説明

光学活性アルコールまたはカルボン酸の製造方法

本発明は、活性成分がルテニウムまたはレニウムからなり、少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素を含む触媒の存在下に、対応するように置換された光学活性モノもしくはジカルボン酸またはそれの酸誘導体を水素化することによる、3〜25個の炭素原子を有する光学活性ヒドロキシ−、アルコキシ−、アミノ−、アルキル−、アリール−または塩素−置換アルコールもしくはヒドロキシカルボン酸またはそれの酸誘導体もしくは環化生成物の製造方法であって、
ただし、
a.前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がルテニウム以外であり;
b.対応する光学活性2−アミノカルボン酸、2−クロロカルボン酸、2−ヒドロキシカルボン酸および2−アルコキシカルボン酸またはそれらの酸誘導体を接触水素化することで光学活性2−アミノ−、2−クロロ−、2−ヒドロキシ−および2−アルコキシ−1−アルカノールを製造する場合に、前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がパラジウムおよび白金以外である方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応するように置換された光学活性モノ−またはジカルボン酸類またはそれらの酸誘導体を水素化することによる、3〜25個の炭素原子を有する光学活性なヒドロキシ−、アルコキシ−、アミノ−、アルキル−、アリール−または塩素−置換アルコール類またはヒドロキシカルボン酸類またはそれらの酸誘導体もしくは環化生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の標的化合物は、安価に得ることが困難な医薬、香料および他の有機ファインケミカル剤の製造のための、医薬業界および化粧品業界における貴重な中間体を構成するものである。
【0003】
EP−A0696575には、50〜150℃の温度および5〜300バールの圧力で、水素によって還元されたRu触媒の存在下に対応するアミノ酸を水素化することで光学活性アミノアルコールを製造する方法について記載されている。
【0004】
EP−A0717023は、<160℃の温度および<250バールの圧力で、水素によって還元されたRu触媒の存在下に対応する光学活性カルボン酸を還元することで光学活性アルコールを製造する方法に関するものである。
【0005】
WO99/38838には、酸を加えたビ−またはトリ金属系未担持または担持Ru触媒で対応するアミノ酸を水素化することで、光学活性アミノアルコールを製造する方法が記載されている。
【0006】
WO99/38613には、ルテニウムおよび少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の金属を含む未担持水素化触媒の製造が記載されている。これらの触媒を用いると、温和な条件下でカルボン酸およびそれの誘導体を水素化することが可能である。エナンチオマー的に純粋な基質の場合、達成可能なエナンチオマー奏功率は、80%以下の収率で最大98.8%である。
【0007】
WO99/38824には、水素で還元されており、少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の金属を含むRu触媒の存在下に光学活性カルボン酸を還元することで光学活性アルコールを製造する方法が記載されている。
【0008】
EP−A1051388には、キラルα−アミノ酸またはα−ヒドロキシ酸を60〜100℃および200バールの水素圧で還元して対応するキラルアルコールとすることができる未担持Ru/Re懸濁液触媒が記載されている。
【0009】
US−4659686には、リンゴ酸の水素化でPt族金属およびRe/炭素を含むアルカリ金属またはアルカリ土類金属でドーピングした触媒を用いると、形成される反応生成物がテトラヒドロフラン(THF)および/またはブタンジオール(BDO)であることが開示されている。1,2,4−ブタントリオールは、これらの触媒を用いた場合は認められない。
【0010】
EP−A147219には、Pd−Re触媒ならびにTHFおよびBDOの製造方法におけるそれの使用が記載されている。実施例39には、200℃および170バールでのリンゴ酸の水素化によって、66%の収率でTHFと21%でBDOが得られることが示されている。1,2,4−ブタントリオールは認められない。
【0011】
ある文献(Adv. Synth. Catal. 2001, 343, No.8)には、α−アミノ酸エステルおよびα−ヒドロキシカルボン酸エステルのラセミ化を起こさない水素化におけるニシムラ(Nishimura)触媒(Ru−Pt酸化物)の使用が記載されている。しかしながら、その場合には、多量(10重量%)の高価な触媒系が必要である。さらに、最初に、遊離カルボン酸をさらなる合成段階で対応するエステルに変換しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
カルボン酸の水素化におけるRu触媒使用の問題点は、使用されるリアクタントまたは得られる生成物を脱カルボニル化して、一酸化炭素を放出する高い傾向をそれが有することである。関連する高い圧力上昇に加えて、放出された一酸化炭素のメタンへの還元は、非常に大きい安全上のリスクを生じる。
【0013】
本発明の目的は、使用されるリアクタントおよび形成される生成物の望ましくない脱カルボニル化が実質的にかなり防止される光学活性カルボン酸またはそれの酸誘導体の対応する光学活性アルコールへの水素化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、活性成分がルテニウムまたはレニウムからなり、少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素を含む触媒の存在下に、対応するように置換された光学活性モノもしくはジカルボン酸またはそれの酸誘導体を水素化することによる、3〜25個の炭素原子を有する光学活性ヒドロキシ−、アルコキシ−、アミノ−、アルキル−、アリール−または塩素−置換アルコールもしくはヒドロキシカルボン酸またはそれの酸誘導体もしくは環化生成物の製造方法であって、
ただし、
a.前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がルテニウム以外であり;
b.対応する光学活性2−アミノカルボン酸、2−クロロカルボン酸、2−ヒドロキシカルボン酸および2−アルコキシカルボン酸またはそれらの酸誘導体を接触水素化することで光学活性2−アミノ−、2−クロロ−、2−ヒドロキシ−および2−アルコキシ−1−アルカノールを製造する場合に、前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がパラジウムおよび白金以外である方法を提供することで達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による方法は、直鎖、分岐もしくは環状であることができ、不斉置換炭素原子にそれぞれ結合した少なくとも1個、代表的には1〜4個の置換基を有することができる3〜25、好ましくは3〜12個の炭素原子を有する光学活性なモノまたはジカルボン酸を水素化する上で好適である。この方法は、言及した置換カルボン酸の酸誘導体を水素化する上でも同じように好適である。本明細書において、本発明の全体的な文脈の範囲内で、酸誘導体という用語は、その酸官能基がエステル、部分エステル、無水物またはアミドの形態で、好ましくはエステルまたは部分エステルの形態で存在することを意味する。
【0016】
本発明の文脈では、光学活性化合物とは、それ自体でまたは溶解した形で、通過する直線偏光の偏光面を回転させる能力を有する化合物を指す。立体中心を有する化合物は、2つのエナンチオマーの非ラセミ混合物、すなわちその2つのエナンチオマーが等しい割合で存在しない混合物である。複数の立体中心を有する化合物の変換の場合、異なるジアステレオマーが得られる場合があり、それはそれぞれ単独で見ると、光学活性化合物と見なされるべきものである。
【0017】
不斉置換炭素原子に結合した可能な置換基には、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキル、アリールまたは塩素置換基などがあり、アルコキシ置換基とは特には酸素原子に結合した有機基が1〜8個の炭素原子を有するものを指し、アミノ置換基は遊離アミンの形で存在することができるか、または好ましくはアンモニウム塩としてプロトン化された形で存在することができ、適切であれば、それぞれ1〜5個の炭素原子を有する1もしくは2個の有機基を有し、前記アルキル置換基は1〜10個の炭素原子を有し、前記アリール置換基は3〜14個の炭素原子を有し、それ自体が反応条件下で好適な置換基を有することができ、前記アリール置換基は、1〜3個のヘテロ原子、例えばN、Sおよび/またはOを有することもできる。
【0018】
上記の置換基は原則として、変換されるモノまたはジカルボン酸上のいずれか可能な箇所で結合していることができる。本発明の文脈で好ましい基質は、水素化される酸官能基に対してα位またはβ位、より好ましくはα位で不斉炭素原子上に少なくとも1個の前記置換基を有するものである。
【0019】
ジカルボン酸の変換の場合、本発明の水素化反応は、所望に応じて、基質分子に存在するカルボン酸官能基またはカルボン酸誘導体の一方のみまたは両方が水素化されてヒドロキシル官能基となるように行うことができる。
【0020】
例えば、本発明による方法は、下記式光学活性カルボン酸またはそれの酸誘導体:
【化1】

【0021】
[式中、基はそれぞれ下記のように定義される。
【0022】
は、直鎖および分岐のC〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C14−アリールであり;前記の基はNR、OH、COOHおよび/または反応条件下で安定な別の基によって置換されていても良く;
は、水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり;
X、Yはそれぞれ独立に、水素、塩素、NRまたはOR、直鎖もしくは分岐C〜C10−アルキルまたはC〜C14−アリールであり;ただし、X基もしくはY基のうちの少なくとも一方が水素以外であり;
XとRまたはYとRが一体となって、5〜8員環であっても良く;
、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、直鎖および分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキル、C〜C14−アリール、C〜C−シクロアルキル、または1個のCH基がOまたはNRによって置き換わっているC〜C−シクロアルキルであり;
とRおよびRとRがそれぞれ独立に一体となって、−(CH−でもあり、mは4〜7の整数であり;
とRが一体となって、−(CH−でもあり、nは2〜6の整数であり;
は、水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり;
とRが一体となって−(CH−でもあり、nは2〜6の整数であり;
は水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C14−アリールである。]またはそれの酸無水物を対応する光学活性アルコールに変換する上で好適である。
【0023】
基は、広い範囲で変動可能であり、例えばNR、OHおよび/またはCOOHなどの反応条件下で安定な1〜3個の置換基を有していても良い。
【0024】
基の例には、
メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジ−メチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルなどのC〜C−アルキル;
〜C−アルキル(上記)または未分岐または分岐ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデカデシルなどのC〜C12−アルキル;
フェニルメチル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピルまたは3−フェニルプロピルなどのC〜C12−アラルキル;
フェニル、ナフチルまたはアントラセニルなどのC〜C14−アリール(芳香族基はNR10、OHおよび/またはCOOHなどの置換基を有していても良い)などがある。
【0025】
についての定義の例には、
水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキル(上記)またはC〜C−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルがある。
【0026】
カルボン酸エステルに代えて、使用されるカルボン酸誘導体は酸無水物であっても良い。
【0027】
X基およびY基はそれぞれ独立に塩素、NRまたはORであり;RおよびRまたはRおよびR10は、ちょうどRおよびRのように、それぞれ独立に、水素、直鎖および分岐C〜C12−アルキル、特にはC〜C−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C14−アリール、特にはフェニルまたはC〜C−シクロアルキル(各場合で、RおよびR基について前述の通りである)であり、X基およびY基のうちの少なくとも一方が水素以外である。
【0028】
XおよびR基またはYおよびR基が一体となって、5〜8員の飽和もしくは不飽和で置換されていても良い環、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロオクチル基であっても良い。
【0029】
とR、RとRおよびRとR10基が一体となって、それぞれ独立に−(CH−であっても良く、mは4〜7の整数、特には4または5の整数である。1個のCH基がOまたはNRによって置き換わっていても良い。
【0030】
基とR基が一体となって、−(CH−であっても良く、nは2〜6の整数である。
【0031】
基は好ましくは水素または直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキル、より好ましくはメチル、エチル、1−メチルエチル、1,1−ジメチルエチル、ヘキシル、シクロヘキシルまたはドデシルである。Rと一体となって、それは−(CH−であっても良く、nは2〜6の整数である。
【0032】
パラジウムおよびレニウムまたは白金およびレニウムを含む触媒の存在下に光学活性2−アミノ−、2−クロロ−、2−ヒドロキシ−および2−アルコキシ−1−アルカノールを製造する場合、2−アミノ−、2−クロロ−、2−ヒドロキシ−および2−アルコキシカルボン酸およびそれらの酸誘導体は、本発明に従って変換される化合物群から除外される。
【0033】
本発明による方法は、光学活性ジカルボン酸またはそれの酸誘導体、特には下記式(II)のもの:
【化2】

【0034】
[式中、
X′、Y′はそれぞれ独立に、水素、塩素、NR5′6′またはOR7′、直鎖もしくは分岐C〜C10−アルキルまたはC〜C10−アリールであり;ただし、X′またはY′基のうちの少なくとも一つは水素以外であり;
1′、R2′はそれぞれ独立に、水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり;
nは0〜8の整数であり;
5′、R6′はそれぞれ独立に、水素、直鎖および分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキル、C〜C14−アリール、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C−シクロアルキル(1個のCH基がOまたはNRによって置き換わっている)であり、一体となって−(CH−でもあり(mは4〜7の整数である);
7′は、水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり;
8′は、水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C14−アリールである。]を、対応する光学活性ヒドロキシカルボン酸またはそれの酸誘導体に変換する上で、または両方のカルボン酸官能基の水素化の場合には、対応する光学活性置換ジオールに変換する上でも好適である。例えば、光学活性ヒドロキシジカルボン酸を水素化して対応する光学活性トリオールとすることも可能である。
【0035】
1′およびR2′は、例を挙げると、それぞれ独立に、下記の定義:すなわち水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキル(式IにおけるR基について上記で記載した通りである)またはC〜C−シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルであることができる。
【0036】
カルボン酸エステルに代えて、使用されるカルボン酸誘導体は酸無水物であることもできる。
【0037】
X′およびY′基はそれぞれ独立に、水素、塩素、NR5′6′またはOR7′であり;R5′およびR6′はそれぞれ独立に水素、直鎖および分岐C〜C12−アルキル、特にはC〜C−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C14−アリール、特にはフェニルまたはC〜C−シクロアルキルである(各場合で、式IにおけるRおよびR基について上記で記載の通りである)。
【0038】
5′およびR6′基は、それぞれ独立に一体となって、−(CH−であっても良く、mは4〜7、特には4または5の整数である。1個のCH基がOまたはNR8′によって置き換わっていても良い。
【0039】
7′基は好ましくは、水素または直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキル、より好ましくはメチル、エチル、1−メチルエチル、1,1−ジメチルエチル、ヘキシル、シクロヘキシルまたはドデシルである。
【0040】
例えば式IIのものなどの光学活性ジカルボン酸を水素化することで本発明による方法によって得ることが可能な光学活性ヒドロキシカルボン酸またはジオールは、好適な条件下で、分子内環化によって、例えばラクトン類、ラクタム類または環状エーテル類などの光学活性環化生成物を形成することもできる。好ましい環化生成物は、ラクトン類および環状エーテル類であり、光学活性ジカルボン酸の水素化とそれに続く環化によるそれらの光学活性型での製造も、本発明の主題の一部を形成するものである。式IIの光学活性ジカルボン酸を原料として本発明の方法で得ることができる好ましい光学活性ラクトン類は、例えば下記式IIIまたはIVのものである。
【化3】

【0041】
式中、X′、Y′基およびnはそれぞれ、式IIに関して定義の通りである。
【0042】
式IIの光学活性ジカルボン酸を原料として本発明の方法で光学活性型で得ることができる好ましい環状エーテル類は、例えば下記式VまたはVIのものである。
【化4】

【0043】
式中、X′、Y′基およびnはそれぞれ、式IIについて定義の通りである。
【0044】
このようにして、本発明による方法によって、例えば光学活性型での下記のラクトン:2−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、2−クロロ−γ−ブチロラクトン、3−クロロ−γ−ブチロラクトン、2−アミノ−γ−ブチロラクトン、3−アミノ−γ−ブチロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン、3−メチル−γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−δ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ−δ−バレロラクトンを得ることが可能となる。
【0045】
これらのうち、本発明の製造方法の文脈で特に好ましいものは、光学活性型での3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンである。
【0046】
本発明による方法によって光学活性型で入手可能となる環状エーテルの例には、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよび2−アミノテトラヒドロフランなどがある。
【0047】
本発明による方法の好ましい実施形態は、パラジウムおよびレニウムまたは白金およびレニウムを含む触媒を用いる、対応するように置換された光学活性3−ヒドロキシ−、3−アルコキシ−、3−アミノ−、3−アルキル−、3−アリール−または3−クロロモノカルボン酸またはそれの酸誘導体を原料とする光学活性3−ヒドロキシ−、3−アルコキシ−、3−アミノ−、3−アルキル−、3−アリール−または3−クロロ−1−アルカノールの製造に関するものである。
【0048】
従って、パラジウムおよびレニウム(rhersium)または白金およびレニウムを含む触媒を用い、本発明の方法で、例えば式VIIの光学活性カルボン酸またはそれの酸誘導体を変換することで、3−ヒドロキシ−、3−アルコキシ−、3−アミノ−、3−アルキル−、3−アリール−または3−クロロアルコールまたはジオールを得ることが可能である。
【化5】

【0049】
式中、基はそれぞれ以下で定義の通りである。
【0050】
1″は、直鎖および分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C14−アリールであり;前記の基はそれぞれ、NR3″4″、OH、COOR2″′および/または反応条件下で安定な別の基であることができ;
2″、R2″′はそれぞれ独立に、水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり;
Y″は、塩素、NR5″6″またはOR7″、直鎖もしくは分岐C〜C10−アルキルまたはC〜C14−アリールであり;
3″、R4″、R5″およびR6″はそれぞれ独立に、水素、直鎖および分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキル、C〜C14−アリール、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり、1個のCH基がOまたはNR8″によって置き換わっており;
3″とR4″、およびR5″とR6″がそれぞれ独立に、一体で−(CH−でもあり、mは4〜7の整数であり;
1″およびR5″が一体となって、−(CH−でもあり、nは2〜6の整数であり;
7″は水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルであり;
1″およびR7″が一体で−(CH−でもあり、nは2〜6の整数であり;
8″は水素、直鎖もしくは分岐C〜C12−アルキル、C〜C12−アラルキルまたはC〜C10−アリールである。
【0051】
記載の基の例は、式Iにおける基について言及したものに相当する。
【0052】
本発明による方法の別の好ましい実施形態は、パラジウムおよびレニウムまたは白金およびレニウムを含む触媒を用いる、それぞれ対応するように置換された光学活性2−アルキル−および2−アリールカルボン酸またはそれらの酸誘導体を原料とする光学活性2−アルキル−および2−アリール−1−アルカノールの製造に関するものである。そのアルキルおよびアリール置換基はそれぞれ、式IにおけるXおよびY基について定義の通りである。
【0053】
本発明による方法におって光学活性型で得ることができる好ましい化合物の例には、
1,2−および1,3−アミノアルコール類、例えばα−アラニノール、さらには各場合でαまたはβ型でのロイシノール、イソセリノール、バリノール、イソロイシノール、セリノール、トレオニノール、リジノール、フェニルアラニノール、チロシノール、プロリノール、さらには対応する光学活性α−またはβ−アミノ酸またはそれらの酸誘導体の変換によってアミノ酸であるオルニチン、シトルレイン(citrulleine)、アスパルチン(aspartine)、アスパラギン酸、グルタミンおよびグルタミン酸から得ることができるアルコール;
1,2−および1,3−アルカンジオール類、例えば対応する光学活性α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸またはそれらの酸誘導体を変換することによる1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール;
1,2−および1,3−クロロアルコール類、例えば対応する光学活性α−またはβ−クロロカルボン酸、α−またはβ−クロロ−ジカルボン酸またはそれらの酸誘導体を変換することによる2−クロロプロパノール;
1,2−および1,3−アルキルアルコール類、例えば対応する光学活性α−またはβ−アルキルカルボン酸またはそれらの酸誘導体を変換することによる2−メチル−1−ブタノール、2,3−ジメチルブタン−1,4−ジオール、2−メチルブタン−1,4−ジオール;
トリオール類、例えば対応する光学活性α−またはβ−ヒドロキシヒドロキシジカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸またはそれらの酸誘導体、例えば3,4−ジヒドロキシ酪酸を変換することによる、対応する光学活性ジカルボン酸を変換することによる1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール
などがある。
【0054】
本発明による水素化法を行う上で好適なものは、活性成分がRe、例えばReスポンジまたは好適な担体上のレニウム(例えばRe/活性炭)、TiO、ZrOまたは高表面活性グラファイトからなる触媒、または活性成分がレニウムおよび少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素を含み、その少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がルテニウム以外である触媒である。
【0055】
本発明による方法の文脈で好ましい触媒は、活性成分がレニウムおよびRh、Ir、Cu、Ag、Au、Cr、Mo、W、CoおよびNiという元素の群から選択される少なくとも1種類の別の元素を含むものである。
【0056】
特に好ましいものは、活性成分がレニウムおよびPd、Pt、Rh、Irという元素の群から選択される少なくとも1種類の別の元素を含むものである。特別に好ましいものは、活性成分がPd、Pt、Rh、Irという元素の群から選択される別の元素からなる触媒である。次に、これらのうちで好ましいものは、活性成分がReおよびRh、Irの元素の群から選択される別の元素からなる触媒である。
【0057】
本発明の触媒は、未担持触媒または担持触媒として用いて、良好な結果を得ることができる。担持触媒は、選択された活性成分が好適な担体の表面に加えられているという特徴を有する。本発明の水素化法を行うためには、特に好ましいものは、高い表面性を有することから、比較的少量の活性金属を必要とする担持触媒である。
【0058】
未担持触媒は、例えば、金属型もしくは化合物型でのレニウムおよび別の本発明の活性成分、例えば酸化物、酸化物水和物、炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、ウェルナー錯体、有機金属錯体もしくはキレート錯体またはそれらの混合物でのレニウムおよび別の本発明の活性成分の水系もしくは有機媒体中のスラリーおよび/または溶液を還元することで製造することができる。
【0059】
触媒を担持触媒の形で用いる場合、好ましいものは活性炭、カーボンブラック、グラファイト、高表面活性グラファイト(HSAG)、SiO、Al、TiO、ZrO、SiC、粘度、ケイ酸塩、モンモリロナイト、ゼオライトまたはそれらの混合物などの担体である。担体材料として用いるには、特に好ましいものは活性炭、グラファイト、HSAG、TiOおよびZrOである。
【0060】
炭素系の担体(活性炭、グラファイト、カーボンブラック、HSAG)の場合、本発明によれば、例えばHNO、H、O、空気、O、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸、過塩素酸、硝酸塩などの一般の酸化防止剤および/またはHNO、HPO、HClまたはHCOOHなどの酸で担体材料を酸化的に処理することが有利である。特に好ましくは、HNO、HPOまたはHCOOHで前処理する。担体は、金属を加える前またはその途中で処理することができる。その前処理によって、本発明の水素化における担持触媒の活性および選択性を改善することができる。
【0061】
本発明の担持触媒は代表的には、金属の形または化合物の形での約0.01〜50重量%のレニウムおよび金属の形もしくは化合物の形またはそれらの混合物での0.01〜30重量%のルテニウムを除く原子番号22〜83を有する少なくとも1種類の別の元素を含む。これらの重量%データは、各場合で触媒の総重量に基づいたものであり、金属の形で計算したものである。
【0062】
金属として計算されるレニウムの割合は、担持触媒の総重量に基づいて好ましくは約0.1〜30重量%、より好ましくは約1〜20重量%である。
【0063】
ルテニウムを除く原子番号22〜83を有する少なくとも1種類の別の元素の割合は、最終担持触媒の総重量に基づいて好ましくは約0.1〜20重量%、より好ましくは約1〜10重量%である。
【0064】
使用されるレニウム成分は代表的には、Re、ReO、ReCl、ReCl、HReO、Re(CO)Cl、Re(CO)BrもしくはRe(CO)10またはレニウム錯体である。特に好ましいものは、ReおよびHReOである。
【0065】
レニウムに加えて、ルテニウムを除く原子番号22〜83を有する別の元素は代表的には、金属、酸化物、酸化物水和物、炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ウェルナー錯体、キレート錯体またはハロゲン化物の形で担体材料に加えられる。好ましいものは、Pt、Pd、RhまたはIrの化合物である。特別に好ましいものは、硝酸塩の形でのIrおよびRhである。
【0066】
活性成分の付与は、1以上の段階での特定の溶解させた塩もしくは酸化物または溶解させた酸化物コロイドもしくは金属コロイドの水系もしくはアルコール系溶液での含浸によって、または水系もしくはアルコール系溶液に溶かした塩もしくは酸化物または溶解させた酸化物コロイドもしくは金属コロイドの1以上の段階での平衡吸着によって行うことができる。個々の平衡吸着または含浸段階の間で、各場合に乾燥段階を行って、溶媒を除去することができ、所望に応じて焼成段階および還元段階を行うことができる。
【0067】
乾燥は有利には、各場合で約25〜約350℃、好ましくは約40〜約280℃、より好ましくは約50〜約150℃の温度で行う。
【0068】
所望に応じて、約100〜800℃、好ましくは約200〜約600℃、より好ましくは約300〜約500℃の範囲の温度での、各付与後の焼成または乾燥段階を行う。
【0069】
所望に応じて、各付与段階後に還元を行うことができる。
【0070】
本発明に従って使用可能な担持触媒製造の特定の実施形態では、ルテニウムを除く原子番号約22〜83を有する金属を、特定の酸化物、酸化物水和物、炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ウェルナー錯体、キレート錯体またはハロゲン化物から第1の含浸段階で担体に付与し、次に乾燥段階を行い、所望に応じて焼成段階および所望に応じて還元段階を行う。その後、所望に応じて、特定の酸化物、酸化物水和物、炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ウェルナー錯体、キレート錯体またはハロゲン化物から、ルテニウムを除く原子番号約22〜83を有する1以上の金属でさらに含浸を行い、それに続いて乾燥と所望に応じて焼成を行う。最後の製造段階で、レニウムを、Re、ReO、ReCl、ReCl、HReO、Re(CO)Cl、Re(CO)BrまたはRe(CO)10の形で担体に付与する。最後に、さらなる乾燥段階と所望に応じて焼成段階を行う。
【0071】
本発明の担持触媒製造のさらなる手段は、レニウムおよび特定の酸化物、酸化物水和物、炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ウェルナー錯体、キレート錯体またはハロゲン化物から、ルテニウムを除く原子番号約22〜83を有する少なくとも1種類の別の金属成分の担体材料上への無電界成膜にある。無電界成膜は有利には、例えばアルコール類または次亜リン酸ナトリウム、ギ酸、ギ酸アルカリ金属、特にはギ酸ナトリウムなどの還元剤を加えることで、担体材料および特定の金属化合物の水系およびアルコール系スラリーで行う。特に好ましいものは、エタノールおよびNaHPOである。
【0072】
成膜後、乾燥段階は有利には、約25〜約350℃、好ましくは約40〜約280℃、より好ましくは約50〜約150℃の範囲の温度で行う。
【0073】
所望に応じて焼成は、約100〜約800℃、好ましくは約200〜約600℃、より好ましくは約300〜約500℃に範囲の温度で成膜後に行うことができる。
【0074】
本発明に従って使用される触媒は、代表的には使用前に活性化する。無電界成膜によって製造される触媒の場合、この活性化段階は所望に応じて省略することができる。好ましくは、水素または水素と不活性ガスの混合物、代表的にはHとNの混合物を用いて活性化する。その活性化は、100〜約500℃、好ましくは約140〜約400℃、より好ましくは約180〜約330℃の温度で行う。活性化は、約1バール〜約300バール、好ましくは約5〜約200バール、より好ましくは約10〜約100バールの圧力で行う。
【0075】
本発明に従って使用可能な触媒は代表的には、約5〜3000m/g、好ましくは約10〜約1500m/gの比表面積を有する。
【0076】
本発明の水素化反応は代表的には、約10〜約300℃、好ましくは約30〜約180℃、より好ましくは約50〜130℃の範囲の温度で水素存在下に進行する。概して、約1バール〜約350バール、好ましくは約10〜約300バール、より好ましくは約100〜約300バールの圧力を用いる。
【0077】
本発明での光学活性ジカルボン酸の対応する光学活性ジオールへの水素化の場合、好ましくは、約150〜約250℃、より好ましくは約180〜約250℃、最も好ましくは約200〜約250℃の圧力を選択する。
【0078】
本発明による方法の好ましい実施形態では、特にアミノ置換基質を水素化する場合、上記の光学活性原料を、有機または無機酸の存在下に水素化する。通常、酸の添加は、原料中に存在する塩基性基1当量に基づいて0.5〜1.5当量、より好ましくは1〜1.3当量である。有用な有機酸には例えば、酢酸、プロピオン酸およびアジピン酸などがある。好ましくは、無機酸、特には硫酸、塩酸およびリン酸を加える。それらの酸は例えば、そのまま、水溶液の形で、または例えば硫酸塩、硫酸水素塩、塩酸塩、リン酸塩、モノもしくはジ水素リン酸塩などの水素化対象の原料との別個の製造された塩の形で用いることができる。
【0079】
変換される光学活性カルボン酸またはジカルボン酸は、そのまま、または水系もしくは有機溶液の形で用いて良好な結果を得ることができる。水素化は、固定床リアクタにて連続モードで、懸濁液または液相もしくは気相で行うことができる。
【0080】
バッチ式反応の場合、例えば、本発明に従って使用される未担持触媒0.1〜50gまたは本発明に従って使用される担持触媒0.1〜50gを、使用される光学活性原料化合物1モルに基づいて用いることができる。
【0081】
連続工程では、触媒の使用される原料化合物に対する比は有利には、触媒の毎時空間速度が約0.005〜約2kg/Lcath、好ましくは約0.02〜約0.5kg/Lcathの範囲となるように変換する。
【0082】
この反応に好適な溶媒は例えば、水素化生成物自体、水、アルコール類(例:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、エーテル類(例:THFまたはエチレングリコールエーテル)である。好ましいものは、水もしくはメタノールまたは溶媒としてのそれらの混合物である。
【0083】
水素化は、気相または液相で1以上の段階にて行うことができる。液相では、懸濁液または固定床モードが可能である。本発明による方法を実行する上では、好適なリアクタは、例えば攪拌槽、固定床リアクタ、シャフトリアクタ、管束リアクタ、気泡塔または流動床リアクタなどの水素化を行う上で好適である当業者には公知の全てのリアクタである。
【0084】
反応は代表的には、水素の取り込みがなくなった時点で完了である。代表的には、反応時間は約1〜約72時間である。
【0085】
得られる反応生成物の単離および必要に応じて分離は、原則として、それ自体が当業者に公知の全ての一般的な方法によって行うことができる。それに関して特に好適なものは、抽出法および蒸留法であり、さらには結晶化による精製もしくは単離である。
【0086】
使用される光学活性リアクタントまたは得られる生成物については、当業者に公知の全ての方法によって、それらのエナンチオマー純度を調べることができる。それに関して特に好適なものは、詳細にはクロマトグラフィー法、特別にはガスクロマトグラフィー法または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法である。リアクタントまたは生成物のエナンチオマー純度を求める上で好適な尺度は、エナンチオマー過剰量(ee)である。
【0087】
本発明による方法は、原料化合物として光学活性型で使用される置換モノまたはジカルボン酸の立体中心の水素化時におけるラセミ化の実質的な抑制を特徴とする。従って本発明による方法で得られる生成物のエナンチオマー過剰量は代表的には、使用されるリアクタントに実質的に相当する。好ましくは、所望の生成物のエナンチオマー過剰量が、使用される原料化合物の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%に相当するように、反応条件を選択する。
【0088】
本発明による方法の一つの利点は、これら反応における公知の面倒な副反応、すなわち一酸化炭素の放出を伴う脱カルボニル化のものおよび続いて起こるそれのメタンその他の低級アルカンへの還元が実質的に抑制されるという点である。それは、かなり大きい安全上の利点となる。
【0089】
下記の実施例は、本発明による方法を説明するためのものであるが、いかなる形態でも本発明を制限するものではない。
【0090】
酸で処理することによる単体材料の活性化のための一般的手順
選択した担体材料100gを、選択した酸200mLおよび水400mLとともに、攪拌しながら45分間加熱した。濾過および水洗後、活性化担体材料を強制空気乾燥機で80℃にて乾燥させた。成形体を用いる場合、その活性化は、ロータリーエバポレータまたは活性化溶液によって流れる固定床リアクタで行って、担体の機械的破壊を最小限とすることも可能である。
【0091】
触媒1製造方法
2リットルの攪拌装置に最初に、HCOOH、次亜リン酸ナトリウムで前処理したTimrex(登録商標)HSAG100(Timcal)25g、Re 4.9gおよびPd(NO 5.4gの水溶液(水1400mL)を入れ、それを室温で30分間、次に80℃で攪拌した。次に、混合物を吸引フィルターで濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0092】
触媒2製造方法
Rh(NO14gおよびRe9.8gの水溶液(水72mL)を用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100(Timcal)100gを含浸させた。16時間の乾燥を行った後、Rh(NO14gおよびRe9.8gの水溶液(水72mL)でもう一回含浸させ、再度乾燥させた。最後に、400℃の回転管中で焼成を行った。
【0093】
触媒3製造方法
Pt(NO2gおよびRe3gを水に溶かし、水で18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gを含浸させ、それを乾燥および焼成した。
【0094】
触媒4製造方法
Rh(NO14gおよびRe9.8gの水溶液(水72mL)を用いて、HNO活性化Timrex(登録商標)HSAG100(Timcal)100gを含浸させた。16時間の乾燥後に、Rh(NO14gおよびRe9.8gの水溶液(水72mL)で再度含浸を行い、再度乾燥させた。最後に、400℃の回転管中で焼成を行った。
【0095】
触媒5製造方法
Rh(NO14gおよびRe9.8gの水溶液(水72mL)を用いて、HNO活性化押し出し炭素(3mm)100gの含浸を行った。16時間の乾燥後に、Rh(NO14gおよびRe9.8gの水溶液(水72mL)で再度含浸を行い、再度乾燥させた。最後に、400℃の回転管中で焼成を行った。
【0096】
触媒6製造方法
IrCl・HO4.8gおよびRe4.9gを水に溶かし、水で18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gの含浸を行い、それを乾燥および焼成した。
【0097】
触媒7製造方法
Pd(NO2.7gおよびRe2.4gを水に溶かし、水で18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gの含浸を行った。16時間の乾燥後に、Pd(NO2.7gおよびRe2.4gの水溶液(水18mL)で再度含浸を行い、再度乾燥させた。最後に、400℃の回転管中で焼成を行った。
【0098】
触媒8製造方法
Pd(NO0.6gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gをそれの水吸収に従って含浸させた。16時間の乾燥および回転管中で400℃での焼成後に、2回目の含浸を行い、それについては、Re2.9gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、前記材料についてそれの水吸収に従って2回目の含浸を行い、それを再度16時間乾燥させた。
【0099】
触媒9製造方法
Pt(NO0.5gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gをそれの水吸収に従って含浸させた。16時間の乾燥および回転管中で400℃での焼成後に、2回目の含浸を行い、それについては、Re3.7gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、前記材料についてそれの水吸収に従って2回目の含浸を行い、それを再度16時間乾燥させた。
【0100】
触媒10製造方法
Rh(NO1.5gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gをそれの水吸収に従って含浸させた。16時間の乾燥および回転管中で400℃での焼成後に、2回目の含浸を行い、それについては、Re2gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、前記材料についてそれの水吸収に従って2回目の含浸を行い、それを再度16時間乾燥させた。
【0101】
触媒11製造方法
Pd(NO0.7gを水に溶かし、溶液全体を18mLとした。これを用いて、HCOOH活性化Timrex(登録商標)HSAG100 25gをそれの水吸収に従って含浸させた。16時間の乾燥後に、2回目の含浸を行い、それについては、Ir(CHCOO)5gを水に溶かし、溶液全体を21.5mLとした。これを用いて、水吸収に従って前記材料の2回目の含浸を行い、それを再度16時間乾燥させ、最後に回転管中にて250℃で焼成した。
【0102】
実施例1:光学活性1,2,4−ブタントリオール(BTO)の製造
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)に最初に、水50mLとともに触媒1 5gを入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、リンゴ酸(MA)24gおよび水120gを導入し、230〜250バールの圧力および100℃の温度で36時間にわたって水素化した。反応流出液は、67mol%の1,2,4−ブタントリオール(ee>98.2)、22mol%のヒドロキシブチロラクトン(ee>98.2)、5mol%のブタンジオール(BDO)および5mol%の未変換リンゴ酸を含んでいた。
【0103】
実施例2〜8:触媒を変えての光学活性1,2,4−ブタントリオール(BTO)の製造
表1に示した触媒を用いて実施例1を繰り返し、表1に示した結果を得た。
【表1】

【0104】
実施例9:β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの製造
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)に最初に、水50mLとともにRe2gおよびPtO0.8gを入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、リンゴ酸(MA)24gおよび水120gを導入し、230〜250バールの圧力および100℃の温度で36時間にわたって水素化した。反応流出液は、5.9mol%の1,2,4−ブタントリオール、69mol%のヒドロキシブチロラクトン(ee>99.0)、7.7mol%のブタンジオールおよび27mol%の未変換リンゴ酸を含んでいた。
【0105】
実施例10
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)に最初に、水50mLとともにRe4gを入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、リンゴ酸(MA)24gおよび水120gを導入し、230〜250バールの圧力および100℃の温度で36時間にわたって水素化した。反応流出液は、6.4mol%の1,2,4−ブタントリオール、33mol%のヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(ee>99.0)、1mol%のブタンジオールおよび43mol%の未変換リンゴ酸を含んでいた。
【0106】
実施例11および12:リンゴ酸の連続水素化
連続固定床水素化では、触媒5 190mLを最初に固定床リアクタに入れた。200バールの圧力および100℃の温度で、6重量%のリンゴ酸(MA)水溶液を、細流モードおよび直線通過にて触媒上を通過させた。触媒の毎時空間速度を変化させて、表2に編集した結果を得た。
【表2】

【0107】
実施例13および14ならびに比較例1および2
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)で最初に、表3に示した触媒5gを水50mLとともに入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、リンゴ酸24gおよび水120gを導入し、230〜250バールの圧力および160℃の温度で36時間にわたって水素化した。36時間後、オートクレーブ中のガスを分析した。表3に挙げた成分がヘッドスペースで検出された。
【表3】

【0108】
実施例15および16ならびに比較例3
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)で最初に、表3に示した触媒5gを水50mLとともに入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、リンゴ酸24gおよび水120gを導入し、230〜250バールの圧力および100℃の温度で36時間にわたって水素化した。36時間後、オートクレーブ中に存在するガスを分析した。表4にまとめた成分がヘッドスペースで検出される。
【表4】

【0109】
実施例17:アラニノールの製造
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)に最初に、触媒6 5gを水50mLとともに入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、L−アラニン24g、水100gおよびHSO13.2gを導入し、180〜200バールの圧力および100℃の温度で12時間にわたって水素化する。反応流出液は、57mol%のL−アラニノール(ee>99.4)および12mol%の未変換L−アラニンを含んでいた。
【0110】
実施例18:アラニノールの製造
バッチ式オートクレーブ(容量300mL)に最初に、触媒4 5gを水50mLとともに入れ、60バールの水素圧および270℃で2時間攪拌した。次に、L−アラニン24g、水100gおよびHSO13.2gを導入し、180〜200バールの圧力および100℃の温度で12時間にわたって水素化する。反応流出液は、43mol%のL−アラニノール(ee>99.4)および40mol%の未変換L−アラニンを含んでいた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分がルテニウムまたはレニウムからなり、少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素を含む触媒の存在下に、対応するように置換された光学活性モノもしくはジカルボン酸またはそれの酸誘導体を水素化することによる、3〜25個の炭素原子を有する光学活性ヒドロキシ−、アルコキシ−、アミノ−、アルキル−、アリール−または塩素−置換アルコールもしくはヒドロキシカルボン酸またはそれの酸誘導体もしくは環化生成物の製造方法であって、
ただし、
a.前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がルテニウム以外であり;
b.対応する光学活性2−アミノカルボン酸、2−クロロカルボン酸、2−ヒドロキシカルボン酸および2−アルコキシカルボン酸またはそれらの酸誘導体を接触水素化することで光学活性2−アミノ−、2−クロロ−、2−ヒドロキシ−および2−アルコキシ−1−アルカノールを製造する場合に、前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がパラジウムおよび白金以外である方法。
【請求項2】
条件bが、前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素がパラジウムおよび白金以外であるという条件に置き換わっている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素が、Rh、Ir、Cu、Ag、Au、CoおよびNiという元素の群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素が、RhまたはIrである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水素化される少なくとも1個のカルボン酸官能基もしくはそれから誘導される酸誘導体官能基に対してα位もしくはβ位に少なくとも1個の立体中心を有する光学活性モノもしくはジカルボン酸またはそれらの酸誘導体を変換する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
活性成分がルテニウムおよびパラジウムまたはルテニウムおよび白金を含む触媒の存在下に、
a.対応するように置換された光学活性3−ヒドロキシ−、3−アルコキシ−、3−アミノ−、3−アルキル−、3−アリール−または3−クロロモノカルボン酸またはそれの酸誘導体を原料とする光学活性3−ヒドロキシ−、3−アルコキシ−、3−アミノ−、3−アルキル−、3−アリール−または3−クロロ−1−アルカノール、または
b.両方のカルボン酸官能基を水素化することによる、前記対応するように置換された光学活性ジカルボン酸またはそれらの酸誘導体から選択される光学活性ヒドロキシ−、アルコキシ−、アミノ−、アルキル−、アリール−または塩素−置換ジオールもしくはトリオールまたはそれらの環化生成物、または
c.前記対応するように置換された光学活性アルキル−またはアリール−置換モノカルボン酸を原料とする光学活性アルキル−またはアリール−置換アルカノール
の製造ための請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒を担持型で用いる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
各場合で前記製造された触媒の総重量に基づき、そして前記金属として計算して、0.01〜50重量%のレニウムおよび0.01〜30重量%の前記の少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の金属を用いる触媒を使用する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記使用される担体材料が、ZrO、TiO、Al、SiO、活性炭、カーボンブラック類、グラファイト類または高表面積グラファイトである請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記レニウムおよび前記少なくとも1種類の原子番号22〜83を有する別の元素を、還元剤の存在下に前記担体に付与する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ロイシノール、イソセリノール、バリノール、イソロイシノール、セリノール、トレオニノール、リジノール、フェニルアラニノール、チロシノール、プロリノール、2−クロロプロパノール、2−メチル−1−ブタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2,3−ジメチルブタン−1,4−ジオール、2−メチルブタン−1,4−ジオール、2−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、2−クロロ−γ−ブチロラクトン、3−クロロ−γ−ブチロラクトン、2−アミノ−γ−ブチロラクトン、3−アミノ−γ−ブチロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン、3−メチル−γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−δ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ−δ−バレロラクトン、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランまたは2−アミノテトラヒドロフランを製造するための請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記水素化を、100〜300バールの圧力で実施する請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記水素化を、30〜180℃の温度で実施する請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記水素化を酸の存在下に実施する請求項1〜13のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2007−522163(P2007−522163A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552522(P2006−552522)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001235
【国際公開番号】WO2005/077871
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】