説明

光学多層

ゼロでない面外複屈折を有するポリマー基体及び非晶質ポリマーオーバーレイヤーを含んで成る光学多層であって、400nm〜700nmの間の波長の光において−30nm〜30nmの間に前記光学多層の全面外位相リターデーションを提供するように、前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーが、160℃を超えるTg値を有しかつ前記ポリマー基体の面外複屈折とは反対のその面外複屈折の符号を有している非晶質ポリマーを含んで成る光学多層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ゼロでない面外複屈折を有するポリマー基体及び前記基体とは反対の符号の面外複屈折有する非晶質ポリマーオーバーレイヤーを含んで成る光学多層に関する。この多層は、全体的に低い面外位相リターデーションを有する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は、材料費が低くかつ加工しやすいので、光電子部品に広く使用されている。現在引き続き目標になっているのは、「壊れやすい」、「重い」かつ「機械加工しにくい」ことが分かっている無機ガラス類と置き換えることである。しかし、ポリマー材料は、加工に依存する光学的特性、特に複屈折性を有する。すべての光学級のポリマーは透明でかつ非晶質である。非晶質ポリマーは、所望の形状に加工すると、無機ガラス類と異なり、光学的に等方性を有しない。すなわち、3方向の屈折率、nx、ny及びnzが等しくない。これは、ポリマーに特有なポリマー鎖の配向によるためである。したがって、加工条件が与えられると、観察される光学的異方性は、ポリマー鎖の整列の程度によって決まる。ポリマー分子は、官能基の分極率及びその官能基のポリマー鎖に対する結合角などの要因で決定される固有の複屈折Δnintを有している。ポリマー製品は、固有の複屈折とは異なりかつ加工依存性が強い外因性複屈折(面内又は面外)を有している。用途によっては、この複屈折は、用途の要件を満たすように制御しなければならない。多くの場合、面内方向及び面外方向の両方において、実質的に低い複屈折又は位相リタ―デイションを有することが望ましい。
【0003】
コンパクトディスク(CD)及びディジタルビデオディスク(DVD)などの光学ディスクの用途では、基体の材料は、1)高い透過性、2)低い湿分浸透性、3)寸法安定性及び4)低い複屈折などの条件を満たさねばならない。通常、光学ディスクの読取りによって、分極状態のわずかな変化又はディスク表面からの反射光の強度の変化の検出が行われる。したがって、ディスク基体の複屈折は、読出しに対して読み取りの誤り又はノイズなどの有害な作用がある。光学ディスクの基体は、ポリマーを射出成形することによって製造される。ポリカーボネート(PC)が、CDとDVD用の基体として広く使用されている。ポリカーボネートは、高い透過性、熱や湿分に対する高い寸法安定性及び高い機械的強度を有している。しかしPCは、比較的高い固有の複屈折Δnintを有している。射出成形加工は、ポリマー鎖の配列を生じる。したがって、PCなどの高い固有の複屈折を有するポリマーは、許容できないレベルの面内リターデーションRinと面外レターデイシヨンRthを起こしやすい。この問題を防止するため、通常、温度及び流量などの前記成形条件を調節する。加工条件をこのように最適化して、Δninを低下させることによってRinを有意に低下させることに成功している。
【0004】
場合によっては、垂直入射光の面内複屈折Δninは、1〜3×10-5ほどに低くできる。一方、面外複屈折Δnthは、通常、負であり、最適化された成形法の場合、その値は−6〜−5×10-4である。Δnthの値がたとえ小さくても、斜めに入射する光の対応する位相リターデーションは、基体の厚さが約1mmでかなり厚いので無視できない。したがって、基体に傾傾斜角φ(基体に垂直の方向から測定)で入射する光は、φが小さい場合、概略の大きさがφ2の位相リターデーションを受ける。場合によって、全位相リターデーションは、反射を考慮して、φ=30°で−150nmほどの大きさに達することがある。
【0005】
通常の液晶ディスプレイ(LCD)では、液晶セルが一対の偏光子の間に配置される。偏光子で偏光された入射光は、液晶セルを通過してその液晶の分子配向の作用を受けるが、その分子配向はそのセルに電圧をかけることによって変えることができる。その変えられた光は第二の偏光子に入る。液晶ディスプレイ(LCD)に広く使われている典型的な偏光子は、吸収偏光層(例えば、ヨウ素色素を吸収したポリビニルアルコール(PVA)の層)がトリアセチルセルロース(TAC)基体の間にサンドイッチされているような構造を有している。TACは、一つにはそのΔnintが低いことから、偏光子を製造する際に広く使用されている。通常の未延伸TACの場合、そのΔninは5×10-5程度である。したがって、厚さが100μmのTACはRinが約5nmである。位相リターデーションのこの大きさは重要ではなく、PVA層によって直線偏光された光はほとんど直線偏光されたままでTAC層を通過する。しかし、これは、光が偏光子の平面に対して垂直に入射するときにのみ当てはまる。大部分のTAC基体は、約−5×10-4程度の負のΔnthを有していることが分かっている。その結果Rthは約−50nmになる。この面外位相リターデーションRthは、斜めに入射する光の偏光の状態が変化する原因である。LCDのいくつかのモードの場合、TAC基体では有限の負のΔnthを有している方が好ましい。これは、この負のRthが、液晶セルの平面に垂直に配置されている液晶分子の正のRthを補償できるからである。しかしTACの負のRthは、液晶が液晶セルの平面にほぼ平行のままであるLCDモードでは有害な作用がある。これは、面内スイッチングLCDの場合であり、この場合、液晶分子は、セルの平面に実質的に平行のままで回転する。
【0006】
典型的なバックライトLCDにおいては、そのバックライティングアセンブリは、液晶セルに到達する前に、光の分布と偏光を改善するいくつかの光学フィルムを備えている。このバックライティングアセンブリ201は図2に示してある。バックライト203から発する光は、第一に、ディスプレイの光の分布を改善する、拡散フィルム205及び輝度向上フィルム207などの光学フィルムに遭遇する。次いで、光は、基体211及び一方の偏光状態を透過して他方の偏光状態を反射する偏光層213を含む反射偏光子209に入射する。光路における次の要素は、吸収偏光子215であり、これは底部基体217、吸収偏光層219及び頂部基体221を含んでいる。吸収偏光子の透過軸と反射偏光子の透過軸は平行している。反射偏光子209によって透過される偏光状態が吸収偏光子215によって透過される偏光状態と同じであることが理想的である。バックライト203と反射偏光子209の間の光学的スタックは、反射される偏光状態を再利用する。吸収偏光子215に入射する偏光は、光が有効に透過されて吸収されないように、実質的に直線偏光されねばならない。先に述べたように、通常の吸収偏光子は、吸収偏光層219の両面に、基体217、221としてTACを含んでいる。底部基体217として使われるTACの負の面外複屈折によって、吸収偏光子215に入射する直線偏光された光が、楕円偏光された光に変換される。次に、偏光層219は、楕円偏光された光の一部分を吸収する。その結果、ディスプレイの光スループットが低下する。最大の光スループットを得るには、反射偏光子209と吸収偏光層219の間の底部基体217のΔnthとRthの値は小さくなければならない。
【0007】
先に述べたように、加工を注意深く調節すると、ポリマー基体のΔninを、したがってRinを有意に低下させることができる。加工条件をさらに最適化すると、残りの負のΔnthがさらに低下すると予想できる。しかし、製造費用は増加する。多層を製造する別の方法がある。その方法は、正のRthを有するオーバーレイヤーを、負のRthを有するポリマー基体の上に配置する方法である。この方法によって、400nm<λ<700nmの範囲内の波長λに対して低いRthの値(−30nm<Rth<30nm)を有する光学多層が提供される。
【0008】
Δnthがゼロでない、したがってRthもゼロでない層の製造方法がいくつか知られている。
【0009】
当業者にはよく知られているように、基体に対して垂直に、均一に整列されている液晶は、液晶のΔnintが正であれば、正のΔnthを生ずる。例えば、米国特許第6,261,649号に開示されているような重合可能な液晶は、垂直整列を提供する。しかし液晶化合物は一般に高価でありかつ大量生産の規模で均一整列の液晶を生成することは複雑で簡単ではない。場合によっては、前記垂直整列を固定するためには光重合工程が必要であり、余分の工程と費用が加わる。
【0010】
Li等(Polymer,Vol.37,Page 5321-5325,1996)は、透明基体上にポリアミド類をスピンコートすることによって、ゼロでないRthを生成する方法を述べている。ポリアミドポリマー鎖のランダム配向が生成されている。開示された方法は、ポリマーを単にコートする方法である。しかし、得られるΔnthとRthは負である。したがってこの方法は、上記ポリマー基体のΔnthの負性を増強しているに過ぎない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
加工を最適化することで、Rthが充分に小さいポリマー基体を得ることは困難である。また、従来技術は、正のΔnthを有するポリマー層を生成する簡単な方法を提供することができないので、Rthの小さいポリマー多層を製造する方法は難しくなる。したがって、解決しなければならない問題は、負のRthを有するポリマー基体の上に配置してRthの値が小さい多層を形成できる、正のΔnthを有するポリマー層を含んでいるポリマー多層、及びそのポリマー多層の簡単な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ゼロでない面外複屈折を有するポリマー基体及び非晶質ポリマーオーバーレイヤーを含んで成る光学多層であって、400nm〜700nmの間の波長の光において−30nm〜30nmの間に前記光学多層の全面外位相リターデーションを提供するように、前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーが、160℃を超えるTg値を有しかつ前記ポリマー基体の面外複屈折とは反対のその面外複屈折の符号を有している非晶質ポリマーを含んで成る光学多層を提供する。
【0013】
したがって、本発明は、負のRthを有するポリマー基体の上に配置して低い値のRthを有する多層を形成できる正のΔnthを有するポリマー層を含んで成るポリマー多層、及びその簡単な製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の定義は本明細書の説明に適用される。
秩序因子(order parameter)Sは、基準の方向に対するポリ−マーの整列度を意味する。Sは、下記式:
S=3<cosθ2−1>/2
(式中、θは基準方向とポリマー鎖の個々のセグメントの間の角度である)によって与えられる。括弧<>は統計的平均値を示す。Sは−0.5〜1.0の値を取ることができる。
【0015】
図1に示す層101の面内位相リターデーションRinは、式(nx−ny)d(式中、nxとnyはそれぞれxとyの方向の屈折率である)によって定義される量である。xはx−y面内で屈折率が最大の方向をとり、そしてyはx−y平面に垂直の方向である。x−y平面は層の面103に平行である。dは前記層のz方向の厚さである。量(nx−ny)は面内複屈折Δninと呼称される。Δninの値は、波長λ=550nmに対して与えられる。
【0016】
図1に示す層101の面外位相リターデーションRthは、式[nz−(nx+ny)/2)]dで定義される量である。nzはz方向の屈折率である。量の[nz−(nx+ny)/2)]は面外複屈折Δnthと呼称されている。nz>(nx+ny)/2であれば、Δnthは正であり、したがって対応するRthも正である。nz<(nx+ny)/2であれば、Δnthは負の値であり、したがってRthも負の値である。Δnthの値は、λ=550nmに対して与えられる。
【0017】
ポリマーの固有の複屈折Δnintは、式(ne−no)(式中、neとnoはそれぞれポリマーの異常光線屈折率と常光線屈折率である)で定義される量を意味する。ポリマー層の実際の複屈折(面内Δnin又は面外Δnth)は、その成形法したがってその秩序因子及びΔnintによって決まる。
【0018】
非晶質は、長距離秩序(long-range order)が欠如していることを意味する。したがって、非晶質ポリマーは、X線回折法などの方法で測定したとき長距離秩序を示さない。
【0019】
透過率は光の透過性を評価する量である。これは射出光の強度Ioutの入射光の強度Iinに対する百分率:Iout/Iin×100で与えられる。
【0020】
本明細書における発色団は、光を吸収する単位として働く原子又は原子の基と定義される(Nicholas J. Turro編「Modern Molecular Photochemistry」,Benjamin/Cummings Publishing Co.,Menlo Park ,CA(1978)Pg77)。不可視発色団は、400〜700nmの範囲以外の吸光度が最大の発色団である。
【0021】
本発明の各種要素に数字表示を付し、当業者が本発明を実施し使用できるように本発明を検討する図面を参照する。具体的に提示又は記載されていない要素は、当業者によく知られている各種の形態を取ることができると解すべきである。
【0022】
図3Aは、本発明の光学多層301の構造を示す。303はポリマー基体であり、305は非晶質ポリマーオーバーレイヤーである。非晶質ポリマーオーバーレイヤー305は、図3Bに示すように、ポリマー基体303の両面に配置してもよい。二つのポリマー基体303を、図3Cに示すように非晶質ポリマーオーバーレイヤーの両面に配置してもよい。ポリマー基体303のΔnthは負の値であり、非晶質ポリマーオーバーレイヤー305のΔnthは正の値である。通常、基体303のΔnthの値は極めて小さい(−1×10-4〜−3×10-5)。しかし、基体303の厚さがかなり大きい場合は(例えば、約1mm)、Rthは無視することができず、−100nm〜−30nmの範囲になるであろう。一方、オーバーレイヤー305のΔnthは、5×10-3(0.005)より正である。したがって、オーバーレイヤー305の厚さは、光学多層301の基体の厚さよりはるかに小さく、400nm<λ<700nmの場合、−30nm<Rth<30nmである。例えば、基体303(例えば、厚さ1mmでΔnth=−5×10-5)からRth=−50nmをバランスさせるためには、オーバーレイヤー305のΔnthが0.01であれば、非晶質ポリマーオーバーレイヤー305は僅か5μmとなる。多層301の全厚を妥当な範囲に保持するには、ポリマーのオーバーレイヤー305の厚さは、好ましくは1〜50μmであるか、より好ましくは5〜20μmである。オーバーレイヤー305の透過率は、光学多層301の全透過率が依然として高いままであるように充分高くなくてはならない。非晶質ポリマーオーバーレイヤー305の透過率は、400nm<λ<700nmにおいて、好ましくは80%より高いか、より好ましくは90%より高い。
【0023】
当業者にはよく知られているように、非晶質ポリマーの複屈折Δnpは、式:Δnp=SΔnintで与えられる。従来技術では、液晶401の垂直方向(図4Aのz方向)の整列を利用して正のΔnthを生成する。この場合、Sは0≦S≦1の範囲内であり、そしてΔnintは正である。ポリマー鎖403が、図4Bに示すように、ポリマー層の面内でランダムに配向している場合、Δnthが生成し、一方Δninはゼロである。このような配向の場合、ポリマー鎖の秩序因子Sは、−0.5<S<0の範囲内である。したがって、ポリマー基体の上の非晶質ポリマーオーバーレイヤーに正のΔnthを得るため、負のΔnintを有するポリマーを用いることができる。そのようなポリマーの例としては、ポリマーの主鎖から離れて不可視発色団を有する材料がある。このような不可視発色団としては、ビニル、カルボニル、アミド、イミド、エステル、カーボネート、スルホン、アゾ、芳香族複素環基及び炭素環基(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、フェノール、ビスフェノールA及びチオフェン)がある。さらに、これら不可視発色団を組み合わせたもの(すなわちコポリマー)も好ましい。このようなポリマーの例とその構造を以下に示す。
【0024】
例I:
ポリ(4−ビニルビフェニル)
【0025】
【化1】

【0026】
例II:
ポリ(4−ビニルフェノール)
【0027】
【化2】

【0028】
例III :
ポリ(N−ビニルカルバゾール)
【0029】
【化3】

【0030】
例IV:
ポリ(メチルカルボキシフェニルメタクリルアミド)
【0031】
【化4】

【0032】
例V:
ポリ[(1−アセチルインダゾール−3−イルカルボニルオキシ)エチレン]
【0033】
【化5】

【0034】
例VI:
ポリ(フタルイミドエチレン)
【0035】
【化6】

【0036】
例VII :
ポリ(4−(1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)スチレン)
【0037】
【化7】

【0038】
例VIII:
ポリ(2−ヒドロキシメチルスチレン)
【0039】
【化8】

【0040】
例IX:
ポリ(2−ジメチルアミノカルボニルスチレン)
【0041】
【化9】

【0042】
例X:
ポリ(2−フェニルアミノカルボニルスチレン)
【0043】
【化10】

【0044】
例XI:
ポリ(3−(4−ビフェニルイル)スチレン)
【0045】
【化11】

【0046】
例XII:
ポリ(4−(4−ビフェニルイル)スチレン)
【0047】
【化12】

【0048】
別の重要な要因はSの負の有限値を得ることである。そのような負のS値を得る一つの方法は、ガラス転移温度が160℃より高いポリマーを溶液コーティングする方法である。このようなポリマーは、溶媒が蒸発する際に、充分な緩和時間がないので、負のS値を持ち続ける。
【0049】
ポリマー基体の例としては、ポリカーボネート、TAC、環式ポリオレフィン及び光電子装置の用途に通常使用されているその他のポリマーで製造されたものがある。ポリマー基体の厚さは、機械的完全性や取扱いやすさを維持するのに充分な厚さでなければならない。厚さは、好ましくは10μm〜5mm、又はより好ましくは30μm〜2mmである。
【0050】
図5Aは、光学多層301を有する吸収偏光子501の概略立面図である。多層301は、図3A、3B及び3Cに示すような構造を有している。偏光層505は、例えば色素を吸収させたPVAフィルムで製造される。基体503は、301などの光学多層又は他の単一層のポリマー材料でもよい。図5Bは、さらに別の例の偏光子507を示す。この場合、偏光層505は、多層301に隣接して配置されている。これは反射偏光子の典型的な構造である。当業者にはよく知られているように、コレステリック液晶の層は、反射偏光層として働く。例えば米国特許第6,081,376号に開示されているような周期的に配置された金属製の細いワイヤによる反射偏光子が偏光層505であってもよい。
【0051】
光学式記録媒体601の概略立面図を図6に示す。603は記録層である。光磁気記録媒体(MO)における603は、例えば、希土類−コバルト−鉄合金製の光磁気層である。本発明の光学多層301は、MO層603の上に配置される。記録された信号を読み取る光607は、多層301の側から入射する。605は保護層である。
【0052】
オーバーレイヤーは、例えば溶液流延法などの適切な方法で、ポリマー基体の上に容易に配置できる。
【実施例】
【0053】
本発明を、以下の非限定的例によってさらに説明する。
ポリ(N−ビニルカルバゾール)(ポリマーI)をAcros Organicsから入手し、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した結果、Tgが161℃であることが分かった。
【0054】
【化13】

【0055】
ポリマーI(トルエン中15%固形分)をTAC基体の上にスピンキャストした。この試料(及びTACの対照物)のRinとRthを、λ=550nmにて、エリプソメーター(model M2000V, J.A. Woollam Co.)で測定した。試験結果は表Iに示してある。
【0056】
ポリマーIの層は、長距離秩序の徴候を示さなかった。したがってその層は、非晶質ポリマーで構成されていると決定された。この光学多層は、λ=400〜700nmにてRthが+30〜−30nmである。TACと多層のRthを図7に、λの関数としてそれぞれ、破線701と実線703で示した。
【0057】
【表1】

【0058】
本発明を、その特定の好ましい実施態様を特に参照して詳細に説明したが、本発明の範囲内で変更と変形を実施できると解される。本明細書に引用された特許などの刊行物の内容はすべて、引用することにより本明細書に組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、厚さdを有する層の図であり、その層にx−y−z座標系が付されている。
【図2】図2は、代表的なLCDバックライトユニットの概略立面図である。
【図3A】図3Aは、光学多層の概略立面図である。
【図3B】図3Bは、光学多層の概略立面図である。
【図3C】図3Cは、光学多層の概略立面図である。
【図4A】図4Aは、液晶の垂直整列概略図を示す。
【図4B】図4Bは、非晶質ポリマー鎖の面内ランダム配向の概略図を示す。
【図5A】図5Aは、光学多層を有する偏光子の概略立面図である。
【図5B】図5Bは、光学多層を有する偏光子の概略立面図である。
【図6】は、光学式記録媒体の概略立面図である。
【図7】は、本発明の代表的多層の面外位相リターデーションRthの波長(λ)依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
101 フィルム
102 フィルムの平面
201 バックライトアセンブリ
205 拡散フィルム
207 輝度向上フィルム
209 反射偏光子
211 基体
213 偏光層
215 吸収偏光子
217 底部基体
219 吸収偏光層
221 頂部基体
301 光学多層
303 ポリマー基体
305 非晶質ポリマーオーバーレイヤー
401 液晶
403 x−y面内でランダムに配向したポリマー鎖
501 吸収偏光子
503 基体
505 偏光層
507 偏光子
601 光学式記録媒体
603 記録層
605 保護層
607 信号を読み取る入射光
701 TACのRthの波長依存性を示す破線
703 光学多層のRthの波長依存性を示す実線
S 秩序因子
θ 基準方向とポリマー鎖の個々のセグメントとの間の角度
φ 光の入射角
x x方向の屈折率
y y方向の屈折率
z z方向の屈折率
o 常光線屈折率
e 異常光線屈折率
Δnth 面外複屈折
Δnin 面内複屈折
Δnint ポリマーの固有の複屈折
Δnp ポリマーの複屈折
d フィルムの厚さ
th 面外位相リターデーション
in 面内位相リターデーション
λ 波長
out 射出光の強度
in 入射光の強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロでない面外複屈折を有するポリマー基体及び非晶質ポリマーオーバーレイヤーを含んで成る光学多層であって、400nm〜700nmの間の波長の光において−30nm〜30nmの間に前記光学多層の全面外位相リターデーションを提供するように、前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーが、160℃を超えるTg値を有しかつ前記ポリマー基体の面外複屈折とは反対のその面外複屈折の符号を有している非晶質ポリマーを含んで成る光学多層。
【請求項2】
前記ポリマー基体の面外複屈折が負の値でありそして前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーの面外複屈折が正の値である請求項1に記載の光学多層。
【請求項3】
前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーの面外複屈折が、波長550nmに対して0.005よりも正である請求項2に記載の光学多層。
【請求項4】
前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーの厚さが1〜50μmである請求項1に記載の光学多層。
【請求項5】
前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーの厚さが5〜20μmである請求項4に記載の光学多層。
【請求項6】
前記光学多層の透過率が80%より高い請求項1に記載の光学多層。
【請求項7】
前記光学多層の透過率が90%より高い請求項6に記載の光学多層。
【請求項8】
前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーが、負の固有の複屈折を有するポリマーを含んで成る請求項2に記載の光学多層。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリマーの主鎖から離れた不可視発色団を有する請求項8に記載の光学多層。
【請求項10】
前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーが、A)ポリ(4−ビニルフェノール)、B)ポリ(4−ビニルビフェニル)、C)ポリ(N−ビニルカルバゾール)、D)ポリ(メチルカルボキシフェニルメタクリルアミド)、E)ポリ[(1−アセチルインダゾール−3−イルカルボニルオキシ)エチレン]、F)ポリ(フタルイミドエチレン)、G)ポリ(4−(1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)スチレン)、H)ポリ(2−ヒドロキシメチルスチレン)、I)ポリ(2−ジメチルアミノカルボニルスチレン)、J)ポリ(2−フェニルアミノカルボニルスチレン)、K)ポリ(3−(4−ビフェニルイル)スチレン)、L)ポリ(4−(4−ビフェニルイル)スチレン)、M)ポリ(4−シアノフェニルメタクリレート)、N)ポリ(2,6−ジクロロスチレン)、O)ポリ(ペルフルオロスチレン)、P)ポリ(2,4−ジイソプロピルスチレン)、Q)ポリ(2,5−ジイソプロピルスチレン)及びR)ポリ(2,4,6−トリメチルスチレン)を含む少なくとも一種のポリマーを含んで成る請求項2に記載の光学多層。
【請求項11】
前記ポリマー基体の厚さが10μm〜5mmである請求項1に記載の光学多層。
【請求項12】
前記ポリマー基体の厚さが30μm〜2mmである請求項1に記載の光学多層。
【請求項13】
記録層、及びその記録表面の少なくとも一方の側に配置された請求項1に記載の光学多層を含んで成る光学式記録媒体。
【請求項14】
前記光学多層のポリマー基体がポリカーボネートである請求項13に記載の光学式記録媒体。
【請求項15】
偏光層、及びその偏光層の少なくとも一方の表面に配置された請求項1に記載の光学多層を含んで成る偏光子。
【請求項16】
前記光学多層のポリマー基体がトリアセチルセルロースである請求項15に記載の偏光子。
【請求項17】
前記偏光子が反射偏光子である請求項15に記載の偏光子。
【請求項18】
前記偏光子が透過偏光子である請求項15に記載の偏光子。
【請求項19】
液晶セル及び少なくとも一つの請求項15に記載の偏光子を含んで成る液晶ディスプレイ。
【請求項20】
前記非晶質ポリマーオーバーレイヤーが、下記リストのモノマー:A)4−ビニルフェノール、B)4−ビニルビフェニル、C)N−ビニルカルバゾール、D)メチルカルボキシフェニルメタクリルアミド、E)(1−アセチルインダゾール−3−イルカルボニルオキシ)エチレン、F)フタルイミドエチレン、G)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)スチレン、H)2−ヒドロキシメチルスチレン、I)2−ジメチルアミノカルボニルスチレン、J)2−フェニルアミノカルボニルスチレン、K)3−(4−ビフェニルイル)スチレン、L)4−(4−ビフェニルイル)スチレン、M)4−シアノフェニルメタクリレート、N)2,6−ジクロロスチレン、O)ペルフルオロスチレン、P)2,4−ジイソプロピルスチレン、Q)2,5−ジイソプロピルスチレン及びR)2,4,6−トリメチルスチレンから生成された少なくとも一種のコポリマーを含む請求項2に記載の光学多層。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−513799(P2007−513799A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538081(P2006−538081)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/034444
【国際公開番号】WO2005/045820
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】