説明

光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】配向層に配向処理をしないで光学補償することができ、密着性も良好な光学フィルムを提供すること。また、工程数を減少することで低コスト化可能な光学フィルムを提供すること。
【解決手段】透明支持体の親水化された面上に置かれた配向膜が分子中にエチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマーと親水性ポリマーとを含み、該配向膜上に置かれた光学異方性層が一般式(I)で表されるピリジニウム化合物を含む光学フィルム。(L1は2価の連結基、R1は、水素原子、無置換、置換のアミノ基、Y1は5員環又は6員環を部分構造として有する2価の連結基、Zは、ハロゲン等で置換されたフェニル基、アルキル基、アルキニル基、アルコキシ基等である。また、Xはアニオンである。)
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置の技術分野に関し、特にIPSモード等の液晶表示装置に好適な光学フィルム、及び該光学フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置としては、2枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して、液晶性化合物がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性化合物を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
【0003】
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるIPSモードやFFSモードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、テレビ用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
【0004】
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSやFFSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献1参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコティック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)や光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献5参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献6参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献7参照)が提案されている。
また、光学補償材料を作製する手段として、特許文献8〜14に記載の方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−80424号公報
【特許文献2】特開平10−54982号公報
【特許文献3】特開平11−202323号公報
【特許文献4】特開平9−292522号公報
【特許文献5】特開平11−133408号公報
【特許文献6】特開平11−305217号公報
【特許文献7】特開平10−307291号公報
【特許文献8】特開2004−264345号公報
【特許文献9】特開2004−347698号公報
【特許文献10】特開2005−62425号公報
【特許文献11】特開2005−242322号公報
【特許文献12】特開2005−274909号公報
【特許文献13】特開2005−173410号公報
【特許文献14】特開2005−258046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、延伸複屈折ポリマーフィルムからなる光学補償シートを用いてIPSモードやFFSモード液晶セルを光学補償する場合は、複数のフィルムを用いる必要があり、その結果、光学補償シートの厚さが増し、表示装置の薄形化に不利である。また、これらの問題を解決するために、液晶材料を配向させた光学異方性フィルムを用いることができるが、液晶材料を大面積で均一な膜厚で塗布し、均一に配向させることが難しく、ムラや表面凹凸が発生しやすく、歩留まりの低下を招いていた。また、液晶材料の配向性が不十分であると、液晶表示装置に用いた場合、偏光板を通過した入射偏光が偏光解消して正面に抜けやすく、黒表示時に光漏れが発生し、コントラスト低下等の不具合が発生していた。
【0007】
また、光学フィルムを作製する際に広く用いられる、ラビング処理等の工程数増加による光学フィルム得率低下も解決する課題であった。
【0008】
すなわち、本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、配向層に配向処理をしないで光学補償することができる光学フィルムを提供する。また、、工程数を減少することで低コスト化可能な光学フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)
少なくとも一面が親水化された透明支持体と、該透明支持体の親水化された面上に置かれた配向膜と、該配向膜上に置かれた光学異方性層とを有する光学フィルムにおいて、該配向膜は分子中にエチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマーと親水性ポリマーとを含み、該光学異方性層は下記一般式(I)で表されるピリジニウム化合物を含むことを特徴とする光学フィルム。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(I)中、L1は2価の連結基を表し、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基である。R1は、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換基で置換された置換アミノ基である。Y1は5員環又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基である。Zは、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基である。また、Xはアニオンである。)
(2)
前記親水性ポリマーが、水溶性エーテル化多糖類又はポリビニルアルコールであることを特徴とする(1)に記載の光学フィルム。
(3)
前記透明支持体の配向膜側の表面が、ESCAで測定した場合、炭素チャート上の290eVと288eVのピーク比が0.20から0.50であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光学フィルム。
(4)
前記光学異方性層が、棒状液晶性化合物を含む配向した液晶性層からなることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の光学フィルム。
(5)
前記光学異方性層が、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有するフルオロ脂肪族基含有ポリマー、又は下記一般式(III)で表される含フッ素化合物を含むことを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の光学フィルム。
式(III)
(R0)mo−L0−(W)no
(式(III)中、R0はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、moは1以上の整数を表す。複数個のR0は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L0は(mo+no)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表し、noは1以上の整数を表す。)
(6)
前記光学異方性層の光学特性が、面内のレターデーションReが0〜10nmであり、厚さ方向のレターデーションRthが−400〜−80nmであることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の光学フィルム。
(7)
前記透明支持体がセルロース系ポリマーからなることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の光学フィルム。
(8)
前記セルロース系ポリマーがセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースエーテルアセテートのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする(7)に記載の光学フィルム。
(9)
前記透明支持体の光学特性が、面内のレターデーションReが20〜150nmであり、厚さ方向のレターデーションRthが100〜300nmであることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の光学フィルム。
(10)
前記透明支持体の親水化処理がアルカリ鹸化処理であることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の光学フィルム。
(11)
前記配向膜がラビング処理されていないことを特徴とする(1)から(10)のいずれかに記載の光学フィルム。
(12)
(1)から(11)のいずれかに記載の光学フィルムと偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
(13)
請求項(12)に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
(14)
駆動モードがIPS形式であることを特徴とする(13)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、配向層に配向処理しないでも光学補償をすることができ、密着性も良好な光学フィルムが得られる。また、本発明の光学フィルムは、配向処理等の工程が不必要となり、低コスト化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置の実施形態について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本明細書において、軸について「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、液晶分子について「実質的に垂直」「実質的に平行」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±10゜未満であることが好ましく、±5゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
【0015】
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
【0016】
本明細書において、Re、Rthは各々、ある波長λnmにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0017】
[光学異方性層]
本発明の光学フィルムに含まれる光学異方性層は面内のレターデーションReは、0〜10nmであることが好ましく、0〜5nmであることがさらに好ましく、0〜3nmであることが最も好ましい。さらに、該光学異方性層の厚さ方向のレターデーションRthは、−400〜−80nmであることが好ましく、−360〜−100nmであることがさらに好ましく、−320〜−120nmであることが最も好ましい。
【0018】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物から形成されていることが好ましい。前記液晶性化合物は棒状液晶性化合物であることが好ましい。棒状液晶性化合物を用いた場合は、前記光学異方性層において棒状分子が垂直配向しているのが好ましい。
【0019】
液晶性化合物の種類については特に制限されない。本発明の光学フィルムに含まれる光学異方性層は、例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して作製してもよい。また、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して作製してもよい。なお本発明では、光学異方性層の作製に液晶性化合物が用いられるが、作製の過程で液晶性化合物は重合等によって固定された状態で光学異方性層に含有される場合が多く、最終的には液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。
【0020】
本発明の光学フィルムに含まれる光学異方性層において、液晶性化合物の分子は、所定の配向状態、好ましくは垂直配向の状態に固定されていることが好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°がさらに好ましい。
【0021】
本発明の光学フィルムは、光学補償フィルムとして、偏光板、液晶表示装置等に組み込むことができる。
【0022】
以下、光学異方性層等を有する本発明の光学フィルムの態様について、作製に用いられる材料、作製方法等を詳細に説明する。
光学異方性層は、棒状液晶性化合物等の液晶性化合物と配向制御剤、所望により、重合開始剤や他の添加剤を含む組成物から形成することができる。
【0023】
[棒状液晶性化合物]
本発明では、棒状液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成することが好ましい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同95/24455号パンフレット、同97/00600号パンフレット、同98/23580号パンフレット、同98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0024】
[液晶性化合物の垂直配向制御]
液晶性化合物を均一に垂直配向させるためには、配向膜界面側及び空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御することが必要である。この目的のために、本発明では、分子中にエチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマーを含む配向膜に対して、排除体積効果、静電気的効果又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を添加した液晶性組成物を採用する。また、空気界面側の配向制御に関しては液晶性化合物の配向時に空気界面に偏在し、その排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を配合した液晶性組成物を採用してもよい。このような配向膜界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(配向膜側垂直配向剤)として、本発明ではピリジニウム誘導体を用いる。空気界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(空気界面側垂直配向剤)としては、該化合物が空気界面側に偏在するのを促進する、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含む化合物が好適に用いられる。また、これらの化合物を配合することによって、例えば、液晶性組成物を塗布液として調製した場合に、該塗布液の塗布性が改善され、ムラ、ハジキの発生が抑制される。以下に垂直配向剤に関して詳細に説明する。
【0025】
[配向膜側垂直配向剤](ピリジニウム化合物)
本発明では配向膜側垂直配向剤として、下記式(I)で表されるピリジニウム誘導体(ピリジニウム塩)を用いる。該ピリジニウム誘導体の少なくとも1種を前記液晶性組成物に添加することによって、棒状液晶性化合物の分子を配向膜近傍で実質的に垂直に配向させることができる。配向膜が親水性ポリマーを含有することで、配向膜表面が親水的である場合、ピリジニウム化合物は疎水的である空気界面側より配向膜側に偏在すると考えられ、これにより従来の液晶配向方法である配向膜表面のラビングすること無しに液晶を配向することができる。
【0026】
【化2】

【0027】
式(I)において、L1は2価の連結基を表し、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基は、直鎖であっても分岐であってもよい。
【0028】
式(I)において、R1は、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換基で置換された置換アミノ基である。R1が置換アミノ基である場合、脂肪族基によって置換されていることが好ましい。脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基が挙げられる。また、R1が2置換アミノ基である場合、2つの脂肪族基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環又は6員環であることが好ましい。R1は水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であることが好ましく、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が2〜12の置換アミノ基であることがより好ましく、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が2〜8の置換アミノ基であることがさらに好ましい。R1がアミノ基である場合、ピリジニウム環の4位に置換されていることが好ましい。
【0029】
式(I)において、Y1は5員環又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基である。Y1に含まれる環状部分構造はシクロヘキシル環、芳香族環又は複素環であることがより好ましい。芳香族環としては、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニル環、及びピレン環を挙げることができる。ベンゼン環、ビフェニル環、及びナフタレン環がさらに好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環及びトリアジン環などを挙げることができる。複素環は6員環であることが好ましい。Yで表される5員環又は6員環を部分構造として有する2価の連結基は置換基を有していてもよい。
【0030】
式(I)において、Zは、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であり、シアノ置換フェニル基、ハロゲン置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基又は炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であるのが好ましい。
Zは、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜16のアルキル基、炭素原子数が1〜16のアルケニル基、炭素原子数が1〜16のアルキニル基、炭素原子数が1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜16のアルコキシ基、炭素原子数が2〜16のアシル基、炭素原子数が1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数が2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0031】
式(I)において、Xはアニオンである。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。Xは、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸イオンである。
【0032】
本発明に用いられるピリジニウム化合物としては、下記式(Ia)で表されるピリジニウム化合物が好ましい。
【0033】
【化3】

【0034】
式(Ia)において、L3は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又はO−CO−AL−CO−O−である。ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L3は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又はO−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、単結合又はO−であるのがより好ましい。
【0035】
式(Ia)において、L4は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−又はN=N−である。
【0036】
式(Ia)において、R3は、水素原子、無置換アミノ基又は炭素原子数が2〜20のアルキル置換アミノ基である。R3がジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環又は6員環が好ましい。R3は水素原子、無置換アミノ基又は炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基がさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基又は炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基が最も好ましい。R3が無置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位がアミノ置換されていることが好ましい。
【0037】
式(Ia)において、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環からなる2価の基である。6員環の例は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)及び複素環が挙げられる。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環及びシクロヘキサジエン環が挙げられる。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環及びトリアジン環が挙げられる。6員環に、他の6員環又は5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基及び炭素原子数が1〜12のアルコキシ基が挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基又は炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。アシル基及びアシルオキシ基の定義は、後述する。
【0038】
式(Ia)において、Z1は水素原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基又は炭素原子数が1〜12のアルコキシ基であって、アルキル基及びアルコキシ基は、それぞれ、炭素原子数が2〜12のアシル基又は炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。
【0039】
式(Ia)において、mは1又は2であって、mが2の場合、2つのL4及び2つのY3は、異なっていてもよい。
mが2の場合、Z1は、シアノ基、炭素原子数が1〜10のアルキル基又は炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましい。
mが1の場合、Z1は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基又は炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0040】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)又は芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基又はアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0041】
式(Ia)において、pは、1〜10の整数である。Cp2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。Cp2pは、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。また、pは1又は2であることがより好ましい。
【0042】
式(Ia)において、X1はアニオンである。X1は、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)及びスルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルン酸イオン、ベンゼンスルン酸イオン)が含まれる。
【0043】
以下に、式(I)及び/又は(Ia)で表されるピリジニウム化合物の具体例を示す。ここで、Meはメチル基を表す。
【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
ピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
【0049】
前記液晶性組成物中における前記ピリジニウム誘導体の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、液晶性組成物(塗布液として調製した場合は溶媒を除いた液晶性組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0050】
[空気界面側垂直配向剤]
空気界面側垂直配向剤としては、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有するフルオロ脂肪族基含有ポリマー(以下、「フッ素系ポリマー」という)、又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
【0051】
(空気界面側垂直配向剤(1):フッ素系ポリマー)
まず、フッ素系ポリマーについて説明する。
フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有することを特徴とする。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
【0052】
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。フルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれるものである。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747〜752ページに記載されている。テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である(Scheme−1に例を示した)。
【0053】
【化8】

【0054】
得られた、末端ヨウ素化テロマーは通常、例えば[Scheme2]のごとき適切な末端化学修飾を施され、フルオロ脂肪族化合物へと導かれる。これらの化合物は必要に応じ、さらに所望のモノマー構造へと変換され、フッ素系ポリマーの製造に使用される。
【0055】
【化9】

【0056】
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能なモノマーの具体例を以下に挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの一態様は、フルオロ脂肪族基含有モノマー(以下、「フッ素系モノマー」ということがある)より誘導される繰り返し単位と、下記式(II)で表される親水性基を含有する繰り返し単位とを有する共重合体である。
【0065】
【化17】

【0066】
上記式(II)において、R1、R2及びR33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NRb−(Rbは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(ORf)−(Rfはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
【0067】
式(II)中、R1、R2及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は下記に例示した置換基群から選ばれる置換基を表す。
(置換基群)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、さらに好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0068】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0069】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0070】
1、R2及びR33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、又は後述する−L−Qで表される基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L−Qで表される基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であることが最も好ましい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
【0071】
Lは、上記連結基群から選ばれる2価の連結基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。上記連結基群中、−NRb−のRbは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、−PO(ORf)−のRfはアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくはアルキル基である。Rb及びRfがアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す場合の炭素数は「置換基群」で説明したものと同じである。Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NRb−、−S−、−SO2−、アルキレン基又はアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NRb−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。Lがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラブチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフタレン基等が挙げられる。Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、さらに好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては先にR1、R2、R33における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
以下にLの具体的構造を例示する。
【0072】
【化18】

【0073】
【化19】

【0074】
前記式(II)中、Qはカルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホノキシ基、ホスホノキシ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)を表す。より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのはカルボキシル基又はスルホ基である。
【0075】
前記フッ素系ポリマーは、前記式(II)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、前記フッ素系ポリマーは、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。前記フッ素系ポリマーは、下記モノマー群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0076】
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
【0077】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
【0078】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
【0079】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
【0080】
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
【0081】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
【0082】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;及び
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
【0083】
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記式(II)で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのがさらに好ましい。上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が、式(II)で表される繰り返し単位の含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、前記フッ素系ポリマー中に含有される親水性基(式(II)中のQ)の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、より好ましい量は0.2mmol/g〜8mmol/gである。
【0084】
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0085】
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、又は、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0086】
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0087】
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0088】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0089】
前記フッ素系ポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル類(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、使用するモノマーの全モル数に対して好ましくは0.01モル%〜50モル%程度であり、より好ましくは0.05モル%〜30モル%、さらに好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
【0090】
なお、本発明のフッ素系ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
【0091】
以下に、フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられる具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。ここで式中の数値(a、b、c、d等の数値)は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはGPCにより測定されたPEO換算の質量平均分子量である。
【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
【化22】

【0095】
【化23】

【0096】
【化24】

【0097】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフッ素系モノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0098】
前記液晶性組成物(塗布液として調製した場合は、溶媒を除いた液晶性組成物)中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、液晶性組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
【0099】
(空気界面側垂直配向剤(2):含フッ素化合物)
次に、同様に空気界面側垂直配向剤として使用可能な、式(III)で表される含フッ素化合物について説明する。
式(III)
(R0)mo−L0−(W)no
式中、R0はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、moは1以上の整数を表す。複数個のR0は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L0は(mo+no)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表し、noは1以上の整数を表す。
【0100】
式(III)中、R0は含フッ素化合物の疎水性基として機能する。R0で表されるアルキル基は置換もしくは無置換のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは4〜16のアルキル基であり、特に好ましくは6〜16のアルキル基である。該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
【0101】
0で表される末端にCF3基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは4〜16であり、さらに好ましくは4〜8である。前記末端にCF3基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF2H基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは4〜16であり、さらに好ましくは4〜8である。前記末端にCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、60%以上が置換されていることがより好ましく、70%以上を置換されていることがさらに好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示する置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
【0102】
R1:n−C817
R2:n−C613
R3:n−C49
R4:n−C817−(CH2)2
R5:n−C613−(CH2)2
R6:n−C49−(CH2)2
R7:H−(CF2)8
R8:H−(CF2)6
R9:H−(CF2)4
R10:H−(CF2)8−(CH2)−
R11:H−(CF2)6−(CH2)−
R12:H−(CF2)4−(CH2)−
【0103】
式(III)において、L0で表される(mo+no)価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、ヘテロ環基、−CO−、−NRd−(Rdは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−からなる群より選ばれる基を少なくとも2つ組み合わせた連結基であることが好ましい。
【0104】
式(III)において、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Wの好ましい範囲は、式(II)におけるQと同一である。
【0105】
前記式(III)で表される含フッ素化合物の中でも、下記式(III)−a又は式(III)−bで表される化合物が好ましい。
【0106】
【化25】

【0107】
式(III)−a中、R4及びR5は各々アルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表すが、R4及びR5が同時にアルキル基であることはない。W1及びW2は各々水素原子、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表すが、W1及びW2が同時に水素原子であることはない。
【0108】
式(III)−b
(R6−L2−)m2(Ar1)−W3
式(III)−b中、R6はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、m2は1以上の整数を表し、複数個のR6は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L2は、アルキレン基、芳香族基、−CO−、−NR’−(R’は炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、複数個のL2は同一でも異なっていてもよい。Ar1は芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を表し、W3はカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表す。
【0109】
まず、前記式(III)−aについて説明する。
4及びR5は前記式(III)におけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩は前記式(III)におけるWと同義でありその好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは1〜3のアルキル基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、更に好ましくは1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは1〜4のアルコキシ基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキルアミノ基であり、より好ましくは1〜8のアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは1〜4のアルキルアミノ基である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
【0110】
1及びW2は、特に好ましくはそれぞれ水素原子又は(CH2)nSO3M(nは0又は1を表す。)である。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合は、Mはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0111】
次に、前記式(III)−bについて説明する。
6は前記式(III)−bにおけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。L2は、好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12の芳香族基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜40の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、フェニル基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜20の連結基を表す。Ar1は、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環を表し、より好ましくはベンゼン環又はナフタレン環を表す。W3で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基は、前記式(III)−aにおけるW1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基と同義でありその好ましい範囲も同一である。
【0112】
3は、好ましくはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩又はスルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有するアルキルアミノ基であり、特に好ましくはSO3M又はCO2Mである。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合は、Mはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0113】
本明細書において、置換基群Dには、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
【0114】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)。
【0115】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0116】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0117】
なお、本発明の含フッ素化合物は、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
【0118】
本発明に使用可能な式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる含フッ素化合物はこれらに限定されるものではない。
【0119】
【化26】

【0120】
【化27】

【0121】
【化28】

【0122】
【化29】

【0123】
【化30】

【0124】
前記液晶性組成物中における前記含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、前記液晶性組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。
【0125】
[重合性開始剤]
所望の配向状態(例えば、棒状液晶性化合物の場合は垂直配向)に配向させた液晶性化合物の分子を、その配向状態を維持して固定するのが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0126】
[光学異方性層の他の添加剤]
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0127】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0128】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特開2005−62673号公報の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
【0129】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0130】
[塗布]
本発明の光学異方性層は、例えば、液晶性化合物、配向制御剤及び所望により添加される重合開始剤等の添加剤を、溶媒に溶解及び/又は分散させて調製した塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0131】
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。中でも、前記光学異方性層を形成する際は、ワイヤーバーコーティング法を利用して塗布するのが好ましく、ワイヤーバーの回転数は下記式を満たすことが好ましい。
0.6<(W×(R+2r)×π)/V<1.4
[W:ワイヤーバーの回転数(rpm)、R:バーの芯の直径(m)、r:ワイヤーの直径(m)、V:支持体の搬送速度(m/min)]
(W×(R+2r)×π)/Vの範囲は、0.7〜1.3であることがより好ましく、0.8〜1.2であることがさらに好ましい。
【0132】
前記光学異方性層の形成にはダイコーティング法が好ましく用いられ、特に、スライドコーター又はスロットダイコーターを利用した塗布方法が好ましい。例えば、特開2004−290775号公報、特開2004−290776号公報、特開2004−358296号公報、特開2005−13989号公報等に記載の塗布方法を用いることができる。
【0133】
次に、上記の通り、支持体表面又は配向膜表面に前記組成物を塗布した後、液晶性化合物の分子を配向(棒状液晶性分子については好ましくは垂直配向)させて、分子をその配向状態に固定して光学異方性層を形成する。配向させる温度は、用いる液晶性化合物の転移温度、所望の配向状態等を考慮して、決定することができる。固定化は、液晶性分子や、組成物中に所望により添加される重合性モノマーの重合反応又は架橋反応により実施されるのが好ましい。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
形成される光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜5μmであることがよりさらに好ましい。
【0134】
[透明支持体]
液晶性化合物からなる光学異方性層を形成するための支持体としては、後述する光学特性を有する支持体を用いることが好ましい。支持体は光透過率が80%以上であることが好ましい。
【0135】
前記支持体(透明基材)は光学的に等方であっても良いが、位相差板が搭載される液晶表示装置に要求される機能等によっては、前記透明基材が光学異方性を有することが好ましい。この場合の光学異方性としては、特に限定されないが、例えば、いわゆる正または負のA−Plate位相差特性を示す光学異方性、正または負のC−Plate位相差特性を示す光学異方性、正または負のO−Plate位相差特性を示す光学異方性、異なる方向に屈折率異方性を有する(すなわち、光軸を二本有する)二軸性の光学異方性等が可能である。なお、A−plate、C−plateおよびO−plateとは、いずれも、いわゆる一軸性の光学異方性を有する層をいう。
前記A−plateは、光軸がその面内方向に存在し、その光学特性条件が下記式(い)を満たす場合はPositive(正の)A−plate、下記式(ろ)を満たす場合はNegative(負の)A−plateと呼ばれる。
【0136】
nx>ny≒nz (い)
ny<nx≒nz (ろ)
【0137】
また、前記C−plateは、光軸がZ軸方向、すなわち厚み方向に存在し、その光学特性条件が下記式(は)を満たす場合はPositive(正の)C−plate、下記式(に)を満たす場合はNegative(負の)C−plateと呼ばれる。
【0138】
nx≒ny<nz (は)
nx≒ny>nz (に)
【0139】
なお、本発明では、nx、nyおよびnzは、光学異方性を有する層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示す。ただし、前記X軸方向とは、前記光学異方性層の面内で屈折率が最大となる方向(面内遅相軸方向)であり、前記Y軸方向とは、前記光学異方性層の面内で前記X軸方向に垂直な方向(面内進相軸方向)であり、前記Z軸方向とは、前記X軸方向および前記Y軸方向に垂直な前記光学異方性層の厚み方向である。
【0140】
そして、前記O−plateでは、光軸方向は面内方向およびZ軸方向(面内方向に垂直な厚み方向)から見て傾いている。光学異方性を付与する手段も特に限定されず、公知の方法を適宜適用すれば良いが、例えば、光学的に等方な透明フィルムを延伸処理等して光学異方性を付与し、前記支持体(透明基材)とすることができる。
【0141】
透明支持体の面内のレターデーションReは、20〜150nmであることが好ましく、30〜130nmであることがさらに好ましく、40〜110nmであることが最も好ましい。さらに、厚さ方向のレターデーションRthは、100〜300nmであることが好ましく、120〜280nmであることがさらに好ましく、140nm〜260nmであることが最も好ましい。
【0142】
ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及び環状ポリオレフィンが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースエーテルアセテートがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。
セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートによる支持体作製方法は特開2005−165650号公報に記載の方法を、セルロースエーテルアセテートを用いる支持体作製方法は特開2005−283997号公報に記載の方法を用いることが好ましい。
環状ポリオレフィンとしては、特公平2−9619号公報記載のテトラシクロドデセン類の開環重合体又はテトラシクロドデセン類とノルボルネン類の開環共重合体を水素添加反応させて得られた重合体を構成成分とするポリマー、商品名としてはアートン(JSR製)や、ゼオネックス、ゼオノア(日本ゼオン製)のシリーズから使用することができる。
【0143】
ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
透明支持体表面は一般式(I)で表されるピリジニウム化合物(配向膜側垂直配向剤)が支持体側に移動することができるように親水化されていることが好ましい。透明支持体表面を親水化するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施することが好ましい。鹸化処理をすることがより好ましい。
鹸化処理は、特開2003−313326号公報、特開2004−354962号公報、特開2005−62799号公報、特開2005−115341号公報等に記載の方法を用いることが好ましい。
【0144】
親水化処理後の支持体表面は、以下の方法で測定したA値(ESCAで測定した炭素チャート上の290eVと288eVのピーク比)が0.20から0.50であることが好ましい。0.20から0.45がより好ましく、0.20から0.32がさらに好ましい。A値が0.50より大きい場合は「配向膜側垂直配向剤」が十分に親水化表面側に移動せず、光学異方性層が望みの光学特性を得られないことがある。
【0145】
ポリマーフィルムを幅方向で9点サンプリングを行い、光電子分光スペクトロメーター{(株)島津製作所製、“ESCA750”型}を用いて、鹸化処理フィルム表面の炭素原子スペクトルを測定する。X軸に結合エネルギー(eV)、Y軸に強度(CPS)をプロットする場合、288eV付近にあるピークがC−O結合に由来するピークであり、290eVにあるピークがC=O結合に由来するピークである。C=O及びC−Oのピークは測定環境によりX軸上を移動することがある。しかし、親水化が十分になされた表面ではピークそのものがなくなってしまうため、そのような場合を想定して便宜上C=OのピークはX軸上を移動しないとし、290eVでの(シグナル−ベース)差をC=Oの強度とし、A=[peak C=O]/[peak C−O]すなわち炭素チャート上の290eVと288eVのピーク比を計算する。
【0146】
透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止するために、平均粒径が10〜100nm程度の無機粒子を固形分質量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
【0147】
[配向膜]
本発明では、透明支持体の親水化された面上に、分子中にエチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマーと親水性ポリマーとを含む配向膜を形成する。
【0148】
(配向膜に含まれるモノマーまたはオリゴマー)
配向膜に含まれるモノマーまたはオリゴマーは、配向膜と光学異方性層、支持体との密着性を付与するために使用される。本発明に用いるモノマーまたはオリゴマーは、配向膜側垂直配向剤の効果を邪魔しないものであることが好ましい。
【0149】
エチレン性不飽和結合を分子内に複数含むモノマー、オリゴマーの具体例としては、例えば、特開2004−206102公報の段落番号[0044]に記載されている、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジ又はポリエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0150】
(配向膜に含まれる親水性ポリマー)
配向膜に含まれるポリマーは、配向膜側垂直配向剤の効果が得られる親水性ポリマーを用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開2004−206102公報の段落番号[0025]に記載の水溶性多糖類〔水溶性のセルロース(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩等)、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、プルラン、キトサン、シクロデキストリン〕や、鹸化度が80%以上であるポリビニルアルコール、ゼラチン、オヴォアルブミン、鮭や鱈の精子、子牛の胸腺から得られるDNAを挙げることができる。
水溶性エーテル化多糖類(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン等)又はポリビニルアルコールが好ましい。
【0151】
(配向膜の硬化に使用する光重合開始剤)
本発明に使用する配向膜は、紫外線や電子線、及び熱重合などにより液晶組成物を塗布する前に硬膜することが好ましい。液晶組成物を塗布硬膜する際に、同時に配向膜を硬膜しても良い。液晶組成物を塗布する際に、配向膜中に存在するモノマーまたはオリゴマーが、液晶組成物の溶媒により配向膜から抽出される可能性があるため、液晶組成物を塗布する前に配向膜を硬膜することが好ましい。配向膜を硬膜するには配向膜に光重合開始剤を添加し重合することが好ましい。具体的には、特開2004−206102公報[0046]に記載の化合物〔イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア1800、イルガキュア1850(商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ製)〕や、WSトリアジン(三和ケミカル製)、が挙げられる。
【0152】
前記配向膜の形成には、バーコーティング法及びダイコーティング法が好ましく用いられ、特に、スライドコーター又はスロットダイコーターを利用した塗布方法が好ましい。例えば、特開2004−290775号公報、特開2004−290776号公報、特開2004−358296号公報、特開2005−13989号公報等に記載の塗布方法を用いることができる。
【0153】
本発明の光学フィルムは、前述したように「配向膜側垂直配向剤」(更には「空気界面側垂直配向剤」)を含む光学異方性層を、親水化した支持体面上に置かれた配向膜上に存在させることにより光学異方性層の液晶性化合物を配向するため、光学異方性層側の配向膜表面を必ずしもラビング処理する必要がなく、また液晶性層を配向するための処理をした支持体を液晶性層に接触(貼合)する必要がない。よって、本発明の光学フィルムは、ラビング工程や接触(貼合)工程を含まずにすむため、低コストで生産できる可能性や工程起因の欠陥を少なくできる可能性がある。
【0154】
[偏光板]
本発明の偏光板は、本発明の光学異方性層を有する光学フィルム(「光学補償フィルム」という場合がある)と偏光膜とを含む。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の吸収軸は、フィルムの延伸方向に相当する。従って、縦方向(搬送方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して平行に吸収軸を有し、横方向(搬送方向と垂直方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して垂直に吸収軸を有す。
【0155】
本発明の偏光板の好ましい製造方法は、偏光膜と光学補償フィルムとをそれぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含む。該長尺の偏光板は用いられる液晶表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。
【0156】
偏光膜は一般に保護膜を有する。本発明において、光学異方性層を透明支持体上に形成した場合、該透明支持体を保護膜として機能させることができる。その支持体とは別に偏光膜の保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0157】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学フィルムを少なくとも含む。光学フィルムは、単独の部材として液晶表示装置に組み込まれてもよい。また、光学補償フィルムの光学異方性層や偏光板の一構成層等として、液晶表示装置に組み込まれていてもよい。本発明の液晶表示装置は、反射型、半透過型、透過型液晶表示装置等のいずれであってもよい。液晶表示装置は一般的に、偏光板、液晶セル、及び必要に応じて位相差板、反射層、光拡散層、バックライト、フロントライト、光制御フィルム、導光板、プリズムシート、カラーフィルター等の部材から構成されるが、本発明においては本発明の光学フィルムを使用することを必須とする点を除いて特に制限は無い。また本発明の光学フィルムの使用位置は特に制限はなく、また、1カ所でも複数カ所でもよい。液晶セルとしては特に制限されず、電極を備える一対の透明基板で液晶層を狭持したもの等の一般的な液晶セルが使用できる。液晶セルを構成する前記透明基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有していている透明基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた透明基板等がいずれも使用できる。また、液晶セルの電極は、公知のものが使用できる。通常、液晶層が接する透明基板の面上に設けることができ、配向膜を有する基板を使用する場合は、基板と配向膜との間に設けることができる。前記液晶層を形成する液晶性を示す材料としては、特に制限されず、各種の液晶セルを構成し得る通常の各種低分子液晶性化合物、高分子液晶性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。また、これらに液晶性を損なわない範囲で色素やカイラル剤、非液晶性化合物等を添加することもできる。
【0158】
前記液晶セルは、前記電極基板及び液晶層の他に、後述する各種の方式の液晶セルとするのに必要な各種の構成要素を備えていても良い。前記液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、STN(SuperTwisted Nematic)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)方式、ハーフトーングレイスケール方式、ドメイン分割方式、あるいは強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等の各種の方式が挙げられる。また、液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、並びにTFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であっても良い。カラーフィルターを使用しないフィールドシーケンシャル方式であってもよい。
【0159】
本発明における偏光板は、反射型、半透過型、及び透過型液晶表示装置に好ましく用いられる。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル及び偏光板を、この順に積層した構成を有する。位相差板は、反射板と偏光膜との間(反射板と液晶セルとの間又は液晶セルと偏光膜との間)に配置される。反射板は、液晶セルと基板を共有していてもよい。半透過反射型液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルより観察者側に配置された偏光板と、前記偏光板と前記液晶セルの間に配置される少なくとも1枚の位相差板と、観察者から見て前記液晶セルよりも後方に設置された半透過反射層を少なくとも備え、さらに観察者から見て前記半透過反射層よりも後方に少なくとも1枚の位相差板と偏光板とを有す。このタイプの液晶表示装置では、バックライトを設置することで反射モードと透過モード両方の使用が可能となる。
【0160】
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【実施例】
【0161】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0162】
[実施例1](セルロースアセテートフィルムの製膜)
(1)セルロースアセテート
特開2002−338601号公報の段落番号[0081]及び[0090]から[0091]の記載にしたがって、置換度2.81のセルロースアセテートを調製した。
【0163】
(2)溶解
上記セルロースアセテート100質量部に対し、可塑剤(TPP:トリフェニルホスフェート7.8質量部、BDP:ビフェニルジフェニルホスフェート3.9質量部)、下記レターデーション発現剤(1)6.4質量部、を混合溶剤ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に綿の質量濃度が15質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時にセルロースアセテート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部、下記染料(1)0.0009質量部を投入し、加熱しながら攪拌させた。
【0164】
【化31】

【0165】
【化32】

【0166】
(3)流延
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が25から35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃(Tg:142℃)の範囲の条件で、剥ぎ取りからテンターまでに区間で3%の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて32%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に0〜10%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアセテートフィルムCF−1を製膜した。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。作製したセルロースアセテートフィルムCF−1について、25℃60%RHで波長590nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定したところ、それぞれ55nmおよび200nmであった。フィルムの平均屈折率を1.48としてRth(λ)を算出した。
【0167】
(鹸化処理フィルムKF−1の作製)
上記で作製したセルロースアセテートフィルムCF−1を60℃に加熱した誘電式加熱ロールを通過させ、40℃まで昇温した後に、40℃に保温した下記アルカリ鹸化溶液をロッドコーターを用いて17mL/m2塗布した。110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に7秒滞留させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を1.4mL/m2塗布し、アルカリを洗い落とした。この時、フィルム温度は40〜45℃に維持し、純水塗布後の塗膜のKOH濃度は0.6規定となった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを4回繰り返し、アルカリを洗い落とした後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フィルムKF−1を作製した。鹸化処理したフィルム表面のESCAで測定したC=O/C−Oの値は、0.20であった。
【0168】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ鹸化溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
1633O(CH2CH2O)10H(界面活性剤) 1.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0169】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、作製した鹸化処理フィルムKF−1の光学特性を測定した。波長590nmで測定したReは55nmであり、Rthは200nmであった。
【0170】
(配向膜付与)
上記で作製した鹸化処理フィルムKF−1のアルカリ鹸化した面上に下記配向膜塗布液Aを下記条件で塗布速度20m/分で連続塗布し、配向膜を付与した透明支持体を支持体幅1340mmで500m得た。
・24mL/m2塗布し、100℃で2分間乾燥する。
・室温で空冷する。
・600mJの紫外線(極大波長:370〜390nm)を照射する。
【0171】
(配向膜実施例)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗付液A組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヒドロキシエチルセルロース
(HECダイセルSP200、ダイセル化学工業製) 2.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(SR−9035、日本化薬製) 0.1質量部
重合開始剤
(イルガキュア2959、チバ・スペシャリティケミカルズ製) 0.01質量部
水 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0172】
下記の組成の棒状液晶性化合物を含む塗布液S1を、上記で作製した配向膜上に#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、光学異方性層を形成した。続いて、後述する偏光板加工のための浸水化処理として、55℃の1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に作製したフィルムを2分間浸漬した後、水に浸漬し十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、35℃の5mmol/L硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。このようにして、光学異方性層が積層された実施例1の光学補償フィルムを作製した。
【0173】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
棒状液晶性化合物を含む塗布液(S1)の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部
下記のピリジニム塩 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0174】
【化33】

【0175】
【化34】

【0176】
【化35】

【0177】
[実施例2から5]
配向膜として、配向膜塗布液Aの代わりに、親水性ポリマー、モノマー、重合開始剤、水、メタノールを表1記載の組成で含有する塗布液を作製し、塗布乾燥した他は、実施例1の方法で、実施例2〜5の光学補償フィルムを作製した。
【0178】
[比較例1]
配向膜塗布液Aの代わりに、特開平9−152509号公報の実施例1に記載のポリマー2.0質量部、水72.0質量部、メタノール8.0質量部ので含有する塗布液を作製し、塗布乾燥した他は、実施例1の方法で、実施例2〜5の光学補償フィルムを作製した。
【0179】
[比較例2から4]
実施例1の配向膜塗布液Aからモノマー及び重合開始剤を抜いたほかは、実施例1同様に塗布し比較例2の光学フィルムを得た。また、実施例1の透明支持体を鹸化しない場合、及び透明支持体を鹸化する温度を25℃に保つほかは実施例1と同様に塗布し、比較例3及び4の光学フィルムを得た。
【0180】
(評価)
〈配向〉
液晶性層の配向は、クロスニコルに配置された2枚の偏光板の間に、光学フィルムを置き、確認した。垂直配向している試料は、偏光板の面に対し平行に置いた場合は暗く、偏光板の面に対し傾けた場合はやや明るくなることが分かった。配向していない試料は、偏光板の間に置いた場合、光が乱反射し曇って観察された。
〈密着〉
液晶性層の密着性は、液晶性層上に粘着テープ(No31HR、日東電工(株)製)を25mm四方に貼り、剥がすことにより確認した。密着あるものは、テープを剥がした後をクロスニコルに配置した偏光板の間に試料を置くと該当位置が剥がれていないことが分かる。密着ないものは、当該位置が剥がれていることがわかる。
実施例1〜7、比較例1〜3の光学フィルムについての上記評価結果を、他の項目とともに、表1にまとめて示した。
【0181】
【表1】

【0182】
実施例1から5の光学フィルムは液晶性層が垂直配向し、また密着性があるものであった。一方、比較例1から4の光学フィルムは密着性がなかった。
【0183】
[比較例5]
配向膜塗布液Aの代わりに、塗布液Aよりヒドロキシエチルセルロースを除いた塗布液を作製し、塗布した。これに実施例1の棒状液晶化合物を含む塗布液(S1)を塗布し、比較例5の光学フィルムを作製した。この液晶性層は垂直配向していないものであった。
【0184】
[比較例6]
棒状液晶化合物を含む塗布液(S1)からピリジニウム塩を抜いた塗布液(S2)を用いたほかは、実施例1と同様に塗布を行い、比較例6の光学フィルムを作製した。この液晶性層は垂直配向していないものであった。
【0185】
[比較例7]
実施例1の配向膜塗布液に単官能モノマーのヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)をエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートの代わりに添加するほかは実施例1同様に塗布し比較例7の光学フィルムを得た。この光学フィルムは密着性がないものであった。
【0186】
[比較例8]
実施例1の配向膜を塗布した透明支持体を紫外線照射しないほかは実施例1と同様にして比較例8の光学フィルムを得た。この光学フィルムは密着性が不十分なものであった。
【0187】
[参考実施例](ラビング処理あり)
実施例1で作製した配向膜を塗布した透明支持体の配向膜表面を、1本のラビングロール、周速200m/分、(ラビング布YA−19−RE、吉川化工(株)製)、搬送速度20m/分でラビング処理し、連続して実施例1の塗布液(S1)を塗布、熟成、硬化し、塗布巾1300mm、塗布長さ500mのフィルムを得た。
このフィルムをクロスニコル条件で光漏れ欠陥を検査したところ、6m/個の割合で欠陥が観察された。同様の条件で実施例1のフィルムを検査したところ、80m/個の割合で欠陥が観察された。上記のようにラビング処理をしない本発明によるフィルムは生産性が向上することが分かる。
【0188】
[実施例8](セルロースエーテルアセテートフィルム使用)
特開2005−283997号公報の合成例1に記載のセルロースエーテルアセテート100質量部に対し、可塑剤(TPP:トリフェニルホスフェート7.8質量部、BDP:ビフェニルジフェニルホスフェート3.9質量部)、前記レターデーション発現剤(1)6.4質量部を、混合溶剤ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に綿の質量濃度が15質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時に(セルロースエーテルアセテート100質量部に対して)微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部、前記染料(1)0.0009質量部を投入し、加熱しながら攪拌させた。
【0189】
(流延)
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が25から35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃(Tg:134℃)の範囲の条件で、剥ぎ取りからテンターまでに区間で3%の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて32%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に0〜10%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースエーテルアセテートフィルムCF−2を製膜した。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。作製したセルロースエーテルアセテートフィルムCF−2について、25℃60%RHで波長590nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値は、55nmおよび200nmであった。フィルムの平均屈折率を1.48としてRth(λ)を算出した。
【0190】
上記で作製したセルロースエーテルアセテートフィルムCF−2の透明支持体上に、実施例1で行った鹸化処理、密着層付与、光学異方性層付与を行って、実施例8の光学補償フィルムを作製した。作製したフィルムは、配向性に問題ないものであった。
なお、フィルムCF−2を鹸化処理したフィルム表面のESCAで測定したC=O/C−Oの値は、0.25であった。
【0191】
[実施例9](セルロースアセテートブチレートフィルム使用)
1.セルロースアセテートブチレートフィルムの製膜
(1)セルロースアセテートブチレート
以下のように、特開平10−45803号公報の段落番号[0031]に記載の方法に倣って、セルロースアセテートブチレートを調製した。
セルロース100質量部に酢酸30質量部と酪酸313.8質量部を加え、54℃で30分間混合した。混合物を冷却した後、約−20℃に冷却した無水酢酸15.5質量部、無水酪酸245.6質量部、硫酸3.5質量部を加えてエステル化を行なった。エステル化における最高温度は40℃に調節した。エステル化反応を180分間行なった後、反応停止剤として酢酸95質量部と水32質量部の混合溶液を20分間かけて添加して過剰の無水物を加水分解した。反応液の温度を60℃に保ち、酢酸290質量部と水100質量部を加えた。1時間後、酢酸マグネシウム5.7質量部を含む水溶液を加えて系内の硫酸を中和した。得られたセルロースアセテートブチレートは、アセチル置換度が0.2、ブチリル置換度が2.3(全置換度2.5)であった。
【0192】
(2)ドープ調製
(2)−1 セルロースアセテートブチレート溶液
下記のセルロースアセテートブチレート組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、セルロースアセテートブチレート溶液を得た。
【0193】
(セルロースアセテートブチレート溶液組成)
上記セルロースアセテートブチレート 100.0質量部
トリフェニルホスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
【0194】
(2)−2 マット剤分散液
次に上記で作製したセルロースアシレート溶液を含む、下記のマット剤分散液組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
【0195】
(マット剤分散液組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子
{aerosil R972:日本アエロジル(株)製} 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
【0196】
上記セルロースアセテートブチレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、可塑剤(TPP:トリフェニルホスフェート、BDP:ビフェニルジフェニルホスフェートの2/1(質量部)混合物)を5.8質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープを調製した。
【0197】
(3)流延製膜および評価
上述の製膜用ドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が25から35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が、約Tg−5〜Tg+5℃(Tg:120℃)の範囲の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で幅方向に延伸して、セルロースアセテートブチレートフィルムCF−3(乾燥後膜厚:120μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートブチレートフィルムCF−3について、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)社製)を用いて、25℃60%RHで波長590nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定したところ、それぞれ53nmおよび196nmであった。
【0198】
上記で作製したセルロースアセテートブチレートフィルムCF−3の透明支持体上に、実施例1で行った鹸化処理、密着層付与、光学異方性層付与を行って、実施例9の光学補償フィルムを作製した。作製したフィルムは、配向性に問題ないものであった。
なお、フィルムCF−3を鹸化処理したフィルム表面のESCAで測定したC=O/C−Oの値は、0.22であった。
【0199】
[実施例10](セルロースアセテートプロピオネートフィルム使用)
特開2005−134608号公報の段落番号[0136]から[0163]に記載の方法で、[表2]の光学補償フィルムNo.13のフィルム厚さを90μmにすることで、波長590nmにおけるReが53nm、Rthが198nmであるセルロースアセテートプロピオネートフィルムCF−4を得た。
【0200】
上記で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムCF−4の透明支持体上に、実施例1で行った鹸化処理、密着層付与、光学異方性層付与を行って、実施例10の光学補償フィルムを作製した。作製したフィルムは、配向性に問題ないものであった。
なお、フィルムCF−4を鹸化処理したフィルム表面のESCAで測定したC=O/C−Oの値は、0.21であった。
【0201】
<偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、市販のセルロースアセテートフィルム(富士タックTD80UF、富士写真フイルム株式会社製)に鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光板の片側に貼り付けた。さらに同様にして実施例1および実施例8から10で作製したフィルムCF−1〜CF−4を、液晶性層が偏光膜の反対側となるように偏光板のもう一方の側に貼り付け、偏光板1及び偏光板8から10を作製した。
また、同様に延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、市販のセルロースアセテートフィルム(富士タックTD80UF、富士写真フイルム株式会社製)に鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光板の両側に貼り付け、偏光板Aを作製した。
【0202】
<液晶表示装置の作製>
液晶テレビTH-32LX500(松下電器産業(株)社製)から、液晶セルを取り出し、視認者側及びバックライト側に貼られてあった偏光板及び光学フィルムを剥した。この液晶セルは、電圧無印加状態及び黒表示時では液晶分子はガラス基板間で実質的に平行配向しており、その遅相軸方向は画面に対して水平方向であった。
【0203】
上記の平行配向セルの上下のガラス基板に、上記作製した偏光板を粘着剤を用いて貼り合わせた。このとき、バックライト側の偏光板に偏光板1、8〜10、Aを配置し、視認者側に偏光板Aを配置し、偏光板1、8〜10に含まれる光学異方性層がバックライト側のガラス基板に接するように貼り合わせた。また、バックライト側の偏光板の吸収軸と液晶セルの遅相軸が直交するようにし、上下の偏光板の吸収軸は直交するように配置した。このようにして偏光板を貼り合せた液晶セルを、再度、液晶テレビTH-32LX500に組み込みこんだ。このようにして液晶表示装置1、8〜10、Aを作製した。
【0204】
(作製した液晶表示装置の漏れ光の測定)
このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。測定機は(輝度計BM−5、トプコン社製)を用い、光源輝度と漏れ光輝度の比を透過率とした。本発明の偏光板を使用した液晶表示装置1、8〜10、Aを左斜め60°から観察した。結果を表2に示す。
【0205】
【表2】

【0206】
以上のように本発明の偏光板1、8〜10を用いた液晶表示装置1、8〜10の漏れ光は、比較例の液晶表示装置Aに対し良好なものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面が親水化された透明支持体と、該透明支持体の親水化された面上に置かれた配向膜と、該配向膜上に置かれた光学異方性層とを有する光学フィルムにおいて、該配向膜は分子中にエチレン性不飽和結合を複数有するモノマーあるいはオリゴマーと親水性ポリマーとを含む組成物を硬化してなるものであり、該光学異方性層は下記一般式(I)で表されるピリジニウム化合物を含むことを特徴とする光学フィルム。
【化1】

(式(I)中、L1は2価の連結基を表し、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基である。R1は、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換基で置換された置換アミノ基である。Y1は5員環又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基である。Zは、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基である。また、Xはアニオンである。)
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、水溶性エーテル化多糖類又はポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記透明支持体の配向膜側の表面が、ESCAで測定した場合、炭素チャート上の290eVと288eVのピーク比が0.20から0.50であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学異方性層が、棒状液晶性化合物を含む配向した液晶性層からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記光学異方性層が、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有するフルオロ脂肪族基含有ポリマー、又は下記一般式(III)で表される含フッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光学フィルム。
式(III)
(R0)mo−L0−(W)no
(式(III)中、R0はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、moは1以上の整数を表す。複数個のR0は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L0は(mo+no)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表し、noは1以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記光学異方性層の光学特性が、面内のレターデーションReが0〜10nmであり、厚さ方向のレターデーションRthが−400〜−80nmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記透明支持体がセルロース系ポリマーからなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記セルロース系ポリマーがセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースエーテルアセテートのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記透明支持体の光学特性が、面内のレターデーションReが20〜150nmであり、厚さ方向のレターデーションRthが100〜300nmであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記透明支持体の親水化処理がアルカリ鹸化処理であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記配向膜がラビング処理されていないことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の光学フィルムと偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
【請求項13】
請求項12に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
駆動モードがIPS形式であることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2007−206207(P2007−206207A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22838(P2006−22838)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】