光学式測距装置および電子機器
【課題】高耐熱かつ高精度の光学式測距装置を提供する。
【解決手段】発光レンズ5および受光レンズ6を保持した、金属からなるレンズフレーム11を遮光性樹脂からなる2次モールド9および3次モールド10の間に保持する。レンズフレーム11は、表面および裏面に凹凸構造11bを有している。発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との密着力が大幅に向上するので、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との滑りを防止することができる。
【解決手段】発光レンズ5および受光レンズ6を保持した、金属からなるレンズフレーム11を遮光性樹脂からなる2次モールド9および3次モールド10の間に保持する。レンズフレーム11は、表面および裏面に凹凸構造11bを有している。発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との密着力が大幅に向上するので、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との滑りを防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距対象物までの距離を光学的に測定する光学式測距装置、特にリフロー等による温度変化により熱膨張または収縮する場合においても高い測距精度を有する光学式測距装置およびそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、一般的な三角測距法の原理を説明するための図である。
【0003】
図12に示すように、従来の一般的な光学式測距装置は、例えば、発光素子201、受光素子202、発光レンズ203および受光レンズ204を備えている。
【0004】
この光学式測距装置において、原点(0,0)に配置された発光素子201より出射された光束は、A点(0,d)に配置された発光レンズ203により略平行光束(発光軸205)となり、スポット光として、測距対象物211上のB点(0,y)に照射される。測距対象物211により反射された光束(受光軸206)は、C点(L,d)に配置された受光レンズ204(集光レンズ)により集光され、x方向に沿った軸上に配置された受光素子202上のD点(L+l,0)に結像されて、受光スポットを形成する。ここで、C点(受光レンズ204の中心)を通りy軸と平行な線が受光素子202の受光面と交差する点をE点(L,0)とすると、三角形ABCと三角形ECDとは相似する。したがって、測距対象物211までの距離yは、受光素子202により受光スポットの位置を検出して辺ED(=l)を測定することにより、下記の式(1)によって算出される。
【0005】
【数1】
上記のように、光学式測距装置は、受光素子202上に形成された受光スポットの位置を検出し、式(1)に基づいて測距対象物211までの距離を算出する。当該距離を正確に求めるためには、発光レンズ203と受光レンズ204との間の距離L、および受光レンズ204と受光素子202との間の距離dが固定されている必要がある。
【0006】
図13は、上記の原理を利用した一般的な光学式測距装置300の構成を示す断面図である。
【0007】
図13に示すように、光学式測距装置300は、上記の発光素子201、受光素子202、発光レンズ203および受光レンズ204を備えるとともに、これらをケース301によって保持している。ケース301は、一般に低価格化のために遮光性樹脂により形成されている。
【0008】
この光学式測距装置300では、ケース301は、一般に大きな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることから、周囲温度が変化すると、その影響を受けて伸縮する。このため、例えば、周囲温度が上昇することによりケースが伸長すると、発光レンズ203と受光レンズ204とがそれぞれ点線で示す位置に移動し、レンズ間の距離Lが変化してしまう(大きくなる)。その結果、室温時の発光レンズ203の光軸205aおよび受光レンズ204の光軸206aは、それぞれ破線にて示す光軸205bおよび光軸206bのように変化してしまう。この状態では、測距対象物211の位置が変わっていないに
も関わらず、受光素子202上に形成される受光スポットの位置は、室温時に比べて外側にシフトしてしまう。このように、例えば周囲温度が上昇した場合には、測距対象物211は、実際よりも近い位置にあると誤って測定されてしまう。
【0009】
特許文献1,2には、このような不都合を解消することができる技術が開示されている。図14は、特許文献1に記載された光学式測距装置400の構成を示す断面図である。図15は、特許文献2に記載された光学式測距装置500の構成を示す断面図である。
【0010】
図14に示すように、光学式測距装置400は、発光素子401、受光素子402、投光レンズ403(発光レンズ)および受光レンズ404を備えている。発光素子401を収納するパッケージ405および投光レンズ403は、同一の第1ケース406に固定される一方、受光素子402を収納するパッケージ407および受光レンズ404は、同一の第2ケース408に固定されている。第1ケース406および第2ケース408は、本体部409によって接続されて本体ケース410を構成している。
【0011】
このような光学式測距装置400では、本体ケース410に熱膨張が生じた場合でも、第1ケース406において発光素子401および投光レンズ403の位置関係が維持され、第2ケース408において受光素子402および受光レンズ404の位置関係が維持される。これにより、受光素子402の中心から反射光の光スポットの位置までの距離に変動が生じなくなるので、測距精度が保持される。
【0012】
図15に示すように、光学式測距装置500は、結像レンズ501a,501b、結像レンズ501a、501bの保持部材502、CCDパッケージ503a,503b(光センサアレイ)、およびCCDパッケージ503a,503bの保持部材504を備えている。この光学式測距装置500では、結像レンズ501a,501bおよび保持部材502,504が吸湿性のないプラスチックからなる同一材料により形成されている。
【0013】
このような光学式測距装置500では、結像レンズ501a,501bおよび保持部材502,504が熱膨張により全体に均等に伸びる。これにより、温度変化による測距精度の低下を防ぐことができる。
【0014】
このように、上記の光学式測距装置400,500では、受発光素子およびレンズを保持する部材が周囲温度の変化により均等に伸縮する場合において、三角測量の原理を満足するように、受発光素子およびレンズの位置関係が保持される。しかしながら、光学式測距装置400,500では、受発光素子が自己発熱した場合には、装置全体における温度変化が均等でないため、受発光素子の近傍の部材とレンズ近傍の部材とが、異なる温度となる結果、それに応じて異なる伸縮量で伸縮する。このため、受発光素子とレンズとの位置関係を維持することができない。
【0015】
このように均等でない温度変化が生じた場合における受光スポットの位置の補正方法について、特許文献1,2には記載されていない。したがって、特許文献1,2に記載された技術では、受発光素子の自己発熱による測距精度の低下を防ぐことができないため、三角測距法の原理を満足に利用することができない。
【0016】
特許文献3には、このような不都合を解消することができる技術が開示されている。図16は、特許文献3に記載された光学式測距装置600の構成を示す断面図である。
【0017】
図16に示すように、光学式測距装置600は、一対のレンズ601a,601b、一対のCCDパッケージ602a,602b、レンズ保持部材603、CCD保持部材604および温度センサ605,606を備えている。温度センサ605は、レンズ保持部材
603上のレンズ602a,602bの間に取り付けられ、温度センサ606は、CCD保持部材604上のCCDパッケージ602a,602bの間に取り付けられている。
【0018】
このような光学式測距装置600では、温度センサ605,606の出力を用いて、CCDパッケージ602a,602b内のCCDチップ607a,607b(受光素子)の自己発熱によるレンズ保持部材603およびCCD保持部材604の温度差が求められる。そして、この温度差を利用して、CCDチップ607a,607b上の物体像のシフト量が補正される。これにより、CCDチップ607a,607bの自己発熱によるレンズ保持部材603およびCCD保持部材604の熱膨張の差を補正して測距精度を保つことができる。
【0019】
ところが、光学式測距装置600では、測距精度の低下を防ぐために、温度センサ605,606を必要とする。また、温度センサ605,606は、CCDチップ607a,607b等に内蔵することができず、個別にレンズ保持部材603およびCCD保持部材604に接触するように配置されなければならない。しかも、温度センサ605,606が出力した信号を送信するための配線も必要となる。このため、光学式測距装置600の構造が複雑になる結果、組み立て工数が増加してしまい、光学式測距装置600を安価に提供することが困難となる。
【0020】
そこで、温度センサ605,606をいずれか1つのみ設けることで、光学式測距装置600の構造をより簡素化することが考えられる。しかしながら、温度センサ605,606をいずれか1つのみ設けることは、次に説明するような不具合を招来する。
【0021】
図17は、従来の光学式測距装置700の構成を示す断面図である。
【0022】
図17に示すように、光学式測距装置700において、周囲熱は、光学式測距装置700の側面を含めた光学式測距装置700全体を均等に加熱または冷却し、各部材を膨張または収縮させる。これにより、発光レンズ703と受光レンズ704との間の距離、および発光素子701と受光素子702との間の距離を変化させる。一方、発光素子701および受光素子702の通電による自己発熱は、これらの素子を封止している遮光性樹脂部705を直接加熱して膨張させる。また、発光素子701および受光素子702からの放射熱と、遮光性樹脂部705から発光レンズ703および受光レンズ704を保持するレンズ保持部材706を伝導する熱とは、レンズ保持部材706におけるレンズ保持部分を間接的に加熱して膨張させる。
【0023】
したがって、自己発熱が生じた場合には、遮光性樹脂部705とレンズ保持部材706とは、温度が異なるために、固有の熱膨張係数によって、それぞれの温度変化にしたがって膨張することとなる。そのため、発光レンズ703および受光レンズ704の間の距離の変化量は、周囲熱によって光学式測距装置700が加熱された場合に矢印Iに示すようになり、自己発熱によって光学式測距装置700が加熱された場合に矢印Jに示すようになり、それぞれの場合で異なる。
【0024】
したがって、自己発熱による、両素子701,702間の距離の変化と、両レンズ703,704間の距離の変化とをそれぞれ予測するためには、遮光性樹脂部705の温度と、レンズ保持部材706の温度とをそれぞれ個別に検出する温度センサを備える必要がある。
【0025】
光学式測距装置600においても、レンズ601a,601b間の距離の変化量は、周囲熱によって光学式測距装置600が加熱された場合と、自己発熱によって光学式測距装置600が加熱された場合とで異なる。したがって、温度センサ605,606をレンズ
保持部材603にのみ、またはCCD保持部材604にのみに取り付けると、例えば温度が上昇した場合に、周囲温度の上昇または自己発熱のいずれの影響により温度が変化したのかが不明である。それゆえ、レンズ601a,601bとCCDチップ607a,607bとの位置関係を正確に把握することができず、測距精度が低下してしまうという問題が生じる。
【0026】
そこで、周囲熱および自己発熱が原因で生じる熱膨張による受発光レンズの間の距離の変化そのものを抑えるため、例えば図13に示す光学式測距装置300において、発光レンズ203および受光レンズ204を保持するケース301の一部を金属により形成することが考えられる。具体的には、発光レンズ203および受光レンズ204を保持する部分を金属製のフレーム(レンズフレーム)で構成し、このレンズフレームをケース301に取り付ける。このように、ケース301の一部を熱膨張係数の小さい金属製にすることで、熱膨張による受発光レンズの間の距離の変化を抑えることができ、周囲熱および自己発熱に応じて生じる熱膨張による受発光レンズ間の距離の変化の相違をなくすことができる。また、ケース301の全体を金属製にすることに比べて価格の上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2006−337320号公報(2006年12月14日公開)
【特許文献2】特開平11−281351号公報(1999年10月15日公開)
【特許文献3】特開2001−99643号公報(2001年4月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
ところで、光学式測距装置を電子機器に搭載するためには、光学式測距装置を基板等に実装する必要がある。実装においては、発光素子および受光素子に対する信号の入出力や電源供給のために、発光素子および受光素子が実装されるリードフレームに設けられる複数の端子が基板に半田付けされる。
【0029】
近年の光学式測距装置の小型化に伴って、上記の端子間の間隔が狭くなってきている。また、このような小型化された光学式測距装置を搭載する電子機器を効率的に大量生産することも求められる。このような要求を受けて、端子の半田付けの手段として、従来の手作業よりもリフローへの需要が非常に高まっている。
【0030】
光学式測距装置をリフロー炉に通すと、一般に260℃以上の高温に短時間ではあるが曝される。このとき、受発光レンズ、受発光素子、ケース、受発光素子を封止する素子封止部等の各部を形成する各樹脂は、その熱膨張係数にしたがって膨張し、リードフレームや前述のレンズフレームも同様にその熱膨張係数にしたがって膨張する。
【0031】
しかしながら、リードフレームおよびレンズフレームを構成する金属の熱膨張係数は樹脂の熱膨張係数より小さい。このため、リードフレームと素子封止部との界面、レンズフレームとケースとの界面、およびレンズフレームとレンズとの界面には熱膨張係数の差による応力が発生する。また、リフロー炉から排出されるときには、光学式測距装置が逆に室温付近まで急激に冷却される。このため、高温雰囲気により膨張した光学式測距装置が急激に収縮する。
【0032】
このような加熱から冷却に至る過程において、例えばレンズおよびレンズフレームに着目すると、レンズとレンズフレームとの密着力が不十分な場合、高温雰囲気中の昇温中にそれらの界面の応力により、レンズがレンズフレームから滑ってしまう。また、室温への
急激な降温中にもそれらの界面には応力が作用し、レンズがレンズフレームから滑ってしまう。このため、リフローによる実装前に比べて受発光レンズと受発光素子との相対的な位置関係が変化してしまう。この結果、前述の三角測距の原理で説明したように受光スポットの位置がシフトするので、この位置を用いて前述の式(1)による演算を行っても、得られた距離が正しい値からずれる。
【0033】
冷却時に過熱時と全く逆の滑りが生じれば、受発光レンズとレンズフレームとの位置関係が元に戻ることにより、リフローによる上記のような不都合は生じない。しかしながら、実際には、受発光レンズとレンズフレームとの位置関係が元に戻ることはない。
【0034】
受発光レンズとレンズフレームとの界面に着目した場合、加熱時の膨張と冷却時の収縮とで、当該界面で発生する歪みが全く正反対のベクトルで生じない。例えば、リフローの昇温プロファイルと降温プロファイルとが異なることから、上記の界面における内部温度分布が加熱時と冷却時とで対称になることはない。したがって、加熱時に発生する滑りと冷却時に発生する滑りとが異なり、受発光素子に対する受発光レンズの相対的な位置関係が変化してしまう。
【0035】
このように、金属製のレンズフレームを用いたとしても、急激な加熱および冷却によるレンズフレームと樹脂部材との界面に生じる滑りのために、測距精度が低下するという問題が生じる。
【0036】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高耐熱かつ高精度の光学式測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明に係る光学式測距装置は、前記の課題を解決するために、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、実装部材上に実装された発光素子と、上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズフレームと、上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、上記レンズフレームが、表面および裏面の少なくとも上記発光レンズと受光レンズが形成される領域に凹凸構造が形成されていることを特徴としている。
【0038】
上記構成においては、レンズフレームの表面、裏面または両面に凹凸構造が形成されているので、発光レンズおよび受光レンズを形成する透光性樹脂が凹凸構造に入り込み、その透光性樹脂とレンズフレームとの密着性が向上する。これにより、リフロー時の周囲温度の変化により発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面に応力が作用する場合においても、それぞれが滑りを起こすことはない。それゆえ、リフロー処理後の発光レンズおよび受光レンズと発光素子および受光素子との相対的な位置関係が保たれる。したがって、光学式測距装置の耐熱性および測距精度を高めることができる。
【0039】
前記光学式測距装置において、上記凹凸構造はAu−Pdめっきにより形成されていることが好ましい。
【0040】
上記構成においては、凹凸構造を形成するためにAu−Pdめっきを用いているので、
効果的にレンズ樹脂との密着性を向上させることができる。したがって、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面の滑りを防止することができる。
【0041】
前記光学式測距装置において、上記凹凸構造が梨地処理により形成されていることが好ましい。
【0042】
上記構成においては、前述の透光性樹脂が梨地処理により形成された微小な凹凸構造に入り込み、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの密着力を向上させることができる。したがって、リフロー処理時に発光レンズおよび受光レンズとの界面での滑りを防止することができる。
【0043】
前記光学式測距装置において、上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴と、当該保持穴の周辺に形成されるスリット穴とを有しており、当該スリット穴に上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂が充填されていることが好ましい。
【0044】
上記構成においては、レンズフレームにおける保持穴の周辺にスリット穴が形成され、スリット穴に発光レンズおよび受光レンズを形成する透光性樹脂が充填されるので、発光レンズおよび受光レンズにおいて、スリット穴を介してレンズフレームが挟み込まれる。これにより、発光レンズおよび受光レンズがレンズフレームに強固に固定される。したがって、リフロー処理時に、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面で生じる滑りを防止できる。
【0045】
また、光学式測距装置が熱によって膨張または収縮すると、レンズフレームには、その膨張または収縮による応力が作用する。この応力が発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの密着力以上になると、発光レンズおよび受光レンズは、レンズフレームの表面と密着している界面が、外周部から剥離していく。レンズスリットにおいては、透光性樹脂が充填されているため、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームの表面との界面が存在しない。このため、レンズスリットによって剥離の進行を阻止することができる。
【0046】
前記光学式測距装置において、上記スリット穴は上記発光レンズおよび上記受光レンズについてそれぞれ少なくとも2つ形成されていることが好ましい。
【0047】
上記構成においては、スリット穴は発光レンズおよび受光レンズについて少なくとも2つ形成されている、安定して発光レンズおよび受光レンズを固定することができる。したがって、滑り防止の強度を向上させることができる。
【0048】
前記光学式測距装置において、上記スリット穴は、上記スリット穴と上記保持穴の間のスリット穴−保持穴間距離が隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離以上であることが好ましい。
【0049】
上記の構成においては、前述の剥離が隣り合うリット穴の間より進行しても、両側のスリット穴に充填されている透光性樹脂によって、スリット穴に近いほど剥離の進行が抑えられる。このため、剥離は、隣り合うスリット穴の間から保持穴側へ、近似的にスリット穴間距離を直径とする円形状に広がっていくと考えることができる。したがって、スリット穴−保持穴間距離がスリット穴間距離以上であることにより、剥離が保持穴を越えて広がることを防止できる。それゆえ、剥離による応力のために発光レンズと発光素子との相対位置および受光レンズと受光素子との相対位置が変化することを回避できる。
【0050】
前記光学式測距装置において、上記スリット穴−保持穴間距離が上記スリット穴間距離と等しいことが好ましい。
【0051】
上記の構成においては、スリット穴−保持穴間距離がスリット穴間距離と等しいことにより、剥離が保持穴にまで達しても、それ以上広がることを防止できる。また、スリット穴−保持穴間距離がスリット穴間距離と等しいことにより、保持穴とスリット穴との配置関係をスリット穴−保持穴間距離とスリット穴間距離との関係で容易に設定することができる。それゆえ、スリット穴間距離を可能な限り短く設定し、それに応じてスリット穴−保持穴間距離を設定することにより、発光レンズおよび受光レンズの面積を最適に低減することができる。
【0052】
前記光学式測距装置において、隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離は上記レンズフレームの厚さ以上であることが好ましい。
【0053】
隣り合うスリット穴の間に形成されるスリット間領域は、スリット穴間距離がレンズフレームの厚さ以上であると、発光レンズおよび受光レンズの直径方向に直交する方向に作用する応力に抗することができる程度に高い強度を有する。一方、スリット間領域は、スリット穴間距離がレンズフレームの厚さより短くなると、上記の方向に作用する応力に抗することができなくなる程度に強度が低下して、スリット穴間距離が短くなるように変形してしまう。これに伴い、スリット穴と保持穴との間の領域も変形してしまう。そこで、上記の構成においては、スリット穴間距離は上記レンズフレームの厚さであることにより、このような変形を回避することができる。
【0054】
本発明の他の光学式測距装置は、前記課題を解決するために、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、実装部材上に実装された発光素子と、上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する発光レンズと、上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、上記反射光を上記受光素子に集束させる受光レンズと、上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられたレンズフレームと、上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体との間、および上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第2の遮光性樹脂体との間の少なくともいずれか一方の間に、上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体および上記第2の遮光性樹脂体とが熱膨張により互いに接触しないような間隙が形成されていることを特徴としている。
【0055】
上記構成においては、リフロー処理時に、受光レンズおよび発光レンズを構成する樹脂と、第1の遮光性樹脂体および第2の遮光性樹脂体を構成する樹脂とがそれぞれの熱膨張係数で膨張する。これに対しては、受光レンズおよび発光レンズを構成する樹脂と、第1の遮光性樹脂体および第2の遮光性樹脂体とが、間隙内で膨張することで接触しないので、互いに膨張による応力を作用しあうことはない。それゆえ、リフロー処理後には、発光レンズおよび受光レンズと発光素子および受光素子との相対的な位置関係は保たれる。したがって、光学式測距装置の耐熱性の測距精度を高めることができる。
【0056】
前記光学式測距装置において、上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴を有しており、当該保持穴に複数の凹部が形成されていることが好ましい。
【0057】
上記構成においては、保持穴に複数の凹部が形成されているので、凹部内に前述の透光性樹脂が充填され、発光レンズおよび受光レンズがレンズフレームに強固に固定される。これにより、リフロー処理時の温度変化による滑りを起こす応力に対して、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの間の密着力を向上させることができる。
【0058】
前記光学式測距装置において、上記レンズフレームの表面、裏面または両面に、上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂により薄膜が形成されていることが好ましい。
【0059】
上記構成においては、上記レンズフレームの表面、裏面または両面に、発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂により薄膜が形成されているので、金属製のレンズフレームと第1および第2の遮光性樹脂体との間の密着性が高まる。これにより、レンズフレームのすべりを防止することができる。
【0060】
本発明に係る電子機器は、上記のいずれかの光学式測距装置を搭載していることを特徴としている。
【0061】
これにより、光学式測距装置を、パソコン、キッチン家電、サニタリ機器等の電子機器を搭載して、人までの距離を検出して機器を制御したり、非接触スイッチや非接触コントローラとして電子機器を制御したりするセンサとして利用することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る光学式測距装置は、上記のように構成されることにより、光学式測距装置の高耐熱化および高精度化を容易に図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)は本発明の実施形態1に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のM−M線矢視断面図である。
【図2】上記光学式測距装置における発光素子および受光素子の他の配置を示す側面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態2に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のN−N線矢視断面図である。
【図4】実施形態2に係る光学式測距装置における発光レンズの端部の周辺部分を一部拡大して示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の実施形態3に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のO−O線矢視断面図である。
【図6】実施形態3の変形例を示すものであり、レンズが形成されたレンズフレームの構成を示す平面図である。
【図7】実施形態1に係る光学式測距装置のレンズフレームにおける発光レンズの保持構造を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態4に係る光学式測距装置の構成を示す断面図である。
【図9】(a)は図8の光学式測距装置におけるレンズ付レンズフレームの構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のP−P線矢視断面図である。
【図10】本発明の実施形態5に係るパソコンの構成を示す斜視図である。
【図11】(a)は本発明の実施形態に対する比較例に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のQ−Q線矢視断面図である。
【図12】一般的な三角測距法の原理を説明するための図である。
【図13】一般的な測距装置の構成を示す断面図である。
【図14】特許文献1に記載された測距装置の構成を示す断面図である。
【図15】特許文献2に記載された測距装置の構成を示す断面図である。
【図16】特許文献3に記載された測距装置の構成を示す断面図である。
【図17】測距装置において周囲熱および自己発熱によるレンズ間距離の変化量がそれぞれ異なることを説明するための図である。
【図18】(a)は実施形態3に係る光学式測距装置におけるレンズフレームのレンズスリット間の距離とレンズスリットから保持穴までの距離との間の関係を説明するためのレンズフレームおよび発光レンズの平面図であり、(b)は当該平面図のR−R線矢視断面図である。
【図19】上記レンズスリットの間から発光レンズの剥離が進行した状態を示すレンズフレームおよび発光レンズの部分平面図である。
【図20】上記レンズスリットの間にレンズフレームに応力が作用することを示すレンズフレームおよび発光レンズの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
[実施形態1]
本発明に係る一実施形態について、図1、図2および図7を参照して以下に説明する。
【0065】
〔光学式測距装置の構成〕
図1(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係る光学式測距装置1の構成を示す平面図および断面図である。図2は、光学式測距装置1における発光素子2および受光素子3の配置を示す側面図である。
【0066】
本実施形態に係る光学式測距装置1は、測距対象物までの距離を測定するための装置である。図1(a)および(b)に示すように、光学式測距装置1は、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光レンズ5、受光レンズ6、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9、3次モールド10およびレンズフレーム11を備えている。
【0067】
リードフレーム4(実装部材)は、搭載部4aと複数の端子4bとを有している。搭載部4aは、発光素子2および受光素子3を搭載するように平板状に形成されている。端子4bは、光学式測距装置1の長辺側の対向する2つの外壁面からM−M線方向と直交する方向に互いに平行に伸びるように、搭載部4aと一体に形成されている。
【0068】
発光素子2は、リードフレーム4の搭載部4a上の一端側に搭載されており、透光性樹脂からなる発光側1次モールド7(透光性樹脂体)で封止されている。一方、受光素子3は、リードフレーム4の搭載部4a上の他端側に搭載されており、発光側1次モールド7と同じ透光性樹脂からなる受光側1次モールド8(透光性樹脂体)で封止されている。これらの発光側1次モールド7および受光側1次モールド8は、遮光性樹脂からなる2次モールド9(第1の遮光性樹脂体)で覆われている。これにより、発光素子2から受光素子3へ光が直接入射することが防止される。
【0069】
受光素子3としては、PSD(Position Sensitive Detector)、複数のフォトダイオード(PD)が配置されたリニアセンサ、イメージセンサなどが用いられる。この受光素子3は、受光した反射光が集束したスポットの位置を検出するために、受光光量を電気信号に変換するが、その電気信号に所定の演算処理を施す信号処理部を内蔵している。あるいは、図2に示すように、信号処理部12が受光素子3と別の素子としてリードフレーム4上に構成されていてもよい。
【0070】
なお、発光素子2および受光素子3は、リードフレーム4に代えて、表面に配線が形成された基板(実装部材)上に配置されてもよい。
【0071】
上記の2次モールド9は、開口部9a,9bを有している。開口部9aは、発光素子2の上方に開口し、かつ中間に段を有するすり鉢状に形成されている。一方、開口部9bは、受光素子3の上方に開口し、かつ中間に段を有するすり鉢状に形成されている。2次モールド9の上端部には、開口部9a,9bをそれぞれ覆うように発光レンズ5および受光レンズ6が配置されている。開口部9aにより、発光素子2からの出射光が発光レンズ5に至る空間が形成され、開口部9bにより、受光レンズ6に入射した測距対象物からの反射光が受光素子3に至る空間が形成される。
【0072】
発光レンズ5は、透光性を有する透光性樹脂からなり、発光素子2からの出射光を平行光束に変換して測距対象物に照射する。受光レンズ6は、透光性を有する透光性樹脂からなり、測距対象物からの反射光を受光素子3の受光面上に集束させる。発光レンズ5および受光レンズ6は、レンズフレーム11に保持されており、当該レンズフレーム11が2次モールド9上の所定の位置に配置されることにより、それぞれ開口部9a,9bに配置される。また、発光レンズ5および受光レンズ6を形成する透光性樹脂としては、レンズを形成するために一般的に用いる公知の透光性の樹脂(例えばエポキシ樹脂)を用いることができる。
【0073】
なお、発光レンズ5および受光レンズ6は、同一の透光性樹脂により構成されていてもよいし、それぞれ異なる透光性樹脂により構成されていてもよい。
【0074】
遮光性樹脂からなる3次モールド10(第2の遮光性樹脂体)は、2次モールド9の外周面およびレンズフレーム11の上端面を覆い、かつ発光レンズ5および受光レンズ6を露出する開口部10a,10bを有するように形成される。これにより、3次モールド10は、2次モールド9とレンズフレーム11とを保持している。
【0075】
2次モールド9および3次モールド10は、射出成形によって形成される。また、2次モールド9および3次モールド10を構成する遮光性樹脂としては、公知の遮光性の樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP,熱膨張係数:5E−5)を好適に用いることができる。このように、遮光性樹脂からなる2次モールド9および3次モールド10は、後述する金属からなるレンズフレーム11に対して大きい熱膨張係数を有する。
【0076】
レンズフレーム11は金属により長方形をなす平板状に形成されている。また、レンズフレーム11は、発光レンズ5および受光レンズ6を保持するための保持穴を有している。レンズフレーム11を構成する金属材料としては、例えば42アロイ(熱膨張係数:5.5E−6)が好適であるが、これに限定されない。
【0077】
図7は、レンズフレーム11における発光レンズ5の保持構造を拡大して示す断面図である。
【0078】
なお、図7には受光レンズ6の保持構造を示していないが、受光レンズ6についても同様の保持構造でレンズフレーム11に保持されていることは勿論である。
【0079】
図7に示すように、レンズフレーム11の表面、裏面または両面における少なくとも発光レンズ5が形成される領域に、微小な凹凸構造11bが形成されている。この凹凸構造11bは、例えば、梨地処理を施されることにより形成されているが、同様な効果が得られるのであれば、他の表面処理によって形成されてもよい。例えば、凹凸構造11bは、金型プレスにより形成することもできるし、ブラスト加工やレーザ加工により形成することもできる。また、凹凸構造11bを形成する他の方法には、めっき処理がある。めっき
の前処理により、レンズフレーム11の表面、裏面または両面には数μmレベルの微細な凹凸構造11bを形成することができる。
【0080】
凹凸構造11bが上記のようにレンズフレーム11に形成されていることにより、発光レンズ5および受光レンズ6を構成する透光性樹脂はレンズフレーム11との密着力が大きくなる。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との界面において、それぞれを滑りにくくすることができる。
【0081】
なお、後述する各実施形態のレンズフレームにも、上記の凹凸構造11bと同様の凹凸構造が形成されていてもよい。
【0082】
〔発光レンズおよび受光レンズのすべり防止効果〕
ここでは、光学式測距装置1が、リフロー等により高温雰囲気中または低温雰囲気中に置かれた場合に熱膨張または収縮する状態について説明する。
【0083】
光学式測距装置1は、リフロー炉を通過するとき、前述のように260℃以上の高温に曝される。これにより、発光レンズ5、受光レンズ6、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を形成する各樹脂は、それぞれの熱膨張係数にしたがって膨張する。同時に、金属からなるリードフレーム4およびレンズフレーム11もそれぞれの膨張係数にしたがって上記の樹脂ほど大きくはないが膨張する。このとき、特に、発光レンズ5および受光レンズ6を形成する透光性樹脂の熱膨張係数とレンズフレーム11を形成する金属の熱膨張係数との差によって、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム11に対して滑りを生じようとする。また、光学式測距装置1は、リフロー炉から排出されるときに、逆に室温付近まで急激に冷却されることにより急激に収縮する。このときも、収縮の差によって、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム11に対して滑りを生じようとする。
【0084】
これに対し、上記の構成では、レンズフレーム11の表面、裏面または両面に凹凸構造11bが形成されている。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との密着力を大幅に向上させることができる。したがって、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との滑りを防止することができる。
【0085】
また、レンズフレーム11にめっきを施す場合には、めっきの材質としては樹脂との密着力を大きくできるAu−Pdめっきを用いることにより、さらに発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との密着力を大幅に向上させることができる。
【0086】
これにより、発光素子2および受光素子3と発光レンズ5および受光レンズ6との相対的な位置関係を保つことができる。したがって、光学式測距装置1の高耐熱化および高精度化を容易に図ることができる。
【0087】
〔光学式測距装置の製造〕
光学式測距装置1の製造手順(製造方法)について説明する。
【0088】
なお、ここでは、前述の凹凸構造11bを形成するために、レンズフレーム11の表面および裏面にめっき処理を施す例について説明する。
【0089】
まず、リードフレーム4上に発光素子2と受光素子3とを配置する。この状態で、Auワイヤにより、発光素子2および受光素子3と端子4bとを電気的に接続する。
【0090】
次に、透光性樹脂で発光素子2を封止することにより発光側1次モールド7を形成する
。同時に、透光性樹脂により受光素子3を封止することにより受光側1次モールド8を形成する。
【0091】
別工程では、レンズフレーム11の表面および裏面に、めっき処理を施すことにより、数μmの凹凸を有するめっき層11aを形成する。また、めっき層11aが形成されたレンズフレーム11に、発光レンズ5および受光レンズ6を透光性樹脂により形成する。この状態では、透光性樹脂が固化することにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との間に内部応力が生じている。そこで、発光レンズ5および受光レンズ6が形成されたレンズフレーム11を3次モールド10により光学式測距装置1に組み込む前に、レンズフレーム11に対してリフローに相当する熱処理を行う。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6が熱膨張するので、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との間に残留していた内部応力を、後のリフロー処理を行う前に開放することができる。
【0092】
その後、遮光性樹脂により2次モールド9を形成する。さらに、2次モールド9上にレンズフレーム11を配置した状態で、遮光性樹脂により、2次モールド9およびレンズフレーム11を封止するように、3次モールド10を形成することにより光学式測距装置1が完成する。
【0093】
また、完成した光学式測距装置1を基板等に実装する場合、光学式測距装置1をリフロー炉に通過させる。このとき、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との間で熱膨張係数に大きな差があるために、両者の界面にリフローの熱によって歪みが発生しようとする。この状態では、上記の内部応力がすでに開放されているので、歪みの発生のみをめっき層11aにより抑えればよい。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との滑りを効果的に防止することが可能となる。
【0094】
ここで、発光レンズ5および受光レンズ6が形成されたレンズフレーム11(レンズ付レンズフレーム)以外の部材に、リフロー処理の前に上記のようなリフロー相当の熱処理を行わないのは次の理由による。例えば、発光素子2および受光素子3が搭載されたリードフレーム4は、Auワイヤにより発光素子2および受光素子3と電気的に結線されており、さらに透光性樹脂からなる発光側1次モールド7および受光側1次モールド8により封止されている。このため、リフロー相当の熱を加えすぎると、樹脂の膨張によりAuワイヤが切断してしまうなど、信頼性上の問題を起こす可能性がある。
【0095】
これに対し、レンズ付レンズフレームは、リードフレーム4のようにIC等のパーツが搭載されていないので、リフロー相当(もしくはそれ以上)の熱を加えたとしても、上記のような問題が生じない。
【0096】
なお、このような熱処理は、後述する実施形態2〜4のいずれにも適用可能である。
【0097】
[実施形態2]
本発明に係る他の実施形態について、図3および図4を参照して以下に説明する。
【0098】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0099】
〔光学式測距装置の構成〕
図3(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に係る光学式測距装置21の構成を示す平面図および断面図である。図4は、光学式測距装置21における発光レンズ5の端部の周辺部分を一部拡大して示す断面図である。
【0100】
図3(a)および(b)に示すように、光学式測距装置21は、光学式測距装置1と同様に、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光レンズ5、受光レンズ6、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を備えている。また、光学式測距装置21は、光学式測距装置1におけるレンズフレーム11に代えてレンズフレーム12を有している。
【0101】
レンズフレーム12は、レンズフレーム11と同様に、金属により長方形をなす平板状に形成されている。また、レンズフレーム12を構成する金属材料としては、レンズフレーム11を構成する前述の金属材料を用いることができる。また、レンズフレーム12は、レンズフレーム11と異なり、表面および裏面にめっき層11aを有していない。
【0102】
3次モールド10における開口部10a,10bは、それぞれ発光レンズ5および受光レンズ6との間で所定間隔の間隙Gを形成するように、発光レンズ5および受光レンズ6の外径より大きい内径を有するように形成されている。上記の間隙Gは、光学式測距装置21がリフロー炉内の設定温度の最大値となる高温雰囲気中におかれた状態で、3次モールド10と発光レンズ5および受光レンズ6とが熱膨張しても互いに接触しない距離(所定間隔)に設定される。
【0103】
〔発光レンズおよび受光レンズのすべり防止効果〕
光学式測距装置21も、光学式測距装置1と同様、前述のように、リフロー炉を通過するとき、前述のように260℃以上の高温に曝されることにより、各部がそれぞれの熱膨張係数にしたがって膨張する。このとき、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム12に対して滑りを生じる。また、光学式測距装置21が、リフロー炉から排出されるときにも、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム12に対して滑りを生じる。
【0104】
これに対し、上記の構成では、3次モールド10における開口部10a,10bと、発光レンズ5および受光レンズ6との間に間隙Gが形成されている。これにより、図4に示すように、3次モールド10がS方向に膨張し、発光レンズ5がT方向に膨張するが、間隙Gの範囲内で互いに近づくだけであり、接触することはない。同様に、受光レンズ6および3次モールド10も、熱膨張しても、間隙Gの範囲内で互いに近づくだけであり、接触することはない。それゆえ、発光レンズ5および受光レンズ6が接触により3次モールド10から応力を加えられることがない。したがって、発光レンズ5および受光レンズ6が、3次モールド10からの応力によってレンズフレーム12に対して生じる滑りを防止することが可能となる。
【0105】
これにより、発光素子2および受光素子3と発光レンズ5および受光レンズ6との相対的な位置関係を保つことができる。よって、光学式測距装置21の高耐熱化および高精度化を容易に図ることができる。
【0106】
なお、上記の例では、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム12との界面に生じる滑りについては解消できないので、本実施形態に係る構成を実施形態1に係る構成と組み合わせることにより、さらに滑り防止の効果を高めることができる。
【0107】
また、上記の例では、発光レンズ5および受光レンズ6と3次モールド10との接触を回避するための間隙Gについて説明したが、発光レンズ5および受光レンズ6と2次モールド9との間にも同様な間隙を設けてもよい。具体的には、発光レンズ5および受光レンズ6の下部における外周端部と、2次モールド9の開口部9a,9bとの間に上記の間隙を形成する。これによっても、上記と同様の効果が得られる。
【0108】
[実施形態3]
本発明に係るさらに他の実施形態について、図5、図6、図18〜図20を参照して以下に説明する。
【0109】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1,2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0110】
〔光学式測距装置の構成〕
図5(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る光学式測距装置31の構成を示す平面図および断面図である。
【0111】
図5に示すように、光学式測距装置31は、光学式測距装置21と同様に、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を備えている。また、光学式測距装置31は、光学式測距装置21におけるレンズフレーム12に代えてレンズフレーム13を備えている。
【0112】
レンズフレーム13は、レンズフレーム12と同様に、金属により長方形をなす平板状に形成されている。また、レンズフレーム13を構成する金属材料としては、レンズフレーム12を構成する前述の金属材料を用いることができる。
【0113】
レンズフレーム13は、発光レンズ5および受光レンズ6を保持するための保持穴13a,13bを有している。また、レンズフレーム13は、保持穴13a,13bの周縁端部の近傍における対向する位置に、レンズフレーム13を貫通する2つのレンズスリット13c(スリット穴)が形成されている。
【0114】
発光レンズ5および受光レンズ6は、レンズフレーム13に形成されるときに、透光性樹脂が図5(a)において破線にて示す範囲まで型に充填されることにより形成される。このとき、透光性樹脂がレンズスリット13cの内部にまで侵入していく。これにより、透光性樹脂が固化した状態では、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズスリット13cを介して結合する結合部を有することにより、レンズフレーム13に対して杭打ちされた状態となる。
【0115】
〔発光レンズおよび受光レンズのすべり防止効果〕
光学式測距装置31も、光学式測距装置21と同様、前述のように、リフロー炉を通過するとき、前述のように260℃以上の高温に曝されることにより、各部がそれぞれの熱膨張係数にしたがって膨張する。このとき、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム13に対して滑りを生じようとする。また、光学式測距装置31が、リフロー炉から排出されるときにも、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム13に対して滑りを生じようとする。
【0116】
これに対し、上記の構成では、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズスリット13cを介して結合する結合部を有することにより、レンズフレーム13に対して杭打ちされている。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6において、リフローによる昇温や降温時に発生するレンズフレーム13の面に平行な応力を、応力方向に対してレンズスリット13cに垂直な方向に形成された結合部が抑え込む。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6の滑りを防止することができる。
【0117】
また、図5(a)に示すように、レンズスリット13cは、レンズフレーム13において、保持穴13a,13bを間において対向する2箇所に設けられている。レンズスリッ
ト13cを1箇所設けるのみでは、応力の大きさ次第では、レンズスリット13cを中心に力が分散し、レンズスリット13cを中心に回転する方向に発光レンズ5および受光レンズ6の滑りを発生させるおそれがある。これに対し、レンズスリット13cを2箇所設けることにより、これらのレンズスリット13cによって均等に力が分散するので、回転方向の滑りを効果的に防止することができる。最も好ましいのは、図5(a)に示すように、受光スポットの移動方向であるO−O線(発光レンズ5および受光レンズ6の中心を通る線)上にレンズスリット13cを配置することである。
【0118】
なお、レンズスリット13cは、発光レンズ5および受光レンズ6について、それぞれ2つに限らず3つ以上設けられていてもよい。この場合、力が均等に分散するように、レンズスリット13cが配置されることが好ましい。
【0119】
なお、本実施形態は、後述する変形例を含めて、前述の実施形態1,2に適用が可能である。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6の滑り防止効果をより一層高めることができる。
【0120】
〔スリット穴間距離の設定〕
図18(a)および(b)は、レンズスリット13c間の距離とレンズスリット13cから保持穴13bまでの距離との間の関係を説明するためのレンズフレーム13および発光レンズ5の平面図および断面図である。図19は、レンズスリット13cの間から発光レンズ5の剥離が進行した状態を示すレンズフレーム13および発光レンズ5の部分平面図である。図20は、レンズスリット13cの間に応力が作用することを示すレンズフレーム13および発光レンズ5の部分平面図である。
【0121】
図18(a)に示すように、レンズスリット13cは、保持穴13aの周辺に沿うように保持穴13aと同心円状に配置される。各レンズスリット13cは、レンズスリット13cと保持穴13aとの間の距離(スリット穴−保持穴間距離D1)が、隣り合うレンズスリット13cの間の距離(スリット穴間距離D2)以上となるように配置されることが好ましい。以下に、その理由について説明する。
【0122】
なお、便宜上、図18(a)および(b)、図19ならびに図20では発光レンズ5についてのみ示し、以下の説明では発光レンズ5についてのみ言及しているが、受光レンズ6についても同様であることは勿論である。
【0123】
光学式測距装置31が熱によって膨張または収縮すると、レンズフレーム13には、その膨張または収縮による応力が作用する。この応力が発光レンズ5とレンズフレーム13との密着力以上になると、図18(a)および(b)に示すように、発光レンズ5は、レンズフレーム13の表面と密着している界面が、外周部から剥離することにより、剥離領域5aが形成される。この剥離領域5aは、剥離が保持穴13a側へ進行するとともに大きくなる。
【0124】
レンズスリット13cにおいては、レンズ樹脂が充填されているため、発光レンズ5とレンズフレーム13の表面との界面が存在しない。このため、剥離は、レンズスリット13cによって阻止されて、それ以上進行しない。一方、隣り合うレンズスリット13cの間より進行する剥離は、両側のレンズスリット13cに充填されているレンズ樹脂によって、レンズスリット13cに近いほど剥離の進行が抑えられる。このため、図19に示すように、剥離領域5aは、隣り合うレンズスリット13cの間から保持穴13a側へ、近似的にスリット穴間距離D2を直径とする円形状に広がっていくと考えることができる。したがって、スリット穴−保持穴間距離D1がスリット穴間距離D2以上であることにより、剥離領域5aが保持穴13a(レンズ内径)を越えて広がることを防止できる。それ
ゆえ、剥離による応力のために発光レンズ5と発光素子2との相対位置が変化することを回避できる。
【0125】
また、スリット穴−保持穴間距離D1がスリット穴間距離D2と等しい場合、剥離領域5aが保持穴13a(レンズ内径)に達しても、それ以上広がることを防止できる。また、この場合、保持穴13aとレンズスリット13cとの配置関係をスリット穴−保持穴間距離D1とスリット穴間距離D2との関係で容易に設定することができる。それゆえ、スリット穴間距離D2を可能な限り短く設定し、それに応じてスリット穴−保持穴間距離D1を設定することにより、発光レンズ5の面積を最適に低減することができる。
【0126】
ただし、スリット穴間距離D2が極端に短いと、レンズフレーム13におけるレンズスリット13cと保持穴13aとの間の領域の強度が不十分となり、上記のような応力を受けると、レンズフレーム13が、その領域で変形してしまうことがある。そこで、レンズフレーム13がこのような変形を回避できる程度の強度を有するように、スリット穴間距離D2は、レンズフレーム13の厚さ以上とすることが好ましい。以下に、その理由について説明する。
【0127】
図20に示すように、隣り合うレンズスリット13cの間には、スリット間領域13eが形成される。このスリット間領域13eは、スリット穴間距離D2がレンズフレーム13の厚さ以上であると、X方向(発光レンズ5の直径方向に直交する方向)だけでなく、レンズフレーム13の厚さ方向に作用する応力に抗することができる程度に高い強度を有する。また、一方、スリット間領域13eは、スリット穴間距離D2がレンズフレーム13の厚さより短くなると、X方向に作用する応力に抗することができなく程度に強度が低下して、スリット穴間距離D2が短くなるように変形してしまう。これに伴い、レンズスリット13cと保持穴13aとの間の領域も変形してしまう。
【0128】
X方向の応力に対するスリット間領域13eの強度を決定する要因としては、発光レンズ5の直径方向の長さL(レンズスリット13cの幅)も含まれる。しかしながら、スリット穴間距離D2の方が、長さLより、上記の強度に対して大きな影響を及ぼす。
【0129】
ここで、レンズスリット13cは、発光レンズ5の剥離を抑制するために設けられるので、その効果が得られる程度の最低限の大きさを有しておればよい。しかしながら、レンズスリット13cを大きくする場合、保持穴13aを超えた剥離の進行や上記のような強度の低下を招かないように、スリット穴−保持穴間距離D1およびスリット穴間距離D2を前述の条件を満たす値に設定する必要がある。このため、レンズフレーム13の全体のサイズを大きくしなければならず、これに応じて光学式測距装置31のサイズも大きくならざるを得ない。したがって、光学式測距装置31の大型化を回避する観点から、レンズスリット13cは、レンズ樹脂が流れ込むことができ、且つスリット穴−保持穴間距離D1およびスリット穴間距離D2についての前述の条件を満たす範囲で極力小さく形成されることが好ましい。
【0130】
以上のように、レンズフレーム13においては、スリット穴−保持穴間距離D1およびスリット穴間距離D2を適正に設定することが好ましい。これにより、レンズフレーム13の大型化を招くことなく、発光レンズ5および受光レンズ6の剥離を抑制するとともに、熱応力に対するレンズフレーム13の強度を向上させることができる。
【0131】
〔変形例〕
本実施形態の一変形例について説明する。図6は、本実施形態の変形例に係る光学式測距装置31におけるレンズフレーム14の構成を示す平面図である。
【0132】
本変形例では、上記のレンズフレーム13に代えてレンズフレーム14を用いる。
【0133】
このレンズフレーム14は、発光レンズ5および受光レンズ6を保持するための保持穴14a,14bを有している。また、レンズフレーム14は、保持穴14a,14bに適当な間隔をおいて複数の凹部14cが形成されている。保持穴14a,14bは、凹部14cを有することにより、歯車状の形状をなしている。
【0134】
レンズフレーム14を用いることにより、発光レンズ5および受光レンズ6の形成時に、透光性樹脂が凹部14cの内部に侵入するので、透光性樹脂とレンズフレーム14との結合力が増す。これにより、レンズフレーム14の面方向と平行に作用するリフロー時に生じる応力を、保持穴14a,14bにおける歯車形状の構造により受け止めることができる。それゆえ、発光レンズ5および受光レンズ6の滑りを防止することができる。
【0135】
また、レンズフレーム14は、保持穴14a,14bにおける歯車形状の構造を有しているので、比較的大きい面積を必要とするレンズスリット13cを設けるよりも小さい面積で、発光レンズ5および受光レンズ6との結合力を高めることができる。したがって、レンズフレーム14は、小型化の観点ではレンズフレーム13よりも有利である。
【0136】
[実施形態4]
本発明に係るさらに他の実施形態について、図8および図9を参照して以下に説明する。
【0137】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0138】
〔光学式測距装置の構成〕
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る光学式測距装置41の構成を示す断面図である。図9(a)および(b)は、光学式測距装置41におけるレンズ付レンズフレーム42の構成を示す平面図および断面図である。
【0139】
図8に示すように、光学式測距装置41は、光学式測距装置1と同様に、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を備えている。また、光学式測距装置31は、レンズ付レンズフレーム42を備えている。
【0140】
図9(a)および(b)に示すように、レンズ付レンズフレーム42は薄膜部43を有している。薄膜部43は、発光レンズ5および受光レンズ6が取り付けられる部分以外のレンズフレーム15の表面および裏面の領域に、発光レンズ5および受光レンズ6を形成する樹脂と同じ透光性樹脂により一体に形成されている。
【0141】
上記のように構成される光学式測距装置41において、レンズ付レンズフレーム42のレンズフレーム15が薄膜部43により覆われているので、レンズフレーム15が2次モールド9および3次モールド10と接しない。これにより、図8において破線で示すU部、V部およびW部では、レンズ付レンズフレーム42と2次モールド9および3次モールド10とが樹脂同士で接触することとなり、密着性が高まる。したがって、レンズフレーム11が2次モールド9および3次モールド10と接する構成と比較して、滑りの発生をより低減することができる。
【0142】
例えば、発光レンズ5における3次モールド10の外側端部のU部で滑りが発生するためには、3次モールド10の中心側のV部および反対側の外側端部のW部でも同様に滑り
を起こす必要がある。このため、非常に大きな応力が作用しない限り滑りが生じることはない。それゆえ、滑り防止の大きな効果を期待することができる。
【0143】
ただし、V部におけるレンズフレーム15の下面側の薄膜部43は、その膜厚によっては、発光素子2から出射した光の導波路となって受光素子3側へ直接入射するパスとなりえる。したがって、薄膜部43については、光が侵入しないような膜厚の設計や、薄膜部43内での光の迷路となるような薄膜構造を採用することが好ましい。
【0144】
また、上記の構成では、薄膜部43が発光レンズ5および受光レンズ6を形成する樹脂と同じ樹脂により一体に形成されている。これにより、レンズフレーム15に発光レンズ5および受光レンズ6を形成するときに、同時に薄膜部43を形成することができる。したがって、薄膜部43を容易に形成することができる。
【0145】
[実施形態5]
本発明に係るさらに他の実施形態について、図10を参照して以下に説明する。
【0146】
図10は、電子機器としてのパーソナルコンピュータ(パソコン)51を示す斜視図である。
【0147】
図10に示すように、パソコン51は、本体部52および表示部53を有している。表示部53の額縁部分の上端部には光学式測距装置54が取り付けられている。光学式測距装置54としては、前述の高耐熱かつ高性能である光学式測距装置1,21,31,41のうちのいずれか1つが用いられる。
【0148】
このパソコン51では、光学式測距装置54によってパソコン51の前における人の有無を正確に検知することができる。これにより、パソコン51の前から人がいなくなるとパソコン51の動作をスリープモードに切り替えることによって、省エネルギー化を効率よく行うことが可能となる。
【0149】
また、光学式測距装置54は、高耐熱かつ高性能であるので、リフローにより容易に短時間で大量に基板に実装することができる。
【0150】
なお、光学式測距装置54を搭載することができる電子機器は、パソコン51に限定されない。例えば、光学式測距装置54は非接触での操作に用いることができる。具体的には、キッチン家電やサニタリ機器では、非接触で動作をON/OFFさせる非接触スイッチとして光学式測距装置54を利用することができる。また、手までの距離を検知してボリュームコントロールを行うなど、手が濡れていたり汚れていたりする場合における電子機器の操作に光学式測距装置54を利用することができる。
【0151】
[比較例]
本発明に係る比較例について、図11を参照して以下に説明する。
【0152】
図11(a)および(b)は、本比較例に係る光学式測距装置61の構成を示す平面図および断面図である。
【0153】
図11に示すように、光学式測距装置61は、発光素子62、受光素子63、リードフレーム64、発光レンズ65、受光レンズ66、ベース67、ケース68およびレンズフレーム69を備えている。
【0154】
リードフレーム64上に形成された発光素子62および受光素子63は、遮光性樹脂か
らなるベース67によって封止されている。ベース67は、発光素子62からの出射光および受光素子63への入射光を互いに遮光する遮光壁67aと、側方に形成される側壁67bとを有している。さらに、側壁67bを覆うように遮光性樹脂からなるケース68が形成されている。
【0155】
レンズフレーム69は、金属により平板状に形成されており、発光レンズ65および受光レンズ66を保持している。このレンズフレーム69は、ベース67およびケース68の間に挟持されるように保持されている。
【0156】
上記のように構成される光学式測距装置61では、レンズフレーム69が、ベース67およびケース68を形成する遮光性樹脂の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有する金属により形成されている。これにより、周囲熱または発光素子62および受光素子63の自己発熱によってベース67およびケース68が熱膨張しても、レンズフレーム69はほとんど膨張することがない。それゆえ、周囲熱および自己発熱による発光レンズ65および受光レンズ66の間の距離の変化量の差がほとんどない。したがって、前述の光学式測距装置600のように、周囲熱および自己発熱によるレンズ間距離の変化量の相違が生じることなく、測距精度の低下を防ぐことができる。
【0157】
しかしながら、光学式測距装置61に対してリフローによるはんだ付けを行う場合、短時間ではあるが周囲温度が260℃程度に上昇する。このため、発光レンズ65および受光レンズ66、ベース67およびケース68を構成する樹脂が大きく膨張する一方、リードフレーム64やレンズフレーム69を構成する金属は樹脂に比べるとその熱膨張係数が小さくほとんど膨張しない。
【0158】
このため、発光レンズ65および受光レンズ66とレンズフレーム69との界面で熱膨張係数の差に起因する応力が大きくなる。この結果、発光レンズ65および受光レンズ66がレンズフレーム69に対して滑ってしまう。この滑りが発生すると、リフロー後に常温に戻ったときに、リフロー前の発光レンズ65および受光レンズ66と発光素子62および受光素子63との相対的な位置関係が変化する。したがって、前述の三角測量の原理によって得られる反射光のスポット位置が変化するため、測距値が正確な値からシフトするという不都合が生じる。
【0159】
これに対し、前述の各実施形態に係る光学式測距装置1,21,31,41では、それぞれ前述のようなレンズ滑りの防止構造を有することにより、上記のような滑りの発生を抑えることができる。したがって、リフローによる高熱に対しても、測距精度の低下を防ぐことができる。
【0160】
[付記事項]
本発明は、下記のようにも表現することができる。
【0161】
光学式測距装置は、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、実装部材上に実装された発光素子と、上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、上記透光性樹脂体を封止する第1の遮光性樹脂体と、金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられたレンズフレームと、上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、上記レンズフレームが、表面および裏面にめっき層が形成されている。
【0162】
上記構成においては、レンズフレームの表面および裏面にめっき層が形成されているので、発光レンズおよび受光レンズを形成する透光性樹脂とレンズフレームとの密着性が向上する。これにより、リフロー時の周囲温度の変化により発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面に応力が作用する場合においても、それぞれが滑りを起こすことはない。それゆえ、リフロー処理後の発光レンズおよび受光レンズと発光素子および受光素子との相対的な位置関係が保たれる。したがって、光学式測距装置の耐熱性および測距精度を高めることができる。
【0163】
前記光学式測距装置において、上記めっき層はAu−Pdめっきにより形成されていることが好ましい。
【0164】
上記構成においては、Au−Pdめっきを用いているので、効果的にレンズ樹脂との密着性を向上させることができる。したがって、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面の滑りを防止することができる。
【0165】
光学式測距装置の製造方法は、上記光学式測距装置を製造する方法であって、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられた上記レンズフレームを熱処理した後に、当該レンズフレームを上記第2の遮光性樹脂体により封止する。
【0166】
上記構成においては、発光レンズおよび受光レンズが設けられたレンズフレームを例えばリフロー相当の所定の熱処理後に第2の遮光性樹脂体に組み付けるため、リフロー相当の熱処理が発光レンズおよび受光レンズに予め付与される。このとき、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとに残留していた内部応力を事前に開放することができる。これにより、リフロー処理時に発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面に発生する応力を低減することができる。
【0167】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明に係る光学式測距装置は、リフローによるはんだ付けにより電子機器に実装されることに対して好適に利用できる。
【符号の説明】
【0169】
1 光学式測距装置
2 発光素子
3 受光素子
4 リードフレーム(実装部材)
5 発光レンズ
6 受光レンズ
7 発光側1次モールド(透光性樹脂体)
8 受光側1次モールド(透光性樹脂体)
9 2次モールド(第1の遮光性樹脂体)
10 3次モールド(第2の遮光性樹脂体)
10a 開口部
11a めっき層
11b 凹凸構造
11〜15 レンズフレーム
13a,13b 保持穴
13c レンズスリット(スリット穴)
14a,14b 保持穴
14c 凹部
21 光学式測距装置
31 光学式測距装置
41 光学式測距装置
42 レンズ付レンズフレーム
43 薄膜部
51 パソコン(電子機器)
G 間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距対象物までの距離を光学的に測定する光学式測距装置、特にリフロー等による温度変化により熱膨張または収縮する場合においても高い測距精度を有する光学式測距装置およびそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、一般的な三角測距法の原理を説明するための図である。
【0003】
図12に示すように、従来の一般的な光学式測距装置は、例えば、発光素子201、受光素子202、発光レンズ203および受光レンズ204を備えている。
【0004】
この光学式測距装置において、原点(0,0)に配置された発光素子201より出射された光束は、A点(0,d)に配置された発光レンズ203により略平行光束(発光軸205)となり、スポット光として、測距対象物211上のB点(0,y)に照射される。測距対象物211により反射された光束(受光軸206)は、C点(L,d)に配置された受光レンズ204(集光レンズ)により集光され、x方向に沿った軸上に配置された受光素子202上のD点(L+l,0)に結像されて、受光スポットを形成する。ここで、C点(受光レンズ204の中心)を通りy軸と平行な線が受光素子202の受光面と交差する点をE点(L,0)とすると、三角形ABCと三角形ECDとは相似する。したがって、測距対象物211までの距離yは、受光素子202により受光スポットの位置を検出して辺ED(=l)を測定することにより、下記の式(1)によって算出される。
【0005】
【数1】
上記のように、光学式測距装置は、受光素子202上に形成された受光スポットの位置を検出し、式(1)に基づいて測距対象物211までの距離を算出する。当該距離を正確に求めるためには、発光レンズ203と受光レンズ204との間の距離L、および受光レンズ204と受光素子202との間の距離dが固定されている必要がある。
【0006】
図13は、上記の原理を利用した一般的な光学式測距装置300の構成を示す断面図である。
【0007】
図13に示すように、光学式測距装置300は、上記の発光素子201、受光素子202、発光レンズ203および受光レンズ204を備えるとともに、これらをケース301によって保持している。ケース301は、一般に低価格化のために遮光性樹脂により形成されている。
【0008】
この光学式測距装置300では、ケース301は、一般に大きな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることから、周囲温度が変化すると、その影響を受けて伸縮する。このため、例えば、周囲温度が上昇することによりケースが伸長すると、発光レンズ203と受光レンズ204とがそれぞれ点線で示す位置に移動し、レンズ間の距離Lが変化してしまう(大きくなる)。その結果、室温時の発光レンズ203の光軸205aおよび受光レンズ204の光軸206aは、それぞれ破線にて示す光軸205bおよび光軸206bのように変化してしまう。この状態では、測距対象物211の位置が変わっていないに
も関わらず、受光素子202上に形成される受光スポットの位置は、室温時に比べて外側にシフトしてしまう。このように、例えば周囲温度が上昇した場合には、測距対象物211は、実際よりも近い位置にあると誤って測定されてしまう。
【0009】
特許文献1,2には、このような不都合を解消することができる技術が開示されている。図14は、特許文献1に記載された光学式測距装置400の構成を示す断面図である。図15は、特許文献2に記載された光学式測距装置500の構成を示す断面図である。
【0010】
図14に示すように、光学式測距装置400は、発光素子401、受光素子402、投光レンズ403(発光レンズ)および受光レンズ404を備えている。発光素子401を収納するパッケージ405および投光レンズ403は、同一の第1ケース406に固定される一方、受光素子402を収納するパッケージ407および受光レンズ404は、同一の第2ケース408に固定されている。第1ケース406および第2ケース408は、本体部409によって接続されて本体ケース410を構成している。
【0011】
このような光学式測距装置400では、本体ケース410に熱膨張が生じた場合でも、第1ケース406において発光素子401および投光レンズ403の位置関係が維持され、第2ケース408において受光素子402および受光レンズ404の位置関係が維持される。これにより、受光素子402の中心から反射光の光スポットの位置までの距離に変動が生じなくなるので、測距精度が保持される。
【0012】
図15に示すように、光学式測距装置500は、結像レンズ501a,501b、結像レンズ501a、501bの保持部材502、CCDパッケージ503a,503b(光センサアレイ)、およびCCDパッケージ503a,503bの保持部材504を備えている。この光学式測距装置500では、結像レンズ501a,501bおよび保持部材502,504が吸湿性のないプラスチックからなる同一材料により形成されている。
【0013】
このような光学式測距装置500では、結像レンズ501a,501bおよび保持部材502,504が熱膨張により全体に均等に伸びる。これにより、温度変化による測距精度の低下を防ぐことができる。
【0014】
このように、上記の光学式測距装置400,500では、受発光素子およびレンズを保持する部材が周囲温度の変化により均等に伸縮する場合において、三角測量の原理を満足するように、受発光素子およびレンズの位置関係が保持される。しかしながら、光学式測距装置400,500では、受発光素子が自己発熱した場合には、装置全体における温度変化が均等でないため、受発光素子の近傍の部材とレンズ近傍の部材とが、異なる温度となる結果、それに応じて異なる伸縮量で伸縮する。このため、受発光素子とレンズとの位置関係を維持することができない。
【0015】
このように均等でない温度変化が生じた場合における受光スポットの位置の補正方法について、特許文献1,2には記載されていない。したがって、特許文献1,2に記載された技術では、受発光素子の自己発熱による測距精度の低下を防ぐことができないため、三角測距法の原理を満足に利用することができない。
【0016】
特許文献3には、このような不都合を解消することができる技術が開示されている。図16は、特許文献3に記載された光学式測距装置600の構成を示す断面図である。
【0017】
図16に示すように、光学式測距装置600は、一対のレンズ601a,601b、一対のCCDパッケージ602a,602b、レンズ保持部材603、CCD保持部材604および温度センサ605,606を備えている。温度センサ605は、レンズ保持部材
603上のレンズ602a,602bの間に取り付けられ、温度センサ606は、CCD保持部材604上のCCDパッケージ602a,602bの間に取り付けられている。
【0018】
このような光学式測距装置600では、温度センサ605,606の出力を用いて、CCDパッケージ602a,602b内のCCDチップ607a,607b(受光素子)の自己発熱によるレンズ保持部材603およびCCD保持部材604の温度差が求められる。そして、この温度差を利用して、CCDチップ607a,607b上の物体像のシフト量が補正される。これにより、CCDチップ607a,607bの自己発熱によるレンズ保持部材603およびCCD保持部材604の熱膨張の差を補正して測距精度を保つことができる。
【0019】
ところが、光学式測距装置600では、測距精度の低下を防ぐために、温度センサ605,606を必要とする。また、温度センサ605,606は、CCDチップ607a,607b等に内蔵することができず、個別にレンズ保持部材603およびCCD保持部材604に接触するように配置されなければならない。しかも、温度センサ605,606が出力した信号を送信するための配線も必要となる。このため、光学式測距装置600の構造が複雑になる結果、組み立て工数が増加してしまい、光学式測距装置600を安価に提供することが困難となる。
【0020】
そこで、温度センサ605,606をいずれか1つのみ設けることで、光学式測距装置600の構造をより簡素化することが考えられる。しかしながら、温度センサ605,606をいずれか1つのみ設けることは、次に説明するような不具合を招来する。
【0021】
図17は、従来の光学式測距装置700の構成を示す断面図である。
【0022】
図17に示すように、光学式測距装置700において、周囲熱は、光学式測距装置700の側面を含めた光学式測距装置700全体を均等に加熱または冷却し、各部材を膨張または収縮させる。これにより、発光レンズ703と受光レンズ704との間の距離、および発光素子701と受光素子702との間の距離を変化させる。一方、発光素子701および受光素子702の通電による自己発熱は、これらの素子を封止している遮光性樹脂部705を直接加熱して膨張させる。また、発光素子701および受光素子702からの放射熱と、遮光性樹脂部705から発光レンズ703および受光レンズ704を保持するレンズ保持部材706を伝導する熱とは、レンズ保持部材706におけるレンズ保持部分を間接的に加熱して膨張させる。
【0023】
したがって、自己発熱が生じた場合には、遮光性樹脂部705とレンズ保持部材706とは、温度が異なるために、固有の熱膨張係数によって、それぞれの温度変化にしたがって膨張することとなる。そのため、発光レンズ703および受光レンズ704の間の距離の変化量は、周囲熱によって光学式測距装置700が加熱された場合に矢印Iに示すようになり、自己発熱によって光学式測距装置700が加熱された場合に矢印Jに示すようになり、それぞれの場合で異なる。
【0024】
したがって、自己発熱による、両素子701,702間の距離の変化と、両レンズ703,704間の距離の変化とをそれぞれ予測するためには、遮光性樹脂部705の温度と、レンズ保持部材706の温度とをそれぞれ個別に検出する温度センサを備える必要がある。
【0025】
光学式測距装置600においても、レンズ601a,601b間の距離の変化量は、周囲熱によって光学式測距装置600が加熱された場合と、自己発熱によって光学式測距装置600が加熱された場合とで異なる。したがって、温度センサ605,606をレンズ
保持部材603にのみ、またはCCD保持部材604にのみに取り付けると、例えば温度が上昇した場合に、周囲温度の上昇または自己発熱のいずれの影響により温度が変化したのかが不明である。それゆえ、レンズ601a,601bとCCDチップ607a,607bとの位置関係を正確に把握することができず、測距精度が低下してしまうという問題が生じる。
【0026】
そこで、周囲熱および自己発熱が原因で生じる熱膨張による受発光レンズの間の距離の変化そのものを抑えるため、例えば図13に示す光学式測距装置300において、発光レンズ203および受光レンズ204を保持するケース301の一部を金属により形成することが考えられる。具体的には、発光レンズ203および受光レンズ204を保持する部分を金属製のフレーム(レンズフレーム)で構成し、このレンズフレームをケース301に取り付ける。このように、ケース301の一部を熱膨張係数の小さい金属製にすることで、熱膨張による受発光レンズの間の距離の変化を抑えることができ、周囲熱および自己発熱に応じて生じる熱膨張による受発光レンズ間の距離の変化の相違をなくすことができる。また、ケース301の全体を金属製にすることに比べて価格の上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2006−337320号公報(2006年12月14日公開)
【特許文献2】特開平11−281351号公報(1999年10月15日公開)
【特許文献3】特開2001−99643号公報(2001年4月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
ところで、光学式測距装置を電子機器に搭載するためには、光学式測距装置を基板等に実装する必要がある。実装においては、発光素子および受光素子に対する信号の入出力や電源供給のために、発光素子および受光素子が実装されるリードフレームに設けられる複数の端子が基板に半田付けされる。
【0029】
近年の光学式測距装置の小型化に伴って、上記の端子間の間隔が狭くなってきている。また、このような小型化された光学式測距装置を搭載する電子機器を効率的に大量生産することも求められる。このような要求を受けて、端子の半田付けの手段として、従来の手作業よりもリフローへの需要が非常に高まっている。
【0030】
光学式測距装置をリフロー炉に通すと、一般に260℃以上の高温に短時間ではあるが曝される。このとき、受発光レンズ、受発光素子、ケース、受発光素子を封止する素子封止部等の各部を形成する各樹脂は、その熱膨張係数にしたがって膨張し、リードフレームや前述のレンズフレームも同様にその熱膨張係数にしたがって膨張する。
【0031】
しかしながら、リードフレームおよびレンズフレームを構成する金属の熱膨張係数は樹脂の熱膨張係数より小さい。このため、リードフレームと素子封止部との界面、レンズフレームとケースとの界面、およびレンズフレームとレンズとの界面には熱膨張係数の差による応力が発生する。また、リフロー炉から排出されるときには、光学式測距装置が逆に室温付近まで急激に冷却される。このため、高温雰囲気により膨張した光学式測距装置が急激に収縮する。
【0032】
このような加熱から冷却に至る過程において、例えばレンズおよびレンズフレームに着目すると、レンズとレンズフレームとの密着力が不十分な場合、高温雰囲気中の昇温中にそれらの界面の応力により、レンズがレンズフレームから滑ってしまう。また、室温への
急激な降温中にもそれらの界面には応力が作用し、レンズがレンズフレームから滑ってしまう。このため、リフローによる実装前に比べて受発光レンズと受発光素子との相対的な位置関係が変化してしまう。この結果、前述の三角測距の原理で説明したように受光スポットの位置がシフトするので、この位置を用いて前述の式(1)による演算を行っても、得られた距離が正しい値からずれる。
【0033】
冷却時に過熱時と全く逆の滑りが生じれば、受発光レンズとレンズフレームとの位置関係が元に戻ることにより、リフローによる上記のような不都合は生じない。しかしながら、実際には、受発光レンズとレンズフレームとの位置関係が元に戻ることはない。
【0034】
受発光レンズとレンズフレームとの界面に着目した場合、加熱時の膨張と冷却時の収縮とで、当該界面で発生する歪みが全く正反対のベクトルで生じない。例えば、リフローの昇温プロファイルと降温プロファイルとが異なることから、上記の界面における内部温度分布が加熱時と冷却時とで対称になることはない。したがって、加熱時に発生する滑りと冷却時に発生する滑りとが異なり、受発光素子に対する受発光レンズの相対的な位置関係が変化してしまう。
【0035】
このように、金属製のレンズフレームを用いたとしても、急激な加熱および冷却によるレンズフレームと樹脂部材との界面に生じる滑りのために、測距精度が低下するという問題が生じる。
【0036】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高耐熱かつ高精度の光学式測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明に係る光学式測距装置は、前記の課題を解決するために、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、実装部材上に実装された発光素子と、上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズフレームと、上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、上記レンズフレームが、表面および裏面の少なくとも上記発光レンズと受光レンズが形成される領域に凹凸構造が形成されていることを特徴としている。
【0038】
上記構成においては、レンズフレームの表面、裏面または両面に凹凸構造が形成されているので、発光レンズおよび受光レンズを形成する透光性樹脂が凹凸構造に入り込み、その透光性樹脂とレンズフレームとの密着性が向上する。これにより、リフロー時の周囲温度の変化により発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面に応力が作用する場合においても、それぞれが滑りを起こすことはない。それゆえ、リフロー処理後の発光レンズおよび受光レンズと発光素子および受光素子との相対的な位置関係が保たれる。したがって、光学式測距装置の耐熱性および測距精度を高めることができる。
【0039】
前記光学式測距装置において、上記凹凸構造はAu−Pdめっきにより形成されていることが好ましい。
【0040】
上記構成においては、凹凸構造を形成するためにAu−Pdめっきを用いているので、
効果的にレンズ樹脂との密着性を向上させることができる。したがって、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面の滑りを防止することができる。
【0041】
前記光学式測距装置において、上記凹凸構造が梨地処理により形成されていることが好ましい。
【0042】
上記構成においては、前述の透光性樹脂が梨地処理により形成された微小な凹凸構造に入り込み、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの密着力を向上させることができる。したがって、リフロー処理時に発光レンズおよび受光レンズとの界面での滑りを防止することができる。
【0043】
前記光学式測距装置において、上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴と、当該保持穴の周辺に形成されるスリット穴とを有しており、当該スリット穴に上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂が充填されていることが好ましい。
【0044】
上記構成においては、レンズフレームにおける保持穴の周辺にスリット穴が形成され、スリット穴に発光レンズおよび受光レンズを形成する透光性樹脂が充填されるので、発光レンズおよび受光レンズにおいて、スリット穴を介してレンズフレームが挟み込まれる。これにより、発光レンズおよび受光レンズがレンズフレームに強固に固定される。したがって、リフロー処理時に、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面で生じる滑りを防止できる。
【0045】
また、光学式測距装置が熱によって膨張または収縮すると、レンズフレームには、その膨張または収縮による応力が作用する。この応力が発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの密着力以上になると、発光レンズおよび受光レンズは、レンズフレームの表面と密着している界面が、外周部から剥離していく。レンズスリットにおいては、透光性樹脂が充填されているため、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームの表面との界面が存在しない。このため、レンズスリットによって剥離の進行を阻止することができる。
【0046】
前記光学式測距装置において、上記スリット穴は上記発光レンズおよび上記受光レンズについてそれぞれ少なくとも2つ形成されていることが好ましい。
【0047】
上記構成においては、スリット穴は発光レンズおよび受光レンズについて少なくとも2つ形成されている、安定して発光レンズおよび受光レンズを固定することができる。したがって、滑り防止の強度を向上させることができる。
【0048】
前記光学式測距装置において、上記スリット穴は、上記スリット穴と上記保持穴の間のスリット穴−保持穴間距離が隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離以上であることが好ましい。
【0049】
上記の構成においては、前述の剥離が隣り合うリット穴の間より進行しても、両側のスリット穴に充填されている透光性樹脂によって、スリット穴に近いほど剥離の進行が抑えられる。このため、剥離は、隣り合うスリット穴の間から保持穴側へ、近似的にスリット穴間距離を直径とする円形状に広がっていくと考えることができる。したがって、スリット穴−保持穴間距離がスリット穴間距離以上であることにより、剥離が保持穴を越えて広がることを防止できる。それゆえ、剥離による応力のために発光レンズと発光素子との相対位置および受光レンズと受光素子との相対位置が変化することを回避できる。
【0050】
前記光学式測距装置において、上記スリット穴−保持穴間距離が上記スリット穴間距離と等しいことが好ましい。
【0051】
上記の構成においては、スリット穴−保持穴間距離がスリット穴間距離と等しいことにより、剥離が保持穴にまで達しても、それ以上広がることを防止できる。また、スリット穴−保持穴間距離がスリット穴間距離と等しいことにより、保持穴とスリット穴との配置関係をスリット穴−保持穴間距離とスリット穴間距離との関係で容易に設定することができる。それゆえ、スリット穴間距離を可能な限り短く設定し、それに応じてスリット穴−保持穴間距離を設定することにより、発光レンズおよび受光レンズの面積を最適に低減することができる。
【0052】
前記光学式測距装置において、隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離は上記レンズフレームの厚さ以上であることが好ましい。
【0053】
隣り合うスリット穴の間に形成されるスリット間領域は、スリット穴間距離がレンズフレームの厚さ以上であると、発光レンズおよび受光レンズの直径方向に直交する方向に作用する応力に抗することができる程度に高い強度を有する。一方、スリット間領域は、スリット穴間距離がレンズフレームの厚さより短くなると、上記の方向に作用する応力に抗することができなくなる程度に強度が低下して、スリット穴間距離が短くなるように変形してしまう。これに伴い、スリット穴と保持穴との間の領域も変形してしまう。そこで、上記の構成においては、スリット穴間距離は上記レンズフレームの厚さであることにより、このような変形を回避することができる。
【0054】
本発明の他の光学式測距装置は、前記課題を解決するために、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、実装部材上に実装された発光素子と、上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する発光レンズと、上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、上記反射光を上記受光素子に集束させる受光レンズと、上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられたレンズフレームと、上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体との間、および上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第2の遮光性樹脂体との間の少なくともいずれか一方の間に、上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体および上記第2の遮光性樹脂体とが熱膨張により互いに接触しないような間隙が形成されていることを特徴としている。
【0055】
上記構成においては、リフロー処理時に、受光レンズおよび発光レンズを構成する樹脂と、第1の遮光性樹脂体および第2の遮光性樹脂体を構成する樹脂とがそれぞれの熱膨張係数で膨張する。これに対しては、受光レンズおよび発光レンズを構成する樹脂と、第1の遮光性樹脂体および第2の遮光性樹脂体とが、間隙内で膨張することで接触しないので、互いに膨張による応力を作用しあうことはない。それゆえ、リフロー処理後には、発光レンズおよび受光レンズと発光素子および受光素子との相対的な位置関係は保たれる。したがって、光学式測距装置の耐熱性の測距精度を高めることができる。
【0056】
前記光学式測距装置において、上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴を有しており、当該保持穴に複数の凹部が形成されていることが好ましい。
【0057】
上記構成においては、保持穴に複数の凹部が形成されているので、凹部内に前述の透光性樹脂が充填され、発光レンズおよび受光レンズがレンズフレームに強固に固定される。これにより、リフロー処理時の温度変化による滑りを起こす応力に対して、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの間の密着力を向上させることができる。
【0058】
前記光学式測距装置において、上記レンズフレームの表面、裏面または両面に、上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂により薄膜が形成されていることが好ましい。
【0059】
上記構成においては、上記レンズフレームの表面、裏面または両面に、発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂により薄膜が形成されているので、金属製のレンズフレームと第1および第2の遮光性樹脂体との間の密着性が高まる。これにより、レンズフレームのすべりを防止することができる。
【0060】
本発明に係る電子機器は、上記のいずれかの光学式測距装置を搭載していることを特徴としている。
【0061】
これにより、光学式測距装置を、パソコン、キッチン家電、サニタリ機器等の電子機器を搭載して、人までの距離を検出して機器を制御したり、非接触スイッチや非接触コントローラとして電子機器を制御したりするセンサとして利用することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る光学式測距装置は、上記のように構成されることにより、光学式測距装置の高耐熱化および高精度化を容易に図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)は本発明の実施形態1に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のM−M線矢視断面図である。
【図2】上記光学式測距装置における発光素子および受光素子の他の配置を示す側面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態2に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のN−N線矢視断面図である。
【図4】実施形態2に係る光学式測距装置における発光レンズの端部の周辺部分を一部拡大して示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の実施形態3に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のO−O線矢視断面図である。
【図6】実施形態3の変形例を示すものであり、レンズが形成されたレンズフレームの構成を示す平面図である。
【図7】実施形態1に係る光学式測距装置のレンズフレームにおける発光レンズの保持構造を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態4に係る光学式測距装置の構成を示す断面図である。
【図9】(a)は図8の光学式測距装置におけるレンズ付レンズフレームの構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のP−P線矢視断面図である。
【図10】本発明の実施形態5に係るパソコンの構成を示す斜視図である。
【図11】(a)は本発明の実施形態に対する比較例に係る光学式測距装置の構成を示す平面図であり、(b)は当該平面図のQ−Q線矢視断面図である。
【図12】一般的な三角測距法の原理を説明するための図である。
【図13】一般的な測距装置の構成を示す断面図である。
【図14】特許文献1に記載された測距装置の構成を示す断面図である。
【図15】特許文献2に記載された測距装置の構成を示す断面図である。
【図16】特許文献3に記載された測距装置の構成を示す断面図である。
【図17】測距装置において周囲熱および自己発熱によるレンズ間距離の変化量がそれぞれ異なることを説明するための図である。
【図18】(a)は実施形態3に係る光学式測距装置におけるレンズフレームのレンズスリット間の距離とレンズスリットから保持穴までの距離との間の関係を説明するためのレンズフレームおよび発光レンズの平面図であり、(b)は当該平面図のR−R線矢視断面図である。
【図19】上記レンズスリットの間から発光レンズの剥離が進行した状態を示すレンズフレームおよび発光レンズの部分平面図である。
【図20】上記レンズスリットの間にレンズフレームに応力が作用することを示すレンズフレームおよび発光レンズの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
[実施形態1]
本発明に係る一実施形態について、図1、図2および図7を参照して以下に説明する。
【0065】
〔光学式測距装置の構成〕
図1(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係る光学式測距装置1の構成を示す平面図および断面図である。図2は、光学式測距装置1における発光素子2および受光素子3の配置を示す側面図である。
【0066】
本実施形態に係る光学式測距装置1は、測距対象物までの距離を測定するための装置である。図1(a)および(b)に示すように、光学式測距装置1は、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光レンズ5、受光レンズ6、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9、3次モールド10およびレンズフレーム11を備えている。
【0067】
リードフレーム4(実装部材)は、搭載部4aと複数の端子4bとを有している。搭載部4aは、発光素子2および受光素子3を搭載するように平板状に形成されている。端子4bは、光学式測距装置1の長辺側の対向する2つの外壁面からM−M線方向と直交する方向に互いに平行に伸びるように、搭載部4aと一体に形成されている。
【0068】
発光素子2は、リードフレーム4の搭載部4a上の一端側に搭載されており、透光性樹脂からなる発光側1次モールド7(透光性樹脂体)で封止されている。一方、受光素子3は、リードフレーム4の搭載部4a上の他端側に搭載されており、発光側1次モールド7と同じ透光性樹脂からなる受光側1次モールド8(透光性樹脂体)で封止されている。これらの発光側1次モールド7および受光側1次モールド8は、遮光性樹脂からなる2次モールド9(第1の遮光性樹脂体)で覆われている。これにより、発光素子2から受光素子3へ光が直接入射することが防止される。
【0069】
受光素子3としては、PSD(Position Sensitive Detector)、複数のフォトダイオード(PD)が配置されたリニアセンサ、イメージセンサなどが用いられる。この受光素子3は、受光した反射光が集束したスポットの位置を検出するために、受光光量を電気信号に変換するが、その電気信号に所定の演算処理を施す信号処理部を内蔵している。あるいは、図2に示すように、信号処理部12が受光素子3と別の素子としてリードフレーム4上に構成されていてもよい。
【0070】
なお、発光素子2および受光素子3は、リードフレーム4に代えて、表面に配線が形成された基板(実装部材)上に配置されてもよい。
【0071】
上記の2次モールド9は、開口部9a,9bを有している。開口部9aは、発光素子2の上方に開口し、かつ中間に段を有するすり鉢状に形成されている。一方、開口部9bは、受光素子3の上方に開口し、かつ中間に段を有するすり鉢状に形成されている。2次モールド9の上端部には、開口部9a,9bをそれぞれ覆うように発光レンズ5および受光レンズ6が配置されている。開口部9aにより、発光素子2からの出射光が発光レンズ5に至る空間が形成され、開口部9bにより、受光レンズ6に入射した測距対象物からの反射光が受光素子3に至る空間が形成される。
【0072】
発光レンズ5は、透光性を有する透光性樹脂からなり、発光素子2からの出射光を平行光束に変換して測距対象物に照射する。受光レンズ6は、透光性を有する透光性樹脂からなり、測距対象物からの反射光を受光素子3の受光面上に集束させる。発光レンズ5および受光レンズ6は、レンズフレーム11に保持されており、当該レンズフレーム11が2次モールド9上の所定の位置に配置されることにより、それぞれ開口部9a,9bに配置される。また、発光レンズ5および受光レンズ6を形成する透光性樹脂としては、レンズを形成するために一般的に用いる公知の透光性の樹脂(例えばエポキシ樹脂)を用いることができる。
【0073】
なお、発光レンズ5および受光レンズ6は、同一の透光性樹脂により構成されていてもよいし、それぞれ異なる透光性樹脂により構成されていてもよい。
【0074】
遮光性樹脂からなる3次モールド10(第2の遮光性樹脂体)は、2次モールド9の外周面およびレンズフレーム11の上端面を覆い、かつ発光レンズ5および受光レンズ6を露出する開口部10a,10bを有するように形成される。これにより、3次モールド10は、2次モールド9とレンズフレーム11とを保持している。
【0075】
2次モールド9および3次モールド10は、射出成形によって形成される。また、2次モールド9および3次モールド10を構成する遮光性樹脂としては、公知の遮光性の樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP,熱膨張係数:5E−5)を好適に用いることができる。このように、遮光性樹脂からなる2次モールド9および3次モールド10は、後述する金属からなるレンズフレーム11に対して大きい熱膨張係数を有する。
【0076】
レンズフレーム11は金属により長方形をなす平板状に形成されている。また、レンズフレーム11は、発光レンズ5および受光レンズ6を保持するための保持穴を有している。レンズフレーム11を構成する金属材料としては、例えば42アロイ(熱膨張係数:5.5E−6)が好適であるが、これに限定されない。
【0077】
図7は、レンズフレーム11における発光レンズ5の保持構造を拡大して示す断面図である。
【0078】
なお、図7には受光レンズ6の保持構造を示していないが、受光レンズ6についても同様の保持構造でレンズフレーム11に保持されていることは勿論である。
【0079】
図7に示すように、レンズフレーム11の表面、裏面または両面における少なくとも発光レンズ5が形成される領域に、微小な凹凸構造11bが形成されている。この凹凸構造11bは、例えば、梨地処理を施されることにより形成されているが、同様な効果が得られるのであれば、他の表面処理によって形成されてもよい。例えば、凹凸構造11bは、金型プレスにより形成することもできるし、ブラスト加工やレーザ加工により形成することもできる。また、凹凸構造11bを形成する他の方法には、めっき処理がある。めっき
の前処理により、レンズフレーム11の表面、裏面または両面には数μmレベルの微細な凹凸構造11bを形成することができる。
【0080】
凹凸構造11bが上記のようにレンズフレーム11に形成されていることにより、発光レンズ5および受光レンズ6を構成する透光性樹脂はレンズフレーム11との密着力が大きくなる。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との界面において、それぞれを滑りにくくすることができる。
【0081】
なお、後述する各実施形態のレンズフレームにも、上記の凹凸構造11bと同様の凹凸構造が形成されていてもよい。
【0082】
〔発光レンズおよび受光レンズのすべり防止効果〕
ここでは、光学式測距装置1が、リフロー等により高温雰囲気中または低温雰囲気中に置かれた場合に熱膨張または収縮する状態について説明する。
【0083】
光学式測距装置1は、リフロー炉を通過するとき、前述のように260℃以上の高温に曝される。これにより、発光レンズ5、受光レンズ6、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を形成する各樹脂は、それぞれの熱膨張係数にしたがって膨張する。同時に、金属からなるリードフレーム4およびレンズフレーム11もそれぞれの膨張係数にしたがって上記の樹脂ほど大きくはないが膨張する。このとき、特に、発光レンズ5および受光レンズ6を形成する透光性樹脂の熱膨張係数とレンズフレーム11を形成する金属の熱膨張係数との差によって、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム11に対して滑りを生じようとする。また、光学式測距装置1は、リフロー炉から排出されるときに、逆に室温付近まで急激に冷却されることにより急激に収縮する。このときも、収縮の差によって、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム11に対して滑りを生じようとする。
【0084】
これに対し、上記の構成では、レンズフレーム11の表面、裏面または両面に凹凸構造11bが形成されている。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との密着力を大幅に向上させることができる。したがって、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との滑りを防止することができる。
【0085】
また、レンズフレーム11にめっきを施す場合には、めっきの材質としては樹脂との密着力を大きくできるAu−Pdめっきを用いることにより、さらに発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との密着力を大幅に向上させることができる。
【0086】
これにより、発光素子2および受光素子3と発光レンズ5および受光レンズ6との相対的な位置関係を保つことができる。したがって、光学式測距装置1の高耐熱化および高精度化を容易に図ることができる。
【0087】
〔光学式測距装置の製造〕
光学式測距装置1の製造手順(製造方法)について説明する。
【0088】
なお、ここでは、前述の凹凸構造11bを形成するために、レンズフレーム11の表面および裏面にめっき処理を施す例について説明する。
【0089】
まず、リードフレーム4上に発光素子2と受光素子3とを配置する。この状態で、Auワイヤにより、発光素子2および受光素子3と端子4bとを電気的に接続する。
【0090】
次に、透光性樹脂で発光素子2を封止することにより発光側1次モールド7を形成する
。同時に、透光性樹脂により受光素子3を封止することにより受光側1次モールド8を形成する。
【0091】
別工程では、レンズフレーム11の表面および裏面に、めっき処理を施すことにより、数μmの凹凸を有するめっき層11aを形成する。また、めっき層11aが形成されたレンズフレーム11に、発光レンズ5および受光レンズ6を透光性樹脂により形成する。この状態では、透光性樹脂が固化することにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との間に内部応力が生じている。そこで、発光レンズ5および受光レンズ6が形成されたレンズフレーム11を3次モールド10により光学式測距装置1に組み込む前に、レンズフレーム11に対してリフローに相当する熱処理を行う。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6が熱膨張するので、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との間に残留していた内部応力を、後のリフロー処理を行う前に開放することができる。
【0092】
その後、遮光性樹脂により2次モールド9を形成する。さらに、2次モールド9上にレンズフレーム11を配置した状態で、遮光性樹脂により、2次モールド9およびレンズフレーム11を封止するように、3次モールド10を形成することにより光学式測距装置1が完成する。
【0093】
また、完成した光学式測距装置1を基板等に実装する場合、光学式測距装置1をリフロー炉に通過させる。このとき、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との間で熱膨張係数に大きな差があるために、両者の界面にリフローの熱によって歪みが発生しようとする。この状態では、上記の内部応力がすでに開放されているので、歪みの発生のみをめっき層11aにより抑えればよい。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム11との滑りを効果的に防止することが可能となる。
【0094】
ここで、発光レンズ5および受光レンズ6が形成されたレンズフレーム11(レンズ付レンズフレーム)以外の部材に、リフロー処理の前に上記のようなリフロー相当の熱処理を行わないのは次の理由による。例えば、発光素子2および受光素子3が搭載されたリードフレーム4は、Auワイヤにより発光素子2および受光素子3と電気的に結線されており、さらに透光性樹脂からなる発光側1次モールド7および受光側1次モールド8により封止されている。このため、リフロー相当の熱を加えすぎると、樹脂の膨張によりAuワイヤが切断してしまうなど、信頼性上の問題を起こす可能性がある。
【0095】
これに対し、レンズ付レンズフレームは、リードフレーム4のようにIC等のパーツが搭載されていないので、リフロー相当(もしくはそれ以上)の熱を加えたとしても、上記のような問題が生じない。
【0096】
なお、このような熱処理は、後述する実施形態2〜4のいずれにも適用可能である。
【0097】
[実施形態2]
本発明に係る他の実施形態について、図3および図4を参照して以下に説明する。
【0098】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0099】
〔光学式測距装置の構成〕
図3(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に係る光学式測距装置21の構成を示す平面図および断面図である。図4は、光学式測距装置21における発光レンズ5の端部の周辺部分を一部拡大して示す断面図である。
【0100】
図3(a)および(b)に示すように、光学式測距装置21は、光学式測距装置1と同様に、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光レンズ5、受光レンズ6、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を備えている。また、光学式測距装置21は、光学式測距装置1におけるレンズフレーム11に代えてレンズフレーム12を有している。
【0101】
レンズフレーム12は、レンズフレーム11と同様に、金属により長方形をなす平板状に形成されている。また、レンズフレーム12を構成する金属材料としては、レンズフレーム11を構成する前述の金属材料を用いることができる。また、レンズフレーム12は、レンズフレーム11と異なり、表面および裏面にめっき層11aを有していない。
【0102】
3次モールド10における開口部10a,10bは、それぞれ発光レンズ5および受光レンズ6との間で所定間隔の間隙Gを形成するように、発光レンズ5および受光レンズ6の外径より大きい内径を有するように形成されている。上記の間隙Gは、光学式測距装置21がリフロー炉内の設定温度の最大値となる高温雰囲気中におかれた状態で、3次モールド10と発光レンズ5および受光レンズ6とが熱膨張しても互いに接触しない距離(所定間隔)に設定される。
【0103】
〔発光レンズおよび受光レンズのすべり防止効果〕
光学式測距装置21も、光学式測距装置1と同様、前述のように、リフロー炉を通過するとき、前述のように260℃以上の高温に曝されることにより、各部がそれぞれの熱膨張係数にしたがって膨張する。このとき、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム12に対して滑りを生じる。また、光学式測距装置21が、リフロー炉から排出されるときにも、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム12に対して滑りを生じる。
【0104】
これに対し、上記の構成では、3次モールド10における開口部10a,10bと、発光レンズ5および受光レンズ6との間に間隙Gが形成されている。これにより、図4に示すように、3次モールド10がS方向に膨張し、発光レンズ5がT方向に膨張するが、間隙Gの範囲内で互いに近づくだけであり、接触することはない。同様に、受光レンズ6および3次モールド10も、熱膨張しても、間隙Gの範囲内で互いに近づくだけであり、接触することはない。それゆえ、発光レンズ5および受光レンズ6が接触により3次モールド10から応力を加えられることがない。したがって、発光レンズ5および受光レンズ6が、3次モールド10からの応力によってレンズフレーム12に対して生じる滑りを防止することが可能となる。
【0105】
これにより、発光素子2および受光素子3と発光レンズ5および受光レンズ6との相対的な位置関係を保つことができる。よって、光学式測距装置21の高耐熱化および高精度化を容易に図ることができる。
【0106】
なお、上記の例では、発光レンズ5および受光レンズ6とレンズフレーム12との界面に生じる滑りについては解消できないので、本実施形態に係る構成を実施形態1に係る構成と組み合わせることにより、さらに滑り防止の効果を高めることができる。
【0107】
また、上記の例では、発光レンズ5および受光レンズ6と3次モールド10との接触を回避するための間隙Gについて説明したが、発光レンズ5および受光レンズ6と2次モールド9との間にも同様な間隙を設けてもよい。具体的には、発光レンズ5および受光レンズ6の下部における外周端部と、2次モールド9の開口部9a,9bとの間に上記の間隙を形成する。これによっても、上記と同様の効果が得られる。
【0108】
[実施形態3]
本発明に係るさらに他の実施形態について、図5、図6、図18〜図20を参照して以下に説明する。
【0109】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1,2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0110】
〔光学式測距装置の構成〕
図5(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る光学式測距装置31の構成を示す平面図および断面図である。
【0111】
図5に示すように、光学式測距装置31は、光学式測距装置21と同様に、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を備えている。また、光学式測距装置31は、光学式測距装置21におけるレンズフレーム12に代えてレンズフレーム13を備えている。
【0112】
レンズフレーム13は、レンズフレーム12と同様に、金属により長方形をなす平板状に形成されている。また、レンズフレーム13を構成する金属材料としては、レンズフレーム12を構成する前述の金属材料を用いることができる。
【0113】
レンズフレーム13は、発光レンズ5および受光レンズ6を保持するための保持穴13a,13bを有している。また、レンズフレーム13は、保持穴13a,13bの周縁端部の近傍における対向する位置に、レンズフレーム13を貫通する2つのレンズスリット13c(スリット穴)が形成されている。
【0114】
発光レンズ5および受光レンズ6は、レンズフレーム13に形成されるときに、透光性樹脂が図5(a)において破線にて示す範囲まで型に充填されることにより形成される。このとき、透光性樹脂がレンズスリット13cの内部にまで侵入していく。これにより、透光性樹脂が固化した状態では、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズスリット13cを介して結合する結合部を有することにより、レンズフレーム13に対して杭打ちされた状態となる。
【0115】
〔発光レンズおよび受光レンズのすべり防止効果〕
光学式測距装置31も、光学式測距装置21と同様、前述のように、リフロー炉を通過するとき、前述のように260℃以上の高温に曝されることにより、各部がそれぞれの熱膨張係数にしたがって膨張する。このとき、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム13に対して滑りを生じようとする。また、光学式測距装置31が、リフロー炉から排出されるときにも、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズフレーム13に対して滑りを生じようとする。
【0116】
これに対し、上記の構成では、発光レンズ5および受光レンズ6がレンズスリット13cを介して結合する結合部を有することにより、レンズフレーム13に対して杭打ちされている。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6において、リフローによる昇温や降温時に発生するレンズフレーム13の面に平行な応力を、応力方向に対してレンズスリット13cに垂直な方向に形成された結合部が抑え込む。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6の滑りを防止することができる。
【0117】
また、図5(a)に示すように、レンズスリット13cは、レンズフレーム13において、保持穴13a,13bを間において対向する2箇所に設けられている。レンズスリッ
ト13cを1箇所設けるのみでは、応力の大きさ次第では、レンズスリット13cを中心に力が分散し、レンズスリット13cを中心に回転する方向に発光レンズ5および受光レンズ6の滑りを発生させるおそれがある。これに対し、レンズスリット13cを2箇所設けることにより、これらのレンズスリット13cによって均等に力が分散するので、回転方向の滑りを効果的に防止することができる。最も好ましいのは、図5(a)に示すように、受光スポットの移動方向であるO−O線(発光レンズ5および受光レンズ6の中心を通る線)上にレンズスリット13cを配置することである。
【0118】
なお、レンズスリット13cは、発光レンズ5および受光レンズ6について、それぞれ2つに限らず3つ以上設けられていてもよい。この場合、力が均等に分散するように、レンズスリット13cが配置されることが好ましい。
【0119】
なお、本実施形態は、後述する変形例を含めて、前述の実施形態1,2に適用が可能である。これにより、発光レンズ5および受光レンズ6の滑り防止効果をより一層高めることができる。
【0120】
〔スリット穴間距離の設定〕
図18(a)および(b)は、レンズスリット13c間の距離とレンズスリット13cから保持穴13bまでの距離との間の関係を説明するためのレンズフレーム13および発光レンズ5の平面図および断面図である。図19は、レンズスリット13cの間から発光レンズ5の剥離が進行した状態を示すレンズフレーム13および発光レンズ5の部分平面図である。図20は、レンズスリット13cの間に応力が作用することを示すレンズフレーム13および発光レンズ5の部分平面図である。
【0121】
図18(a)に示すように、レンズスリット13cは、保持穴13aの周辺に沿うように保持穴13aと同心円状に配置される。各レンズスリット13cは、レンズスリット13cと保持穴13aとの間の距離(スリット穴−保持穴間距離D1)が、隣り合うレンズスリット13cの間の距離(スリット穴間距離D2)以上となるように配置されることが好ましい。以下に、その理由について説明する。
【0122】
なお、便宜上、図18(a)および(b)、図19ならびに図20では発光レンズ5についてのみ示し、以下の説明では発光レンズ5についてのみ言及しているが、受光レンズ6についても同様であることは勿論である。
【0123】
光学式測距装置31が熱によって膨張または収縮すると、レンズフレーム13には、その膨張または収縮による応力が作用する。この応力が発光レンズ5とレンズフレーム13との密着力以上になると、図18(a)および(b)に示すように、発光レンズ5は、レンズフレーム13の表面と密着している界面が、外周部から剥離することにより、剥離領域5aが形成される。この剥離領域5aは、剥離が保持穴13a側へ進行するとともに大きくなる。
【0124】
レンズスリット13cにおいては、レンズ樹脂が充填されているため、発光レンズ5とレンズフレーム13の表面との界面が存在しない。このため、剥離は、レンズスリット13cによって阻止されて、それ以上進行しない。一方、隣り合うレンズスリット13cの間より進行する剥離は、両側のレンズスリット13cに充填されているレンズ樹脂によって、レンズスリット13cに近いほど剥離の進行が抑えられる。このため、図19に示すように、剥離領域5aは、隣り合うレンズスリット13cの間から保持穴13a側へ、近似的にスリット穴間距離D2を直径とする円形状に広がっていくと考えることができる。したがって、スリット穴−保持穴間距離D1がスリット穴間距離D2以上であることにより、剥離領域5aが保持穴13a(レンズ内径)を越えて広がることを防止できる。それ
ゆえ、剥離による応力のために発光レンズ5と発光素子2との相対位置が変化することを回避できる。
【0125】
また、スリット穴−保持穴間距離D1がスリット穴間距離D2と等しい場合、剥離領域5aが保持穴13a(レンズ内径)に達しても、それ以上広がることを防止できる。また、この場合、保持穴13aとレンズスリット13cとの配置関係をスリット穴−保持穴間距離D1とスリット穴間距離D2との関係で容易に設定することができる。それゆえ、スリット穴間距離D2を可能な限り短く設定し、それに応じてスリット穴−保持穴間距離D1を設定することにより、発光レンズ5の面積を最適に低減することができる。
【0126】
ただし、スリット穴間距離D2が極端に短いと、レンズフレーム13におけるレンズスリット13cと保持穴13aとの間の領域の強度が不十分となり、上記のような応力を受けると、レンズフレーム13が、その領域で変形してしまうことがある。そこで、レンズフレーム13がこのような変形を回避できる程度の強度を有するように、スリット穴間距離D2は、レンズフレーム13の厚さ以上とすることが好ましい。以下に、その理由について説明する。
【0127】
図20に示すように、隣り合うレンズスリット13cの間には、スリット間領域13eが形成される。このスリット間領域13eは、スリット穴間距離D2がレンズフレーム13の厚さ以上であると、X方向(発光レンズ5の直径方向に直交する方向)だけでなく、レンズフレーム13の厚さ方向に作用する応力に抗することができる程度に高い強度を有する。また、一方、スリット間領域13eは、スリット穴間距離D2がレンズフレーム13の厚さより短くなると、X方向に作用する応力に抗することができなく程度に強度が低下して、スリット穴間距離D2が短くなるように変形してしまう。これに伴い、レンズスリット13cと保持穴13aとの間の領域も変形してしまう。
【0128】
X方向の応力に対するスリット間領域13eの強度を決定する要因としては、発光レンズ5の直径方向の長さL(レンズスリット13cの幅)も含まれる。しかしながら、スリット穴間距離D2の方が、長さLより、上記の強度に対して大きな影響を及ぼす。
【0129】
ここで、レンズスリット13cは、発光レンズ5の剥離を抑制するために設けられるので、その効果が得られる程度の最低限の大きさを有しておればよい。しかしながら、レンズスリット13cを大きくする場合、保持穴13aを超えた剥離の進行や上記のような強度の低下を招かないように、スリット穴−保持穴間距離D1およびスリット穴間距離D2を前述の条件を満たす値に設定する必要がある。このため、レンズフレーム13の全体のサイズを大きくしなければならず、これに応じて光学式測距装置31のサイズも大きくならざるを得ない。したがって、光学式測距装置31の大型化を回避する観点から、レンズスリット13cは、レンズ樹脂が流れ込むことができ、且つスリット穴−保持穴間距離D1およびスリット穴間距離D2についての前述の条件を満たす範囲で極力小さく形成されることが好ましい。
【0130】
以上のように、レンズフレーム13においては、スリット穴−保持穴間距離D1およびスリット穴間距離D2を適正に設定することが好ましい。これにより、レンズフレーム13の大型化を招くことなく、発光レンズ5および受光レンズ6の剥離を抑制するとともに、熱応力に対するレンズフレーム13の強度を向上させることができる。
【0131】
〔変形例〕
本実施形態の一変形例について説明する。図6は、本実施形態の変形例に係る光学式測距装置31におけるレンズフレーム14の構成を示す平面図である。
【0132】
本変形例では、上記のレンズフレーム13に代えてレンズフレーム14を用いる。
【0133】
このレンズフレーム14は、発光レンズ5および受光レンズ6を保持するための保持穴14a,14bを有している。また、レンズフレーム14は、保持穴14a,14bに適当な間隔をおいて複数の凹部14cが形成されている。保持穴14a,14bは、凹部14cを有することにより、歯車状の形状をなしている。
【0134】
レンズフレーム14を用いることにより、発光レンズ5および受光レンズ6の形成時に、透光性樹脂が凹部14cの内部に侵入するので、透光性樹脂とレンズフレーム14との結合力が増す。これにより、レンズフレーム14の面方向と平行に作用するリフロー時に生じる応力を、保持穴14a,14bにおける歯車形状の構造により受け止めることができる。それゆえ、発光レンズ5および受光レンズ6の滑りを防止することができる。
【0135】
また、レンズフレーム14は、保持穴14a,14bにおける歯車形状の構造を有しているので、比較的大きい面積を必要とするレンズスリット13cを設けるよりも小さい面積で、発光レンズ5および受光レンズ6との結合力を高めることができる。したがって、レンズフレーム14は、小型化の観点ではレンズフレーム13よりも有利である。
【0136】
[実施形態4]
本発明に係るさらに他の実施形態について、図8および図9を参照して以下に説明する。
【0137】
なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0138】
〔光学式測距装置の構成〕
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る光学式測距装置41の構成を示す断面図である。図9(a)および(b)は、光学式測距装置41におけるレンズ付レンズフレーム42の構成を示す平面図および断面図である。
【0139】
図8に示すように、光学式測距装置41は、光学式測距装置1と同様に、発光素子2、受光素子3、リードフレーム4、発光側1次モールド7、受光側1次モールド8、2次モールド9および3次モールド10を備えている。また、光学式測距装置31は、レンズ付レンズフレーム42を備えている。
【0140】
図9(a)および(b)に示すように、レンズ付レンズフレーム42は薄膜部43を有している。薄膜部43は、発光レンズ5および受光レンズ6が取り付けられる部分以外のレンズフレーム15の表面および裏面の領域に、発光レンズ5および受光レンズ6を形成する樹脂と同じ透光性樹脂により一体に形成されている。
【0141】
上記のように構成される光学式測距装置41において、レンズ付レンズフレーム42のレンズフレーム15が薄膜部43により覆われているので、レンズフレーム15が2次モールド9および3次モールド10と接しない。これにより、図8において破線で示すU部、V部およびW部では、レンズ付レンズフレーム42と2次モールド9および3次モールド10とが樹脂同士で接触することとなり、密着性が高まる。したがって、レンズフレーム11が2次モールド9および3次モールド10と接する構成と比較して、滑りの発生をより低減することができる。
【0142】
例えば、発光レンズ5における3次モールド10の外側端部のU部で滑りが発生するためには、3次モールド10の中心側のV部および反対側の外側端部のW部でも同様に滑り
を起こす必要がある。このため、非常に大きな応力が作用しない限り滑りが生じることはない。それゆえ、滑り防止の大きな効果を期待することができる。
【0143】
ただし、V部におけるレンズフレーム15の下面側の薄膜部43は、その膜厚によっては、発光素子2から出射した光の導波路となって受光素子3側へ直接入射するパスとなりえる。したがって、薄膜部43については、光が侵入しないような膜厚の設計や、薄膜部43内での光の迷路となるような薄膜構造を採用することが好ましい。
【0144】
また、上記の構成では、薄膜部43が発光レンズ5および受光レンズ6を形成する樹脂と同じ樹脂により一体に形成されている。これにより、レンズフレーム15に発光レンズ5および受光レンズ6を形成するときに、同時に薄膜部43を形成することができる。したがって、薄膜部43を容易に形成することができる。
【0145】
[実施形態5]
本発明に係るさらに他の実施形態について、図10を参照して以下に説明する。
【0146】
図10は、電子機器としてのパーソナルコンピュータ(パソコン)51を示す斜視図である。
【0147】
図10に示すように、パソコン51は、本体部52および表示部53を有している。表示部53の額縁部分の上端部には光学式測距装置54が取り付けられている。光学式測距装置54としては、前述の高耐熱かつ高性能である光学式測距装置1,21,31,41のうちのいずれか1つが用いられる。
【0148】
このパソコン51では、光学式測距装置54によってパソコン51の前における人の有無を正確に検知することができる。これにより、パソコン51の前から人がいなくなるとパソコン51の動作をスリープモードに切り替えることによって、省エネルギー化を効率よく行うことが可能となる。
【0149】
また、光学式測距装置54は、高耐熱かつ高性能であるので、リフローにより容易に短時間で大量に基板に実装することができる。
【0150】
なお、光学式測距装置54を搭載することができる電子機器は、パソコン51に限定されない。例えば、光学式測距装置54は非接触での操作に用いることができる。具体的には、キッチン家電やサニタリ機器では、非接触で動作をON/OFFさせる非接触スイッチとして光学式測距装置54を利用することができる。また、手までの距離を検知してボリュームコントロールを行うなど、手が濡れていたり汚れていたりする場合における電子機器の操作に光学式測距装置54を利用することができる。
【0151】
[比較例]
本発明に係る比較例について、図11を参照して以下に説明する。
【0152】
図11(a)および(b)は、本比較例に係る光学式測距装置61の構成を示す平面図および断面図である。
【0153】
図11に示すように、光学式測距装置61は、発光素子62、受光素子63、リードフレーム64、発光レンズ65、受光レンズ66、ベース67、ケース68およびレンズフレーム69を備えている。
【0154】
リードフレーム64上に形成された発光素子62および受光素子63は、遮光性樹脂か
らなるベース67によって封止されている。ベース67は、発光素子62からの出射光および受光素子63への入射光を互いに遮光する遮光壁67aと、側方に形成される側壁67bとを有している。さらに、側壁67bを覆うように遮光性樹脂からなるケース68が形成されている。
【0155】
レンズフレーム69は、金属により平板状に形成されており、発光レンズ65および受光レンズ66を保持している。このレンズフレーム69は、ベース67およびケース68の間に挟持されるように保持されている。
【0156】
上記のように構成される光学式測距装置61では、レンズフレーム69が、ベース67およびケース68を形成する遮光性樹脂の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有する金属により形成されている。これにより、周囲熱または発光素子62および受光素子63の自己発熱によってベース67およびケース68が熱膨張しても、レンズフレーム69はほとんど膨張することがない。それゆえ、周囲熱および自己発熱による発光レンズ65および受光レンズ66の間の距離の変化量の差がほとんどない。したがって、前述の光学式測距装置600のように、周囲熱および自己発熱によるレンズ間距離の変化量の相違が生じることなく、測距精度の低下を防ぐことができる。
【0157】
しかしながら、光学式測距装置61に対してリフローによるはんだ付けを行う場合、短時間ではあるが周囲温度が260℃程度に上昇する。このため、発光レンズ65および受光レンズ66、ベース67およびケース68を構成する樹脂が大きく膨張する一方、リードフレーム64やレンズフレーム69を構成する金属は樹脂に比べるとその熱膨張係数が小さくほとんど膨張しない。
【0158】
このため、発光レンズ65および受光レンズ66とレンズフレーム69との界面で熱膨張係数の差に起因する応力が大きくなる。この結果、発光レンズ65および受光レンズ66がレンズフレーム69に対して滑ってしまう。この滑りが発生すると、リフロー後に常温に戻ったときに、リフロー前の発光レンズ65および受光レンズ66と発光素子62および受光素子63との相対的な位置関係が変化する。したがって、前述の三角測量の原理によって得られる反射光のスポット位置が変化するため、測距値が正確な値からシフトするという不都合が生じる。
【0159】
これに対し、前述の各実施形態に係る光学式測距装置1,21,31,41では、それぞれ前述のようなレンズ滑りの防止構造を有することにより、上記のような滑りの発生を抑えることができる。したがって、リフローによる高熱に対しても、測距精度の低下を防ぐことができる。
【0160】
[付記事項]
本発明は、下記のようにも表現することができる。
【0161】
光学式測距装置は、測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、実装部材上に実装された発光素子と、上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、上記透光性樹脂体を封止する第1の遮光性樹脂体と、金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられたレンズフレームと、上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、上記レンズフレームが、表面および裏面にめっき層が形成されている。
【0162】
上記構成においては、レンズフレームの表面および裏面にめっき層が形成されているので、発光レンズおよび受光レンズを形成する透光性樹脂とレンズフレームとの密着性が向上する。これにより、リフロー時の周囲温度の変化により発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面に応力が作用する場合においても、それぞれが滑りを起こすことはない。それゆえ、リフロー処理後の発光レンズおよび受光レンズと発光素子および受光素子との相対的な位置関係が保たれる。したがって、光学式測距装置の耐熱性および測距精度を高めることができる。
【0163】
前記光学式測距装置において、上記めっき層はAu−Pdめっきにより形成されていることが好ましい。
【0164】
上記構成においては、Au−Pdめっきを用いているので、効果的にレンズ樹脂との密着性を向上させることができる。したがって、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面の滑りを防止することができる。
【0165】
光学式測距装置の製造方法は、上記光学式測距装置を製造する方法であって、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられた上記レンズフレームを熱処理した後に、当該レンズフレームを上記第2の遮光性樹脂体により封止する。
【0166】
上記構成においては、発光レンズおよび受光レンズが設けられたレンズフレームを例えばリフロー相当の所定の熱処理後に第2の遮光性樹脂体に組み付けるため、リフロー相当の熱処理が発光レンズおよび受光レンズに予め付与される。このとき、発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとに残留していた内部応力を事前に開放することができる。これにより、リフロー処理時に発光レンズおよび受光レンズとレンズフレームとの界面に発生する応力を低減することができる。
【0167】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明に係る光学式測距装置は、リフローによるはんだ付けにより電子機器に実装されることに対して好適に利用できる。
【符号の説明】
【0169】
1 光学式測距装置
2 発光素子
3 受光素子
4 リードフレーム(実装部材)
5 発光レンズ
6 受光レンズ
7 発光側1次モールド(透光性樹脂体)
8 受光側1次モールド(透光性樹脂体)
9 2次モールド(第1の遮光性樹脂体)
10 3次モールド(第2の遮光性樹脂体)
10a 開口部
11a めっき層
11b 凹凸構造
11〜15 レンズフレーム
13a,13b 保持穴
13c レンズスリット(スリット穴)
14a,14b 保持穴
14c 凹部
21 光学式測距装置
31 光学式測距装置
41 光学式測距装置
42 レンズ付レンズフレーム
43 薄膜部
51 パソコン(電子機器)
G 間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、
実装部材上に実装された発光素子と、
上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、
上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、
上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、
上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、
上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、
金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズフレームと、
上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、
上記レンズフレームは、表面および裏面の少なくとも上記発光レンズと受光レンズが形成される領域に凹凸構造が形成されていることを特徴とする光学式測距装置。
【請求項2】
上記凹凸構造はAu−Pdめっきにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項3】
上記凹凸構造が梨地処理により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項4】
上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴と、当該保持穴の周辺に形成されるスリット穴とを有しており、当該スリット穴に上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の光学式測距装置。
【請求項5】
上記スリット穴は上記発光レンズおよび上記受光レンズについてそれぞれ少なくとも2つ形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学式測距装置。
【請求項6】
上記スリット穴は、上記スリット穴と上記保持穴の間のスリット穴−保持穴間距離が隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学式測距装置。
【請求項7】
上記スリット穴−保持穴間距離が上記スリット穴間距離と等しいことを特徴とする請求項6に記載の光学式測距装置。
【請求項8】
隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離は上記レンズフレームの厚さ以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学式測距装置。
【請求項9】
測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、
実装部材上に実装された発光素子と、
上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、
上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、
上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、
上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、
上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光
レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、
金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられたレンズフレームと、
上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、
上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体との間、および上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第2の遮光性樹脂体との間の少なくともいずれか一方の間に、上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体および上記第2の遮光性樹脂体とが熱膨張により互いに接触しないような間隙が形成されていることを特徴とする光学式測距装置。
【請求項10】
上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴を有しており、当該保持穴に複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または9に記載の光学式測距装置。
【請求項11】
上記レンズフレームの表面、裏面または両面に、上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂により薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1または9に記載の光学式測距装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学式測距装置を搭載していることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、
実装部材上に実装された発光素子と、
上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、
上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、
上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、
上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、
上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、
金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズフレームと、
上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、
上記レンズフレームは、表面および裏面の少なくとも上記発光レンズと受光レンズが形成される領域に凹凸構造が形成されていることを特徴とする光学式測距装置。
【請求項2】
上記凹凸構造はAu−Pdめっきにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項3】
上記凹凸構造が梨地処理により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項4】
上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴と、当該保持穴の周辺に形成されるスリット穴とを有しており、当該スリット穴に上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の光学式測距装置。
【請求項5】
上記スリット穴は上記発光レンズおよび上記受光レンズについてそれぞれ少なくとも2つ形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学式測距装置。
【請求項6】
上記スリット穴は、上記スリット穴と上記保持穴の間のスリット穴−保持穴間距離が隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学式測距装置。
【請求項7】
上記スリット穴−保持穴間距離が上記スリット穴間距離と等しいことを特徴とする請求項6に記載の光学式測距装置。
【請求項8】
隣り合う上記スリット穴の間のスリット穴間距離は上記レンズフレームの厚さ以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学式測距装置。
【請求項9】
測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置であって、
実装部材上に実装された発光素子と、
上記発光素子の出射光を上記測距対象物に照射する透光性樹脂からなる発光レンズと、
上記実装部材上に実装され、上記測距対象物による反射光が集束する位置を検出する受光素子と、
上記反射光を上記受光素子に集束させる透光性樹脂からなる受光レンズと、
上記発光素子および上記受光素子を封止する透光性樹脂体と、
上記出射光が上記発光素子から上記発光レンズに至る空間および上記反射光が上記受光
レンズから上記受光素子に至る空間を形成するように上記透光性樹脂体を覆う第1の遮光性樹脂体と、
金属で形成され、上記発光レンズおよび上記受光レンズが設けられたレンズフレームと、
上記レンズフレームおよび上記第1の遮光性樹脂体を封止する第2の遮光性樹脂体とを備え、
上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体との間、および上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第2の遮光性樹脂体との間の少なくともいずれか一方の間に、上記受光レンズおよび上記発光レンズと上記第1の遮光性樹脂体および上記第2の遮光性樹脂体とが熱膨張により互いに接触しないような間隙が形成されていることを特徴とする光学式測距装置。
【請求項10】
上記レンズフレームは、上記発光レンズおよび上記受光レンズをそれぞれ保持する保持穴を有しており、当該保持穴に複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または9に記載の光学式測距装置。
【請求項11】
上記レンズフレームの表面、裏面または両面に、上記発光レンズおよび上記受光レンズを形成する透光性樹脂により薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1または9に記載の光学式測距装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学式測距装置を搭載していることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図5】
【公開番号】特開2013−33023(P2013−33023A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−74786(P2012−74786)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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