説明

光学活性なリン複素環二量体の製造方法

下記一般式(1)
【化1】


(Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜20のアルキル基を示す)
で表わされる一級ホスフィンに下記一般式(2)
【化2】


(Yはハロゲン原子または−Ots、−Otf、−Omsから選ばれる脱離基、nは3〜6の数を示す)で表わされる化合物を塩基の存在下で作用させ、続いて三水素化ホウ素、酸素又は硫黄を作用させて下記一般式(3)
【化3】


(Rは前記と同義、nは1〜4の数、Xは三水素化ホウ素基、酸素原子又は硫黄原子、===はXが三水素化ホウ素基の時は単結合、Xが酸素原子、硫黄原子の時は二重結合を示す)で表わされるリン複素環化合物を得、該化合物を二量化することにより下記一般式(4)
【化4】


(R、n及びXは前記と同義)で表わされるリン複素環の二量体を得、続いて該リン複素環の二量体を脱酸素、脱硫黄、又は脱ボラン処理し、下記一般式(5)
【化5】


(R及びnは前記と同義)で表わされる光学活性なリン複素環の二量体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性なリン複素環二量体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性な触媒(以後、不斉触媒という)を用いて行う触媒的不斉合成反応は、ごく少量の不斉触媒を用いて大量の光学活性化合物を合成することができるため、工業的な利用価値が高い。中でも不斉還元と呼ばれる合成方法は、その高い反応効率に加えて水素ガスを原料として用いる場合は、無機塩等の副生物を伴わないという利点を有するので、経済的かつ環境調和的な合成方法である。
この触媒的不斉合成反応は、光学的に高純度の生成物を得るのが目的であり、光学純度は、反応に用いる不斉触媒の性能に左右される。そして、不斉触媒としては、通常遷移金属錯体が用いられるが、その遷移金属に配位している配位子により、反応場においてどのような不斉空間が構築されているかによって、反応生成物の光学純度の大部分が決定されることとなる。従って、不斉触媒の開発においては、優れた触媒活性および立体選択性を実現するために、配位子の立体構造を設計することが最重要となる。
そこで、近年、不斉配位子が盛んに研究され、種々の不斉配位子が開発されている。中でもホスフィン配位子は、これらの遷移金属錯体を用いる触媒的不斉合成反応において重要な役割を担っており、今日までに膨大な数の配位子が設計、合成されている。
【0003】
本発明者らは、種々のα,β−不飽和αアミノ酸とそれらのエステルを効率的に不斉水素化することができる下記一般式(9)
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、Rは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、1,1−ジエチルプロピル基又は1−アダマンチルを示す。)で表されるリンキラルなトリアルキル基を持つ1,2−ビス(アルキルメチルホスフィノ)エタンを提案した(非特許文献1)。
また、含リン複素環を有する配位子のうちでも複素環により強固な構造を有する配位子は、中心金属に配位して形成されるキレートのコンホメーション数が抑制され、安定した不斉空間が構築されることが知られている(非特許文献2)。
【0006】
しかしながら、上記一般式(9)で表される光学活性リンキラルジホスフィンは、複素環を有しないため、リン原子に結合したRで表される置換基によっては、配位子の構造が安定しているとは言い難い。
【0007】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1998,120,1635−1636頁
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.1993,115,10125−10138頁
【0008】
従って、本発明の目的は、中心金属に配位する際に安定した不斉空間が構築され、不斉水素化反応などの触媒的不斉合成の際に用いられる遷移金属触媒の配位子として有用な新規光学活性リン複素環二量体の製造方法を提供することにある。
【発明の開示】
【0009】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化2】

(式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜20のアルキル基を示す)
で表わされる一級ホスフィンに下記一般式(2)
【化3】

(式中、Yはハロゲン原子または−OTs、−OTf、−OMsから選ばれる脱離基を示し、nは3〜6の数を示す)で表わされる化合物を塩基の存在下で作用させ、続いて三水素化ホウ素、酸素または硫黄を作用させて下記一般式(3)
【化4】

(式中、Rは前記と同義、nは1〜4の数、Xは三水素化ホウ素基、酸素原子、硫黄原子を示し、===はXが三水素化ホウ素基の時は単結合を示し、Xが酸素原子、硫黄原子の時は二重結合を示す)で表わされるリン複素環化合物を得、該化合物を二量化することにより下記一般式(4)
【化5】

(式中、R、n及びXは前記と同義)で表わされるリン複素環の二量体を得、続いて該リン複素環の二量体を脱酸素、脱硫黄、または脱ボラン処理し、下記一般式(5)
【化6】

(式中、R、及びnは前記と同義)で表わされる光学活性なリン複素環の二量体を得ることを特徴とする、光学活性リン複素環二量体の製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光学活性リン複素環二量体の製造方法を下記反応式(1)に示す。
【0012】
【化7】

【0013】
本発明の製造方法は、一般式(1)で表わされる一級ホスフィンに一般式(2)で表わされる化合物を塩基の存在下で作用させ、続いて三水素化ホウ素、酸素または硫黄を作用させて一般式(3)で表わされるリン複素環化合物を得る第一工程、一般式(3)の化合物を二量化させて一般式(4)で表わされるリン複素環の二量体を得る第二工程、一般式(4)で表わされるリン複素環の二量体を、脱酸素、脱硫黄、または脱ボラン処理して一般式(5)で表わされる光学活性なリン複素環の二量体を得る第三工程を有する。
【0014】
<第一工程>
第一工程は、一級ホスフィン(1)に一般式(2)で表わされる化合物を塩基の存在下で作用させ、続いて三水素化ホウ素、酸素、または硫黄を作用させて一般式(3)で表わされるリン複素環化合物を得る工程である。
原料となる一級ホスフィンは、下記一般式(1)
【化8】

で表わされる一級ホスフィンである。Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜20のアルキル基であり、具体的には、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基、n−ヘプチル基、イソヘキシル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。一級ホスフィンとしては、例えば、tert−ブチルホスフィン、エチルホスフィン、イソプロピルホスフィン、n−プロピルホスフィン、イソブチルホスフィン、n−ブチルホスフィン、sec−ブチルホスフィン、イソヘプチルホスフィン、n−ヘプチルホスフィン、イソヘキシルホスフィン、n−ヘキシルホスフィン、シクロペンチルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、1−メチルシクロヘキシルホスフィン等を用いることができる。これらホスフィンは、市販されているものを用いてもよいし、ホスフィンガスとオレフィンの付加反応、またはハロゲン化リンとアルキルグリニアル試薬から調整されるアルキルジハロゲニルホスフィンをリチウムアルミニウムハイドライド等で還元して合成したものを用いることもできる。モノアルキルホスフィンの純度は、副生成物を抑制する観点から、95%以上のものを用いることが好ましい。
【0015】
また、もう一方の原料は一般式(2)
【化9】

【0016】
で表わされる化合物である。式中、Yは、ハロゲン原子または−OTs、−OTf、−OMsから選ばれる脱離基を示し、nは3〜6の数を示す。ここで、−OTsはトシルオキシ基、−OTfはトリフルオロメタンスルフォニルオキシ基、−OMsはメタンスルフォニルオキシ基を表わす。
一般式(2)で表わされる化合物の具体的には、1,3−ジクロロプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1,3−ビス(トシルオキシ)プロパン、1,3−ビス(メシルオキシ)プロパン、1,3−ビス(トリフルオロオキシ)プロパン、1,4−ジクロロブタン、1,4−ジブロモブタン、1,4−ビス(トシルオキシ)ブタン、1,4−ビス(メシルオキシ)ブタン、1,4−ビス(トリフルオロオキシ)ブタン、1,5−ジクロロペンタン、1,5−ジブロモペンタン、1,5−ビス(トシルオキシ)ペンタン、1,5−ビス(メシルオキシ)ペンタン、1,5−ビス(トリフルオロオキシ)ペンタン、1,6−ジクロロヘキサン、1,6−ジブロモヘキサン、1,6−ビス(トシルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(メシルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(トリフルオロオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。これらは、市販のものを用いることもできるし、公知の方法、J.Am.Chem.Soc.1993,115,10134頁に記載の方法に順じて行うことができる。これらのうち、入手が容易で価格が安く、また生成物の収率が比較的良好である1,3−ジクロロプロパンが最も好ましい。
【0017】
塩基としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等を用いることができ、これらは市販されているものを用いることができる。塩基は事前に滴定し正確な濃度を求めておくことが適量の添加ができ副反応を防ぐことができる点で好ましい。
【0018】
第一工程によって得られる一般式(3)で表わされるリン複素環化合物中のXがボラン錯体の場合は、ボラン−THF錯体、ボラン−硫化ジメチル錯体等を用いることができる。酸素原子の場合は、過酸化水素等の酸化剤、硫黄原子の場合は、硫黄粉末等の硫化剤を用いることができる。
【0019】
第一工程では、まず一級ホスフィン(1)に一般式(2)で表わされる化合物を塩基の存在下で反応させる。
使用する溶媒は、自らが反応試薬等と反応しないものであれば特に制限されないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以後THFとも記載する)、n−ヘキサン、トルエン等を単独あるいはそれらを2種以上混合したものを用いることができる。また、溶媒は、いずれも常法により脱水して用いることが好ましい。
【0020】
反応条件及び温度は用いる親電子試薬によって異なり、例えば1,3−ジクロロプロパンを用いた場合は、一級ホスフィン及び1,3−ジクロロプロパンが溶解した溶液を−78〜−50℃、好ましくは−70〜−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウムをゆっくり滴下することが必要である。反応容器は、良く乾燥し、不活性ガスで置換したものを用いることが塩基の水分による失活やホスフィンの酸素による酸化を防ぐことができる点で好ましい。続いて、反応液を−20〜0℃に昇温し、ボラン錯体、酸化剤、または硫化剤のいずれかを加える。0.5〜2時間反応を行い、反応液に純水を加え、反応を停止させる。有機層と水層の混合液から、水層を分離し、有機層を純水続いて無機塩水溶液で洗浄し、脱水を行い、有機溶媒を除去し、乾燥すれば粗リン複素環化合物を得ることができる。得られた粗リン複素環化合物は、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の通常の方法によって精製することができる。このようにして、一般式(3)で表わされるリン複素環化合物を得る。
【0021】
一般式(3)で表わされる化合物の具体例として四員環のものは、1−t−ブチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−エチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−イソプロピル−ホスフェタン1−スルフィド、1−n−プロピル−ホスフェタン1−スルフィド、1−イソブチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−n−ブチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−イソヘプチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−n−ヘプチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−イソヘキシル−ホスフェタン1−スルフィド、1−n−ヘキシル−ホスフェタン1−スルフィド、1−シクロペンチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−シクロヘキシル−ホスフェタン1−スルフィド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフェタン1−スルフィド、1−アダマンチル−ホスフェタン1−スルフィド、1−t−ブチル−ホスフェタン1−オキシド、1−エチル−ホスフェタン1−オキシド、1−イソプロピル−ホスフェタン1−オキシド、1−n−プロピル−ホスフェタン1−オキシド、1−イソブチル−ホスフェタン1−オキシド、1−n−ブチル−ホスフェタン1−オキシド、1−イソヘプチル−ホスフェタン1−オキシド、1−n−ヘプチル−ホスフェタン1−オキシド、1−イソヘキシル−ホスフェタン1−オキシド、1−n−ヘキシル−ホスフェタン1−オキシド、1−シクロペンチル−ホスフェタン1−オキシド、1−シクロヘキシル−ホスフェタン1−オキシド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフェタン1−オキシド、1−アダマンチル−ホスフェタン1−オキシド、1−ボラナート−1−t−ブチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−エチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−イソプロピル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−n−プロピル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−イソブチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−n−ブチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−sec−ブチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−イソヘプチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−n−ヘプチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−イソヘキシル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−n−ヘキシル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−シクロペンチル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−シクロヘキシル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフェタン、1−ボラナート−1−アダマンチル−ホスフェタン、等を挙げることができる。
【0022】
一般式(3)で表わされる化合物の具体例として五員環のものは、1−t−ブチル−ホスホラン1−スルフィド、1−エチル−ホスホラン1−スルフィド、1−イソプロピル−ホスホラン1−スルフィド、1−n−プロピル−ホスホラン1−スルフィド、1−イソブチル−ホスホラン1−スルフィド、1−n−ブチル−ホスホラン1−スルフィド、1−イソヘプチル−ホスホラン1−スルフィド、1−n−ヘプチル−ホスホラン1−スルフィド、1−イソヘキシル−ホスホラン1−スルフィド、1−n−ヘキシル−ホスホラン1−スルフィド、1−シクロペンチル−ホスホラン1−スルフィド、1−シクロヘキシル−ホスホラン1−スルフィド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスホラン1−スルフィド、1−アダマンチル−ホスホラン1−スルフィド、1−t−ブチル−ホスホラン1−オキシド、1−エチル−ホスホラン1−オキシド、1−イソプロピル−ホスホラン1−オキシド、1−n−プロピル−ホスホラン1−オキシド、1−イソブチル−ホスホラン1−オキシド、1−n−ブチル−ホスホラン1−オキシド、1−イソヘプチル−ホスホラン1−オキシド、1−n−ヘプチル−ホスホラン1−オキシド、1−イソヘキシル−ホスホラン1−オキシド、1−n−ヘキシル−ホスホラン1−オキシド、1−シクロペンチル−ホスホラン1−オキシド、1−シクロヘキシル−ホスホラン1−オキシド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスホラン1−オキシド、1−アダマンチル−ホスホラン1−オキシド、1−ボラナート−1−t−ブチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−エチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−イソプロピル−ホスホラン、1−ボラナート−1−n−プロピル−ホスホラン、1−ボラナート−1−イソブチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−n−ブチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−sec−ブチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−イソヘプチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−n−ヘプチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−イソヘキシル−ホスホラン、1−ボラナート−1−n−ヘキシル−ホスホラン、1−ボラナート−1−シクロペンチル−ホスホラン、1−ボラナート−1−シクロヘキシル−ホスホラン、1−ボラナート−1−1−メチルシクロヘキシル−ホスホラン、1−ボラナート−1−アダマンチル−ホスホラン、等を挙げることができる。
【0023】
一般式(3)で表わされる化合物の具体例として六員環のものは、1−t−ブチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−エチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−イソプロピル−ホスフィナン1−スルフィド、1−n−プロピル−ホスフィナン1−スルフィド、1−イソブチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−n−ブチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−イソヘプチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−n−ヘプチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−イソヘキシル−ホスフィナン1−スルフィド、1−n−ヘキシル−ホスフィナン1−スルフィド、1−シクロペンチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−シクロヘキシル−ホスフィナン1−スルフィド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフィナン1−スルフィド、1−アダマンチル−ホスフィナン1−スルフィド、1−t−ブチル−ホスフィナン1−オキシド、1−エチル−ホスフィナン1−オキシド、1−イソプロピル−ホスフィナン1−オキシド、1−n−プロピル−ホスフィナン1−オキシド、1−イソブチル−ホスフィナン1−オキシド、1−n−ブチル−ホスフィナン1−オキシド、1−イソヘプチル−ホスフィナン1−オキシド、1−n−ヘプチル−ホスフィナン1−オキシド、1−イソヘキシル−ホスフィナン1−オキシド、1−n−ヘキシル−ホスフィナン1−オキシド、1−シクロペンチル−ホスフィナン1−オキシド、1−シクロヘキシル−ホスフィナン1−オキシド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフィナン1−オキシド、1−アダマンチル−ホスフィナン1−オキシド、1−ボラナート−1−t−ブチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−エチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−イソプロピル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−n−プロピル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−イソブチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−n−ブチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−sec−ブチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−イソヘプチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−n−ヘプチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−イソヘキシル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−n−ヘキシル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−シクロペンチル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−シクロヘキシル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフィナン、1−ボラナート−1−アダマンチル−ホスフィナン、等を挙げることができる。
【0024】
一般式(3)で表わされる化合物の具体例として七員環のものは、1−t−ブチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−エチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−イソプロピル−ホスフェパン1−スルフィド、1−n−プロピル−ホスフェパン1−スルフィド、1−イソブチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−n−ブチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−イソヘプチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−n−ヘプチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−イソヘキシル−ホスフェパン1−スルフィド、1−n−ヘキシル−ホスフェパン1−スルフィド、1−シクロペンチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−シクロヘキシル−ホスフェパン1−スルフィド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフェパン1−スルフィド、1−アダマンチル−ホスフェパン1−スルフィド、1−t−ブチル−ホスフェパン1−オキシド、1−エチル−ホスフェパン1−オキシド、1−イソプロピル−ホスフェパン1−オキシド、1−n−プロピル−ホスフェパン1−オキシド、1−イソブチル−ホスフェパン1−オキシド、1−n−ブチル−ホスフェパン1−オキシド、1−イソヘプチル−ホスフェパン1−オキシド、1−n−ヘプチル−ホスフェパン1−オキシド、1−イソヘキシル−ホスフェパン1−オキシド、1−n−ヘキシル−ホスフェパン1−オキシド、1−シクロペンチル−ホスフェパン1−オキシド、1−シクロヘキシル−ホスフェパン1−オキシド、1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフェパン1−オキシド、1−アダマンチル−ホスフェパン1−オキシド、1−ボラナート−1−t−ブチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−エチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−イソプロピル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−n−プロピル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−イソブチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−n−ブチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−sec−ブチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−イソヘプチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−n−ヘプチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−イソヘキシル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−n−ヘキシル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−シクロペンチル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−シクロヘキシル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−1−メチルシクロヘキシル−ホスフェパン、1−ボラナート−1−アダマンチル−ホスフェパン等を挙げることができる。
【0025】
<第二工程>
第二工程は、一般式(3)で表わされるリン複素環化合物を二量化させる工程である。
まず、反応容器内に(−)−スパルテイン及び溶媒を加え、−50℃以下まで冷却し、さらにn−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウム溶液を加え、攪拌し、ブチルリチウム/(−)−スパルテイン錯体を調整する。
【0026】
(−)−スパルテインは、試薬として市販されているものを蒸留して用いることが好ましい。
n−ブチルリチウム及びsec−ブチルリチウムは、市販されているものを用いることができ、事前に滴定して正確な濃度を求めておくことが適量の添加ができ副反応を防ぐことができる点で好ましい。
【0027】
反応温度は−50℃以下、好ましくは−70℃以下である。当該ブチルリチウム/(−)−スパルテイン錯体は、プロキラルなメチル基からの立体選択的脱プロトン化反応に有効な試薬である。
【0028】
次に、精製したリン複素環化合物を有機溶媒に溶解させた溶液を、当該ブチルリチウム/(−)−スパルテイン錯体溶液に加え、−50〜−78℃で、3〜8時間反応させる。続いて塩化銅を加え、攪拌しながら反応液を徐々に加温し、2〜3時間かけて室温に戻し、さらに室温において3〜15時間反応させる。塩化銅は事前に乳鉢などでよくすりつぶし、よく乾燥した物を用いることが好ましい。また、使用する溶媒は、(−)−スパルテインのリチウムへの配位を阻害せず、かつ低温で凝固しない非プロトン性有機溶媒であれば特に制限されず、単独または二種以上混合して用いることができるが、ジエチルエーテルが当該ブチルリチウム/(−)−スパルテイン錯体の形成速度が速い点で好ましい。反応容器は、反応前に良く乾燥し、不活性ガスで置換し、また、反応中は不活性ガスの気流下で行うことが、ブチルリチウム/(−)−スパルテイン錯体の失活を防ぐことができる点で好ましい。
【0029】
その後、反応液に濃アンモニア水を加えて反応を停止させ、有機層を分液し、水層を酢酸エチルなどの極性溶媒で抽出する。有機層を集め、これを洗浄、脱水後、抽出溶媒を除いて、一般式(4)のリン複素環化合物の二量体の粗製品を得る。次に、当該混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の通常の手段によって精製し、再結晶により光学的に純粋な一般式(4)のリン複素環化合物の二量体を得ることができる。この時の一般式(4)で表わされる化合物の光学純度は市販の光学活性カラムを用いたHPLC分析により測定することができる。
【0030】
一般式(4)で表わされるリン複素環化合物の二量体の具体例としては、複素環が四員環の場合は
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,ド−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド、
【0031】
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジオキシド、
【0032】
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジボラナート、等を挙げることができる。
【0033】
一般式(4)で表わされるリン複素環化合物の二量体の具体例としては、複素環が五員環の場合は
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジスルフィド、
【0034】
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジオキシド、
【0035】
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラニル1,1’−ジボラナート、等を挙げることができる。
【0036】
一般式(4)で表わされるリン複素環化合物の二量体の具体例としては、複素環が六員環の場合は
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジスルフィド、
【0037】
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジオキシド、
【0038】
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナニル1,1’−ジボラナート、等を挙げることができる。
【0039】
一般式(4)で表わされるリン複素環化合物の二量体の具体例としては、複素環が七員環の場合は
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジスルフィド、
【0040】
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジオキシド、
【0041】
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、
(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、(1S,1’S,2R,2’R)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパニル1,1’−ジボラナート、等を挙げることができる。
【0042】
<第三工程>
第三工程は、一般式(4)で表わされるリン複素環化合物の二量体を、脱ボラン、脱酸素、または脱硫黄処理する工程である。
本発明において脱ボラン処理とは、一般式(4)の化合物のリン原子の非共有電子対に結合しているボラナート基を除去する処理方法を指す。ボラナート基を除去する処理方法としては特に制限されず、一般的に用いられる脱ボラン処理方法であればよく、例えばアミン系溶媒中で加熱する処理方法、トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸と反応させ、続いてアルカリで中和する処理方法等が挙げられる。また、アミン系溶媒中で加熱する処理方法において、反応温度は50〜80℃であり、好ましくは60〜70℃である。反応温度が50℃未満であると反応速度が遅く、80℃を超えると光学純度が低下する。反応時間は、好ましくは1〜3時間である。
【0043】
本発明において脱酸素処理とは、一般式(4)の化合物のリン原子の非共有電子対に結合している酸素原子を除去する処理方法を指し、還元反応である。還元反応としては特に制限されず、一般的に用いられる還元反応であればよく、例えば、トリクロロシラン、フェニルシラン等が挙げられる。
また、本発明において脱硫黄処理とは、一般式(4)の化合物のリン原子の非共有電子対に結合している硫黄原子を除去する処理方法を指し、還元反応である。還元反応としては特に制限されず、一般的に用いられる還元反応であればよく、例えば、ヘキサクロロジシランを用いて還元する方法、Raneyニッケルを用いる方法等が挙げられる。このうち、ヘキサクロロジシランを用いて還元する方法においては、反応温度20〜90℃、好ましくは80〜90℃であり、反応時間は1〜6時間である。
【0044】
上記のように、一般式(4)のリン複素環化合物の二量体は、脱ボラン、脱酸素、または脱硫黄処理により、リン原子上の立体を保持したままで一般式(5)の光学活性リン複素環二量体が得られる点で、一般式(5)の化合物の製造に適した化合物である。
また、一般式(5)の化合物及び一般式(4)の化合物の立体構造の確認は、単結晶X線構造解析を用いて行うことができる。
【0045】
本発明の製造方法によって得られる光学活性なリン複素環二量体は、下記一般式(5)
【0046】
【化10】

【0047】
で表される立体構造を有する光学活性なリン複素環二量体化合物である。
一般式(5)で表される光学活性リン複素環化合物の式中、Rおよびnは前記と同義である。
本化合物は、含リン複素環骨格の1位のリン原子及び2位の炭素原子がそれぞれ不斉点を有し、絶対配置をCIP法によって表記すると、(1S,1’S,2R,2R’)と表わされる。また、本化合物は、非常に酸化され易い性質を有する。
【0048】
一般式(5)で表わされる光学活性なリン複素環二量体の具体例としては、リン複素環が四員環の場合は
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン、
等を挙げることができる。
【0049】
一般式(5)で表わされる光学活性なリン複素環二量体の具体例としては、リン複素環が五員環の場合は
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスホラン、
等を挙げることができる。
【0050】
一般式(5)で表わされる光学活性なリン複素環二量体の具体例としては、リン複素環が六員環の場合は
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフィナン、
等を挙げることができる。
【0051】
一般式(5)で表わされる光学活性なリン複素環二量体の具体例としては、リン複素環が七員環の場合は
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−エチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘプチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−イソヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−n−ヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロペンチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−シクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−1−メチルシクロヘキシル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソプロピル−[2,2’]−ジホスフェパン、(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−プロピル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−イソブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−n−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−sec−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−エチル−tert−ブチル−[2,2’]−ジホスフェパン、
等を挙げることができる。
【0052】
一般式(5)の光学活性なリン複素環二量体は、一般式(6)
[M(A)p(B)q]n (6)
【0053】
で表わされる遷移金属錯体との反応により、一般式(5)の化合物を配位子として有する遷移金属錯体を反応系中で生成し、生成した該遷移金属錯体は、触媒的不斉合成反応を行うことができる。
一般式(6)中、Mは当該遷移金属錯体の中心金属となる遷移金属であり、好ましくはロジウム、ルテニウム、パラジウム、または銅である。
【0054】
一般式(6)中、Aは当該遷移金属錯体の配位子であって、一般式(5)の化合物と反応系中で配位子交換をする電子供与性の配位子であり、エチレン、炭化水素系ジエン類、カルボニル基、アリルアニオンまたは2−メチルアリルアニオンが、配位子交換が起こりやすく、反応系中で一般式(5)の化合物を配位子に有する不斉金属錯体を生成しやすい点で特に好ましい。ここで、炭化水素ジエン類とは、例えば、シクロオクタ−1,5−ジエン(以後、codとも記載する)、ノルボルナジエン(以後、nbdとも記載する)等が挙げられる。
一般式(6)中、Bは当該遷移金属錯体の配位子であって、一般式(5)の化合物とは配位子交換をしない配位子であり、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アセトキシル基(以後、OAcとも記載する)、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基(以後OTfとも記載する)、ニトリル基またはジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0055】
一般式(6)中、pは0〜2の整数を示し、qは0〜2の整数を示し、p+qは1以上を示し、nは1または2の整数を示すが、これらの値は、中心金属であるMの種類及び価数により変化する。また、p=1または2の場合、例えばRh[(cod)Cl]であれば、一般式(5)の化合物はcodとの配位子交換によって、p=0の場合、例えばCu(OTf)であれば、一般式(1)の化合物は配位子交換することなく直接銅に配位し、遷移金属錯体を生成する。
【0056】
そして、一般式(6)の遷移金属錯体が存在する反応系中に、一般式(5)の化合物を加えると、配位子交換または直接の配位により、反応系中で遷移金属錯体が生成し、該遷移金属錯体は、配位子の一般式(5)の化合物が有効な不斉空間を構築するので、触媒的不斉合成反応を行うことができる。
反応系中で生成する当該遷移金属錯体が行う不斉合成反応としては、不斉還元反応が挙げられる。
【0057】
一般式(5)の化合物と一般式(6)の遷移金属錯体は、両者が同一の反応系中に存在すれば、速やかに遷移金属錯体を生成するため、原料及び溶媒を加えた例えば不斉還元反応容器中に、一般式(5)の化合物と一般式(6)の遷移金属錯体を順次添加して、原料を含む反応系中で不斉遷移金属錯体を生成する方法、または予め、一般式(5)の化合物と一般式(6)の遷移金属錯体を混合して遷移金属錯体を生成させてから、原料を含む不斉還元反応系中に加える方法のいずれでも行うことができる。
反応温度は、反応の種類、原料の種類または使用する遷移金属錯体の中心金属により異なるが、概ね−20〜30℃である。−20℃未満であると反応速度が遅く、また30℃を超えると光学純度が低くなりやすい。反応時間もまた、反応の種類、原料の種類または使用する遷移金属錯体の中心金属により異なるが、概ね1〜3時間である。
また、反応に使用する溶媒としては、特に制限されず、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、メタノール等のアルコール類、ジエチルエーテルまたはTHF等のエーテル類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類が挙げられる。該溶媒は、予め、常法により脱水処理をしたものを用いることが、遷移金属錯体の失活を防ぐことができる点で好ましい。
【0058】
本発明に係る遷移金属錯体は、一般式(5)の化合物が一般式(6)の遷移金属錯体と反応し、下記一般式(7)
[M(A)p(B)q(L)] (7)
または一般式(8)
[Mx(A)r(B)s(L)] (8)
で表わされる構造を有する遷移金属錯体である。
【0059】
一般式(7)中、Lは一般式(5)で表わされる化合物を示し、中心金属に配位することにより、不斉空間を構築する。また、M、A、B、p及びqは前記一般式(6)の遷移金属錯体と同様のものが挙げられ、pおよびqの値は、中心金属であるMの種類及び価数により変化する。
一般式(8)中、Lは一般式(5)で表わされる化合物を示し、Yは遷移金属錯体が正電荷を持つ場合に、対アニオンとなるものであり、例えば、四フッ化ホウ酸基(BF)、六フッ化リン酸基(PF)または六フッ化アンチモン基(SbF)が挙げられ、M、A、及びBは前記一般式(6)の遷移金属錯体と同様のものが挙げられる。また、xは1または2の整数を示し、rは0〜2の整数を示し、sは0〜4の整数を示しかつr+sは1以上であり、x、r及びsの値は、中心金属であるMの種類及び価数により変化する。
【0060】
ロジウム錯体としては、例えば、[RhCl(L)]、[RhBr(L)]、[RhI(L)]、[Rh(OAc)(L)]、等を挙げることができ、ルテニウム錯体としては、例えば、[RuCl(L)]、[RuBr(L)]、[RuCl(L)(DMF)]、[RuCl(L)]NEt等を挙げることができる。パラジウム錯体としては、例えば、[PdCl(L)]、[PdCl(L)]、[Pd(C)L]等を挙げることができ、銅錯体としては、例えば、[Cu(OTf)(L)]、[CuCN(L)]、[CuI(L)]等を挙げることができる。
【0061】
当該一般式(7)または(8)の遷移金属錯体は、公知の方法、社団法人日本化学会編、「第4版実験化学講座18、有機金属錯体」、丸善株式会社、1991年に記載の方法によって製造することができる。また、ロジウム錯体を製造する方法としては、社団法人日本化学会編、「第4版実験化学講座18、有機金属錯体」、第327から第139頁、丸善株式会社、1991年;J.Am.Chem.Soc.1994,116,4062−4066の方法が、ルテニウム錯体を製造する方法としては、講談社サイエンティフィック編、「合成化学者のための実験有機金属化学」、第391〜第411頁、丸善株式会社、1991年に記載の方法が、銅錯体を製造する方法としては、社団法人日本化学会編、「第4版実験化学講座18、有機金属錯体」、第440〜第450頁、丸善株式会社、1991年に記載の方法等が挙げられる。
【0062】
一例を挙げると、ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩のTHF溶液に、式(5)の化合物とTHF溶液を加えて、配位子交換することにより、[Rh(シクロオクタ−1,5−ジエン)(L)]BFを得ることができる。式(5)の化合物を配位子として有するロジウム錯体であることは、31P−NMR分析により得られるケミカルシフト及びカップリング定数により確認することができる。
【0063】
一般式(7)または(8)の遷移金属錯体は、配位子である一般式(5)の化合物が有効な不斉空間を構築しているので、触媒的不斉合成反応に適している。従って、一般式(7)または(8)の遷移金属錯体は、触媒的な不斉還元反応を良好に行うことができる。反応原料、還元剤、求核剤、使用する溶媒、反応温度、反応時間等は、前記した反応系中で遷移金属錯体を生成させる不斉合成反応と同様である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
【0065】
実施例1
<1−t−ブチル−ホスフェタン1−スルフィドの合成>
良く乾燥した2Lフラスコ内をアルゴンで十分置換し、ここにt−ブチルホスフィンの12%n−ヘキサン溶液150.2g(200mmol)と、1,3−ジクロロプロパン18.9mL(200mmol)を仕込み、溶媒のTHF 1Lを添加して−78℃に冷却した。このフラスコに滴下ロートを用いて濃度1.59mol/Lのn−ブチルリチウム277mL(440mmol)を1時間かけて滴下した。反応液を−78℃で1時間撹拌した後0℃に昇温し、硫黄粉末9.6g(300mmol)を一度に加えた。室温で2時間攪拌したのち、純水200mLを注意深く加えて反応を停止した。水層を分離し、有機層を純水200mL、飽和食塩水200mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去した。得られた粗製品をアルミナカラムにて精製し、ヘキサンから再結晶して目的とする1−t−ブチルホスフェタン−1−スルフィドが15.6g得られた。収率は48%であった。
【0066】
物性データ
融点120.0−120.8℃
H NMR(CDCl)δ1.30(d,HP=16.4Hz,9H),1.95−2.15(m,2H),2.25−2.65(m,1H),2.45−2.65(m,2H),2.60−2.80(m,2H)
13C NMR δ14.15(d,CP=21.1Hz),23.86(d,CP=2.7Hz),30.97(d,JCP=45.35Hz),33.92(d,JCP=34.71Hz)
31P NMR(H decoupled,CDCl)δ82.07(s)
IR(KBr)2960,1462,1362,945,718,678cm−1
HRMS計算値(C15PS(M))162.0632,測定値162.0631
【0067】
実施例2
<1−ボラナート−1−t−ブチル−ホスフェタンの合成>
良く乾燥した3Lフラスコ内をアルゴンで十分置換し、ここにt−ブチルホスフィンの10.6%n−ヘキサン溶液172g(200mmol)と、1,3−ジクロロプロパン18.9mL(200mmol)を仕込み、溶媒のTHF1.5Lを添加して−78℃に冷却した。このフラスコに滴下ロートを用いて濃度2.45mol/Lのn−ブチルリチウム171mL(420mmol)を2時間かけて滴下した。反応液を攪拌しながら3時間かけて0℃に昇温し、濃度1.13mol/Lのボラン−テトラヒドロフラン錯体のテトラヒドロフラン溶液195mL(220mmol)を加えた。0℃で1時間攪拌したのち、純水200mLを注意深く加えて反応を停止した。水層を分離し、有機層を純水200mL、1mol/L塩酸水溶液100mL、飽和食塩水200mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた粗製品を減圧下に蒸留し1−ボラナート−1−t−ブチルホスフェタンが16.7g得られた。収率は58%であった。
【0068】
物性データ
沸点91−93℃/6mmHg
HNMR(CDCl)δ0.67(br q,JHB=95.3Hz,3H),1.22(d,HP=14.0Hz,9H),1.95−2.10(m,2H),2.15−2.30(m,2H),2.30−2.45(m,1H),2.45−2.65(m,1H)
13C NMR δ18.00(d,JCP=38.5Hz),18.14(d,CP=17.4Hz),24.5(d,CP=3.8Hz),28.4(d,JCP=19.24Hz)
31P NMR(1H decoupled,CDCl)δ65.8(q,JPB=51.3Hz)
GCMS 143(M−H)
【0069】
実施例3
<(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィドの合成>
よく乾燥した300mL2口フラスコを十分アルゴン置換し、これにシリンジを用いてスパルテイン8.44g(36mmol)、続いて乾燥エーテル70mLを加えて撹拌する。ドライアイス/メタノールバスで−78℃に冷却後、s−BuLi(36mmol)をシリンジで加え1時間撹拌した。このフラスコに、実施例1で作成した1−t−ブチル−ホスフェタン1−スルフィド4.87g(30mmol)を脱水トルエン30mLに溶解した溶液を、反応温度を−78℃に保ったまま滴下ロートを用いて加えた。滴下時間は1時間であった。滴下終了後、−78℃にて5時間撹拌した後、塩化銅6.05g(45mmol)を一度に加えた。フラスコを2時間かけて室温に戻した後、さらに室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、150mLの25%アンモニア水を加えて反応を停止し、さらに酢酸エチル100mLを加えて分液した。水層を酢酸エチル100mLで3回抽出し、集めた有機層を5%アンモニア、2M HCl、純水、ブラインで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水し濃縮した。
濃縮物をショートカラム(シリカゲル、酢酸エチル)で粗精製したのち、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=5:1)で精製すると光学活性体とメソ体の混合物が約40%の収率で得られた。この混合物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/アセトン=5:1)で精製して光学純度95%eeの光学活性体を約30%の収率で得た。これを酢酸エチルより4回再結晶し、最終的に490mgの光学純度99%ee以上のジホスフェタンが得られた。収率は10%であった。
【0070】
物性データ
H NMR(CDCl)δ1.30(d,HP=17.0Hz,18H),1.95−2.15(m,4H),2.25−2.50(m,2H),2.55−2.75(m,2H),3.60−3.84(m,2H)
13C NMR δ19.53(dd,21.7Hz,18.0Hz),24.3(s),25.85(dd,JCP=47.2Hz,1.8Hz),35.41(dd,JCP=34.2Hz,2.5Hz),38.02(dd,JCP=44.7Hz,CP=6.8Hz)
31P NMR(1H decoupled,CDCl)δ90.29(s)
IR(KBr)2970,2947,2364,1460,1366,896,808,708,646cm−1
HRMS計算値(C1429(M+H))323.1186,測定値323.1198
元素分析 計算値(C1428):C,52.15;H,8.75.測定値:C,52.24;H,8.80.
[α]25−160°(95%ee,c0.99,CHCl
【0071】
実施例4
<(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジボラナート−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタンの合成>
よく乾燥した300mL2口フラスコを十分アルゴン置換し、実施例2で作成した1−ボラナート−1−t−ブチル−ホスフェタン4.32g(30mmol)を仕込んだ。このフラスコにシリンジを用いてスパルテイン8.44g(36mmol)、続いて乾燥エーテル70mLを加えて撹拌した。この溶液をドライアイス/メタノールバスで−78℃に冷却後、s−BuLi(36mmol)をシリンジでゆっくり加えた。滴下終了後、−78℃にて3時間撹拌した後、塩化銅6.05g(45mmol)を一度に加えた。フラスコを2時間かけて室温に戻した後、さらに室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、150mLの25%アンモニア水を加えて反応を停止し、さらに酢酸エチル100mLを加えて分液した。水層を酢酸エチル100mLで3回抽出し、集めた有機層を5%アンモニア、2M HCl、純水、ブラインで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水し濃縮した。濃縮物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20:1)で精製し、得られた溶質分を濃縮後ヘキサンから再結晶して、目的とするする(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジボラナート−1,1’−ジ−t−ブチル[2,2’]−ジホスフェタンが650mg得られた。収率は15%であった。この目的物をキラルHPLC(ダイセルOD−H、ヘキサン:2−プロパノール=99:1、0.5mL/min、UV210nm)で光学純度を測定したところ、100%eeであった。
【0072】
物性データ
融点147−149℃(分解)
H NMR(CDCl)δ0.60(br q,JHB=106.0Hz,6H),1.23(d,18H),1.64−1.81(m,2H),1.96−2.20(m,4H),2.30−2.62(m,2H),3.10−3.34(m,2H)
13C NMR δ13.74(d,JCP=39.8Hz),22.84(dd,CP=13.1Hz,CP=15.5Hz),24.89(d,CP=3.1Hz),29.64(d,JCP=16.8Hz),32.15(d,JCP=34.2Hz)
31P NMR(1H decoupled,CDCl)δ67.8−69.9(m)
【0073】
実施例5
<(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタンの合成>
アルゴン気流下100mL2口フラスコ中に(1R,1R’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル[2,2’]−ジホスフェタニル1,1’−ジスルフィド129mg(0.4mmol)を脱気した乾燥ベンゼン8mLに溶解した。このフラスコに1.56g(5.8mmol)のヘキサクロロジシランを加えた。反応液を3時間加熱還流させたのち、0℃に冷却した。この冷却したフラスコに30%水酸化ナトリウム水溶液を十分に注意しながら滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、フラスコを水層が透明になるまで50℃に加熱し攪拌した。有機層をシリンジで抜き取り、水層を脱気したヘキサンで2回抽出した。有機層を集め無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去して粗製品を得た。これを塩基性アルミナカラムで精製して78mgの(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル[2,2’]−ジホスフェタンを得た。収率は75%であった。得られた化合物は非常に酸化されやすいため、そのままロジウム錯体へ導いた。
【0074】
実施例6
<[ロジウム(I)((1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン)(ノルボルナジエン)]テトラフロロボレートの合成>
アルゴン気流下、先の実施例で得られた(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン78mg(0.3mmol)をTHF4mLに溶解した。この溶液を0℃に冷却した[ロジウム(I)(ジノルボルナジエン)]テトラフロロボレート102mg(0.27mmol)とTHF10mLの懸濁液に加えた。反応液を室温で3時間攪拌した。反応終了後、不溶分をアルゴン気流下セライトカラムを用いて濾過した。濾液をエバポレーターで濃縮し、精製したオレンジ色の固体を5mLのジエチルエーテルで2回洗浄し、減圧乾燥した。この粗製品を少量のTHFより再結晶し目的とするロジウム触媒を31mg得た。収率は20%であった。
【0075】
物性データ
31P NMR(1H decoupled,CDCl)δ114.90(d,JPRh=147Hz)
【0076】
実施例7
<(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタンの合成>
アルゴン気流下50mL2口フラスコ中に(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジボラナート−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン143mg(0.5mmol)を脱気した乾燥ジクロロメタン3mLに溶解し0℃に冷却した。このフラスコにテトラフルオロホウ酸・ジエチルエーテル錯体0.68mL(5mmol)を、マイクロシリンジを用いて加えた。反応液を室温で12時間攪拌した後、0℃に冷却した。この冷却したフラスコに1mol/L炭酸水酸ナトリウム水溶液12mLを十分に注意しながら滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後2時間攪拌し、脱気したジエチルエーテルを加えて有機物を3回抽出した。抽出した有機層を集め無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去して粗製品を得た。これを塩基性アルミナカラムで精製して107mgの(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタンを得た。収率は83%であった。得られた化合物は非常に酸化されやすいため、そのままロジウム錯体へ導いた。
【0077】
実施例8
<[ロジウム(I)((1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン)(ノルボルナジエン)]ヘキサフルオロホスフェートの合成>
アルゴン気流下、実施例7で得られた(1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン107mg(0.41mmol)をジクロロメタン2mLに溶解した。この溶液を0℃に冷却した[ロジウム(I)(ジノルボルナジエン)]ヘキサフルオロホスフェート160mg(0.37mmol)とTHF5mLの懸濁液に加えた。反応液を室温で3時間攪拌した。反応終了後、不溶分をアルゴン気流下メンブランフェイルターを用いて濾過した。濾液をエバポレーターで濃縮し、生成したオレンジ色の固体を5mLのジエチルエーテルで2回洗浄し、減圧乾燥し表題化合物を得た。
【0078】
物性データ
融点130℃(分解)
H NMR(CDCl)δ1.23(d,JHB=12.2Hz,18H),1.83(m,2H),1.07(m,2H),2.21(m,4H),2.43(m,2H),2.77(m,2H),4.26(s,2H),5.74(d,J=25.1Hz,2H),5.75(d,J=4.6Hz,2H)
31P NMR(1H decoupled,CDCl)δ114.8(d,JP−Rh=148Hz),143.7(h,JP−F=711Hz)
IR(KBr)2940,1465,1310,1180,840,560cm−1
【0079】
実施例9
<ロジウム触媒を用いたα−アセトアミド桂皮酸メチルの不斉還元>
マグネチックスターラーを入れた50mLのガラス製オートクレーブに、基質のα−アセトアミド桂皮酸メチル219mg(1mmol)と、先の実施例6で合成した触媒の[ロジウム(I)((1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン)(ノルボルナジエン)]テトラフロロボレート1mg(0.002mmol)を仕込んだ。反応系内を十分に水素ガスで置換したのち、オートクレーブのコックを一部開けて、溶媒のメタノール5mLを素早く加え密封した。このオートクレーブをドライアイス−エタノールバスに浸して冷却し、反応系内を真空引きし、水素ガス(2気圧)でブレークした。これを4回繰り返した後、バスをはずして水素圧の減少がなくなるまで室温にて3時間攪拌した。反応終了後、水素ガスを注意深くブレークし、得られた反応液をそのままキラルHPLC(ダイセルOD−H、ヘキサン:2−プロパノール=9:1)で分析した。分析の結果、得られた還元体は反応収率99%以上、光学純度96.8%であった。
【0080】
<デヒドロアミノ酸誘導体、及びエナミド誘導体の不斉水素化反応>
(実施例10〜22)
実施例8で合成した触媒の[ロジウム(I)((1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン)(ノルボルナジエン)]ヘキサフルオロホスフェート6mg(1.0×10−2mmol)と表1に示すデヒドロアミノ酸誘導体(またはエナミド誘導体)1mmolを50mLオートクレーブに仕込み、系内を4回真空引−水素パージを実施した。オートクレーブを常圧に戻し、コックを開けてここから脱気脱水したメタノール4mLを素早くシリンジを用いて加え、コックを閉じた。この反応缶をドライアイス−エタノールで冷却し、再び系内を4回真空引−水素パージを実施した後に水素圧を所定の圧力に設定し、冷媒を外してマグネチックスターラーで水素の消費が止まるまで撹拌した。反応終了後、反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒酢酸エチル)に通して触媒を除去した後、エバポレーターにて濃縮することで還元された生成物が得られた。いずれの反応においても収率はほぼ100%であった。得られた生成物の光学純度(ee)をキラルHPLCまたはキラルGCにて分析した。結果を表1に示す。なお、ここで示す結果は基質:触媒=100:1である。
【0081】
【表1】

【0082】
表中、
a.Arとは3−メトキシ−4−アセチルオキシ−フェニル基である。
b.Conf.とは生成物における不斉点の絶対配置のことである。
c.キラルGCまたはキラルHPLCにより決定した。
【0083】
実施例23
<α−アセトアミド桂皮酸メチルの不斉水素化反応を用いた[ロジウム(I)((1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン)(ノルボルナジエン)]ヘキサフルオロホスフェートの触媒活性試験:基質:触媒=50000:1>
10mLの二口ナスフラスコにマグネチックスターラーを入れて、ここに実施例8で作成した[ロジウム(I)((1S,1S’,2R,2R’)−1,1’−ジ−t−ブチル−[2,2’]−ジホスフェタン)(ノルボルナジエン)]ヘキサフルオロホスフェート2mg(3.3μmol)を正確に計り仕込んだ。フラスコ系内をアルゴンで置換した後、脱気脱水したメタノール2mLを、シリンジを用いて正確に採取し、フラスコ内に加えて完全に均一な溶液になるまで攪拌をした。次に50mLのオートクレーブにマグネチックスターラー、ついで基質のα−アセトアミド桂皮酸メチル779mg(3.3mmol)を仕込んだ。ここに、上記で調製した触媒のメタノール溶液(濃度1.66μmol/mL)を、マイクロシリンジにて正確に40μL採取しオートクレーブに加えた。なお、このオートクレーブ中には基質は3.3mmol、触媒は6.7×10−2μmol含まれおり、基質:触媒の比は50000:1となる。次にオートクレーブ系内をアルゴン置換し、脱気脱水したメタノール4mLを素早く加え密封した。このオートクレーブをドライアイス−エタノールバスに浸して冷却し、反応系内を真空引きし、水素ガスでブレークした。これを4回繰り返した後、オートクレーブの内圧を6気圧まで高め、バスをはずして水素圧の減少がなくなるまで室温にて攪拌したところ43時間にてゲージ圧の減少が止まったので反応終了とした。反応終了後、水素ガスを注意深くブレークし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒酢酸エチル)に通して触媒を除去した後、エバポレーターにて濃縮することで還元された生成物が得られた。収率はほぼ100%であった。得られた生成物の光学純度(ee)をキラルHPLC(ダイセルOD−H、ヘキサン:2−プロパノール=9:1)で分析した。分析の結果、得られた還元体は光学純度99%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、光学活性なリン複素環の二量体を得ることができ、これを配位子とする遷移金属錯体は、不斉水素化触媒として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜20のアルキル基を示す)
で表わされる一級ホスフィンに下記一般式(2)
【化2】

(式中、Yはハロゲン原子または−OTs、−OTf、−OMsから選ばれる脱離基を示し、nは3〜6の数を示す)で表わされる化合物を塩基の存在下で作用させ、続いて三水素化ホウ素、酸素または硫黄を作用させて下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは前記と同義、nは1〜4の数、Xは三水素化ホウ素基、酸素原子、硫黄原子を示し、===はXが三水素化ホウ素基の時は単結合を示し、Xが酸素原子、硫黄原子の時は二重結合を示す)で表わされるリン複素環化合物を得、該化合物を二量化することにより下記一般式(4)
【化4】

(式中、R、n及びXは前記と同義)で表わされるリン複素環の二量体を得、続いて該リン複素環の二量体を脱酸素、脱硫黄、または脱ボラン処理し、下記一般式(5)
【化5】

(式中、R及びnは前記と同義)で表わされる光学活性なリン複素環の二量体を得ることを特徴とする、リン複素環の二量体の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/010014
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512060(P2005−512060)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010671
【国際出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】