説明

光学機器用遮光部材

【課題】実用的な遮光性が良好であるとともに、低光沢性、耐擦傷性に優れる光学機器用遮光部材を提供することを目的とする。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂とフィラーとを含む樹脂溶液吸収層を形成し、前記樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂は前記樹脂溶液吸収層を乾燥した状態で、遮光層塗布液に対して膨潤性あるいは溶解性を有するものであり、樹脂溶液吸収層を形成した後、前記樹脂溶液吸収層上に、バインダー樹脂、黒色微粒子及びフィラーを含む前記遮光層塗布液を塗布、乾燥し、遮光層を形成することを特徴とする光学機器用遮光部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光学機器のシャッターや絞り部材、レンズのギャップ調整材などに使用可能な光学機器用遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ等の各種光学機器に対する小型化、軽量化の要求により、金属材料により形成されていた光学機器のシャッター、絞り部材、レンズのギャップ調整材がプラスチック材料へと代わりつつある。このようなプラスチック材料の遮光部材としては、カーボンブラック、滑剤、微粒子及びバインダー樹脂を含有する遮光膜をフィルム基材の上に形成した遮光フィルムが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−274218号公報
【特許文献2】WO2006/016555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した従来の遮光部材では、遮光性、低光沢性(光写り込み防止性)、耐擦傷性のいずれかの性能に関して改善されたものはあったが、光学機器用遮光部材の遮光部材として、上記全ての性能を実用レベルで同時に満足するものは今まで無かった。
【0005】
例えば従来の技術例として、遮光性や遮光部材への光の写り込みが問題とされる場合、カーボンブラック等の黒色顔料を多量に添加して遮光性を十分なものとするか、フィラーを多量に添加して低光沢性を十分なものとしていたが、その場合には遮光塗膜中において、相対的にバインダー含有量が少なくなってしまい、耐擦傷性が劣ってしまったり、塗膜接着性が劣ってしまったりした。
【0006】
本発明は、光学機器用遮光部材に使用される遮光部材として、基本的な性能である、遮光性は実用レベルを維持しながら、低光沢性(写り込み防止性)、耐擦傷性(加工取り扱い時や使用時の傷つき防止性)を同時に良好にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂とフィラーとを含む樹脂溶液吸収層を形成し、前記樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂は前記樹脂溶液吸収層を乾燥した状態で、遮光層塗布液に対して膨潤性あるいは溶解性を有するものであり、樹脂溶液吸収層を形成した後、前記樹脂溶液吸収層上に、バインダー樹脂、黒色微粒子及びフィラーを含む前記遮光層塗布液を塗布、乾燥し、遮光層を形成することを特徴とする光学機器用遮光部材である。
【0008】
また、前記樹脂溶液吸収層は、バインダー樹脂とフィラーとを含む樹脂溶液吸収層塗布液を塗布、乾燥することにより形成されてなり、前記樹脂溶液吸収層塗布液の固形分付着量が4〜40g/m2であることを特徴とする光学機器用遮光部材である。
【0009】
また、前記遮光層塗布液の固形分付着量が2.5〜20g/m2であることを特徴とする光学機器用遮光部材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遮光部材は、上述の様な手段を取ることにより、光学機器用遮光部材として基本的な性能である遮光性は実用レベルを維持しながら、低光沢性(写り込み防止性)、耐擦傷性(加工取り扱い時や使用時の傷つき防止性)を同時に良好にすることができる。
【0011】
更に、本発明の遮光部材は、前記樹脂溶液吸収層上に前記遮光層を塗布により積層することによって簡易的に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の光学機器用遮光部材(以下、「遮光部材」という場合もある)の実施の形態ついて説明する。
【0013】
本発明は、基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂とフィラーとを含む樹脂溶液吸収層を形成し、前記樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂は前記樹脂溶液吸収層を乾燥した状態で、遮光層塗布液に対して膨潤性あるいは溶解性を有するものであり、樹脂溶液吸収層を形成した後、前記樹脂溶液吸収層上に、バインダー樹脂、黒色微粒子及びフィラーを含む前記遮光層塗布液を塗布、乾燥し、遮光層を形成することを特徴とする光学機器用遮光部材である。
【0014】
基材としては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アクリルフィルム、セルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素樹脂系フィルム等の合成樹脂フィルムが挙げられ、中でもポリエステルフィルムが好適に用いることができ、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れる点で好ましい。また耐熱用途での使用には、ポリイミドフィルムを用いることもできる。
【0015】
更に、基材として、透明なものはもちろん、発泡ポリエステルフィルムや、着色顔料等を含有させた合成樹脂フィルムを使用することもできる。この場合、上述の基材は、用途により適切なものを選択することができる。例えば、遮光部材として使用する際に、部材断面の合成樹脂フィルム部分においてレンズ等で集光された光が反射し悪影響を及ぼすため、高い遮光性が必要な場合には、黒色に着色された顔料が含有された合成樹脂フィルムを使用することができる。
【0016】
また、基材自体に遮光性があり軽量で剛性があることから、薄膜の金属板を用いてもよい。
【0017】
基材の厚みとしては用途により異なり、例えば、遮光部材の軽量化重視の用途では比較的薄いものが選択され、強度・剛性重視の用途では比較的厚いものが選択されるが、一般的には6〜250μmとすることが好ましい。
【0018】
また、基材上に形成される樹脂溶液吸収層との接着性を向上させる観点から、基材上に、必要に応じてアンカー処理、プラズマ処理、EB処理あるいはコロナ処理を行うこともできる。
【0019】
塗布により樹脂溶液吸収層を形成する場合には、まず合成樹脂フィルムからなる基材上に、バインダー樹脂とフィラーとを溶媒により混合させた樹脂溶液吸収層塗布液から形成される樹脂溶液吸収層を設ける。
【0020】
本発明における樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、アラビアゴムなどの天然樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリフェニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルフォルマール樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール三元共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ボリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、アルキド樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、エポキシポリオール樹脂等が用いられ、これらの一種あるいは二種類以上を混合して使用しても良い。また、これらのバインダー樹脂に、(ポリ)イソシアネート化合物、メラミン類、アミン類、イミダゾール類などの硬化剤を合せて使用しても良い。これらのバインダー樹脂の一種あるいは二種以上を混合して使用するか、あるいはこれらのバインダー樹脂と硬化剤とを組み合わせて、硬化の程度を調整することにより、樹脂溶液吸収層の膨潤性あるいは溶解性を調整できる。
【0021】
本発明において、樹脂溶液吸収層とは、樹脂溶液吸収層に含有されるバインダー樹脂が、その上に積層する遮光層塗布液の溶媒により膨潤あるいは溶解し、樹脂溶液吸収層に遮光層塗布液の樹脂溶液分(溶媒分とバインダー分)が吸収される性質を有する層である。
【0022】
従って、前記樹脂溶液吸収層に用いられるバインダー樹脂と、遮光層塗布液の溶媒とは、溶解度パラメーター(SP値)が近いものを選択して、樹脂溶液吸収層の膨潤性あるいは溶解性を調節することが好ましい。
【0023】
本発明において、樹脂溶液吸収層に遮光層塗布液を積層塗布、乾燥した時の塗膜状態としては、上述のように、樹脂溶液吸収層が一旦膨潤あるいは溶解した後、下層(樹脂溶液吸収層)と塗布された上層(遮光層)との界面は融合したまま成膜されると考えられる。
【0024】
前述のような樹脂溶液吸収層上に遮光層塗布液を積層塗布した時に、本発明の効果が得られる理由は定かではないが、積層する遮光層塗布液の溶媒のSP値が樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂のSP値と近い値の場合、樹脂溶液吸収層が膨潤あるいは溶解し、遮光層塗布液の樹脂溶液分(溶媒分とバインダー分)の一部を樹脂溶液吸収層が吸収することによると考えられる。
【0025】
そして、遮光層塗布液の樹脂溶液分の一部が下層に吸収されると、乾燥成膜される遮光層の少なくとも上部(表面側)はフィラー分と黒色微粒子分が多くなり、遮光層塗布液の樹脂溶液分が吸収され難い耐溶剤性のある基材に積層する時よりも、低光沢性の効果が顕著に得られると考えられる。
【0026】
また、遮光層塗布液の樹脂溶液分が下層(樹脂溶液吸収層)に吸収される時に、遮光層塗布液中の樹脂溶液分の全てが樹脂溶液吸収層に吸収されるわけではなく、遮光層塗膜中のフィラー分と黒色微粒子を保持できる程度には樹脂溶液分が遮光層中に残ると同時に、樹脂溶液吸収層と遮光層との界面付近では、膨潤あるいは溶解した樹脂溶液吸収層のバインダーと、遮光層のバインダーとが融合されて接着性が良好になり、更に膨潤あるいは溶解した樹脂溶液吸収層のバインダーが遮光層中のフィラー分と黒色微粒子を保持するように寄与する為に耐擦傷性も良好になっていると考えられる。
【0027】
更に本発明の積層構造では、上述の低光沢性と耐擦傷性の向上以外に、遮光層塗布液に含有させる黒色微粒子をカーボンブラックとした場合には、その遮光層塗布液のみを耐溶剤性のある合成樹脂フィルム基材に直接単層のみ塗布、乾燥した場合よりも帯電防止性に優れた遮光部材が得られた。この時の帯電防止性が向上する理由は定かではないが、遮光層塗布液の樹脂溶液分(溶媒およびバインダー成分)が樹脂溶液吸収層に吸収されると、必然的に塗膜の上部はカーボンブラックおよびフィラー成分が多く露出し易くなり(バインダー成分が少なくなり)帯電防止性が良好になると考えられる。
【0028】
本発明の樹脂溶液吸収層の膨潤性は、下層(樹脂溶液吸収層)が溶解してしまう程度でも本発明の効果は得られるが、下層が完全に溶解してしまう場合には、上層(遮光層)と下層とのバインダー樹脂の相溶性が悪い場合は塗布ムラが発生する危険性があるので、下層の表面が膨潤する程度の方が好ましい。
【0029】
次に、本発明の実施形態において、樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂にはフィラーを含ませる。
【0030】
樹脂溶液吸収層にフィラーを含有させることにより、遮光層塗布液の溶媒分あるいは樹脂溶液分の、樹脂溶液吸収層への吸収性、膨潤性が向上する。
【0031】
樹脂溶液吸収層にフィラーを含ませた場合の、樹脂溶液吸収層の吸収性、膨潤性が向上する理由は、フィラーを含有させることにより、樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂成分とフィラーとの間に微小な隙間が生じ、毛細管現象により溶媒等が浸透し易くなり、樹脂溶液吸収層が膨潤し易くなると考えられる。
【0032】
樹脂溶液吸収層に含ませることができるフィラーとしては、不定形、球状、針状、板状の形状にかかわらず、シリカ、アルミナ、珪酸アルミニウム、クレー、スメクタイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、合成ゼオライト等の無機系フィラーの他、架橋アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、架橋スチレン樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン樹脂ビーズ、シリコン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズ等の有機系フィラーが挙げられ、いわゆる体質顔料のように無色であっても、着色されていても良く、また、表面が導電剤で被覆されていても良く、これらを単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのフィラーの中でも、特にシリカが好適に用いることができる。
【0033】
樹脂溶液吸収層に含ませることができるフィラーの平均粒子径としては、好ましくは1〜12μm、より好ましくは2〜10μm、更に好ましくは3〜8μmが好適に用いることができる。
【0034】
フィラーの平均粒子径を1μm以上とすることにより、バインダー樹脂とフィラーとの隙間における毛細管現象による樹脂溶液吸収性、膨潤性を十分なものとすることができ、また、平均粒子径を12μm以下とすることにより、樹脂溶液吸収層表面が粗れ過ぎて毛細管現象による樹脂溶液吸収性、膨潤性が過多になることを防止できる。
【0035】
なお、本発明でいう平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD−7000など)で測定されるメディアン径(D50)を指す。黒色微粒子の他、滑剤などが添加される場合も同様である。
【0036】
前記樹脂溶液吸収層に含ませることができるフィラーの含有量の下限としては、樹脂溶液吸収層中、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上であり、5重量%以上とすることにより、樹脂溶液吸収性および膨潤性が良好になり本発明の効果が得やすくなる。フィラーの含有量の上限としては、樹脂溶液吸収層中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは40重量%以下であり、50重量%以下とすることにより、上記樹脂溶液吸収性および膨潤性が過多になることを防止しやすくなると同時に、樹脂溶液吸収層と合成樹脂フィルムからなる基材との接着性が劣ることを防止しやすい。
【0037】
本発明で用いられる、樹脂溶液吸収層塗布液あるいは遮光層塗布液の溶媒とは、塗布液が溶解系である時の溶剤を指す場合と、塗布液が分散系である時の分散媒を指す場合の両方を含み、水、アルコール系、エステル系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、ケトン系、エーテル系、グリコール系等の汎用溶媒を用いることができ、これらの一種か二種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
例えば本発明における塗布液を溶解系塗布液で使用する場合、その塗布液の溶媒はその塗布液のバインダーを溶解するものであれば前記のような溶媒を適宜選択できる。
【0039】
また、遮光層塗布液の溶媒に関しては、遮光層塗布液の溶媒のSP値と、下層である樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂のSP値との差の絶対値が5以内であることが好ましく、より好ましくは4以内、更に好ましくは3以内が好ましい。両者のSP値の差の絶対値を5以内にすることにより、遮光層塗布液を樹脂溶液吸収層上に積層塗布した時に、樹脂溶液液吸収層のバインダー樹脂が適度に膨潤あるいは溶解され、本発明の効果が得られやすい。
【0040】
その他、溶媒の選択に関しては、乾燥中に発生するクレーター現象やはじき現象を調整するために、沸点や蒸発速度が適切な溶媒を選択することが好ましい。
【0041】
樹脂溶液吸収層塗布液の固形分付着量(片面あたり)としては、4〜40g/m2が好ましく、より好ましくは5〜35g/m2、更に好ましくは6〜30g/m2であり、固形分付着量を4g/m2を以上にすることにより、遮光層塗布液を積層する時の溶媒で樹脂溶液吸収層が溶解し過ぎることによる塗布ムラを防止しやすくなり、また塗膜全体がほとんど遮光層のみの単層構造になってしまうことを防止しやすくなり、本発明の効果が得られやすい。また、固形分付着量を40g/m2以下とすることにより、樹脂溶液吸収層自体を厚膜塗布することによる、ゆず肌、ピンホール、クレーター等の塗工上の外観不良を防止しやすくできるとともに、製造速度低下による製造コスト上昇を抑えられる。
【0042】
本発明の遮光部材の塗膜構造は、合成樹脂フィルム基材上の樹脂溶液吸収層および遮光層を合算した塗膜全体において、塗膜全体の上部(表面側)と塗膜全体の下部(基材と接する側)とで、黒色微粒子の存在量は塗膜全体の上部の方が多くなっていると考えられる。従って、塗膜全体の下部には、黒色微粒子が少ないかあるいは存在しないかのどちらかであり、合成樹脂フィルム基材と樹脂溶液吸収層との接着性は良好となる。
【0043】
上述のような本発明の塗膜全体の構造は、塗膜の断面解析により、黒色微粒子の分布の違いで表せられる。
【0044】
塗膜断面の解析方法としては、断面のESCA分析(X線光電子分光分析)によるか、合成樹脂フィルム基材に塗膜が担持されたままミクロトーム等で断面切断し、顕微鏡による黒色微粒子の濃度差を観察する方法が考えられる。
【0045】
次に、樹脂溶液吸収層の上には、遮光層が積層される。遮光層は、バインダー樹脂、黒色微粒子、フィラーを含む遮光層塗布液から形成される。
【0046】
遮光層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化させて使用する場合は、イソシアネート化合物、イソシアネートプレポリマー、アミン類、イミダゾール等の硬化剤で硬化させて耐擦傷性等を良好にすることもでき、これら樹脂および硬化剤は、各々、1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0047】
遮光層に用いられるバインダー樹脂の含有量の下限としては、遮光層中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上であり、 バインダー樹脂の含有量を10重量%以上とすることにより、黒色微粒子やフィラーを十分保持できて、これらが脱落することを防止しやすい。遮光層に用いられるバインダー樹脂の含有量の上限としては、遮光層中、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、更に好ましくは60重量%以下であり、バインダー樹脂の含有量を70重量%以下とすることにより、黒色微粒子やフィラーの含有量が相対的に少なくなることによる遮光性不足や光沢性が高くなることを防止しやすい。
【0048】
次に、遮光層に含有される黒色微粒子は、バインダー樹脂を黒色に着色させ遮光性を付与させるためのものである。また、静電気による帯電を防止するために、導電剤あるいは帯電防止剤を適宜合わせて含有させることもできる。
【0049】
黒色微粒子としては、例えばカーボンブラック、チタンブラック等があり、中でもカーボンブラックは、遮光性と帯電防止性との両特性が同時に付与できるので好適に用いられる。
【0050】
遮光層に含有される黒色微粒子の平均粒子径としては、十分な遮光性を得るために1μm未満が好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。
【0051】
遮光層に含有される黒色微粒子の含有量の下限としては、遮光層中、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上であり、黒色微粒子の含有量を5重量%以上とすることにより、遮光層の遮光性を十分なものとすることができる。遮光層に含有される黒色微粒子の含有量の上限としては、好ましくは25重量%以下、より好ましくは22重量%以下、更に好ましくは20重量%以下であり、黒色微粒子の含有量を25重量%以下とすることにより、遮光層中のバインダー樹脂やフィラーの含有量が相対的に少なくなることによる、遮光層の耐擦傷性不良、樹脂溶液吸収層との密着性不良あるいは光沢性が高くなることを防止できる。
【0052】
次に、前記遮光層に含有されるフィラーとしては、シリカ、アルミナ、珪酸アルミニウム、クレー、スメクタイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の無機系フィラーの他、架橋アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、架橋スチレン樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン樹脂ビーズ、シリコン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズ等の有機系フィラーが挙げられ、いわゆる体質顔料のように無色であっても、着色されていても良く、また、表面が導電剤で被覆されていても良く、これらを単独であるいは2種以上を混合して使用しても良い。
【0053】
遮光層に含有されるフィラーは、上記のように、前述の樹脂溶液吸収層に含ませることができるフィラーと同様のものが使用できるが、それを添加する目的は樹脂溶液吸収層に添加する目的と異なり、表面に微細な凹凸を形成させることで入射光の反射を少なくし、表面の光沢度を低下させ、光学機器用遮光部材とした際の艶消し性を向上させるためのものである。
【0054】
遮光層に含有されるフィラーの平均粒子径としては、やはり樹脂溶液吸収層に含有させる場合と同様であり、好ましくは1〜12μm、より好ましくは2〜10μm、更に好ましくは3〜8μmが好適に用いられる。1μm以上とすることにより、遮光部材に対して大きい角度で入射(フィルムに対して垂直入射を入射角0度とする)した光に対しても低光沢性を示すことができ、12μm以下とすることにより、フィラーが大き過ぎて塗膜から脱落し易くなることを防ぐことができる。
【0055】
遮光層に含有されるフィラーの含有量の下限としては、遮光層中、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上であり、遮光層中、5重量%以上とすることにより、遮光層に微細な凹凸を形成させ、表面の光沢度を低下させることができる。遮光層に含有させるフィラーの含有量の上限としては、遮光層中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは40重量%以下であり、遮光層中、50重量%以下とすることにより、遮光層中の黒色微粒子やバインダー樹脂の含有量が相対的に少なくなることによる、遮光性不足や樹脂溶液吸収層との密着性不良を防止できる。
【0056】
遮光層の厚みに関しては、樹脂溶液吸収層に積層した場合は、界面が融合してしまうと判別し難く測定し難い。従って遮光層塗布液の固形分、比重およびウェット塗布量から算出される理論厚みで表わすか実際の付着量(g/m2)で表わすことが好ましい。
【0057】
遮光層塗布液の固形分付着量(片面あたり)としては、2.5〜20g/m2が好ましく、より好ましくは3.5〜19g/m2、更に好ましくは4.5〜18g/m2である。固形分付着量を2.5g/m2以上とすることにより、樹脂溶液吸収層の膨潤性が不十分になることを防止でき、更に、遮光性も十分なものとすることができる。また、固形分付着量を20g/m2以下とすることにより、遮光層塗布液の樹脂溶液分が、下層に吸収されてなる本発明の効果を顕著なものとすることができる。つまり遮光層が厚すぎる場合には、樹脂溶液吸収層が膨潤あるいは溶解して吸収したとしても、遮光層塗膜への影響(本発明の効果)が少なくなってしまうと考えられる。
【0058】
本発明における樹脂溶液吸収層の固形分付着量と遮光層の固形分付着量との比〔(遮光層固形分付着量g/m2)/(樹脂溶液吸収層固形分付着量g/m2)〕は、好ましくは0.1〜2.0、より好ましくは0.2〜1.5、更に好ましくは0.3〜1.0程度であると本発明の効果が得られやすい。
【0059】
本発明における樹脂溶液吸収層および遮光層の比重は、それらの層に使用される成分により異なるが、樹脂溶液吸収層ではおよそ0.9〜1.2の範囲であり、遮光層ではおよそ1.0〜1.3の範囲である。
【0060】
樹脂溶液吸収層および遮光層には、本発明の機能を損なわない限り、帯電防止剤、導電剤、硬化剤、滑剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、分散助剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0061】
例えば、樹脂溶液吸収層あるいは遮光層に、粒子状の滑剤を添加する場合は、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、タルク(滑石)、二硫化モリブデン等の無機系滑剤、ポリエチレンワックスやパラフィンワックス等の炭化水素系滑剤、シリコン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子等を用いることができ、いわゆる常温(室温)で固体の粒子状滑剤だと、滑り性と艶消し性との両方の効果が得られ易い。
【0062】
また、樹脂溶液吸収層あるいは遮光層に、常温で液状の滑剤としてフッ素系化合物やシリコーンオイルを用いることもできる。
【0063】
本発明の光学機器用遮光部材を塗布の方法により製造するには、まず、合成樹脂フィルムからなる基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及びフィラーを含み、溶媒あるいは分散媒により混合した樹脂溶液吸収層塗布液を、ディップコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、エアナイフコート等の従来公知の塗布方法により塗布し、乾燥させて成膜する。
【0064】
樹脂溶液吸収層塗布液の溶媒あるいは分散媒は、前述のように、水系、有機溶剤系、水系有機溶剤系の混合系が用いられる。なお水系とは、水単独のみならずアルコール類との混合系をも指すものとする。樹脂溶液吸収層塗布液には、前述の様に硬化剤等を添加することができ、その場合には、塗膜の架橋や硬化を行うために、適宜、成膜後に後加熱することもできる。
【0065】
また、合成樹脂フィルムから成る基材の両方の面に樹脂溶液吸収層を設ける場合は、両面とも同時に樹脂溶液吸収層を成膜してもよいし、片面ずつ成膜してもよい。なお、樹脂用液吸収層と合成樹脂フィルムから成る基材との接着性を上げる等のために、予め、アンカー層を塗布してもよい。
【0066】
次に、樹脂溶液吸収層の上に遮光層を積層する。先に成膜した樹脂溶液吸収層の上に、バインダー樹脂、黒色微粒子及びフィラーを含み、溶媒あるいは分散媒により混合した遮光層塗布液を、前述の従来公知の塗布方法により積層塗布し、乾燥させて成膜する。遮光層塗布液には、必要に応じて、滑剤や硬化剤等を添加することができる。硬化剤を添加する場合には、塗膜の架橋や硬化を行うために、適宜、成膜後に後加熱することもできる。
【0067】
また、合成樹脂フィルムから成る基材の両面に遮光層を設ける場合は、前述のように樹脂溶液吸収層も予め該基材の両面に成膜しておいて、各樹脂溶液吸収層の上に遮光層を積層させる。この時に、遮光層の塗布は、片面ずつ行っても、両面同時に行ってもよく、本発明の範囲であれば、両面の各層の処方は違えても構わない。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0069】
1.光学機器用遮光部材の作製
[実施例1〜10]
(1)樹脂溶液吸収層の作製
基材として、厚み38μmの黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーX30:東レ社)を用い、当該基材の両面に下記処方の樹脂溶液吸収層塗布液を、バーコート法により塗布、乾燥を行って樹脂溶液吸収層を作製した。ただし、両面での乾燥時の塗膜の固形分付着量(g/m2)は同じにして、各実施例に対しての固形分付着量は表1(片面の付着量を記載)のようにした。
【0070】
(2)遮光層積層による光学機器用遮光部材の作製
上記(1)の樹脂溶液吸収層それぞれの上に、下記処方の遮光層塗布液を、バーコート法により、表1の固形分付着量になるように積層塗布・乾燥を行って光学機器用遮光部材を作製した。
【0071】
<実施例1〜10の樹脂溶液吸収層塗布液>
・ポリビニルアセタール樹脂 8部
(エスレックKS-10:積水化学工業社、固形分100%)
・ポリビニルブチラール樹脂 8部
(エスレックBM-S:積水化学工業社、固形分100%)
・シリカフィラー 8部
(ACEMATT TS100:エボニック・デグサ・ジャパン社、平均粒子径4μm)
・メチルエチルケトン 38部
・トルエン 38部
【0072】
<実施例1〜10の遮光層塗布液>
・ポリエステルポリオール樹脂 43部
(バーノック11-408:DIC社、固形分70%)
・イソシアネート化合物 13部
(バーノックDN980:DIC社、固形分75%)
・カーボンブラック 18部
(トーカブラック#5500:東海カーボン社、平均粒子径25nm)
・シリカフィラー 5部
(ACEMATT TS100:エボニック・デグサ・ジャパン社、平均粒子径4μm)
・シリコンフィラー 20部
(X−52−1621:信越シリコーン社、平均粒子径5μm)
・分散剤 17部
(アジスパーPB-821:味の素ファインテクノ社、固形分100%)
・PGM
(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 300部
【0073】
[実施例11]
樹脂溶液吸収層塗布液を下記の処方とした以外は、実施例3と同様にして、実施例11の光学機器用遮光部材を作製した。
【0074】
<実施例11の樹脂溶液吸収層塗布液>
・ポリウレタンエマルジョン 81部
(パテラコールIJ-21:DIC社、固形分17.9%)
・シリカフィラー 2部
(ACEMATT TS100:エボニック・デグサ・ジャパン社、平均粒子径4μm)
・分散剤 1部
(Disperbyk190:ビックケミー社、固形分100%)
・イソプロピルアルコール 12部
・水 4部
【0075】
[実施例12]
樹脂溶液吸収層塗布液を下記の処方とした以外は、実施例3と同様にして、実施例12の光学機器用遮光部材を作製した。
【0076】
<実施例12の樹脂溶液吸収層塗布液>
・ポリビニルアセタール樹脂 6部
(エスレックKS-10:積水化学工業社、固形分100%)
・ポリビニルブチラール樹脂 6部
(エスレックBM-S:積水化学工業社、固形分100%)
・シリカフィラー 8部
(ACEMATT TS100:エボニック・デグサ・ジャパン社、平均粒子径4μm)
・架橋アクリル樹脂ビーズ 4部
(ガンツパールGM0401S:ガンツ化成社、平均粒子径4μm)
・メチルエチルケトン 38部
・トルエン 38部
【0077】
[実施例13]
樹脂溶液吸収層塗布液を下記の処方とした以外は、実施例3と同様にして、実施例13の光学機器用遮光部材を作製した。
【0078】
<実施例13の樹脂溶液吸収層塗布液>
・ポリビニルブチラール樹脂 8部
(エスレックBH-S:積水化学工業社、固形分100%)
・ポリビニルブチラール樹脂 8部
(エスレックBM-S:積水化学工業社、固形分100%)
・シリカフィラー 8部
(ACEMATT TS100:エボニック・デグサ・ジャパン社、平均粒子径4μm)
・メチルエチルケトン 38部
・トルエン 38部
【0079】
[比較例1]
樹脂溶液吸収層塗布液を、フィラーを添加しない下記の処方とした以外は、実施例3と同様にして、比較例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0080】
<比較例1の樹脂溶液吸収層塗布液>
・ポリビニルアセタール樹脂 8部
(エスレックKS-10:積水化学工業社、固形分100%)
・ポリビニルブチラール樹脂 8部
(エスレックBM-S:積水化学工業社、固形分100%)
・メチルエチルケトン 42部
・トルエン 42部
【0081】
[比較例2]
実施例3で使用した遮光層塗布液を、実施例3と同様の遮光層固形分付着量で、基材の両面に塗布、乾燥後、それらの上に、実施例3で使用した樹脂溶液吸収層塗布液を、実施例3と同様の樹脂溶液吸収層固形分付着量になるように塗布、乾燥して、下層および上層が実施例3と逆構造となる比較例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0082】
[比較例3]
実施例3で使用した遮光層塗布液を、実施例3と同様の遮光層固形分付着量で、基材の両面に直接塗布、乾燥して、比較例3の光学機器用遮光部材を作製した。
【0083】
[参考例1]
実施例3で使用した樹脂溶液吸収層塗布液を、実施例3と同様の樹脂溶液吸収層固形分付着量で、基材の両面に塗布、乾燥して、参考例1のフィルムとした。
【0084】
2.評価
以上のようにして実施例1〜14及び比較例1〜3で得られた光学機器用遮光部材、更に参考例1で得られたフィルムについて、下記の方法で物性の評価を行った。それぞれの結果を表1に示す。
【0085】
(1)遮光性
上記実施例1〜13及び比較例1〜3で得られた光学機器用遮光部材を、JIS K7651:1988に基づき光学濃度計〔TD−904、UVフィルター(Duv):グレタグマクベス社〕を用いて光学透過濃度を測定した。光学透過濃度が4.0を超えたものは光学機器用遮光部材として十分な透過濃度と認められる。
【0086】
(2)光沢性
実施例1〜13及び比較例1〜3で得られた光学機器用遮光部材、更に参考例1で得られたフィルムについて、JIS−Z8741:1997に基づき、測定角度60度で光沢度(鏡面光沢度、%)を測定した。この時の光沢度を「光沢度(前)」と表記した。この光沢度が低いほど初期状態の光沢性が良好であると認められ、光沢度(前)が2以下であれば光学機器用遮光部材として十分な光沢性と認められる。
【0087】
(3)耐擦傷性
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた光学機器用遮光部材の遮光層表面について、耐擦試験機(NUS−ISO−1、スガ試験機社)を使用して、可動部と固定部に同じサンプル片を設置し、荷重500g、100往復の条件で耐擦試験を行った。その耐擦試験後の固定部に設置したサンプル片表面の光沢度(鏡面光沢度、%)を測定し、「光沢度(後)」とし、「〔光沢度(後)−光沢度(前)」の差を計算した。この差が小さいほど耐擦傷性が良好であると認められ、その差が1以内であれば光学機器用遮光部材として実用上十分であると認められる。
【0088】
(4)帯電防止性
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた光学機器用遮光部材の表面抵抗率(Ω)を、JIS−K6911:1995に基づき測定した。表面抵抗率が10Ωオーダー以下であれば光学機器用遮光部材として実用上問題となる塵埃の付着等がなく、良好であると認められる。
【0089】
【表1】

【0090】
表1の結果より、実施例1〜6では、遮光層の固形分付着量をほぼ一定にして、樹脂溶液吸収層の固形分付着量を変化させたものは、いずれも遮光性であるDuv、初期の光沢性である光沢度(前)、耐擦傷性である「光沢度(後)−光沢度(前)」、更に帯電防止性である表面抵抗値は良好なものであった。ただし実施例6に関しては、諸性能は良好であったが、樹脂溶液吸収層が厚膜のため、乾燥時間が他のものより長く必要だった。
【0091】
また、実施例7〜10では、樹脂溶液吸収層の固形分付着量をほぼ一定にして、遮光層の固形分付着量を変化させたが、やはり上記各々の性能は良好であった。ただし実施例7に関しては、遮光層が薄膜のため、他のものより遮光性が低めであり、光沢性も高めであった。
【0092】
更に、実施例11および13では、樹脂溶液吸収層のバインダーを変化させ、また、実施例12では樹脂溶液吸収層のフィラー量を多く添加したが、いずれも上記諸性能は良好であった。
【0093】
一方、比較例1では、樹脂溶液吸収層にフィラーを添加しなかったので、遮光層塗布液を積層塗布した時に、その樹脂溶液分の吸収性が悪かったと考えられ、光沢性、耐擦傷性、帯電防止性も悪かった。
【0094】
また、比較例2では、樹脂溶液吸収層と遮光層とを、上下逆にして積層したが、遮光層には樹脂溶液吸収層の樹脂溶液分がほとんど吸収されず、上記各々の性能は悪かった。
【0095】
更に、比較例3では、遮光層塗付液を基材に直接塗付したが、遮光層一層のみでは上記各々の性能は不十分であった。
【0096】
なお、参考例1では、樹脂溶液吸収層のみの光沢性を測定したが、樹脂溶液吸収層一層のみでは光沢性は低くなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂とフィラーとを含む樹脂溶液吸収層を形成し、前記樹脂溶液吸収層のバインダー樹脂は前記樹脂溶液吸収層を乾燥した状態で、遮光層塗布液に対して膨潤性あるいは溶解性を有するものであり、樹脂溶液吸収層を形成した後、前記樹脂溶液吸収層上に、バインダー樹脂、黒色微粒子及びフィラーを含む前記遮光層塗布液を塗布、乾燥し、遮光層を形成することを特徴とする光学機器用遮光部材。
【請求項2】
前記樹脂溶液吸収層は、バインダー樹脂とフィラーとを含む樹脂溶液吸収層塗布液を塗布、乾燥することにより形成されてなり、前記樹脂溶液吸収層塗布液の固形分付着量が4〜40g/m2であることを特徴とする請求項1記載の光学機器用遮光部材。
【請求項3】
前記遮光層塗布液の固形分付着量が2.5〜20g/m2であることを特徴とする請求項1または2記載の光学機器用遮光部材。

【公開番号】特開2012−133071(P2012−133071A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284175(P2010−284175)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】