説明

光学機能層形成用組成物、および、光学機能フイルムの製造方法

【課題】本発明は、透明性に優れた光学機能層を形成することができる光学機能層形成用組成物を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、棒状化合物と、アルコール系溶媒および他の有機溶媒からなる混合溶媒とを含む光学機能層形成用組成物であって、上記混合溶媒中のアルコール系溶媒量が5質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする、光学機能層形成用組成物を提供することにより上記目的を達成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として液晶表示装置等に用いられる光学機能フイルムを構成する光学機能層の形成に用いられる光学機能層形成用組成物に関するものであり、より詳しくはランダムホモジニアス配向を形成した棒状化合物を含み、透明性に優れた光学機能層を形成するために好適に用いられる光学機能層形成用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のC
RTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置としては、図3に示すように、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル104とを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光(図中、矢印で模式的に図示)のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル104は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
【0003】
ここで、このような液晶表示装置100において、液晶セル104が、負の誘電異方性
を有するネマチック液晶が封止されたVA(Vertical Alignment)方式(図中、液晶のダイレクターを点線で模式的に図示)を採用している場合を例に挙げると、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光は、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を透過する際に、位相シフトされずに透過し、出射側の偏光板102Bで遮断される。これに対し、液晶セル104のうち駆動状態のセルの部分を透過する際には、直線偏光が位相シフトされ、この位相シフト量に応じた量の光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される。これにより、液晶セル104の駆動電圧をセル毎に適宜制御することにより、出射側の偏光板102B側に所望の画像を表示することができる。なお、液晶表示装置100としては、上述したような光の透過および遮断の態様をとるものに限らず、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分から出射された光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される一方で、駆動状態のセルの部分から出射された光が出射側の偏光板102Bで遮断されるように構成された液晶表示装置も考案されている。
【0004】
ところで、上述したようなVA方式の液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を直線偏光が透過する場合を考えると、液晶セル104は複屈折性を有しており、厚さ方向の屈折率と面方向の屈折率とが異なるので、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル104の法線に沿って入射した光は位相シフトされずに透過するものの、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル104の法線から傾斜した方向に入射した光は液晶セル104を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。この現象は、液晶セル104内で垂直方向に配向した液晶分子が、正のCプレートとして作用することに起因したものである。なお、液晶セル104を透過する光(透過光)に対して生じる位相差の大きさは、液晶セル104内に封入された液晶分子の複屈折値や、液晶セル104の厚さ、透過光の波長等にも影響される。
【0005】
以上の現象により、液晶セル104内のあるセルが非駆動状態であり、本来的には直線偏光がそのまま透過され、出射側の偏光板102Bで遮断されるべき場合であっても、液晶セル104の法線から傾斜した方向に出射された光の一部が出射側の偏光板102Bから洩れてしまうことになる。このため、上述したような従来の液晶表示装置100においては、正面から観察される画像に比べて、液晶セル104の法線から傾斜した方向から観察される画像の表示品位が主にコントラストが低下することが原因で悪化するという問題(視野角依存性の問題)があった。
【0006】
上述したような従来の液晶表示装置100における視野角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されており、その代表的な方法として、光学機能フイルムを用いる方法がある。光学機能フイルムを用いる方法は、図3に示すように所定の光学特性を有する光学機能フイルム40を、液晶セル104と偏光板102Bとの間に配置することにより、視野角性の問題を改善する方法である。このような視野角性の問題を改善するために用いられる光学機能フイルムには、屈折率異方性を示す位相差フイルムが用いられており、上記の液晶表示装置の視野角依存性を改善する手段として広く用いられるに至っている。
【0007】
従来、上記位相差フイルムとしては、図2に示すように任意の透明基材21上に配向膜22を設け、さらに当該配向膜22上に液晶分子を有する光学機能層23を形成し、上記配向膜の配向規制力により上記液晶分子を配向させて所望の屈折率異方性を発現させる構成を有するもの一般的である。このような位相差フイルムとしては、例えば特許文献1または特許文献2に開示されているように、コレステリック規則性の分子構造を有する光学機能層(複屈折性を示す光学機能層)を配向膜を有する基材上に形成した位相差フイルムが開示されている。また、特許文献3には、円盤状化合物からなる光学機能層(複屈折性を示す光学機能層)を配向膜を有する基材上に形成した位相差フイルムが開示されている。
【0008】
上記位相差フイルムは、液晶表示装置の液晶セルで生じる位相差を相殺するように、光学機能層の屈折率異方性を適宜設計することにより、液晶表示装置の視角依存性の問題を大幅に改善することができる点において有用である。しかしながら、従来の位相差フイルムは、上記液晶分子を配向させるための配向膜を必須の構成としていたことから、上記配向膜と位相差との密着性に問題があった。
【0009】
このような問題点に対し、本発明者らは配向膜を用いることなく所望の光学特性を発現できる位相差フイルムとして、基材と、上記基材上に直接形成され、ランダムホモジニアス配向した棒状化合物を有する光学機能層とを有する位相差フイルムを開発している。このような配向膜を有さない位相差フイルムは、光学機能層と基材との密着性に優れ、かつ、上記ランダムホモジニアス配向した棒状化合物を有する光学機能層が負のCプレートとしての光学特性の発現性に優れる点において有用であり、耐久性や光学特性の安定性の点において従来の位相差フイルムを凌ぐ品質を備えるものとして着目されている。
【0010】
しかしながら、上記のような配向膜を有さない位相差フイルムは、通常、負のCプレートとしての性質を有する基材上に、上記棒状化合物を含む光学機能層形成用組成物を塗布することにより形成するが、従来、用いられてきた光学機能層形成用組成物では、均質なランダムホモジニアス配向を形成することが困難な場合があり、光学機能層が白濁してしまう可能性があるといった問題点があった。
【0011】
【特許文献1】特開平3−67219号公報
【特許文献2】特開平4−322223号公報
【特許文献3】特開平10−312166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、透明性に優れた光学機能層を形成することができる光学機能層形成用組成物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、棒状化合物と、アルコール系溶媒および他の有機溶媒からなる混合溶媒とを含む光学機能層形成用組成物であって、上記混合溶媒中のアルコール系溶媒量が、5質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする光学機能層形成用組成物を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記混合溶媒中に上記範囲内でアルコール系溶媒を含むことにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成した際に、白濁のない、透明性に優れた光学機能層を形成することができる。
【0015】
上記発明においては、上記光学機能層形成用組成物が上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成するために用いられるものであることが好ましい。上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層は、配向膜が存在しなくても負のCプレートとしての光学特性を発現できるため、例えば、基板上に本発明の光学機能層形成用組成物を直接塗布して光学機能層を形成することが可能となり、これにより基板との密着性に優れた光学機能層を形成することができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記棒状化合物が重合性官能基を有するものであることが好ましい。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、配列安定性と光学特性とに優れた光学機能層を形成できるからである。
【0017】
また上記発明においては、上記棒状化合物が液晶性材料であることが好ましい。上記棒状化合物が液晶性材料であることにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、単位厚み当たりの光学特性の発現性に優れた光学機能層を形成できるからである。
【0018】
さらに上記発明においては、上記液晶性材料がネマチック相を示す材料であることが好ましい。上記液晶性材料がネマチック相を示す材料であることにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、棒状化合物がより均質なランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成することができるからである。
【0019】
本発明は、負のCプレートとしての性質を有する基材と、上記光学機能層形成用組成物とを用い、上記基材上に上記光学機能層形成用組成物を塗布することにより、基材と、上記基材上に直接形成され、ランダムホモジニアス配向を形成した棒状化合物を含む光学機能層とを有する光学機能フイルムを製造することを特徴とする光学機能フイルムの製造方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、上記光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成することにより、透明性に優れた光学機能層を有する光学機能フイルムを製造することができる。
また、上記光学機能層を基材上に直接形成することにより、光学機能層と基材との密着性に優れた光学機能フイルムを製造することができる。
さらに、本発明により製造される光学機能フイルムの光学機能層においては、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成しているため、本発明により製造される光学機能フイルムを光学特性の発現性、特に負のCプレートとして作用する光学特性の発現性に優れたものにできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学機能層形成用組成物によれば、透明性に優れた光学機能層を形成することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の光学機能層形成用組成物、および、光学機能フイルムの製造方法について詳細に説明する。
【0023】
A.光学機能層形成用組成物
まず、本発明の光学機能層形成用組成物について説明する。本発明の光学機能層形成用組成物は、棒状化合物と、アルコール系溶媒および他の有機溶媒からなる混合溶媒とを含むものであって、上記混合溶媒中のアルコール系溶媒量が5質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明によれば、上記混合溶媒中に上記範囲内でアルコール系溶媒を含むことにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成した際に、白濁のない、透明性に優れた光学機能層を得ることができる。
【0025】
本発明の光学機能層形成用組成物において、上記混合溶媒中にアルコール系溶媒が上記の範囲内で含まれることによって、白濁を抑制される機構については明らかではないが、次のような機構によるものであると考えられる。すなわち、本発明の光学機能層形成用組成物中に含まれる棒状化合物はアルコール系溶媒に不溶であるため、混合溶媒中にアルコール系溶媒が存在することにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成した際に、上記棒状化合物の面内配向を促進することができる。このようなことから、棒状化合物の配列不良を抑制できる結果、光学機能層の白濁を防止できるものと考えられる。
【0026】
本発明においては上記混合溶媒中のアルコール系溶媒の含有量を、5質量%〜20質量%の範囲内と定めるが、このような範囲に定めるのは次の理由に基づくものである。すなわち、アルコール系溶媒量が上記範囲よりも少ないと、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成した際に、光学機能層が白濁してしまう可能性があるからである。一方、アルコール系溶媒量が上記範囲よりも多いと、本発明の光学機能層形成用組成物において、後述する棒状化合物を所望の濃度で溶解できなくなる可能性があるからである。
【0027】
なお、本発明における上記混合溶媒中のアルコール系溶媒量としては、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。このようなガスクロマトグラフィーの測定条件としては、例えば、以下の条件を例示できる。
(1)測定装置 島津製作所
(2)検出器 FID
(3)カラム SBS−200 3m
(4)カラム温度 100℃
(5)インジェクション温度 150℃
(6)キャリアガス He 150kPa
(7)水素圧 60kPa
(8)空気圧 50kPa
【0028】
また、本発明の光学機能層形成用組成物は、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成するために用いられることが好ましいものである。棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層は、負のCプレートとして作用する光学特性の発現性に優れることから、配向膜を用いることなく光学特性の発現性に優れた光学機能層を形成できるからである。また、配向膜を必要としないことから、例えば、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、基材上に光学機能層を直接形成することにより、基材と光学機能層との密着性に優れた光学機能フイルムを得ることができるからである。
【0029】
上記ランダムホモジニアス配向とは本発明の光学機能層形成用組成物を用いて形成した光学機能層に、負のCプレートとしての光学特性を付与する棒状化合物の配列形態の一つである。従来、負のCプレートとしての光学特性を発現する棒状化合物の配列形態としては、コレステリック構造を有する配列形態が一般的であったが、上記ランダムホモジニアス配向はコレステリック構造を有さない特徴を有するものである。
【0030】
上記ランダムホモジニアス配向は、少なくとも、次の3つの特徴を有するものである。すなわち、上記ランダムホモジニアス配向は、
第1に光学機能層の表面に対して垂直方向から光学機能層を正視した場合において、棒状化合物の配列方向がランダムであること(以下、単に「不規則性」と称する場合がある。)、
第2に光学機能層において棒状化合物が形成するドメインの大きさが可視光領域の波長よりも小さいこと(以下、単に「分散性」と称する場合がある)、
第3に光学機能層において棒状化合物が面内配向していること(以下、単に「面内配向性」と称する場合がある。)、
を少なくとも備えるものである。
【0031】
次に、上記ランダムホモジニアス配向について図を参照しながら説明する。図1は、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて作成した光学機能層を有する光学機能フイルムの一例を示す概略図である。以下、上記ランダムホモジニアス配向について説明するために、図1(a),(b)に例示するような基材1上に、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて形成した光学機能層2を有する光学機能フイルム10を参照する。なお、図1(c)は、図1(a)、(b)に示す光学機能フイルム10の光学機能層2の表面に対して垂直方向であるAの方向から正視した場合の概略図である。
【0032】
まず、上記「不規則性」について図1(c)を参照しながら説明する。上記「不規則性」は、図1(c)に示すように、光学機能層2において棒状化合物3がランダムに配列していることを示すものである。
ここで、本発明においては上記棒状化合物3の配列方向を説明するのに、図1(c)中のaで表す分子長軸方向(以下、分子軸と称する。)を基準として考えるものとする。したがって、上記棒状化合物3の配列方向がランダムであることは、上記光学機能層2に含まれる棒状化合物3の分子軸aがランダムに向いていることを意味する。
【0033】
図1(c)に例示するような配列状態の他に、棒状化合物がコレステリック構造を有する場合であっても、上記分子軸aの方向が全体としてランダムになるため、形式的には上記「不規則性」に該当するが、上述したとおり、上記「不規則性」には、コレステリック構造に起因する形態は含まないものとする。
【0034】
次に、上記「分散性」について図1(a)を参照しながら説明する。上記「分散性」は、図1(a)に示すように、光学機能層2において棒状化合物3がドメインbを形成している場合に、ドメインbの大きさが可視光領域の波長よりも小さいことを示すものである。上記ランダムホモジニアス配向においては、上記ドメインbの大きさが小さい程好ましいものであり、棒状化合物が単分子で分散している状態が最も好ましいものである。
【0035】
次に、上記「面内配向性」について図1(a)を参照しながら説明する。上記「面内配向性」は、図1(a)に示すように、光学機能層2において棒状化合物3が、分子軸aを光学機能層3の法線方向Aに対して略垂直になるように配向していることを意味する。上記「面内配向性」としては、図1(a)に示すように、上記光学機能層2におけるすべての棒状化合物3の分子軸aが上記法線方向Aに対して略垂直になっている場合のみを意味するものではなく、例えば図1(b)に示すように、上記光学機能層2に分子軸a’が上記法線方向Aと垂直でない棒状化合物3が存在していたとしても、光学機能層3中に存在する棒状化合物3の分子軸aの平均的な方向が上記法線方向Aに対して略垂直である場合を含むものである。
【0036】
上記ランダムホモジニアス配向は、このような、少なくとも「不規則性」、「分散性」および「面内配向性」を示すことを特徴とするものであるが、本発明の光学機能層形成用組成物により製造された光学機能層が、これらの特徴を有することについては、以下の方法により確認することができる。
【0037】
まず、上記「不規則性」の確認方法について説明する。上記「不規則性」は、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層の面内レターデーション(Re)評価、および、コレステリック構造に起因する選択反射波長の有無を評価することにより確認することができる。
すなわち、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層の面内レターデーション(Re)評価により棒状化合物がランダムに配向をしていることを確認でき、選択反射波長の有無により棒状化合物がコレステリック構造を形成していないことを確認することができる。
【0038】
上記棒状化合物がランダムに配向していることは、本発明の光学機能層形成用組成物から形成される光学機能層の面内レターデーション(Re)の値が、上記棒状化合物の配向状態がランダムであることを示す範囲内であることにより、確認することができる。なかでも、本発明においては上記光学機能層の面内レターデーション(Re)が0nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。ここで、上記面内レターデーション(Re)は、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率Nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率Nyと、上記光学機能層の厚みd(nm)とにより、Re=(Nx−Ny)×dの式で表される値である。
【0039】
ここで、面内レターデーション(Re)により上記棒状化合物がランダムに配列していることを確認できるのは、次の理由に基づくものである。すなわち、面内レターデーション(Re)は上記定義式からも明らかなように、面内方向での屈折率差を示すパラメーターである。本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層において上記棒状化合物が一方向に規則性を有して配列している場合には、特定方向の屈折率が大きくなるため、上記屈折率差が大きくなる傾向を有する。一方、上記棒状化合物がランダムに配列している場合は、上記光学機能層の面内において特定方向の屈折率が大きくなるということが生じないため、上記屈折率差は小さくなる傾向を有する。したがって、このような屈折率差を示す面内レターデーション(Re)を評価することにより、上記「不規則性」を評価できるのである。
【0040】
上記光学機能層のReは、例えば、光学機能フイルムのReから光学機能層以外の層が示すReを差し引くことにより求めることができる。すなわち、光学機能フイルム全体、および、光学機能フイルムから光学機能層を切除したものについてRe測定し、前者のReから後者のReを差し引くことにより光学機能層のReを求めることができる。Reは、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができる。
【0041】
上記棒状化合物がコレステリック構造を有しないことは、例えば、株式会社島津製作所製紫外可視近赤外分光光度計(UV−3100等)を用い、本発明における光学機能層が、選択反射波長を有していないことを確認することにより評価できる。コレステリック構造を有する場合は、その特徴としてコレステリック構造の螺旋ピッチに依存する選択反射波長を有するからである。
【0042】
次に、上記「分散性」の確認方法について説明する。上記「分散性」は、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層のヘイズ値が、上記棒状化合物のドメインの大きさが可視光領域の波長以下であることを示す範囲内であることにより確認することができる。なかでも本発明においては、上記光学機能層のヘイズ値が0%〜5%の範囲内であることが好ましい。ここで、上記ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定した値を用いるものとする。
【0043】
ここで、光学機能層のヘイズ値は、例えば、光学機能フイルムのヘイズ値から光学機能層以外の層のヘイズ値を差し引くことにより求めることができる。すなわち、光学機能フイルム全体、および、光学機能フイルムから光学機能層を切除したものについてヘイズ値を測定し、前者のヘイズ値から後者のヘイズ値を差し引くことにより光学機能層のヘイズ値を求めることができる。上記ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定した値を用いるものとする。
【0044】
ここで、ヘイズにより上記「分散性」を有していること、すなわち、上記棒状化合物が形成するドメインの大きさが可視光領域の波長よりも小さいことを確認できるのは、次の理由に基づくものである。すなわち、上記棒状化合物がドメインを形成している場合に、そのドメインの大きさが可視光の波長よりも大きい場合には、上記光学機能層において可視光が散乱されるため、光学機能層が白濁する傾向にある。したがって、可視光領域における上記光学機能層のヘイズを測定することにより上記「分散性」を評価できるのである。
【0045】
上記ドメインの具体的な大きさとしては、可視光の波長以下、すなわち380nm以下であるであることが好ましく、なかでも350nm以下であることが好ましく、特に200nm以下であることが好ましい。なお、本発明においては上記棒状化合物が単分子分散していることが好ましいため、上記ドメインの大きさの下限値は、棒状化合物の単分子の大きさである。このようなドメインの大きさは、偏光顕微鏡や、AFM、SEM、またはTEMにより光学機能層を観察することにより評価することができる。
【0046】
次に、上記「面内配向性」の確認方法について説明する。上記「面内配向性」は、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層の面内レターデーション(Re)の値が上述した範囲にあること、および、光学的に負のCプレートとしての性質を示す厚み方向のレターデーション(Rth)値を有することにより確認することができる。なかでも上記厚み方向レターデーション(Rth)は、50nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。ここで、上記厚み方向のレターデーション(Rth)は、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率Nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率Nyと、厚み方向の屈折率Nzと、上記光学機能層の厚みd(nm)とにより、Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×dの式で表される値である。ここで、本発明におけるRth値は、上記式で表される値の絶対値を指すものとする。
【0047】
ここで、面内レターデーション(Re)および厚み方向のレターデーション(Rth)により、本発明の光学機能層形成用組成物から形成された光学機能層が、上記「面内配向性」を有していることを確認できるのは次に理由に基づくものである。すなわち、厚み方向のレターデーション(Rth)は上記定義式からも明らかなように、面内方向の屈折率の平均値と、厚み方向の屈折率との差に起因するパラメーターである。上述したように上記光学機能層の面内レターデーション(Re)の値は上記「不規則性」から一定の範囲内の値を示すものであるため、上記厚み方向のレターデーション(Rth)の値は、厚み方向の屈折率(Nz)に依存することになる。ここで、厚み方向の屈折率(Nz)は上記棒状化合物が面内配向していることにより大きくなる傾向があり、この場合、厚み方向のレターデーション(Rth)の値は小さくなる傾向になる。したがって、上記光学機能層の厚み方向のレターデーション(Rth)の値が上記範囲内であることにより、上記「面内配向性」を評価できるのである。
【0048】
上記光学機能層の厚み方向のレターデーション(Rth)としては、例えば、光学機能フイルムのRthから光学機能層以外の層が示すRthを差し引くことにより求めることができる。すなわち、光学機能フイルム全体、および、光学機能フイルムから光学機能層を切除したものについてRth測定し、前者のRthから後者のRthを差し引くことにより光学機能層のRthを求めることができる。Rthは、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができる。
【0049】
本発明の光学機能層形成用組成物は、以上のような特徴を有するランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成するために好適に用いられるものである。また、本発明の光学機能層形成用組成物は、アルコール系溶媒を含有するため上記ランダムホモジニアス配向を形成した棒状化合物を含む光学機能層を形成した場合に、より透明性に優れた光学機能層を形成することができる。
【0050】
本発明の光学機能層形成用組成物は、棒状化合物と、アルコール系溶媒および他の有機溶媒からなる混合溶媒とを含むものである。以下、本発明の光学機能層形成用組成物の各構成について詳細に説明する。
【0051】
1.混合溶媒
まず、本発明の光学機能層形成用組成物を構成する混合溶媒について説明する。本発明に用いられる混合溶媒は、アルコール系溶媒と、他の有機溶媒とからなるものである。
【0052】
(1)アルコール系溶媒
上記混合溶媒に用いられるアルコール系溶媒について説明する。本発明に用いられるアルコール溶媒は、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成した際に、光学機能層が白濁することを防止する機能を有するものである。
【0053】
本発明における混合溶媒中のアルコール系溶媒量は、5質量%〜20質量%の範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。ここで、上記アルコール系溶媒量の定量方法に関しては、上述した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0054】
本発明に用いられるアルコール系溶媒は、後述する基材を侵食しないものであれば特に限定されるものではない。このようなアルコール系溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を混合して用いても良い。
【0055】
本発明に用いられるアルコール系溶媒は、分子内に含まれるOH基の数が1つである一価アルコールであっても良く、OH基の数が2以上である多価アルコールであっても良いが、なかでも一価アルコールを用いることが好ましい。
【0056】
また、本発明に用いられるアルコール系溶媒は、一級アルコール、二級アルコール、および三級アルコールのいずれであってもよいが、なかでも一級アルコールを用いることが好ましい。
【0057】
さらに、本発明に用いられるアルコール系溶媒としては、脂肪族飽和アルコール、脂肪族不飽和アルコール、脂環族アルコール、芳香族アルコール、複素環式アルコールを例示することができるが、本発明においては、脂肪族飽和アルコールを用いることが好ましい。
上記脂肪族飽和アルコールとしては、低級脂肪族飽和アルコールを用いることが好ましく、より具体的には炭化水素鎖を構成する炭素の数が、1〜6の範囲内であることが好ましく、特に3〜5の範囲内であることが好ましい。上記炭素数を有する低級脂肪族飽和アルコールとしては、炭化水素鎖が直鎖状のものと、側鎖を有するものとを挙げることができるが、本発明においていずれの低級脂肪族飽和アルコールであっても好適に用いることができる。
【0058】
上記アルコール系溶媒のなかでも、本発明に用いることが好ましいアルコール系溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等を挙げることができる。なかでも本発明においては、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコールがより好適に用いられる。
【0059】
(2)有機溶媒
次に本発明における混合溶媒を構成する有機溶媒について説明する。本発明における有機溶媒は、後述する棒状化合物を所望の濃度に溶解する機能を有するものである。本発明に用いられる有機溶媒としては、単一溶媒からなるものであってもよく、複数の溶媒の混合溶媒であっても良い。
【0060】
本発明に用いられる有機溶媒としては、後述する棒状化合物を所望の濃度に溶解できるものであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒:クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒;酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を例示することができる。なかでも本発明においては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノンを好適に用いることができる。
【0061】
2.棒状化合物
次に本発明の光学機能層形成用組成物を構成する棒状化合物について説明する。本発明に用いられる棒状化合物は、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて形成される光学機能層に所望の光学特性を付与できるものであれば特に限定されない。なかでも本発明においては、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成できるものであることが好ましい。ここで、本発明における「棒状化合物」とは、分子構造の主骨格が棒状となっているものを指す。
【0062】
本発明に用いられる上記棒状化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類を挙げることができる。また、以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0063】
本発明に用いられる上記棒状化合物としては、分子量が比較的小さい化合物が好適に用いられる。具体的には、分子量が200〜1200の範囲内、特に400〜800の範囲内の化合物が好適に用いられる。分子量が上記範囲内であることにより、例えば、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて基材上に光学機能層を形成した場合に、上記棒状化合物が基材へ浸透しやすくなるため、基材と光学機能層との密着性を向上することができるからである。
なお、上記分子量に関して、後述する重合性官能基を有する材料であって、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成する際に重合される棒状化合物については、重合前の分子量を示すものとする。
【0064】
また、本発明に用いられる棒状化合物としては、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。棒状化合物が液晶性材料であることにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、単位厚み当たりの光学特性の発現性に優れた光学機能層を形成できるからである。
【0065】
また、本発明における棒状化合物は、上記液晶性材料の中でもネマチック相を示す液晶性材料であることが好ましい。上記液晶性材料がネマチック相を示す材料であることにより、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、上記棒状化合物がより均質なランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成することができるからである。
【0066】
さらに、上記ネマチック相を示す液晶性材料は、メソゲン両端にスペーサを有する分子であることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は、柔軟性に優れるため、本発明における光学機能層が白濁することを効果的に防止することができるからである。
【0067】
本発明に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、中でも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものが好ましい。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、例えば、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成している状態で固定化することにより、配列安定性に優れ、光学特性の変化が生じにくい光学機能層を得ることができるからである。また、本発明においては上記重合性官能基を有する棒状化合物と、上記重合性官能基を有さない棒状化合物とを混合して用いても良い。
【0068】
なお、「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワー
ク)構造の状態にすることを意味する。
【0069】
このような重合性官能基としては、特に限定されるものではなく、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する各種重合性官能基が用いられる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。又、カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0070】
本発明における棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。例えば両末端に重合性官能基を有するネマチック液晶性材料を用いれば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた光学機能層を形成することができるからである。また、片末端に重合性官能基を有するものであっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
【0071】
本発明に用いられるこのような棒状化合物としては、下記式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
【0072】
【化1】

【0073】
ここで、化学式(1)、(2)、(5)および(6)で示される液晶性材料は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190,3201−3215(1989)、またはD.J.Broerら、Makromol.Chem.190,2250(1989)に開示された方法に従い、あるいはそれに類似して調製することができる。また、化学式(3)および(4)で示される液晶性材料の調製は、DE195,04,224に開示されている。
【0074】
また、末端にアクリレート基を有するネマチック液晶性材料の具体例としては、下記化
学式(7)〜(17)に示すものも挙げられる。
【0075】
【化2】

【0076】
なお、本発明において上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いても良い。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。
【0077】
本発明の光学機能層形成用組成物中の、上記棒状化合物の含有量としては、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成する際の形成方法等に応じて、本発明の光学機能層形成用組成物を所望の粘度にできる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記棒状化合物の含有量が光学機能層形成用組成物中、5質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、特に5質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
なお、上記棒状化合物の含有量は、アルミカップに本発明の光学機能層形成用組成物を2g計り取り、150℃のオーブンで1時間乾燥後、揮発減量分から算出することにより求めることができる。
【0078】
3.光学機能層形成用組成物
本発明の光学機能層形成用組成物には、上記混合溶媒および棒状化合物以外の他の構成を有していても良い。このような他の構成としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、有機変性シロキサン等のシリコン形レベリング剤;ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルビニルエーテル等の直鎖状重合物;フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤;テトラフルオロエチレン等のフッ素系レベリング剤;光重合開始剤等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記棒状化合物として、光照射により重合する重合性官能基を有する棒状化合物を用いる場合には光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0079】
上記光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
上記光重合開始剤の含有量としては、上記棒状化合物を所望の時間で重合できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、上記棒状化合物100重量部に対して、1重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、特に3重量部〜6重量部の範囲内が好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲よりも多いと、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて形成される光学機能層において、上記棒状化合物の配列が乱される恐れがあるからである。また、含有量が上記範囲よりも少ないと、棒状化合物の種類によっては所望の時間内に重合することができない可能性があるからである。
【0081】
上記光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0082】
さらに本発明の光学機能層形成用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、下記に示すような化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。上記光学機能層形成用組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で決定することができる。上記のような化合物を添加することにより本発明の光学機能層形成用組成物を用いて形成される光学機能層の機械強度が向上し、安定性が改善される場合がある。
【0083】
本発明の光学機能層形成用組成物の粘度としては、本発明の光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成する方法等に応じて任意に調整すればよいが、通常、25℃において0.5mPa・s〜10mPa・sの範囲内が好ましく、なかでも1Pa・s〜5Pa・sの範囲内が好ましく、特に1Pa・s〜3Pa・sの範囲内が好ましい。
【0084】
本発明の光学機能層形成用組成物の用途は、特に限定されるものではないが、液晶表示装置に用いられる光学機能フイルムを構成する光学機能層を形成するために好ましく用いられ、特に本発明の光学機能層形成用組成物中に含まれる棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成するために最も好ましく用いられる。このようなランダムホモジニアス配向の詳細については、上述したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0085】
本発明の光学機能層形成用組成物の製造方法としては、上記構成を有する光学機能層形成用組成物を製造できる方法であれば特に限定されず、一般的な有機溶媒系組成物の製造方法として用いられる方法を適用することができる。このような方法としては、例えば、上記範囲内のアルコール系溶媒を含む混合溶媒に、上記棒状化合物等をそれぞれ所定の濃度で溶解する方法を挙げることができる。
【0086】
B.光学機能フイルムの製造方法
次に、本発明の光学機能フイルムの製造方法について説明する。本発明の光学機能フイルムの製造方法は、負のCプレートとしての性質を有する基材と、上記光学機能層形成用組成物とを用い、上記基材上に、上記光学機能層形成用組成物を塗布することにより、基材と、上記基材上に直接形成され、ランダムホモジニアス配向を形成した棒状化合物を含む光学機能層とを有する光学機能フイルムを製造することを特徴とするものである。
【0087】
本発明によれば、アルコール系溶媒を含む上記光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成することにより、透明性に優れる光学機能層を有する光学機能フイルムを製造することができる。
【0088】
また本発明によれば、上記光学機能層を基材上に直接形成することにより、光学機能層と基材との密着性に優れた光学機能フイルムを製造することができる。このように基材上に光学機能層を直接形成することにより両者の密着力が向上するのは次のような機構によるものと解される。すなわち、基材上に光学機能層が直接形成されることにより、光学機能層に含まれる棒状化合物が基材の表面から基材中へ浸透することができるため、基材と光学機能層との接着部においては明確な界面が存在せず、両者が「混合」された形態となる。このため、従来の界面相互作用による接着と比較して、著しく密着性が改善されるものと考えられる。
また、従来の配向膜を有する構成の光学機能フイルムにおいては、配向膜と光学機能層との界面や、配向膜と基材との界面において光が多重反射し、干渉ムラが生じるという問題点もあった。しかしながら、本発明により製造される光学機能フイルムは、上述のように配向膜を有さず、また、上記基材と上記光学機能層との接着部は「混合」状態となっているため明確な界面が存在しない。したがって、上記多重反射を生じることが無く、干渉ムラによる品質の低下が生じることが無いという利点を有する。
【0089】
さらに本発明によれば、上記光学機能層において棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成しているため、配向膜を用いることなく、光学特性の発現性、特に負のCプレートとして作用する光学特性の発現性に優れた光学機能フイルムを製造することができる。
【0090】
本発明の光学機能フイルムの製造方法は、基材と、光学機能層形成用組成物とを用いるものである。以下、本発明の光学機能フイルムの製造方法について詳細に説明する。
なお、本発明に用いる光学機能層形成用組成物については、上記「A.光学機能層形成用組成物」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0091】
1.基材
まず、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は負のCプレートとしての機能を有するものである。また、後述するように本発明の光学機能フイルムの製造方法により得られる光学機能フイルムは、光学機能層が基材上に直接形成されることにより、上記光学機能層に含まれる棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成するものであるため、本発明に用いられる基材は、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成するための、いわゆる配向膜としての機能も有するものである。以下、本発明に用いられる基材について説明する。
【0092】
本発明に用いられる基材は、光学的に負のCプレートとしての性質を有するものであれば特に限定されない。ここで、本発明において「光学的に負のCプレートとしての性質を有する」とは、基材シートの面内の任意のX方向およびY方向屈折率をNx,Ny、厚さ方向の屈折率をNzとしたときに、Nx=Ny>Nzの関係が成立することを意味するものとする。
【0093】
本発明に用いられる基材として負のCプレートとしての性質を有するものを用いるのは次の理由によるものである。すなわち、上述したように本発明に用いられる基材は、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成するための、いわゆる配向膜として機能するものであるが、基材が負のCプレートとしての性質を有さなければ上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成することができないからである。
【0094】
本発明において、負のCプレートとしての性質を有する基材上に、上記光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層を形成することにより、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成する機構については明らかではないが、次のような機構に基づくものと考えられる。
すなわち、例えば基材が高分子材料から形成される場合について考えると、基材が負のCプレートとしての性質を有する場合、基材を構成する高分子材料は、面内方向において特定の規則性を有さずランダムに配列していると考えられる。このような面内方向にランダムに配列した高分子材料を表面に有する基材上に上記棒状化合物を付与すると、上記棒状化合物は、基材中に一部浸透し、分子軸がランダムに配列した高分子材料の分子軸に沿うように配列すると考えられる。このような機構により、負のCプレートを有する基材は、ランダムホモジニアス配向を形成する配向膜としての機能を示すものと考えられる。
【0095】
上述したような機構により、上記基材は上記棒状化合物のランダムホモジニアス配向を形成する配向膜としての機能を有すると考えられるため、本発明に用いられる基材は、棒状化合物に対して配向規制力を有し、かつ、負のCプレートとしての性質を発現する基材の構成材料が基材表面に存在する構成を有するものでなければならない。したがって、負のCプレートとしての性質を有する基材であったとしても、基材上に光学機能層を形成した場合に、上記棒状化合物が、上記棒状化合物に対して配向規制力を有する基材の構成材料と接することができない構成を有するものは、本発明における基材として用いることができない。
このような、本発明に用いることができない基材としては、例えば高分子材料のみからなり、負のCプレートとしての機能を有する支持体と、上記支持体上に屈折率異方性を有する光学異方性材料を含む位相差層が積層された構成を有する基材を挙げることができる。このような構成を有する基材においては、上記支持体を構成する高分子材料が上記棒状化合物に対する配向規制力を有する基材の構成材料となるが、基材上に光学機能層を形成した場合、上記位相差層の存在により、上記棒状化合物が上記高分子材料と接することができない。したがって、このような構成を有する基材は、負のCプレートとしての性質を有していたとしても本発明における基材には含まれない。
【0096】
本発明に用いられる基材の負のCプレートとしての性質は、上記光学機能層形成用組成物に用いる棒状化合物の種類や、本発明により製造する光学機能フイルムに求める光学特性等に応じて適宜選択して用いればよい。なかでも本発明においては、上記基材の厚み方向レターデーション(Rth)が、20nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、特に25nm〜80nmの範囲内であることが好ましく、なかでも30nm〜60nmの範囲内であることが好ましい。上記基材の厚み方向のレターデーション(Rth)が、上記範囲内にあることにより、上記棒状化合物の種類を問わず、本発明により製造される光学機能フイルムの光学機能層において、棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成することが容易になるからである。また、上記基材の厚み方向のレターデーション(Rth)が上記範囲内であることにより上記棒状化合物が均質なランダムホモジニアス配向を形成することができるからである。
ここで、上記厚み方向のレターデーション(Rth)は、本発明に用いられる基材の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率Nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率Nyと、厚み方向の屈折率Nzと、基材の厚みd(nm)とにより、Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×dの式で表される値である。本発明における厚み方向のレターデーション(Rth)の値は、室温にて王子計測機器(株)製 KOBRA−WRにより測定した値を用いる。
【0097】
また本発明において、基材上に、より均質なランダムホモジニアス配向した棒状化合物を有する光学機能層を形成するという観点からは、厚み方向のレターデーション(Rth)が上記範囲内であることに加え、面内のレターデーション(Re)が0nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に0nm〜150nmの範囲内であることが好ましく、なかでも0nm〜125nmの範囲内であることが好ましい。
ここで、上記面内レターデーション(Re)は、本発明に用いられる基材の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率Nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率Nyと、基材の厚みd(nm)とにより、Re=(Nx−Ny)×dの式で表される値である。本発明における面内レターデーション(Re)の値は、室温にて、王子計測機器(株)製 KOBRA−WRにより測定した値を用いる。
【0098】
本発明に用いられる基材の透明度は、本発明によって製造する光学機能フイルムに求める透明性等に応じて任意に決定すればよいが、通常、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透過率が低いと、上記棒状化合物等の選択幅が狭くなってしまう場合があるからである。ここで、基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0099】
本発明に用いられる基材の厚みは、本発明により製造される光学機能フイルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を有するものであれば特に限定されないが、通常、10μm〜188μmの範囲内が好ましく、特に20μm〜125μmの範囲内が好ましく、特に30μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。基材の厚みが上記の範囲よりも薄いと、本発明により製造される光学機能フイルムに必要な自己支持性が得られない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、本発明によって製造される光学機能フイルムを裁断加工する際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0100】
また、本発明に用いられる基材は、上記光学特性を具備するものであれば、可撓性を有するフレキシブル材でも、可撓性のないリジッド材を用いることもできるが、フレキシブル材を用いることが好ましい。フレキシブル材を用いることにより、本発明の光学機能フイルムの製造工程をロールトゥロールプロセスとすることができ、生産性に優れた光学機能フイルムを得ることができるからである。
【0101】
上記フレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができるが、なかでもセルロース誘導体、および、ノルボルネン系ポリマーを用いることが好ましい。
【0102】
上記セルロース誘導体としては、セルロースエステルを用いることが好ましく、さらに、セルロースエステル類の中では、セルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0103】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであっても良い。
【0104】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。トリアセチルセルロースは、比較的嵩高い側鎖を有する分子構造を有することから、トリアセチルセルロースから基材を構成することにより、上記光学機能層形成用組成物に含まれる棒状化合物が基材に浸透し易いため、本発明により製造される光学機能フイルムにおいて基材と光学機能層との密着性をより向上することできるからである。また、トリアセチルセルロースは、負のCプレートとしての性質を発現しやすいことから、上記棒状化合物のランダムホモジニアス配向を形成することが容易になるからである。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフイルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フイルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0105】
上記ノルボルネン系ポリマーとしては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)を挙げることができるが、本発明においては、シクロオレフィンポリマーを用いることが好ましい。シクロオレフィンポリマーは、水分の吸収性および透過性が低いため、本発明に用いられる基材がシクロオレフィンポリマーから構成されることにより、本発明により得られる光学機能フイルムを光学特性の経時安定性に優れたものにできるからである。
【0106】
本発明に用いられる上記シクロオレフィンポリマーの具体例としては、例えば、JSR株式会社製 商品名アートン、日本ゼオン株式会社製 商品名ゼオノアを挙げることができる。
【0107】
本発明に用いられる基材は、延伸処理が施されていることが好ましい。延伸処理が施されていることにより、上記棒状化合物が基材中に浸透し易くなり、このことに起因して基材と光学機能層との密着性に優れ、かつ、棒状化合物がより均質なランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成することができるからである。
【0108】
上記延伸処理としては、特に限定されるものではなく、基材を構成する材料等に応じて任意に決定すればよい。このような延伸処理としては、1軸延伸処理と、2軸延伸処理とを例示することができる。なかでも本発明における上記延伸処理としては、2軸延伸処理が好ましい。
【0109】
上記2軸延伸処理の延伸方法としては、基材に所望の負のCプレートとしての性質を付与できる方法であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、例えば、ロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等の任意の延伸方法により適宜行うことができる。延伸処理に当たり、高分子フィルムは、例えばガラス転移温度以上、かつ、融点温度以下に加熱されることが好ましい。
【0110】
本発明における基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されても良い。
異なった組成を有する複数の層が積層された基材の構成としては、例えば、トリアセチルセルロースのような上記棒状化合物をランダムホモジニアス配向させる材料からなるフイルムと、透水性に優れるシクロオレフィンポリマーからなる支持体と積層する態様を例示することができる。
【0111】
2.光学機能フイルムの製造方法
次に、本発明において、上記光学機能層形成用組成物を用い、上記基材上に光学機能層を形成することにより光学機能フイルムを製造する方法について説明する。本発明の光学機能フイルムの製造方法においては、上記光学機能層形成用組成物を、上記基材上に直接塗布することにより光学機能層を形成する。
【0112】
上記光学機能層形成用組成物を基材上に塗布する塗布方式としては、厚みが均一で、所望の平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。
【0113】
上記光学機能層形成用組成物の塗膜の厚みについても、所望の平面性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、特に0.5μm〜30μmの範囲内が好ましく、中でも0.5μm〜10μmの範囲内が好ましい。光学機能層形成用組成物の塗膜の厚みが上記範囲より薄いと光学機能層の平面性を損なってしまう場合があり、また厚みが上記範囲より厚いと、溶媒の乾燥負荷が増大し、生産性が低下してしまう可能性があるからである。
【0114】
上記光学機能層形成用組成物の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本発明における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
【0115】
上記棒状化合物として重合性材料を用いる場合、上記重合性材料を重合する方法は、特に限定されるものではなく、上記重合性材料が有する重合性官能基の種類に応じて任意に決定すればよい。なかでも本発明においては、活性放射線の照射により硬化させる方法が好ましい。活性放射線としては、重合性材料を重合することが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光を使用することが好ましく、中でも、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光を用いることが好ましい。
【0116】
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。中でも、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。また、照射強度は、光重合開始剤の含有量等によって適宜調整して照射することができる。
【0117】
3.光学機能フイルム
最後に、本発明の光学機能フイルムの製造方法より製造される光学機能フイルムについて説明する。本発明により製造される光学機能フイルムは、基材と、上記基材上に直接形成された光学機能層を有するものである。また、上記光学機能層においては、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成しているものである。
【0118】
本発明により製造される光学機能フイルムは、上記光学機能層形成用組成物を用いて光学機能層が形成されていることにより、透明度に優れるという特徴を有するものである。
本発明により製造される光学機能フイルムは、例えば、液晶表示装置用の光学補償フイルムとしての用途に用いられた場合に、ムラや白濁が発生することが少なく、高い表示品質を達成できるという利点を有する。
また、本発明により製造される光学機能フイルムは、上記基材上に光学機能層が直接形成されることにより、基材と光学機能層とを強固に密着させることができるため、経時で層間剥離等を生じることがないという利点を有するものである。
さらに本発明により製造される光学機能フイルムは、光学機能層において棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成していることにより、負のCプレートとして作用する光学特性の発現性に優れたものである。
【0119】
以下、本発明の光学機能フイルムの製造方法により製造される光学機能フイルムについて詳細に説明する。なお、本発明におけるランダムホモジニアス配向については、上記「A.光学機能層形成用組成物」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0120】
本発明により製造される光学機能フイルムの厚みは、所望の光学特性を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、30μm〜200μmの範囲内が好ましく、特に30μm〜150μmの範囲内が好ましく、なかでも30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0121】
また本発明により製造される光学機能フイルムは、JIS K7105に準拠して測定したヘイズ値が0.1%〜5%の範囲内であることが好ましく、特に0.1%〜1%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.1%〜0.5%の範囲内であることが好ましい。
【0122】
本発明により製造される光学機能フイルムの厚み方向のレターデーション(Rth)は、光学機能フイルムの用途等に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、厚み方向のレターデーション(Rth)が、50nm〜500nmの範囲内が好ましく、なかでも100nm〜400nmの範囲内が好ましく、特に100nm〜400nmの範囲内が好ましい。厚み方向のレターデーション(Rth)が上記範囲内であることにより、本発明により製造される光学機能フイルムをVA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置の視野角特性を改善するのに好適なものにできるからである。ここで、厚み方向のレターデーション(Rth)の定義、および、測定方法については、上記「1.基材」の項において説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0123】
また、本発明により製造される光学機能フイルムの面内レターデーション(Re)は、光学機能フイルムの用途等に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、面内レターデーション(Re)が、0nm〜5nmの範囲内が好ましく、なかでも0nm〜3nmの範囲内であることが好ましく、特に0nm〜1nmの範囲内であることがより好ましい。面内レターデーション(Re)が上記範囲内であることにより、本発明により製造される光学機能フイルムを、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置の視野角特性を改善するのに好適な位相差フイルムとして用いることができるからである。
ここで、面内レターデーション(Re)の定義、および、測定方法については、上記「1.基材」の項において説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0124】
上記面内レターデーション(Re)値は、波長依存性を有していても良い。例えば、長波長側の方が短波長側よりも値が大きい態様でもよく、また、短波長側の方が、長波長側よりも値が大きい態様でも良い。
【0125】
本発明により製造される光学機能フイルムの用途としては、特に限定されるものではなく、光学的機能フィルムとして種々の用途に用いることができる。本発明の光学機能フイルムの具体的な用途としては、例えば、液晶表示装置に用いられる光学補償板(例えば、視角補償板)、楕円偏光板、輝度向上板等を挙げることができる。なかでも本発明においては、負のCプレートとしての用途に好適に用いることができる。このように負のCプレートである光学補償板として用いられる場合は、VAモードもしくはOCBモードなどの液晶層を有する液晶表示装置に好適に用いられる。
【0126】
また本発明の光学機能フイルムは、偏光子と貼り合わせることにより、偏光板としての用途にも用いることができる。偏光板は、通常、偏光子とその両表面に偏光板保護フイルムが形成されてなるものであるが、本発明においては、例えばその一方側の偏光板保護フイルムを本発明により製造した光学機能フイルムとすることにより、例えば液晶表示装置の視野角特性を改善する光学補償機能を有する偏光板とすることができる。
【0127】
上記偏光子としては、特に限定されないが、例えばヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子などを用いることができる。ヨウ素系偏光子や染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコールを用いて製造される。
【0128】
さらに本発明の光学機能フイルムは、延伸処理を施して用いても良い。このような延伸処理を施す態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、本発明により得られる光学機能フイルムに延伸処理を施して、2軸性フイルムとして用いる態様を挙げることができる。
【0129】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0130】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0131】
(実施例1)
ネマチック液晶として、下記式(I)で表される化合物を用い、質量比で、アノン:イソプロピルアルコール=9:1の混合溶媒に、20質量%溶解させた。そこに、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を、ネマチック液晶の質量に対して1質量%となるように調製し、光学機能層形成用組成物を作製した。
【0132】
【化3】

【0133】
そのインキ組成物を厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの基材上に、バーコート法により塗布し、50℃オーブンで2分間乾燥させた後、窒素雰囲気下にて、100mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、光学機能層を形成し、光学(補償)フィルムを作製した。
【0134】
(実施例2)
質量比で、アノン:n−プロピルアルコール=9:1の混合溶媒を用いること以外は、実施例1と同様の方法により、光学(補償)フイルムを作製した。
【0135】
(実施例3)
質量比で、アノン:n−プロピルアルコール=8:2の混合溶媒を用いること以外は、実施例1と同様の方法により、光学(補償)フイルムを作製した。
【0136】
(比較例1)
質量比で、アノン:イソプロピルアルコール=7:3の混合溶媒を用いること以外は、実施例1と同様の方法により、光学(補償)フイルムを作製した。
【0137】
(比較例2)
質量比で、アノン:n−プロピルアルコール=7:3の混合溶媒を用いること以外は、実施例1と同様の方法により、光学(補償)フイルムを作製した。
【0138】
(比較例3)
実施例1で用いたものと同様のネマチック液晶をアノンのみからなる溶媒に、20質量%溶解させた。そこに、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を、ネマチック液晶の質量に対して1質量%となるように調整し、光学機能層形成用組成物を調製した。その後、実施例1と同様にして光学(補償)フイルムを作製した。
【0139】
(評価)
(1)ヘイズ、および、全光線透過率(%)
上記実施例および比較例において作製した光学(補償)フイルムのヘイズ、および、全光線透過率をJIS K 7361に規定する方法に準じて測定した。
【0140】
(2)クロスニコル下でのムラ・白濁
上記実施例および比較例において作製した光学(補償)フイルムについて、両側に市販の偏光板(HCL2−5618HCS、(株)サンリッツ製)をクロスニコル配置となるように貼り合わせ、液晶用バックライト上に設置し、暗室下にて正面のムラ・白濁の程度を目視にて観察して評価した。その白濁の程度を評価する判断の基準は以下の通りである。
○;白濁は認められず、透明性が高く、良好である。
×;白濁が認められ、透明性が低下していて、不良である。
【0141】
上記評価結果を表1に示す。表1に示すように実施例における光学(補償)フイルムは、ヘイズおよびクロスニコル下でのムラ・白濁が良好であった。一方、比較例における光学(補償)フイルムは、ヘイズとクロスニコル下におけるムラ・白濁が共に良好なものは無かった。
【0142】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の光学機能層形成用組成物を用いて形成された光学機能層を有する光学機能フイルムの一例を示す概略図である。
【図2】従来の位相差フイルムの一例を示す概略断面図である。
【図3】従来の位相差フイルムの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0144】
1 … 基材
2 … 光学機能層
3 … 棒状化合物
10 … 光学機能フイルム
21 … 基材
22 … 配向膜
23 … 光学機能層
40 … 位相差フイルム
100 … 液晶表示装置
102A、102B … 偏光板
104 … 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化合物と、アルコール系溶媒および他の有機溶媒からなる混合溶媒とを含む光学機能層形成用組成物であって、
前記混合溶媒中のアルコール系溶媒量が、5質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする、光学機能層形成用組成物。
【請求項2】
前記光学機能層形成用組成物は、前記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成した光学機能層を形成するために用いられるものであることを特徴とする、請求項1に記載の光学機能層形成用組成物。
【請求項3】
前記棒状化合物が、重合性官能基を有するものであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光学機能層形成用組成物。
【請求項4】
前記棒状化合物が、液晶性材料であることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の光学機能層形成用組成物。
【請求項5】
前記液晶性材料が、ネマチック相を示す材料であることを特徴とする、請求項4に記載の光学機能層形成用組成物。
【請求項6】
負のCプレートとしての性質を有する基材と、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の光学機能層形成用組成物とを用い、
前記基材上に、前記光学機能層形成用組成物を塗布することにより、基材と、前記基材上に直接形成され、ランダムホモジニアス配向を形成した棒状化合物を含む光学機能層とを有する光学機能フイルムを製造することを特徴とする、光学機能フイルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−94207(P2007−94207A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285679(P2005−285679)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】