ広い波長域で1/4波長板として機能するので、高性能かつ安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0019】
好ましくは、上記偏光制御素子は、少なくとも可視光の波長範囲内において上記偏光制御機能を備える。
【0020】
好ましくは、上記偏光制御素子は、入射光の進行方向に略垂直な面を有する2つの基板間に液晶層を担持して構成され、一方の基板から他方の基板に向かって液晶層に含まれる液晶分子の配向方向を略45度回転させるように構成した液晶素子である。
【0021】
好ましくは、上記偏光制御素子は、一方面から他方面に向かって液晶分子の配向方向を略45度回転させた状態を固定して形成した高分子液晶フィルムである。
【0022】
好ましくは、偏光制御素子は、一の主たる光学軸を有する光学フィルムを複数積層してなる積層フィルムであり、この積層フィルムは、隣接する光学フィルムの相互間の光学軸を徐々にずらして積層し、光入射面側の光学フィルムの光学軸と光出射面側の光学フィルムの光学軸が略45度の角度をなすように構成されている。
【0023】
好ましくは、上記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を入射光の進行方向に対応する軸の回りで所定角度だけ回転して配置し、第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する。これにより、隣接する各々の画素が任意の角度を持って斜め方向に配置されるような撮像素子(例えば、各画素が蜂の巣状に配置される撮像素子等)などと組み合わせて用いる場合に、撮像素子の配置位置に応じた任意の方向に光を導くことが可能となる。
【0024】
また、本発明の光学フィルタは、入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、一の光学軸を有し、第1の複屈折板から出射する光の偏光状態をほぼ解消して出射する偏光解消機能を備える光学フィルムと、この光学フィルムから出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含んで構成されており、上記光学フィルムとして、上記偏光解消機能を生じ得る程度に、厚さと複屈折率の積に対応する光路長差が入射される光の波長よりも大きく設定されたものを用いている。
【0025】
かかる構成とすることにより、従来の1/4波長板と比べ広い波長域で1/4波長板として機能するので、高性能かつ安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0026】
好ましくは、上記光学フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において、上記偏光解消機能を備える。
【0027】
好ましくは、上記光学フィルムは、光路差長が入射される光の波長の少なくとも10倍以上に設定されている。
【0028】
また、上記光学フィルムは、略透明な樹脂の中に光学異方物質を分散して形成されており、入射する光を散乱させる機能を備える。かかる構成とすることにより、従来の1/4波長板と比べ広い波長域で1/4波長板として機能するので、高性能かつ安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0029】
また、本発明は、上述した構成を有する光学フィルタと、この光学フィルタの後ろ側に配置され、光学像を電気信号に変換する撮像素子と、この撮像素子を駆動する駆動部と、を含んで構成される撮像モジュールでもある。また、この撮像モジュールは、更に、光学像を集光して撮像素子に導くレンズを含んで構成されていてもよい。
【0030】
また、本発明は、上述した撮像モジュールを含んで構成される電子機器でもある。このような電子機器としては、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置や、いわゆるカメラ付き携帯電話、いわゆるカメラ付き携帯型パソコン(パーソナルコンピュータ)などのものが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。図1に示すように、本実施形態の光学ローパスフィルタ1は、複屈折板としての2つの水晶板10、20と、1/4波長板30を含んで構成されており、2つの水晶板10、20の間に1/4波長板30を挿入した3層構造となっている。
【0033】
本実施形態の1/4波長板30は、一軸延伸法によって形成したプラスチックフィルムを用いて形成されており、このプラスチックフィルムの複屈折率(屈折率異方性)を考慮して、フィルム厚を適宜設定することにより、1/4波長板としての機能を実現している。一軸延伸したプラスチックフィルムは、比較的に大きな複屈折率を確保することができるので、従来のように水晶板を使用して1/4波長板を構成する場合に比較して、1/4波長板を薄板化することが可能となる。また、延伸法は、製造コストが低く、大量生産に向くという利点がある。
【0034】
図2は、第1の実施形態の光学ローパスフィルタ1の構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。同図は、光学ローパスフィルタ1を構成する各層を分解して斜視図により示している。また、図3は、光学ローパスフィルタ1を構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【0035】
光入射側に配置される水晶板10は、光入射面と直交し、かつ紙面と平行な面(x−z平面)において、z軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A1により示す方向)に光学軸(光学的主軸)を有している。この水晶板10に入射した光線L1は(図3(a)参照)、水晶板10の有する複屈折性によって、2つの光線L11、L12に分離されて出射する(図3(b)参照)。これらの光線L11、L12は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変化して出射する。
【0036】
1/4波長板30は、光入射面(x−y平面)において、x軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A2により示す方向)に光学軸を有している。これにより、1/4波長板30に入射した光線L11、L12は、それぞれ直線偏光から円偏光に偏光状態が変えられ、2つの光線L13、L14となって出射する。
【0037】
光出射側に配置される水晶板20は、光入射面と直交し、かつ紙面と直交する面(y−z平面)において、y軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A3により示す方向)に光学軸を有している。この水晶板20に入射した光線L13は、水晶板20の有する複屈折性によって、2つの光線L15、L16に分離されて出射する(図3(c)参照)。同様に、水晶板20に入射した光線L14は、2つの光線L17、L18に分離されて出射する(図3(c)参照)。これらの光線L15、L16、L17、L18は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変化して出射する。
【0038】
次に、本実施形態の1/4波長板30の光学的な特性について説明する。図4は、1/4波長板30の複屈折率Δnの波長分散特性を説明する図である。ここで、複屈折率Δnとは、常光線に対応する屈折率noと異常光線に対応する屈折率neの差の絶対値|no−ne|をいう。
【0039】
図4に示すように、本実施形態の1/4波長板30は、少なくとも可視光の範囲内において、入射光の波長λが大きくなるほど複屈折率Δnが大きくなる特性を備えている。このような波長分散特性を有する1/4波長板30を用いることにより、直線偏光を円偏光に変換する機能(1/4波長としての機能)を広い波長範囲において実現することが可能となる。
【0040】
なお、一般に「可視光」とは、380nm〜780nm程度の範囲内の波長の光を言うことが多いが、400nm〜700nm程度の範囲内の波長の光を指す場合もある。本実施形態では、可視光として、少なくとも入射光の波長λが400nm〜700nm程度の範囲を考えるが、これに限定する趣旨ではない。また、図4に示す特性例では、入射光の波長λの増加に伴って複屈折率Δnが直線的に増加する例が示されているが、これに限定する趣旨ではなく、入射光の波長λの増加に伴って複屈折率Δnが曲線的に増加するような特性となっていてもよい。
【0041】
ところで、上述した実施形態では、図3に示したように、入射光線を第1の方向(図面上で左右方向)へ分離し、更にこの第1の方向と直交する第2の方向(図面上で上下方向)へ分離して4つの光線を得ていたが、2つの水晶板10、20を入射光の進行方向に対応する軸回りに、図2における配置状態を基準として相対的に所定の角度θだけ回転して配置することにより、出射光の分岐のパターンを変更することも可能である。以下、その詳細について説明する。
【0042】
図5は、図2における配置状態を基準として、2つの水晶板10、20を相対的に所定の角度θだけずらして配置する場合の光学ローパスフィルタの一例を示す図である。同図に示す光学ローパスフィルタ1aは、上述した図2と同様に、光学ローパスフィルタ1aを構成する各層を分解して斜視図により示している。また、図6は、図5に示す光学ローパスフィルタ1aを構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【0043】
図5に示す光学ローパスフィルタ1aは、上述した図2等に示したローパスフィルタ1と比較して、水晶板20をx−y平面内において時計回りに角度θだけ回転させて配置している。この場合の水晶板20の光学軸は、図示のように、光入射面と直交し、かつy−z平面と角度θをなす平面内において、y軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A3により示す方向)となる。
【0044】
水晶板10に入射した光線L1(図6(a)参照)は、2つの光線L11、L12に分離されるとともに(図6(b)参照)、直線偏光となって出射し、1/4波長板30に入射する。1/4波長板30に入射した光線L11、L12は、それぞれ直線偏光から円偏光に偏光状態が変えられ、2つの光線L13、L14となって出射し、水晶板20に入射する。
【0045】
水晶板20に入射した光線L13は、2つの光線L15、L16に分離されて出射する。このとき、水晶板20が水晶板10と相対的に角度θだけずらして配置されているため、図6(c)に示すように、光線L16の出射方向は、上述した図3に示した光線L16の出射位置に比較して、x−y平面内において時計回りにθだけ回転して出射される。同様に、水晶板20に入射した光線L14は、2つの光線L17、L18に分離されて出射する。このとき、図6(c)に示すように、光線L18の出射方向は、上述した図3に示した光線L18の出射位置に比較して、x−y平面内において時計回りにθだけ回転して出射される。
【0046】
このように、水晶板10と水晶板20の配置を相対的に任意の角度θだけ回転させることにより、出射光線L16、L18の出射位置を角度θだけずらすことが可能である。この実施例の光学ローパスフィルタ1aは、隣接する各々の画素が任意の角度を持って斜め方向に配置されるような撮像素子(例えば、各画素が蜂の巣状に配置される撮像素子等)と組み合わせて用いる場合に特に有効である。
【0047】
なお、上述した図5に示した配置は一例であり、2つの水晶板10、20が相対的に回転して配置されていれば、他の配置状態としてもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。図7に示すように、本実施形態の光学ローパスフィルタ1bは、水晶板10、20と、偏光制御素子40を含んで構成されており、2つの水晶板10、20の間に偏光制御素子40を挿入した3層構造となっている。なお、上述した第1の実施形態と同じ構成要素については同符号を付しており、かかる構成要素についての詳細な説明は省略する。本実施形態の偏光制御素子40は、入射光の偏光面を約45度回転して出射する機能を備えている。偏光制御素子40の具体例については後述する。
【0049】
図8は、第2の実施形態の光学ローパスフィルタ1bの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。同図は、光学ローパスフィルタ1を構成する各層を分解して斜視図により示している。
【0050】
水晶板10に入射した光線L2は、2つの光線L21、L22に分離して出射され、偏光制御素子40に入射する。偏光制御素子40に入射した光線L21は、偏光制御素子40によってその偏光方向がx−y平面において反時計回りに約45度回転され、光線L23となって出射する。同様に、偏光制御素子40に入射した光線L22は、偏光制御素子40によってその偏光方向がx−y平面において反時計回りに約45度回転され、光線L24となって出射する。その後、光線L23、L24は、水晶板20を通過することにより、光線L25、L26及び光線L27、L28にそれぞれ分離され、水晶板20から出射する。
【0051】
次に、偏光制御素子40のいくつかの具体例について説明する。
【0052】
図9は、液晶セル(液晶素子)を用いて偏光制御素子40を実現する場合の例について説明する図である。同図に示す液晶セルは、所定間隔(例えば、10μm程度)を保つようにして貼り合わせた2枚の基板140と、これらの基板140の間に充填された液晶層141を含んで構成される。液晶層141は、上側(光入射側)の基板140から下側(光出射側)の基板140に向かって、液晶分子142の配向方向が約45度回転した構造を有している。このような構造は、上下の基板140に対して適当な配向処理(例えば、ラビング処理等)を施すことによって実現することができる。液晶層141を構成する液晶材料(例えば、ネマティック液晶等)の複屈折率Δnと2枚の基板140の間隔(セル厚)を適宜選択することにより、液晶層141に旋光性を持たせることができる。これにより、少なくとも可視光の波長範囲内の入射光について、その偏光方向を液晶分子142の配向方向に沿って回転させることが可能となる。このような液晶セルを用いることにより、偏光制御素子40を実現することが可能である。
【0053】
また、光硬化性の高分子材料を添加しておいた液晶材料を用いて、上述した図9に示す液晶セルと同様に、液晶分子の配向状態が上下方向に45度ねじれた状態にし、その後に光照射を行って高分子を硬化させることにより、液晶分子の配向状態を固定化した、いわゆる高分子液晶フィルムを用いることによっても、図9に示した液晶セルと同様の機能を実現することが可能である。なお、この高分子液晶フィルムを用いる場合の光学ローパスフィルタの構造は、基本的に図8に示した光学ローパスフィルタ1bと同様であるため、ここでは図示を省略する。
【0054】
図10は、一の主たる光学軸を有する光学フィルム(一軸性光学フィルム)を複数枚重ねた積層フィルムを用いて偏光制御素子40を実現する場合の例について説明する図である。同図に示す積層フィルムは、一軸延伸法によって形成されるプラスチックフィルムにより実現される光学フィルム145を複数枚積層して形成されている。なお、図10では各光学フィルム145を分離して示しているが、実際にはこれらは隙間をあけずに積層される。また、図10では、4枚の光学フィルム145を積層する例を示しているが、光学フィルム145の枚数は適宜設定することが可能である。
【0055】
図10において、矢印A21〜A24は、各光学フィルム145の偏光の方向を示している。このように、各光学フィルム145は、上側(光入射側)の光学フィルム145から下側(光出射側)の光学フィルムに向かって徐々に光学軸が回転し、全体として光学軸が約45度回転するように構成されている。この積層フィルムに直線偏光の光を入射することにより、入射光の偏光方向を各光学フィルム145の光学軸に沿って回転させることが可能となる。このような積層フィルムを用いることにより、偏光制御素子40を実現することが可能である。
【0056】
なお、上述した第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に、2つの水晶板10、20を、図2における配置状態を基準として相対的に角度θだけ回転し、且つ光学フィルム145の光軸を45°+(θ/2)に構成して配置することにより、出射光線L26、L28(図8参照)の出射位置を角度θだけずらすことが可能である。
【0057】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。同図は、光学ローパスフィルタ1cの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図であり、光学ローパスフィルタ1cを構成する各層を分解して斜視図により示している。
【0058】
図11に示すように、本実施形態の光学ローパスフィルタ1cは、水晶板10、20と、光学フィルム50を含んで構成されており、2つの水晶板10、20の間に光学フィルム50を挿入した3層構造となっている。なお、上述した第1の実施形態と同じ構成要素については同符号を付しており、かかる構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施形態の光学フィルム50は、少なくとも可視光の範囲内において、光学フィルム50の厚さdと、複屈折率Δnとの積Δn・dに対応する光路長差(リタデーション)Rの値が入射光の波長λよりも十分に大きくなるように形成されている。具体的には、光路長差Rは、少なくとも入射光の波長λの10倍よりも大きくなるように(すなわち、R>10λの関係を満たすように)することが好適である。このように、光路長差Rが入射光の波長λよりも十分に大きくなるように形成された光学フィルム50は、広い波長範囲では入射光の偏光状態を解消し、自然光に近い偏光状態にして出射する機能を有する。
【0060】
水晶板10に入射される光線L3は、2つの光線L31、L32に分解され、直線偏光となって出射する。水晶板10を出射した直線偏光の光線L31は、光学フィルム50によってその偏光状態をほぼ解消され、ランダムな偏光状態の光線L33となって出射する。同様に、水晶板10を出射した直線偏光の光線L32は、光学フィルム50によってその偏光状態をほぼ解消され、ランダムな偏光状態の光線L34となって出射する。その後、光線L33、L34は、水晶板20を通過することにより、光線L35、L36及び光線L37、L38にそれぞれ分離され、水晶板20から出射する。
【0061】
なお、上述した光学ローパスフィルタ1cにおいて、光学フィルム50の代わりに、略透明な樹脂の中に光学異方物質を分散して形成した樹脂板を用いることによっても、光学フィルム50と同様な機能を実現することが可能である。この場合には、樹脂中に分散して含有される光学異方物質の光散乱効果により、入射光の偏光状態が解消される。
【0062】
(撮像モジュール、撮像装置の具体例)
次に、本発明の光学ローパスフィルタを含んで構成される撮像モジュール及び撮像装置の具体例について説明する。
【0063】
図12は、撮像モジュールの構成例とこの撮像モジュールを含む撮像装置の構成例を示す図である。同図に示す撮像モジュール100は、本発明を適用した光学ローパスフィルタ110と、CCD等のセンサからなり、光学像を電気信号に変換する撮像素子120と、この撮像素子120を駆動する駆動部130を含んで構成されている。
【0064】
この撮像モジュール100と、光入射側に配置されるレンズ200と、撮像モジュール100から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部300を含んで、撮像装置を構成することができる。なお、図示しないが、本体部300には、撮像信号の補正等を行う信号処理部、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部及びこの撮像信号を再生する再生部、再生された映像を表示する表示部など各種の構成要素が含まれる。また、上述したレンズ200も含めて撮像モジュールが構成されていてもよい。
【0065】
図13及び図14は、撮像装置(電子機器)の具体例を示す図である。図13では、撮像装置の一例として、静止画の撮影を行うデジタルスチルカメラを模式的に示した斜視図が示されている。また、図14では、撮像装置の一例として、動画の撮影を行うデジタルカメラを模式的に示した斜視図が示されている。なお、これらのデジタルスチルカメラやデジタルカメラ以外にも、いわゆるカメラ付き携帯電話、いわゆるカメラ付き携帯型パソコン(パーソナルコンピュータ)など各種の電子機器においても、本発明に係る光学ローパスフィルタや撮像モジュールを用いて撮像部を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。
【図2】第1の実施形態の光学ローパスフィルタの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。
【図3】光学ローパスフィルタを構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【図4】1/4波長板の複屈折率(屈折率異方性)Δnの波長分散特性を説明する図である。
【図5】2つの水晶板を、図2における配置状態を基準として相対的に所定の角度θだけずらして配置する場合の光学ローパスフィルタの一例を示す図である。
【図6】図5に示す光学ローパスフィルタを構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【図7】第2の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。
【図8】第2の実施形態の光学ローパスフィルタの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。
【図9】液晶セル(液晶素子)を用いて偏光制御素子を実現する場合の例について説明する図である。
【図10】一の主たる光学軸を有する光学フィルムを複数枚重ねた積層フィルムを用いて偏光制御素子を実現する場合の例について説明する図である。
【図11】第3の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。
【図12】撮像モジュールの構成例とこの撮像モジュールを含む撮像装置の構成例を示す図である。
【図13】撮像装置(電子機器)の具体例を示す図である。
【図14】撮像装置(電子機器)の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1b、1c…光学ローパスフィルタ、 10、20…水晶板、 30…1/4波長板、 40…偏光制御素子、 50…光学フィルム、 100…撮像モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似信号を抑制する光学フィルタと、この光学フィルタを含んで構成される撮像モジュール及び撮像装置(デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置は、CCDやCMOS等の撮像素子を含んで構成され、所定ピッチで配列される有限個の画素によって光学像を電気信号に変換し、映像を撮影する。このような撮像装置では、光学像の空間周波数が画素の配列ピッチにより決まるサンプリング周波数の1/2以下であれば、モアレなどの擬似信号を発生することがないが、光学像の空間周波数がサンプリング周波数の1/2を越えると、擬似信号を発生して画質を低下させる。
【0003】
上述したモアレ等の擬似信号の発生を抑制するために、従来の撮像装置では、撮像素子の前面に、光学像の空間周波数の高域成分を抑制する光学フィルタ(いわゆる光学ローパスフィルタ)が配置されている。従来の光学ローパスフィルタとしては、以下のようなものが知られている。
【0004】
例えば、1枚の水晶板を用いた構造の光学ローパスフィルタがある。これは、水晶板の複屈折性を利用し、入射光を常光線と異常光線に分離して撮像面に結像させるものである。このタイプの光学ローパスフィルタは、一方向の擬似信号の除去にしか有効でないものの、構造が簡単で安価に製造できる利点がある。
【0005】
また、2枚の水晶板を各々の光学軸が45度ずれるように配置した、いわゆる45度分離タイプの光学ローパスフィルタがある。このタイプの光学ローパスフィルタは、水晶板2枚を用いる構成のため比較的に安価であるが、画像の斜め方向にギザギザが出やすい。
【0006】
また、上述した45度分離タイプに対して、さらに光学軸を45度ずらしてもう1枚の水晶板を貼り合わせた、いわゆる45度交差タイプの光学ローパスフィルタがある。このタイプの光学ローパスフィルタは、擬似信号を抑制する効果が比較的に高く良好な画質を実現することができるが、3枚の水晶板を必要とするためにコストが高くなる。
【0007】
また、光学軸を直交させて配置した2枚の水晶板の間に1/4波長板を挿入して構成した、いわゆる垂直付加タイプの光学ローパスフィルタがある。このタイプの光学ローパスフィルタは、高価な波長板を用いるために高コストとなるが、上記各タイプの中で最も良好な画質を得ることができる。このような位相差板についての従来技術は、例えば、特開2000−137116号公報(特許文献1)に開示されている。
【0008】
また、従来の1/4波長板では波長依存性があるので、厳密には、特定の波長域以外の光の場合には1/4波長板としての性能が得られない。
【0009】
【特許文献1】特開2000−137116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、光学ローパスフィルタには各種タイプが存在するが、性能の高さと低コスト化を両立できるものはこれまで存在しなかった。このため、光学像の空間周波数の高域成分を抑制する性能に優れ、かつ安価な光学フィルタの実現が望まれている。
【0011】
本発明は、このような点に着目して創作されたものであり、高性能かつ安価な光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の光学フィルタは、入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、入射光を分離して複数の出射光を形成する第1の複屈折板と、複数の出射光の偏光状態を略円偏光に変換する高分子フィルムと、高分子フィルムから出射する複数の出射光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含んで構成されており、上述した高分子フィルムとして、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を備えるものを用いている。
【0013】
入射光の波長λが大きくなるほど複屈折率(Δn)が大きくなる特性を有する高分子フィルムを用いることにより、入射光の偏光状態を直線偏光から円偏光に変換する機能(別言すれば、1/4波長板としての機能)を広い波長範囲において実現することが可能となり、従来の光学ローパスフィルタよりも広い波長域で機能する光学フィルタを得ることができる。このような高分子フィルムを用いて光学フィルタを構成することにより、光学像の空間周波数の高域成分を抑制する性能に優れた光学フィルタを実現することができる。また、高分子フィルムを用いていることから、従来の水晶板を用いる場合に比較して、安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0014】
好ましくは、上記高分子フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において上記波長分散特性を備える。
【0015】
好ましくは、上記高分子フィルムは、一軸延伸したプラスチックを所定の厚さに形成してなる。
【0016】
好ましくは、上記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を入射光の進行方向に対応する軸の回りに所定角度だけ回転して配置し、第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する。これにより、隣接する各々の画素が任意の角度を持って斜め方向に配置されるような撮像素子(例えば、各画素が蜂の巣状に配置される撮像素子等)などと組み合わせて用いる場合に、撮像素子の配置位置に応じた任意の方向に光を導くことが可能となる。
【0017】
また、本発明の光学フィルタは、入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、第1の複屈折板から出射する光の偏光方向を略45度回転させて出射する偏光制御機能を備える偏光制御素子と、偏光制御素子から出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含んで構成される光学フィルタである。
【0018】
偏光制御素子は、例えば、高分子液晶フィルムなどの機能性フィルムを用いて実現することができる。このような偏光制御素子を用いて光学フィルタを構成することにより、従来の1/4波長板と比べ広い波長域で1/4波長板として機能するので、高性能かつ安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0019】
好ましくは、上記偏光制御素子は、少なくとも可視光の波長範囲内において上記偏光制御機能を備える。
【0020】
好ましくは、上記偏光制御素子は、入射光の進行方向に略垂直な面を有する2つの基板間に液晶層を担持して構成され、一方の基板から他方の基板に向かって液晶層に含まれる液晶分子の配向方向を略45度回転させるように構成した液晶素子である。
【0021】
好ましくは、上記偏光制御素子は、一方面から他方面に向かって液晶分子の配向方向を略45度回転させた状態を固定して形成した高分子液晶フィルムである。
【0022】
好ましくは、偏光制御素子は、一の主たる光学軸を有する光学フィルムを複数積層してなる積層フィルムであり、この積層フィルムは、隣接する光学フィルムの相互間の光学軸を徐々にずらして積層し、光入射面側の光学フィルムの光学軸と光出射面側の光学フィルムの光学軸が略45度の角度をなすように構成されている。
【0023】
好ましくは、上記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を入射光の進行方向に対応する軸の回りで所定角度だけ回転して配置し、第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する。これにより、隣接する各々の画素が任意の角度を持って斜め方向に配置されるような撮像素子(例えば、各画素が蜂の巣状に配置される撮像素子等)などと組み合わせて用いる場合に、撮像素子の配置位置に応じた任意の方向に光を導くことが可能となる。
【0024】
また、本発明の光学フィルタは、入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、一の光学軸を有し、第1の複屈折板から出射する光の偏光状態をほぼ解消して出射する偏光解消機能を備える光学フィルムと、この光学フィルムから出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含んで構成されており、上記光学フィルムとして、上記偏光解消機能を生じ得る程度に、厚さと複屈折率の積に対応する光路長差が入射される光の波長よりも大きく設定されたものを用いている。
【0025】
かかる構成とすることにより、従来の1/4波長板と比べ広い波長域で1/4波長板として機能するので、高性能かつ安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0026】
好ましくは、上記光学フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において、上記偏光解消機能を備える。
【0027】
好ましくは、上記光学フィルムは、光路差長が入射される光の波長の少なくとも10倍以上に設定されている。
【0028】
また、上記光学フィルムは、略透明な樹脂の中に光学異方物質を分散して形成されており、入射する光を散乱させる機能を備える。かかる構成とすることにより、従来の1/4波長板と比べ広い波長域で1/4波長板として機能するので、高性能かつ安価な光学フィルタを実現することが可能となる。
【0029】
また、本発明は、上述した構成を有する光学フィルタと、この光学フィルタの後ろ側に配置され、光学像を電気信号に変換する撮像素子と、この撮像素子を駆動する駆動部と、を含んで構成される撮像モジュールでもある。また、この撮像モジュールは、更に、光学像を集光して撮像素子に導くレンズを含んで構成されていてもよい。
【0030】
また、本発明は、上述した撮像モジュールを含んで構成される電子機器でもある。このような電子機器としては、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置や、いわゆるカメラ付き携帯電話、いわゆるカメラ付き携帯型パソコン(パーソナルコンピュータ)などのものが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。図1に示すように、本実施形態の光学ローパスフィルタ1は、複屈折板としての2つの水晶板10、20と、1/4波長板30を含んで構成されており、2つの水晶板10、20の間に1/4波長板30を挿入した3層構造となっている。
【0033】
本実施形態の1/4波長板30は、一軸延伸法によって形成したプラスチックフィルムを用いて形成されており、このプラスチックフィルムの複屈折率(屈折率異方性)を考慮して、フィルム厚を適宜設定することにより、1/4波長板としての機能を実現している。一軸延伸したプラスチックフィルムは、比較的に大きな複屈折率を確保することができるので、従来のように水晶板を使用して1/4波長板を構成する場合に比較して、1/4波長板を薄板化することが可能となる。また、延伸法は、製造コストが低く、大量生産に向くという利点がある。
【0034】
図2は、第1の実施形態の光学ローパスフィルタ1の構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。同図は、光学ローパスフィルタ1を構成する各層を分解して斜視図により示している。また、図3は、光学ローパスフィルタ1を構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【0035】
光入射側に配置される水晶板10は、光入射面と直交し、かつ紙面と平行な面(x−z平面)において、z軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A1により示す方向)に光学軸(光学的主軸)を有している。この水晶板10に入射した光線L1は(図3(a)参照)、水晶板10の有する複屈折性によって、2つの光線L11、L12に分離されて出射する(図3(b)参照)。これらの光線L11、L12は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変化して出射する。
【0036】
1/4波長板30は、光入射面(x−y平面)において、x軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A2により示す方向)に光学軸を有している。これにより、1/4波長板30に入射した光線L11、L12は、それぞれ直線偏光から円偏光に偏光状態が変えられ、2つの光線L13、L14となって出射する。
【0037】
光出射側に配置される水晶板20は、光入射面と直交し、かつ紙面と直交する面(y−z平面)において、y軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A3により示す方向)に光学軸を有している。この水晶板20に入射した光線L13は、水晶板20の有する複屈折性によって、2つの光線L15、L16に分離されて出射する(図3(c)参照)。同様に、水晶板20に入射した光線L14は、2つの光線L17、L18に分離されて出射する(図3(c)参照)。これらの光線L15、L16、L17、L18は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変化して出射する。
【0038】
次に、本実施形態の1/4波長板30の光学的な特性について説明する。図4は、1/4波長板30の複屈折率Δnの波長分散特性を説明する図である。ここで、複屈折率Δnとは、常光線に対応する屈折率noと異常光線に対応する屈折率neの差の絶対値|no−ne|をいう。
【0039】
図4に示すように、本実施形態の1/4波長板30は、少なくとも可視光の範囲内において、入射光の波長λが大きくなるほど複屈折率Δnが大きくなる特性を備えている。このような波長分散特性を有する1/4波長板30を用いることにより、直線偏光を円偏光に変換する機能(1/4波長としての機能)を広い波長範囲において実現することが可能となる。
【0040】
なお、一般に「可視光」とは、380nm〜780nm程度の範囲内の波長の光を言うことが多いが、400nm〜700nm程度の範囲内の波長の光を指す場合もある。本実施形態では、可視光として、少なくとも入射光の波長λが400nm〜700nm程度の範囲を考えるが、これに限定する趣旨ではない。また、図4に示す特性例では、入射光の波長λの増加に伴って複屈折率Δnが直線的に増加する例が示されているが、これに限定する趣旨ではなく、入射光の波長λの増加に伴って複屈折率Δnが曲線的に増加するような特性となっていてもよい。
【0041】
ところで、上述した実施形態では、図3に示したように、入射光線を第1の方向(図面上で左右方向)へ分離し、更にこの第1の方向と直交する第2の方向(図面上で上下方向)へ分離して4つの光線を得ていたが、2つの水晶板10、20を入射光の進行方向に対応する軸回りに、図2における配置状態を基準として相対的に所定の角度θだけ回転して配置することにより、出射光の分岐のパターンを変更することも可能である。以下、その詳細について説明する。
【0042】
図5は、図2における配置状態を基準として、2つの水晶板10、20を相対的に所定の角度θだけずらして配置する場合の光学ローパスフィルタの一例を示す図である。同図に示す光学ローパスフィルタ1aは、上述した図2と同様に、光学ローパスフィルタ1aを構成する各層を分解して斜視図により示している。また、図6は、図5に示す光学ローパスフィルタ1aを構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【0043】
図5に示す光学ローパスフィルタ1aは、上述した図2等に示したローパスフィルタ1と比較して、水晶板20をx−y平面内において時計回りに角度θだけ回転させて配置している。この場合の水晶板20の光学軸は、図示のように、光入射面と直交し、かつy−z平面と角度θをなす平面内において、y軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A3により示す方向)となる。
【0044】
水晶板10に入射した光線L1(図6(a)参照)は、2つの光線L11、L12に分離されるとともに(図6(b)参照)、直線偏光となって出射し、1/4波長板30に入射する。1/4波長板30に入射した光線L11、L12は、それぞれ直線偏光から円偏光に偏光状態が変えられ、2つの光線L13、L14となって出射し、水晶板20に入射する。
【0045】
水晶板20に入射した光線L13は、2つの光線L15、L16に分離されて出射する。このとき、水晶板20が水晶板10と相対的に角度θだけずらして配置されているため、図6(c)に示すように、光線L16の出射方向は、上述した図3に示した光線L16の出射位置に比較して、x−y平面内において時計回りにθだけ回転して出射される。同様に、水晶板20に入射した光線L14は、2つの光線L17、L18に分離されて出射する。このとき、図6(c)に示すように、光線L18の出射方向は、上述した図3に示した光線L18の出射位置に比較して、x−y平面内において時計回りにθだけ回転して出射される。
【0046】
このように、水晶板10と水晶板20の配置を相対的に任意の角度θだけ回転させることにより、出射光線L16、L18の出射位置を角度θだけずらすことが可能である。この実施例の光学ローパスフィルタ1aは、隣接する各々の画素が任意の角度を持って斜め方向に配置されるような撮像素子(例えば、各画素が蜂の巣状に配置される撮像素子等)と組み合わせて用いる場合に特に有効である。
【0047】
なお、上述した図5に示した配置は一例であり、2つの水晶板10、20が相対的に回転して配置されていれば、他の配置状態としてもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。図7に示すように、本実施形態の光学ローパスフィルタ1bは、水晶板10、20と、偏光制御素子40を含んで構成されており、2つの水晶板10、20の間に偏光制御素子40を挿入した3層構造となっている。なお、上述した第1の実施形態と同じ構成要素については同符号を付しており、かかる構成要素についての詳細な説明は省略する。本実施形態の偏光制御素子40は、入射光の偏光面を約45度回転して出射する機能を備えている。偏光制御素子40の具体例については後述する。
【0049】
図8は、第2の実施形態の光学ローパスフィルタ1bの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。同図は、光学ローパスフィルタ1を構成する各層を分解して斜視図により示している。
【0050】
水晶板10に入射した光線L2は、2つの光線L21、L22に分離して出射され、偏光制御素子40に入射する。偏光制御素子40に入射した光線L21は、偏光制御素子40によってその偏光方向がx−y平面において反時計回りに約45度回転され、光線L23となって出射する。同様に、偏光制御素子40に入射した光線L22は、偏光制御素子40によってその偏光方向がx−y平面において反時計回りに約45度回転され、光線L24となって出射する。その後、光線L23、L24は、水晶板20を通過することにより、光線L25、L26及び光線L27、L28にそれぞれ分離され、水晶板20から出射する。
【0051】
次に、偏光制御素子40のいくつかの具体例について説明する。
【0052】
図9は、液晶セル(液晶素子)を用いて偏光制御素子40を実現する場合の例について説明する図である。同図に示す液晶セルは、所定間隔(例えば、10μm程度)を保つようにして貼り合わせた2枚の基板140と、これらの基板140の間に充填された液晶層141を含んで構成される。液晶層141は、上側(光入射側)の基板140から下側(光出射側)の基板140に向かって、液晶分子142の配向方向が約45度回転した構造を有している。このような構造は、上下の基板140に対して適当な配向処理(例えば、ラビング処理等)を施すことによって実現することができる。液晶層141を構成する液晶材料(例えば、ネマティック液晶等)の複屈折率Δnと2枚の基板140の間隔(セル厚)を適宜選択することにより、液晶層141に旋光性を持たせることができる。これにより、少なくとも可視光の波長範囲内の入射光について、その偏光方向を液晶分子142の配向方向に沿って回転させることが可能となる。このような液晶セルを用いることにより、偏光制御素子40を実現することが可能である。
【0053】
また、光硬化性の高分子材料を添加しておいた液晶材料を用いて、上述した図9に示す液晶セルと同様に、液晶分子の配向状態が上下方向に45度ねじれた状態にし、その後に光照射を行って高分子を硬化させることにより、液晶分子の配向状態を固定化した、いわゆる高分子液晶フィルムを用いることによっても、図9に示した液晶セルと同様の機能を実現することが可能である。なお、この高分子液晶フィルムを用いる場合の光学ローパスフィルタの構造は、基本的に図8に示した光学ローパスフィルタ1bと同様であるため、ここでは図示を省略する。
【0054】
図10は、一の主たる光学軸を有する光学フィルム(一軸性光学フィルム)を複数枚重ねた積層フィルムを用いて偏光制御素子40を実現する場合の例について説明する図である。同図に示す積層フィルムは、一軸延伸法によって形成されるプラスチックフィルムにより実現される光学フィルム145を複数枚積層して形成されている。なお、図10では各光学フィルム145を分離して示しているが、実際にはこれらは隙間をあけずに積層される。また、図10では、4枚の光学フィルム145を積層する例を示しているが、光学フィルム145の枚数は適宜設定することが可能である。
【0055】
図10において、矢印A21〜A24は、各光学フィルム145の偏光の方向を示している。このように、各光学フィルム145は、上側(光入射側)の光学フィルム145から下側(光出射側)の光学フィルムに向かって徐々に光学軸が回転し、全体として光学軸が約45度回転するように構成されている。この積層フィルムに直線偏光の光を入射することにより、入射光の偏光方向を各光学フィルム145の光学軸に沿って回転させることが可能となる。このような積層フィルムを用いることにより、偏光制御素子40を実現することが可能である。
【0056】
なお、上述した第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に、2つの水晶板10、20を、図2における配置状態を基準として相対的に角度θだけ回転し、且つ光学フィルム145の光軸を45°+(θ/2)に構成して配置することにより、出射光線L26、L28(図8参照)の出射位置を角度θだけずらすことが可能である。
【0057】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。同図は、光学ローパスフィルタ1cの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図であり、光学ローパスフィルタ1cを構成する各層を分解して斜視図により示している。
【0058】
図11に示すように、本実施形態の光学ローパスフィルタ1cは、水晶板10、20と、光学フィルム50を含んで構成されており、2つの水晶板10、20の間に光学フィルム50を挿入した3層構造となっている。なお、上述した第1の実施形態と同じ構成要素については同符号を付しており、かかる構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施形態の光学フィルム50は、少なくとも可視光の範囲内において、光学フィルム50の厚さdと、複屈折率Δnとの積Δn・dに対応する光路長差(リタデーション)Rの値が入射光の波長λよりも十分に大きくなるように形成されている。具体的には、光路長差Rは、少なくとも入射光の波長λの10倍よりも大きくなるように(すなわち、R>10λの関係を満たすように)することが好適である。このように、光路長差Rが入射光の波長λよりも十分に大きくなるように形成された光学フィルム50は、広い波長範囲では入射光の偏光状態を解消し、自然光に近い偏光状態にして出射する機能を有する。
【0060】
水晶板10に入射される光線L3は、2つの光線L31、L32に分解され、直線偏光となって出射する。水晶板10を出射した直線偏光の光線L31は、光学フィルム50によってその偏光状態をほぼ解消され、ランダムな偏光状態の光線L33となって出射する。同様に、水晶板10を出射した直線偏光の光線L32は、光学フィルム50によってその偏光状態をほぼ解消され、ランダムな偏光状態の光線L34となって出射する。その後、光線L33、L34は、水晶板20を通過することにより、光線L35、L36及び光線L37、L38にそれぞれ分離され、水晶板20から出射する。
【0061】
なお、上述した光学ローパスフィルタ1cにおいて、光学フィルム50の代わりに、略透明な樹脂の中に光学異方物質を分散して形成した樹脂板を用いることによっても、光学フィルム50と同様な機能を実現することが可能である。この場合には、樹脂中に分散して含有される光学異方物質の光散乱効果により、入射光の偏光状態が解消される。
【0062】
(撮像モジュール、撮像装置の具体例)
次に、本発明の光学ローパスフィルタを含んで構成される撮像モジュール及び撮像装置の具体例について説明する。
【0063】
図12は、撮像モジュールの構成例とこの撮像モジュールを含む撮像装置の構成例を示す図である。同図に示す撮像モジュール100は、本発明を適用した光学ローパスフィルタ110と、CCD等のセンサからなり、光学像を電気信号に変換する撮像素子120と、この撮像素子120を駆動する駆動部130を含んで構成されている。
【0064】
この撮像モジュール100と、光入射側に配置されるレンズ200と、撮像モジュール100から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部300を含んで、撮像装置を構成することができる。なお、図示しないが、本体部300には、撮像信号の補正等を行う信号処理部、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部及びこの撮像信号を再生する再生部、再生された映像を表示する表示部など各種の構成要素が含まれる。また、上述したレンズ200も含めて撮像モジュールが構成されていてもよい。
【0065】
図13及び図14は、撮像装置(電子機器)の具体例を示す図である。図13では、撮像装置の一例として、静止画の撮影を行うデジタルスチルカメラを模式的に示した斜視図が示されている。また、図14では、撮像装置の一例として、動画の撮影を行うデジタルカメラを模式的に示した斜視図が示されている。なお、これらのデジタルスチルカメラやデジタルカメラ以外にも、いわゆるカメラ付き携帯電話、いわゆるカメラ付き携帯型パソコン(パーソナルコンピュータ)など各種の電子機器においても、本発明に係る光学ローパスフィルタや撮像モジュールを用いて撮像部を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。
【図2】第1の実施形態の光学ローパスフィルタの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。
【図3】光学ローパスフィルタを構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【図4】1/4波長板の複屈折率(屈折率異方性)Δnの波長分散特性を説明する図である。
【図5】2つの水晶板を、図2における配置状態を基準として相対的に所定の角度θだけずらして配置する場合の光学ローパスフィルタの一例を示す図である。
【図6】図5に示す光学ローパスフィルタを構成する各層を通過することによる入射光の分離状態を説明する説明図である。
【図7】第2の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。
【図8】第2の実施形態の光学ローパスフィルタの構造について、主に光学軸と光線の進行方向に着目して詳細に説明する説明図である。
【図9】液晶セル(液晶素子)を用いて偏光制御素子を実現する場合の例について説明する図である。
【図10】一の主たる光学軸を有する光学フィルムを複数枚重ねた積層フィルムを用いて偏光制御素子を実現する場合の例について説明する図である。
【図11】第3の実施形態の光学ローパスフィルタの構造を示す図である。
【図12】撮像モジュールの構成例とこの撮像モジュールを含む撮像装置の構成例を示す図である。
【図13】撮像装置(電子機器)の具体例を示す図である。
【図14】撮像装置(電子機器)の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1b、1c…光学ローパスフィルタ、 10、20…水晶板、 30…1/4波長板、 40…偏光制御素子、 50…光学フィルム、 100…撮像モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、
前記入射光を分離して複数の出射光を形成する第1の複屈折板と、
前記複数の出射光の偏光状態を略円偏光に変換する高分子フィルムと、
前記高分子フィルムから出射する複数の出射光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含み、
前記高分子フィルムは、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を備える、光学フィルタ。
【請求項2】
前記高分子フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において前記波長分散特性を備える、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記高分子フィルムは、一軸延伸したプラスチックを所定の厚さに形成してなる、請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を前記入射光の進行方向に対応する軸の回りに所定角度だけ回転して配置し、前記第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、前記第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光学フィルタ。
【請求項5】
入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、
前記入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、
前記第1の複屈折板から出射する光の偏光方向を略45度回転させて出射する偏光制御機能を備える偏光制御素子と、
前記偏光制御素子から出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、
を含む、光学フィルタ。
【請求項6】
前記偏光制御素子は、少なくとも可視光の波長範囲内において前記偏光制御機能を備える、請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記偏光制御素子は、入射光の進行方向に略垂直な面を有する2つの基板間に液晶層を担持して構成され、一方の前記基板から他方の前記基板に向かって前記液晶層に含まれる液晶分子の配向方向を略45度回転させるように構成した液晶素子である、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記偏光制御素子は、一方面から他方面に向かって液晶分子の配向方向を略45度回転させた状態を固定して形成した高分子液晶フィルムである、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記偏光制御素子は、一の主たる光学軸を有する光学フィルムを複数積層してなる積層フィルムであり、前記積層フィルムは、隣接する前記光学フィルムの相互間の前記光学軸を徐々にずらして積層し、光入射面側の前記光学フィルムの光学軸と光出射面側の前記光学フィルムの光学軸が略45度の角度をなすように構成されている、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を前記入射光の進行方向に対応する軸の回りで所定角度だけ回転して配置し、前記第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、前記第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する、請求項5乃至9のいずれかに記載の光学フィルタ。
【請求項11】
入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、
前記入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、
一の光学軸を有し、前記第1の複屈折板から出射する光の偏光状態をほぼ解消して出射する偏光解消機能を備える光学フィルムと、
前記光学フィルムから出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含み、
前記光学フィルムは、前記偏光解消機能を生じ得る程度に、厚さと複屈折率の積に対応する光路長差が入射される光の波長よりも大きく設定されている、光学フィルタ。
【請求項12】
前記光学フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において、前記偏光解消機能を備える、請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
前記光学フィルムは、前記光路差長が前記入射される光の波長の少なくとも10倍以上に設定されている、請求項11又は12に記載の光学フィルタ。
【請求項14】
前記光学フィルムは、略透明な樹脂の中に光学異方物質を分散して形成されており、入射する光を散乱させる機能を備える、請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の光学フィルタと、
光学像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子を駆動する駆動部と、
を含んで構成される、撮像モジュール。
【請求項16】
更に、前記光学像を集光して前記撮像素子に導くレンズを含む、請求項15に記載の撮像モジュール。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の撮像モジュールを含んで構成される電子機器。
【請求項1】
入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、
前記入射光を分離して複数の出射光を形成する第1の複屈折板と、
前記複数の出射光の偏光状態を略円偏光に変換する高分子フィルムと、
前記高分子フィルムから出射する複数の出射光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含み、
前記高分子フィルムは、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を備える、光学フィルタ。
【請求項2】
前記高分子フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において前記波長分散特性を備える、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記高分子フィルムは、一軸延伸したプラスチックを所定の厚さに形成してなる、請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を前記入射光の進行方向に対応する軸の回りに所定角度だけ回転して配置し、前記第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、前記第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光学フィルタ。
【請求項5】
入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、
前記入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、
前記第1の複屈折板から出射する光の偏光方向を略45度回転させて出射する偏光制御機能を備える偏光制御素子と、
前記偏光制御素子から出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、
を含む、光学フィルタ。
【請求項6】
前記偏光制御素子は、少なくとも可視光の波長範囲内において前記偏光制御機能を備える、請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記偏光制御素子は、入射光の進行方向に略垂直な面を有する2つの基板間に液晶層を担持して構成され、一方の前記基板から他方の前記基板に向かって前記液晶層に含まれる液晶分子の配向方向を略45度回転させるように構成した液晶素子である、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記偏光制御素子は、一方面から他方面に向かって液晶分子の配向方向を略45度回転させた状態を固定して形成した高分子液晶フィルムである、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記偏光制御素子は、一の主たる光学軸を有する光学フィルムを複数積層してなる積層フィルムであり、前記積層フィルムは、隣接する前記光学フィルムの相互間の前記光学軸を徐々にずらして積層し、光入射面側の前記光学フィルムの光学軸と光出射面側の前記光学フィルムの光学軸が略45度の角度をなすように構成されている、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記第1及び第2の複屈折板の少なくとも一方を前記入射光の進行方向に対応する軸の回りで所定角度だけ回転して配置し、前記第1及び第2の複屈折板の相対的な位置を設定することにより、前記第2の複屈折板から出射する複数の分岐光の出射パターンを設定する、請求項5乃至9のいずれかに記載の光学フィルタ。
【請求項11】
入射光を複数に分岐して出射する光学フィルタであって、
前記入射光を分離して複数の光を形成する第1の複屈折板と、
一の光学軸を有し、前記第1の複屈折板から出射する光の偏光状態をほぼ解消して出射する偏光解消機能を備える光学フィルムと、
前記光学フィルムから出射する複数の光をそれぞれ分離して複数の出射光を形成する第2の複屈折板と、を含み、
前記光学フィルムは、前記偏光解消機能を生じ得る程度に、厚さと複屈折率の積に対応する光路長差が入射される光の波長よりも大きく設定されている、光学フィルタ。
【請求項12】
前記光学フィルムは、少なくとも可視光の波長範囲内において、前記偏光解消機能を備える、請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
前記光学フィルムは、前記光路差長が前記入射される光の波長の少なくとも10倍以上に設定されている、請求項11又は12に記載の光学フィルタ。
【請求項14】
前記光学フィルムは、略透明な樹脂の中に光学異方物質を分散して形成されており、入射する光を散乱させる機能を備える、請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の光学フィルタと、
光学像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子を駆動する駆動部と、
を含んで構成される、撮像モジュール。
【請求項16】
更に、前記光学像を集光して前記撮像素子に導くレンズを含む、請求項15に記載の撮像モジュール。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の撮像モジュールを含んで構成される電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2004−70340(P2004−70340A)
【公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−274679(P2003−274679)
【出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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