説明

光学フィルム用長尺積層体の製造方法

【課題】
ディスプレイに装着したときのモアレ現象が抑制された光学フィルムを歩留まりよく製造するための、光学フィルム用長尺積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】
長尺基材フィルムの少なくとも一方の面に、基盤層と複数のストライプ状の光吸収部とからなる外光遮蔽層を有する光学フィルム用長尺積層体の製造方法であって、
長尺基材フィルムの少なくとも一方の面に基盤層を積層する工程(a)と、
螺旋状の突起を有する型付けロールによって、前記基盤層に、前記長尺基材フィルムの長手方向に対して長手方向が傾斜する複数の溝を形成する工程(b)と、
前記工程(a)と前記工程(b)の両方が完了した後に、前記溝に光吸収性インキを充填して光吸収部を形成する工程(c)と、を有する光学フィルム用長尺積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用長尺積層体の製造方法に関し、詳細には、外光によるコントラストの低下を抑制するための外光遮蔽層を有する1枚単位の光学フィルム(枚葉光学フィルム)を製造するための中間製造品である光学フィルム用長尺積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどのディスプレイは、明瞭なフルカラー表示が可能な表示装置である。これらのディスプレイには、通常、反射防止機能、防眩機能、電磁波遮蔽機能、近赤外線遮蔽機能等を有する光学フィルムがディスプレイの視認側に配置されている。
【0003】
さらに、近年では、外光によるコントラストの低下を抑制するために、光吸収部がストライプ状に複数配列された外光遮蔽層を含む光学フィルムが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
これらの外光遮蔽層は、紫外線硬化性樹脂等からなる基盤層にストライプ状の溝を形成し、この溝に光を吸収する光吸収性インキを充填して形成されることが知られている。
【0005】
一方、プラズマディスプレイ装置等に上記の外光遮蔽層を有する光学フィルムを配置した場合、プラズマディスプレイ装置を構成するピクセルと光学フィルムとの間の周期的なパターンの干渉によりモアレ現象が起こり、画像視認性が低下するという問題があり、この問題を解消するために、外光遮蔽層の光吸収部のストライプパターンの角度を水平方向に対して傾斜させることが提案されている(例えば特許文献4〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−189867号公報
【特許文献2】特開2006−201577号公報
【特許文献3】特開2008−304674号公報
【特許文献4】特開2006−313360号公報
【特許文献5】特開2008−203823号公報
【特許文献6】特表2009−535673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、外光遮蔽層を有する光学フィルムは、長尺基材フィルム上のほぼ全面に光透過性の硬化性樹脂からなる基盤層を積層し、この基盤層にストライプ状の溝を形成し、この溝に光吸収性インキを充填して製造されていた。基盤層に形成されるストライプ状の溝は、長尺基材フィルムの長手方向(搬送方向)の中心線に対してほぼ平行(水平)に形成されていた。
【0008】
上述のように光吸収部が傾斜した外光遮蔽層を有する光学フィルムは従来から知られており、その従来の製造方法は図10に示すように、長尺の基材フィルム42の長手方向の中心線Yに対して平行(水平)に光吸収部45が配列された光学フィルム用長尺積層体41を製造し、この光学フィルム用長尺積層体41から枚葉光学フィルム40を切り出すときに、光吸収部の傾斜角度に合わせて枚葉光学フィルム40を斜めに切り出すことによって製造されていた。
【0009】
上記従来の製造方法は、枚葉光学フィルムを斜めに切り出す必要があるため、無駄が多く歩留まりが低いという問題がある。また、従来の製造方法で得られた光学フィルム用長尺積層体と他の長尺機能性フィルム(例えば反射防止フィルム、近赤外線吸収フィルム、電磁波遮蔽フィルム等)とを貼合した後に枚葉光学フィルムに切り出す場合には、他の機能性フィルムを含む分、更に歩留まりの低下が増大した。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記課題に鑑み、ディスプレイに装着したときのモアレ現象が抑制された光学フィルムを歩留まりよく製造するための、光学フィルム用長尺積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、基本的に以下の発明によって達成された。
1)長尺基材フィルムの少なくとも一方の面に基盤層を積層する工程(a)と、
螺旋状の突起を有する型付けロールによって、前記基盤層に、前記長尺基材フィルムの長手方向に対して長手方向が傾斜する複数の溝を形成する工程(b)と、
前記工程(a)と前記工程(b)の両方が完了した後に、前記溝に光吸収性インキを充填して光吸収部を形成する工程(c)と、を有する光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
2)前記型付けロールの螺旋状突起の傾斜角度βが、該ロールの回転軸Xに対して80〜89.5度である、前記1)の光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
3)前記工程(a)と前記工程(b)がほぼ同時に行われる、前記1)または2)の光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
4)前記長尺基材フィルムが、前記基盤層が積層される面とは反対面に、反射防止層、ハードコート層、近赤外線遮蔽層、色調調整層および電磁波シールド層からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能層を有する、前記1)〜3)のいずれかの光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって製造された光学フィルム用長尺積層体を用いることによって、1枚単位の光学フィルム(枚葉光学フィルム)を歩留まりよく取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によって製造された光学フィルム用長尺積層体からシート状に切り出された枚葉光学フィルムの一例の模式平面図である。
【図2】図1のA−Aの模式断面図である。
【図3】本発明によって得られた光学フィルム用長尺積層体の一例を示す模式平面図である。
【図4】本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法の流れを模式的に示した図である。
【図5】本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法における工程(a)および工程(b)の一例を示す模式側面図である。
【図6】本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法における工程(a)および工程(b)の一例を示す模式側面図である。
【図7】本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法における工程(a)および工程(b)の一例を示す模式側面図である。
【図8】本発明の型付けロールの一例を示す模式側面図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】従来の光学フィルム用長尺積層体の一例を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明によって製造された光学フィルム用長尺積層体からシート状に切り出された光学フィルムの一例の模式平面図であり、図2は図1のA−Aの模式断面図である。図2のA−A線は光吸収部5と垂直に交わる線である。
【0015】
図1の光学フィルムは、ディスプレイに装着できるようにディスプレイのサイズに合わせて1枚単位にシート状に切断加工されたものであり、以下、枚葉光学フィルムと言う。また、本発明によって製造された光学フィルム用長尺積層体を本発明の光学フィルム用長尺積層体と言い、該光学フィルム用長尺積層体から切り出された枚葉光学フィルムを本発明の枚葉光学フィルムと言う。
【0016】
本発明の枚葉光学フィルム1は、基材フィルム2上に外光遮蔽層3が積層されたものである。外光遮蔽層3は、基盤層4に直線状の光吸収部5がストライプ状に複数形成されたものである。そして、光吸収部5は僅かに傾斜するように配置されている。
【0017】
本発明の枚葉光学フィルムの平面形状は長方形であり、その長辺と光吸収部5とが成す鋭角の大きさα(以後、光吸収部の傾斜角度α)は、0.5〜10度の範囲が好ましい。これによって、外光遮蔽層を有する枚葉光学フィルムをディスプレイに装着したときのモアレ現象を抑制することができる。光吸収部の傾斜角度αは、好ましくは1〜8度の範囲であり、より好ましくは1.5〜7度の範囲である。
【0018】
図1では、光吸収部5が右下がりに傾斜した例を示しているが、本発明では光吸収部5が逆に右上がりに傾斜した態様とすることもできる。
【0019】
また、本発明の枚葉光学フィルムにおいて、光吸収部5の高さhは、20〜200μmの範囲が好ましく、30〜150μmの範囲がより好ましく、特に50〜130μmの範囲が好ましい。光吸収部5の最大幅Wは、3〜20μmの範囲が好ましく、5〜15μmの範囲がより好ましい。複数配列された光吸収部のピッチPは、20〜200μmの範囲が好ましく、30〜150μmの範囲がより好ましい。また、光吸収部の断面形状は、台形、三角形、長方形が好ましく、特に台形、三角形が好ましい。
【0020】
上記した光吸収部が傾斜した外光遮蔽層を有する枚葉光学フィルムは従来から知られている。しかし、前述したように従来の製造方法は、枚葉光学フィルムを斜めに切り出す必要があるため、無駄が多く歩留まりが低いという問題があった。
【0021】
そこで、本発明は、図3に示すような光学フィルム用長尺積層体11を製造し、この長尺積層体11を用いることによって、枚葉光学フィルム10を無駄がなく効率よく切り出すことでき、歩留まりが向上することを見いだした。
【0022】
即ち、本発明の光学フィルム用長尺積層体11は、光吸収部15が長尺基材フィルム12の長手方向の中心線Yに対して所定の角度で傾斜するように形成されているので、上記中心線Yに対して長方形の枚葉光学フィルム10の長辺が平行になるように切り出すことができる。その結果、無駄が無く効率よく枚葉光学フィルムを製造することができる。
【0023】
光吸収部15は中心線Yに対して鋭角の大きさがθ(以後、傾斜角度θとする)で傾斜しており、この傾斜角度θは、切り出される枚葉光学フィルムの傾斜角度αとほぼ一致するように形成される。従って、本発明の光学フィルム用長尺積層体11における光吸収部の傾斜角度θは、0.5〜10度の範囲が好ましく、1〜8度の範囲がより好ましく、特に1.5〜7度の範囲が好ましい。
【0024】
図3では、光吸収部15が右下がりに傾斜した例を示しているが、本発明では光吸収部15が逆に右上がりに傾斜した態様とすることができる。
【0025】
以下、図3に示すような本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法について説明する。
【0026】
図4は、本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法の流れを模式的に示した図であり、長尺基材フィルム12の長手方向に直交する模式断面図である。
【0027】
本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法は、長尺基材フィルムの少なくとも一方の面に基盤層を積層する工程(a)と、型付けロールによって、基盤層に、長尺基材フィルムの長手方向に対して長手方向が傾斜する溝を形成する工程(b)と、工程(a)と工程(b)の両方が完了した後に、工程(b)で形成した溝に光吸収性インキを充填して光吸収部を形成する工程(c)と、を有する。ここで、「工程(a)と工程(b)の両方が完了した後に」とは、工程(a)の後と工程(b)の後にそれぞれ工程(c)を行うことではなく、工程(a)と工程(b)の両方が完了してから工程(c)を行うことである。
【0028】
本発明において、詳しくは後述するが、基盤層および光吸収性インキは活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましく、電子線や紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化することが好ましい。
【0029】
以下、上記それぞれの工程について詳しく説明する。
【0030】
工程(a)と工程(b)は、それぞれ独立に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0031】
工程(a)と工程(b)とを独立に行う態様は、1)長尺基材フィルムに基盤層を積層(塗工)した後、基盤層に溝を形成する方法である。この場合、基盤層の硬化は、型付けロールを基盤層に当てて溝を形成するのとほぼ同時に活性エネルギー線を照射して硬化するのが好ましい。
【0032】
工程(a)と工程(b)を同時に行う態様としては、2)長尺基材フィルムと型付けロールとの間に基盤層形成用塗料を供給し、長尺基材フィルムと型付けロールとの間に基盤層が形成された状態で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、3)型付けロールに基盤層形成用塗料を供給した後、長尺基材フィルムを型付けロールに当てて両者の間に基盤層が形成された状態で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、4)型付けロールに供給された基盤層形成用塗料を長尺基材フィルムに転写するのとほぼ同時に活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、あるいは5)型付けロールに基盤層形成用塗料を供給し、型付けロール上に基盤層が密着している状態で活性エネルギー線を照射して硬化あるいは半硬化させた後、溝が形成された基盤層を長尺基材フィルムに転写する方法、が挙げられる。
【0033】
上記した態様の中でも、2)、3)、および4)の方法が好ましく用いられる。上記2)、3)及び4)の態様のそれぞれの例を図5〜図7に示す。
【0034】
図5は、上記2)の態様の1例を示す模式側面図である。矢印の方向に連続搬送される長尺基材フィルム12と型付けロール30との間に、基盤層形成用塗料の供給装置32から塗料が供給され、長尺基材フィルム12と型付けロール30との間に基盤層(図示せず)が形成された状態で活性エネルギー線である紫外線を紫外線照射装置33から照射して基盤層を硬化させる。
【0035】
図6は、上記3)の態様の1例を示す模式側面図である。基盤層形成用塗料の供給装置32から型付けロール30に塗料が供給され、ブレード34で塗布量が調整された後、矢印の方向に連続搬送される長尺基材フィルム12を型付けロール30に当てて、両者の間に基盤層(図示せず)が形成された状態で活性エネルギー線である紫外線を紫外線照射装置33から照射して基盤層を硬化させる。
【0036】
図7は、上記4)の態様の1例を示す模式側面図である。基盤層形成用塗料の貯留容器35に貯留された塗料を型付けロール30がすくい上げ、塗布量がブレード34で調整された後、矢印の方向に連続搬送される長尺基材フィルム12に型付けロール30の塗料を転写しながら活性エネルギー線である紫外線を紫外線照射装置33から照射して基盤層を形成する。
【0037】
上記した工程(a)と工程(b)を経て、複数のストライプ状の溝が形成された基盤層が長尺基材フィルム上に積層された後、工程(c)では基盤層に設けられた溝に光吸収性インキが充填される。
【0038】
かかる光吸収性インキの充填方法としては、溝を含めた基盤層上のほぼ全面に光吸収性インキを供給した後、基盤層表面をワイピングもしくはスキーズして溝以外の基盤層表面に付着した光吸収性インキを除去して、溝のみに光吸収性インキを充填する方法を用いることができる。溝に光吸収性インキを充填した後、活性エネルギー線を照射して光吸収性インキを硬化することが好ましい。
【0039】
本発明は、工程(b)における基盤層に溝を形成するための型付けロールに特徴を有する。本発明の型付けロールは、ロールの周面に螺旋状の突起を有し、この螺旋状の突起が、基盤層に直線状の溝をストライプ状に形成する。そして、螺旋状突起の傾斜角度は、光学フィルム用長尺積層体の光吸収部の傾斜角度θに合わせて設計される。
【0040】
本発明にかかる型付けロールの螺旋状突起の傾斜角度は、型付けロールの回転軸に対する螺旋状突起の傾斜角度βで表すことができる(図9を参照)。この傾斜角度βは光学フィルム用長尺積層体の光吸収部の傾斜角度θを90度から差し引いた角度であり、両者の関係式は以下のようになる。
・傾斜角度β=90度−傾斜角度θ ・・・・ 式1。
【0041】
図8は、本発明の型付けロールの一例を示す模式側面図である。本発明の型付けロールは、ロール周面に螺旋状突起31が所定の傾斜角度で設けられている。
【0042】
本発明の型付けロールにおける螺旋状突起は多重螺旋状に複数配置されていることが好ましい。
【0043】
本発明の型付けロールの設計は、光学フィルム用長尺積層体における光吸収部のピッチP(μm)と光吸収部の傾斜角度θ、および型付けロールの直径D(mm)と螺旋状突起の螺旋数n(n重螺旋)により、下記の関係を満たすように設計される。
・tanθ={(P/cosθ)×n}/1000πD
つまり、sinθ=(P×n)/1000πD ・・・ 式2。
【0044】
型付けロールの直径Dは、該ロールが組み込まれる製造装置に合わせて適宜に設計することができるが、螺旋状突起の螺旋数nは整数となるように設計しなければならず、そのための調整は型付けロールの直径Dで調整する必要がある(光学フィルム用長尺積層体における光吸収部のピッチPと光吸収部の傾斜角度θは決まっているため)。上記の式2により、任意の傾斜角度の螺旋状突起を有する型付けロールを作製することが可能になる。
【0045】
尚、本発明において、光学フィルム用長尺積層体における光吸収部のピッチPと型付けロールの螺旋状突起のピッチPr(図9に示す)は同じである。
【0046】
上記螺旋数nは、螺旋状突起が多重螺旋で形成されている場合の螺旋数であり、独立した螺旋状突起の数である。螺旋数nについて、図9を用いて説明する。図9は、図8の部分拡大図である。螺旋数nは、1つの螺旋状突起31がロールを1周するのに必要な長さL(ロールの回転軸Xに平行なロール周面の長さ)の中に存在する螺旋状突起の数である。
【0047】
上記式2によって決定した型付けロールの直径Dと螺旋状突起の螺旋数n、および螺旋状突起のピッチPr(光学フィルム用長尺積層体の光吸収部のピッチPと同じ)に基づいて作製された型付けロールの螺旋状突起の傾斜角度βは、上記式1の関係を満足する。
【0048】
上記式2を用いて型付けロールを設計したときの1つの具体例を以下に示す。
【0049】
光学フィルム用長尺積層体の光吸収部のピッチPが50μmで、光吸収部の傾斜角度θが5度である場合、上記式2によって計算した螺旋状突起の螺旋数nは500で、型付けロールの直径Dは91.3mmである。
【0050】
本発明の製造方法によって得られる光学フィルム用長尺積層体における光吸収部の傾斜角度θは、前述したように0.5〜10度の範囲が好ましく、1〜8度の範囲がより好ましく、特に1.5〜7度の範囲が好ましい。従って、上記式1より、本発明に用いられる型付けロールにおける螺旋状突起の傾斜角度は、80〜89.5度の範囲が好ましく、82〜89度の範囲がより好ましく、特に83〜88.5度の範囲が好ましい。
【0051】
また、本発明の型付けロールの螺旋状突起の断面形状、突起の高さや幅は、最終製品である枚葉光学フィルムの光吸収部5の断面形状、高さh、幅Wに合わせて設計される(図2参照)。
【0052】
本発明にかかる型付けロールは、従来の一般的な型付けロールの製造方法、例えば、ロール周面を削って突起を形成する、いわゆる、バイト加工法では困難であった。従って、本発明の光吸収部が傾斜した光学フィルム用長尺積層体は、未だ提案されていない。
【0053】
本発明の型付けロールは、例えば、ロール周面に突起を付加する、いわゆるアディティブ法によって製造することができる。
【0054】
かかる製造方法は以下の工程を含む。1)ロール周面がニッケル等の金属からなるロールの周面に光硬化性樹脂層を被覆した後、この光硬化性樹脂層にレーザーを螺旋状に照射する(レーザーが照射された部分は硬化し、照射されない部分は未硬化となる)。2)次に、光硬化性樹脂層を現像してレーザーが照射されていない未硬化の部分を溶解除去して、光硬化性樹脂層中に螺旋状の溝を形成する(この螺旋状の溝が後のメッキ工程で螺旋状突起となる)。3)次に光硬化性樹脂層中に形成された溝の底部に露出した金属にメッキを施して溝内にメッキ金属部を形成する。4)次に残っている光硬化性樹脂層を溶解除去することによって、ロール周面にメッキ金属部からなる螺旋状の突起が出現する。
【0055】
本発明にかかる外光遮蔽層を構成する基盤層は、長尺基材フィルムのほぼ全面に設けられることが好ましい。かかる基盤層は光透過性であり、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましい。基盤層における活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量は、基盤層の固形分総量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、特に70質量%以上であることが好ましい。上限は98質量%程度である。
【0056】
かかる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、分子中に(メタ)アクリル基やビニル基等のエチレン性不飽和二重結合基を有するモノマーやオリゴマー(プレポリマーを含む)を用いることができる。特に、分子中に2個以上のエチレン性不飽和二重結合基を有する多官能アクリレート化合物が好ましく用いられる。
【0057】
かかる多官能アクリレート化合物としては、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化するために紫外線を用いる場合は、光吸収性インキ中に光重合開始剤を含有させるのが好ましい。
【0059】
外光遮蔽層を構成する光吸収部は、基盤層に形成された溝に光吸収性インキを充填することによって形成される。かかる光吸収性インキは、例えば樹脂成分と着色剤を含有したものを用いることができる。
【0060】
樹脂成分として、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。特に活性エネルギー線硬化性樹脂は、硬化速度が早く生産性に優れので好ましい。
【0061】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、分子中に(メタ)アクリル基やビニル基等のエチレン性不飽和二重結合基を有するモノマーやオリゴマーを用いることができる。特に、分子中に2個以上のエチレン性不飽和二重結合基を有する多官能アクリレート化合物が好ましく用いられる。
【0062】
かかる多官能アクリレート化合物としては、上記の基盤層に記載の化合物と同様のものを用いることができる。
【0063】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化するために紫外線を用いる場合は、光吸収性インキ中に光重合開始剤を含有させるのが好ましい。
【0064】
光吸収性インキに含まれる着色剤としては、各種顔料や染料を用いることができる。着色剤としては顔料が好ましく、例えば、黒色顔料、あるいは赤顔料、青顔料および緑顔料の混合物を含有させることができる。これらの中でも、特に黒色顔料が好ましい。
【0065】
黒顔料としては、Color Index No.ピグメントブラック7、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物等が挙げられ、これらの顔料は1種のみで使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
着色剤の含有量は、樹脂成分100質量%に対して5〜200質量%の範囲が適当であり、10〜150質量%の範囲が好ましい。
【0067】
本発明の光学フィルム用長尺積層体の長手方向の長さは、枚葉光学フィルムが長手方向に少なくとも複数枚取れる長さであり、好ましくは枚葉光学フィルムが10枚以上取れる長さであり、より好ましくは枚葉光学フィルムが100枚以上取れる長さである。光学フィルム用長尺積層体の具体的長さは、30m以上が好ましく、100m以上がより好ましく、200m以上であることが更に好ましい。上限は2000m程度である。
【0068】
本発明の光学フィルム用長尺積層体に用いられる長尺基材フィルムの長さは、上記の光学フィルム用長尺積層体の長さと同等もしくはそれ以上であることが好ましい。
【0069】
本発明にかかる長尺基材フィルムはプラスチックフィルムであることが好ましい。かかるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびセルロース樹脂が好ましく、更にポリエステル樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、上記の樹脂からなる層が2層以上積層された積層プラスチックフィルムであってもよい。
【0070】
長尺基材フィルムの厚みは、30〜300μmの範囲が適当であり、50〜200μmの範囲が好ましい。
【0071】
長尺基材フィルムは、基盤層あるいは後述する機能層との密着性を強化するために易接着層が予め積層されていることが好ましい。易接着層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を主成分として形成されていることが好ましい。ここで樹脂を主成分とするとは、易接着層の固形分総量100質量%に対して樹脂を50質量%以上含むことであり、好ましくは60質量%以上含むことであり、特に70質量%以上含むことである。上限は98質量%程度である。
【0072】
易接着層は、更に架橋剤を含有することが好ましい。かかる架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤が好ましく用いられる。
【0073】
易接着層は、更に易滑性や耐ブロッキング性の向上のために、無機微粒子を含有することが好ましい。かかる無機微粒子としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。
【0074】
易接着層の厚みは、5〜300nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましい。
【0075】
本発明にかかる光学フィルム用長尺積層体は、長尺基材フィルムの片面のみに外光遮蔽層を設けてもよいし、あるいは長尺基材フィルムの両面に外光遮蔽層を設けてもよい。本発明において好ましくは、長尺基材フィルムの片面に外光遮蔽層が設けられ、反対面(外光遮蔽層が設けられた面とは反対面)に外光遮蔽層以外の機能層が設けられた光学フィルム用長尺積層体である。
【0076】
外光遮蔽層以外の機能層としては、特に限定されず、単一層で構成されても複数層で構成されてもよい。機能層は、例えば反射防止層、ハードコート層、近赤外線遮蔽層、色調調整層、および電磁波シールド層の中から選ばれる少なくとも1つの層を含むことが好ましく、特に反射防止層を含むことが好ましい。
【0077】
従って、本発明の光学フィルム用長尺積層体の製造方法に用いられる長尺基材フィルムは、外光遮蔽層が積層される側とは反対面に、外光遮蔽層以外の機能層、例えば反射防止層、ハードコート層、近赤外線遮蔽層、色調調整層、および電磁波シールド層の中から選ばれる少なくとも1つの層が予め積層されたものであることが好ましい。
【0078】
長尺基材フィルムの外光遮蔽層が積層される側とは反対面に設けられる機能層としては、少なくとも反射防止層を含むことが好ましく、特にハードコート層と反射防止層がこの順に積層された構成であることが好ましい。かかる反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層の積層構成であってもよいし、低屈折率層の単一層で構成されていてもよいが、好ましくは低屈折率層のみの単一層である。
【0079】
上記ハードコート層は、反射防止層表面に傷が発生するのを防止するために硬度が高いことが好ましく、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度が、H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
【0080】
ハードコート層は、樹脂成分として熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましく、更に、紫外線や電子線等の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましい。特に、活性エネルギー線硬化性のアクリル樹脂が好ましい。
【0081】
ハードコート層は、更に屈折率を高めるためあるいは帯電防止性を付与するために、金属酸化物粒子を含有することが好ましい。かかる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、リンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。ハードコート層における金属酸化物粒子の含有量は、ハードコート層の固形分総量100質量%に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、特に40質量以上であることが好ましい。上限は80質量%程度である。
【0082】
ハードコート層の屈折率は、1.5〜1.8の範囲が好ましく、1.53〜1.7の範囲がより好ましく、特に1.55〜1.67の範囲が好ましい。ハードコート層の厚みは、0.5〜10μmの範囲が適当であり、0.5〜7μmの範囲が好ましく、1〜5μmの範囲がより好ましく、特に1.5〜3μmの範囲が好ましい。
【0083】
上記したようにハードコート層上に積層される反射防止層は、低屈折率層の単一層であることが好ましい。かかる低屈折率層の屈折率は1.25〜1.45の範囲が好ましく、1.30〜1.43の範囲がより好ましく、特に1.30〜1.40の範囲が好ましい。
【0084】
低屈折率層の厚みは、0.05〜0.15μmの範囲が好ましく、特に0.08〜0.12μmの範囲が好ましい。
【0085】
低屈折率層は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂と、低屈折率材料として低屈折率無機粒子および/または含フッ素化合物とを含む層であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂としてはアクリル樹脂が好ましい。
【0086】
上記低屈折率無機粒子としては、シリカやフッ化マグネシウム等の無機粒子が好ましく用いられる。更にこれらの無機粒子は中空状や多孔質のものが好ましい。上記無機粒子の屈折率は1.2〜1.4の範囲が好ましく、1.2〜1.35の範囲がより好ましい。
【0087】
上記の含フッ素化合物としては、含フッ素モノマー、含フッ素高分子化合物が挙げられる。
【0088】
含フッ素モノマーとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0089】
含フッ素高分子化合物としては、例えば、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等である。架橋性基付与のためのモノマーとしてはグリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。
【0090】
更に、本発明の光学フィルム用長尺積層体に用いられる長尺基材フィルムは、ポリエステルフィルム(特にポリエチレンテレフタレートが好ましい)一方の面に、ポリエステル樹脂を主成分とする易接着層(A)を介してハードコート層と反射防止層がこの順に積層され、他方の面(外光遮蔽層が積層される面)にアクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を主成分とする易接着層(B)が予め積層されていることが好ましい。
【0091】
ここで、易接着層(A)がポリエステル樹脂を主成分とするとは、易接着層(A)の固形分総量100質量%に対して50質量%以上含むことであり、好ましくは60質量%以上含むことであり、特に好ましくは70質量%以上含むことである。上限は98質量%程度である。同様に、易接着層(B)がアクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を主成分とするとは、易接着層(B)の固形分総量100質量%に対して50質量%以上含むことであり、好ましくは60質量%以上含むことであり、特に好ましくは70質量%以上含むことである。上限は98質量%程度である。
【0092】
上記の易接着層(A)および易接着層(B)を用いることによって、ポリエステルフィルムに対するハードコート層および外光遮蔽層の密着性が改良するとともに、反射防止面の干渉縞低減にも有効となる。
【0093】
易接着層(A)および易接着層(B)には、前述したように更に、架橋剤や粒子を含むことが好ましい。
【0094】
上述したように、長尺基材フィルムとして該長尺基材フィルムの外光遮蔽層が積層される側とは反対面に機能層が予め積層されたものを用いた場合、長尺基材フィルムおよび光学用長尺積層体の付加価値が更に向上するために、本発明のように枚葉光学フィルムを無駄なく効率よく切り出すことができることは極めて有意義である。
【符号の説明】
【0095】
1、10、40 枚葉光学フィルム
2 基材フィルム
3、13 外光遮蔽層
4、14 基盤層
5、15、45 光吸収部
11、41 光学フィルム用長尺積層体
12、42 長尺基材フィルム
30 型付けロール
31 螺旋状突起
32 基盤層形成用塗料の供給装置
33 紫外線照射装置
34 ブレード
35 基盤層形成用塗料の貯留容器
M 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺基材フィルムの少なくとも一方の面に基盤層を積層する工程(a)と、
螺旋状の突起を有する型付けロールによって、前記基盤層に、前記長尺基材フィルムの長手方向に対して長手方向が傾斜する複数の溝を形成する工程(b)と、
前記工程(a)と前記工程(b)の両方が完了した後に、前記溝に光吸収性インキを充填して光吸収部を形成する工程(c)と、を有する光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
【請求項2】
前記型付けロールの螺旋状突起の傾斜角度βが、該ロールの回転軸Xに対して80〜89.5度である、請求項1の光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)と前記工程(b)がほぼ同時に行われる、請求項1または2の光学フィルム用長尺積層体の製造方法。
【請求項4】
前記長尺基材フィルムが、前記基盤層が積層される面とは反対面に、反射防止層、ハードコート層、近赤外線遮蔽層、色調調整層および電磁波シールド層からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能層を有する、請求項1〜3のいずれかの光学フィルム用長尺積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56156(P2012−56156A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200596(P2010−200596)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】