説明

光学活性ビニルケトン誘導体およびこれを用いた光学活性アミノジオール類の製造方法

【課題】 光学活性アミノジオール類を簡便にかつ高い立体選択性をもって製造する。
【解決手段】 下記一般式(II)
【化18】


で表される光学活性ビニルケトン誘導体をアルミニウム還元剤により還元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な光学活性ビニルケトン誘導体およびこれを還元することによって得られる、ビニル基を有する光学活性アミノジオール類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビニル基を有する光学活性アミノジオール類はメタセシス反応を行うことにより、ドラッグデリバリーシステム等に有効なスフィンゴシン類や化粧品用途に利用されるセラミド類に誘導することができる有用な物質である。従来、ビニル基を有する光学活性アミノジオール類の製造方法に関しては、いくつかの提案がなされている。
【0003】
例えば、(1)ガーナーアルデヒド類にトリメチルシリルアセチリドを付加し、脱シリル化後、リンドラー触媒を用いて水素化する方法(非特許文献1)、(2)ガーナーアルデヒド類にビニルマグネシウムブロミドを付加する方法(例えば、非特許文献2,3,4)、(3)セリン誘導体をDIBAL-Hで還元した後、ビニルマグネシウムブロミドを付加する方法(例えば、非特許文献2,5,特許文献1)、(4)L-gluconic-γ-lactoneから誘導する方法(例えば非特許文献6)、(5)3−アジド−2,4−ジヒドロキシブタナール誘導体をWittig試薬でメチレン化し、亜鉛で還元する方法(例えば非特許文献7)、(6)(3−ビニルオキシラン−2−イル)メタノールをカルバメート化した後、分子内環化させる方法(例えば非特許文献8)等が知られている。
【0004】
しかしながら、(1)の方法は多段階反応で工程が煩雑である上、高価なトリメチルシリルアセチリドを利用しなければならないという問題がある。(2)の方法は立体選択性が悪く、不用な立体異性体が多量に副生するという問題がある。(3)の方法も立体選択性が極めて悪く、不用な立体異性体が主生成物となるという問題がある。(4)の方法では、所望の立体異性体(anti体)とは異なるsyn体が選択的に得られるという問題がある。(5)の方法では、不安定なアジド化合物を経由しなければならない上、多段階反応を要するという問題がある。(6)の方法は、多段階である上、分子内環化反応を高希釈条件で行わなければならないので容積効率が悪いという問題がある。
【0005】
一方、例えば非特許文献9には立体障害の大きな1−ペンタデセニル基を有するアミノケトン誘導体の立体選択的な還元反応が記載されている。しかし、この方法は保護基や反応条件により立体選択性が大きく変動するため、安定した立体選択性を保持して光学活性アミノジオール類を製造することはできない。
【非特許文献1】P. Herold, Helv. ”Chim. Acta”, 71, p.354-p.361 (1988).
【非特許文献2】T. Ibuka, H. Habashita, A. Otaka, N. Fujii, Y. Oguchi, T. Uyehara, and Y. Yamamoto, ”J. Org. Chem”., 56, p.4370-p.4382 (1991).
【非特許文献3】P. A. Evans, A. B. Holmes, and K. Russell, ”J. Chem. Soc. Perken Trans”. 1, 23, p.3397-p.3409, (1994).
【非特許文献4】I. Ojima and E. S. Vidal, ”J. Org. Chem”., 63, p.7999-p.8003 (1998).
【特許文献1】特開平3−261727号公報
【非特許文献5】G. R. Cook and K. Pararajasingham, ”Tetrahderon Lett”., 43, p.9027-p.9029 (2002).
【非特許文献6】I.-Y. Jeong, J. H. Lee, B. W. Lee, J. H. Kim, and K. H. Park, Bull. ”Korean Chem. Soc”., 24, 617-622 (2003).
【非特許文献7】A. N. Rai and A. Basu, ”Organic Lett”., 6, p.2861-p.2863 (2004).
【非特許文献8】S. Torssell and P. Somfai, ”Org. Biomol. Chem”., 2, p.1647-p.1650 (2004).
【非特許文献9】S. K. Chung and J.-M. Lee, ”Tetrahedron: Asymmetry”, 10, p.1441-p.1444 (1999).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、スフィンゴシン類やセラミド類に容易に誘導することが可能なビニル基を有する光学活性アミノジオール誘導体を製造する新規な方法、およびその原料である新規な光学活性ビニルケトン誘導体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学活性ビニルケトン誘導体は、一般式(I)
【化4】

【0008】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の光学活性アミノジオール類の製造方法は、一般式(II)
【化5】

【0010】
(式中、R3は水素原子またはアミノ基の保護基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表される光学活性ビニルケトン誘導体を還元し、一般式(III)
【化6】

【0011】
(式中、R3 およびRは上記と同じである。)で表されるビニル基を有する光学活性アミノジオール類を得ることを特徴とするものである。
【0012】
前記還元はアルミニウム還元剤を用いることが好ましい。また、前記アルミニウム還元剤はリチウム(トリtert-ブトキシ)アルミノヒドリドであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学活性アミノジオール類の製造方法によれば、一般式(II)
【化7】

【0014】
(式中、R3は水素原子またはアミノ基の保護基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表される光学活性ビニルケトン誘導体を還元という一段階反応により、高い選択性で、ドラッグデリバリーシステム等に有効なスフィンゴシンや化粧品用途に利用されるセラミド類などの合成原料として有用な光学活性アミノジオール類を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光学活性ビニルケトン誘導体は、一般式(I)
【化8】

【0016】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表されることを特徴とし、たとえば対応するN−メチル−N−メトキシアミド誘導体にビニル基を導入することにより製造することができる(下記参考例1,2参照)。
【0017】
本発明の光学活性アミノジオール類の製造方法は、一般式(II)
【化9】

【0018】
(式中、R3は水素原子またはアミノ基の保護基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表される光学活性ビニルケトン誘導体を還元し、一般式(III)
【化10】

【0019】
(式中、R3 およびRは上記と同じである。)で表される光学活性antiアミノジオール類を得ることを特徴とする。
【0020】
本発明におけるアルキル基とは、反応に関与しない置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルキル基であり、アルコキシ基とは、反応に関与しない置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルコキシ基であり、アリール基とは、反応に関与しない置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、フリル基、ピロール基、チオフェン基等を例示することができる。アリールオキシ基とは、反応に関与しない置換基を有していてもよいフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、フリルオキシ基等を例示することができる。
【0021】
本発明における水酸基の保護基としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル等のシリル系保護基、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、エトキシエチル等のエーテル系保護基、アセチル、ベンゾイル等のエステル系保護基等を例示することができる。
【0022】
本発明におけるアミノ基の保護基としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル等のシリル系保護基、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等のカルバメート系保護基、アセチル、ベンゾイル等のアミド系保護基等を例示することができる。
【0023】
光学活性ビニルケトン誘導体の還元方法としては、接触還元、試薬還元等のケトン類を還元できる公知の方法を用いることができるが、立体選択性を向上させるためにはアルミニウム還元剤を用いて還元を行うことが好ましい。利用できるアルミニウム還元剤としては特に制限はなく、リチウム(トリ−t−ブトキシ)アルミノヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド等を例示することができるが、より高い立体選択性が得られるという点で、リチウム(トリ−t−ブトキシ)アルミノヒドリドがより好ましい。
【0024】
本発明の実施にあたっては、反応に関与しない溶媒中で行うことが好ましく、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化溶媒等を例示することができる。
【0025】
反応温度は、−80℃〜100℃の温度範囲から適宜選択することができるが、反応速度ならびに経済的観点から−10℃〜60℃の範囲が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0026】
(参考例1)
【化11】

【0027】
(2S)−N−メチル−N−メトキシ−3−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロピオンアミド(2.36 g, 6.51 mmol)のTHF(32.55 ml)溶液に、室温でビニルマグネシウムブロミドの1.0M THF溶液(19.54 ml, 19.54 mmol)を滴下した。30分攪拌した後、反応混合物を2N HCl と氷の混合物に滴下し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンに9%〜25%の酢酸エチルを混合したもの)により精製し、(2S)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−ペンテン−3−オン(1.67g, 78%)を得た。(2S)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−ペンテン−3−オンのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0028】
IR ( NaCl neat ) = 3477, 2859, 1701, 1495, 1366, 1171 cm-1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 6.55 (dd, J = 17.3, 10.7 Hz, 1H), 6.33 (dd, J = 17.3, 1.5 Hz, 1H), 5.82 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 5.45-5.55 (brm, 1H), 4.58 (ddd, J = 7.6, 3.7, 3.7 Hz, 1H), 3.99 (dd, J = 10.3, 3.4 Hz, 1H), 3.84 (dd, J = 10.3, 4.4 Hz, 1H), 1.43 (s, 9H), 0.83 (s, 9H), 0.00 (s, 3H), -0.01 (s, 3H)
13C NMR (CDCl3, 100MHz) δ: 170.6, 155.0, 133.0, 128.9, 79.3, 63.1, 59.3, 28.0, 25.4, 17.9, -5.9
【0029】
(実施例1)
【化12】

【0030】
(2S)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−ペンテン−3−オン(2.00g, 6.07mmol)のエタノール(12.14 ml)溶液に、-55 ℃でリチウム(トリ−t−ブトキシ)アルミノヒドリド(3.39 g, 13.35 mmol)を加え、同温にて15分攪拌した。反応混合物に1N HCl を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンに9%〜33%の酢酸エチルを混合したもの)により精製し、(2S,3R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−ペンテン(1.93 g, 98%)を得た。(2S,3R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−ペンテンのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0031】
IR ( NaCl neat ) = 3451, 2932, 1701, 1501, 1173, 837 cm-1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 5.91 (ddd, J = 17.3, 10.5, 4.9 Hz, 1H), 5.38 (ddd, J = 17.1, 1.7, 1.7 Hz, 1H), 5.24 (ddd, J = 10.5, 1.7, 1.7 Hz, 1H), 5.21-5.29 (brm, 1H), 4.26 (m, 1H), 3.93 (dd, J = 10.5, 2.9 Hz, 1H), 3.76 (m, 1H), 3.63 (m, 1H), 3.39-3.46 (brm, 1H), 1.45 (s, 9H), 0.90 (s, 9H), 0.06 (s, 3H), 0.07 (s, 3H)
13C NMR (CDCl3, 100MHz) δ: 155.7, 137.8, 115.7, 79.3, 74.3, 63.0, 54.2, 28.2, 25.6, 18.0, -5.5, -5.8
【0032】
(参考例2)
【化13】

【0033】
(2S)−N−メチル−N−メトキシ−3−ヒドロキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−プロピオンアミド(1.50 g, 6.04 mmol)のTHF(30.21 ml)溶液に、室温でビニルマグネシウムブロミドの1.0M THF溶液(24.17 ml, 24.17 mmol)を滴下した。30分攪拌した後、反応混合物を2N HCl と氷の混合物に滴下し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンに9%〜25%の酢酸エチルを混合したもの)により精製し、(2S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−ペンテン−3−オン−1−オール(402 mg, 31%)を得た。(2S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−ペンテン−3−オン−1−オールのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0034】
IR ( NaCl neet ) = 3434, 2980, 1692, 1508, 1169, 1061 cm-1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 6.57 (dd, J= 10.5, 17.3 Hz, 1H ), 6.44 (dd, J= 1.5, 17.3 Hz, 1H ), 5.93 (dd, J= 10.5, 0.7 Hz, 1H ), 5.69 (brm, 1H), 4.66 (m, 1H), 3.95 (ddd, J= 11.5, 6.8, 3.7 Hz, 1H ), 3.90 (ddd, J= 11.5, 5.4, 4.4 Hz, 1H ), 2.75 (brm, 1H), 1.46 (s, 9H)
13C NMR (CDCl3, 100MHz) δ: 170.6, 155.6, 132.6, 129.7, 79.6, 62.3, 59.5, 27.9
【0035】
(実施例2)
【化14】

【0036】
(2S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−ペンテン−3−オン−1−オール(402 mg, 1.87 mmol)のエタノール(9.34 ml)溶液に、-78 ℃でリチウム(トリ−t−ブトキシ)アルミノヒドリド(1.57 g, 6.16 mmol)を加え、同温にて15分攪拌した。反応混合物に1N HCl を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンに9%〜33%の酢酸エチルを混合したもの)により精製し、(2S,3R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−ペンテン(402 mg, 99%)を得た。(2S,3R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−ペンテンのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0037】
IR ( NaCl neat ) = 3451, 2932, 1701, 1501, 1173, 837 cm-1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 5.91 (ddd, J = 17.3, 10.5, 4.9 Hz, 1H), 5.38 (ddd, J = 17.1, 1.7, 1.7 Hz, 1H), 5.24 (ddd, J = 10.5, 1.7, 1.7 Hz, 1H), 5.21-5.29 (brm, 1H), 4.26 (m, 1H), 3.93 (dd, J = 10.5, 2.9 Hz, 1H), 3.76 (m, 1H), 3.63 (m, 1H), 3.39-3.46 (brm, 1H), 1.45 (s, 9H), 0.90 (s, 9H), 0.06 (s, 3H), 0.07 (s, 3H)
13C NMR (CDCl3, 100MHz) δ: 155.7, 137.8, 115.7, 79.3, 74.3, 63.0, 54.2, 28.2, 25.6, 18.0, -5.5, -5.8
【0038】
(参考例3)
【化15】

【0039】
(2S,3R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−ペンテン(106 mg, 0.320 mmol )のジクロロメタン( 4.79 ml )溶液に室温で1-ペンタデセン( 269 mg, 1.28 mmol )を加え、続いてトリシクロホスフィン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾル−2−イリデン](ベンジリデン)ルテニウム(IV)ジクロリド( 8 mg, 0.00959 mmol )を加えた。反応混合物を2時間還流した。反応混合物を減圧濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンに9%〜25%の酢酸エチルを混合したもの)により分離・精製し、(2S,3R,4E)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−オクタデセン( 118 mg, 72% )を得た。(2S,3R,4E)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−オクタデセンのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0040】
IR( NaCl, Neat ) = 3449, 2928, 1715, 1497, 1173, 839 cm-1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 5.75 (dtd, J= 15.4, 6.8, 1.2 Hz, 1H), 5.50 (ddt, J= 15.4, 5.6, 1.5 Hz, 1H), 5.23 (brm, 1H), 4.27 (m, 1H), 3.93 (dd, J= 10.2, 2.9 Hz, 1H), 3.75 (dd, J= 10.5, 2.4 Hz, 1H), 3.57 (m, 1H), 3.31 (brm, 1H), 2.05 (dt, J= 7.1, 7.1 Hz, 2H), 1.45 (s, 9H), 1.25 (s, 22H), 0.90 (s, 9H), 0.85 (m, 3H), 0.06 (s, 6H)
13C NMR (CDCl3, 100MHz) δ: 155.4, 133.1, 129.4, 79.4, 74.6, 63.4, 54.5, 32.3, 31.9, 29.7, 29.5, 29.3, 29.2, 28.4, 28.3, 25.8, 22.7, 18.1, 14.1, -5.6
【0041】
(参考例4)
【化16】

【0042】
(2S,3R,4E)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−オクタデセン(100 mg, 0.19 mmol)のCH2Cl2(0.39 ml)溶液に0 ℃でトリフルオロ酢酸(0.39 ml)を加え、同温で7時間攪拌した。反応混合物を2N NaOHで中和し、THFで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルムに5%のメタノールを混合した展開液からクロロホルムに4.3%の水と26.6%のメタノールを混合した展開液へ)により精製し、スフィンゴシン(46 mg, 79%)を得た。スフィンゴシンのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0043】
IR ( KBr disk ) = 3368, 2915, 1676, 1468, 1204, 1138, 1047 cm-1
1H NMR (CD3OD, 400MHz) δ: 5.67 (dt, J = 14.9, 6.8 Hz, 1H), 5.39 (ddm, J = 15.4, 7.3 Hz, 1H), 3.98 (m, 1H), 3.62 (m, 1H), 3.45 (dd, J = 11.0, 7.3 Hz, 1H), 2.80 (m, 1H), 1.99 (m, 2H), 1.32 (m, 2H), 1.26 - 1.17 (m, 20H), 0.80 (t, J = 7.1 Hz, 3H)
13C NMR (CD3OD, 100MHz) δ: 135.6, 130.1, 73.8, 62.8, 58.1, 33.4, 33.1, 30.9, 30.79, 30.75, 30.6, 30.5, 30.35, 30.32, 23.7, 14.5
【0044】
(参考例5)
【化17】

【0045】
(2S,3R,4E)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−4−オクタデセン(100 mg, 0.19 mmol)の塩化メチレン(0.39 ml)溶液に0 ℃でトリフルオロ酢酸(0.39 ml)を加え、同温で2時間攪拌後、室温で12時間攪拌した。反応混合物に0 ℃で2N NaOHを加えて塩基性にし、同温で1時間攪拌後、塩化パルミトイル(0.088 ml, 0.293 mmol)を加え、同温で20分間攪拌した。反応混合物に飽和食塩水溶液を加え、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で中和し塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (クロロホルム展開液からクロロホルムに2%のメタノールを混合した展開液へ) により精製し、セラミド(50 mg, 48%)を得た。セラミドのIR、1H NMR、13C NMRデータを以下に示す。
【0046】
IR ( KBr disk ) = 3295, 2919, 2851, 1638, 1547, 970 cm-1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 6.28 (brd, J = 6.8 Hz, 1H), 5.78 (dt, J = 15.4, 6.8 Hz, 1H), 5.53 (dd, J = 15.4, 6.3 Hz, 1H), 4.31 (m, 1H), 3.95 (dd, J = 11.0, 3.7 Hz, 1H), 3.90 (m, 1H), 3.70 (dd, J = 11.0, 2.7 Hz, 1H), 2.93 (brs, 2H), 2.23 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.06 (m, 2H), 1.64 (tt, J = 7.1, 7.1 Hz, 2H), 1.40 - 1.26 (m, 46H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H)
13C NMR (CDCl3, 100MHz) δ: 174.0, 134.2, 128.8, 74.6, 62.5, 54.5, 36.8, 32.3, 31.9, 29.69, 29.65, 29.5, 29.35, 29.29, 29.23, 29.1, 25.8, 22.7, 14.1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表されることを特徴とする光学活性ビニルケトン誘導体。
【請求項2】
一般式(II)
【化2】

(式中、R3は水素原子またはアミノ基の保護基であり、Rは水素原子または水酸基の保護基である。)で表される光学活性ビニルケトン誘導体を還元し、一般式(III)
【化3】

(式中、R3 およびRは上記と同じである。)で表されるビニル基を有する光学活性アミノジオール類を製造することを特徴とする光学活性アミノジオール類の製造方法。
【請求項3】
前記還元にアルミニウム還元剤を用いることを特徴とする請求項2記載の光学活性アミノジオール類の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム還元剤がリチウム(トリtert-ブトキシ)アルミノヒドリドであることを特徴とする請求項3記載の光学活性アミノジオール類の製造方法。

【公開番号】特開2006−206546(P2006−206546A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24063(P2005−24063)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000180586)株式会社ケミクレア (20)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】