光学フィルム、及びその製造方法
【課題】 液晶表示装置(LCD)などに用いられる光学フィルムのリタデーション及び光学的遅相軸のズレを矯正するための制御の方法であって、優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 光学フィルムの製膜において、リアルタイムの制御でなく、周期変動のパターンを記憶して、そのパターンに従って機器の制御を行なうもので、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフイルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なう。
【解決手段】 光学フィルムの製膜において、リアルタイムの制御でなく、周期変動のパターンを記憶して、そのパターンに従って機器の制御を行なうもので、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフイルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)などに用いられる位相差機能と視野角拡大機能を備えた光学フィルム、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置の基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、液晶表示装置においては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によって液晶表示装置の性能が大きく左右される。
【0003】
光学フィルムの製造方法には、大別して溶液流延製膜法と溶融流延製膜法とがある。前者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法である。膜厚の均一性に優れるなどの点から広く採用されてきたが、溶媒の乾燥のため、設備が大型化するなどの問題点を抱えていた。後者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法であり、溶媒を乾燥する必要がないので設備が比較的コンパクトにできるとの利点があるが、膜厚の均一性に劣るという問題点がある。
【0004】
近年の視野角を広くした液晶表示装置には位相差補正用フィルムを用いることが一般的である。大画面化・高精細化により位相差フィルムに要求される品質は厳しくなっており、光学物性は非常に小さな範囲に精密に制御することが要求されている。
【0005】
とりわけ、面内位相差の大きい位相差フィルムでは、位相差の遅相軸(配向軸)の方向(配向角)に対する要求が厳しくフィルム内全域にわたって精度±1°以下、望ましくは±0.3〜0.5°程度が要求されている。
【0006】
光学フィルムの生産においては、これら光学物性の変動が可能な限り小さくなるように努力するが、原材料の変動や、生産設備の幅手方向・長手方向の微小な不均一性、設備の経時劣化などにより、フィルムの光学物性の変動は避けられない。
【0007】
例えば、フィルム搬送ロールのパスに対する直角度の不均一性(長手方向ロール芯ズレ)、加熱・乾燥風の幅手方向の不均一性といった、生産設備の不均一性があると、フィルムに光学特性の幅手方向の不均一性が生じる原因となる。
【0008】
できあがった光学フィルムの幅手方向・長手方向の物性変動を測定し、その結果より光学物性の不均一性の原因となった生産設備の不均一性を修正している。
【0009】
こうして、生産設備の一定の不均一性は調整により解消できるが、それでも生産ラインには周期的な変動もあり、周期変動は設備の調整だけではゼロにすることはできない。
【0010】
周期変動の原因としては、種々あるが、搬送張力や空調温度といった機械制御のハンチングによるもの以外にも、搬送・駆動ロールの偏芯、製膜を伴う場合はキャスティングドラム/ベルト等の無限支持体の周長や、延伸テンタを用いる場合のテンタのクリップ周長等、周期構造を持つ設備に起因するものがある。
【0011】
これらの変動は可能な限り小さな値となるように調整されるが、周期変動要因をゼロにすることは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、製膜中のオンラインでフィルム光学測定を行なう場合、最終製品の品質保証の意味で巻取り直前で測定することが多いが、その場合、測定位置と制御対象の搬送・延伸部との距離が長くなりがちで、その距離が光学物性の変動周期に対して長い場合には、時間差を考慮する必要があり、リアルタイムの制御が困難か、または不可能であるという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、光学フィルムの製造方法において、フィルムのリタデーション及び光学的遅相軸のズレを矯正するための制御の方法であって、光学フィルムの製膜におけるリアルタイムの制御でなく、周期変動のパターンを記憶して、そのパターンにしたがって機器の制御を行なうことにより、優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルム、及びその製造方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、光学フィルムの製膜ラインにおいて、オンラインでフィルムの光学物性を測定し、その結果をもとに目標値とのズレを算出し、搬送・延伸条件等を常時修正し変動を許容範囲内に制御することが望ましいが、実際の物性の長手方向変動は、前述の種々の周期変動要因の合成となり合成された変動も周期的に変化するため、複数周期の変動を観察し、適切な周期を決定し、その1周期内の変動のパターンを記憶し、該パターンを制御入力として使用可能であることを見出した。このような制御では、リアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になり、これによってフィルムの略全域にわたってリタデーション及び配向角が均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうことを特徴としている。
【0016】
つぎに、請求項2の発明は、測定するフィルム長手方向の光学物性が、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角のうちの少なくともいずれか1つであることを特徴としている。
【0017】
また、請求項3の発明は、上記請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項4の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの延伸率であることを特徴としている。
【0019】
また、請求項5の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差であることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、上記請求項5記載の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段を左右独立に速度制御することにより、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうことを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差であることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明は、上記請求項7記載の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうことを特徴としている。
【0023】
請求項9の発明は、上記請求項8記載の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持開始位置(クリップクローザー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴としている。
【0024】
請求項10の発明は、上記請求項8記載の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持終了位置(クリップオープナー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴としている。
【0025】
請求項11の発明は、上記請求項8記載の光学フィルムの製造方法において、テンターの連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させることを特徴としている。
【0026】
請求項12の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置されたテンター前の搬送張力であることを特徴としている。
【0027】
請求項13の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールであることを特徴としている。
【0028】
請求項14の発明は、上記請求項13記載の光学フィルムの製造方法において、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整することを特徴としている。 請求項15の位相差フィルムの発明は、請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造した光学フィルムよりなるものであることを特徴としている。
【0029】
請求項16の光学フィルムの発明は、請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造されたものでありかつフィルムがセルロースエステルフィルムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうもので、本発明によれば、光学フィルムの製膜ラインのリアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になり、これによってフィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
本発明は、光学フィルムの製膜ラインにおいて、フィルムのリタデーション及び光学的遅相軸のズレを矯正するための制御の方法であるが、製膜ラインのリアルタイムの制御でなく、周期変動のパターンを記憶して、そのパターンにしたがって機器の制御を行なうものである。
【0033】
すなわち、本発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうものである。
【0034】
従って、本発明によれば、光学フィルムの製膜ラインのリアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になる。
【0035】
上記において、一般に、フィルムの光学物性の目標値とは、フィルム全域(長手方向・幅手方向とも)で望まれる値の目標値という意味である。
【0036】
というのは、フィルムの全域において光学物性等が一定であれば良いが、実際には多少の変動があり、この変動の最大/最少の値がある一定の目標値内(例えば、10±1)の範囲であるとき、フィルム製品が良品となる。
【0037】
また、上記において、フィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレとは、光学物性値が長手方向に完全に均一ではないので、長手方向に多少の変動を持つ物性値があり、その変動するそれぞれの値と目標値の差、という意味である。
【0038】
本発明による光学フィルムの製造方法においては、オンラインの光学物性測定器(とくに位相差計)では、光学フィルムに必要な面内/厚みのリタデーション(Ro/Rt)と配向角を測定する。
【0039】
ここで、上記物性の長手方向変動の原因として考えられることとしては製膜条件すべてが考えられるが、本発明で課題としている周期的な変動要因としては、周期的な構造を持つ設備(ポンプ、無限支持体、ロールそのもの、規則的な配置のロール=フィルムパス、テンター等)の偏芯や回転ムラなど、また温度/張力/搬送速度などの制御の際のハンチング、さらには昼夜の外気温の変動なども考えられる。
【0040】
これらの変動を観察し、周期変動に対してそれをちょうど打ち消すような周期的なパターンによる制御を実施する。この場合、変動の原因と制御する対象が異なっていてもかまわない。
【0041】
光学フィルムの製造において、例えば15mの周期的な変動があったとき、その周期を持つ設備を探し、その設備に対して制御してもよいし、その他の設備を制御して、15mの変動を抑制することもできる。
【0042】
なお、本発明においては、制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の方法において、制御を行なう対象は、例えば製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差である。
【0044】
同様に、本発明において、制御を行なう対象は、例えば製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差である。
【0045】
さらに、本発明において、制御を行なう対象は、例えば製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールである。
【0046】
その他、制御の方法としては、延伸率・延伸温度・張力・ドープ流量といった一般的な製膜条件でもよい。
【0047】
なお、本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法、及び溶融流延製膜法のいずれにも適用されるものであるが、これらの方法以外に、すでに出来上がったフィルムを繰り出して、延伸等で光学機能を付与する場合にも、適用されるものである。
【0048】
本発明の光学フィルムの製造方法において、製膜ラインの周期変動の原因としては、種々あるが、搬送張力や空調温度といった機械制御のハンチングによるもの以外にも、搬送・駆動ロールの偏芯、製膜を伴う場合は、キャスティングドラム及びベルト等の無限支持体の周長や、延伸テンタを用いる場合のテンタのクリップ周長等、周期構造を持つ設備に起因するものがある。
【0049】
また、周期変動のパターンは、例えば光学物性の変動をスペクトル解析し、変動の周期と振幅を決定することもできるし、オペレータが目視で波形を確認したうえで周期を決定してもよい。
【0050】
また、張力変動や温度変動等といった各種の周期変動要因を直接測定し、それらの値に基づいて決定してもよい。
【0051】
本発明において、周期の決定に際しては、振幅が最大の変動の周期を基本にし、1つあるいは複数の正弦波の合成波形を制御出力に用いても良い。
【0052】
また、変動が最小になるように、波形の位相調整を使用してもよい。オンラインの測定器で得られた周期変動波形のうち、最大の振幅をもつ周期の正弦波を制御出力にしても良い。
【0053】
本発明において、制御は、直前の1周期分の測定値を基準にした比例制御でもよいし、複数周期分を基準にして、時間変化分を考慮した積分/微分制御を併用してもよい。
【0054】
なお、制御が成功し、変動が小さくなると、制御前とは異なる周期の変動が支配的になることもあるため、基本制御周期はときおり変更するのが望ましい。
【0055】
つぎに、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法について説明する。
【0056】
まず、対象となるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが好ましく用いられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましい。
【0057】
セルローエステルは、綿花リンターから合成されたセルローエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを、単独あるいは混合して用いることができる。
【0058】
セルロースエステルの具体的な製造方法については、例えば特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0059】
セルロースエステルの数平均分子量は、低すぎると強度が低くなり、高すぎると溶液の粘度が高くなりすぎる場合があるので、70000〜300000が好ましく、さらに80000〜200000が好ましい。
【0060】
エンドレスベルトやドラムよりなる回転駆動金属製支持体からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く、好ましい。また、剥離性の効果が顕著になるためには、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは85重量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
【0061】
特に、総アシル基置換度が2.85未満のセルロースエステルフィルムで、寸法変化を低減できるため好ましく、さらに総アシル基置換度が2.75未満のセルロースエステルフィルムであることが好ましく、特に2.70未満のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。
【0062】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムには、液晶表示装置として屋外に置かれた場合の劣化防止の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることができる。例えば波長380nmにおける透過率が20%であることが好ましく、さらに、好ましくは10%未満であり、特に好ましくは5%未満である。
【0063】
紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、ドリアジン系化合物、あるいは特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤などを挙げることができるが、本発明は、これらに限定されない。
【0064】
以下、紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明は、これらに限定されない。
【0065】
UV−1:2(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2(2′−ヒドロキシ−3′tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール
UV−5:2(2′−ヒドロキシ−3′(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5´メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール
UV−7:2(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−クロルベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171:チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと混合物(TINUVIN109:チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤として透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を好ましく用いることができ、中でも、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。紫外線吸収剤は、製膜工程でブリードアウトしたり、揮発しないものが好ましい。
【0066】
本発明において、紫外線吸収剤は、セルロースエステル成分に対し、0.1〜10重量%添加されることが好ましく、特に、0.5〜5重量%添加されることが好ましい。
【0067】
また、これら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
【0068】
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソシランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0069】
また、セルロースエステルフィルムには、必要に応じて、マット剤として二酸化ケイ素のような微粒子などを加えても支障はない。二酸化ケイ素のような微粒子は、有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため、好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなとが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果が大きく、平均粒径の小さい方が透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒状の平均粒径は、5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。
【0070】
用いられる二酸化ケイ素の微粒子としては、アエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくは、AEROSIL−200、200V、R972、R972V、R974、R202、R812などが挙げられる。
【0071】
上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%、好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%添加して使用される。
【0072】
セルロースエステルの溶解に用いる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率を上げる点で好ましく、良溶剤が多いほど、セルロースエステルの溶解性および微小な不溶解物によるフィルム異物を少なくする点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98重量%であり、貧溶剤が30〜2重量%である。
【0073】
ここで、用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか、または溶解しないものを貧溶剤と定義している。
【0074】
良溶剤としては、特に限定されないが、例えばセルローストリアセテートの場合は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、セルロースアセテートプロピオネートの場合はメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。また、貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
【0075】
溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法は、例えば米国特許2,492,978号、同2,739,070号、同2,739,069号、同2,492,977号、同2,336,310号、同2,367,603号、同2,607,704号、英国特許64,071号、同735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号公報等に記載の方法を、参考にすることができる。
【0076】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法においては、機械的強度や寸法安定性等の点から、セルロースエステルフィルムに可塑剤を添加することが好ましい。その添加量としては、例えばセルロースエステルフィルムあるいはセルロースをアセチル基および炭素原子数3〜4のアシル基でアシル化したセルロースエステルフィルムに対する重量%で、3〜30重量%にすることが好ましく、10〜30重量%が、より好ましく、15〜25重量%が特に好ましい。
【0077】
用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。
【0078】
ここで、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を好ましく用いることができる。またフタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等を好ましく用いることができる。トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等を好ましく用いることができる。ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等を好ましく用いることができる。グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を好ましく用いることができる。クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。ポリエステル系可塑剤では、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることができる。なお、グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロース樹脂との相溶性の点から好ましい。
【0079】
特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、さらに好ましくは1〜133Paの可塑剤である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0080】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法においては、セルロースエステル溶液であるドープの固形分濃度は、通常10〜40重量%程度であり、流延工程における流延時のドープ粘度は1〜200ポイズの範囲で調製される。
【0081】
ここで、まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
【0082】
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
【0083】
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるので、好ましい。
【0084】
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
【0085】
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0086】
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたセルロースエステルのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
【0087】
セルロースエステル原料と溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解装置で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
【0088】
セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。光学フィルムとしての品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
【0089】
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
【0090】
このため、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
【0091】
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく、好ましい。
【0092】
セルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。
【0093】
好ましい濾過温度の範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0094】
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下がより好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
【0095】
原料のセルロースに、アシル基の未置換もしくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると、異物故障(以下、輝点または輝点異物ということがある)が発生することがある。輝点は、直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、光を片側から照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く、何も見えないが、異物があると、そこから光が漏れて、スポット状に光って見える現象である。輝点の直径が大きいほど、液晶表示装置とした場合に、実害が大きく、輝点の直径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下が、より好ましく、さらに8μm以下が好ましい。なお、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。
【0096】
輝点異物は、上記の直径のものが400個/cm2以下であれば、実用上問題ないが、300個/cm2以下が好ましく、200個/cm2以下が、より好ましい。このような輝点異物の発生数、及び大きさを減少させるために、細かい異物を充分に濾過する必要がある。
【0097】
なお、例えば特開2000−137115号公報に記載されるような、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品を、ドープにある割合で再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は、輝点異物を低減することができるため、好ましく用いることができる。
【0098】
つぎに、セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムを製造するには、まず、セルロースエステルを、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の可塑剤や紫外線吸収剤を添加してセルロースエステル溶液(ドープ)を調製する。
【0099】
製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
【0100】
また、ドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、流延ダイから支持体上にほぼ均一な膜厚になるよう流延し、流延膜中の残留溶媒量が対固形分重量200%以上では、流延膜温度が溶剤沸点以下に、また200%以下〜剥離までは、溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、乾燥風により流延膜(ウェブ)を乾燥させる。
【0101】
支持体上では、ウェブが支持体から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、50〜120%が、より好ましい。
【0102】
支持体からウェブを剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブは、支持体からの剥離直後に、支持体密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
【0103】
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
【0104】
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
【0105】
剥離後のウェブは、例えば一次乾燥装置に導入する。一次乾燥装置内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブが蛇行せられ、その間にウェブは乾燥装置の天井より吹き込まれ、乾燥装置の底の部分より排出される温風によって乾燥される。
【0106】
ついで、得られたフィルム(シート)を一軸方向に延伸する。延伸により分子が配向される。延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、延伸方向を幅手方向とすることにより、偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することにより、熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
【0107】
特に、支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
【0108】
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−40℃〜Tg+50℃、好ましくはTg−40℃〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると、所望のリタデーションが得られない場合があり、逆に大きすぎると、破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、また高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
【0109】
なおここで、フィルムのガラス転移温度(Tg)とは、フィルムの主材である樹脂、添加剤、及び溶剤を含むフィルム組成物のガラス転移温度(Tg)を意味する。
【0110】
ガラス転移温度(Tg)の測定は、一般に知られる、熱機械分析装置(TMA)、示差走査熱量計(DSC)、示差熱分析装置(DTA)、動的粘弾性測定装置(DMA)などを用いて測定可能である。
【0111】
つぎに、テンター延伸装置について、図面を参照して説明する。
【0112】
図1は、テンター延伸装置(10)の一般的な実施形態を模式的に示すものである。同図に示すように、テンター(10)は、ハウジング(図示略)の左右両側部に、前後スプロケットに巻き掛けられた無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(1a)(1b)が設けられ、これらの回転駆動装置(1a)(1b)に多数のクリップ(2a)(2b)が1列状態に具備されている。
【0113】
ここで、クリップ(2a)(2b)は、多数のものがおのおの連結されて、最終的に輪状のチェーン(1a)(1b)になり、それが案内レール(図示略)上を(乗り物のモノレールのように)走行するものである。そして、これらのチェーン(1a)(1b)は一部に圧力をかけて弛まないように「張って」おり、レールはチェーン(1a)(1b)の長さにならって変化するような構造になっている。
【0114】
このチェーン(1a)(1b)に圧力をかけて張る設備を『テンショナー』(5)(6)(図4、図5及び図8参照)と称し、左右でチェーン(1a)(1b)の張り状態を変えて、輪状チェーン(1a)(1b)の全体の長さを変更するものである。
【0115】
そして、テンター(10)のクリップ(2a)(2b)によってフィルム(F)の左右両側縁部が保持され、この状態でテンター(10)の入口へと導入される。テンター(10)内において、フィルム(F)は、これの左右両側縁部がテンター左右両側のクリップ(2a)(2b)により挟まれて延伸させられながら一緒に搬送されると同時に、乾燥される。
【0116】
その後、フィルム(F)は乾燥装置(図示略)内に送り込まれ、乾燥装置のハウジング内に千鳥状に配置されたすべての搬送ロールを経由して搬送され、その搬送中に乾燥風吹き込み口から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられることにより、セルロースエステルフィルムが得られ、このフィルムが巻取ロール(図示略)に巻き取られる。
【0117】
なお、フィルム(F)の搬送速度は、通常、2〜200m/分、好ましくは10〜100m/分である。
【0118】
光学フィルムの製造方法は、連続する樹脂フィルム(F)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルム(F)を搬送して延伸を行なう延伸装置(10)を用いて光学フィルムを製造する方法であって、該延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によってフィルム(F)の把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御して、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
【0119】
ここで、配向角とは、熱可塑性樹脂フィルムの面内における遅相軸の方向(製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて行なう。配向角の測定方法は、フィルム幅手方向に3〜10cm間隔で、例えば9点で測定を行ない、全ての配向角が±1.0°以内になっていることが好ましい。
【0120】
テンター延伸装置(10)で樹脂フィルム(F)の左右両端を把持している部分の長さを左右独立に制御して、フィルム(F)の把持長を左右で異なるものとする手段としては、具体的には、例えば図2に示すようなものがある。
【0121】
図2は、テンター延伸装置(10)の第1実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の把持開始位置を左右で変える、すなわちクリップクローザー(3a)(3b)の設置位置を左右で変えて、把持開始位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター(10)以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向 (TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
【0122】
なお、図示のテンター延伸装置(10)は模式的に記載されているが、通常は、無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(1a)(1b)の1列状態に具備された多数のクリップ(2a)(2b)のうち、フィルム(F)の左右両端部を把持して引っ張るチェーン往路側直線移行部のクリップ(2a)(2b)がフィルム(F)の幅手方向に漸次離れるように、左右のチェーン(1a)(1b)の軌道が設置されており、フィルム(F)の幅手方向の延伸が行なわれるようになされている(以下の図示において、同じ)。
【0123】
つぎに、図3は、テンター延伸装置(10)の第2実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の把持終了位置を左右で変える、すなわちクリップオープナー(4a)(4b)の設置位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたってリタデーション及び配向角が均一である光学フィルムを製造することができる。
【0124】
さらに、光学フィルムの製造方法においては、連続する樹脂フィルム(F)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段(クリップ)(2a)(2b)の移動用無限軌道レール(図示略)の左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、例えば左右のクリップ(2a)(2b)の数が同じで、左右のレール長を変えると、各クリップ(2a)(2b)間の距離が左右でわずかに異なることになる。各クリップ(2a)(2b)間の変化量は微小であるが、テンター(10)全体では数百〜数千のクリップ(2a)(2b)を使用しており、フィルム(F)の左右把持長は実質的に変化することになる。これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
【0125】
なお、テンター装置(10)では、連結されたクリップチェーン(1a)(1b)に張力を与えているが、その張力を左右で変化させることでも、フィルム(F)の把持長が変化する。例えば図4は、テンター延伸装置(10)の第3実施形態を模式的に示すものである。同図において、一方の右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部の途上にテンショナー(5)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させている。
【0126】
また、例えば図5は、テンター延伸装置(10)の第3実施形態の変形例を模式的に示すものである。同図において、一方の右側クリップチェーン(1b)の無端折返し部にテンショナー(6)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)の無端折返し部に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させている。
【0127】
さらに左右のレール長を変える手段としては、図6aと図6bに示すようなものがある。図6aと図6bは、テンター延伸装置(10)の第4実施形態を模式的に示すものである。同図において、クリップ(2a)(2b)がある面内で変える以外にも、右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部を上下方向に曲げることにより、フィルム(F)の把持長を左右で変化させても良い。
【0128】
つぎに、光学フィルムの製造方法においては、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御して、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内となるように延伸を行なうことにより、樹脂フィルム(F)の左右の把持長を変えるだけでなく、クリップ(2a)(2b)の走行速度を左右で変えることで、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正することができる。
【0129】
ここで、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御する手段としては、例えば図7に示すようなものがある。図7は、テンター延伸装置(10)の第5実施形態を模式的に示すもので、左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御する手段として左右独立の駆動モータ(7a)(7b)を使用する。なお従来は、延伸装置の左右把持手段(クリップ)は、同一の駆動モータにより左右等速度に制御されている。
【0130】
このように、樹脂フィルム(F)の左右の把持長を変えるだけでなく、クリップ(2a)(2b)の走行速度を左右で変えることで、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正できる。なお、独立した速度制御には、図7に示すような左右独立のモータ(7a)(7b)を使用したり、一般的には2軸延伸装置(10)として用いられるパンタグラフやスピンドル、あるいはリニアモータのような手段を使用することができる。
【0131】
つぎに、図8は、テンター延伸装置(10)の第6実施形態を模式的に示すものである。同図において、巻取り前の樹脂フィルム(F)の配向角を、配向角測定装置(8)によってオンラインで測定し、その結果をもとに、延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によってフィルム(F)の把持長を左右で独立に制御するか、またはテンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の左右独立に速度制御する駆動モータ(7a)(7b)(図7参照)により左右把持クリップ(2a)(2b)の走行速度を制御するものである。一般に、樹脂フィルム(F)を一定の条件で生産していても、材料や設備の微小な変動により配向角が変動してしまうため、製品巻き取り前に配向角を、配向角測定装置(8)によってオンライン測定し、その結果をフィードバックして、フィルム(F)の把持長または走行速度を変化させることで、長手方向にも均一な樹脂フィルムができる。
【0132】
また、図9は、テンター延伸装置(10)の第7実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の把持開始位置および把持終了位置での左右の把持手段(クリップ)(2a)(2b)の位置をオンラインで検出して、把持手段(クリップ)(2a)(2b)の位相差を求め、その結果をもとに、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によるフィルム(F)の把持長を、同図に示すように、一方の右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部の途上にテンショナー(5)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させるか、または例えば上記図7に示すように、延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の左右独立に速度制御する駆動モータ(7a)(7b)により、左右把持クリップ(2a)(2b)の走行速度を制御する。
【0133】
ここで、使用する左右把持クリップの位置を検出する手段としては、接触式、光電式、レーザ式、超音波式、渦電流式等の変位計、あるいはスイッチセンサや、CCDカメラを用いた画像解析による方法などがあるが、メンテナンス性を考えると、非接触型のセンサが望ましい。センサは左右の把持開始位置および左右の把持終了位置の4箇所に設置することが望ましいが、さらに多数の箇所に設置しても良い。あるいは、把持終了位置付近で同期して回転する左右のスプロケットに駆動されることで、左右の把持クリップの位置が同期していることが明らかな場合には、左右把持開始位置の2箇所のセンサだけで左右把持長を確認することも可能である。
【0134】
こうして、左右のクリップ(2a)(2b)の位置をテンター延伸装置(10)の入口と出口で検出することで、フィルム(F)の左右把持長が確実にわかる。すなわち、テンター把持手段のベアリングの摩耗等による経時的な配向角の変動に速やかに対応できることになる。このデータを元に、所望のフィルム(F)の左右把持長差となるように制御することにより、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正することができるものである。
【0135】
上記の方法で作製した熱可塑性樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸装置の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより、フィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸装置を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。
【0136】
テンターでの把持・延伸は、剥離直後の膜の残留溶媒量が50〜150重量%から巻き取り直前の実質的な残留溶媒量が0重量%の範囲のどこで行なうこともできるが、残留溶媒量が5〜10%の範囲で行なうのが好ましい。
【0137】
テンターをベースの走行方向にいくつかの温度ゾーンに分けることも一般によく行なわれる。延伸する際の温度は所望の物性や平面性が得られるような温度が選択されるが、テンター前後の乾燥ゾーンの温度はまた種々の理由により延伸の際の温度とは異なる温度が選択されることもある。例えば、テンター前の乾燥ゾーンの雰囲気温度がテンター内の温度と異なる場合は、テンター入り口に近いゾーンの温度を、テンター前の乾燥ゾーンの温度とテンター中央部の温度の中間的な温度に設定することが一般に行なわれている。テンター後とテンター内の温度が異なる場合にも同様にテンター出口に近いゾーンの温度をテンター後とテンター内の温度の中間的な温度に設定する。テンター前後の乾燥ゾーンの温度は一般に30〜120℃であり、好ましくは50〜100℃、テンター内延伸部の温度は50〜180℃、好ましくは80〜140℃であり、テンター入り口部あるいは出口部の温度はそれらの中間的な温度から適宜選択される。
【0138】
また、フィルムの延伸倍率もまた所望の物性や平面性が得られるような倍率が選択される。例えばセルロースエステルの場合は、0〜150%、好ましくは0〜50%である。
【0139】
フィルムの延伸のパターン、すなわち把持クリップの軌跡は、温度同様に膜の光学物性や平面性から選択され、様々であるが、把持開始後しばらくは一定幅で、その後延伸され、延伸終了後再び一定幅で保持されるパターンが良く用いられる。テンター出口付近のクリップ把持終了する付近では、把持を開放することによるベース振動の抑制のために幅緩和を行なうことが一般に行なわれる。
【0140】
延伸のパターンはまた延伸速度とも関連するが、延伸速度は一般的には10〜1000(%/min)好ましくは100〜500(%/min)である。この延伸速度はクリップの軌跡が曲線である場合には一定でなく、ベースの走行方向に徐々に変化する。
【0141】
さらに、上記のテンター方式による乾燥後のウェブ(フィルム)は、ついで二次乾燥装置に導入する。二次乾燥装置内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブが蛇行せられ、その間にウェブは、二次乾燥装置の天井より吹き込まれ、かつ二次乾燥装置の底の部分より排出される温風によって乾燥され、セルロースエステルフィルムとして巻取り機に巻き取られる。
【0142】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法において、ウェブを乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で乾燥するのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃が好ましく、80〜130℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0143】
このように、ウェブの乾燥工程においては支持体より剥離したウェブをさらに乾燥し、最終的に、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0144】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
【0145】
なお、搬送乾燥工程を終えたセルロースエステルフィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置により、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボスを形成する加工を行なうのが好ましい。エンボス加工装置としては、例えば特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
【0146】
セルロースエステルフィルムの製造に係わる巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0147】
巻き取り後の光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。
【0148】
本発明による光学フィルムの製造方法は、光学フィルムの製膜ライン中に搬送されるフィルムに、いわゆるねじり力を与えて配向角を制御する方法であり、適切な温度および搬送ロールのロールの軸調整を行なうこと、すなわち、溶液流延製膜法によるセルロースエステルよりなる光学フィルムの製膜において、出来上がりのフィルムの光学的遅相軸の向きに応じて、フィルム中の残留溶媒量が10〜70重量%の範囲で、1本あるいは複数本の搬送ロールのロール軸の設置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整するものである。この場合、フィルムが搬送乾燥される雰囲気温度が30〜140℃の範囲において実施するのが、好ましい。
【0149】
ここで、配向角とは、熱可塑性樹脂フィルムの面内における遅相軸の方向(流延製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて行なう。配向角の測定方法は、フィルム幅手方向に3〜10cm間隔で、例えば5点で測定を行ない、全ての配向角が±1.7°になっていることが好ましく、±1.5°以内がより好ましく、±1.0°以内がさらに好ましい。
【0150】
つぎに、溶融流延製膜法による光学フィルムの製造について、説明する。
【0151】
まず、溶融流延製膜法としては、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法では、ポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却ドラム(支持体)上に押し出す。引き続いて、冷却ドラムによってフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却固化して、冷却ドラムから樹脂フィルムを剥離する。
【0152】
つぎに、光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法によって行なう場合には、対象となる熱可塑性樹脂は、溶融流延製膜法により製膜可能であれば特に限定されない。
【0153】
例えば、ポリカーボネート(ガラス転移温度Tg:約150℃)、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステルなどが挙げられる。中でも、光弾性係数が小さいことから、セルロースエステルや脂環式構造含有ポリマーが好ましい。
【0154】
セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート(ガラス転移温度Tg:約170℃)、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが、得られるフィルムの寸法安定性に優れるので好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として50,000〜300,000、とくに60,000〜200,000であることが、得られるフィルムの機械的強度が強くできるので好ましい。
【0155】
脂環式構造含有ポリマーとは、繰り返し単位中に、脂環式構造を有するポリマーであり、脂環式構造は主鎖、側鎖のいずれにあってもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、熱安定性に優れることからシクロアルカン構造が好ましい。
【0156】
脂環式構造含有ポリマーは、ノルボルネン環構造を有するモノマー、モノ環状オレフィン、環状共役ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニル脂環式炭化水素化合物等を含むモノマーを、メタセシス開環重合や付加重合などの公知の重合方法で重合し、必要に応じて炭素−炭素不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。
【0157】
用いる脂環式構造含有ポリマーは、シクロヘキサン溶液(ポリマーが溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、25,000〜50,000であることが好ましく、30,000〜45,000であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜3.5であることが好ましく、さらに1.5〜3.0であることが好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、80〜200℃であることが好ましい。脂環式構造含有ポリマーの特性を上記の範囲にすることで、良好な耐熱性と成形加工性とを得ることができる。
【0158】
熱可塑性樹脂中には、種々の目的で可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、帯電防止剤、難燃剤、染料及び油剤などの添加剤を含有させることができる。
【0159】
可塑剤としては、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のものを使用することができる。
【0160】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、熱可塑性樹脂に対し、重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
【0161】
光学フィルムの製造方法が、溶融流延製膜法による場合においては、使用し得る紫外線吸収剤としては、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のものを使用することができる。
【0162】
これらの紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、逆に多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
【0163】
フィルムの滑り性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。用いられる微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物のどちらでもよく、例えば、無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。中でもヘイズを小さく抑えることができることから、二酸化珪素が特に好ましく用いられ、光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法にて実施する場合においても、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のマット剤を使用することができる。
【0164】
光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法にて実施する場合、溶融流延製膜法としては、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法は、前述したポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)に冷却ドラム上に押し出し、冷却固化して冷却ドラムから剥離する方法であり、得られるフィルムの厚み精度が優れており、本発明でも好ましく用いることができる。
【0165】
溶融押出しの条件は他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行なうことができる。例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステルを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状(シート状)に流延し、冷却ドラム上で固化させる。供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0166】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行なうことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。ろ過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成をとったり、ろ過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
【0167】
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
【0168】
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0169】
冷却ドラムの温度は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。
【0170】
このような溶融流延製膜法で成形された熱可塑性樹脂シートは、溶液流延製膜法で成形された樹脂シートと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、溶液流延製膜法とは異なる延伸条件が必要になる場合もある。所望の光学物性を得るためには、場合によっては、フィルムの進行方向の延伸とフィルム幅手方向の延伸の両者を同時あるいは逐次に行なうこともある。また、場合によっては、フィルム幅手方向の延伸のみの場合もある。この延伸操作によって分子が配向され、フィルムが必要なリタデーション値に調整される。
【0171】
延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、延伸方向を幅手方向とすることにより、偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することにより、熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
【0172】
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−50℃〜Tg+50℃、好ましくはTg−40℃〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると、所望のリタデーションが得られない場合があり、逆に大きすぎると、破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、また高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
【0173】
上記の方法で作製した熱可塑性樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸装置の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより、フィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸装置を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。
【0174】
延伸後、巻取りまでに平面性矯正、寸法安定性向上等の目的で熱処理ゾーンを設ける場合もある。例えば数十秒〜数十分の間、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−30℃〜Tgの温度になるように保ち、千鳥状配置されたロール間を搬送させるゾーンを設ける場合もある。
【0175】
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることにより、調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0176】
以上のようにして得られた幅手方向に延伸された熱可塑性樹脂フィルムは、延伸により分子が配向されて、一定のリタデーションを持つ。
【0177】
本発明による光学フィルムは、溶液流延製膜法、または溶融流延製膜法のいずれによって製造されても良く、また、これらの方法以外に、すでに出来上がったフィルムを繰り出して、延伸等で光学機能を付与する場合にも、適用される。
【0178】
本発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうもので、本発明によれば、光学フィルムの製膜ラインのリアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になり、これによってフィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造することができる。
【0179】
本発明による光学フィルムの製造方法においては、測定するフィルム長手方向の光学物性が、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角のうちの少なくともいずれか1つである。
【0180】
本発明による光学フィルムの製造方法においては、制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることが好ましい。
【0181】
また、本発明において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの延伸率である。
【0182】
また、本発明において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差である。
【0183】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段を左右独立に速度制御することにより、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
【0184】
また、本発明による光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差である。
【0185】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
【0186】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持開始位置(クリップクローザー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものである。
【0187】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持終了位置(クリップオープナー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものである。
【0188】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターの連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものである。
【0189】
本発明による光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置されたテンター前の搬送張力である。
【0190】
本発明による光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールである。
【0191】
上記の光学フィルムの製造方法において、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整するものである。
【0192】
なお、本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法、及び溶融流延製膜法のいずれにも適用されるものであるが、これらの方法以外に、すでに出来上がったフィルムを繰り出して、延伸等で光学機能を付与する場合にも、適用されるものである。
【0193】
本発明の光学フィルムの製造方法において、製膜ラインの周期変動の原因としては、種々あるが、搬送張力や空調温度といった機械制御のハンチングによるもの以外にも、搬送・駆動ロールの偏芯、製膜を伴う場合は、キャスティングドラム及びベルト等の無限支持体の周長や、延伸テンタを用いる場合のテンタのクリップ周長等、周期構造を持つ設備に起因するものがある。
【0194】
また、周期変動のパターンは、例えば光学物性変動をスペクトル解析し、変動の周期と振幅を決定することもできるし、オペレータが目視で波形を確認したうえで周期を決定してもよい。
【0195】
また、張力変動や温度変動等といった各種の周期変動要因を直接測定し、それらの値に基づいて決定してもよい。
【0196】
本発明において、周期の決定に際しては、振幅が最大の変動の周期を基本にし、1つあるいは複数の正弦波の合成波形を制御出力に用いても良い。
【0197】
また、変動が最小になるように、波形の位相調整を使用してもよい。オンラインの測定器で得られた周期変動波形のうち、最大の振幅をもつ周期の正弦波を制御出力にしても良い。
【0198】
本発明において、制御は、直前の1周期分の測定値を基準にした比例制御でもよいし、複数周期分を基準にして、時間変化分を考慮した積分/微分制御を併用してもよい。
【0199】
なお、制御が成功し、変動が小さくなると、制御前とは異なる周期の変動が支配的になることもあるため、基本制御周期はときおり変更するのが望ましい。
【0200】
本発明による位相差フィルムは、上記の本発明による方法で製造した光学フィルムよりなるものであるから、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
【0201】
また、本発明による光学フィルムは、上記の本発明による方法で製造したものでありかつ樹脂フィルムがセルロースエステルフィルムよりなるものであるから、やはりフィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
【0202】
本発明の方法により製造された光学フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に貼り合わせることにより、楕円偏光板とすることができる。
【0203】
偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、充分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
【0204】
偏光板は、上記偏光フィルムに本発明の光学フィルムを貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムを保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。
【0205】
さらに、長さ方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の光学フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
【0206】
このようにして得られた本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
【実施例】
【0207】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0208】
実施例1
溶液流延製膜法によるセルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造した。
【0209】
(ドープの調製)
まず、セルローストリアセテートプロピオネートのドープを、以下のように調製した。
【0210】
セルローストリアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7、
ガラス転移温度:約85℃)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 40重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
【0211】
上記のように調製したドープを、30℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる30℃の支持体上に流延してウェブ(ドープ膜)を形成し、そして最終的に、ウェブ中の残留溶媒量が80重量%になるまで支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
【0212】
ついで、ウェブを、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、続いてテンターよりなる延伸装置に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、残留溶媒が存在する条件下で、実質的に幅手方向に延伸し、乾燥風を当てて乾燥させた。
【0213】
さらに、ウェブ(フィルム)を、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、巻取り機により巻き取り、最終的に膜厚60μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
【0214】
上記において、まず、特段の光学物性の制御をしない状態で、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、光学物性としての面内方向リタデーション(Ro)を測定したところ、長手方向に面内方向リタデーション(Ro)は一定でなく変動があった。
【0215】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであり、面内方向リタデーション(Ro)は、37mの基本周期にさらに短い周期の波が複数重ね合わされた変動が観察された(図10参照)。
【0216】
そこで、上記37mを最大の振幅を持つ波の1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値のズレ(差)から、周期変動を打ち消すような条件変更パターンとして、テンタ延伸率を変更制御したところ、7周期目以降に周期変動は抑制されて、目標値となった(図11参照)。
【0217】
こうして、長手方向に均一な面内方向リタデーション(Ro)及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【0218】
比較例1
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するために、特段の光学物性の制御をしない状態で製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、光学物性としての面内方向リタデーション(Ro)を測定した。そして、フィルム長手方向の面内方向リタデーション(Ro)の変動の周期は考慮せずに、測定値と目標値とのズレ(差)に比例する量で、リアルタイムでテンタ延伸率の制御を行なったところ、30周期後でも、値はハンチングし、目標値以下にはならなかった(図12参照)。
【0219】
実施例2
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するが、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、フィルム長手方向の配向角(軸ズレ)を測定したところ、長手方向に物性値は一定でなく変動があった。
【0220】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであった(例えば周期39m/振幅0.9の正弦波と、周期16m/振幅1.3の正弦波など)。それらの正弦波のうち最大の周期がテンタクリップ周長とほぼ一致した(ゆえに、この最大周期の正弦波の原因はテンタにあるものと推定される)。また、最大の振幅を持つ波の周期は16mであった。
【0221】
そこで、この周期変動を1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値の差から、周期変動を打ち消すような左右クリップ速度差やテンタ左右把持長の条件変更パターンを作った。
【0222】
このパターン通りに左右クリップ速度差やテンタ左右把持長の条件変更を行なうと、周期変動がより小さくなって周期変動は抑制され、長手方向に均一なリタデーション及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【0223】
実施例3
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するが、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、フィルム長手方向の厚み方向リタデーション(Rt)を測定したところ、長手方向に物性値は一定でなく変動があった。
【0224】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであった。それらの正弦波のうち、厚み方向リタデーション(Rt)の最長の周期がほぼキャスティング無限支持体長とほぼ一致した(ゆえに、この最長周期の正弦波の原因は、キャスティング無限支持体長にあるものと推定される)。
【0225】
そこで、この周期変動を1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値の差から、周期変動を打ち消すようなテンタ前の搬送張力の条件変更パターンを作った。
【0226】
このパターン通りにテンタ前の搬送張力を調整して、厚み方向リタデーション(Rt)を制御と、周期変動がより小さくなって周期変動は抑制され、長手方向に均一な厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【0227】
実施例4
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するが、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、フィルム長手方向の配向角(軸ズレ)を測定したところ、長手方向に物性値は一定でなく変動があった。
【0228】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであった。それらの正弦波のうち最大の周期が、張力の変動周期とほぼ一致した(ゆえに、この最大周期の正弦波の原因は張力にあるものと推定される)。
【0229】
そこで、この周期変動を1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値の差から、周期変動を打ち消すような搬送ロールのロール角度の条件変更パターンを作った。
【0230】
このパターン通りにロール角度を調整して軸ズレを制御すると、周期変動がより小さくなって周期変動は抑制され、長手方向に均一なリタデーション及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】テンター延伸装置の具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図2】本発明において使用するテンター装置の第1具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図3】本発明において使用するテンター装置の第2具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図4】本発明において使用するテンター装置の第3具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図5】本発明において使用するテンター装置の第3具体例の変形例を模式的に示す概略平面図である。
【図6a】本発明において使用するテンター装置の第4具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図6b】同概略正面図である。
【図7】本発明において使用するテンター装置の第5具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図8】本発明において使用するテンター装置の第6具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図9】本発明において使用するテンター装置の第7具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図10】本発明の実施例において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で測定したフィルムの面内方向リタデーション(Ro)の測定値と、フィルム長手方向位置(フィルム長手位置)との関係を表わすグラフで、周期的な変動がみられる。
【図11】同実施例において、面内方向リタデーション(Ro)の最大の振幅を持つ波の周期と、フィルムの各点での実測値と目標値のズレ(差)との関係を表わすグラフで、周期変動を打ち消すような条件変更パターンとして、テンタ延伸率を変更制御したところ、7周期目以降に周期変動は抑制されている。
【図12】比較例において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で測定したフィルムの面内方向リタデーション(Ro)の測定値と目標値とのズレ(差)と、変動の周期との関係を表わすグラフで、変動の周期は考慮せずに、測定値と目標値とのズレ(差)に比例する量で、リアルタイムでテンタ延伸率の制御を行なているため、30周期後でも、値はハンチングし、目標値以下にはなっていない。
【符号の説明】
【0232】
1a:左側輪状チェーン(回転駆動装置)
1b:右側輪状チェーン(回転駆動装置)
2a:左側クリップ
2b:右側クリップ
3a:左側クリップクローザー
3b:右側クリップクローザー
4a:左側クリップオープナー
4b:右側クリップオープナー
5:テンショナー
6:テンショナー
7a:左側駆動モータ
7b:右側駆動モータ
8:配向角検出装置
10:テンター延伸装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)などに用いられる位相差機能と視野角拡大機能を備えた光学フィルム、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置の基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、液晶表示装置においては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によって液晶表示装置の性能が大きく左右される。
【0003】
光学フィルムの製造方法には、大別して溶液流延製膜法と溶融流延製膜法とがある。前者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法である。膜厚の均一性に優れるなどの点から広く採用されてきたが、溶媒の乾燥のため、設備が大型化するなどの問題点を抱えていた。後者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法であり、溶媒を乾燥する必要がないので設備が比較的コンパクトにできるとの利点があるが、膜厚の均一性に劣るという問題点がある。
【0004】
近年の視野角を広くした液晶表示装置には位相差補正用フィルムを用いることが一般的である。大画面化・高精細化により位相差フィルムに要求される品質は厳しくなっており、光学物性は非常に小さな範囲に精密に制御することが要求されている。
【0005】
とりわけ、面内位相差の大きい位相差フィルムでは、位相差の遅相軸(配向軸)の方向(配向角)に対する要求が厳しくフィルム内全域にわたって精度±1°以下、望ましくは±0.3〜0.5°程度が要求されている。
【0006】
光学フィルムの生産においては、これら光学物性の変動が可能な限り小さくなるように努力するが、原材料の変動や、生産設備の幅手方向・長手方向の微小な不均一性、設備の経時劣化などにより、フィルムの光学物性の変動は避けられない。
【0007】
例えば、フィルム搬送ロールのパスに対する直角度の不均一性(長手方向ロール芯ズレ)、加熱・乾燥風の幅手方向の不均一性といった、生産設備の不均一性があると、フィルムに光学特性の幅手方向の不均一性が生じる原因となる。
【0008】
できあがった光学フィルムの幅手方向・長手方向の物性変動を測定し、その結果より光学物性の不均一性の原因となった生産設備の不均一性を修正している。
【0009】
こうして、生産設備の一定の不均一性は調整により解消できるが、それでも生産ラインには周期的な変動もあり、周期変動は設備の調整だけではゼロにすることはできない。
【0010】
周期変動の原因としては、種々あるが、搬送張力や空調温度といった機械制御のハンチングによるもの以外にも、搬送・駆動ロールの偏芯、製膜を伴う場合はキャスティングドラム/ベルト等の無限支持体の周長や、延伸テンタを用いる場合のテンタのクリップ周長等、周期構造を持つ設備に起因するものがある。
【0011】
これらの変動は可能な限り小さな値となるように調整されるが、周期変動要因をゼロにすることは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、製膜中のオンラインでフィルム光学測定を行なう場合、最終製品の品質保証の意味で巻取り直前で測定することが多いが、その場合、測定位置と制御対象の搬送・延伸部との距離が長くなりがちで、その距離が光学物性の変動周期に対して長い場合には、時間差を考慮する必要があり、リアルタイムの制御が困難か、または不可能であるという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、光学フィルムの製造方法において、フィルムのリタデーション及び光学的遅相軸のズレを矯正するための制御の方法であって、光学フィルムの製膜におけるリアルタイムの制御でなく、周期変動のパターンを記憶して、そのパターンにしたがって機器の制御を行なうことにより、優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルム、及びその製造方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、光学フィルムの製膜ラインにおいて、オンラインでフィルムの光学物性を測定し、その結果をもとに目標値とのズレを算出し、搬送・延伸条件等を常時修正し変動を許容範囲内に制御することが望ましいが、実際の物性の長手方向変動は、前述の種々の周期変動要因の合成となり合成された変動も周期的に変化するため、複数周期の変動を観察し、適切な周期を決定し、その1周期内の変動のパターンを記憶し、該パターンを制御入力として使用可能であることを見出した。このような制御では、リアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になり、これによってフィルムの略全域にわたってリタデーション及び配向角が均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうことを特徴としている。
【0016】
つぎに、請求項2の発明は、測定するフィルム長手方向の光学物性が、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角のうちの少なくともいずれか1つであることを特徴としている。
【0017】
また、請求項3の発明は、上記請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項4の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの延伸率であることを特徴としている。
【0019】
また、請求項5の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差であることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、上記請求項5記載の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段を左右独立に速度制御することにより、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうことを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差であることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明は、上記請求項7記載の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうことを特徴としている。
【0023】
請求項9の発明は、上記請求項8記載の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持開始位置(クリップクローザー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴としている。
【0024】
請求項10の発明は、上記請求項8記載の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持終了位置(クリップオープナー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴としている。
【0025】
請求項11の発明は、上記請求項8記載の光学フィルムの製造方法において、テンターの連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させることを特徴としている。
【0026】
請求項12の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置されたテンター前の搬送張力であることを特徴としている。
【0027】
請求項13の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールであることを特徴としている。
【0028】
請求項14の発明は、上記請求項13記載の光学フィルムの製造方法において、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整することを特徴としている。 請求項15の位相差フィルムの発明は、請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造した光学フィルムよりなるものであることを特徴としている。
【0029】
請求項16の光学フィルムの発明は、請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造されたものでありかつフィルムがセルロースエステルフィルムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうもので、本発明によれば、光学フィルムの製膜ラインのリアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になり、これによってフィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
本発明は、光学フィルムの製膜ラインにおいて、フィルムのリタデーション及び光学的遅相軸のズレを矯正するための制御の方法であるが、製膜ラインのリアルタイムの制御でなく、周期変動のパターンを記憶して、そのパターンにしたがって機器の制御を行なうものである。
【0033】
すなわち、本発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうものである。
【0034】
従って、本発明によれば、光学フィルムの製膜ラインのリアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になる。
【0035】
上記において、一般に、フィルムの光学物性の目標値とは、フィルム全域(長手方向・幅手方向とも)で望まれる値の目標値という意味である。
【0036】
というのは、フィルムの全域において光学物性等が一定であれば良いが、実際には多少の変動があり、この変動の最大/最少の値がある一定の目標値内(例えば、10±1)の範囲であるとき、フィルム製品が良品となる。
【0037】
また、上記において、フィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレとは、光学物性値が長手方向に完全に均一ではないので、長手方向に多少の変動を持つ物性値があり、その変動するそれぞれの値と目標値の差、という意味である。
【0038】
本発明による光学フィルムの製造方法においては、オンラインの光学物性測定器(とくに位相差計)では、光学フィルムに必要な面内/厚みのリタデーション(Ro/Rt)と配向角を測定する。
【0039】
ここで、上記物性の長手方向変動の原因として考えられることとしては製膜条件すべてが考えられるが、本発明で課題としている周期的な変動要因としては、周期的な構造を持つ設備(ポンプ、無限支持体、ロールそのもの、規則的な配置のロール=フィルムパス、テンター等)の偏芯や回転ムラなど、また温度/張力/搬送速度などの制御の際のハンチング、さらには昼夜の外気温の変動なども考えられる。
【0040】
これらの変動を観察し、周期変動に対してそれをちょうど打ち消すような周期的なパターンによる制御を実施する。この場合、変動の原因と制御する対象が異なっていてもかまわない。
【0041】
光学フィルムの製造において、例えば15mの周期的な変動があったとき、その周期を持つ設備を探し、その設備に対して制御してもよいし、その他の設備を制御して、15mの変動を抑制することもできる。
【0042】
なお、本発明においては、制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の方法において、制御を行なう対象は、例えば製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差である。
【0044】
同様に、本発明において、制御を行なう対象は、例えば製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差である。
【0045】
さらに、本発明において、制御を行なう対象は、例えば製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールである。
【0046】
その他、制御の方法としては、延伸率・延伸温度・張力・ドープ流量といった一般的な製膜条件でもよい。
【0047】
なお、本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法、及び溶融流延製膜法のいずれにも適用されるものであるが、これらの方法以外に、すでに出来上がったフィルムを繰り出して、延伸等で光学機能を付与する場合にも、適用されるものである。
【0048】
本発明の光学フィルムの製造方法において、製膜ラインの周期変動の原因としては、種々あるが、搬送張力や空調温度といった機械制御のハンチングによるもの以外にも、搬送・駆動ロールの偏芯、製膜を伴う場合は、キャスティングドラム及びベルト等の無限支持体の周長や、延伸テンタを用いる場合のテンタのクリップ周長等、周期構造を持つ設備に起因するものがある。
【0049】
また、周期変動のパターンは、例えば光学物性の変動をスペクトル解析し、変動の周期と振幅を決定することもできるし、オペレータが目視で波形を確認したうえで周期を決定してもよい。
【0050】
また、張力変動や温度変動等といった各種の周期変動要因を直接測定し、それらの値に基づいて決定してもよい。
【0051】
本発明において、周期の決定に際しては、振幅が最大の変動の周期を基本にし、1つあるいは複数の正弦波の合成波形を制御出力に用いても良い。
【0052】
また、変動が最小になるように、波形の位相調整を使用してもよい。オンラインの測定器で得られた周期変動波形のうち、最大の振幅をもつ周期の正弦波を制御出力にしても良い。
【0053】
本発明において、制御は、直前の1周期分の測定値を基準にした比例制御でもよいし、複数周期分を基準にして、時間変化分を考慮した積分/微分制御を併用してもよい。
【0054】
なお、制御が成功し、変動が小さくなると、制御前とは異なる周期の変動が支配的になることもあるため、基本制御周期はときおり変更するのが望ましい。
【0055】
つぎに、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法について説明する。
【0056】
まず、対象となるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが好ましく用いられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましい。
【0057】
セルローエステルは、綿花リンターから合成されたセルローエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを、単独あるいは混合して用いることができる。
【0058】
セルロースエステルの具体的な製造方法については、例えば特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0059】
セルロースエステルの数平均分子量は、低すぎると強度が低くなり、高すぎると溶液の粘度が高くなりすぎる場合があるので、70000〜300000が好ましく、さらに80000〜200000が好ましい。
【0060】
エンドレスベルトやドラムよりなる回転駆動金属製支持体からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く、好ましい。また、剥離性の効果が顕著になるためには、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは85重量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
【0061】
特に、総アシル基置換度が2.85未満のセルロースエステルフィルムで、寸法変化を低減できるため好ましく、さらに総アシル基置換度が2.75未満のセルロースエステルフィルムであることが好ましく、特に2.70未満のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。
【0062】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムには、液晶表示装置として屋外に置かれた場合の劣化防止の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることができる。例えば波長380nmにおける透過率が20%であることが好ましく、さらに、好ましくは10%未満であり、特に好ましくは5%未満である。
【0063】
紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、ドリアジン系化合物、あるいは特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤などを挙げることができるが、本発明は、これらに限定されない。
【0064】
以下、紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明は、これらに限定されない。
【0065】
UV−1:2(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2(2′−ヒドロキシ−3′tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール
UV−5:2(2′−ヒドロキシ−3′(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5´メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール
UV−7:2(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−クロルベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171:チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと混合物(TINUVIN109:チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤として透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を好ましく用いることができ、中でも、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。紫外線吸収剤は、製膜工程でブリードアウトしたり、揮発しないものが好ましい。
【0066】
本発明において、紫外線吸収剤は、セルロースエステル成分に対し、0.1〜10重量%添加されることが好ましく、特に、0.5〜5重量%添加されることが好ましい。
【0067】
また、これら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
【0068】
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソシランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0069】
また、セルロースエステルフィルムには、必要に応じて、マット剤として二酸化ケイ素のような微粒子などを加えても支障はない。二酸化ケイ素のような微粒子は、有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため、好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなとが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果が大きく、平均粒径の小さい方が透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒状の平均粒径は、5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。
【0070】
用いられる二酸化ケイ素の微粒子としては、アエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくは、AEROSIL−200、200V、R972、R972V、R974、R202、R812などが挙げられる。
【0071】
上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%、好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%添加して使用される。
【0072】
セルロースエステルの溶解に用いる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率を上げる点で好ましく、良溶剤が多いほど、セルロースエステルの溶解性および微小な不溶解物によるフィルム異物を少なくする点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98重量%であり、貧溶剤が30〜2重量%である。
【0073】
ここで、用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか、または溶解しないものを貧溶剤と定義している。
【0074】
良溶剤としては、特に限定されないが、例えばセルローストリアセテートの場合は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、セルロースアセテートプロピオネートの場合はメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。また、貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
【0075】
溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法は、例えば米国特許2,492,978号、同2,739,070号、同2,739,069号、同2,492,977号、同2,336,310号、同2,367,603号、同2,607,704号、英国特許64,071号、同735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号公報等に記載の方法を、参考にすることができる。
【0076】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法においては、機械的強度や寸法安定性等の点から、セルロースエステルフィルムに可塑剤を添加することが好ましい。その添加量としては、例えばセルロースエステルフィルムあるいはセルロースをアセチル基および炭素原子数3〜4のアシル基でアシル化したセルロースエステルフィルムに対する重量%で、3〜30重量%にすることが好ましく、10〜30重量%が、より好ましく、15〜25重量%が特に好ましい。
【0077】
用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。
【0078】
ここで、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を好ましく用いることができる。またフタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等を好ましく用いることができる。トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等を好ましく用いることができる。ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等を好ましく用いることができる。グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を好ましく用いることができる。クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。ポリエステル系可塑剤では、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることができる。なお、グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロース樹脂との相溶性の点から好ましい。
【0079】
特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、さらに好ましくは1〜133Paの可塑剤である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0080】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法においては、セルロースエステル溶液であるドープの固形分濃度は、通常10〜40重量%程度であり、流延工程における流延時のドープ粘度は1〜200ポイズの範囲で調製される。
【0081】
ここで、まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
【0082】
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
【0083】
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるので、好ましい。
【0084】
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
【0085】
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0086】
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたセルロースエステルのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
【0087】
セルロースエステル原料と溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解装置で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
【0088】
セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。光学フィルムとしての品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
【0089】
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
【0090】
このため、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
【0091】
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく、好ましい。
【0092】
セルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。
【0093】
好ましい濾過温度の範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0094】
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下がより好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
【0095】
原料のセルロースに、アシル基の未置換もしくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると、異物故障(以下、輝点または輝点異物ということがある)が発生することがある。輝点は、直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、光を片側から照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く、何も見えないが、異物があると、そこから光が漏れて、スポット状に光って見える現象である。輝点の直径が大きいほど、液晶表示装置とした場合に、実害が大きく、輝点の直径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下が、より好ましく、さらに8μm以下が好ましい。なお、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。
【0096】
輝点異物は、上記の直径のものが400個/cm2以下であれば、実用上問題ないが、300個/cm2以下が好ましく、200個/cm2以下が、より好ましい。このような輝点異物の発生数、及び大きさを減少させるために、細かい異物を充分に濾過する必要がある。
【0097】
なお、例えば特開2000−137115号公報に記載されるような、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品を、ドープにある割合で再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は、輝点異物を低減することができるため、好ましく用いることができる。
【0098】
つぎに、セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムを製造するには、まず、セルロースエステルを、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の可塑剤や紫外線吸収剤を添加してセルロースエステル溶液(ドープ)を調製する。
【0099】
製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
【0100】
また、ドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、流延ダイから支持体上にほぼ均一な膜厚になるよう流延し、流延膜中の残留溶媒量が対固形分重量200%以上では、流延膜温度が溶剤沸点以下に、また200%以下〜剥離までは、溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、乾燥風により流延膜(ウェブ)を乾燥させる。
【0101】
支持体上では、ウェブが支持体から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、50〜120%が、より好ましい。
【0102】
支持体からウェブを剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブは、支持体からの剥離直後に、支持体密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
【0103】
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
【0104】
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
【0105】
剥離後のウェブは、例えば一次乾燥装置に導入する。一次乾燥装置内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブが蛇行せられ、その間にウェブは乾燥装置の天井より吹き込まれ、乾燥装置の底の部分より排出される温風によって乾燥される。
【0106】
ついで、得られたフィルム(シート)を一軸方向に延伸する。延伸により分子が配向される。延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、延伸方向を幅手方向とすることにより、偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することにより、熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
【0107】
特に、支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
【0108】
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−40℃〜Tg+50℃、好ましくはTg−40℃〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると、所望のリタデーションが得られない場合があり、逆に大きすぎると、破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、また高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
【0109】
なおここで、フィルムのガラス転移温度(Tg)とは、フィルムの主材である樹脂、添加剤、及び溶剤を含むフィルム組成物のガラス転移温度(Tg)を意味する。
【0110】
ガラス転移温度(Tg)の測定は、一般に知られる、熱機械分析装置(TMA)、示差走査熱量計(DSC)、示差熱分析装置(DTA)、動的粘弾性測定装置(DMA)などを用いて測定可能である。
【0111】
つぎに、テンター延伸装置について、図面を参照して説明する。
【0112】
図1は、テンター延伸装置(10)の一般的な実施形態を模式的に示すものである。同図に示すように、テンター(10)は、ハウジング(図示略)の左右両側部に、前後スプロケットに巻き掛けられた無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(1a)(1b)が設けられ、これらの回転駆動装置(1a)(1b)に多数のクリップ(2a)(2b)が1列状態に具備されている。
【0113】
ここで、クリップ(2a)(2b)は、多数のものがおのおの連結されて、最終的に輪状のチェーン(1a)(1b)になり、それが案内レール(図示略)上を(乗り物のモノレールのように)走行するものである。そして、これらのチェーン(1a)(1b)は一部に圧力をかけて弛まないように「張って」おり、レールはチェーン(1a)(1b)の長さにならって変化するような構造になっている。
【0114】
このチェーン(1a)(1b)に圧力をかけて張る設備を『テンショナー』(5)(6)(図4、図5及び図8参照)と称し、左右でチェーン(1a)(1b)の張り状態を変えて、輪状チェーン(1a)(1b)の全体の長さを変更するものである。
【0115】
そして、テンター(10)のクリップ(2a)(2b)によってフィルム(F)の左右両側縁部が保持され、この状態でテンター(10)の入口へと導入される。テンター(10)内において、フィルム(F)は、これの左右両側縁部がテンター左右両側のクリップ(2a)(2b)により挟まれて延伸させられながら一緒に搬送されると同時に、乾燥される。
【0116】
その後、フィルム(F)は乾燥装置(図示略)内に送り込まれ、乾燥装置のハウジング内に千鳥状に配置されたすべての搬送ロールを経由して搬送され、その搬送中に乾燥風吹き込み口から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられることにより、セルロースエステルフィルムが得られ、このフィルムが巻取ロール(図示略)に巻き取られる。
【0117】
なお、フィルム(F)の搬送速度は、通常、2〜200m/分、好ましくは10〜100m/分である。
【0118】
光学フィルムの製造方法は、連続する樹脂フィルム(F)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルム(F)を搬送して延伸を行なう延伸装置(10)を用いて光学フィルムを製造する方法であって、該延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によってフィルム(F)の把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御して、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
【0119】
ここで、配向角とは、熱可塑性樹脂フィルムの面内における遅相軸の方向(製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて行なう。配向角の測定方法は、フィルム幅手方向に3〜10cm間隔で、例えば9点で測定を行ない、全ての配向角が±1.0°以内になっていることが好ましい。
【0120】
テンター延伸装置(10)で樹脂フィルム(F)の左右両端を把持している部分の長さを左右独立に制御して、フィルム(F)の把持長を左右で異なるものとする手段としては、具体的には、例えば図2に示すようなものがある。
【0121】
図2は、テンター延伸装置(10)の第1実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の把持開始位置を左右で変える、すなわちクリップクローザー(3a)(3b)の設置位置を左右で変えて、把持開始位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター(10)以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向 (TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
【0122】
なお、図示のテンター延伸装置(10)は模式的に記載されているが、通常は、無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(1a)(1b)の1列状態に具備された多数のクリップ(2a)(2b)のうち、フィルム(F)の左右両端部を把持して引っ張るチェーン往路側直線移行部のクリップ(2a)(2b)がフィルム(F)の幅手方向に漸次離れるように、左右のチェーン(1a)(1b)の軌道が設置されており、フィルム(F)の幅手方向の延伸が行なわれるようになされている(以下の図示において、同じ)。
【0123】
つぎに、図3は、テンター延伸装置(10)の第2実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の把持終了位置を左右で変える、すなわちクリップオープナー(4a)(4b)の設置位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたってリタデーション及び配向角が均一である光学フィルムを製造することができる。
【0124】
さらに、光学フィルムの製造方法においては、連続する樹脂フィルム(F)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段(クリップ)(2a)(2b)の移動用無限軌道レール(図示略)の左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、例えば左右のクリップ(2a)(2b)の数が同じで、左右のレール長を変えると、各クリップ(2a)(2b)間の距離が左右でわずかに異なることになる。各クリップ(2a)(2b)間の変化量は微小であるが、テンター(10)全体では数百〜数千のクリップ(2a)(2b)を使用しており、フィルム(F)の左右把持長は実質的に変化することになる。これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
【0125】
なお、テンター装置(10)では、連結されたクリップチェーン(1a)(1b)に張力を与えているが、その張力を左右で変化させることでも、フィルム(F)の把持長が変化する。例えば図4は、テンター延伸装置(10)の第3実施形態を模式的に示すものである。同図において、一方の右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部の途上にテンショナー(5)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させている。
【0126】
また、例えば図5は、テンター延伸装置(10)の第3実施形態の変形例を模式的に示すものである。同図において、一方の右側クリップチェーン(1b)の無端折返し部にテンショナー(6)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)の無端折返し部に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させている。
【0127】
さらに左右のレール長を変える手段としては、図6aと図6bに示すようなものがある。図6aと図6bは、テンター延伸装置(10)の第4実施形態を模式的に示すものである。同図において、クリップ(2a)(2b)がある面内で変える以外にも、右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部を上下方向に曲げることにより、フィルム(F)の把持長を左右で変化させても良い。
【0128】
つぎに、光学フィルムの製造方法においては、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御して、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内となるように延伸を行なうことにより、樹脂フィルム(F)の左右の把持長を変えるだけでなく、クリップ(2a)(2b)の走行速度を左右で変えることで、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正することができる。
【0129】
ここで、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御する手段としては、例えば図7に示すようなものがある。図7は、テンター延伸装置(10)の第5実施形態を模式的に示すもので、左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御する手段として左右独立の駆動モータ(7a)(7b)を使用する。なお従来は、延伸装置の左右把持手段(クリップ)は、同一の駆動モータにより左右等速度に制御されている。
【0130】
このように、樹脂フィルム(F)の左右の把持長を変えるだけでなく、クリップ(2a)(2b)の走行速度を左右で変えることで、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正できる。なお、独立した速度制御には、図7に示すような左右独立のモータ(7a)(7b)を使用したり、一般的には2軸延伸装置(10)として用いられるパンタグラフやスピンドル、あるいはリニアモータのような手段を使用することができる。
【0131】
つぎに、図8は、テンター延伸装置(10)の第6実施形態を模式的に示すものである。同図において、巻取り前の樹脂フィルム(F)の配向角を、配向角測定装置(8)によってオンラインで測定し、その結果をもとに、延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によってフィルム(F)の把持長を左右で独立に制御するか、またはテンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の左右独立に速度制御する駆動モータ(7a)(7b)(図7参照)により左右把持クリップ(2a)(2b)の走行速度を制御するものである。一般に、樹脂フィルム(F)を一定の条件で生産していても、材料や設備の微小な変動により配向角が変動してしまうため、製品巻き取り前に配向角を、配向角測定装置(8)によってオンライン測定し、その結果をフィードバックして、フィルム(F)の把持長または走行速度を変化させることで、長手方向にも均一な樹脂フィルムができる。
【0132】
また、図9は、テンター延伸装置(10)の第7実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の把持開始位置および把持終了位置での左右の把持手段(クリップ)(2a)(2b)の位置をオンラインで検出して、把持手段(クリップ)(2a)(2b)の位相差を求め、その結果をもとに、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によるフィルム(F)の把持長を、同図に示すように、一方の右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部の途上にテンショナー(5)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させるか、または例えば上記図7に示すように、延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の左右独立に速度制御する駆動モータ(7a)(7b)により、左右把持クリップ(2a)(2b)の走行速度を制御する。
【0133】
ここで、使用する左右把持クリップの位置を検出する手段としては、接触式、光電式、レーザ式、超音波式、渦電流式等の変位計、あるいはスイッチセンサや、CCDカメラを用いた画像解析による方法などがあるが、メンテナンス性を考えると、非接触型のセンサが望ましい。センサは左右の把持開始位置および左右の把持終了位置の4箇所に設置することが望ましいが、さらに多数の箇所に設置しても良い。あるいは、把持終了位置付近で同期して回転する左右のスプロケットに駆動されることで、左右の把持クリップの位置が同期していることが明らかな場合には、左右把持開始位置の2箇所のセンサだけで左右把持長を確認することも可能である。
【0134】
こうして、左右のクリップ(2a)(2b)の位置をテンター延伸装置(10)の入口と出口で検出することで、フィルム(F)の左右把持長が確実にわかる。すなわち、テンター把持手段のベアリングの摩耗等による経時的な配向角の変動に速やかに対応できることになる。このデータを元に、所望のフィルム(F)の左右把持長差となるように制御することにより、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正することができるものである。
【0135】
上記の方法で作製した熱可塑性樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸装置の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより、フィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸装置を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。
【0136】
テンターでの把持・延伸は、剥離直後の膜の残留溶媒量が50〜150重量%から巻き取り直前の実質的な残留溶媒量が0重量%の範囲のどこで行なうこともできるが、残留溶媒量が5〜10%の範囲で行なうのが好ましい。
【0137】
テンターをベースの走行方向にいくつかの温度ゾーンに分けることも一般によく行なわれる。延伸する際の温度は所望の物性や平面性が得られるような温度が選択されるが、テンター前後の乾燥ゾーンの温度はまた種々の理由により延伸の際の温度とは異なる温度が選択されることもある。例えば、テンター前の乾燥ゾーンの雰囲気温度がテンター内の温度と異なる場合は、テンター入り口に近いゾーンの温度を、テンター前の乾燥ゾーンの温度とテンター中央部の温度の中間的な温度に設定することが一般に行なわれている。テンター後とテンター内の温度が異なる場合にも同様にテンター出口に近いゾーンの温度をテンター後とテンター内の温度の中間的な温度に設定する。テンター前後の乾燥ゾーンの温度は一般に30〜120℃であり、好ましくは50〜100℃、テンター内延伸部の温度は50〜180℃、好ましくは80〜140℃であり、テンター入り口部あるいは出口部の温度はそれらの中間的な温度から適宜選択される。
【0138】
また、フィルムの延伸倍率もまた所望の物性や平面性が得られるような倍率が選択される。例えばセルロースエステルの場合は、0〜150%、好ましくは0〜50%である。
【0139】
フィルムの延伸のパターン、すなわち把持クリップの軌跡は、温度同様に膜の光学物性や平面性から選択され、様々であるが、把持開始後しばらくは一定幅で、その後延伸され、延伸終了後再び一定幅で保持されるパターンが良く用いられる。テンター出口付近のクリップ把持終了する付近では、把持を開放することによるベース振動の抑制のために幅緩和を行なうことが一般に行なわれる。
【0140】
延伸のパターンはまた延伸速度とも関連するが、延伸速度は一般的には10〜1000(%/min)好ましくは100〜500(%/min)である。この延伸速度はクリップの軌跡が曲線である場合には一定でなく、ベースの走行方向に徐々に変化する。
【0141】
さらに、上記のテンター方式による乾燥後のウェブ(フィルム)は、ついで二次乾燥装置に導入する。二次乾燥装置内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロールによってウェブが蛇行せられ、その間にウェブは、二次乾燥装置の天井より吹き込まれ、かつ二次乾燥装置の底の部分より排出される温風によって乾燥され、セルロースエステルフィルムとして巻取り機に巻き取られる。
【0142】
セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムの製造方法において、ウェブを乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で乾燥するのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃が好ましく、80〜130℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0143】
このように、ウェブの乾燥工程においては支持体より剥離したウェブをさらに乾燥し、最終的に、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0144】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
【0145】
なお、搬送乾燥工程を終えたセルロースエステルフィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置により、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボスを形成する加工を行なうのが好ましい。エンボス加工装置としては、例えば特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
【0146】
セルロースエステルフィルムの製造に係わる巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0147】
巻き取り後の光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。
【0148】
本発明による光学フィルムの製造方法は、光学フィルムの製膜ライン中に搬送されるフィルムに、いわゆるねじり力を与えて配向角を制御する方法であり、適切な温度および搬送ロールのロールの軸調整を行なうこと、すなわち、溶液流延製膜法によるセルロースエステルよりなる光学フィルムの製膜において、出来上がりのフィルムの光学的遅相軸の向きに応じて、フィルム中の残留溶媒量が10〜70重量%の範囲で、1本あるいは複数本の搬送ロールのロール軸の設置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整するものである。この場合、フィルムが搬送乾燥される雰囲気温度が30〜140℃の範囲において実施するのが、好ましい。
【0149】
ここで、配向角とは、熱可塑性樹脂フィルムの面内における遅相軸の方向(流延製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて行なう。配向角の測定方法は、フィルム幅手方向に3〜10cm間隔で、例えば5点で測定を行ない、全ての配向角が±1.7°になっていることが好ましく、±1.5°以内がより好ましく、±1.0°以内がさらに好ましい。
【0150】
つぎに、溶融流延製膜法による光学フィルムの製造について、説明する。
【0151】
まず、溶融流延製膜法としては、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法では、ポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却ドラム(支持体)上に押し出す。引き続いて、冷却ドラムによってフィルム状(シート状)の溶融樹脂を冷却固化して、冷却ドラムから樹脂フィルムを剥離する。
【0152】
つぎに、光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法によって行なう場合には、対象となる熱可塑性樹脂は、溶融流延製膜法により製膜可能であれば特に限定されない。
【0153】
例えば、ポリカーボネート(ガラス転移温度Tg:約150℃)、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステルなどが挙げられる。中でも、光弾性係数が小さいことから、セルロースエステルや脂環式構造含有ポリマーが好ましい。
【0154】
セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート(ガラス転移温度Tg:約170℃)、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが、得られるフィルムの寸法安定性に優れるので好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として50,000〜300,000、とくに60,000〜200,000であることが、得られるフィルムの機械的強度が強くできるので好ましい。
【0155】
脂環式構造含有ポリマーとは、繰り返し単位中に、脂環式構造を有するポリマーであり、脂環式構造は主鎖、側鎖のいずれにあってもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、熱安定性に優れることからシクロアルカン構造が好ましい。
【0156】
脂環式構造含有ポリマーは、ノルボルネン環構造を有するモノマー、モノ環状オレフィン、環状共役ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニル脂環式炭化水素化合物等を含むモノマーを、メタセシス開環重合や付加重合などの公知の重合方法で重合し、必要に応じて炭素−炭素不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。
【0157】
用いる脂環式構造含有ポリマーは、シクロヘキサン溶液(ポリマーが溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、25,000〜50,000であることが好ましく、30,000〜45,000であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜3.5であることが好ましく、さらに1.5〜3.0であることが好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、80〜200℃であることが好ましい。脂環式構造含有ポリマーの特性を上記の範囲にすることで、良好な耐熱性と成形加工性とを得ることができる。
【0158】
熱可塑性樹脂中には、種々の目的で可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、帯電防止剤、難燃剤、染料及び油剤などの添加剤を含有させることができる。
【0159】
可塑剤としては、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のものを使用することができる。
【0160】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、熱可塑性樹脂に対し、重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
【0161】
光学フィルムの製造方法が、溶融流延製膜法による場合においては、使用し得る紫外線吸収剤としては、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のものを使用することができる。
【0162】
これらの紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、逆に多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
【0163】
フィルムの滑り性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。用いられる微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物のどちらでもよく、例えば、無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。中でもヘイズを小さく抑えることができることから、二酸化珪素が特に好ましく用いられ、光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法にて実施する場合においても、前記の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いるものと、ほゞ同様のマット剤を使用することができる。
【0164】
光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法にて実施する場合、溶融流延製膜法としては、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、膜厚ムラやリタデーションのムラを小さくできるTダイを用いた方法が好ましい。Tダイを用いた押出し方法は、前述したポリマーを溶融可能な温度で溶融し、Tダイからフィルム状(シート状)に冷却ドラム上に押し出し、冷却固化して冷却ドラムから剥離する方法であり、得られるフィルムの厚み精度が優れており、本発明でも好ましく用いることができる。
【0165】
溶融押出しの条件は他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行なうことができる。例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステルを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状(シート状)に流延し、冷却ドラム上で固化させる。供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0166】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行なうことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。ろ過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成をとったり、ろ過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
【0167】
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
【0168】
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0169】
冷却ドラムの温度は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。
【0170】
このような溶融流延製膜法で成形された熱可塑性樹脂シートは、溶液流延製膜法で成形された樹脂シートと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、溶液流延製膜法とは異なる延伸条件が必要になる場合もある。所望の光学物性を得るためには、場合によっては、フィルムの進行方向の延伸とフィルム幅手方向の延伸の両者を同時あるいは逐次に行なうこともある。また、場合によっては、フィルム幅手方向の延伸のみの場合もある。この延伸操作によって分子が配向され、フィルムが必要なリタデーション値に調整される。
【0171】
延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、延伸方向を幅手方向とすることにより、偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することにより、熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
【0172】
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−50℃〜Tg+50℃、好ましくはTg−40℃〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると、所望のリタデーションが得られない場合があり、逆に大きすぎると、破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、また高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
【0173】
上記の方法で作製した熱可塑性樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸装置の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることにより、フィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸装置を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。
【0174】
延伸後、巻取りまでに平面性矯正、寸法安定性向上等の目的で熱処理ゾーンを設ける場合もある。例えば数十秒〜数十分の間、シートを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)−30℃〜Tgの温度になるように保ち、千鳥状配置されたロール間を搬送させるゾーンを設ける場合もある。
【0175】
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることにより、調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0176】
以上のようにして得られた幅手方向に延伸された熱可塑性樹脂フィルムは、延伸により分子が配向されて、一定のリタデーションを持つ。
【0177】
本発明による光学フィルムは、溶液流延製膜法、または溶融流延製膜法のいずれによって製造されても良く、また、これらの方法以外に、すでに出来上がったフィルムを繰り出して、延伸等で光学機能を付与する場合にも、適用される。
【0178】
本発明は、光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうもので、本発明によれば、光学フィルムの製膜ラインのリアルタイムの制御とは異なり、ライン長や制御遅れ時間を事前に見込んだ制御が容易であり、製膜ラインのような比較的長いパスでの細かな制御が可能になり、これによってフィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを製造することができる。
【0179】
本発明による光学フィルムの製造方法においては、測定するフィルム長手方向の光学物性が、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角のうちの少なくともいずれか1つである。
【0180】
本発明による光学フィルムの製造方法においては、制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることが好ましい。
【0181】
また、本発明において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの延伸率である。
【0182】
また、本発明において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差である。
【0183】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段を左右独立に速度制御することにより、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
【0184】
また、本発明による光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差である。
【0185】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
【0186】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持開始位置(クリップクローザー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものである。
【0187】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターの左右把持手段が、把持終了位置(クリップオープナー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものである。
【0188】
上記の光学フィルムの製造方法において、テンターの連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものである。
【0189】
本発明による光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置されたテンター前の搬送張力である。
【0190】
本発明による光学フィルムの製造方法において、制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールである。
【0191】
上記の光学フィルムの製造方法において、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整するものである。
【0192】
なお、本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法、及び溶融流延製膜法のいずれにも適用されるものであるが、これらの方法以外に、すでに出来上がったフィルムを繰り出して、延伸等で光学機能を付与する場合にも、適用されるものである。
【0193】
本発明の光学フィルムの製造方法において、製膜ラインの周期変動の原因としては、種々あるが、搬送張力や空調温度といった機械制御のハンチングによるもの以外にも、搬送・駆動ロールの偏芯、製膜を伴う場合は、キャスティングドラム及びベルト等の無限支持体の周長や、延伸テンタを用いる場合のテンタのクリップ周長等、周期構造を持つ設備に起因するものがある。
【0194】
また、周期変動のパターンは、例えば光学物性変動をスペクトル解析し、変動の周期と振幅を決定することもできるし、オペレータが目視で波形を確認したうえで周期を決定してもよい。
【0195】
また、張力変動や温度変動等といった各種の周期変動要因を直接測定し、それらの値に基づいて決定してもよい。
【0196】
本発明において、周期の決定に際しては、振幅が最大の変動の周期を基本にし、1つあるいは複数の正弦波の合成波形を制御出力に用いても良い。
【0197】
また、変動が最小になるように、波形の位相調整を使用してもよい。オンラインの測定器で得られた周期変動波形のうち、最大の振幅をもつ周期の正弦波を制御出力にしても良い。
【0198】
本発明において、制御は、直前の1周期分の測定値を基準にした比例制御でもよいし、複数周期分を基準にして、時間変化分を考慮した積分/微分制御を併用してもよい。
【0199】
なお、制御が成功し、変動が小さくなると、制御前とは異なる周期の変動が支配的になることもあるため、基本制御周期はときおり変更するのが望ましい。
【0200】
本発明による位相差フィルムは、上記の本発明による方法で製造した光学フィルムよりなるものであるから、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
【0201】
また、本発明による光学フィルムは、上記の本発明による方法で製造したものでありかつ樹脂フィルムがセルロースエステルフィルムよりなるものであるから、やはりフィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
【0202】
本発明の方法により製造された光学フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に貼り合わせることにより、楕円偏光板とすることができる。
【0203】
偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、充分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
【0204】
偏光板は、上記偏光フィルムに本発明の光学フィルムを貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムを保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。
【0205】
さらに、長さ方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の光学フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
【0206】
このようにして得られた本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
【実施例】
【0207】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0208】
実施例1
溶液流延製膜法によるセルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造した。
【0209】
(ドープの調製)
まず、セルローストリアセテートプロピオネートのドープを、以下のように調製した。
【0210】
セルローストリアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7、
ガラス転移温度:約85℃)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 40重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
【0211】
上記のように調製したドープを、30℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる30℃の支持体上に流延してウェブ(ドープ膜)を形成し、そして最終的に、ウェブ中の残留溶媒量が80重量%になるまで支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
【0212】
ついで、ウェブを、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、続いてテンターよりなる延伸装置に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、残留溶媒が存在する条件下で、実質的に幅手方向に延伸し、乾燥風を当てて乾燥させた。
【0213】
さらに、ウェブ(フィルム)を、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、巻取り機により巻き取り、最終的に膜厚60μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
【0214】
上記において、まず、特段の光学物性の制御をしない状態で、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、光学物性としての面内方向リタデーション(Ro)を測定したところ、長手方向に面内方向リタデーション(Ro)は一定でなく変動があった。
【0215】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであり、面内方向リタデーション(Ro)は、37mの基本周期にさらに短い周期の波が複数重ね合わされた変動が観察された(図10参照)。
【0216】
そこで、上記37mを最大の振幅を持つ波の1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値のズレ(差)から、周期変動を打ち消すような条件変更パターンとして、テンタ延伸率を変更制御したところ、7周期目以降に周期変動は抑制されて、目標値となった(図11参照)。
【0217】
こうして、長手方向に均一な面内方向リタデーション(Ro)及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【0218】
比較例1
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するために、特段の光学物性の制御をしない状態で製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、光学物性としての面内方向リタデーション(Ro)を測定した。そして、フィルム長手方向の面内方向リタデーション(Ro)の変動の周期は考慮せずに、測定値と目標値とのズレ(差)に比例する量で、リアルタイムでテンタ延伸率の制御を行なったところ、30周期後でも、値はハンチングし、目標値以下にはならなかった(図12参照)。
【0219】
実施例2
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するが、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、フィルム長手方向の配向角(軸ズレ)を測定したところ、長手方向に物性値は一定でなく変動があった。
【0220】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであった(例えば周期39m/振幅0.9の正弦波と、周期16m/振幅1.3の正弦波など)。それらの正弦波のうち最大の周期がテンタクリップ周長とほぼ一致した(ゆえに、この最大周期の正弦波の原因はテンタにあるものと推定される)。また、最大の振幅を持つ波の周期は16mであった。
【0221】
そこで、この周期変動を1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値の差から、周期変動を打ち消すような左右クリップ速度差やテンタ左右把持長の条件変更パターンを作った。
【0222】
このパターン通りに左右クリップ速度差やテンタ左右把持長の条件変更を行なうと、周期変動がより小さくなって周期変動は抑制され、長手方向に均一なリタデーション及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【0223】
実施例3
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するが、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、フィルム長手方向の厚み方向リタデーション(Rt)を測定したところ、長手方向に物性値は一定でなく変動があった。
【0224】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであった。それらの正弦波のうち、厚み方向リタデーション(Rt)の最長の周期がほぼキャスティング無限支持体長とほぼ一致した(ゆえに、この最長周期の正弦波の原因は、キャスティング無限支持体長にあるものと推定される)。
【0225】
そこで、この周期変動を1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値の差から、周期変動を打ち消すようなテンタ前の搬送張力の条件変更パターンを作った。
【0226】
このパターン通りにテンタ前の搬送張力を調整して、厚み方向リタデーション(Rt)を制御と、周期変動がより小さくなって周期変動は抑制され、長手方向に均一な厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【0227】
実施例4
上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造するが、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で、フィルム長手方向の配向角(軸ズレ)を測定したところ、長手方向に物性値は一定でなく変動があった。
【0228】
変動は完全にランダムなものではなく、周期的な変動がみられたので、周波数解析を行ったところ、変動は多数の異なる振幅・周期・位相の正弦波が重ね合わされたものであった。それらの正弦波のうち最大の周期が、張力の変動周期とほぼ一致した(ゆえに、この最大周期の正弦波の原因は張力にあるものと推定される)。
【0229】
そこで、この周期変動を1周期あるいは複数周期記録して、各点で実測値と目標値の差から、周期変動を打ち消すような搬送ロールのロール角度の条件変更パターンを作った。
【0230】
このパターン通りにロール角度を調整して軸ズレを制御すると、周期変動がより小さくなって周期変動は抑制され、長手方向に均一なリタデーション及び配向角を有するセルロースアセテートプロピオネートフィルムが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】テンター延伸装置の具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図2】本発明において使用するテンター装置の第1具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図3】本発明において使用するテンター装置の第2具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図4】本発明において使用するテンター装置の第3具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図5】本発明において使用するテンター装置の第3具体例の変形例を模式的に示す概略平面図である。
【図6a】本発明において使用するテンター装置の第4具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図6b】同概略正面図である。
【図7】本発明において使用するテンター装置の第5具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図8】本発明において使用するテンター装置の第6具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図9】本発明において使用するテンター装置の第7具体例を模式的に示す概略平面図である。
【図10】本発明の実施例において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で測定したフィルムの面内方向リタデーション(Ro)の測定値と、フィルム長手方向位置(フィルム長手位置)との関係を表わすグラフで、周期的な変動がみられる。
【図11】同実施例において、面内方向リタデーション(Ro)の最大の振幅を持つ波の周期と、フィルムの各点での実測値と目標値のズレ(差)との関係を表わすグラフで、周期変動を打ち消すような条件変更パターンとして、テンタ延伸率を変更制御したところ、7周期目以降に周期変動は抑制されている。
【図12】比較例において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計で測定したフィルムの面内方向リタデーション(Ro)の測定値と目標値とのズレ(差)と、変動の周期との関係を表わすグラフで、変動の周期は考慮せずに、測定値と目標値とのズレ(差)に比例する量で、リアルタイムでテンタ延伸率の制御を行なているため、30周期後でも、値はハンチングし、目標値以下にはなっていない。
【符号の説明】
【0232】
1a:左側輪状チェーン(回転駆動装置)
1b:右側輪状チェーン(回転駆動装置)
2a:左側クリップ
2b:右側クリップ
3a:左側クリップクローザー
3b:右側クリップクローザー
4a:左側クリップオープナー
4b:右側クリップオープナー
5:テンショナー
6:テンショナー
7a:左側駆動モータ
7b:右側駆動モータ
8:配向角検出装置
10:テンター延伸装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうことを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
測定するフィルム長手方向の光学物性が、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角のうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする、請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの延伸率であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段を左右独立に速度制御することにより、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内となるように延伸を行なうことを特徴とする、請求項5記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうことを特徴とする、請求項7記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
テンターの左右把持手段が、把持開始位置(クリップクローザー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴とする、請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
テンターの左右把持手段が、把持終了位置(クリップオープナー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴とする、請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
テンターの連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させることを特徴とする、請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置されたテンター前の搬送張力であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールであることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整することを特徴とする、請求項13記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造した光学フィルムよりなるものであることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項16】
請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造されたものでありかつフィルムがセルロースエステルフィルムであることを特徴とする光学フィルム。
【請求項1】
光学フィルムの製膜方法において、製膜ラインの巻取り前に設置した位相差計でフィルム長手方向の光学物性を測定し、得られたフィルム長手方向の光学物性の変動の周波数成分のうち、振幅が最大の変動の周期を決定し、該周期を単位として、1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値を記憶し、前記1周期ないし複数周期分のフィルム長手方向の光学物性の測定値と、フィルム長手方向の光学物性の目標値のズレを用いて、次の1周期の製膜ラインの搬送・延伸条件等の製膜条件の制御を行なうことを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
測定するフィルム長手方向の光学物性が、面内方向リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)及び配向角のうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする、請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
制御を行なうフィルム長手方向の光学物性の変動の単位周期が、200m以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの延伸率であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンターの左右駆動速度差であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段を左右独立に速度制御することにより、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内となるように延伸を行なうことを特徴とする、請求項5記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
制御を行なう対象が、製膜ラインに設置されたテンタの左右の把持長差であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
テンターが、連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながらフィルムを搬送して延伸を行なうものであり、該テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうことを特徴とする、請求項7記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
テンターの左右把持手段が、把持開始位置(クリップクローザー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴とする、請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
テンターの左右把持手段が、把持終了位置(クリップオープナー設置位置)を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであることを特徴とする、請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
テンターの連続するフィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させることを特徴とする、請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置されたテンター前の搬送張力であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
制御を行なう対象が、製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数のロールであることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
製膜ライン中に設置された角度可変の1本ないし複数本の搬送ロールのロール軸の配置方向を、フィルム搬送方向に対して90°より大きく95°以下の角度または90°より小さく85°以上の角度の範囲で調整することを特徴とする、請求項13記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造した光学フィルムよりなるものであることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項16】
請求項1〜14のうちのいずれか一項記載の方法で製造されたものでありかつフィルムがセルロースエステルフィルムであることを特徴とする光学フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−256064(P2006−256064A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75801(P2005−75801)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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