説明

光学機器用羽根駆動装置

【課題】4枚の羽根が、光軸を中心にして常に相似形を保ちながら光路開口の形状を連続的に変化させていくようにした光学機器用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】回転子11の四つの出力ピン11a,11b,11c,1dは、羽根5,6,7,8の長孔5d,6c,7d,8cに嵌合している。地板1に設けられている四つのガイドピン1g,1h,1i,1jのうち、ガイドピン1gは、羽根5,6,7の長孔5b,6b,7bに嵌合しており、ガイドピン1hは、羽根6の長孔6bに嵌合しており、ガイドピン1iは、羽根5,7,8の長孔5c,7c,8bに嵌合しており、ガイドピン1jは、羽根8の長孔8bに嵌合している。そのため、回転子11が往復回転すると、羽根5,6,7,8は、それらの開口形成縁5a,6a,7a,8aの協働によって形成される開口の大きさを、正八角形のまま連続的に変化させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の羽根を、光路開口の大きさが相似形を保ちながら変化するように作動させる光学機器用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器用羽根駆動装置のうちカメラ用羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置などが知られている。また、プロジェクタ用羽根駆動装置,顕微鏡用羽根駆動装置,照明機器用羽根駆動装置などとしては、絞り装置が知られている。そして、それらのうち、特に、複数枚の羽根を同時に作動させ、光路開口の大きさを光軸を中心にして変化させていくようにしたシャッタ装置や絞り装置の場合には、光路開口の形状が、常に円形に近く相似形を保ちつつ変化していくようにすることが理想とされている。しかしながら、複数枚の羽根にそのような作動をさせるためには、光軸を中心にして往復回転させられるリング部材(シャッタ装置の場合には駆動リング、絞り装置の場合には絞りリングなどといわれている)を備え、それらの羽根を同時に同方向へ回転させるように構成する必要がある。そのため、この構成は、コスト高になってしまうという問題点があり、最近では、高級機器以外には採用されないようになってきた。
【0003】
そこで、それに代わるものとして、上記のようなリング部材を備えることなく、複数枚の羽根によって、光路開口の大きさを光軸を中心にして変化させるようにした羽根駆動装置が、これまでにも数多く提案され、実施されてきた。しかしながら、それらのうちの殆どは、光路開口の形状を、常に相似形を保てるようにすることと、連続的に変化させることができるようにすることの両方を満足させることができないものであった。そのような構成の一例が、下記の特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている絞り装置(光量調節装置)はユニークな構成をしていて、二つの絞り羽根(可動羽根)を、光軸と直交する面において、一つの電磁アクチュエータによって、同時に、互いに直交する方向へ作動させて光路の開口面積を変えるようにしたものであるが、本発明は、この種のタイプの羽根駆動装置に関するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2000−352737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1には、二つの絞り羽根を、光軸と直交する面において、互いに直交する方向へ同時に作動させることによって、光路の開口面積を変えるようにした絞り装置が記載されているが、その光路開口は、二つの絞り羽根に形成された溝が交差しているところに形成されるため、そのようにして形成される光路開口は正方形をしている。そして、特許文献1には、各々の絞り羽根の溝の幅を段階的に変えるように形成することによって、大きさの異なる複数の正方形の光路開口を得ることができることも記載されている。そのため、この絞り装置の場合には、光軸を中心にした相似形の光路開口が得られるようになっている。しかしながら、それらの光路開口の大きさは、予め形成されている溝の幅によって決まってしまうため、それ以外の大きさの光路開口を得ることができない。そのため、このような構成は、光路開口を連続して制御するようにした絞り装置には採用することができない。また、当然のことではあるが、このような構成は、シャッタ装置として採用することもできない。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光軸と直交する面において、互いに直交する方向へ同時に作動させる複数枚の羽根を備えている羽根駆動装置であって、それらの羽根が、光軸を中心にして常に相似形を保ちながら光路開口の形状を連続的に変化させていくようにした、シャッタ装置としても絞り装置としても採用することの可能な光学機器用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の光学機器用羽根駆動装置は、円形をした光路用の開口部を有していてカバー板との間に羽根室を構成しており羽根室側の面にはそれらを結ぶ線分が方形となる位置に四つのガイドピンを設けている地板と、永久磁石を有する回転子を備えていて該回転子の回転軸と前記開口部の中心との間にそれらを結ぶ線を対称軸として前記ガイドピンが二つずつ配置されるようにして前記地板に取り付けられており該回転子と一体に径方向位置に所定の角度間隔で設けられた四つの出力ピンを羽根室内に臨ませている電磁アクチュエータと、各々が開口形成縁と第1長孔と第2長孔とを有していて一方は前記対称軸と平行に形成されている第1長孔を前記対称軸の一方の側にある二つの前記ガイドピンに嵌合させ他方は前記対称軸と平行に形成されている第1長孔を前記対称軸の他方の側にある二つの前記ガイドピンに嵌合させており両者は各々の第2長孔を前記出力ピンのうちの第1出力ピンと第2出力ピンに別々に嵌合させていて前記回転子の往復回転によって前記対称軸と平行に互いに相反する方向へ往復作動させられる第1羽根及び第2羽根と、各々が開口形成縁と第1長孔と第2長孔とを有していて両者は各々の第1長孔を前記対称軸の両側にある前記ガイドピンの一つずつに嵌合させ且つ第2長孔を前記出力ピンのうち第3出力ピンと第4出力ピンに別々に嵌合させており前記回転子の往復回転によって前記対称軸と直交して互いに相反する方向へ往復作動させられる第3羽根及び第4羽根と、を備えており、前記4枚の羽根は、前記回転子の回転によって作動させられ、前記各開口形成縁の協働によって光路開口の大きさを相似形に変化させるようにする。
【0008】
その場合、前記四つの出力ピンが、前記回転子に略90度の角度間隔で設けられており、前記第1出力ピンと前記第2出力ピンとは互いに180度の角度間隔で設けられ、前記第3出力ピンと前記第4出力ピンも互いに180度の角度間隔で設けられているようにしたり、前記第1羽根の前記第2長孔と前記第2羽根の前記第2長孔とが、前記対称軸に対して直交するように形成されており、前記第3羽根の前記第2長孔と前記第4羽根の前記第2長孔とが、前記対称軸に対して平行に形成されているようにしたりすると、設計や製作が容易になる。
【0009】
また、前記第3羽根の前記第1長孔と前記第4羽根の前記第1長孔とのうちの少なくとも一方が、二つの長孔からなっており、該長孔の一方は、前記対称軸の一方の側にある二つの前記ガイドピンのいずれかに嵌合させ、該長孔の他方は、前記対称軸の他方の側にある二つの前記ガイドピンのいずれかに嵌合させているようにしてもよい。また、前記4枚の羽根に形成されている前記開口形成縁は、各々、相反する方向へ作動する羽根に向けて略135度開くように形成された二つの端縁からなっていて、それらによって形成される光路開口の形状が八角形となるようにすると、最も円形に近い光路開口が得られるようになる。更に、前記電磁アクチュエータは、前記回転子が、固定子のコイルへの通電方向に対応して所定の角度範囲内でだけ往復回転させられるモータであって、固定子には、前記回転子の回転角度位置を検出する磁気感応型検出素子が設けられているようにすると、絞り機能を有する小型で低価格な光学機器用羽根駆動装置が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学機器用羽根駆動装置は、光軸と直交する面において、相反する方向へ作動する2枚一組の羽根を二組備えるようにし、その二組の羽根を、四つの出力ピンを有する一つの電磁アクチュエータによって、互いに直交する方向へ同時に作動させるようにしたため、4枚の羽根の開口形成縁の協働によって、それらの羽根が、光軸を中心にして常に相似形を保ちながら光路開口の形状を連続的に変化させるようにして作動することが可能になり、高機能を有するシャッタ装置や絞り装置が得られるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。本発明の光学機器用羽根駆動装置は、カメラ用のレンズバリア装置や、照明機器用の絞り装置として実施することも可能であるが、カメラ用のシャッタ装置や絞り装置として実施したり、プロジェクタ用や顕微鏡用の絞り装置として実施すると特に有効なものである。また、カメラ用のシャッタ装置の中には、複数枚の羽根が絞り機能をも有するようにしたシャッタ装置が知られているが、本発明は、そのようなシャッタ装置として実施することも可能である。更に、カメラ用のシャッタ装置とした場合には、デジタルカメラにもフィルムカメラにも採用することが可能であるし、カメラ用の絞り装置とした場合には、スチルカメラにもムービーカメラにも採用することが可能であるが、実施例は、被写体の明るさに対応して絞り口径が自動的に変化するようにしたムービーカメラ用の絞り装置として構成したものである。しかしながら、その他の場合についても、適宜、説明を加えることにする。
【実施例】
【0012】
本実施例を、図1〜図5を用いて説明するが、図1は、本実施例の主な構成部材を分解して示した斜視図であり、図2は、主に、本実施例に用いられている電磁アクチュエータの取付け構成を説明するための断面図である。また、図3〜図5は、カバー板を外して羽根室内を分かり易く示した平面図であるが、図3は、4枚の羽根が光路用の開口部を全開にしている状態(最大絞り開口の制御状態)を示したものであり、図4は、中絞り開口の制御状態を示したものであり、図5は、小絞り開口の制御状態を示したものである。
【0013】
先ず、主に図1及び図2を用いて、本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製の比較的厚い部材であり、平面形状は略長方形をしていて、円形をした撮影光路用の開口部1aと、同一円周上に形成された二つの円弧状の長孔1b,1cとを有している。また、この地板1には、その外周辺に沿って四方に壁部1dが形成されており、一つの対角線上の二つの隅には、壁部1dと同じ高さの肉厚部が設けられ、そこに、ねじ穴1e,1fが形成されている。更に、この地板1には、四つのガイドピン1g,1h,1i,1jが設けられているが、ガイドピン1g,1hとガイドピン1i,1jとは、開口部1aの中心と、二つの円弧状の長孔1b,1cを形成している円周の中心とを結んだ線を間にして、対称となる位置に配置されている。そして、本実施例の場合には、四つのガイドピン1g,1h,1i,1jを結んだ線は長方形になるが、開口部1aと、長孔1b,1cを形成している円周との間隔をもっと大きくした場合には、正方形になるようにしても差し支えない。
【0014】
カバー板2は、薄い合成樹脂製であって、地板1と略同じ平面形状をしており、地板1との間に羽根室を構成するために、一つの対角線上の二つの隅に形成された孔2a,2bを、上記のねじ穴1e,1fに合わせ、ねじ3,4によって地板1に取り付けられている。そして、このカバー板2には、上記の開口部1aと対向するところに、開口部1aよりも若干大きい円形の開口部2cが形成されており、上記の円弧状をした長孔1b,1cと対向するところには、同じ形状をした長孔2d,2eが形成されている。更に、このカバー板2には、四つの孔2f,2g,2h,2iが形成されており、それらに、上記のガイドピン1g,1h,1i,1jの先端が嵌合している。
【0015】
羽根室内には、地板1側から順に、4枚の羽根5,6,7,8が配置されている。それらのうち、最も地板1側に配置されている羽根5は、二つの直線状の端縁が135度の開き角度となるようにして形成された開口形成縁5aと、三つの長孔5b,5c,5dとを有している。それらのうち、長孔5b,5cは、その長さ方向が、長孔5dの長さ方向と直交するように形成されていて、上記のガイドピン1g,1iに夫々嵌合している。また、地板1側から2番目に配置されている羽根6は、二つの直線状の端縁が135度の開き角度となるようにして形成された開口形成縁6aと、二つの長孔6b,6cとを有しており、それらのうち、長孔6bは、羽根5の長孔5dとは平行であって、その長さ方向が、長孔6cの長さ方向と直交するように形成され、上記のガイドピン1g,1hの両方に嵌合している。
【0016】
地板1側から3番目に配置されている羽根7は、二つの直線状の端縁が135度の開き角度となるようにして形成された開口形成縁7aと、三つの長孔7b,7c,7dとを有している。それらのうち、長孔7b,7cは、その長さ方向が、長孔5dの長さ方向と直交するように形成されていて、羽根5の長孔5b,5cと同様に、上記のガイドピン1g,1iに夫々嵌合している。また、最もカバー板2側に配置されている羽根8は、二つの直線状の端縁が135度の開き角度となるようにして形成された開口形成縁8aと、二つの長孔8b,8cとを有しており、それらのうち、長孔8bは、羽根7の長孔7dとは平行であって、その長さ方向が、長孔8cの長さ方向と直交するように形成され、上記のガイドピン1i,1jの両方に嵌合している。
【0017】
尚、本実施例の場合には、4枚の羽根5,6,7,8が上記のように構成されているが、下記の作動説明からも分かるように、四つのガイドピン1g,1h,1i,1jに嵌合させる長孔は、次のようにしても構わない。
【0018】
先ず、羽根5に形成されている二つの長孔5b,5cは、ガイドピン1g,1iの両方に嵌合する一つの長孔にしてもよい。また、開口部1aと円弧状の長孔1cとの間隔を大きくして、四つのガイドピン1g,1h,1i,1jの位置を開口部1a側へ移動させ、ガイドピン1h,1jが、円弧状の長孔1cよりも開口部1a側になるようにした場合には、長孔5b,5cの代わりにそれらと平行になるように形成した二つの長孔を、ガイドピン1h,1jに嵌合させるようにしてもよい。そして、その場合における二つの長孔は、ガイドピン1h,1jの両方に嵌合させる一つの長孔としてもよい。更に、長孔5bの方は、本実施例のようにして、ガイドピン1gに嵌合させるが、長孔5cの代わりにそれと平行になるように形成した長孔をガイドピン1jに嵌合させるようにしてもよいし、反対に、長孔5cの方は、本実施例のようにして、ガイドピン1iに嵌合させるが、長孔5bの代わりにそれと平行になるように形成した長孔をガイドピン1hに嵌合させるようにしてもよい。そして、このようにしてもよいことは、羽根7の場合も同じである。
【0019】
他方、本実施例における羽根6は、上記のようにガイドピン1g,1hの両方に嵌合させる長孔6bを有しているが、設計上、羽根を大きくしても構わない場合には、長孔6bと平行なもう一つの長孔を形成するようにし、その長孔をガイドピン1i,1jの両方に嵌合させるようにしても構わない。そして、このようにしてもよいことは、羽根8の場合も同じである。
【0020】
次に、地板1の羽根室外の面に取り付けられている電磁アクチュエータの構成を説明する。本実施例の電磁アクチュエータは、回転子の構成は異なるものの、基本的には、特開2004−93874号公報などに記載されている周知の電流制御式のモータと類似の構成をしている。図2において、第1固定子枠9はコップのような形状をしていて、第2固定子枠10との間に、回転子11の収容室を構成している。永久磁石を有する回転子11は、その収容室内において、それらの固定子枠9,10の両方に軸受けされている。固定子枠9,10の外側には、それらの軸受部を囲むようにして溝が形成されており、そこに二つのコイル12,13(図2においては分けて示されていない)を巻回することによって二つの固定子枠9,10が相互に取り付けられるようになっている。
【0021】
また、フレキシブルプリント配線板14に取り付けられている、磁気感応検出素子としてのホール素子15が、第1固定子枠9の外側であって、上記の溝を形成していないところに配置されており、そのホール素子15とコイル12,13の外側には、円筒形をしたヨーク16が嵌装されている。また、回転子11は、回転子軸が合成樹脂製であり、それと一体であって上記の収容室から径方向へ延伸している腕部には、図1に示されているようにして四つの出力ピン11a,11b,11c,11dが形成されている。尚、本実施例は、二つのコイル12,13とホール素子15を備えているが、周知のように、コイルを一つにしてもよい場合があるし、絞り機能を有しない単純なシャッタ装置とする場合には、ホール素子15は不要になる。
【0022】
このように構成されている本実施例のモータは、第2固定子枠10に形成されている二つの位置決め孔10a,10bを、地板1に設けられた二つの位置決めピン1k,1mに嵌合させておき、二つのねじ17,18によって地板1に取り付けられている。そして、その取付け状態においては、二つの出力ピン11a,11bは、円弧状の長孔1bから羽根室内に挿入されており、羽根室内では羽根5,6の長孔5d,6cに嵌合し、それらの先端をカバー板2の円弧状の長孔2dに挿入している。また、残りの二つの出力ピン11c,11dは、円弧状の長孔1cから羽根室内に挿入されており、羽根室内では羽根7,8の長孔7d,8cに嵌合し、それらの先端をカバー板2の円弧状の長孔2eに挿入している。従って、このような取付け状態においては、地板1を平面的にみた場合、回転子11の回転軸は、上記した二つの円弧状の長孔1b,1cを形成している円周の中心に存在することになる。
【0023】
尚、本実施例の電磁アクチュエータは、このような構成をした電流制御式のモータであるが、周知のように、電流制御式のモータには、このほかにも、種々の固定子構成が知られている。そのため、本発明の電磁アクチュエータは、本実施例の構成に限定されない。本発明の電磁アクチュエータは、回転子に四つの出力ピンが一体的に設けられた構成をしたものであればよく、そのような構成をしていれば、ステップモータであっても差し支えない。
【0024】
次に、本実施例の作動を説明する。図3は、カメラの電源スイッチがオフの状態を示したものである。そのため、コイル12,13には通電されていない。このとき、羽根5は、出力ピン11aによって最も下方位置に置かれ、羽根6は、出力ピン11bによって最も左方位置に置かれ、羽根7は、出力ピン11cによって最も上方位置に置かれ、羽根8は、出力ピン11dによって最も右方位置に置かれている。そのため、それらの羽根5,6,7,8の開口形成縁5a,6a,7a,8aは、開口部1a内に進入しておらず、被写体光路の大きさは、円形をした開口部1aによって規制されている。そして、回転子11は、図示していないストッパによって、これ以上は時計方向へ回転できないようになっている。従って、この状態は、開口部1aによる最大絞り口径の制御状態でもある。
【0025】
また、本実施例の電磁アクチュエータは、モータ駆動回路からコイル12に電流を供給すると、回転子11には、その電流値に対応した反時計方向への回転力が作用するようになっており、また、他方のコイル13に電流を供給すると、回転子11には、その電流値に対応した時計方向への回転力が作用するようになっている。そのため、回転子11は、それらの回転力の差によって、いずれかの方向へ回転させられることになるが、ホール素子15によって、回転子11が測光回路の測定結果に対応した回転位置に達したことを検出したときには、それらの回転力がバランスし、停止させられるようになっている。
【0026】
このような図3の状態において、カメラの電源スイッチをオンにすると、測光回路の測定結果に対応して、二つのコイル12,13に電流が供給される。そして、被写体光が、かなり暗いときには、回転子11は図3の状態のままで回転しない。そのため、この状態で撮影を開始したときには、最大絞り口径で撮影が行われることになる。そして、撮影中に、被写体光が明るくなっていくと、モータ駆動回路からコイル12に供給される電流の方が、コイル13に供給される電流よりも相対的に大きくなってゆき、回転子11は、反時計方向へ回転させられていく。それによって、二つの羽根5,7は互いに相反する方向へ作動させられて開口形成縁5a,7aを開口部1aに進入させてゆき、もう二つの羽根6,8も、互いに相反する方向へ作動させられて開口形成縁6a,8aを開口部1aに進入させていく。そのため、四つの開口形成縁5a,7a,6a,8aによって開口部1a内に形成される絞り開口の形状は正八角形になる。
【0027】
このようにして、絞り開口の大きさ、即ち絞り口径が小さくなってゆき、被写体光に対応した絞り口径が得られると、ホール素子15が回転子11の所定の回転位置を検出することによって、両方向への回転力がバランスし、回転子11が停止させられる。このようにして、それ以後も、被写体光の変化に対応して、回転子11が時計方向へ回転させられたり反時計方向へ回転させられたりして、絞り口径が変化させられる。図4は、そのようにして連続的に変化させられる絞り開口のうち、中絞り開口の制御状態を示したものであり、図5は、小絞り(最小絞り)開口の制御状態を示したものである。これらの状態からも分かるように、本実施例の場合には、4枚の羽根5,6,7,8の開口形成縁5a,7a,6a,8aの協働によって形成される絞り開口の形状は、常に正八角形の相似形になっている。
【0028】
尚、本実施例は、絞り開口の大きさを連続的に変化させ得る構成になっているため、上記においては、実際の撮影に際しても、無数の絞り開口を得るようにした場合を前提にして説明したが、本発明は、そのようにした場合に限定されるものではなく、制御回路の設計仕様によっては、例えば、5段階の絞り口径だけが得られるようにしても差し支えない。また、本実施例の場合には、各羽根の開口形成縁5a,6a,7a,8aが、いずれも、相反する方向へ作動する羽根に向けて135度に開いた形状をしているため、それらの羽根の協働によって形成される絞り開口は正八角形になっているが、各羽根の開口形成縁を直線状にし且つ相反する方向へ作動する羽根の開口形成縁とは平行になるようにして、4枚の羽根の協働によって形成される絞り開口が正方形となるようにしても差し支えない。但し、本実施例のようにした方が円形に近くなるので、より好ましいものであることは言うまでもない。
【0029】
上記のようにして撮影が行われた後、もはや撮影を続ける意志がなく、カメラの電源スイッチをオフにすると、遅延回路が働くと共に、モータ駆動回路からは、コイル13にだけ電流が供給されるようになるため、回転子11は時計方向へ回転させられ、図3に示された状態に復帰して停止する。
【0030】
尚、上記の説明では、カメラの電源スイッチがオフのときは、図3の状態になっている場合で説明したが、逆に、図5の状態になっているようにしてもよいことは言うまでもない。また、本実施例は、ムービーカメラ用の絞り装置として説明したが、プロジェクタ用の絞り装置,顕微鏡用の絞り装置,照明機器用の絞り装置とすることもできることは言うまでもない。更に、撮影に際して、図3の状態から、例えば図4の状態になって回転子11が停止した直後に、シャッタ装置などによって露光時間が制御されるようにすれば、スチルカメラ用の絞り装置になる。そして、そのようなスチルカメラ用の絞り装置とする場合であって、例えば、図4に示されているような絞り開口が一つだけ得られるようにする場合には、ホール素子15を備える必要はなく、回転子11の回転を図4の位置で停止させるためのストッパを設ければよいことになる。また、そのようにする場合には、ホール素子15は不要であるし、コイル12,13を一つにし、回転子11を逆転させるときには、電流の供給方向を切り換えるようにしてもよいことになる。
【0031】
ところで、これまでは、本発明の光学機器用羽根駆動装置が、各種の絞り装置として実施される場合について説明したが、本発明の光学機器用羽根駆動装置は、スチルカメラ用のシャッタ装置としても実施することが可能である。そこで、そのことについても簡単に説明をしておく。周知のように、シャッタ装置の中には、複数枚の羽根が絞り機能をも有するようにしたものと、全開位置と閉鎖位置との間を単純に作動するだけのものとが知られている。そこで先ず、前者の場合であって、デジタルカメラに採用された場合には、撮影に際して、図3の状態から、例えば図4の状態で回転子11が停止した直後に、露光時間制御回路を働かせ、所定時間後には、図6に示されているように、4枚の羽根5,6,7,8によって開口部1aを閉鎖させるようにすればよい。そして、画像情報が固体撮像素子から記憶装置に転送された後、図3の状態に復帰させる。また、後者の場合であって、デジタルカメラに採用された場合には、撮影に際しては、図3の状態で、露光時間制御回路を働かせ、所定時間後には図6に示された状態にして、画像情報を記憶装置に転送させ、その後、図3の状態に復帰させるようにする。従って、この場合には、ホール素子15は不要であるし、コイル12,13を一つにし、回転子11を逆転させるときには、電流の供給方向を切り換えるようにしてもよいことになる。
【0032】
また、前者の場合であって、フィルムカメラに採用された場合には、撮影前は、図6の状態にしておき、撮影に際しては、図6の状態から、例えば図4の状態にし、その後、図6の状態に復帰させるようにすればよい。更に、後者の場合であって、フィルムカメラに採用された場合には、撮影前は、図6の状態にしておき、撮影に際しては、図6の状態から図3の状態にし、その後、図6の状態に復帰させるようにすればよい。従って、この場合には、ホール素子15は不要であるし、コイル12,13を一つにし、回転子11を逆転させるときには、電流の供給方向を切り換えるようにしてもよいことになる。また、このように構成した場合には、シャッタ装置としてではなく、レンズバリア装置とすることも可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】カメラ用絞り装置とした実施例の分解斜視図である。
【図2】実施例の断面図である。
【図3】4枚の羽根が光路用の開口部を全開にしている状態(最大絞り開口の制御状態)を、カバー板を外して示した実施例の平面図である。
【図4】中絞り開口の制御状態を、図3と同様にして示した実施例の平面図である。
【図5】小絞り開口の制御状態を、図3と同様にして示した実施例の正面図である。
【図6】カメラ用シャッタ装置とした場合において、4枚の羽根が光路用の開口部を閉鎖している状態を、図3と同様にして示した平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 地板
1a,2c 開口部
1b,1c,2d,2e,5b〜5d,6b,6c,7b〜7d,8b,8c 長孔
1d 壁部
1e,1f ねじ穴
1g〜1j ガイドピン
1k,1m 位置決めピン
2 カバー板
2a,2b,2f〜2i 孔
3,4,17,18 ねじ
5〜8 羽根
5a,6a,7a,8a 開口形成縁
9 第1固定子枠
10 第2固定子枠
10a,10b 位置決め孔
11 回転子
11a,11b,11c,11d 出力ピン
12,13 コイル
14 フレキシブルプリント配線板
15 ホール素子
16 ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形をした光路用の開口部を有していてカバー板との間に羽根室を構成しており羽根室側の面にはそれらを結ぶ線分が方形となる位置に四つのガイドピンを設けている地板と、永久磁石を有する回転子を備えていて該回転子の回転軸と前記開口部の中心との間にそれらを結ぶ線を対称軸として前記ガイドピンが二つずつ配置されるようにして前記地板に取り付けられており該回転子と一体に径方向位置に所定の角度間隔で設けられた四つの出力ピンを羽根室内に臨ませている電磁アクチュエータと、各々が開口形成縁と第1長孔と第2長孔とを有していて一方は前記対称軸と平行に形成されている第1長孔を前記対称軸の一方の側にある二つの前記ガイドピンに嵌合させ他方は前記対称軸と平行に形成されている第1長孔を前記対称軸の他方の側にある二つの前記ガイドピンに嵌合させており両者は各々の第2長孔を前記出力ピンのうちの第1出力ピンと第2出力ピンに別々に嵌合させていて前記回転子の往復回転によって前記対称軸と平行に互いに相反する方向へ往復作動させられる第1羽根及び第2羽根と、各々が開口形成縁と第1長孔と第2長孔とを有していて両者は各々の第1長孔を前記対称軸の両側にある前記ガイドピンの一つずつに嵌合させ且つ第2長孔を前記出力ピンのうち第3出力ピンと第4出力ピンに別々に嵌合させており前記回転子の往復回転によって前記対称軸と直交して互いに相反する方向へ往復作動させられる第3羽根及び第4羽根と、を備えており、前記4枚の羽根は、前記回転子の回転によって作動させられ、前記各開口形成縁の協働によって光路開口の大きさを相似形に変化させるようにしたことを特徴とする光学機器用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記四つの出力ピンが、前記回転子に略90度の角度間隔で設けられており、前記第1出力ピンと前記第2出力ピンとは互いに180度の角度間隔で設けられ、前記第3出力ピンと前記第4出力ピンも互いに180度の角度間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学機器用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1羽根の前記第2長孔と前記第2羽根の前記第2長孔とが、前記対称軸に対して直交するように形成されており、前記第3羽根の前記第2長孔と前記第4羽根の前記第2長孔とが、前記対称軸に対して平行に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第3羽根の前記第1長孔と前記第4羽根の前記第1長孔とのうちの少なくとも一方が、二つの長孔からなっており、該長孔の一方は、前記対称軸の一方の側にある二つの前記ガイドピンのいずれかに嵌合させ、該長孔の他方は、前記対称軸の他方の側にある二つの前記ガイドピンのいずれかに嵌合させていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学機器用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記4枚の羽根に形成されている前記開口形成縁は、各々、相反する方向へ作動する羽根に向けて略135度開くように形成された二つの端縁からなっていて、それらによって形成される光路開口の形状が八角形となるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学機器用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記電磁アクチュエータは、前記回転子が、固定子のコイルへの通電方向に対応して所定の角度範囲内でだけ往復回転させられるモータであって、固定子には、前記回転子の回転角度位置を検出する磁気感応型検出素子が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光学機器用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−31664(P2009−31664A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197642(P2007−197642)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】