説明

光学対物レンズ・モジュール

本発明は、光学ズームレンズ群2、焦点合わせ光学レンズ群4、及び2つのレンズ群の電気駆動機構を含み、組み合わせられた光軸が対物レンズの光軸7を形成する対物レンズ・モジュールに関する。本発明によれば、上記のレンズ群の電気駆動機構は2つのリニア形超音波モータ9、11の形態で実現され、2つの超音波モータの各々は圧電板12を含む。圧電板は2つの摩擦素子14を含み、これらの摩擦素子は対向する前面を押しつけられ、圧力素子15と一緒になって超音波モータの移動素子を形成する。移動素子の各々は、対応するレンズ群へ弾力的に接続される。超音波モータは、移動素子の変位方向が光学モジュールの光軸と平行になるように配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに従った集積超音波駆動機構を含む光学対物レンズ・モジュールに関する。そのような対物レンズ・モジュールは、小型の高精度写真又はビデオカメラで使用されてよい。本発明は、更に、そのようなカメラが使用される安価な小型の家庭用電子機器で使用可能である。それらの中には、特に、ポケット・コンピュータ、口述録音機、及び携帯電話が含まれる。
【背景技術】
【0002】
個々に構成されたユニットとしての光学対物レンズの実施形態は公知である。その内部には、光学レンズ及び駆動機構としての回転超音波モータが取り付けられ、前記回転超音波モータは、レンズと同じ軸の上に配置され、レンズを転置する(DE3626389A1を参照)。これらの対物レンズの中では、比較的大きな固定子直径を有する超音波進行波モータが使用される。
【0003】
これらの超音波モータは、複雑な構造を有し、労働集約的で製造するのにコストがかかり、更に、小型化することができない。この理由のために、そのような対物レンズ・ユニットは、排他的に、大型及び高価な装置で使用される。
【0004】
更に、同じ軸の上には配置されない小直径超音波モータを有する光学対物レンズが公知である(EP0469883A2を参照)。これらの対物レンズでは、円柱定在波型超音波モータが使用される。モータの車軸から、移動されるべきレンズ群への運動の伝動は、高い比の歯車集合によって達成される。Canon社によって製造された超音波EF35−80 mm f/4−5,6型対物レンズは、様々な修正において、そのような対物レンズ・ユニットの生産シリーズの1つの例である。
【0005】
これらの対物レンズの1つの欠点は、超音波モータの複雑な構造、及びそれによって招来される装置全体の高い生産コストにある。更に、そのようなモータを含む対物レンズは大きなサイズを有する。なぜなら、10mmよりも小さな寸法を有する超音波モータの生産は、実際に不可能だからである。更に、歯車伝動装置を使用するため、これらの対物レンズの焦点合わせの正確度が小さすぎて、焦点合わせに多大の時間を要し、焦点合わせの間に操作雑音を生じる。
【0006】
更に、超音波共振器を接着結合された小型回転超音波モータを使用する小型対物レンズ・ユニットの使用が公知である。(この点に関して、”PIEZOELECTRIC ULTRASONIC MICROMOTORS FOR MECHATRONIC APPLICATIONS, International Center for Actuators and Transducers, The Pennsylvania State University, PA 16802, USA を参照)。これらのモジュールは2つの別々の光学レンズ群を有し、各々の群はスピンドルを介して別々の超音波モータによって駆動される。
【0007】
これらの対物レンズ・ユニットの欠点は、駆動機構の複雑な構成である。駆動機構は多数の高精度部品から構成され、高精度部品の生産は高価な精密技術を必要とする。これは対物レンズ・ユニットを一層高価にし、安価な家庭用電子機器での使用を妨げる。スピンドルの使用は、焦点合わせに長い時間を必要とする。更に、焦点合わせの正確度は明白に低減される。不正確な焦点合わせは、像の品質を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、構成が簡単で、焦点合わせの正確度が増大し、調節過程の時間が短く、生産コスト及び雑音レベルが低減された汎用の対物レンズ(光学モジュール)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1の特徴を含む装置によって達成される。
【0010】
発明的アイデアの有利な実施形態は、従属クレイムで定められる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電子制御ユニットによって制御される2つの超音波リニアモータの助けによって、光学レンズの2つの群の同軸調節を可能にする小型光学モジュールの生産を実現するアイデアを含む。この場合、各々のレンズ群の光軸が光学モジュール全体の光軸から逸脱する偏差は最小にされる。
【0012】
光学ズームレンズ群及び焦点合わせ光学レンズ群を含み、それらレンズ群の合致光軸が光学モジュールの光軸を形成する好ましい小型光学モジュールにおいて、前記光学レンズ群の電気駆動機構は電子制御ユニットを含む。この電子制御ユニットは、光電イメージセンサが像を前記光学レンズ群の電気駆動信号へ変換するための関連入力を有する。電気駆動機構は2つの超音波リニアモータの形態で具体化され、各々の超音波リニアモータは、2つの摩擦素子を有する圧電板の形態で実現される。2つの摩擦素子は、対向する前面を押しつけられ、押しつけ素子と一緒になって超音波モータの移動素子を形成する。各々の移動素子は、対応する光学レンズ群へ弾力的に接続され、超音波モータは、移動素子の運動方向が光学モジュールの光軸と平行になるように配列される。
【0013】
これによって、光学モジュールの構成的構造が簡単になり、焦点合わせの正確度が大きくなり、焦点合わせの時間が短くなり、生産コストが低くなり、操作雑音が低減する。
【0014】
光学モジュールの提案された実施形態の幾つかの修正において、圧電板の前面は案内溝として実現されてよい。案内溝は、前記光学レンズ群が光学モジュールの焦点範囲内で変位したとき光学レンズ群の光軸が合致するように、移動素子を定置する。
【0015】
これによって、焦点距離の全体の上で、光学モジュールの均一の高分解能が可能となる。
【0016】
光学モジュールの他の形態において、圧電板の前面は更に平坦面として実現されてよく、各々の光学レンズ群は1つまたは2つの案内素子を含んでよい。案内素子は、光学レンズ群が光学モジュールの焦点範囲内で変位したとき光軸が合致するように、光学レンズ群の各々を定置する。
【0017】
これによって、超音波モータの生産費用の低減が可能となる。これは、更に、そのような超音波モータを設けられた光学モジュールのコストを低減する。
【0018】
提案された実施形態に従った光学モジュールにおいて、超音波モータは、モジュールの光軸から直径方向で反対側に取り付けられてよい。
【0019】
更に、超音波モータは、モジュールの光軸の1つの側に取り付けられてよい。
【0020】
双方の形態は、提案されたモジュールの構成的可能性を拡張する。
【0021】
光学モジュールの提案された実施形態の全ての形態において、電子制御ユニットは、超音波モータを独立及び同時に励磁するため2つの自励発電機を含んでよい。各々の自励発電機の発生周波数は、自励発電機に接続されたモータの動作共振周波数によって予め決定される。各々の自励発電機は、電力増幅器及び帰還回路を有する帰還素子の双方、及び移動部分の方向を変更するスイッチを設けられてよい。
【0022】
もし適切であれば、電子制御ユニットは、更に、1つだけの自励発電機も含むことができる。それは、自励発電機に接続された2つのモータを交代して独立に励磁するためである。自励発電機は、電力増幅器、帰還回路を有する帰還素子、及び移動部分の方向を変更するスイッチを設けられてよい。
【0023】
これによって、電子制御ユニットの単純化が可能となり、したがって生産の費用効率が高くなる。
【0024】
電子制御ユニットの自励発電機において、方向を変更するスイッチは2極スイッチとして具体化されてよい。この場合、1つの極は超音波モータの対応する励磁電極へ接続され、他の極は帰還素子及び電力増幅器の電力スイッチを介して共通のモータ電極へ接続される。電力スイッチの制御入力は帰還ループを介して帰還素子へ接続される。即ち、方向変更スイッチの極へ接続される点へ接続される。
【0025】
これによって、自励発電機の電気回路の単純化が可能となる。
【0026】
光学モジュールの提案された構造の様々な形態において、少なくとも1つの光学レンズ群は、その位置検出器へ機械的に結合されてよい。位置検出器の出力は電子制御ユニットへ接続される。
【0027】
これによって、この光学レンズ群の位置決め正確度を増加することができる。
【0028】
光学レンズ群の位置検出器は、直線性ポテンショメータとして具体化されてよい。その場合、ポテンショメータのアームは移動モータ素子又は光学レンズ群へ機械的に接続される。
【0029】
これは、光学モジュールの構造的実施形態を単純化する。
【0030】
更に、光学レンズ群の位置検出器は、弾性変位力変換器へ結合された半導体テンソセンサ(tensosensor)として具体化されてよい。弾性変位力変換器は、再び、移動モータ素子又は光学レンズ群へ機械的に接続される。
【0031】
これは、光学レンズ群の位置決め正確度を増強する。
【0032】
提案されたモジュールの幾つかの形態において、電子制御ユニットは光学レンズ群の相対的位置を決定する計算ユニットを含んでよい。計算ユニットは光学レンズ群の位置検出器へ接続され、計算ユニットの情報出力は1つ又は双方の自励発電機の制御入力へ接続される。
【0033】
これは制御アルゴリズムを単純化する。
【0034】
光学レンズ群を位置決めするため、電子制御ユニットは、ズーム入力及び焦点入力を有するディジタル制御ユニットを含んでよい。ディジタル制御ユニットの出力は1つ又は双方の自励発電機の制御入力へ接続される。
【0035】
これは、光学モジュールの機能的使用能力を拡張する。
【0036】
本発明の有利な実施形態及び様相は、図面を使用して、好ましい実施形態の下記の説明で示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
光学小型モジュール1(図1)は、光軸3を有する焦点合わせ光学レンズ群2、光軸5を有するズームレンズ群4、及び光電イメージセンサ6から構成される。2つの光学レンズ群2及び4は、それらの光軸3及び5が合致し、一緒になって光学モジュール1の光軸7を形成するように配列される。
【0038】
光学レンズ群2はキャリヤ8によって第1の超音波モータ9へ機械的に接続される。光学レンズ群4はキャリヤ10によって第2の超音波モータ11へ機械的に接続される。
【0039】
2つの超音波モータ9及び11は一緒になって光学モジュール1の駆動機構を形成する。
【0040】
双方の超音波モータ9及び11は圧電板12を含み、圧電板12は、対向する横面13に押しつけられた摩擦素子14を有する。摩擦素子14を横面13に押しつける弾性の押しつけ素子15は、キャリヤ8及び10の一部分を形成する。摩擦素子14は、押しつけ素子15と一緒になって超音波モータ9及び11の移動素子16を形成する。
【0041】
圧電板12の横面13の各々は、摩擦素子14が取り付けられる案内溝17を設けられてよい。圧電板12は吸音バックアップ19によってU形ケーシング18の中に固定され、超音波モータ9及び11の移動素子16の運動方向が光学モジュール1の光軸7と平行になることを確実にする。図1で示された光学モジュール1の中で、超音波モータ9及び11は、光学モジュール1の光軸7に関して直径方向の反対側に配列される。
【0042】
各々のレンズ群2及び4は、それぞれ位置検出器20又は21を含んでよい。これらは光電イメージセンサ6へ割り当てられる。各々の位置検出器20及び21は、それぞれ静止部分22及び24、及び移動部分23及び25を含む。
【0043】
図2は、超音波モータ9及び11がL形ケーシング26の中に配置される光学モジュール1の実施形態を示す。その場合、超音波モータ9及び11の双方はモジュール1の光軸の同じ側に位置するようにされる。
【0044】
図3は、圧電板12の横面13が平坦面27として具体化される光学モジュール1の実施形態を示す。この実施形態において、光学モジュール1は追加の案内棒28を設けられる。この修正において、圧電板12は、それらの前面30を介して吸音ケーシング29により保持される。音を吸収するため、ケーシングは低い機械的品質を有する合成物質から作られる。
【0045】
図4及び図5は、本発明に従った光学モジュール1を構成する超音波モータの更に修正された2つの実施形態を示す。この場合、超音波モータの各々は、圧電性セラミック又は圧電性結晶から作られる。
【0046】
示された双方の修正において、2つの長方形励磁電極32が、板12の大きい方の側面31の1つの上に取り付けられる。電極32は、縦方向に伸びる対称軸33に関して対称に側面31の上に取り付けられる。板12の大きい方の第2の側面には、連続した共通電極34が取り付けられる。励磁電極32及び共通電極34の他の配列が、同様に可能である。例えば、圧電板12は多層構造として具体化されてよく、その場合、励磁電極及び共通電極は相互に配置される(図示されず)。
【0047】
摩擦素子14は、板12の横面13に対して押しつけられる。図4で示されるモータにおいて、横面13は案内溝17として具体化される。摩擦素子14は案内溝17の中に配置される。案内溝17は円形、三角形、又は他の所望の形状であってよい。図5は、側面13が平坦面27として具体化されるモータを示す。
【0048】
摩擦素子14は円柱形の棒(図示されず)、半円柱形の棒(図1、図2、図4)、長方形の棒(図3)、三角形の棒(図示されず)、又は半球35(図5)として具体化されてよい。摩擦素子14を生産するための材料として、鋼鉄、セラミック酸化物、セラミック・メタル、又は硬くて対摩耗性の合成物質が使用されてよい。
【0049】
超音波モータ9及び11の各々において、摩擦素子14と接触する圧電板12の表面は摩擦面36(図4、図5)として具体化される。これは板12と摩擦素子14との間の摩擦接触を確実にする。更に、圧電性セラミック又は圧電性結晶の表面のみが、摩擦面36として使用されてよい。更に、耐摩耗性物質、例えば、Ti、Cr、TiN、TiCN、CrN、TiAIN、ZrN、TiZrN、TiCrN、又は他の適切な物質の薄い被覆の形態をした耐摩耗性の層を、摩擦素子14と接触する圧電板12の上に付加することができる。この場合、前記被覆の面が板12の摩擦面を形成する。
【0050】
図6は、モータを駆動する自励発電機37を有する超音波モータ9又は11の接続図を示す。この回路は、方向を変更するスイッチ38を含む。このスイッチは、極41及び42を有する2つのスイッチ39及び40から構成される。
【0051】
図7は、板12の中で生成される音波の非対称形状を示す。位置43は、励磁電極32を有する圧電板12を示す。位置44及び45は、変形された板12の2つの図を示す。各々の図は、発振周期の半分だけ時間推移されている。位置46は、圧電板12の横面13の質点48の運動軌跡47を示す。線49は、運動軌跡47の包絡曲線を表す。
【0052】
図8は、電子制御ユニット50及び2つの自励発電機37を有する光学モジュール1の電気回路を示す。電子制御ユニット50は3つの制御入力51、52、53を有する。自励発電機37の各々は電力増幅器54を含む。電力増幅器54は、遮断器55及び制御入力56、遮断器57、帰還ループ58、帰還素子59、及び方向を変更するスイッチ38を有する。
【0053】
自励発電機37の各々において、方向を変更するスイッチ38は、極41及び42を有する2つのスイッチ39及び40の形態で具体化されてよい。ここで、極41は超音波モータ(9、11)の対応する電極32へ接続され、極42は帰還素子59及び遮断器55を介してモータの共通電極34へ接続される。それによって、遮断器55の制御入力56は帰還ループ58を介して帰還素子59へ接続される。即ち、極42が方向変更スイッチ38へ接続される点へ接続される。
【0054】
図9は、自励発電機37の電気回路の可能な修正の1つを示す。この修正された実施形態において、電力増幅器54はトランジスタ転極器として具体化された遮断器55の定電流源60を含む。遮断器55の制御入力56は電子スイッチ57を介して励振器61へ接続される。帰還ループ58はフィルタ、即ち、移相器である。帰還素子59は、分路抵抗器62及びキャパシタ63から構成される。方向を変更するスイッチ38は、制御入力64及び65を有する2つのトランジスタ・スイッチ39及び40から構成される。
【0055】
図10は、自励発電機37及び電子制御ユニット50を有する光学モジュール1の電気回路を示す。この修正において、方向を変更するスイッチは、制御入力68及び69を有する4つの2極トランジスタ・スイッチ38、40及び66、67から構成される。これらのスイッチはモータ9及び11へ接続される。
【0056】
提案された光学モジュールにおいて、光学レンズ群2及び4の少なくとも1つは、光電イメージセンサ6に関して位置を決定するため、レンズ群の位置検出器21へ機械的に接続されてよい。図1及び図11で示された直線性すべりポテンショメータが、位置検出器21として使用されてよい。ポテンショメータ22又は24の基本部分はケーシング18に固定され、ポテンショメータのピックオフ23及び25はキャリヤ8及び10に固定される。即ち、それらは移動モータ部分及び対応する光学レンズ群へ機械的に接続される。ポテンショメータとして具体化され、図11に示される位置検出器21は、3つの電気出力70、71、及び72を有する。
【0057】
図12は、圧電抵抗ピックアップ73を示す。それは半導体テンソセンサ74から構成される。半導体テンソセンサ74は変位力変換器75へ接続される。変位力変換器75の移動端76は、超音波モータ9又は11の移動素子16の上に置かれたカム77に作用する。半導体テンソセンサ74は2つの電気出力78及び79を有する。それは、変換器75へ接着された薄いゲルマニウム棒の形態で具体化されてよい。
【0058】
図13は、モジュール1の電気回路を示す。この場合、電子制御ユニット50は、光学レンズ群2及び4の相対的位置を決定する計算ユニット80を含む。計算ユニット80の情報出力81は、自励発電機37の双方又は1つの制御入力51、52、53へ接続される。
【0059】
図14は、モジュール1の電気回路を示す。この場合、電子制御ユニット50は、光学レンズ群を位置決めするディジタル制御ユニット82を含む。ディジタル制御ユニット82はズーム入力83及び焦点入力84を含み、その出力81は自励発電機37の双方又は1つの制御入力51、52、53へ接続される。
【0060】
図15において、位置85及び86は、装置のケーシング87における光学モジュール1の配列の例を示す。ここで、光軸7は1つの前面の表面88と平行に伸びる。
【0061】
光学モジュール1をオンにすると、交流電圧信号が電子制御ユニット50(図6、スイッチ39が閉じられ、スイッチ40が開かれる)から超音波モータ9又は11の圧電板12の励磁電極32(図4、図5)へ供給される。信号の周波数はモータの動作周波数と等しい。この電圧は超音波モータ9又は11を励磁し、したがって移動素子15が運動を経験する。
【0062】
超音波モータは次のように動作する。超音波モータ9又は11へ供給された電圧は、板12の中で音響振動を励起する。そのとき、非対称音響定在波が板12の中に形成される。
【0063】
図7は、これらの波の形状を説明する。図7の位置44及び45は、変形された板12の2つの例を示す。これらの図は、周期の半分だけの偏移を示す。位置46は、板12の横面13の質点48の運動軌跡47を示す。ここで、レンズ49は運動軌跡47の接続線49を表す。運動軌跡47及び接続線49の形態は、励起された定在波が、板12の大きい方の側面の中心を通って伸びる対称軸33に関して非対称であることを示す。発生する非対称性は、電極32から離れようとする支配的傾向を有する運動軌跡47によって生じる。
【0064】
この発生する傾向は、板12の横面13に対して押しつけられた摩擦素子14の上に力を作用させる結果となる。即ち、図12の矢印によって示されるように、電極12の方向に作用させる結果となる。それによって発生した力は、印加された電圧に比例する。もし印加された電圧が十分に高ければ、摩擦素子14は板12の横面13に沿って移動する。摩擦素子と一緒に、移動素子16も、その上に取り付けられた光学レンズ群2及び4と共に移動する。
【0065】
スイッチ39を開き、スイッチ40を閉じることによって、電圧は板12の第2の電極32へ供給される。これは逆転運動を生じる。そのとき、素子16は逆方向に移動を開始する。
【0066】
光学レンズ群4を変位できる最大可能距離zは、圧電板12の高さh(図4)によって制限され、板の高さの約半分である。この距離は、モジュール1の最大及び最小焦点距離を定める。光学レンズ群4を変位できる距離fは、物体に関するモジュール1の焦点合わせによって定められ、約0.1zである。
【0067】
図1で示される光学モジュール1の修正において、2つの超音波モータ(図4)が使用され、それらの横面13は案内溝17を含む。溝17は、摩擦素子14の運動が直線状となり、横面13に沿うように具体化される。運動軌跡の直線性は案内溝17の生産の正確度によって決定される。変位がz=5mmのとき、直線性からの運動軌跡の偏差qは+/−0.005mmである。
【0068】
U形(又はL形)ケーシング18における圧電板12の配列は、光軸3及び5の正確な合致を相互に対して可能にする。したがって、光学モジュール1の焦点距離の変更範囲内で光学レンズ群2及び4を変位したとき、それらの光軸3及び5の合致を維持することができる。光軸の正確な合致からの偏差は、arctg q/sである。
【0069】
図3は、棒形案内28を含む光学モジュール1の修正を示す。棒形案内28は、光学レンズ群2及び4の光軸3及び5の合致が維持されることを確実にする。光学モジュールのそのような構成は、光軸3及び5の合致の観点から、やや小さい正確度を有する。しかし、この構成の利点は、生産コストが低くなることである。なぜなら、案内溝を製造する必要がないからである。
【0070】
光学モジュール1の電子制御ユニット50は、2つの自励発電機37を含んでよい。これらの自励発電機37は、モータ9及び11を同時及び独立に励磁するために設けられる。2つの発電機37はモータ9及び11へ接続され、モータ9及び11は、それらの動作共振周波数に基づいて発電機の励磁周波数を定める。スイッチ39及び40から成る方向変更スイッチ38は、圧電板12を通って流れる電流が帰還素子で帰還信号を発生するように、帰還素子59へ接続される。この電圧は帰還ループ58を介して遮断器55の制御入力56へ供給される。
【0071】
図9は、自励発電機37の具体的な電気回路を示す。回路の中で、帰還素子59は分路抵抗器62及びキャパシタ63から形成される。動作周波数におけるキャパシタ63のリアクタンス値は、抵抗器の値よりも著しく小さく選択される。したがって、帰還素子59で発生する帰還信号は、圧電板12を通って流れる電流に対して約90°だけ移相される。
【0072】
帰還電圧から、第1の調波が形成及び増幅される。調波の周波数は超音波モータ9及び11の動作周波数に対応する。電圧は、自励発電機の開状態における帰還量が1よりも大きくなるように増幅される。帰還ループ58によって、帰還電圧は、自励発電機の開状態における共通の移相が、超音波モータの動作周波数でゼロと等しくなるように偏移される。もし遮断器57が閉じられると、自励発電機37は独立に始動して、転極器38を介して帰還素子59へ接続された電極32を有する板12の部分によって決定される周波数で発振する。非対称定在波が板12の中に形成される。図7を参照。発電機37の自励が始動すると、移動素子16は、接続された電極から離れるように運動し始める。もし遮断器57が開いていれば、これは自励の終了及び移動素子16の運動停止を導く。
【0073】
制御電圧を入力51、52、53へ印加することによって、対応する超音波モータを独立にオン及びオフに切り換えることができ、対応する超音波モータ9及び11の移動素子16の運動方向を独立に変更することができる。
【0074】
図10は、電子制御ユニット50が自励発電機37から形成される光学モジュール1の電気回路を示す。もし自励発電機37のスイッチが閉じていれば、対応するモータ9又は11の対応する電極32が活性化される。モジュール1のこの修正された実施形態において、モータ9及び11の交代動作のみが可能である。
【0075】
実施形態に従った光学モジュールは、位置検出器20、レンズ群2、及びレンズ群4の位置検出器21から構成されてよい(図1)。センサは、すべりポテンショメータとして具体化されてよく(図11)、そのピックオフ23及び25は、光電イメージセンサ6に関して光学レンズ群2及び4の位置を決定する。もし直流電圧がセンサ20又は21の出力70へ印加されると、電圧が出力71に現れる。その強さはセンサ20及び21の位置に直接依存する。
【0076】
位置検出器(図12を参照)は、更に、圧電抵抗ピックアップ73として具体化可能である。そのようなセンサは、変位力変換器75として形成される。移動素子16が変位すると、カム77が変換器の移動端76に作用し、移動端は、図12の矢印で示されるように、板12の横面13と垂直に移動する。そのような配列は、半導体テンソセンサ74の圧縮又は伸張を生じ、能動抵抗器の拡張又は短縮を生じる。
【0077】
半導体テンソセンサ74の出力78及び79を抵抗ブリッジの分岐の1つへ結合することによって、ブリッジの不平衡から、光電イメージセンサ6に対するレンズ群2及び4の位置を正確に決定することができる。
【0078】
実施形態に従って実現された光学モジュール1の中でセンサ20、21、及び73を使用することによって、要求された位置における光学レンズ群2及び4の正確な位置決めが可能となる。
【0079】
図13で示されるような光学モジュール1の可能な実施形態に従った電気回路によって、超音波モータ11及びビデオ探索装置(図示されず)を有するレンズ群4は、所望の物体拡大位置に配置される。センサ21は、その出力76に信号を生成する。その信号はレンズ群4の位置に対応する。計算ユニット80はレンズ群2に必要な位置を信号から決定する。超音波モータ9は、この位置へレンズ群2をもってくる。
【0080】
前述したように、光学モジュール1を制御する他の実施形態も可能である。電子制御ユニット50は、例えば、ディジタル制御ユニット82から構成可能である。モジュール1によって物体を拡大するための制御ユニット信号は、電子制御ユニット50のズーム入力83に印加される。この信号は、ズームレンズ群4を動かすモータ11を制御する。モータ9を制御する信号はズーム入力84へ印加される。このモータは焦点合わせレンズ群2を動かす。双方の信号は、モジュール1の光電イメージセンサによって供給された情報を評価するプロセッサ(図示されず)によって生成される。
【0081】
提案された光学モジュールは、極めて小さな寸法、及び集積されたダイレクトドライブ超音波リニアモータを有する小型の光学モジュールを代表する。例えば、ズームレンズ群及び6mmの進行距離を有する光学モジュールの寸法は、13x7x12mmである。モジュールは、その光軸7が装置の前面と垂直に伸びるように、装置のケーシングの中に配置可能である。もし装置の寸法の更なる縮小が望まれるならば、図15の位置85及び86で示されるように、提案されたモジュールは、その光軸がその前面の表面88と平行に伸びるように装置内に配列可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
提案された光学モジュールによって、光学レンズ群の高い位置決め正確度、したがって対物レンズの高い分解能が可能になる。ダイレクトドライブ超音波リニアモータの使用によって、光学レンズ群の短時間調節が可能となる。例えば、モジュールの原器の調節時間は0.05秒であった。簡単な構成のために生産コストは低くなり、安価な消費家電製品、例えば、携帯電話でモジュールを使用することができる。動作中、音響の操作雑音は起こらない。これは使用上の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】2つの側面に取り付けられた超音波モータを有する光学モジュールを示す。
【図2】1つの側面に取り付けられた超音波モータを有する光学モジュールを示す。
【図3】案内を有する光学モジュールを示す。
【図4】超音波モータ9の実施形態を示す。
【図5】超音波モータ10の実施形態を示す。
【図6】励磁源を有する超音波モータの接続図を示す。
【図7】超音波モータの機能的原理を説明する図である。
【図8】光学モジュール1の電気回路の実施形態を示す。
【図9】自励発電機36の電気回路の実施形態を示す。
【図10】自励発電機36を有する電子制御ユニット50の電気回路図である。
【図11】位置検出器の実施形態を示す。
【図12】位置検出器の実施形態を示す。
【図13】光学レンズ群2及び4の相対的位置を決定する計算ユニット80を含む光学モジュール1の電気回路の実施形態を示す。
【図14】ディジタル制御ユニット82を有する電気制御ユニット50を示す。
【図15】装置のケーシングの中に光学モジュール1を配列した実施形態を示す。
【符号の説明】
【0084】
1 光学モジュール
2 焦点合わせ光学レンズ群
3 光学レンズ群2の光軸
4 ズームレンズ群4
5 光学レンズ群4の光軸
6 光電イメージセンサ6
7 モジュール1の光軸
8 光学レンズ群2のキャリヤ
9 第1の超音波モータ
10 光学レンズ群4のキャリヤ
11 第2の超音波モータ
12 圧電板
13 圧電板12の横面
14 摩擦素子
15 弾性押しつけ素子
16 移動素子
17 案内溝
18 U形ケーシング
19 吸音バックアップ
20 レンズ群2の位置検出器
21 レンズ群4の位置検出器
22 センサ20の静止部分
23 センサ20の移動部分
24 センサ21の静止部分
25 センサ21の移動部分
26 L形ケーシング
27 横面13の平坦面
28 案内棒
29 吸音ケーシング
30 板12の前面
31 板12の大きい方の側面
32 励磁電極
33 側面31の対称軸
34 共通電極
35 半球状の摩擦素子14
36 摩擦面
37 自励発電機
38 転極器
39 スイッチ
40 スイッチ
41 遮断器の極
42 遮断器の極
43 電極32を有する板12
44 板12の発振像
45 板12の発振像
46 運動軌跡47の像
47 運動軌跡
48 横面13の上の質点
49 運動軌跡47の包絡曲線
50 電子制御ユニット
51 電子制御ユニット50の入力
52 電子制御ユニット50の入力
53 電子制御ユニット50の入力
54 電力増幅器
55 自励発電機37の遮断器
56 遮断器55の電力スイッチの制御入力
57 自励発電機37の遮断器
58 帰還ループ
59 帰還素子
60 定電流源
61 励振器
62 帰還素子としての抵抗器
63 帰還素子としてのキャパシタ
64 スイッチ39の制御入力
65 スイッチ40の制御入力
66 スイッチ
67 スイッチ
68 スイッチ66の制御入力
69 スイッチ67の制御入力
70、71、72 位置検出器20及び21の電気出力
73 圧電抵抗ピックアップ
74 半導体テンソセンサ(semiconductor tensosensor)
75 変位力変換器
76 変位力変換器の移動端
77 カム
78、79 半導体テンソセンサの出力
80 相対位置を決定する計算ユニット
81 情報出力
82 ディジタル制御ユニット
83 ディジタル制御ユニット82のズーム入力
84 ディジタル制御ユニット82の焦点入力
85、86 モジュール1をケーシング87の中に配列する例の位置
87 ケーシング
88 装置の前面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ズームレンズ群、焦点合わせ光学レンズ群、及び双方のレンズ群の電気駆動機構を含み、レンズ群の組み合わせられた光軸が対物レンズの光軸を形成する対物レンズ・モジュールであって、
レンズ群の電気駆動機構が2つのリニア形超音波モータの形態で具体化され、2つの超音波モータの各々が、2つの摩擦素子を有する圧電板の形態で実現され、2つの摩擦素子が対向する前面を押しつけられ、押しつけ素子と一緒になって超音波モータの移動素子を形成し、移動素子の各々が、対応するレンズ群へ弾力的に接続され、移動素子の運動方向が光学モジュールの光軸と実質的に平行になるように超音波モータが配列される
ことを特徴とする対物レンズ・モジュール。
【請求項2】
圧電板の前面が案内溝を含み、前記レンズ群が光学モジュールの焦点範囲内で変位するときレンズ群の光軸が合致するように案内溝が移動素子を定置する
ことを特徴とする、請求項1に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項3】
圧電板の前面が平坦面として実現され、光学レンズ群の各々が1つ又は2つの案内素子を設けられ、光学レンズ群が光学モジュールの焦点範囲内で変位するとき光学レンズ群の光軸が合致することを案内素子が提供する
ことを特徴とする、請求項1に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項4】
超音波モータが、光学モジュールの光軸の対向する側の上に配列される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項5】
超音波モータが、光学モジュールの光軸に関して同じ側に配列される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項6】
電気駆動機構の集積電子制御ユニット
を特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項7】
電子制御ユニットが、各々のモータを同時及び独立に励磁するため2つの自励発電機を含み、各々の自励発電機の動作周波数が、自励発電機に接続されたモータの動作共振周波数によって予め決定され、各々の自励発電機が電力増幅器、帰還ループを有する帰還素子、及び移動素子の方向を変更するスイッチを設けられる
ことを特徴とする、請求項6に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項8】
電子制御ユニットが1つの自励発電機を含み、自励発電機が、それに接続された2つのモータを独立に交代して励磁し、自励発電機が電力増幅器、帰還素子、及び移動素子の方向を変更するスイッチを設けられる
ことを特徴とする、請求項6に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項9】
方向を変更する各々のスイッチが2極スイッチとして具体化され、1つの極が超音波モータの対応する励磁電極へ接続され、他の極が帰還素子及び電力増幅器の電力スイッチを介して共通のモータ電極へ接続され、電力スイッチの制御入力が帰還ループを介して帰還素子、即ち、方向を変更するスイッチの極へ接続される点へ接続される
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項10】
少なくとも1つの光学レンズ群が位置検出器へ機械的に結合され、位置検出器の出力が電子制御ユニットへ接続される
ことを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項11】
光学レンズ群の位置を決定する位置検出器が直線性ポテンショメータとして具体化され、直線性ポテンショメータのピックオフが超音波モータの移動素子又は光学レンズ群へ機械的に接続される
ことを特徴とする、請求項10に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項12】
光学レンズ群の位置を決定する位置検出器が、弾性変位力変換器へ結合された半導体テンソセンサとして具体化され、弾性変位力変換器が超音波モータの移動素子又は光学レンズ群へ機械的に接続される
ことを特徴とする、請求項10に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項13】
電子制御ユニットが、レンズ群の相対的位置を決定する計算ユニットを設けられ、レンズ群の位置検出器が計算ユニットへ接続され、計算ユニットの出力が1つ又は双方の自励発電機の制御入力へ接続される
ことを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項14】
電子制御ユニットが、光学レンズ群を位置決めするディジタル制御ユニットを設けられ、ディジタル制御ユニットが焦点入力と共にズーム入力を有し、ディジタル制御ユニットの出力が1つ又は双方の自励発電機の制御入力へ接続される
ことを特徴とする、請求項7から13のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。
【請求項15】
光学像を電気信号へ変換する光電イメージセンサ
を特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の対物レンズ・モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−539450(P2008−539450A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502266(P2008−502266)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001474
【国際公開番号】WO2006/099924
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505257752)フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー (11)
【Fターム(参考)】