光学式エンコーダ
【課題】投光部とスケールと受光部の配置の自由度が高い光学式エンコーダを提供する。
【解決手段】光学式エンコーダ100は、スケール110と、スケール110に向けて光を投光する投光部142と、投光部142から投光されスケール110を経由した光を受光する受光部172を有している。スケール110は、受光部172に対して移動可能である。スケール110はまた、投光部142に対向した光入射部118から入射した光を受光部172に対向した光出射部120へ導光する導光部を有している。光出射部120には、スケール110の移動方向に沿って光学的特性が周期的に変化しているスケールスリット124が設けられている。光入射部118には、スケール110の移動方向に垂直な平面に対して、平行成分の光に対する斜め成分の光の相対強度を低減する働きをする斜め光低減スリット122が設けられている。
【解決手段】光学式エンコーダ100は、スケール110と、スケール110に向けて光を投光する投光部142と、投光部142から投光されスケール110を経由した光を受光する受光部172を有している。スケール110は、受光部172に対して移動可能である。スケール110はまた、投光部142に対向した光入射部118から入射した光を受光部172に対向した光出射部120へ導光する導光部を有している。光出射部120には、スケール110の移動方向に沿って光学的特性が周期的に変化しているスケールスリット124が設けられている。光入射部118には、スケール110の移動方向に垂直な平面に対して、平行成分の光に対する斜め成分の光の相対強度を低減する働きをする斜め光低減スリット122が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサなどに用いられる光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で比較的単純な構成により位置や角度を検出できる光学式エンコーダとして、タルボットエンコーダや三重格子エンコーダが知られている。
【0003】
たとえば特開平9−196706は三重格子エンコーダの一例を開示している。このエンコーダは、透過型の光源用スケールを備えた光源と、メインスケールと、受光素子のフォトダイオードアレイとで構成され、光源とフォトダイオードアレイに対して、メインスケールは、相対的に変位する測定対象に配置されている。また、光源およびフォトダイオードアレイと、メインスケールの間には干渉パターンが結像する位置として、一定の間隔が設けられている。
【0004】
光源から出射した光は、光源用スケールと通り、メインスケールで反射される。反射された光は、フォトダイオードアレイ面で干渉パターンを結像する。光源とフォトダイオードアレイと、メインスケールとが相対的に移動すると、フォトダイオードアレイに結像した干渉パターンが変化するため、干渉パターンの変化から相対位置を検出する。
【0005】
これにより、高分解能な変位測定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−196706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タルボットエンコーダや三重格子エンコーダは、他の方式エンコーダと比較して精度が良い等の利点があるが、光を投光する投光部からの光をスケールで反射または透過し、干渉パターンが結像する位置に光を受光する受光部を配置する必要がある。そのため、投光部とスケールと受光部は、それぞれの配置が限定されてしまい、配置の自由度が低くなるという課題がある。投光部とスケールと受光部の配置の自由度が低いと、例えば、スケールと、投光部と受光部との間隔を狭くすることができないため、さらなる薄型化を妨げるという課題もある。
【0008】
本発明の目的は、投光部とスケールと受光部の配置の自由度が高い光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光学式エンコーダは、スケールと、前記スケールに向けて光を投光する投光部と、前記投光部から投光され前記スケールを経由した光を受光する受光部を備えている。前記スケールは、前記受光部に対して移動可能である。前記スケールは、前記スケールの移動方向に沿って光学的特性が周期的に変化しているスケールスリットと、前記投光部に対向した光入射部から入射した光を前記受光部に対向した光出射部へ導光する導光部を有している。前記スケールはさらに、前記スケールの移動方向に垂直な平面に対して平行に進む前記投光部から投光された光の平行成分の光に対する、前記スケールの移動方向に垂直な面に対して斜めに進む前記投光部から投光された光の斜め成分の光の相対強度を低減する斜め光低減手段を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、投光部とスケールと受光部の配置の自由度が高い光学式エンコーダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。
【図2】スケールを破断して示した図1の光学式エンコーダの側面図である。
【図3】受光部のPDアレイとスケールのスケールスリットのピッチの関係を示している。
【図4】図1の光学式エンコーダから斜め光低減スリットを省いた、投光部のスケール移動方向の長さが短い構成の透過型モデルを示している。
【図5】図1の光学式エンコーダから斜め光低減スリットを省いた、投光部のスケール移動方向の長さが長い構成の透過型モデルを示している。
【図6】図1のスケールにおいて、斜め光低減スリットによって斜め成分の光の一部が遮光される様子を示している。
【図7】図1のスケールから斜め光低減スリットを省いた構成における光の進行を示している。
【図8】図1のスケールにおいて、斜め光低減スリットによって平行成分の光が遮光される様子を示している。
【図9】図1の受光部から出力される二相の検出信号を示している。
【図10】四つの受光素子とヘッド側透過スリットの組合せで構成された受光部を示している。
【図11】第1実施形態の光学式エンコーダの別の構成例を示している。
【図12】第1実施形態の光学式エンコーダのまた別の構成例を示している。
【図13】図12のスケールにおける光の進行を示している。
【図14】第1実施形態の光学式エンコーダのまたさらに別の構成例の透過型モデルを示している。
【図15】第2実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。
【図16】図15に示した光学式エンコーダの断面構造を示している。
【図17】図15の光学式エンコーダの透過型モデルを示している。
【図18】斜め光低減スリットが受光部の上に配置された構成例を示している。
【図19】斜め光低減スリットがスケールに固定された構成例を示している。
【図20】4つの受光素子と4つのヘッド側透過スリットを有する構成の受光部の断面構造を示している。
【図21】第2実施形態の光学式エンコーダのさらに別の構成例の透過型モデルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
[構成・作用]
図1は、第1実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。また図2は、スケールを破断して示した図1の光学式エンコーダの側面図である。
【0014】
図1と図2に示すように、光学式エンコーダ100は、スケール110と、スケール110に向けて光を投光する投光部142を有する投光ユニット140と、投光部142から投光されスケール110を経由した光を受光する受光部172を有する受光ユニット170を有している。
【0015】
投光ユニット140と受光ユニット170は、相対的な位置が変わらないように配置されている。たとえば、投光ユニット140と受光ユニット170は共に基板192に搭載されてヘッド190を構成している。たとえば、投光部142と受光部172は同一平面上に位置する配置されている。図示していないが、ヘッド190つまり投光ユニット140と受光ユニット170は、一方向に相対移動する固定体と移動体の一方に取り付けられ、他方にスケール110が取り付けられる。その結果、スケール110は、投光部142と受光部172に対して一方向たとえば図中のX方向に移動可能である。実際には投光部142と受光部172が移動される場合もスケール110が移動される場合もあるが、以下の説明では、投光部142と受光部172に対するスケール110の相対的な移動を単にスケール110の移動と呼ぶ。
【0016】
〔投光部〕
投光ユニット140の投光部142は、例えば、LEDやLD等の発光素子で構成されている。しかし投光部142は、これに限らず、広く光を投光する箇所を意味しており、例えば光ファイバー等によって導光された光を出射する箇所も含んでいる。投光部142は、スケール110の移動方向に沿って適度な長さを有している。例えば、投光ユニット140は、投光部142がスケール110の光入射部118と接触または近接するように配置されている。図1と図2では、説明のために、投光部142とスケール110を離して図示している。投光部142は、スケール110の光入射部118に向かって投光する。
【0017】
〔受光部〕
受光ユニット170の受光部172は、例えば、フォトダイオード(PD)アレイ等の受光素子で構成されている。しかし受光部172は、これに限らず、広く光を受光する箇所を意味しており、例えば光ファイバー等によって受光素子へ導光される光を受光する箇所を含んでいる。例えば、受光ユニット170は、受光部172がスケール110の光出射部120に接触または近接するように配置されている。図1と図2では、説明のために、受光部172とスケール110を離して図示している。
【0018】
受光部172は、スケール110に対して投光部142と同じ側に位置し、相対位置の測定方向とスケール110の厚さ方向に垂直な方向に投光部142から所定の間隔を置いている。図3に示すように、受光部172のPDアレイは、例えば矩形状の4種類のフォトダイオードA,B,AB,BBを含み、それらがスケール110の移動方向に沿って繰り返し並べられている。フォトダイオードA,B,AB,BBは、それぞれ、スケール110の後述するスケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bのピッチの周期の1/4ずつ、すなわち90°ずつ、ずらして櫛歯状に配置されている。
【0019】
〔スケール〕
スケール110は、板状の形状をしており、その最も大きい平面が、投光部142の投光面と受光部172の受光面に平行になるように配置されている。スケール110は、投光部142と受光部172に対向した平面上に光入射部118と光出射部120を有している。光入射部118は投光部142に対向しており、光出射部120は受光部172に対向している。スケール110はまた、光入射部118から入射した光を光出射部120へ導光する導光部を有している。光入射部118には斜め光低減スリット122が設けられており、光出射部120にはスケールスリット124が設けられている。
【0020】
スケール110は、ガラス板等の板状の透明部材112と、光入射部118と光出射部120を除いて透明部材112の表面を覆っている反射膜114,116を有している。反射膜114,116は、例えばアルミニウム膜等で構成されており、高い反射率を有している。反射膜116は、投光部142と受光部172に対向した透明部材112の平面上に位置し、スケール110の移動方向に沿って帯状に延びている。反射膜114は、透明部材112の残りの平面の全体を覆っている。
【0021】
〔光入射部〕
光入射部118は、投光部142からの光が投光部142とスケール110の相対位置を変化させた場合に、スケール110の表面上において、光が入射することを想定し得る範囲全体を指している。従って、光入射部118は、相対位置の測定方向に測定範囲とほぼ同等の長さを有している。投光部142が投光した光は、この光入射部118から透明部材112の内部に入射する。ただし、実際の使用において、光入射部118には、そこに光が入射しない箇所があってもよい。
【0022】
〔導光部〕
導光部は、光入射部118から入射した光が光出射部120に到達するまでの経路上に存在する物質と空間を指している。本実施形態では、導光部は、透明部材112と反射膜114,116から構成されている。光入射部118から透明部材112に入射した光は、透明部材112の表面に設けられた反射膜114,116によって反射されながら透明部材112内部を進行し、少なくとも一部は光出射部120に導光される。ここで、通常の光学設計とは異なり、光入射部118から光出射部120までの間には、具体的な光路は想定していない、もしくは、複数の光路が同時に存在することを想定している。そのため、スケール110内部での反射は、主に、1回反射を含む多重反射を想定している。多重反射は、1回以上で特定回数の反射のみが起きる場合と、1回以上で反射回数が異なる反射が同時に起きる場合を想定している。検出に寄与する反射としては、特定回数の反射、例えば、1回反射の比重が大きくても構わない。また、導光部による光の伝達距離が長くなるほど具体的な光路を想定せず、決められた光入射部118から光出射部120までの間を光が伝達可能な構成・配置を狙った設計を行うものとする。
【0023】
〔光出射部〕
なお、光出射部120は、スケール110と受光部172の相対位置を変化させた場合に、スケールスリット124の遮光部124aで遮光される部分を含めた、スケール110からの光を受光部172へ向けて出射することを想定し得る範囲全体を指している。光出射部120は、光入射部118と異なる位置に設けられており、相対位置の測定方向に測定範囲とほぼ同等の長さを有している。光出射部120に導光された光は、光出射部120からスケールスリット124を通して受光部172へ出射される。ただし、実際の使用において、光出射部120には、そこから光が出射しない箇所があってもよい。
【0024】
光出射部120にはスケールスリット124が設けられている。スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って光学的特性が一定のピッチで周期的に変化している。スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の遮光部124aで構成されている。言い換えれば、スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の遮光部124aと光透過部124bを有している。スケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bのピッチは、受光部172のPDアレイのフォトダイオードA、B、AB、BBの1周期に一致している。
【0025】
〔斜め光低減スリット〕
光入射部118には斜め光低減スリット122が設けられている。斜め光低減スリット122は、投光部142からスケール110を経由して受光部172に至る光路中に、スケール110との相対的な位置が変わらないように配置されている。
【0026】
斜め光低減スリット122は、スケール110の移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の遮光部122aで構成されている。言い換えれば、斜め光低減スリット122は、スケール110の移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の遮光部122aと光透過部122bを有している。斜め光低減スリット122の遮光部122aと光透過部122bのピッチは、受光部172のPDアレイのフォトダイオードA、B、AB、BBの1周期に一致している。例えば、斜め光低減スリット122は、反射膜116とともに、スケールスリット124と一体化されている。斜め光低減スリット122とスケールスリット124と反射膜116は、例えば蒸着によって一体で形成される。
【0027】
斜め光低減スリット122は、スケール110の移動方向に垂直な平面に対して平行に進む投光部142から投光された光の平行成分の光に対する、スケール110の移動方向に垂直な面に対して斜めに進む投光部142から投光された光の斜め成分の光の相対強度を低減する働きをする。以下の説明では、投光部142から投光された光のうち、スケール110の移動方向に垂直な平面に対して平行に進む光を平行成分の光と呼び、スケール110の移動方向に垂直な面に対して斜めに進む光を斜め成分の光と呼ぶ。
【0028】
斜め光低減スリット122の遮光部122aと光透過部122bの位相は、それぞれ、スケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bの位相と一致している。ここで位相が一致しているとは、スケール110の移動方向において、斜め光低減スリット122によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンと、スケールスリット124によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンの位相が一致することをいう。本実施形態では、スケール110の移動方向の座標軸において、斜め光低減スリット122の遮光部122aとスケールスリット124の遮光部124aが同じ座標に位置し、斜め光低減スリット122の光透過部122bとスケールスリット124の光透過部124bが同じ座標に位置することをいう。
【0029】
投光部142から投光され光入射部118に入射した光は、反射膜114による1回反射または反射膜114と反射膜116による多重反射を介して少なくとも一部の光が光出射部120に導光され、導光された光は光出射部120から受光部172に向けて出射し、受光部172によって受光される。
【0030】
図4と図5は、光学式エンコーダ100から斜め光低減スリットを省いた構成の透過型モデルを示している。受光部172のPDアレイの1周期のピッチはスケールスリット124のピッチと同じであるため、スケール110から出射した光により受光部172に投影される光の明暗パターンP1’,P1は、破線で示すように、スケールスリット124と同じピッチであることが望ましい。
【0031】
しかし、例えば図4に示すようにスケール110の移動方向の投光部142’の長さが短い場合、スケール110と受光部172の間にギャップがない場合には、スケールスリット124と同じピッチの明暗パターンP1’が受光部172に結像されるが、スケール110と受光部172の間にギャップがある場合には、スケールスリット124のピッチよりも拡大されたピッチの明暗パターンP2’が受光部172に結像されてしまう。その拡大倍率はギャップが広がるにつれて増える。なお、スケール110と受光部172を非接触に配置する場合や、スケール110と受光部172の位置ずれが発生する場合、電気接続用の部材が入る場合等が実際の使用時に想定され、これらの場合には、スケール110と受光部172の間にギャップが生じる。
【0032】
また、図5に示すように、投光部142のスケール110の移動方向の長さが長い場合は、スケール110と受光部172の間にギャップがない場合には、図4の場合と同様にスケールスリット124と同じピッチの明暗パターンP1が受光部172に結像されるが、スケール110と受光部172の間にギャップがある場合には、スケール110の移動方向に関して投光部142の異なる位置から発光された光がスケール110を介して受光部172に入射するため、受光部172に結像する光の明暗パターンP2のピッチは拡大されにくくなる。一方、図5に破線で示した斜め成分の光は、ギャップがない場合の明暗パターンP2’では暗くなる位置にも光が入り込むため、受光部172に結像する光の明暗パターンP2は振幅が小さくなってしまう。
【0033】
このように、斜め成分の光の影響により、受光部172に結像する光の明暗パターンのピッチが拡大したり、振幅が小さくなったりする。さらには、受光部172とスケール110にギャップ変動が生じると、光の明暗パターンのピッチや振幅も変動し、受光部172の検出信号が不安定となる。
【0034】
投光部142から投光された光は光入射部118に入射する。このとき、図7に示すように光入射部118の全面が光透過部である場合には、全ての方向の光L1,L2がスケール110に入射するため、光出射部120から斜め成分の光L2が多く出射してしまう。一方、図6に示すように、光入射部118に斜め光低減スリット122を設けた場合には、斜め光低減スリット122が斜め成分の光L2の一部を遮光する。斜め光低減スリット122は、図8に示すように、投光部142からの光の平行成分の光L1の一部も遮断するが、斜め光低減スリット122の位相とスケールスリット124の位相は一致しているため、ここで遮断される平行成分の光L1は、斜め光低減スリット122がない場合でもスケールスリット124で遮光される光である。そのため、斜め光低減スリット122があることで、光出射部120から出る平行成分の光の量は変わらない。従って、光出射部120から出射する光は、選択的に斜め成分の光L2の一部を低減した光となる。
【0035】
スケールスリット124が受光部172のPDアレイに対して相対移動すると、PDアレイが検出する光量が変動し、図9に示すように、フォトダイオードA,B,AB,BBから互いに90°位相が異なる擬似正弦波信号が得られる。なお、図9では、その内の互いに90°異なる2つの信号を図示している。この擬似正弦波信号の変化から、受光部172に対するスケール110の移動量と移動方向が検出され得る。
【0036】
受光部172はまた、図10に示すように、四つの受光素子184A,184B,184C,184Dと、1枚の部材に設けられた四つのヘッド側透過スリット182A,182B,182C,182Dの組合せで構成されてもよい。ヘッド側透過スリット182A〜182Dは、それぞれ、受光素子184A〜184Dの受光面に配置されている。図10では、説明のために、受光素子184A〜184Dとヘッド側透過スリット182A〜182Dを離して図示している。ヘッド側透過スリット182A〜182Dは、スケールスリット124と同様に、スケール110の移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の遮光部と光透過部を有している。各ヘッド側透過スリット182A〜182Dの遮光部と光透過部のピッチは、それぞれ、スケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bのピッチと同じである。四つのヘッド側透過スリット182A〜182Dの遮光部と光透過部は互いに位相が90°ずれている。受光素子184A〜184Dが受光する光量は、スケール110のスケールスリット124とヘッド側透過スリット182A〜182Dの位置関係で変化し、図9に示すように、受光素子184A〜184Dから互いに90°位相が異なる擬似正弦波信号が得られる。図9では、その内の互いに90°異なる2つの信号を図示している。この擬似正弦波信号の変化から、受光部172に対するスケール110の移動量と移動方向が検出され得る。
【0037】
[効果]
本実施形態に係る光学式エンコーダ100によれば、スケール110が光入射部118と導光部と光出射部120を有しているため、投光部142から投光され光入射部118に入射した光は、スケール110の内部を導光されて光出射部120から出射する。これにより、従来のように投光部142から投光された光がスケール110で反射された後に結像する位置に受光部172がくるように、スケール110に対して投光部142と受光部172を配置する必要がなくなる。すなわち、投光部142と受光部172の位置は、スケール110が導光可能な範囲で任意に決めることができるので、設計の自由度が向上される。
【0038】
また、斜め光低減スリット122の遮光部122aと光透過部122bの位相がスケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bの位相と一致しているので、光出射部120から出射する光から斜め成分の光が平行成分の光よりも大幅に低減されるため、受光部172に投影される光の明暗パターンの拡大が低減され、振幅の低下が低減される。
【0039】
また、受光部172に入射する光が主に平行成分の光となるため、スケール110と受光部172のギャップが変動しても、平行成分の光が入射する受光部172上の位置はほとんど変化しない。すなわち、受光部172に投影される光の明暗パターンのピッチが変化しにくい。従って、スケール110と受光部172のギャップ変動が起きても、受光部172が検出する信号に影響しにくい。
【0040】
また、斜め光低減スリット122をスケール110の光入射部118にスケール110と相対的な位置が変わらないように配置し、さらに、斜め光低減スリット122とスケールスリット124の位相を一致させていることで、投光部142から投光される光の成分のうち、斜め光低減スリット122によって遮光される平行成分の光は、斜め光低減スリット122がない場合でもスケールスリット124で遮光される光であるため、光出射部120から出る平行成分の光の量は変わらない。
【0041】
また、スケール110に斜め光低減スリット122を配置することで、受光部172が配置されている固定体や移動体に追加の部材を設ける必要がない。
【0042】
また、投光部142と受光部172を相対的な位置が変わらないように配置する、すなわち、投光部142と受光部172を固定体と移動体の一方に配置することにより、電気的部材や光学的部材を投光部142と受光部172を配置した側に集約することができる。また、スケール110を配置した側を、スケール110のみの最小構成とすることができる。
【0043】
また、斜め光低減スリット122とスケールスリット124と反射膜116が一体で形成されていることで、例えばガラスにアルミの蒸着を適用して斜め光低減スリット122とスケールスリット124と反射膜116を1つの工程で作製することができる。
【0044】
また、投光部142と受光部172をスケール110に接触または近接させた構成にすることにより、薄型の光学式エンコーダ100を実現できる。
【0045】
また、90°異なる位相差信号を生成するPDアレイの構成について説明したが、90°に限定する必要はなく、任意の位相差にしてもよい。
【0046】
また、スケール110のスケールスリット124が透過型の構成について説明しているが、スケールスリット124は透過型に限らず反射型であってもよい。
【0047】
さらに、スケール110のスケールスリット124と、光入射部118と導光部と光出射部120は一体でなくてもよく、受光部172に対して同一の相対移動をする構成であれば、分かれていてもよい。
【0048】
また、スケールスリット124と斜め光低減スリット122の位相は、完全に一致していしなくてもよく、斜め成分の光が低減可能な範囲であれば、位相がずれていてもかまわない。
【0049】
斜め光低減スリット122は、スケール110の光入射部118に配置した構成を説明したが、投光部142からスケール110を経由して受光部172に至る光路中で、スケール110と相対的な位置が変わらないように配置しさえすれば他の場所に配置してもよい。また、斜め光低減スリット122は、1箇所とは限らず、複数の箇所に配置してもよい。斜め光低減スリット122を複数の箇所に配置することで、低減させる斜め成分の光の範囲を広げることができる。
【0050】
[別の構成例]
図11は、本実施形態の光学式エンコーダの別の構成例を示している。図11に示すように、この光学式エンコーダ100Aの構成は、投光ユニット140Aを除いては、図1に示した光学式エンコーダ100と同様である。投光ユニット140Aは、相対位置の測定方向に、スケール110とほぼ同等の長さを有しており、投光部142Aは、相対位置の測定方向に測定範囲とほぼ同等の長さを有している。投光ユニット140Aは、例えば、スケール110に固定されており、投光部142Aとスケール110は、相対的な位置が変わらないように配置されている。
【0051】
このような光学式エンコーダ100Aでは、受光部172が配置される固定体または移動体に設けられる電気的部材や光学的部材が低減される。
【0052】
また、スケール110側に斜め光低減スリット122を配置することで、受光部172が配置されている固定体または移動体に追加の部材を設ける必要がない。
【0053】
また、斜め光低減スリット122をスケール110の光入射部118にスケール110と相対的な位置が変わらないように配置し、さらに、斜め光低減スリット122とスケールスリット124の位相を一致させていることで、投光部142から投光される光の成分のうち、斜め光低減スリット122によって遮光される平行成分の光は、斜め光低減スリット122がない場合でもスケールスリット124で遮光される光であるため、光出射部120から出る平行成分の光の量は変わらない。
【0054】
斜め光低減スリット122は、スケール110と相対的な位置が変わらなければ、スケール110の表面に限らず、投光部142からスケール110を経由して受光部172に至る光路中のどこに配置されてもよい。例えば、スケール110の内部に配置されてもよい。
【0055】
また、斜め光低減スリット122は、スケール110から受光部172の間の光路中に、受光部172と相対的な位置が変わらないように配置されてもよい。これにより、斜め光低減スリット122は、スケール110から受光部172に入射する光の範囲の大きさがあればよいので、斜め光低減スリット122を小型にすることができる。
【0056】
[また別の構成例]
図12は、本実施形態の光学式エンコーダのまた別の構成例を示している。図12において、図1に示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。つまり、以下の説明で触れない部分は、図1に示した光学式エンコーダ100と同様である。
【0057】
図12に示すように、この光学式エンコーダ100Bの構成は、スケール110Aを除いては、図1に示した光学式エンコーダ100と同様である。スケール110Aは、投光部142と受光部172に対向した平面上にスケールスリット124を有し、その反対側の平面上に斜め光低減スリット126を有している。
【0058】
スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の遮光部124aで構成されている。
【0059】
斜め光低減スリット126は、スケール110Aの移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の反射部126aで構成されている。言い換えれば、斜め光低減スリット126は、スケール110Aの移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の反射部126aと光透過部126bを有している。斜め光低減スリット126の反射部126aの位相は、スケールスリット124の光透過部124bの位相と一致している。
【0060】
図13に示すように、光入射部118から入射した光は、斜め光低減スリット126の反射部126aが主に平行成分の光L1を光出射部120に向けて反射する。一方、斜め光低減スリット126の光透過部126bは、斜め成分の光L2の一部を透過してスケール110Aの外部へ逃がす。
【0061】
斜め光低減スリット126は、投光部142から投光された光の平行成分の光L1の一部も透過して外部へ逃がすが、斜め光低減スリット126の光透過部の位相とスケールスリット124の遮光部124aの位相は一致しているため、ここでスケール110の外部へ逃げる光は、斜め光低減スリット126がない場合でもスケールスリット124で遮光される光である。そのため、斜め光低減スリット126があることで、出射部から出る平行成分の光L1の量は変わらない。従って、光出射部120から出射する光は、選択的に斜め成分の光L2の一部を低減した光となる。
【0062】
ここでは、斜め光低減スリット126は、反射部126aと光透過部126bの組合せで説明したが、反射部126aと吸収部の組合せであってもよい。
【0063】
光入射部118の反対側の平面上に反射部126aを配置して斜め光低減スリット126を構成することで、斜め光低減スリットを光入射部118に設けた場合とは異なる角度の斜め成分の光を低減し得る。また、斜め光低減スリット126に加えて、光入射部118に透過型の斜め光低減スリット122を設けてもよい。2つの斜め光低減スリット122,126を設けることで、斜め成分の光を低減する効果が向上する。
【0064】
[そのほかの構成例]
これまで、投光部142は、受光部172またはスケール110と相対的な位置が変わらない例を説明したが、投光部142は、スケール110の光入射部118に向けて光を投光しさえすればよく、受光部172やスケール110と独立して位置が変化してもよい。
【0065】
図14に示す様に斜め光低減スリットは複数設けてもよい。以下、第1の斜め光低減スリット132と第2の斜め光低減スリット134の2枚の構成で説明する。第1の斜め光低減スリット132の遮光部132aと光透過部132bの位相は、それぞれ、第2の斜め光低減スリット134の遮光部134aと光透過部134bの位相と一致する構成とする。ここで位相が一致しているとは、スリットの配列方向において、第1の斜め光低減スリット132によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンと、第2の斜め光低減スリット134によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンの位相が一致することをいう。斜め光低減スリットを位相が一致するように複数設けることで、斜め光低減スリットが1枚の場合より、低減可能な斜め成分の光の角度が増える。すなわち斜め成分の光を低減する効果が向上する。
【0066】
<第2実施形態>
[構成・作用]
図15は、第2実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。
【0067】
図15に示すように、光学式エンコーダ200は、スケール210と、スケール210に向けて光を投光する投光部を有する投光ユニット240と、投光部から投光されスケール210を経由した光を受光する受光部272を有する受光ユニット270を有している。
【0068】
スケール210は、第1実施形態のスケール110から斜め光低減スリット122を省いた構成をしている。つまり、スケール210は、光出射部にスケールスリット224を有し、さらに、投光ユニット240と受光ユニット270に対向した平面を部分的に覆っている反射膜216と、図示いていないが、それ以外の平面を覆っている反射膜を有している。投光ユニット240と受光ユニット270の構成は、それぞれ、第1実施形態の投光ユニット140と受光ユニット170と同様である。投光ユニット240と受光ユニット270は、基板292に搭載されてヘッド290を構成しており、相対的な位置が変わらないように配置されている。
【0069】
〔斜め光低減スリット〕
図16は、図15に示した光学式エンコーダ200の断面構造を示している。図16に示すように、投光部242の光が出射する面に、斜め光低減スリット250が設けられている。斜め光低減スリット250は、第1実施形態の斜め光低減スリット122と同様に、投光部242から投光された光の平行成分の光に対する斜め成分の光の相対強度を低減する働きをする。斜め光低減スリット250は、投光部242と相対的な位置が変わらないように配置されている。図16の例では、斜め光低減スリット250は、投光部242の上に配置されているが、これに限らず、斜め光低減スリット250は、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中に配置されていればよい。
【0070】
斜め光低減スリット250は、スケール210の移動方向に沿って交互に配列された複数の光透過部252と遮光部254を有している。光透過部252の形状は円柱型等、立方体以外の構造となっていても良いし、光透過部252と遮光部254は、周期的な配列となっていなくてもよいが、本実施形態では光透過部252と遮光部254が立方体で、周期的に配列している例を説明する。遮光部254は、好ましくは、入射する光を良好に吸収する特性を有している。斜め光低減スリット250は光の透過方向に厚みを有している。光透過部252から入射した光は、複数の遮光部254の、複数の光透過部252との境界となる複数の側面256で、斜め成分の光の少なくとも一部が吸収される。
【0071】
図17は、投光部242から出射した光が、スケール210を通り受光部272で受光されるまでを透過モデルで示した図である。図17に示すように、斜め光低減スリット250の厚さbは、光透過部252の配列方向の長さaに対してオーダーが同等またはそれ以上である。例えば、スリットを蒸着で作製すると、厚さは通常0.1μm程度となるが、a=50μm、b=50μm以上のような厚さを持つ構成とする。
【0072】
これにより、投光部242から出射した光は、光の進む角度θ=atan(a/b)[rad]以上の角度の光は遮光部254に入射するため、斜め光低減スリット250を通過しない。一方、θ=atan(a/b)[rad]以下の角度の光は遮光部254には入射しないため、斜め光低減スリット250を通過する。
【0073】
また、受光部272は、複数相の検出信号を出力する複数の受光素子を有し、斜め光低減スリット250の光透過部252は、各相の受光素子が光を受光し得る位置に配置されている。例えば、斜め光低減スリット250の光透過部252は、受光部272のA,B,AB,BBの全ての相に好ましくは平行成分の光が入射し得る位置に配置されている。斜め光低減スリット250のピッチは、スケールスリット224のピッチの1/mである。ここで、mは、受光部272が出力する検出信号の相数をnとして、m≧nを満たす整数である。これにより、受光部272の各相の受光素子が光を受光し得る。
【0074】
[効果]
斜め光低減スリット250がスケール210の移動方向に沿って一定のピッチで交互に配列された光透過部252と遮光部254を有し、斜め光低減スリット250は光の透過方向に厚みを有している。そして、複数の遮光部254の、複数の光透過部252との境界となる複数の側面256は、斜め成分の光の少なくとも一部を吸収するので、投光部242から出射した光の斜め成分の光が選択的に低減される。よって、受光部272に投影される光の明暗パターンの拡大を低減したり、振幅の低下を低減したりできる。
【0075】
また、受光部272に入射する光が主に平行成分の光となるため、スケール210と受光部272のギャップが変動しても、平行成分の光が入射する受光部272上の位置はほとんど変化しない。すなわち、受光部272に投影される光の明暗パターンのピッチが変化しにくい。従って、スケール210と受光部272のギャップ変動が起きても、受光部272が検出する信号に影響しにくい。
【0076】
また、光透過部252の配列方向の長さと、光透過部252の厚さ方向の長さの比を変えることで、低減する斜め成分の光の角度を変えることができる。
【0077】
また、斜め光低減スリット250の光透過部252が受光部272の全ての相に平行成分の光が入射し得る位置に配置されているので、受光部272において光が効率良く検出され、各相に入射する光の量のばらつきが抑えられる。
【0078】
また、投光部242と受光部272を相対的な位置が変わらないように配置する、すなわち、投光部242と受光部272を固定体と移動体の一方に配置することにより、電気的部材や光学的部材を投光部242と受光部272を配置した側に集約することができる。また、スケール210を配置した側を、スケール210のみの最小構成とすることができる。
【0079】
また、斜め光低減スリット250は、投光部242の光が出射する面に、投光部242と相対的な位置が変わらないように配置されているので、投光部242からスケール210に入射する光の範囲の大きさがあればよく、斜め光低減スリットを小型にすることができる。また、スケール110に追加の部材を設ける必要がない。
【0080】
[別の構成例]
斜め光低減スリット250は、投光部242の上に限らず、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中のどこかに、例えば投光部242からスケール210までの光路中またはスケール210から受光部272までの光路中のどこかに、投光部242と受光部272に対する相対的な位置が変わらないように配置されていればよい。例えば、図18に示すように、受光部272の上に配置されてもよい。この場合、斜め光低減スリット250は、スケール210から受光部に入射する光の範囲の大きさがあればいいため、斜め光低減スリット250を小型にすることができる。
【0081】
[また別の構成例]
斜め光低減スリット250は、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中に、スケール210と相対的な位置が変わらないように配置されていてもよい。例えば、図19に示すように、斜め光低減スリット250は、スケール210に固定されていてもよい。
【0082】
スケール210側に斜め光低減スリット250を配置することにより、受光部272が配置されている固定体または移動体に追加の部材を設ける必要がない。
【0083】
また、投光部242と受光部272の相対的な位置が変わらない構成で説明したが、投光部242とスケール210の相対的な位置が変わらない構成としてもよい。これにより、受光部272が配置されている固定体または移動体の構成を少なくすることができる。
【0084】
また、斜め光低減スリット250は、スケール210と相対的な位置が変わらない構成を取ることができればよい。例えば、スケール210の表面に形成されてもよいし、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中に離れて配置されてもよい。また、スケール210の内部に配置されてもよい。
【0085】
[そのほかの構成例]
これまで、投光部242は、受光部272またはスケール210と相対的な位置が変わらない例を説明したが、投光部242は、スケール210に向けて光を投光しさえすればよく、受光部272やスケール210と独立して位置が変化してもよい。
【0086】
また、第1実施形態の図10に示した例と同様に、受光部272は、4つの受光素子と、1枚の部材に設けられた4つのヘッド側透過スリットの組合せで構成されてもよい。図20は、そのような構成の受光部の断面構造を示している。図20には、二つの受光素子284A,284Cだけが図示されている。受光素子284A,284Cの上には、それぞれ、斜め光低減スリット250A,250Cが配置されている。各斜め光低減スリット250A,250Cは、複数相の検出信号を得るために受光部272に設けられるヘッド側透過スリットの機能を兼ねている。つまり、斜め光低減スリット250A,250Cは、斜め成分の光を低減する機能とヘッド側透過スリットの機能を有するため、受光部272の部材の個数が低減される。
【0087】
斜め光を低減する機能体として、斜め光低減スリット250の光透過部252の形状が立方体の例について説明したが、光透過部と遮光部を有し、遮光部はスケールの移動方向に対して垂直な平面に平行な方向に厚さを有する構造体であればよく、光透過部が円柱型等、立方体以外の構造となっていてもよい。また、斜め光を低減する機能体の光透過部と遮光部は、周期的な配列となっていなくてもよく、例えば光透過部がランダムに配置されていてもよい。
【0088】
また、斜め光低減スリット250は厚みを持ち、複数の遮光部254の、複数の光透過部252との境界となる複数の側面256は、斜め成分の光の少なくとも一部を吸収するとしたが、図21に示すように、スリットを光路中の複数の箇所に設けても良い。以下、第1の斜め光低減スリット262と第2の斜め光低減スリット264の2枚の構成で説明する。第1の斜め光低減スリット262の遮光部262bと光透過部262aの位相は、それぞれ、第2の斜め光低減スリット264の遮光部264bと光透過部264aの位相と一致する構成とする。ここで位相が一致しているとは、スリットの配列方向において、第1の斜め光低減スリット262によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンと、第2の斜め光低減スリット264によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンの位相が一致することをいう。また、ここでのスリットは、遮光部262b,264bの、それぞれ光透過部262a,264aとの境界となる側面が、斜め成分の光を吸収しなくてもかまわない。斜め光低減スリットを位相が一致するように複数設けることで、斜め光低減スリットが1枚の場合より、低減可能な斜め成分の光の角度が増える。すなわち斜め成分の光を低減する効果が向上する。
【0089】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0090】
100,100A,100B…光学式エンコーダ、110,110A…スケール、112…透明部材、114,116…反射膜、118…光入射部、120…光出射部、122…斜め光低減スリット、122a…遮光部、122b…光透過部、124…スケールスリット、124a…遮光部、124b…光透過部、126…斜め光低減スリット、126a…反射部、126b…光透過部、132…第1の斜め光低減スリット、132a…遮光部、132b…光透過部、134…第2の斜め光低減スリット、134a…遮光部、134b…光透過部、140,140A…投光ユニット、142,142’,142A…投光部、170…受光ユニット、172…受光部、182A〜182D…ヘッド側透過スリット、184A〜184D…受光素子、190…ヘッド、192…基板、200…光学式エンコーダ、210…スケール、216…反射膜、224…スケールスリット、240…投光ユニット、242…投光部、250,250A,250C…斜め光低減スリット、252…光透過部、254…遮光部、262…第1の斜め光低減スリット、262a…光透過部、262b…遮光部、264…第2の斜め光低減スリット、264a…光透過部、264b…遮光部、270…受光ユニット、272…受光部、284A,284C…受光素子、290…ヘッド、292…基板、L1…平行成分の光、L2…斜め成分の光、P1,P1’,P2,P2’…明暗パターン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサなどに用いられる光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で比較的単純な構成により位置や角度を検出できる光学式エンコーダとして、タルボットエンコーダや三重格子エンコーダが知られている。
【0003】
たとえば特開平9−196706は三重格子エンコーダの一例を開示している。このエンコーダは、透過型の光源用スケールを備えた光源と、メインスケールと、受光素子のフォトダイオードアレイとで構成され、光源とフォトダイオードアレイに対して、メインスケールは、相対的に変位する測定対象に配置されている。また、光源およびフォトダイオードアレイと、メインスケールの間には干渉パターンが結像する位置として、一定の間隔が設けられている。
【0004】
光源から出射した光は、光源用スケールと通り、メインスケールで反射される。反射された光は、フォトダイオードアレイ面で干渉パターンを結像する。光源とフォトダイオードアレイと、メインスケールとが相対的に移動すると、フォトダイオードアレイに結像した干渉パターンが変化するため、干渉パターンの変化から相対位置を検出する。
【0005】
これにより、高分解能な変位測定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−196706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タルボットエンコーダや三重格子エンコーダは、他の方式エンコーダと比較して精度が良い等の利点があるが、光を投光する投光部からの光をスケールで反射または透過し、干渉パターンが結像する位置に光を受光する受光部を配置する必要がある。そのため、投光部とスケールと受光部は、それぞれの配置が限定されてしまい、配置の自由度が低くなるという課題がある。投光部とスケールと受光部の配置の自由度が低いと、例えば、スケールと、投光部と受光部との間隔を狭くすることができないため、さらなる薄型化を妨げるという課題もある。
【0008】
本発明の目的は、投光部とスケールと受光部の配置の自由度が高い光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光学式エンコーダは、スケールと、前記スケールに向けて光を投光する投光部と、前記投光部から投光され前記スケールを経由した光を受光する受光部を備えている。前記スケールは、前記受光部に対して移動可能である。前記スケールは、前記スケールの移動方向に沿って光学的特性が周期的に変化しているスケールスリットと、前記投光部に対向した光入射部から入射した光を前記受光部に対向した光出射部へ導光する導光部を有している。前記スケールはさらに、前記スケールの移動方向に垂直な平面に対して平行に進む前記投光部から投光された光の平行成分の光に対する、前記スケールの移動方向に垂直な面に対して斜めに進む前記投光部から投光された光の斜め成分の光の相対強度を低減する斜め光低減手段を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、投光部とスケールと受光部の配置の自由度が高い光学式エンコーダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。
【図2】スケールを破断して示した図1の光学式エンコーダの側面図である。
【図3】受光部のPDアレイとスケールのスケールスリットのピッチの関係を示している。
【図4】図1の光学式エンコーダから斜め光低減スリットを省いた、投光部のスケール移動方向の長さが短い構成の透過型モデルを示している。
【図5】図1の光学式エンコーダから斜め光低減スリットを省いた、投光部のスケール移動方向の長さが長い構成の透過型モデルを示している。
【図6】図1のスケールにおいて、斜め光低減スリットによって斜め成分の光の一部が遮光される様子を示している。
【図7】図1のスケールから斜め光低減スリットを省いた構成における光の進行を示している。
【図8】図1のスケールにおいて、斜め光低減スリットによって平行成分の光が遮光される様子を示している。
【図9】図1の受光部から出力される二相の検出信号を示している。
【図10】四つの受光素子とヘッド側透過スリットの組合せで構成された受光部を示している。
【図11】第1実施形態の光学式エンコーダの別の構成例を示している。
【図12】第1実施形態の光学式エンコーダのまた別の構成例を示している。
【図13】図12のスケールにおける光の進行を示している。
【図14】第1実施形態の光学式エンコーダのまたさらに別の構成例の透過型モデルを示している。
【図15】第2実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。
【図16】図15に示した光学式エンコーダの断面構造を示している。
【図17】図15の光学式エンコーダの透過型モデルを示している。
【図18】斜め光低減スリットが受光部の上に配置された構成例を示している。
【図19】斜め光低減スリットがスケールに固定された構成例を示している。
【図20】4つの受光素子と4つのヘッド側透過スリットを有する構成の受光部の断面構造を示している。
【図21】第2実施形態の光学式エンコーダのさらに別の構成例の透過型モデルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
[構成・作用]
図1は、第1実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。また図2は、スケールを破断して示した図1の光学式エンコーダの側面図である。
【0014】
図1と図2に示すように、光学式エンコーダ100は、スケール110と、スケール110に向けて光を投光する投光部142を有する投光ユニット140と、投光部142から投光されスケール110を経由した光を受光する受光部172を有する受光ユニット170を有している。
【0015】
投光ユニット140と受光ユニット170は、相対的な位置が変わらないように配置されている。たとえば、投光ユニット140と受光ユニット170は共に基板192に搭載されてヘッド190を構成している。たとえば、投光部142と受光部172は同一平面上に位置する配置されている。図示していないが、ヘッド190つまり投光ユニット140と受光ユニット170は、一方向に相対移動する固定体と移動体の一方に取り付けられ、他方にスケール110が取り付けられる。その結果、スケール110は、投光部142と受光部172に対して一方向たとえば図中のX方向に移動可能である。実際には投光部142と受光部172が移動される場合もスケール110が移動される場合もあるが、以下の説明では、投光部142と受光部172に対するスケール110の相対的な移動を単にスケール110の移動と呼ぶ。
【0016】
〔投光部〕
投光ユニット140の投光部142は、例えば、LEDやLD等の発光素子で構成されている。しかし投光部142は、これに限らず、広く光を投光する箇所を意味しており、例えば光ファイバー等によって導光された光を出射する箇所も含んでいる。投光部142は、スケール110の移動方向に沿って適度な長さを有している。例えば、投光ユニット140は、投光部142がスケール110の光入射部118と接触または近接するように配置されている。図1と図2では、説明のために、投光部142とスケール110を離して図示している。投光部142は、スケール110の光入射部118に向かって投光する。
【0017】
〔受光部〕
受光ユニット170の受光部172は、例えば、フォトダイオード(PD)アレイ等の受光素子で構成されている。しかし受光部172は、これに限らず、広く光を受光する箇所を意味しており、例えば光ファイバー等によって受光素子へ導光される光を受光する箇所を含んでいる。例えば、受光ユニット170は、受光部172がスケール110の光出射部120に接触または近接するように配置されている。図1と図2では、説明のために、受光部172とスケール110を離して図示している。
【0018】
受光部172は、スケール110に対して投光部142と同じ側に位置し、相対位置の測定方向とスケール110の厚さ方向に垂直な方向に投光部142から所定の間隔を置いている。図3に示すように、受光部172のPDアレイは、例えば矩形状の4種類のフォトダイオードA,B,AB,BBを含み、それらがスケール110の移動方向に沿って繰り返し並べられている。フォトダイオードA,B,AB,BBは、それぞれ、スケール110の後述するスケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bのピッチの周期の1/4ずつ、すなわち90°ずつ、ずらして櫛歯状に配置されている。
【0019】
〔スケール〕
スケール110は、板状の形状をしており、その最も大きい平面が、投光部142の投光面と受光部172の受光面に平行になるように配置されている。スケール110は、投光部142と受光部172に対向した平面上に光入射部118と光出射部120を有している。光入射部118は投光部142に対向しており、光出射部120は受光部172に対向している。スケール110はまた、光入射部118から入射した光を光出射部120へ導光する導光部を有している。光入射部118には斜め光低減スリット122が設けられており、光出射部120にはスケールスリット124が設けられている。
【0020】
スケール110は、ガラス板等の板状の透明部材112と、光入射部118と光出射部120を除いて透明部材112の表面を覆っている反射膜114,116を有している。反射膜114,116は、例えばアルミニウム膜等で構成されており、高い反射率を有している。反射膜116は、投光部142と受光部172に対向した透明部材112の平面上に位置し、スケール110の移動方向に沿って帯状に延びている。反射膜114は、透明部材112の残りの平面の全体を覆っている。
【0021】
〔光入射部〕
光入射部118は、投光部142からの光が投光部142とスケール110の相対位置を変化させた場合に、スケール110の表面上において、光が入射することを想定し得る範囲全体を指している。従って、光入射部118は、相対位置の測定方向に測定範囲とほぼ同等の長さを有している。投光部142が投光した光は、この光入射部118から透明部材112の内部に入射する。ただし、実際の使用において、光入射部118には、そこに光が入射しない箇所があってもよい。
【0022】
〔導光部〕
導光部は、光入射部118から入射した光が光出射部120に到達するまでの経路上に存在する物質と空間を指している。本実施形態では、導光部は、透明部材112と反射膜114,116から構成されている。光入射部118から透明部材112に入射した光は、透明部材112の表面に設けられた反射膜114,116によって反射されながら透明部材112内部を進行し、少なくとも一部は光出射部120に導光される。ここで、通常の光学設計とは異なり、光入射部118から光出射部120までの間には、具体的な光路は想定していない、もしくは、複数の光路が同時に存在することを想定している。そのため、スケール110内部での反射は、主に、1回反射を含む多重反射を想定している。多重反射は、1回以上で特定回数の反射のみが起きる場合と、1回以上で反射回数が異なる反射が同時に起きる場合を想定している。検出に寄与する反射としては、特定回数の反射、例えば、1回反射の比重が大きくても構わない。また、導光部による光の伝達距離が長くなるほど具体的な光路を想定せず、決められた光入射部118から光出射部120までの間を光が伝達可能な構成・配置を狙った設計を行うものとする。
【0023】
〔光出射部〕
なお、光出射部120は、スケール110と受光部172の相対位置を変化させた場合に、スケールスリット124の遮光部124aで遮光される部分を含めた、スケール110からの光を受光部172へ向けて出射することを想定し得る範囲全体を指している。光出射部120は、光入射部118と異なる位置に設けられており、相対位置の測定方向に測定範囲とほぼ同等の長さを有している。光出射部120に導光された光は、光出射部120からスケールスリット124を通して受光部172へ出射される。ただし、実際の使用において、光出射部120には、そこから光が出射しない箇所があってもよい。
【0024】
光出射部120にはスケールスリット124が設けられている。スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って光学的特性が一定のピッチで周期的に変化している。スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の遮光部124aで構成されている。言い換えれば、スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の遮光部124aと光透過部124bを有している。スケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bのピッチは、受光部172のPDアレイのフォトダイオードA、B、AB、BBの1周期に一致している。
【0025】
〔斜め光低減スリット〕
光入射部118には斜め光低減スリット122が設けられている。斜め光低減スリット122は、投光部142からスケール110を経由して受光部172に至る光路中に、スケール110との相対的な位置が変わらないように配置されている。
【0026】
斜め光低減スリット122は、スケール110の移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の遮光部122aで構成されている。言い換えれば、斜め光低減スリット122は、スケール110の移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の遮光部122aと光透過部122bを有している。斜め光低減スリット122の遮光部122aと光透過部122bのピッチは、受光部172のPDアレイのフォトダイオードA、B、AB、BBの1周期に一致している。例えば、斜め光低減スリット122は、反射膜116とともに、スケールスリット124と一体化されている。斜め光低減スリット122とスケールスリット124と反射膜116は、例えば蒸着によって一体で形成される。
【0027】
斜め光低減スリット122は、スケール110の移動方向に垂直な平面に対して平行に進む投光部142から投光された光の平行成分の光に対する、スケール110の移動方向に垂直な面に対して斜めに進む投光部142から投光された光の斜め成分の光の相対強度を低減する働きをする。以下の説明では、投光部142から投光された光のうち、スケール110の移動方向に垂直な平面に対して平行に進む光を平行成分の光と呼び、スケール110の移動方向に垂直な面に対して斜めに進む光を斜め成分の光と呼ぶ。
【0028】
斜め光低減スリット122の遮光部122aと光透過部122bの位相は、それぞれ、スケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bの位相と一致している。ここで位相が一致しているとは、スケール110の移動方向において、斜め光低減スリット122によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンと、スケールスリット124によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンの位相が一致することをいう。本実施形態では、スケール110の移動方向の座標軸において、斜め光低減スリット122の遮光部122aとスケールスリット124の遮光部124aが同じ座標に位置し、斜め光低減スリット122の光透過部122bとスケールスリット124の光透過部124bが同じ座標に位置することをいう。
【0029】
投光部142から投光され光入射部118に入射した光は、反射膜114による1回反射または反射膜114と反射膜116による多重反射を介して少なくとも一部の光が光出射部120に導光され、導光された光は光出射部120から受光部172に向けて出射し、受光部172によって受光される。
【0030】
図4と図5は、光学式エンコーダ100から斜め光低減スリットを省いた構成の透過型モデルを示している。受光部172のPDアレイの1周期のピッチはスケールスリット124のピッチと同じであるため、スケール110から出射した光により受光部172に投影される光の明暗パターンP1’,P1は、破線で示すように、スケールスリット124と同じピッチであることが望ましい。
【0031】
しかし、例えば図4に示すようにスケール110の移動方向の投光部142’の長さが短い場合、スケール110と受光部172の間にギャップがない場合には、スケールスリット124と同じピッチの明暗パターンP1’が受光部172に結像されるが、スケール110と受光部172の間にギャップがある場合には、スケールスリット124のピッチよりも拡大されたピッチの明暗パターンP2’が受光部172に結像されてしまう。その拡大倍率はギャップが広がるにつれて増える。なお、スケール110と受光部172を非接触に配置する場合や、スケール110と受光部172の位置ずれが発生する場合、電気接続用の部材が入る場合等が実際の使用時に想定され、これらの場合には、スケール110と受光部172の間にギャップが生じる。
【0032】
また、図5に示すように、投光部142のスケール110の移動方向の長さが長い場合は、スケール110と受光部172の間にギャップがない場合には、図4の場合と同様にスケールスリット124と同じピッチの明暗パターンP1が受光部172に結像されるが、スケール110と受光部172の間にギャップがある場合には、スケール110の移動方向に関して投光部142の異なる位置から発光された光がスケール110を介して受光部172に入射するため、受光部172に結像する光の明暗パターンP2のピッチは拡大されにくくなる。一方、図5に破線で示した斜め成分の光は、ギャップがない場合の明暗パターンP2’では暗くなる位置にも光が入り込むため、受光部172に結像する光の明暗パターンP2は振幅が小さくなってしまう。
【0033】
このように、斜め成分の光の影響により、受光部172に結像する光の明暗パターンのピッチが拡大したり、振幅が小さくなったりする。さらには、受光部172とスケール110にギャップ変動が生じると、光の明暗パターンのピッチや振幅も変動し、受光部172の検出信号が不安定となる。
【0034】
投光部142から投光された光は光入射部118に入射する。このとき、図7に示すように光入射部118の全面が光透過部である場合には、全ての方向の光L1,L2がスケール110に入射するため、光出射部120から斜め成分の光L2が多く出射してしまう。一方、図6に示すように、光入射部118に斜め光低減スリット122を設けた場合には、斜め光低減スリット122が斜め成分の光L2の一部を遮光する。斜め光低減スリット122は、図8に示すように、投光部142からの光の平行成分の光L1の一部も遮断するが、斜め光低減スリット122の位相とスケールスリット124の位相は一致しているため、ここで遮断される平行成分の光L1は、斜め光低減スリット122がない場合でもスケールスリット124で遮光される光である。そのため、斜め光低減スリット122があることで、光出射部120から出る平行成分の光の量は変わらない。従って、光出射部120から出射する光は、選択的に斜め成分の光L2の一部を低減した光となる。
【0035】
スケールスリット124が受光部172のPDアレイに対して相対移動すると、PDアレイが検出する光量が変動し、図9に示すように、フォトダイオードA,B,AB,BBから互いに90°位相が異なる擬似正弦波信号が得られる。なお、図9では、その内の互いに90°異なる2つの信号を図示している。この擬似正弦波信号の変化から、受光部172に対するスケール110の移動量と移動方向が検出され得る。
【0036】
受光部172はまた、図10に示すように、四つの受光素子184A,184B,184C,184Dと、1枚の部材に設けられた四つのヘッド側透過スリット182A,182B,182C,182Dの組合せで構成されてもよい。ヘッド側透過スリット182A〜182Dは、それぞれ、受光素子184A〜184Dの受光面に配置されている。図10では、説明のために、受光素子184A〜184Dとヘッド側透過スリット182A〜182Dを離して図示している。ヘッド側透過スリット182A〜182Dは、スケールスリット124と同様に、スケール110の移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の遮光部と光透過部を有している。各ヘッド側透過スリット182A〜182Dの遮光部と光透過部のピッチは、それぞれ、スケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bのピッチと同じである。四つのヘッド側透過スリット182A〜182Dの遮光部と光透過部は互いに位相が90°ずれている。受光素子184A〜184Dが受光する光量は、スケール110のスケールスリット124とヘッド側透過スリット182A〜182Dの位置関係で変化し、図9に示すように、受光素子184A〜184Dから互いに90°位相が異なる擬似正弦波信号が得られる。図9では、その内の互いに90°異なる2つの信号を図示している。この擬似正弦波信号の変化から、受光部172に対するスケール110の移動量と移動方向が検出され得る。
【0037】
[効果]
本実施形態に係る光学式エンコーダ100によれば、スケール110が光入射部118と導光部と光出射部120を有しているため、投光部142から投光され光入射部118に入射した光は、スケール110の内部を導光されて光出射部120から出射する。これにより、従来のように投光部142から投光された光がスケール110で反射された後に結像する位置に受光部172がくるように、スケール110に対して投光部142と受光部172を配置する必要がなくなる。すなわち、投光部142と受光部172の位置は、スケール110が導光可能な範囲で任意に決めることができるので、設計の自由度が向上される。
【0038】
また、斜め光低減スリット122の遮光部122aと光透過部122bの位相がスケールスリット124の遮光部124aと光透過部124bの位相と一致しているので、光出射部120から出射する光から斜め成分の光が平行成分の光よりも大幅に低減されるため、受光部172に投影される光の明暗パターンの拡大が低減され、振幅の低下が低減される。
【0039】
また、受光部172に入射する光が主に平行成分の光となるため、スケール110と受光部172のギャップが変動しても、平行成分の光が入射する受光部172上の位置はほとんど変化しない。すなわち、受光部172に投影される光の明暗パターンのピッチが変化しにくい。従って、スケール110と受光部172のギャップ変動が起きても、受光部172が検出する信号に影響しにくい。
【0040】
また、斜め光低減スリット122をスケール110の光入射部118にスケール110と相対的な位置が変わらないように配置し、さらに、斜め光低減スリット122とスケールスリット124の位相を一致させていることで、投光部142から投光される光の成分のうち、斜め光低減スリット122によって遮光される平行成分の光は、斜め光低減スリット122がない場合でもスケールスリット124で遮光される光であるため、光出射部120から出る平行成分の光の量は変わらない。
【0041】
また、スケール110に斜め光低減スリット122を配置することで、受光部172が配置されている固定体や移動体に追加の部材を設ける必要がない。
【0042】
また、投光部142と受光部172を相対的な位置が変わらないように配置する、すなわち、投光部142と受光部172を固定体と移動体の一方に配置することにより、電気的部材や光学的部材を投光部142と受光部172を配置した側に集約することができる。また、スケール110を配置した側を、スケール110のみの最小構成とすることができる。
【0043】
また、斜め光低減スリット122とスケールスリット124と反射膜116が一体で形成されていることで、例えばガラスにアルミの蒸着を適用して斜め光低減スリット122とスケールスリット124と反射膜116を1つの工程で作製することができる。
【0044】
また、投光部142と受光部172をスケール110に接触または近接させた構成にすることにより、薄型の光学式エンコーダ100を実現できる。
【0045】
また、90°異なる位相差信号を生成するPDアレイの構成について説明したが、90°に限定する必要はなく、任意の位相差にしてもよい。
【0046】
また、スケール110のスケールスリット124が透過型の構成について説明しているが、スケールスリット124は透過型に限らず反射型であってもよい。
【0047】
さらに、スケール110のスケールスリット124と、光入射部118と導光部と光出射部120は一体でなくてもよく、受光部172に対して同一の相対移動をする構成であれば、分かれていてもよい。
【0048】
また、スケールスリット124と斜め光低減スリット122の位相は、完全に一致していしなくてもよく、斜め成分の光が低減可能な範囲であれば、位相がずれていてもかまわない。
【0049】
斜め光低減スリット122は、スケール110の光入射部118に配置した構成を説明したが、投光部142からスケール110を経由して受光部172に至る光路中で、スケール110と相対的な位置が変わらないように配置しさえすれば他の場所に配置してもよい。また、斜め光低減スリット122は、1箇所とは限らず、複数の箇所に配置してもよい。斜め光低減スリット122を複数の箇所に配置することで、低減させる斜め成分の光の範囲を広げることができる。
【0050】
[別の構成例]
図11は、本実施形態の光学式エンコーダの別の構成例を示している。図11に示すように、この光学式エンコーダ100Aの構成は、投光ユニット140Aを除いては、図1に示した光学式エンコーダ100と同様である。投光ユニット140Aは、相対位置の測定方向に、スケール110とほぼ同等の長さを有しており、投光部142Aは、相対位置の測定方向に測定範囲とほぼ同等の長さを有している。投光ユニット140Aは、例えば、スケール110に固定されており、投光部142Aとスケール110は、相対的な位置が変わらないように配置されている。
【0051】
このような光学式エンコーダ100Aでは、受光部172が配置される固定体または移動体に設けられる電気的部材や光学的部材が低減される。
【0052】
また、スケール110側に斜め光低減スリット122を配置することで、受光部172が配置されている固定体または移動体に追加の部材を設ける必要がない。
【0053】
また、斜め光低減スリット122をスケール110の光入射部118にスケール110と相対的な位置が変わらないように配置し、さらに、斜め光低減スリット122とスケールスリット124の位相を一致させていることで、投光部142から投光される光の成分のうち、斜め光低減スリット122によって遮光される平行成分の光は、斜め光低減スリット122がない場合でもスケールスリット124で遮光される光であるため、光出射部120から出る平行成分の光の量は変わらない。
【0054】
斜め光低減スリット122は、スケール110と相対的な位置が変わらなければ、スケール110の表面に限らず、投光部142からスケール110を経由して受光部172に至る光路中のどこに配置されてもよい。例えば、スケール110の内部に配置されてもよい。
【0055】
また、斜め光低減スリット122は、スケール110から受光部172の間の光路中に、受光部172と相対的な位置が変わらないように配置されてもよい。これにより、斜め光低減スリット122は、スケール110から受光部172に入射する光の範囲の大きさがあればよいので、斜め光低減スリット122を小型にすることができる。
【0056】
[また別の構成例]
図12は、本実施形態の光学式エンコーダのまた別の構成例を示している。図12において、図1に示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。つまり、以下の説明で触れない部分は、図1に示した光学式エンコーダ100と同様である。
【0057】
図12に示すように、この光学式エンコーダ100Bの構成は、スケール110Aを除いては、図1に示した光学式エンコーダ100と同様である。スケール110Aは、投光部142と受光部172に対向した平面上にスケールスリット124を有し、その反対側の平面上に斜め光低減スリット126を有している。
【0058】
スケールスリット124は、スケール110の移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の遮光部124aで構成されている。
【0059】
斜め光低減スリット126は、スケール110Aの移動方向に沿って周期的に配列された複数の矩形状の反射部126aで構成されている。言い換えれば、斜め光低減スリット126は、スケール110Aの移動方向に沿って交互に配列された複数の矩形状の反射部126aと光透過部126bを有している。斜め光低減スリット126の反射部126aの位相は、スケールスリット124の光透過部124bの位相と一致している。
【0060】
図13に示すように、光入射部118から入射した光は、斜め光低減スリット126の反射部126aが主に平行成分の光L1を光出射部120に向けて反射する。一方、斜め光低減スリット126の光透過部126bは、斜め成分の光L2の一部を透過してスケール110Aの外部へ逃がす。
【0061】
斜め光低減スリット126は、投光部142から投光された光の平行成分の光L1の一部も透過して外部へ逃がすが、斜め光低減スリット126の光透過部の位相とスケールスリット124の遮光部124aの位相は一致しているため、ここでスケール110の外部へ逃げる光は、斜め光低減スリット126がない場合でもスケールスリット124で遮光される光である。そのため、斜め光低減スリット126があることで、出射部から出る平行成分の光L1の量は変わらない。従って、光出射部120から出射する光は、選択的に斜め成分の光L2の一部を低減した光となる。
【0062】
ここでは、斜め光低減スリット126は、反射部126aと光透過部126bの組合せで説明したが、反射部126aと吸収部の組合せであってもよい。
【0063】
光入射部118の反対側の平面上に反射部126aを配置して斜め光低減スリット126を構成することで、斜め光低減スリットを光入射部118に設けた場合とは異なる角度の斜め成分の光を低減し得る。また、斜め光低減スリット126に加えて、光入射部118に透過型の斜め光低減スリット122を設けてもよい。2つの斜め光低減スリット122,126を設けることで、斜め成分の光を低減する効果が向上する。
【0064】
[そのほかの構成例]
これまで、投光部142は、受光部172またはスケール110と相対的な位置が変わらない例を説明したが、投光部142は、スケール110の光入射部118に向けて光を投光しさえすればよく、受光部172やスケール110と独立して位置が変化してもよい。
【0065】
図14に示す様に斜め光低減スリットは複数設けてもよい。以下、第1の斜め光低減スリット132と第2の斜め光低減スリット134の2枚の構成で説明する。第1の斜め光低減スリット132の遮光部132aと光透過部132bの位相は、それぞれ、第2の斜め光低減スリット134の遮光部134aと光透過部134bの位相と一致する構成とする。ここで位相が一致しているとは、スリットの配列方向において、第1の斜め光低減スリット132によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンと、第2の斜め光低減スリット134によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンの位相が一致することをいう。斜め光低減スリットを位相が一致するように複数設けることで、斜め光低減スリットが1枚の場合より、低減可能な斜め成分の光の角度が増える。すなわち斜め成分の光を低減する効果が向上する。
【0066】
<第2実施形態>
[構成・作用]
図15は、第2実施形態による光学式エンコーダの一例を示す斜視図である。
【0067】
図15に示すように、光学式エンコーダ200は、スケール210と、スケール210に向けて光を投光する投光部を有する投光ユニット240と、投光部から投光されスケール210を経由した光を受光する受光部272を有する受光ユニット270を有している。
【0068】
スケール210は、第1実施形態のスケール110から斜め光低減スリット122を省いた構成をしている。つまり、スケール210は、光出射部にスケールスリット224を有し、さらに、投光ユニット240と受光ユニット270に対向した平面を部分的に覆っている反射膜216と、図示いていないが、それ以外の平面を覆っている反射膜を有している。投光ユニット240と受光ユニット270の構成は、それぞれ、第1実施形態の投光ユニット140と受光ユニット170と同様である。投光ユニット240と受光ユニット270は、基板292に搭載されてヘッド290を構成しており、相対的な位置が変わらないように配置されている。
【0069】
〔斜め光低減スリット〕
図16は、図15に示した光学式エンコーダ200の断面構造を示している。図16に示すように、投光部242の光が出射する面に、斜め光低減スリット250が設けられている。斜め光低減スリット250は、第1実施形態の斜め光低減スリット122と同様に、投光部242から投光された光の平行成分の光に対する斜め成分の光の相対強度を低減する働きをする。斜め光低減スリット250は、投光部242と相対的な位置が変わらないように配置されている。図16の例では、斜め光低減スリット250は、投光部242の上に配置されているが、これに限らず、斜め光低減スリット250は、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中に配置されていればよい。
【0070】
斜め光低減スリット250は、スケール210の移動方向に沿って交互に配列された複数の光透過部252と遮光部254を有している。光透過部252の形状は円柱型等、立方体以外の構造となっていても良いし、光透過部252と遮光部254は、周期的な配列となっていなくてもよいが、本実施形態では光透過部252と遮光部254が立方体で、周期的に配列している例を説明する。遮光部254は、好ましくは、入射する光を良好に吸収する特性を有している。斜め光低減スリット250は光の透過方向に厚みを有している。光透過部252から入射した光は、複数の遮光部254の、複数の光透過部252との境界となる複数の側面256で、斜め成分の光の少なくとも一部が吸収される。
【0071】
図17は、投光部242から出射した光が、スケール210を通り受光部272で受光されるまでを透過モデルで示した図である。図17に示すように、斜め光低減スリット250の厚さbは、光透過部252の配列方向の長さaに対してオーダーが同等またはそれ以上である。例えば、スリットを蒸着で作製すると、厚さは通常0.1μm程度となるが、a=50μm、b=50μm以上のような厚さを持つ構成とする。
【0072】
これにより、投光部242から出射した光は、光の進む角度θ=atan(a/b)[rad]以上の角度の光は遮光部254に入射するため、斜め光低減スリット250を通過しない。一方、θ=atan(a/b)[rad]以下の角度の光は遮光部254には入射しないため、斜め光低減スリット250を通過する。
【0073】
また、受光部272は、複数相の検出信号を出力する複数の受光素子を有し、斜め光低減スリット250の光透過部252は、各相の受光素子が光を受光し得る位置に配置されている。例えば、斜め光低減スリット250の光透過部252は、受光部272のA,B,AB,BBの全ての相に好ましくは平行成分の光が入射し得る位置に配置されている。斜め光低減スリット250のピッチは、スケールスリット224のピッチの1/mである。ここで、mは、受光部272が出力する検出信号の相数をnとして、m≧nを満たす整数である。これにより、受光部272の各相の受光素子が光を受光し得る。
【0074】
[効果]
斜め光低減スリット250がスケール210の移動方向に沿って一定のピッチで交互に配列された光透過部252と遮光部254を有し、斜め光低減スリット250は光の透過方向に厚みを有している。そして、複数の遮光部254の、複数の光透過部252との境界となる複数の側面256は、斜め成分の光の少なくとも一部を吸収するので、投光部242から出射した光の斜め成分の光が選択的に低減される。よって、受光部272に投影される光の明暗パターンの拡大を低減したり、振幅の低下を低減したりできる。
【0075】
また、受光部272に入射する光が主に平行成分の光となるため、スケール210と受光部272のギャップが変動しても、平行成分の光が入射する受光部272上の位置はほとんど変化しない。すなわち、受光部272に投影される光の明暗パターンのピッチが変化しにくい。従って、スケール210と受光部272のギャップ変動が起きても、受光部272が検出する信号に影響しにくい。
【0076】
また、光透過部252の配列方向の長さと、光透過部252の厚さ方向の長さの比を変えることで、低減する斜め成分の光の角度を変えることができる。
【0077】
また、斜め光低減スリット250の光透過部252が受光部272の全ての相に平行成分の光が入射し得る位置に配置されているので、受光部272において光が効率良く検出され、各相に入射する光の量のばらつきが抑えられる。
【0078】
また、投光部242と受光部272を相対的な位置が変わらないように配置する、すなわち、投光部242と受光部272を固定体と移動体の一方に配置することにより、電気的部材や光学的部材を投光部242と受光部272を配置した側に集約することができる。また、スケール210を配置した側を、スケール210のみの最小構成とすることができる。
【0079】
また、斜め光低減スリット250は、投光部242の光が出射する面に、投光部242と相対的な位置が変わらないように配置されているので、投光部242からスケール210に入射する光の範囲の大きさがあればよく、斜め光低減スリットを小型にすることができる。また、スケール110に追加の部材を設ける必要がない。
【0080】
[別の構成例]
斜め光低減スリット250は、投光部242の上に限らず、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中のどこかに、例えば投光部242からスケール210までの光路中またはスケール210から受光部272までの光路中のどこかに、投光部242と受光部272に対する相対的な位置が変わらないように配置されていればよい。例えば、図18に示すように、受光部272の上に配置されてもよい。この場合、斜め光低減スリット250は、スケール210から受光部に入射する光の範囲の大きさがあればいいため、斜め光低減スリット250を小型にすることができる。
【0081】
[また別の構成例]
斜め光低減スリット250は、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中に、スケール210と相対的な位置が変わらないように配置されていてもよい。例えば、図19に示すように、斜め光低減スリット250は、スケール210に固定されていてもよい。
【0082】
スケール210側に斜め光低減スリット250を配置することにより、受光部272が配置されている固定体または移動体に追加の部材を設ける必要がない。
【0083】
また、投光部242と受光部272の相対的な位置が変わらない構成で説明したが、投光部242とスケール210の相対的な位置が変わらない構成としてもよい。これにより、受光部272が配置されている固定体または移動体の構成を少なくすることができる。
【0084】
また、斜め光低減スリット250は、スケール210と相対的な位置が変わらない構成を取ることができればよい。例えば、スケール210の表面に形成されてもよいし、投光部242からスケール210を経由して受光部272に至る光路中に離れて配置されてもよい。また、スケール210の内部に配置されてもよい。
【0085】
[そのほかの構成例]
これまで、投光部242は、受光部272またはスケール210と相対的な位置が変わらない例を説明したが、投光部242は、スケール210に向けて光を投光しさえすればよく、受光部272やスケール210と独立して位置が変化してもよい。
【0086】
また、第1実施形態の図10に示した例と同様に、受光部272は、4つの受光素子と、1枚の部材に設けられた4つのヘッド側透過スリットの組合せで構成されてもよい。図20は、そのような構成の受光部の断面構造を示している。図20には、二つの受光素子284A,284Cだけが図示されている。受光素子284A,284Cの上には、それぞれ、斜め光低減スリット250A,250Cが配置されている。各斜め光低減スリット250A,250Cは、複数相の検出信号を得るために受光部272に設けられるヘッド側透過スリットの機能を兼ねている。つまり、斜め光低減スリット250A,250Cは、斜め成分の光を低減する機能とヘッド側透過スリットの機能を有するため、受光部272の部材の個数が低減される。
【0087】
斜め光を低減する機能体として、斜め光低減スリット250の光透過部252の形状が立方体の例について説明したが、光透過部と遮光部を有し、遮光部はスケールの移動方向に対して垂直な平面に平行な方向に厚さを有する構造体であればよく、光透過部が円柱型等、立方体以外の構造となっていてもよい。また、斜め光を低減する機能体の光透過部と遮光部は、周期的な配列となっていなくてもよく、例えば光透過部がランダムに配置されていてもよい。
【0088】
また、斜め光低減スリット250は厚みを持ち、複数の遮光部254の、複数の光透過部252との境界となる複数の側面256は、斜め成分の光の少なくとも一部を吸収するとしたが、図21に示すように、スリットを光路中の複数の箇所に設けても良い。以下、第1の斜め光低減スリット262と第2の斜め光低減スリット264の2枚の構成で説明する。第1の斜め光低減スリット262の遮光部262bと光透過部262aの位相は、それぞれ、第2の斜め光低減スリット264の遮光部264bと光透過部264aの位相と一致する構成とする。ここで位相が一致しているとは、スリットの配列方向において、第1の斜め光低減スリット262によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンと、第2の斜め光低減スリット264によって作られる平行成分の光の周期的明暗パターンの位相が一致することをいう。また、ここでのスリットは、遮光部262b,264bの、それぞれ光透過部262a,264aとの境界となる側面が、斜め成分の光を吸収しなくてもかまわない。斜め光低減スリットを位相が一致するように複数設けることで、斜め光低減スリットが1枚の場合より、低減可能な斜め成分の光の角度が増える。すなわち斜め成分の光を低減する効果が向上する。
【0089】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0090】
100,100A,100B…光学式エンコーダ、110,110A…スケール、112…透明部材、114,116…反射膜、118…光入射部、120…光出射部、122…斜め光低減スリット、122a…遮光部、122b…光透過部、124…スケールスリット、124a…遮光部、124b…光透過部、126…斜め光低減スリット、126a…反射部、126b…光透過部、132…第1の斜め光低減スリット、132a…遮光部、132b…光透過部、134…第2の斜め光低減スリット、134a…遮光部、134b…光透過部、140,140A…投光ユニット、142,142’,142A…投光部、170…受光ユニット、172…受光部、182A〜182D…ヘッド側透過スリット、184A〜184D…受光素子、190…ヘッド、192…基板、200…光学式エンコーダ、210…スケール、216…反射膜、224…スケールスリット、240…投光ユニット、242…投光部、250,250A,250C…斜め光低減スリット、252…光透過部、254…遮光部、262…第1の斜め光低減スリット、262a…光透過部、262b…遮光部、264…第2の斜め光低減スリット、264a…光透過部、264b…遮光部、270…受光ユニット、272…受光部、284A,284C…受光素子、290…ヘッド、292…基板、L1…平行成分の光、L2…斜め成分の光、P1,P1’,P2,P2’…明暗パターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光部と受光部と前記受光部に対して移動可能なスケールを備え、
前記受光部は、前記投光部から前記スケールに向けて投光され前記スケールを経由した光を受光する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、
前記投光部に対向した光入射部と、
前記受光部に対向した光出射部と、
前記光入射部から入射した光を前記受光部に対向した光出射部へ導光する導光部と、
光路中に配置され、前記スケールの移動方向に沿って光学的特性が周期的に変化しているスケールスリットを有し、
前記光学式エンコーダはさらに、前記スケールの移動方向に垂直な平面に対して平行に進む前記投光部から投光された光の平行成分の光に対する、前記スケールの移動方向に垂直な面に対して斜めに進む前記投光部から投光された光の斜め成分の光の相対強度を低減する斜め光低減手段を有していることを特徴とする、光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記斜め光低減手段は、前記投光部から前記スケールを経由して前記受光部に至る光路中に、前記スケールとの相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記斜め光低減手段は、前記スケールの移動方向に沿って交互に配列された複数の光透過部と遮光部を有する斜め光低減スリットで構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記スケールスリットは、前記スケールの移動方向に沿って周期的に配列された複数の光透過部と遮光部を有し、
前記斜め光低減スリットは前記光透過部と遮光部が周期的に配列し、
前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相は、それぞれ、前記スケールスリットの光透過部と遮光部の位相と一致していることを特徴とする、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記斜め光低減スリットは、前記スケールスリットと一体化されている、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
前記斜め光低減スリットは光の透過方向に厚みを有し、
複数の前記遮光部の、複数の前記光透過部との境界となる複数の側面が、前記斜め成分の光の少なくとも一部を吸収することを特徴とする、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記受光部は、複数相の検出信号を出力する複数の受光素子を有し、前記斜め光低減スリットの光透過部は、各相の受光素子が光を受光し得る位置に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の光学式エンコーダ。
【請求項8】
前記斜め光低減スリットのピッチは、スケールスリットのピッチの1/mであり、mは、前記受光部が出力する検出信号の相数をnとして、m≧nを満たす整数であることを特徴とする、請求項7に記載の光学式エンコーダ。
【請求項9】
前記斜め光低減スリットは、複数の斜め光低減スリットで構成され、
前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相は、それぞれ、他の前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相と一致していることを特徴とする、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項10】
前記斜め光低減手段は、前記スケールの移動方向に沿って周期的に配列された複数の反射部で構成された斜め光低減スリットで構成されている、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項11】
前記スケールスリットは、前記スケールの移動方向に沿って周期的に配列された複数の光透過部と遮光部を有し、
前記斜め光低減スリットの反射部の位相は、前記スケールスリットの光透過部の位相と一致している、請求項10に記載の光学式エンコーダ。
【請求項12】
前記投光部と前記受光部は、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項13】
前記投光部と前記スケールは、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項14】
前記斜め光低減手段は、前記投光部から前記スケールを経由して前記受光部に至る光路中に、前記受光部と相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項15】
前記斜め光低減手段は、前記スケールの移動方向に沿って交互に配列された複数の光透過部と遮光部を有する斜め光低減スリットで構成されていることを特徴とする、請求項14に記載の光学式エンコーダ。
【請求項16】
前記斜め光低減スリットは光の透過方向に厚みを有し、
複数の前記遮光部の、複数の前記光透過部との境界となる複数の側面が、前記斜め成分の光の少なくとも一部を吸収することを特徴とする、請求項15に記載の光学式エンコーダ。
【請求項17】
前記受光部は、複数相の検出信号を出力する複数の受光素子を有し、前記斜め光低減スリットの光透過部は、各相の受光素子が光を受光し得る位置に配置されていることを特徴とする、請求項16に記載の光学式エンコーダ。
【請求項18】
前記斜め光低減スリットのピッチは、スケールスリットのピッチの1/mであり、mは、前記受光部が出力する検出信号の相数をnとして、m≧nを満たす整数であることを特徴とする、請求項17に記載の光学式エンコーダ。
【請求項19】
前記斜め光低減スリットは、前記受光部に設けられる透過スリットの機能を兼ねている、請求項16に記載の光学式エンコーダ。
【請求項20】
前記斜め光低減スリットは、複数の斜め光低減スリットで構成され、
前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相は、それぞれ、他の前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相と一致していることを特徴とする、請求項15に記載の光学式エンコーダ。
【請求項21】
前記投光部と前記受光部は、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の光学式エンコーダ。
【請求項22】
前記投光部と前記スケールは、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の光学式エンコーダ。
【請求項1】
投光部と受光部と前記受光部に対して移動可能なスケールを備え、
前記受光部は、前記投光部から前記スケールに向けて投光され前記スケールを経由した光を受光する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、
前記投光部に対向した光入射部と、
前記受光部に対向した光出射部と、
前記光入射部から入射した光を前記受光部に対向した光出射部へ導光する導光部と、
光路中に配置され、前記スケールの移動方向に沿って光学的特性が周期的に変化しているスケールスリットを有し、
前記光学式エンコーダはさらに、前記スケールの移動方向に垂直な平面に対して平行に進む前記投光部から投光された光の平行成分の光に対する、前記スケールの移動方向に垂直な面に対して斜めに進む前記投光部から投光された光の斜め成分の光の相対強度を低減する斜め光低減手段を有していることを特徴とする、光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記斜め光低減手段は、前記投光部から前記スケールを経由して前記受光部に至る光路中に、前記スケールとの相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記斜め光低減手段は、前記スケールの移動方向に沿って交互に配列された複数の光透過部と遮光部を有する斜め光低減スリットで構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記スケールスリットは、前記スケールの移動方向に沿って周期的に配列された複数の光透過部と遮光部を有し、
前記斜め光低減スリットは前記光透過部と遮光部が周期的に配列し、
前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相は、それぞれ、前記スケールスリットの光透過部と遮光部の位相と一致していることを特徴とする、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記斜め光低減スリットは、前記スケールスリットと一体化されている、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
前記斜め光低減スリットは光の透過方向に厚みを有し、
複数の前記遮光部の、複数の前記光透過部との境界となる複数の側面が、前記斜め成分の光の少なくとも一部を吸収することを特徴とする、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記受光部は、複数相の検出信号を出力する複数の受光素子を有し、前記斜め光低減スリットの光透過部は、各相の受光素子が光を受光し得る位置に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の光学式エンコーダ。
【請求項8】
前記斜め光低減スリットのピッチは、スケールスリットのピッチの1/mであり、mは、前記受光部が出力する検出信号の相数をnとして、m≧nを満たす整数であることを特徴とする、請求項7に記載の光学式エンコーダ。
【請求項9】
前記斜め光低減スリットは、複数の斜め光低減スリットで構成され、
前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相は、それぞれ、他の前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相と一致していることを特徴とする、請求項3に記載の光学式エンコーダ。
【請求項10】
前記斜め光低減手段は、前記スケールの移動方向に沿って周期的に配列された複数の反射部で構成された斜め光低減スリットで構成されている、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項11】
前記スケールスリットは、前記スケールの移動方向に沿って周期的に配列された複数の光透過部と遮光部を有し、
前記斜め光低減スリットの反射部の位相は、前記スケールスリットの光透過部の位相と一致している、請求項10に記載の光学式エンコーダ。
【請求項12】
前記投光部と前記受光部は、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項13】
前記投光部と前記スケールは、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項14】
前記斜め光低減手段は、前記投光部から前記スケールを経由して前記受光部に至る光路中に、前記受光部と相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項15】
前記斜め光低減手段は、前記スケールの移動方向に沿って交互に配列された複数の光透過部と遮光部を有する斜め光低減スリットで構成されていることを特徴とする、請求項14に記載の光学式エンコーダ。
【請求項16】
前記斜め光低減スリットは光の透過方向に厚みを有し、
複数の前記遮光部の、複数の前記光透過部との境界となる複数の側面が、前記斜め成分の光の少なくとも一部を吸収することを特徴とする、請求項15に記載の光学式エンコーダ。
【請求項17】
前記受光部は、複数相の検出信号を出力する複数の受光素子を有し、前記斜め光低減スリットの光透過部は、各相の受光素子が光を受光し得る位置に配置されていることを特徴とする、請求項16に記載の光学式エンコーダ。
【請求項18】
前記斜め光低減スリットのピッチは、スケールスリットのピッチの1/mであり、mは、前記受光部が出力する検出信号の相数をnとして、m≧nを満たす整数であることを特徴とする、請求項17に記載の光学式エンコーダ。
【請求項19】
前記斜め光低減スリットは、前記受光部に設けられる透過スリットの機能を兼ねている、請求項16に記載の光学式エンコーダ。
【請求項20】
前記斜め光低減スリットは、複数の斜め光低減スリットで構成され、
前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相は、それぞれ、他の前記斜め光低減スリットの光透過部と遮光部の位相と一致していることを特徴とする、請求項15に記載の光学式エンコーダ。
【請求項21】
前記投光部と前記受光部は、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の光学式エンコーダ。
【請求項22】
前記投光部と前記スケールは、相対的な位置が変わらないように配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の光学式エンコーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−202952(P2012−202952A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70575(P2011−70575)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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