説明

光学測定用セル及び光学測定装置

【課題】セル内でサンプルガスを発生させることでサンプルガスの損失を防止する。
【解決手段】測定光が通過する光透過窓2A、2Bを有しており、サンプルWが配置されるセル本体21と、前記セル本体21内に配置されたサンプルWからサンプルガスを生成させるサンプルガス生成手段22とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばサンプルガスの光吸収測定又は光散乱測定に用いられる光学測定用セル及びこの光学測定用セルを用いた光学測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばFTIR等の光学測定装置は、サンプルガスが導入される測定セルと、当該測定セルに測定光を照射する光源と、前記測定セルを通過した光を検出する光検出器とを有するものがある。そして、この光学測定装置では、測定セルにサンプルガスを供給するにあたって、測定セルとは異なる加熱部によってサンプルを気化してサンプルガスを生成し、このサンプルガスを配管を通じて測定セルに導くように構成している。
【0003】
しかしながら、サンプルガスを配管によって測定セルに導くものでは、生成したサンプルガスが測定セルに到達するまでにそのサンプルガス中に含まれる測定成分が配管内面に付着、凝縮等してロスしてしまい、測定誤差の要因となるという問題がある。また配管を例えば150度に加熱することによってサンプルガスの付着を防ぐことが考えられるが、測定成分の付着を完全に除去することは難しく、さらには配管全体を加熱する必要があり装置構成が複雑化及び肥大化する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−91410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、測定セル内でサンプルガスを発生させることでサンプルガス中の測定成分の損失を防止することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る光学測定用セルは、測定光が通過する光透過窓を有しており、サンプルが配置されるセル本体と、前記セル本体内に配置されたサンプルからサンプルガスを生成させるサンプルガス生成手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、セル本体内に配置されたサンプルからサンプルガスを生成することができるので、発生したサンプルガスを直ちに測定することができ、配管への付着等による測定成分の損失を防止することができる。またサンプルガスをセルに導入する配管を不要にすることができるので、それに付随する加熱機構を不要にすることができ、装置構成の簡単化及び小型化を可能にすることができる。
【0008】
セル本体内部の構成を簡略化するためには、前記サンプルガス生成手段が、熱線を射出する熱源ランプを有し、当該熱源ランプから出る熱線を前記セル本体に設けられた熱線透過窓を介して前記サンプルに照射して前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させることが望ましい。
【0009】
上述のように熱源ランプをセル外部に配置するものでは、セル本体外部のスペースとの関係で難しい場合も考えられる。また、サンプルを熱源ランプの熱線集光位置に配置する必要があり、サンプル位置がずれた場合にはサンプルを確実に加熱することができないことも考えられる。このため、前記サンプルガス生成手段が、前記サンプルの周囲に設けられて通電により発熱する発熱体を有し、当該発熱体により前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させることが望ましい。具体的には、サンプルを収容する収容容器の外側周面に発熱体を巻回することが考えられる。
【0010】
前記サンプルが、電池(具体的には電池内部の極群)等のように通電することにより発熱する発熱体の場合には、前記サンプルガス生成手段が、前記発熱体に電圧を印加する電源回路を有し、当該電源回路により前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させることが望ましい。これならば熱源ランプ及び発熱体を別途設ける必要なくサンプルを加熱することができる。
【0011】
前記セル本体に配置されるサンプルが筒状をなすものであり、前記サンプルガス生成手段が、前記サンプルの内周側又は外周側に配置される発熱体を有し、当該発熱体により前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させることが望ましい。これならば筒状をなすサンプル全体を万遍なく加熱することができるようになる。なお筒状としては角筒状や円筒状が考えられ、角筒状には半角筒状等の部分角筒状や略角筒状が含まれ、円筒状には半円筒状等の部分円筒状や略円筒状が含まれる。
【0012】
前記セル本体が、両端部に光透過窓が設けられた筒状をなすものであり、前記サンプルが、前記セル本体に略同軸状に配置されることが望ましい。これならば、測定光が通過する光路を確保しながらも筒状のサンプル全体からサンプルガスを生成することができる。つまり、略同軸状に配置したセル本体及びサンプルにおいて、測定光はサンプルの内部を通過することになる。
【0013】
前記筒状をなすセル本体が、前記筒状のサンプルを収容する一端が開口する本体部と、前記本体部の一端開口を閉塞する蓋部とを有することが望ましい。これならば、筒状のサンプルを収容する際に、本体部に筒状ヒータ及び筒状のサンプルを挿入して蓋部で閉塞するだけで良く、測定セルへのサンプルの配置を簡単にすることができる。その他、セル本体が、半円筒状の凹部を有する第1本体部と、この第1本体部の凹部に対応する半円筒状の凹部を有する第2本体部と、第1本体部及び第2本体部の凹部両端部を閉塞する第1蓋部(光透過部を有する。)及び第2蓋部(光透過部を有する。)とを有するものであっても良い。なお、第2本体部及び第1及び第2蓋部を第1本体部に丁番等の連結具で連結するとともに、組み立て状態でパチン錠等の固定具で固定される。
【0014】
前記発熱体が、前記サンプルの外周側に配置されるものであり、前記サンプルの内周側に設けられて、前記サンプルを筒状に保つ多孔性の筒状保持体をさらに備えていることが望ましい。これならば、筒状のサンプルが内側に垂れてしまい、その垂れた部分が測定光の通過を遮ってしまうこと及び発熱体による加熱ムラを防止することができる。なお、筒状保持体が多孔性を有することから、サンプルから生成されたサンプルガスは筒状保持体の内側に存在することになり、測定光は筒状保持体の内側を通過することになる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、セル内でサンプルガスを発生させることでサンプルガス中の測定成分の損失を防止することができる。また、サンプルガスをセルに導入する配管を不要にすることができるので、それに付随する加熱機構を不要にすることができ、装置構成の簡単化及び小型化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態における光学測定装置の構成を示す模式図。
【図2】同実施形態における光学測定用セルの構成を模式的に示す切断部端面図。
【図3】第2実施形態における光学測定セルの構成を模式的に示す切断部端面図。
【図4】第2実施形態における光学測定セルの変形例の構成を模式的に示す切断部端面図。
【図5】第3実施形態における光学測定セルの構成を模式的に示す切断部端面図。
【図6】第4実施形態における光学測定セルの構成を模式的に示す切断部端面図。
【図7】第4実施形態における光学測定セルの変形例の構成を模式的に示す切断部端面図。
【図8】第4実施形態における光学測定セルの変形例の構成を模式的に示す切断部端面図。
【図9】第5実施形態における光学測定セルの構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.第1実施形態>
以下に本発明に係る光学測定装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の光学測定装置100は赤外線吸光分析法のうちFTIR法を用いたものであり、図1に示すように、サンプルWが収容される光学測定用セル2(以下、単に測定セル2と言う。)と、当該測定セル2に測定光である赤外光を照射する赤外光源3と、前記測定セル2を透過した測定光を検出する光検出器4と、当該光検出器4により得られた光強度信号に基づいて赤外吸収スペクトルを作成してサンプルガス中の所定の測定成分(例えば水蒸気成分、一酸化炭素(CO)等の炭酸ガス、有機成分等)の濃度等を定量分析する演算装置5とを備えている。
【0019】
そして本実施形態の測定セル2は、図2に示すように、両端部に測定光が通過する光透過窓2A、2Bを有し、固形のサンプルWが配置されるセル本体21と、このセル本体21内に配置されたサンプルWからサンプルガスを生成させるサンプルガス生成手段22とを有する。
【0020】
セル本体21は、概略円筒形状をなすものであり、両端部に互いに対向して設けられて測定光を通過させる光透過窓2A、2Bを有する。このセル本体21は、耐熱性を有するガラスから形成されている。また、光透過窓2A、2Bは、例えばフッ化カルシウム(CaF)等の透過波長帯域が広く、屈折率及び分散率が小さい材料から形成されている。なおセル本体21の光透過窓2A、2Bを除く外側周面には、サンプルWから生成されたサンプルガスが、セル本体21及び光透過窓2A、2B等に付着、凝集しないようにコード状又は薄板状のヒータ23が設けられている。このヒータ23はセル本体21を例えば100度〜300度に加熱する。
【0021】
またセル本体21には、セル本体21内部をパージするためのパージガス(例えばアルゴンガス又はヘリウムガス)を供給するための上流側ポート211及びパージガスを排出するための下流側ポート212が設けられている。また、サンプル測定時においては、セル本体21内部を真空にすべく、下流側ポート212に接続された開閉弁(不図示)を閉じて、上流側ポート211から真空引きする。なお、上流側ポート211に接続された開閉弁(不図示)を閉じて、下流側ポート212から真空引きしても良い。その他、サンプル測定時においてセル本体21内部を真空にしないで測定することもできる。
【0022】
さらにセル本体21の内部には、サンプルWを収容する収容容器6が設置される設置台24が設けられている。なお、収容容器6は、ニッケル又は石英等の耐熱性材料からなり、例えば上部が開口する有底筒状をなすものである。設置台24は、載置された収容容器6が両側の光透過窓2A、2Bに挟まれる位置となるように設けられている。また、この設置台24には、載置された収容容器6の温度を検出するための熱電対(タイプK、常用温度900度)等の温度センサ25が設けられている。ここでセル本体21には、前記設置台24に載置する収容容器6を交換するためのサンプル取り出し口21Dが設けられている。このサンプル取り出し口21Dは、サンプル測定時においては、カバー体により気密に閉塞される。なお、設置台24及び収容容器6(サンプルW)は測定光の通過領域内に設置されることになるので、測定成分の実測定前にバックグラウンド測定を行う。
【0023】
サンプルガス生成手段22は、熱線である近赤外線を射出する赤外線ランプ221と当該赤外線ランプ221からの近赤外線を集光する集光レンズ222とを有する。この集光レンズ222は、セル本体21内の配置されたサンプルWに近赤外線を集光するものである。この集光された近赤外線は、セル本体21の側壁に設けられた熱線透過窓(赤外線透過窓)2Cを通過してサンプルWに照射される。なお赤外線透過窓2Cは、前記光透過窓2A、2Bと同様に、例えばフッ化カルシウム(CaF)等の透過波長帯域が広く、屈折率及び分散率が小さい材料から形成されている。なお、赤外線透過窓2Cを集光レンズ222の替わりに集光レンズとしても良い。
【0024】
このように赤外線ランプ221からの近赤外線を集光してサンプルWに照射することによりサンプルWを加熱して、当該サンプルWからサンプルガスを生成させることができる。このサンプルガスはセル本体21内で発生するので直ちにそのサンプルガスに含まれる測定成分が測定される。ここで、赤外線ランプ221によりサンプルWを加熱する以前、具体的にはサンプルWからサンプルガスが生成される以前から、赤外光源3からの測定光をセル本体21内を通過させて、その透過光を光検出器4で検出するようにしている。
【0025】
このように構成した本実施形態の光学測定装置100によれば、セル本体21内に配置されたサンプルWからサンプルガスを生成することができるので、発生したサンプルガスを直ちに測定することができ、配管への付着等による測定成分の損失を防止することができる。またサンプルガスを測定セル2に導入する配管を不要にすることができるので、それに付随する加熱機構を不要にすることができ、装置構成の簡単化及び小型化を可能にすることができる。特に赤外線ランプ221を用いてサンプルWを加熱しているので、セル本体21内部にはサンプルWを設けるだけで良く、構成を簡略化することができる。
【0026】
なお、前記実施形態では、サンプルWを収容容器6に収容して設置台24に載置する構成であったが、収容容器6を直接セル本体21内に設けても良いし、収容容器6を用いることなく、サンプルWを設置台24に載置又は直接セル本体21内に設けるようにしても良い。また、前記実施形態では、1つのサンプルWを1つのサンプルガス生成手段22で加熱するものであったが、2つ以上のサンプルWを2つ以上のサンプルガス生成手段22で加熱するものであっても良い。
【0027】
<2.第2実施形態>
次に測定セル2の第2実施形態について図3を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において前記第1実施形態と対応する部材には同一の符号を付している。
【0028】
第2実施形態に係るセル本体21は、概略円筒形状をなすものであり、両端部に対向して設けられて測定光を通過させる光透過窓2A、2Bを有する。このセル本体21は、耐熱性を有するガラス又は金属から形成されている。また、光透過窓2A、2Bは、例えばフッ化カルシウム(CaF)等の透過波長帯域が広く、屈折率及び分散率が小さい材料から形成されている。なおセル本体21の光透過窓2A、2Bを除く外側周面には、サンプルWから生成されたサンプルガスが、セル本体21及び光透過窓2A、2B等に付着、凝集しないようにコード状又は薄板状のヒータ23が設けられている。なお、図3においてヒータ23に電力を供給する電源は不図示である。
【0029】
またセル本体21は、収容容器6をセル本体21内に配置するための容器取付機構7を有する。この容器取付機構7は、セル本体21の内部と連通してその側壁から外側に延出した固定管71と、この固定管71の外側開口を気密に閉塞する例えばシリコンゴム、フッ素ゴム等からなる閉塞体72と、一端が閉塞体72に固定され、他端に収容容器6が固定された支持体73とを有する。そして、収容容器6にサンプルWを収容した後に当該収容容器6を固定管71内に挿入するようにして閉塞体72で固定管71の外側開口を閉塞させることによって、収容容器6がセル本体21又は固定管71内に配置される。なお、図3では収容容器6が固定管71内に位置した場合を図示している。また、固定管71の側壁に前記実施形態の上流側ポート211が設けられている。
【0030】
そして、サンプルガス生成手段22は、サンプルWの周囲に設けられて通電により発熱する発熱体223を有する。発熱体223としては、サンプルWを例えば300度まで加熱可能なものであり、例えばNi−Cr系発熱体等の金属発熱体や例えば炭化ケイ素等の非金属発熱体を用いることができる。この発熱体223は、収容容器6の外側周面に巻回されることにより設けられている。なお、図3において発熱体223に電力を供給する電源は不図示である。その他、セル本体21又は固定管71内において収容容器6から離間した状態で当該収容容器6を囲むように設けても良い。また、サンプルガスが測定光の光軸に向かって移動し易くするため、サンプルWの光軸側を覆わないように発熱体223を設けることが好ましい。
【0031】
このように構成した測定セル2によれば、前記実施形態の熱源ランプ221が外部に設けられない場合や赤外線ランプ221では十分に加熱できない場合においても、サンプルWを加熱して確実にサンプルガスを生成させることができる。
【0032】
なお固定管71内に収容容器6が位置している場合には、図4に示すように固定管71の周囲に発熱体223を設けることによりサンプルWを加熱気化させるように構成しても良い。
【0033】
<3.第3実施形態>
次に測定セルの第3実施形態について図5を参照して説明する。
【0034】
第3実施形態に係る測定セル2は、図5に示すように、リチウム電池等の電池に用いられる極群Wに含まれる水分等を測定するためのものであり、セル本体21の基本的構成は図3に示すものと同一である。このセル本体21においては、閉塞体72又は閉塞体72に設けた支持体73によって極群Wが支持される。また極群Wには熱電対等の温度センサ25が接続されている。
【0035】
そしてサンプルガス生成手段22が、極群Wに電圧を印加する電源回路224を有する。電源回路224は温度センサ25により得られる温度検出信号に基づいて極群Wに印加する電圧を制御する。この電源回路224は極群Wに電圧を印加することより、極群Wを加熱して極群W内に存在する水を蒸発させる。
【0036】
このように構成した第3実施形態の測定セル2によれば、熱線ランプ221及び発熱体223を設けることなく、極群W等の通電により自己発熱するサンプルWからサンプルガス(水蒸気を含むガス)を生成させることができる。
【0037】
なお、図5では極群Wに電圧を印加して極群W自体を自己発熱させるように構成しているが、前記第2実施形態のように極群Wの周囲に発熱体223を設けて、当該発熱体223により極群Wを加熱するようにしても良い。
【0038】
<4.第4実施形態>
第4実施形態に係る測定セルは、図6に示すように、円筒状(半円筒状等の部分円筒状や略円筒を含む。)をなすセル本体21を有しており、この円筒状をなすセル本体21に円筒状をなすサンプルWを略同軸状に収容するものである。なお、円筒状サンプルWは、例えば平板状をなすサンプル(例えば電池の極板)を円筒状に丸めたもの又は断面円形をなす円筒サンプルである。このようにセル本体21及びサンプルWを同軸上状に配置することで、サンプルWは、光透過部2A及び2Bに挟まれるように配置される。
【0039】
セル本体21は、円筒状サンプルWが収容される一端が開口する本体部21aと、当該本体部21aの一端開口を閉塞する蓋部21bとを有する。本体部21aの他端には光透過窓2Aが設けられている。また蓋部21bにも光透過窓2Bが設けられている。そして、本体部21aと蓋部21bとは、円筒状サンプルWが収容された状態で螺合やすり合わせ等により封止される。なお、図6においては、上流側ポート211及び下流側ポート212を有さないが、これら211、212を設けても良い。
【0040】
そしてサンプルガス生成手段22は、セル本体21の外側周面の略全周を覆うように設けられたコード状又は薄膜状の発熱体225を有する。発熱体225は、例えばサンプルWを例えば300度まで加熱可能なコイルヒータである。なお、図6において発熱体225に電力を供給する電源は不図示である。この発熱体225によりセル本体21の内面に接触又は近接されたサンプルWが加熱されてサンプルガスが生成される。このように生成されたサンプルガスは、円筒状サンプルWの内部(図6では中心軸)を通る測定光によって測定される。
【0041】
また、図6においては、円筒状サンプルWの内側に当該サンプルWを保持するメッシュ状等の多孔性を有する金属製の円筒状保持体8を設けている。この円筒状保持体8は、例えば矩形状をなす多孔性薄板を円筒状(半円筒状等の部分円筒状や略円筒を含む。)に丸めて円筒状サンプルW内に挿入する。これにより、円筒状保持体8の弾性復帰力により円筒状サンプルWがセル本体21の内周面が係方向外側に押圧されて保持される。これならば、円筒状サンプルWが内側に垂れてしまい、その垂れた部分が測定光の通過を遮ってしまうこと及び発熱体225による加熱ムラを防止することができる。なお、円筒状保持体8が多孔性を有することから、サンプルWから生成されたサンプルガスは、円筒状保持体8の内側に流れることになり、円筒状保持体8の内部を通る測定光によって測定される。
【0042】
さらに、本体部21aに蓋部21bをすり合わせて閉塞する構造の場合には、セル本体21内で発生するサンプルガスを外部に漏えいしにくくするため、図7に示すように、蓋部21bが本体部21aの側周面全体を覆う円筒部21b1を有し、当該円筒部21b1を本体部21aの側周面にすり合わせて閉塞することが望ましい。円筒部21b1が本体部21aの側周面全体を覆うことから、発熱体225からサンプルWに伝わる熱を軸方向で均一にすることができる。
【0043】
その上、本体部21a及び蓋部21bの間の気密性を確保するためにOリング等のシール部材を設ける必要がある。このとき、Oリングが発熱体225の熱により劣化してしまう恐れがある。この問題を解決するためには、Oリング9を設ける部分を発熱体225よりも外側にすることが好ましい。具体的には、図8に示すように、本体部21aが、他端に設けられた光透過窓2Aよりも外側に延びる円筒状の延出円筒部21a1を有する。ここで発熱体225は光透光窓2Aまでを加熱すればよいので、延出円筒部21a1の端部側の周囲には発熱体225が配置されない。また、蓋部21bの円筒部21b1が前記延出円筒部21a1を覆うように他端側に延びている。そして、この延出円筒部21a1において発熱体225よりも外側にOリング9を設けて気密性を確保している。なお、Oリングが劣化しなければ、発熱体225よりも外側ではなく内側でも良い。
【0044】
加えて、サンプルガス生成手段22は、セル本体21の外側周面に発熱体225を設ける構成の他、セル本体内においてセル本体の内側周面と円筒状サンプルWの外側周面との間に円筒状ヒータを設けるようにしても良い。また円筒状サンプルWの内側に円筒状ヒータを設けるようにしても良い。
【0045】
前記第4実施形態においては円筒状をなすセル本体21、サンプルW及び保持体8であったが、角筒状をなすセル本体21、サンプルW及び保持体8であっても良い。
【0046】
5.第5実施形態
第5実施形態の測定セルは、図9に示すように、円筒状の内部空間を有するセル本体21を有しており、この円筒状の内部空間に円筒状等のサンプルWを収容するものである。
【0047】
セル本体21は、半円筒状の凹部を有する第1本体部21sと、この第1本体部21sの凹部に対応する半円筒状の凹部を有する第2本体部21tと、第1本体部21s及び第2本体部21tの凹部両端部を閉塞する第1蓋部21u(光透過窓21Aを有する。)及び第2蓋部21v(光透過窓21Bを有する。)とを有する。なお、第2本体部21t、第1蓋部21u及び第2蓋部21vは第1本体部21sに丁番等の連結具21wで連結されている。サンプルを収容する際には、それら21s、21t、21u及び21vが展開されて凹部内に円筒状のサンプルが収容される。その後、それら21s、21t、21uを折り畳んでサンプルWを内部空間に収容し、パチン錠等の固定具21xにより固定される。なお、図9において各部21s、21t、21u及び21v等の間に設けられるシール部材及び赤外線ランプや発熱体等のサンプルガス生成手段は省略している。
【0048】
なお、本発明は前記各実施形態に限られるものではない。
【0049】
例えば、前記各実施形態では、フーリエ変換型赤外分光分析(FT−IR)を用いた光学測定装置であったが、回折格子を用いた分散型赤外分光分析を用いた光学測定装置であっても良い。また、赤外分光分析以外の光吸収測定装置であっても良いし、光散乱測定装置にも適用可能である。さらに、前記各実施形態の測定セルを多重反射型のセルとしても良い。
【0050】
また、サンプルガス生成手段としては、測定セルに設けた真空引き用のポートと当該ポートに接続された真空ポンプとを有し、この真空ポンプにより測定セル内を真空にすることによってサンプルからサンプルガスを生成するように構成しても良い。なお、真空引き用のポートとしては、前記実施形態の上流側ポート又は下流側ポートを用いることができる。
【0051】
さらに、前記各実施形態では、赤外光源からの測定光が光透過窓2Aから測定セル内に入り、光透過窓2Bから光検出部に出るように構成されているが、逆となるように構成して良い。
その上、測定セルの一端がコーナーキューブミラーからなり、光透過窓2Aと光透過窓2Bとが一体化されていても良い。
【0052】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、各実施形態の要素を互いに組み合わせて構成しても良いし、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
100 ・・・光学測定装置
W ・・・サンプル
2 ・・・光学測定用セル
21 ・・・セル本体
2A、2B・・・光透過窓
21a ・・・本体部
21b ・・・蓋部
22 ・・・サンプルガス生成手段
221 ・・・熱源ランプ
2C ・・・熱線透過窓
223 ・・・発熱体
224 ・・・電源回路
225 ・・・発熱体
3 ・・・光源
4 ・・・光検出器
5 ・・・演算装置
8 ・・・保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光が通過する光透過窓を有しており、サンプルが配置されるセル本体と、
前記セル本体内に配置されたサンプルからサンプルガスを生成させるサンプルガス生成手段とを具備する光学測定用セル。
【請求項2】
前記サンプルガス生成手段が、熱線を射出する熱源ランプを有し、当該熱源ランプから出る熱線を前記セル本体に設けられた熱線透過窓を介して前記サンプルに照射して前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させる請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項3】
前記サンプルガス生成手段が、前記サンプルの周囲に設けられて通電により発熱する発熱体を有し、当該発熱体によりサンプルを加熱してサンプルガスを生成させるものである請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項4】
前記サンプルが、通電することにより発熱する発熱体であり、
前記サンプルガス生成手段が、前記発熱体に電圧を印加する電源回路を有し、当該電源回路により前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させる請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項5】
前記セル本体に配置されるサンプルが筒状をなすものであり、
前記サンプルガス生成手段が、前記サンプルの内周側又は外周側に配置される発熱体を有し、当該発熱体により前記サンプルを加熱してサンプルガスを生成させる請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項6】
前記発熱体が、前記サンプルの外周側に配置されるものであり、
前記サンプルの内周側に設けられて、前記サンプルを筒状に保つ多孔性の筒状保持体をさらに備えている請求項5記載の光学測定用セル。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の光学測定用セルを用いた光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255702(P2012−255702A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128531(P2011−128531)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】