光学測定装置
【課題】より高い積分効率を実現するとともに、コストを低減した光学測定装置を提供する。
【解決手段】本実施の形態に従う半球型の積分球では、平面部全体を鏡面反射(正反射)を生じるミラーを用いるのではなく、平面部の外周側(以下「外周部」とも称す。)に正反射を生じる材質を採用するとともに、その内周側(以下「内周部」とも称す。)には当該外周部の材質に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質を採用する。内周部に採用される材質は、外周部に採用される材質に比較して、安価であり、かつ、紫外波長域における反射率も高い。それぞれ適切な材質を用いて、外周部および内周部を適切な範囲に配置することで、コストを低減しつつ、積分効率が高い(光吸収が少ない)半球型の積分球を提供する。
【解決手段】本実施の形態に従う半球型の積分球では、平面部全体を鏡面反射(正反射)を生じるミラーを用いるのではなく、平面部の外周側(以下「外周部」とも称す。)に正反射を生じる材質を採用するとともに、その内周側(以下「内周部」とも称す。)には当該外周部の材質に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質を採用する。内周部に採用される材質は、外周部に採用される材質に比較して、安価であり、かつ、紫外波長域における反射率も高い。それぞれ適切な材質を用いて、外周部および内周部を適切な範囲に配置することで、コストを低減しつつ、積分効率が高い(光吸収が少ない)半球型の積分球を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を均一化するための半球型の積分球を含む光学測定装置に関し、特に、積分効率を向上させることのできる構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)やEL(Electro Luminescence)等の新しい光源の開発が急速に進んでいる。このような光源を評価する指標としては、光源の全光束や光色といった指標が用いられる。特に、光源の全光束は、その光源の出力(lm:ルーメン)だけでなくランプ効率(lm/W)を求める上で重要な指標である。
【0003】
このような光源の全光束を測定する方法として、中空の球の内壁に硫酸バリウム等の拡散材料を塗布した積分球(球形光束計)が用いられてきた。この積分球を用いる場合には、積分球の中心において光源を点灯することで、その光源から放射される光を均一化し、その均一化した光の照度に基づいて、全光束を算出する。
【0004】
このような積分球を用いた従来の全光束の測定方法では、測定対象の光源を積分球の中心に固定するためのジグによる光吸収、および、光源自身の自己吸収が誤差要因となる。そのため、このような誤差を補正する方法も提案されているが、そのような補正だけでは、高出力のLED等のように点灯回路および放熱・冷却デバイスが一体化された光源や、ELまたはバックライト等の光学系と一体となった面光源を精度よく測定することは難しかった。
【0005】
このような課題を解決する手段として、特開平06−167388号公報(特許文献1)に開示されるような半球型の積分球が提案されている。
【0006】
また、蛍光ランプやディスプレイ等に用いられる蛍光体を評価する指標として、量子効率が用いられるようになっている。なお、量子効率を測定する典型的な方法として、“大久保、重田 「NBS標準蛍光体の量子効率の測定」”(非特許文献1)および特開平10−293063号公報(特許文献2)に、蛍光体の量子効率を測定するための光学系が開示されている。このような量子効率を測定する場合においても、上述したような半球型の積分球を用いることができる。
【0007】
より具体的には、特開平06−167388号公報(特許文献1)に開示されるような半球型の積分球は、その内壁に硫酸バリウム等の拡散材料からなる拡散反射層を有する半球部と、光を正反射(鏡面反射)する平面ミラーとからなる。光源の全光束を測定する場合には、平面ミラーの面上で、かつ、半球部の曲率中心の位置に、測定対象の光源を装着する。このとき、半球部と平面ミラーにより生じる半球部の虚像とにより、仮想的な球状の積分空間が形成される。
【0008】
測定対象の光源を点灯するための回路や、測定対象の光源を固定するためのジグ等は、平面ミラーに対して半球部と反対側に位置するため、この仮想的な積分空間内から排除できる。そのため、これらの回路やジグ等による光吸収の誤差を原理的に回避できる。
また、面光源を測定対象とする場合には、発光部分のみが平面ミラーの窓から露出するように装着することで、当該測定対象の発光しない部分による光吸収の影響を回避できる。
【0009】
なお、米国特許出願公開第2005/0156103号明細書(特許文献3)には、複数の光源からの異なる波長の長さのエネルギーを組合せることのできる積分チャンバーが開示されている。この積分チャンバーは、光源からの光を混合するに過ぎず、全光束を測定する際に必要な光の均一化を行なうものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−167388号公報
【特許文献2】特開平10−293063号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0156103号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】大久保、重田,「NBS標準蛍光体の量子効率の測定」、照明学会誌、社団法人照明学会、1999年、第83巻、第2号、p.87−93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、半球型の積分球においては、測定対象の光は、半球部の内壁に形成された拡散反射層および平面ミラーを順次反射することで均一化される。そのため、半球部の内壁および平面ミラーのそれぞれの反射面には、測定対象の光に含まれる波長域の全般に亘って、相対的に高い反射率を有する材質を使用する必要がある。
【0013】
しかしながら、平面ミラーに用いられる材質のうち、特に波長の短い紫外波長域等において相対的に高い反射率を有するものは比較的高価である。そのため、より高い積分効率を実現しようとすると、平面ミラーのコストが高くなり、一方、コストを低減しようとすると、積分効率が低下するという課題があった。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より高い積分効率を実現するとともに、コストを低減した光学測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある局面に従う光学測定装置は、内壁に拡散反射層を有する半球部と、半球部の実質的な曲率中心を通り、かつ、半球部の開口部を塞ぐように配置された、半球部の内面側に反射層を有する平面部とを含む。平面部は、半球部と平面部との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓、および、積分空間内で均一化された光を抽出するための窓の少なくとも一方を含む。平面部は、平面部が半球部の内壁と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占める、主として正反射を生じる第1の材質からなる外周部と、第1の材質に比較して、少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有し、かつ、主として拡散反射を生じる第2の材質からなる、外周部の内側の領域を占める内周部とを含む。
【0016】
好ましくは、内周部の範囲は、内周部と半球部の内壁との間での光吸収による影響を実質的に無視できるように定められる。
【0017】
好ましくは、内周部の範囲は、積分空間における光の吸収率が所定値以下となるように定められる。
【0018】
さらに好ましくは、所定値は、10%である。
好ましくは、内周部は、半球部の実質的な曲率中心から最外周までの距離を基準としたときに、50%〜70%の長さの半径を有する円の内部に配置される。
【0019】
さらに好ましくは、内周部は、円を外接円とする多角形である。
好ましくは、内周部は、最外周内の面積を基準としたときに、25%〜50%の面積を有するように定められる。
【0020】
好ましくは、外周部は、金属蒸着ミラーからなり、内周部は、ポリテトラフルオロエチレン焼結体、または、硫酸バリウムの一方からなる。
【0021】
好ましくは、平面部は、測定対象である光源をその発生する光束が半球部の内壁に向けて照射されるように装着可能な第1の窓を含み、光学測定装置は、半球部または平面部の第2の窓を通じて、半球部の内壁における照度を測定するための検出器と、第1の窓から第2の窓までの経路上に配置された遮蔽部とをさらに含む。
【0022】
好ましくは、平面部は、半球部の実質的な曲率中心の近傍に設けられた第1の窓と、第1の窓から所定距離だけ離れた位置に設けられた第2の窓とを含み、光学測定装置は、第1の窓を通じて励起光を照射する光源と、第2の窓を通じて、半球部の内壁におけるスペクトルを測定するための分光器と、少なくともその一部が半球部内に露出するように配置した測定対象に対して光源からの励起光を照射した場合に分光器で測定される第1のスペクトルと、測定対象に代えて配置された既知の反射率特性または透過率特性をもつ標準体に対して光源からの励起光を照射した場合に分光器で測定される第2のスペクトルとに基づいて、測定対象の量子効率を算出する演算処理部とをさらに含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光学測定装置によれば、より高い積分効率を実現するとともに、コストを低減することである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球の断面図の一例である。
【図2】平面部として用いられる材質の反射率の波長特性を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球を構成する平面部を示す模式図である。
【図4】半球部と平面部との接続部付近における光の挙動の一例を示す模式図である。
【図5】本実施の形態に従う半球型の積分球における平面部の非鏡面反射領域による積分機能への影響を評価するためのモデルを示す図である。
【図6】図5に示すモデルにおいて算出される平面部の半径を基準とした非鏡面反射領域の半径の比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。
【図7】図5に示すモデルにおいて算出される平面部の面積を基準とした非鏡面反射領域の面積の比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球を構成する平面部のバリエーションを示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球を構成する平面部のバリエーションを示す模式図である。
【図10】本実施の形態の適用例1に係る光学測定装置の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の適用例1に係る光学測定装置を用いて光源の全光束を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置の構成を示す図である。
【図13】図12に示す光学測定装置において提供される仮想的な積分空間を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態の適用例2に係る量子効率の測定原理を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態の適用例2に係る光学測定装置を用いて試料の量子効率を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【図16】本実施の形態の適用例3に係る光学測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
<A.概要>
本実施の形態に従う光学測定装置は、半球型の積分球を含む。この半球型の積分球は、内壁に拡散反射層を有する半球部と、半球部の開口部を塞ぐように配置された平面部とで構成される。この平面部は、半球部の実質的な曲率中心を通り、かつ、少なくとも半球部の内面側に反射層を有する。
【0027】
この半球部と平面部との間には積分空間が形成される。すなわち、半球部と平面部との間に現れる像(実像)が平面部により反射されることで、虚像となって現れる。この実像と虚像とが合成されることで、従来の全球型の積分球と実質的に同じ積分空間を提供することができる。
【0028】
なお、平面部には、後述するように、その用途に応じて、半球部と平面部との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓、および、積分空間内で均一化された光を抽出するための窓の少なくとも一方を含む。さらに、用途によっては、半球部の一部に窓が設けられる場合もある。
【0029】
特に、本実施の形態に従う半球型の積分球では、平面部全体を鏡面反射(正反射)を生じるミラーを用いるのではなく、平面部の外周側(以下「外周部」とも称す。)に正反射を生じる材質を採用するとともに、その内周側(以下「内周部」とも称す。)には当該外周部の材質に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質を採用する。
【0030】
後述するように、内周部に採用される材質は、外周部に採用される材質に比較して、安価であり、かつ、紫外波長域における反射率も高い。しかしながら、このような材質の表面では拡散反射が生じるので、積分球としてより適切な機能を実現するためには、外周部および内周部の範囲(位置、領域、大きさ等)を適切に選択する必要がある。
【0031】
このように、それぞれ適切な材質を用いて、外周部および内周部を適切な範囲に配置することで、コストを低減しつつ、積分効率が高い(光吸収が少ない)半球型の積分球を提供することができる。
【0032】
<B.積分球の概要>
まず、本実施の形態に従う半球型の積分球について説明する。図1は、本発明の実施の形態に従う半球型の積分球の断面図の一例である。
【0033】
図1を参照して、本実施の形態に従う半球型の積分球40は、半球部1と、この半球部1の開口部を塞ぐように配置された円板状の平面部10とを含む。半球部1は、その内面(内壁)に拡散反射層1aを有する。この拡散反射層1aは、代表的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)焼結体や硫酸バリウム等の拡散材料を塗布または吹付けることによって形成される。
【0034】
平面部10は、半球部1の実質的な曲率中心を通るように配置される。なお、半球部1の曲率中心とは、代表的に半球部1の内面側についての曲率の中心Oを意味する。また、少なくとも平面部10における半球部1の内面側には反射面が形成される。
【0035】
図1には、半球型の積分球40を用いて、測定対象である光源SMP1からの全光束を測定する場合の構成例を示す。この構成例においては、平面部10には、半球部1の内面側と外部との間を連通可能な光源窓2が形成される。光源窓2は、半球部1と平面部10との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓である。すなわち、光源窓2には、測定対象である光源SMP1をその発生する光束が半球部1の内壁に向けて照射されるように装着可能となっている。
【0036】
また、半球部1は、半球部1の内壁における照度を測定するための観測窓6を有する。この観測窓6には、受光部7が接続されており、図示しない検出器を用いて、半球部1の内壁における照度が検出される。さらに、半球型の積分球40の内部には、光源SMP1の発光面と観測窓6との間に設けられた遮蔽部(バッフル:baffle)8が設けられている。このバッフル8は、光源SMP1からの光束が直接的に観測窓6を通じて検出器へ入射することによる誤差を低減する。
【0037】
図1に示す構成において、光源SMP1から照射される全光束をΦとした場合に、半球部1と平面部10との間に形成される積分空間内で均一化されて得られる照度は以下のように表わすことができる。すなわち、受光部7で測定される受光面照度Eaは、(1)式のようになる。
【0038】
【数1】
【0039】
上述の(1)式から明らかなように、半球部1の拡散反射層1aの平均反射率ρおよび平面部10の平均反射率ρMの値が大きいほど、受光面照度Eaの絶対値を大きくすることができる。そのため、半球部1の拡散反射層1aおよび平面部10の反射層は、その反射率が概ね0.95以上であることが好ましい。
【0040】
図2は、平面部として用いられる材質の反射率の波長特性を示す図である。図2には、平面部10の反射層として用いられる、アルミニウム蒸着ミラー(AL蒸着ミラー)と、アルミニウム蒸着ミラーに対してコーティング処理を施した高反射処理ミラーとを比較して示す。
【0041】
アルミニウム蒸着ミラーは、紫外波長域および可視波長域を含む、350nm〜650nmの波長域に亘って、0.9以上の反射率を維持する。これに対して、高反射処理ミラーでは、可視波長域において0.95以上の反射率を維持するものの、紫外波長域では、その反射率が極端に低下する。すなわち、高反射処理ミラーの使用可能範囲としては、概ね450nm〜750nmとなる。
【0042】
なお、半球部1の拡散反射層1aとして用いられる、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体や硫酸バリウム等では、紫外波長域から可視波長域のほぼ全域に亘って、0.95程度の反射率を実現することができる。
【0043】
図2に示すような反射率の波長特性から、測定対象である光源SMP1から可視波長域の光束が主として照射される場合には、平面部10として高反射処理ミラーを採用することで、積分効率を高めることができる。
【0044】
しかしながら、測定対象である光源SMP1から照射される光束に紫外波長域の成分が含まれている場合には、高反射処理ミラーを採用することができず、アルミニウム蒸着ミラーを採用せざるを得なかった。この結果、平面部10の反射率が高反射処理ミラーを採用した場合に比較して低くなるので、積分効率、すなわち、受光部7で測定される受光面照度Eaの絶対値が低下するという課題があった。
【0045】
そこで、本実施の形態に従う半球型の積分球40では、平面部10を、正反射を生じる材質からなる部分(外周部)と、外周部に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質からなる部分(内周部)とで構成する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態に従う半球型の積分球40を構成する平面部10を示す模式図である。図3を参照して、平面部10は、平面部10が半球部1の内壁(拡散反射層1a)と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占める外周部12と、外周部12の内側の領域を占める内周部14とを含む。外周部12は、金属蒸着ミラー(典型的には、アルミニウム蒸着ミラー)からなり、入射した光を主として正反射する。内周部14は、外周部12に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有し、かつ、入射した光を主として拡散反射する。典型的には、内周部14は、半球部1の拡散反射層1aと同様に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体や硫酸バリウム等からなる。なお、このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体としては、ラブスフェア(Labsphere)社のスペクトラロン(登録商標)が好適である。
【0047】
<C.平面部>
図3に示すような平面部10を構成する外周部12よび内周部14については、その範囲(位置、領域、大きさ等)を適切に設計する必要がある。以下、外周部12および内周部14をどのように設計するかについて説明する。
【0048】
外周部12および内周部14の設計については、以下の2つのファクタを考慮する必要がある。
【0049】
(1)積分球全体としての積分効率が予め定められた設計値以上となること
(2)内周部14で生じる拡散反射によって積分球としての性能に影響を受けないこと
すなわち、(1)のファクタに基づけば、内周部14の占める範囲は大きいほど好ましい。一方(2)のファクタに基づけば、内周部14に占める範囲は小さいほど好ましい。そのため、(1)および(2)のファクタを満たすように、平面部10を設計することになる。
【0050】
(c1.最外周部における光吸収)
上述の(1)のファクタとして考慮すべき点として、半球部1と平面部10との接続部付近(最外周部)における光吸収について考察する。
【0051】
図4は、半球部1と平面部10との接続部付近における光の挙動の一例を示す模式図である。図4(a)には、平面部10を正反射部材で構成した場合を示し、図4(b)には、平面部10を拡散反射部材で構成した場合を示す。
【0052】
図4(a)に示すように、平面部10を正反射部材で構成した場合には、何らかの光が平面部10に入射すると、その入射角と同じ出射角で反射する。そのため、半球部1の拡散反射層1aで光が拡散反射されたとしても、入射方向とは反対の方向に反射されるため、光が半球部1と平面部10との接続部付近に閉じ込められることはない。
【0053】
これに対して、図4(b)に示すように、平面部10を拡散反射部材で構成した場合には、何らかの光が平面部10に入射すると、その入射角に応じた方向を中心として複数の方向に反射光が生じる。また、半球部1の拡散反射層1aにおいても光が拡散反射される。そのため、一部の光は、半球部1と平面部10との間で多重反射を生じ得る。このように、平面部10を拡散反射部材で構成した場合には、光が半球部1と平面部10との接続部付近に閉じ込められて、その結果、この付近で光吸収が生じる。
【0054】
したがって、外周部12は、少なくとも、平面部10が半球部1の内壁と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占めるように設計される。言い換えれば、内周部14の範囲は、内周部14と半球部1の内壁との間での光吸収による影響を実質的に無視できるように定められる。
【0055】
(c2.積分効率/吸収率)
上述の(1)のファクタとして考慮すべき点として、半球部1と平面部10との間に形成される積分空間における光の吸収率が所定値以下となるように、外周部12および内周部14の比率は定められる。図2に示すようなアルミニウム蒸着ミラーの反射率が0.9(90%)付近であるので、少なくとも、積分空間における光の吸収率が10%以下となるように設計されることが好ましい。
【0056】
言い換えれば、測定対象の光源から射出される全光束のうち、90%以上が半球部1の内壁の照度として現れるようにすることが好ましい。
【0057】
(c3.平面部の非鏡面反射領域による積分機能への影響)
上述の(1)および(2)のファクタとして考慮すべき点として、平面部10に形成される非鏡面反射領域による積分機能への影響について考察する。
【0058】
半球型の積分球の場合、平面部10における非鏡面反射領域(内周部14あるいは光源SMP1)の占める割合が大きくなると、虚像としての光束が生じなくなり、光学的な積分球として成り立たなくなる。すなわち、非鏡面反射領域が内周部14等のように拡散反射を生じる部材である場合には、正しい虚像が現れなくなる。また、非鏡面反射領域が光源SMP1等のように光を吸収するような部材である場合には、虚像が現れなくなるだけでなく、積分効率も低下する。
【0059】
図5は、本実施の形態に従う半球型の積分球40における平面部10の非鏡面反射領域による積分機能への影響を評価するためのモデルを示す図である。図5を参照して、非鏡面反射領域により虚像として生じる影について考察する。
【0060】
図5には、半球部1の拡散反射層1aのいずれかの位置で生じた反射光が平面部10の非鏡面反射領域で遮られて生じる影SおよびS’を示す。なお、平面部10は半球部1の曲率の中心Oから半径rの円であるとし、平面部10の非鏡面反射領域は、半球部1の曲率の中心Oから半径rSの円であるとする。図5に示すように、平面部10の非鏡面反射領域により生じる影のうち最も大きいのは、平面部10の非鏡面反射領域の鉛直方向にある半球部1の壁面上の点Aで生じた反射光による影Sである。
【0061】
さらに、影Sを基準として、平面部10の非鏡面反射領域の鉛直方向に対して角度βにある半球部1の壁面上の点A’で生じた反射光による影S’は、S’=S・cosβとなる。
【0062】
非鏡面反射領域の端部における鉛直角をθとすれば、半球部1の内面側についての曲率の中心Oから球帽状の非鏡面反射領域についての影に対する立体角ωSは、(2)式のように表わすことができる。
【0063】
【数2】
【0064】
実像および虚像からなる積分空間における、半球部1の曲率の中心Oからの全立体角は4πであるから,積分空間の内面積に対する非鏡面反射領域による影S’(A’の反射光によってできる影の球帽)の割合Rは、ωS/4πとなる。したがって、平面部10の非鏡面反射領域の鉛直方向に対して角度βにある半球部1の壁面上の点A’で生じた反射光による影S’の割合R(β)は、(3)式のように表わすことができる。
【0065】
【数3】
【0066】
半球部1の拡散反射層1aが完全拡散反射であるとすると、拡散反射層1aでの反射光の配光は完全拡散となる。そのため、半球部1の壁面上の点Aと点A’とがいずれも同一の反射光を生じるとすれば、(3)式を角度βで積分したものが、積分空間の内面積を基準とした、発生する影の面積の比率となる。
【0067】
図6は、図5に示すモデルにおいて算出される平面部の半径rを基準とした非鏡面反射領域の半径rSの比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。図7は、図5に示すモデルにおいて算出される平面部の面積を基準とした非鏡面反射領域の面積の比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。
【0068】
たとえば、平面部10の非鏡面反射領域の半径rSが平面部10の半径rに対して60%である(平面部10の非鏡面反射領域の面積が平面部10の面積に対して36%である)場合を考える。この場合において、非鏡面反射領域の反射率が約0.95であるとすると、非鏡面反射領域の影による半球部1の壁面における照度の低下は、当該非鏡面反射領域が存在しない場合と比較して、1%以下に抑えることができる。
【0069】
このような設計値をもつように平面部10を構成することで、積分球としての性能を劣化させることなく、積分球全体としての積分効率を高めることができる。
【0070】
なお、上述の場合に、非鏡面反射領域に測定対象である光源SMP1が装着されて、当該光源SMP1の反射率がゼロ(入射した光をすべて吸収する場合)には、非鏡面反射領域の影による半球部1の壁面における照度は、当該非鏡面反射領域が存在しない場合に比較して約12%低下する。すなわち、図6および図7に示すように、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合が0.12となる。
【0071】
したがって、図6に示すように、平面部10の非鏡面反射領域の半径rSが平面部10の半径rに対して60%を中心として±10%程度の範囲、すなわち、約50%〜70%の範囲となるように設計することが好ましい。言い換えれば、内周部14は、半球部1の実質的な曲率の中心Oから最外周までの距離(半径r)を基準としたときに、約50%〜70%の長さの半径(半径rS)を有する円の内部に配置されることが好ましい。
【0072】
あるいは、図7に示すように、平面部10の面積を基準とした非鏡面反射領域の面積の比率が、36%を中心として概ね±15%程度の範囲、すなわち、約25%〜50%の範囲となるように設計することが好ましい。言い換えれば、内周部14は、最外周内の面積を基準としたときに、約25%〜50%の面積を有するように定められることが好ましい。
【0073】
典型的な設計例として、半球部1の実質的な曲率の中心Oから最外周までの距離を約70mm(2.75インチ)とした場合に、内周部14の半径を約42mm(1.65インチ)とすることができる。
【0074】
<D.バリエーション>
上述した図3に示すような平面部10に加えて、C.の項において考察したような2つのファクタを満たせば、外周部12および内周部14について任意の形状を採用することができる。
【0075】
図8および図9は、本発明の実施の形態に従う半球型の積分球40を構成する平面部10のバリエーションを示す模式図である。図8には、内周部14の重心が平面部10の中心Oと一致するように構成した例を示し、図9には、内周部14の重心が平面部10の中心Oとは異なるように構成した例を示す。
【0076】
一例として、図8(b)に示す正方形の内周部14、図8(c)に示す正六角形の内周部14、図8(e)に示す正三角形の内周部14、図8(f)に示す正五角形の内周部14、図8(g)に示す正七角形の内周部14、および、図8(i)に示す正八角形の内周部14については、図8(a)に示す円状の内周部14を外接円とするようなサイズに設計されることが好ましい。すなわち、これらの多角形状の内周部14は、平面部10の半径rに対して50%〜70%の半径rSを有する円に内接するように構成することができる。
【0077】
また、図9(a)〜図9(k)に示すように、内周部14の重心が平面部10の中心Oとは異なるように構成されていてもよい。
【0078】
なお、内周部14の形状は、測定対象の大きさおよび形状に適合するように設計される場合もある。すなわち、本実施の形態に従う半球型の積分球40は、各種の光学測定方法に適用可能であり、その適用先の測定方法によっては、測定対象の光源等を半球内に露出するように配置する必要がある。その場合、外周部12と内周部14とを分離可能に構成し、内周部14の全部または一部を取除いた上で、測定対象の光源を装着するような使用形態も想定される。
【0079】
<E.適用例1>
次に、本実施の形態に従う半球型の積分球40を用いて、測定対象の光源から放射される全光束を測定する場合の構成について説明する。この全光束を測定する場合には、基本的には、図1と同様の光学測定装置を構成する。但し、以下の説明では、光源等による光吸収を補正するための機構を有する構成について例示する。
【0080】
図10は、本実施の形態の適用例1に係る光学測定装置100の構成を示す図である。図10を参照して、光学測定装置100を構成する半球型の積分球40は、基本的には、図1に示す半球型の積分球と同様であるが、平面部10に、自己吸収を測定するために使用される光束を半球部1の内面側に向けて照射するための開口である照明窓4が設けられている点が異なっている。平面部10の外側には、照明窓4と連通するように、補正光源24を格納するための光源格納部22が配置される。補正光源24は、後述するように、測定対象の光源SMP1での光吸収に起因する補正係数を算出するための自己吸収測定用の光源である。以下では、光源SMP1から発生する光束と区別するために、補正光源24から発生する光束を「補正光束」とも称す。
【0081】
光学測定装置100は、観測窓6および受光部7を通じて、半球部1の内壁における照度が検出することにより、光源SMP1での自己吸収補正係数を算出した上で、光源SMP1の全光束を測定する検出演算部50を含む。
【0082】
次に、光学測定装置100を用いて光源SMP1の全光束を測定するための処理手順について説明する。図11は、本発明の実施の形態の適用例1に係る光学測定装置100を用いて光源SMP1の全光束を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【0083】
図11を参照して、まず、ユーザは、光源窓2に校正用ミラーを装着し(ステップS100)、補正光源24を発光させる(ステップS102)。そして、ユーザは、検出演算部50に、「光源窓2に校正用ミラーが装着されており、かつ補正光源24のみが発光状態」であることを示す選択指令を入力する。すると、検出演算部50は、そのときに受光部7で検出される照度を出力値i0として一時的に格納する(ステップS104)。
【0084】
なお、平面部10を構成する内周部14の全体を校正用ミラーとしてもよい。すなわち、測定対象の光源SMP1(光源窓2)と同一の断面形状を有するように内周部14を設計し、内周部14が装着された状態を「光源窓2に校正用ミラーが装着された状態」としてもよい。
【0085】
次に、ユーザは、光源窓2に測定対象の光源SMP1を装着し(ステップS106)、補正光源24を発光させる(ステップS108)。そして、ユーザは、検出演算部50に、「光源窓2に測定対象の光源SMP1が装着されており、かつ、補正光源24のみが発光状態」を示す選択指令を入力する。すると、検出演算部50は、そのときに受光部7で検出される照度を出力値i1として一時的に格納する(ステップS110)。
【0086】
さらに、検出演算部50は、出力値i1を出力値i0で割り算することで、自己吸収補正係数αを算出する(ステップS112)。検出演算部50は、この算出した自己吸収補正係数αを格納する。
【0087】
次に、ユーザは、光源窓2に測定対象の光源SMP1が装着された状態で、補正光源24を非発光状態にするとともに、測定対象の光源SMP1を発光させる(ステップS114)。そして、ユーザは、検出演算部50に、「光源窓2に測定対象の光源SMP1が装着されており、かつ、測定対象の光源SMP1のみが発光状態」を示す選択指令を入力する。すると、検出演算部50は、そのときに受光部7で検出される照度である出力値idに対して、ステップS112において算出された自己吸収補正係数αを乗じた値を算出し、測定対象の光源SMP1の全光束を示す相対値として出力する(ステップS116)。そして、処理は終了する。
【0088】
<F.適用例2>
次に、本実施の形態に従う半球型の積分球40を用いて、測定対象の量子効率を測定する場合の構成について説明する。この量子効率は、測定対象(典型的には、蛍光体)に吸収された光量子数に対する蛍光発光の光量子数の割合を意味する。
【0089】
図12は、本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200の構成を示す図である。図12を参照して、光学測定装置200を構成する半球型の積分球40は、半球部1と、この半球部1の開口部を塞ぐように配置された円板状の平面部10とを含む。平面部10は、半球部1の内面側と外部との間を連通可能な、光源窓17および観測窓18を有する。すなわち、光源窓17は、半球部1の実質的な曲率中心を含む領域に形成される。また、観測窓18は、半球部1の内壁における照度を測定するための開口であり、光源窓17からより外周側に所定距離だけ離れた位置に設けられる。
【0090】
光学測定装置200は、試料SMP2または標準体REF2(透過率特性が既知)に励起光を照射するための光源60と、試料SMP2の量子効率を測定する分光演算部70とを含む。
【0091】
光源60で生成された励起光は、光源窓17を通じて、平面部10の法線と一致する光軸Ax3に沿って照射される。この励起光は、光源窓17に装着される試料SMP2または標準体REF2を透過する。この励起光としては、低圧水銀蛍光ランプの場合には、200〜400nmの紫外単色光が用いられ、LED(Light Emitting Diode)分野では、300〜600nmの紫外もしくは可視単色光等が用いられる。
【0092】
平面部10の外側には、観測窓18と連通するように、半球部1の内壁におけるスペクトルを検出するための受光部26が配置される。受光部26では、観測窓18を覆う筐体26a内には、分光演算部70へ光を導くための光ファイバ26dおよび光ファイバ26dに接続されたファイバ端部26bが挿入されている。また、筐体26a内には、観測窓18を通じて入射する光の伝搬方向を約90°変換した上で、ファイバ端部26bに導くための反射部26cが設けられている。
【0093】
分光演算部70は、光ファイバ26dによって導入された光のスペクトルを検出する。典型的に、分光演算部70は、回折格子および回折格子の回折方向に関連付けられたラインセンサ等を含んで構成され、入力された光の波長毎の強度を出力する。
【0094】
図12に示す半球型の積分球40内に装着される試料SMP2または標準体REF2が発する蛍光についても、上述したように、実像および虚像が現れる。すなわち、図13に示すように、仮想的な積分空間内には、2つの試料SMP2または標準体REF2が配置されることになる。
【0095】
図14は、本発明の実施の形態の適用例2に係る量子効率の測定原理を説明するための図である。図14(a)を参照して、たとえば蛍光体である試料SMP2に対して、励起光L1が照射されると、その一部(光量子)が吸収されて蛍光の発光に用いられるとともに、残りの励起光L1はその表面で反射される。ここで、励起光L1の波長範囲をλ1L〜λ1Hとし、試料SMP2から発生する蛍光成分の波長範囲をλ2L〜λ2Hとする。なお、一般的に、励起光L1は紫外線であり、蛍光は可視光線であるので、波長範囲λ1L〜λ1Hと波長範囲λ2L〜λ2Hとは重複しない。そのため、分光演算部70において、測定されるスペクトルのうち、それぞれの波長範囲に対応する成分を選択的に抽出することで、両者を分離することができる。
【0096】
ここで、励起光L1のスペクトルをE0(λ)とする。また、励起光L1を照射することで試料SMP2から発生する蛍光成分のスペクトルをP(λ)とし、試料SMP2で反射される反射光成分のスペクトルをR(λ)とする。すなわち、蛍光成分のスペクトルP(λ)は、試料SMP2を装着した場合に分光演算部70で測定されたスペクトルE(1)(λ)の蛍光に対応する波長範囲(λ2L〜λ2H)の成分に相当し、反射光成分のスペクトルをR(λ)は、分光演算部70で測定されたスペクトルE(1)(λ)の励起光L1に対応する波長範囲(λ1L〜λ1H)の成分に相当する。
【0097】
また、図14(b)に示すように、標準体REF2の反射率特性をρS(λ)とすると、スペクトルE0(λ)をもつ励起光L1を標準体REF2に照射することで測定されるスペクトルは、E(2)(λ)=ρS(λ)・E0(λ)となる。この式より、励起光L1のスペクトルE0(λ)は、(4)式のように表わすことができる。
【0098】
E0(λ)=E(2)(λ)/ρS(λ) …(4)
また、図14(a)に示すように、励起光L1のスペクトルE0(λ)から試料SMP2で反射される反射光成分のスペクトルR(λ)を除いた成分(光量子)が、試料SMP2に吸収されたものとみなすことができる。
【0099】
したがって、スペクトル(放射パワー)を光量子数に変換するために、hc/λ(但し、h:プランク定数、c:光速)でスペクトルを除算すると、試料SMP2に吸収された光量子数Abは、(5)式のように表わすことができる。なお、k=1/hcである。
【0100】
【数4】
【0101】
また、蛍光の光量子数Pphは、(6)式のように表わすことができる。
【0102】
【数5】
【0103】
したがって、試料SMP2の内部量子効率QEinは、(7)式のように表わすことができる。
【0104】
QEin=Pph/Ab …(7)
以上のように、光学測定装置200を用いて量子効率を測定する場合には、少なくともその一部が半球部1内に露出するように配置した測定対象である試料SMP2に対して光源60からの励起光を照射した場合に分光演算部70で測定される第1のスペクトル(E(1)(λ))と、試料SMP2に代えて配置された既知の反射率特性または透過率特性をもつ標準体REF2に対して光源60からの励起光を照射した場合に分光演算部70で測定される第2のスペクトル(E(2)(λ))とに基づいて、試料SMP2の量子効率が算出される。
【0105】
次に、光学測定装置200を用いて試料SMP2の量子効率を測定するための処理手順について説明する。図15は、本発明の実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200を用いて試料SMP2の量子効率を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【0106】
図15を参照して、まず、ユーザは、光源窓17に試料SMP2を装着し(ステップS200)、光源60からの励起光の照射および分光演算部70での測定を開始させる(ステップS202)。ユーザは、分光演算部70に、「光源窓17に試料SMP2が装着されている」ことを示す選択指令を入力する。分光演算部70は、そのときに測定されたスペクトルE(1)(λ)を一時的に格納する(ステップS204)。
【0107】
次に、ユーザは、光源窓17に標準体REF2を装着し(ステップS206)、光源60からの励起光の照射および分光演算部70での測定を開始させる(ステップS208)。ユーザは、分光演算部70に、「光源窓17に標準体REF2が装着されている」ことを示す選択指令を入力する。分光演算部70は、そのときに測定されたスペクトルE(2)(λ)を一時的に格納する(ステップS210)。
【0108】
スペクトルE(1)(λ)およびE(2)(λ)の取得が完了すると、分光演算部70は、これらのスペクトルに基づいて、試料SMP2の内部量子効率QEinを算出する(ステップS212)。より具体的には、分光演算部70は、スペクトルE(1)(λ)の波長範囲λ1L〜λ1Hに対応する波長成分、スペクトルE(2)(λ)の波長成分、および、標準体REF2の反射率特性をρS(λ)に基づいて、試料SMP2に吸収された光量子数Abを算出する。また、分光演算部70は、スペクトルE(1)(λ)の波長範囲λ2L〜λ2Hに対応する波長成分に基づいて、蛍光の光量子数Pphを算出する。そして、分光演算部70は、光量子数Abおよび光量子数Pphに基づいて、試料SMP2の内部量子効率QEinを算出する。
【0109】
さらに、分光演算部70は、算出した試料SMP2の内部量子効率QEinを出力する(ステップS214)。なお、内部量子効率QEinの出力の一例としては、内部量子効率QEinのモニタ上等での表示、内部量子効率QEinのプリント出力、内部量子効率QEinの記憶媒体への格納等が挙げられる。そして、処理は終了する。
【0110】
なお、図15に示すフローチャートでは、測定手順の一例として、先に試料SMP2についてのスペクトルE(1)(λ)を取得し、続いて、標準体REF2についてのスペクトルE(2)(λ)を取得する処理例を説明したが、スペクトルE(1)(λ)およびスペクトルE(2)(λ)が取得できる限り、この順序に限定されることはない。たとえば、先に標準体REF2についてのスペクトルE(2)(λ)を取得した後、試料SMP2についてのスペクトルE(1)(λ)を取得してもよい。この場合には、標準体REF2について取得したスペクトルE(2)(λ)を用いて、複数の試料SMP2のそれぞれについてのスペクトルE(1)(λ)を順次取得することで、複数の試料SMP2についての内部量子効率QEinを効率的に算出できる。すなわち、光源窓17に標準体REF2を装着してスペクトルE(2)(λ)を取得した後、光源窓17に複数の試料SMP2を順次装着すればよい。
【0111】
<G.適用例3>
上述した本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200においては、試料SMP2および標準体REF2に励起光を透過させて量子効率を測定する構成について例示した。一方、試料SMP2および標準体REF2に励起光を照射して、その反射光を測定して量子効率を測定してもよい。
【0112】
図16は、本実施の形態の適用例3に係る光学測定装置300の構成を示す図である。図16を参照して、本実施の形態の適用例3に係る光学測定装置300は、本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200(図12)に比較して、光源窓17が半球部1の内面側についての曲率の中心Oからずれた位置に形成されている点、および、半球部1の頂点付近に試料SMP3および標準体REF3を装着するための試料窓19が設けられている点が異なっている。その他の点については、光学測定装置200と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0113】
光源60で生成された励起光は、光源窓17を通じて、平面部10の法線N1に対して角度θをもつ光軸Ax4に沿って、試料窓19に装着される試料SMP3または標準体REF3に向けて照射される。
【0114】
試料窓19は、半球部1の内面側についての曲率の中心Oを通る平面部10の法線N1との交点の位置に設けられる。すなわち、試料窓19は、半球部1および平面部10とによって囲まれる半球の頂点位置に設けられる。そして、試料窓19に試料SMP3または標準体REF3が装着される。この装着された試料SMP3に励起光が照射されることで、蛍光が発生する。
【0115】
光学測定装置300を用いて試料SMP3の量子効率を測定するための処理手順については、図15に示すフローチャートと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0116】
<H.測定例>
本願発明者らは、図16に示す光学測定装置300を用いて、アルミニウム蒸着ミラーに対してコーティング処理を施した高反射処理ミラーで作成した平面部と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体で作成した平面部との間の測定効率の差を評価した。
【0117】
より具体的には、図16に示す光学測定装置300の試料窓19に、硫酸バリウムの標準体または青色蛍光体サンプル(BAMサンプル)を装着し、励起光を標準体またはBAMサンプルへ照射した場合のゲートタイムを測定した。このゲートタイムは、分光演算部70において所定の光量が得られるまでに要した露光時間を意味する。
【0118】
また、BAMサンプルへ直接的に励起光を照射する場合の他、半球部1のBAMサンプルが存在しない内面へ励起光を照射して、間接的に励起させる場合についても測定した。
【0119】
この測定結果は、以下の通りである。
【0120】
【表1】
【0121】
上述の表において、「鏡面反射体」が高反射処理ミラーで作成した平面部の場合を示し、「拡散反射体」がポリテトラフルオロエチレン焼結体で作成した平面部の場合を示す。また、「励起」が硫酸バリウムを表面に塗布した標準体に励起光を直接照射した場合を示し、「サンプル」がBAMサンプルに励起光を直接照射した場合を示し、「再励起」がBAMサンプルに励起光を間接照射した場合を示す。また、励起光としては、260nm〜400nmまでの波長を20nmずつ異ならせた8種類の単色光を用いた。
【0122】
上表における数値の単位は「msec」である。なお、波長260nmでBAMサンプルを励起した場合には、生じる光が微弱であるため、十分に光を取得することができず、分光演算部70における露光時間の最大値である20000msecを表示している。
【0123】
さらに、上表においては、それぞれの測定結果について、異なる2つの材質間の差(比率)を算出している(比率の項目)。この算出結果によれば、平面部をポリテトラフルオロエチレン焼結体で作成することで、よりゲートタイムを短縮できることがわかる。すなわち、ポリテトラフルオロエチレン焼結体からなる平面部を採用することで、積分球における光吸収を低減して、より高い積分効率を得られることを意味する。
【0124】
<I.まとめ>
本実施の形態に従う半球型の積分球は、積分空間を形成するための平面部として、鏡面反射(正反射)を生じる材質からなる外周部と、当該外周部の材質に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質からなる内周部とを組合せた構造を採用する。
【0125】
このような平面部を採用することで、反射率が相対的に高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体などからなる反射部材を用いることができ、これにより、半球型の積分球における積分効率を高めることができる。同時に、PTFEなどの反射部材は、高反射処理ミラーなどに比較して安価であるため、光学測定装置全体のコストを抑えることができる。
【0126】
このように、相対的に積分効率の高い積分球を実現することができるので、光源の全光束測定などにおいては、検出される壁面の照度をより高めることができる。その結果、積分球内における光吸収や検出器のノイズなどに起因する誤差を低減することができる。また、発光強度の弱い蛍光試料などについても、より高精度にその量子効率を測定することができる。
【0127】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
1 半球部、1a 拡散反射層、2 光源窓、4 照明窓、6,18 観測窓、7,26 受光部、8 遮蔽部(バッフル)、10 平面部、12 外周部、14 内周部、17 光源窓、19 試料窓、22 光源格納部、24 補正光源、26a 筐体、26b ファイバ端部、26c 反射部、26d 光ファイバ、40 積分球、50 検出演算部、60 光源、70 分光演算部、100,200,300 光学測定装置、REF2,REF3 標準体、SMP1 光源、SMP2,SMP3 試料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を均一化するための半球型の積分球を含む光学測定装置に関し、特に、積分効率を向上させることのできる構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)やEL(Electro Luminescence)等の新しい光源の開発が急速に進んでいる。このような光源を評価する指標としては、光源の全光束や光色といった指標が用いられる。特に、光源の全光束は、その光源の出力(lm:ルーメン)だけでなくランプ効率(lm/W)を求める上で重要な指標である。
【0003】
このような光源の全光束を測定する方法として、中空の球の内壁に硫酸バリウム等の拡散材料を塗布した積分球(球形光束計)が用いられてきた。この積分球を用いる場合には、積分球の中心において光源を点灯することで、その光源から放射される光を均一化し、その均一化した光の照度に基づいて、全光束を算出する。
【0004】
このような積分球を用いた従来の全光束の測定方法では、測定対象の光源を積分球の中心に固定するためのジグによる光吸収、および、光源自身の自己吸収が誤差要因となる。そのため、このような誤差を補正する方法も提案されているが、そのような補正だけでは、高出力のLED等のように点灯回路および放熱・冷却デバイスが一体化された光源や、ELまたはバックライト等の光学系と一体となった面光源を精度よく測定することは難しかった。
【0005】
このような課題を解決する手段として、特開平06−167388号公報(特許文献1)に開示されるような半球型の積分球が提案されている。
【0006】
また、蛍光ランプやディスプレイ等に用いられる蛍光体を評価する指標として、量子効率が用いられるようになっている。なお、量子効率を測定する典型的な方法として、“大久保、重田 「NBS標準蛍光体の量子効率の測定」”(非特許文献1)および特開平10−293063号公報(特許文献2)に、蛍光体の量子効率を測定するための光学系が開示されている。このような量子効率を測定する場合においても、上述したような半球型の積分球を用いることができる。
【0007】
より具体的には、特開平06−167388号公報(特許文献1)に開示されるような半球型の積分球は、その内壁に硫酸バリウム等の拡散材料からなる拡散反射層を有する半球部と、光を正反射(鏡面反射)する平面ミラーとからなる。光源の全光束を測定する場合には、平面ミラーの面上で、かつ、半球部の曲率中心の位置に、測定対象の光源を装着する。このとき、半球部と平面ミラーにより生じる半球部の虚像とにより、仮想的な球状の積分空間が形成される。
【0008】
測定対象の光源を点灯するための回路や、測定対象の光源を固定するためのジグ等は、平面ミラーに対して半球部と反対側に位置するため、この仮想的な積分空間内から排除できる。そのため、これらの回路やジグ等による光吸収の誤差を原理的に回避できる。
また、面光源を測定対象とする場合には、発光部分のみが平面ミラーの窓から露出するように装着することで、当該測定対象の発光しない部分による光吸収の影響を回避できる。
【0009】
なお、米国特許出願公開第2005/0156103号明細書(特許文献3)には、複数の光源からの異なる波長の長さのエネルギーを組合せることのできる積分チャンバーが開示されている。この積分チャンバーは、光源からの光を混合するに過ぎず、全光束を測定する際に必要な光の均一化を行なうものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−167388号公報
【特許文献2】特開平10−293063号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0156103号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】大久保、重田,「NBS標準蛍光体の量子効率の測定」、照明学会誌、社団法人照明学会、1999年、第83巻、第2号、p.87−93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、半球型の積分球においては、測定対象の光は、半球部の内壁に形成された拡散反射層および平面ミラーを順次反射することで均一化される。そのため、半球部の内壁および平面ミラーのそれぞれの反射面には、測定対象の光に含まれる波長域の全般に亘って、相対的に高い反射率を有する材質を使用する必要がある。
【0013】
しかしながら、平面ミラーに用いられる材質のうち、特に波長の短い紫外波長域等において相対的に高い反射率を有するものは比較的高価である。そのため、より高い積分効率を実現しようとすると、平面ミラーのコストが高くなり、一方、コストを低減しようとすると、積分効率が低下するという課題があった。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より高い積分効率を実現するとともに、コストを低減した光学測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある局面に従う光学測定装置は、内壁に拡散反射層を有する半球部と、半球部の実質的な曲率中心を通り、かつ、半球部の開口部を塞ぐように配置された、半球部の内面側に反射層を有する平面部とを含む。平面部は、半球部と平面部との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓、および、積分空間内で均一化された光を抽出するための窓の少なくとも一方を含む。平面部は、平面部が半球部の内壁と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占める、主として正反射を生じる第1の材質からなる外周部と、第1の材質に比較して、少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有し、かつ、主として拡散反射を生じる第2の材質からなる、外周部の内側の領域を占める内周部とを含む。
【0016】
好ましくは、内周部の範囲は、内周部と半球部の内壁との間での光吸収による影響を実質的に無視できるように定められる。
【0017】
好ましくは、内周部の範囲は、積分空間における光の吸収率が所定値以下となるように定められる。
【0018】
さらに好ましくは、所定値は、10%である。
好ましくは、内周部は、半球部の実質的な曲率中心から最外周までの距離を基準としたときに、50%〜70%の長さの半径を有する円の内部に配置される。
【0019】
さらに好ましくは、内周部は、円を外接円とする多角形である。
好ましくは、内周部は、最外周内の面積を基準としたときに、25%〜50%の面積を有するように定められる。
【0020】
好ましくは、外周部は、金属蒸着ミラーからなり、内周部は、ポリテトラフルオロエチレン焼結体、または、硫酸バリウムの一方からなる。
【0021】
好ましくは、平面部は、測定対象である光源をその発生する光束が半球部の内壁に向けて照射されるように装着可能な第1の窓を含み、光学測定装置は、半球部または平面部の第2の窓を通じて、半球部の内壁における照度を測定するための検出器と、第1の窓から第2の窓までの経路上に配置された遮蔽部とをさらに含む。
【0022】
好ましくは、平面部は、半球部の実質的な曲率中心の近傍に設けられた第1の窓と、第1の窓から所定距離だけ離れた位置に設けられた第2の窓とを含み、光学測定装置は、第1の窓を通じて励起光を照射する光源と、第2の窓を通じて、半球部の内壁におけるスペクトルを測定するための分光器と、少なくともその一部が半球部内に露出するように配置した測定対象に対して光源からの励起光を照射した場合に分光器で測定される第1のスペクトルと、測定対象に代えて配置された既知の反射率特性または透過率特性をもつ標準体に対して光源からの励起光を照射した場合に分光器で測定される第2のスペクトルとに基づいて、測定対象の量子効率を算出する演算処理部とをさらに含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光学測定装置によれば、より高い積分効率を実現するとともに、コストを低減することである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球の断面図の一例である。
【図2】平面部として用いられる材質の反射率の波長特性を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球を構成する平面部を示す模式図である。
【図4】半球部と平面部との接続部付近における光の挙動の一例を示す模式図である。
【図5】本実施の形態に従う半球型の積分球における平面部の非鏡面反射領域による積分機能への影響を評価するためのモデルを示す図である。
【図6】図5に示すモデルにおいて算出される平面部の半径を基準とした非鏡面反射領域の半径の比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。
【図7】図5に示すモデルにおいて算出される平面部の面積を基準とした非鏡面反射領域の面積の比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球を構成する平面部のバリエーションを示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態に従う半球型の積分球を構成する平面部のバリエーションを示す模式図である。
【図10】本実施の形態の適用例1に係る光学測定装置の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の適用例1に係る光学測定装置を用いて光源の全光束を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置の構成を示す図である。
【図13】図12に示す光学測定装置において提供される仮想的な積分空間を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態の適用例2に係る量子効率の測定原理を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態の適用例2に係る光学測定装置を用いて試料の量子効率を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【図16】本実施の形態の適用例3に係る光学測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
<A.概要>
本実施の形態に従う光学測定装置は、半球型の積分球を含む。この半球型の積分球は、内壁に拡散反射層を有する半球部と、半球部の開口部を塞ぐように配置された平面部とで構成される。この平面部は、半球部の実質的な曲率中心を通り、かつ、少なくとも半球部の内面側に反射層を有する。
【0027】
この半球部と平面部との間には積分空間が形成される。すなわち、半球部と平面部との間に現れる像(実像)が平面部により反射されることで、虚像となって現れる。この実像と虚像とが合成されることで、従来の全球型の積分球と実質的に同じ積分空間を提供することができる。
【0028】
なお、平面部には、後述するように、その用途に応じて、半球部と平面部との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓、および、積分空間内で均一化された光を抽出するための窓の少なくとも一方を含む。さらに、用途によっては、半球部の一部に窓が設けられる場合もある。
【0029】
特に、本実施の形態に従う半球型の積分球では、平面部全体を鏡面反射(正反射)を生じるミラーを用いるのではなく、平面部の外周側(以下「外周部」とも称す。)に正反射を生じる材質を採用するとともに、その内周側(以下「内周部」とも称す。)には当該外周部の材質に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質を採用する。
【0030】
後述するように、内周部に採用される材質は、外周部に採用される材質に比較して、安価であり、かつ、紫外波長域における反射率も高い。しかしながら、このような材質の表面では拡散反射が生じるので、積分球としてより適切な機能を実現するためには、外周部および内周部の範囲(位置、領域、大きさ等)を適切に選択する必要がある。
【0031】
このように、それぞれ適切な材質を用いて、外周部および内周部を適切な範囲に配置することで、コストを低減しつつ、積分効率が高い(光吸収が少ない)半球型の積分球を提供することができる。
【0032】
<B.積分球の概要>
まず、本実施の形態に従う半球型の積分球について説明する。図1は、本発明の実施の形態に従う半球型の積分球の断面図の一例である。
【0033】
図1を参照して、本実施の形態に従う半球型の積分球40は、半球部1と、この半球部1の開口部を塞ぐように配置された円板状の平面部10とを含む。半球部1は、その内面(内壁)に拡散反射層1aを有する。この拡散反射層1aは、代表的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)焼結体や硫酸バリウム等の拡散材料を塗布または吹付けることによって形成される。
【0034】
平面部10は、半球部1の実質的な曲率中心を通るように配置される。なお、半球部1の曲率中心とは、代表的に半球部1の内面側についての曲率の中心Oを意味する。また、少なくとも平面部10における半球部1の内面側には反射面が形成される。
【0035】
図1には、半球型の積分球40を用いて、測定対象である光源SMP1からの全光束を測定する場合の構成例を示す。この構成例においては、平面部10には、半球部1の内面側と外部との間を連通可能な光源窓2が形成される。光源窓2は、半球部1と平面部10との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓である。すなわち、光源窓2には、測定対象である光源SMP1をその発生する光束が半球部1の内壁に向けて照射されるように装着可能となっている。
【0036】
また、半球部1は、半球部1の内壁における照度を測定するための観測窓6を有する。この観測窓6には、受光部7が接続されており、図示しない検出器を用いて、半球部1の内壁における照度が検出される。さらに、半球型の積分球40の内部には、光源SMP1の発光面と観測窓6との間に設けられた遮蔽部(バッフル:baffle)8が設けられている。このバッフル8は、光源SMP1からの光束が直接的に観測窓6を通じて検出器へ入射することによる誤差を低減する。
【0037】
図1に示す構成において、光源SMP1から照射される全光束をΦとした場合に、半球部1と平面部10との間に形成される積分空間内で均一化されて得られる照度は以下のように表わすことができる。すなわち、受光部7で測定される受光面照度Eaは、(1)式のようになる。
【0038】
【数1】
【0039】
上述の(1)式から明らかなように、半球部1の拡散反射層1aの平均反射率ρおよび平面部10の平均反射率ρMの値が大きいほど、受光面照度Eaの絶対値を大きくすることができる。そのため、半球部1の拡散反射層1aおよび平面部10の反射層は、その反射率が概ね0.95以上であることが好ましい。
【0040】
図2は、平面部として用いられる材質の反射率の波長特性を示す図である。図2には、平面部10の反射層として用いられる、アルミニウム蒸着ミラー(AL蒸着ミラー)と、アルミニウム蒸着ミラーに対してコーティング処理を施した高反射処理ミラーとを比較して示す。
【0041】
アルミニウム蒸着ミラーは、紫外波長域および可視波長域を含む、350nm〜650nmの波長域に亘って、0.9以上の反射率を維持する。これに対して、高反射処理ミラーでは、可視波長域において0.95以上の反射率を維持するものの、紫外波長域では、その反射率が極端に低下する。すなわち、高反射処理ミラーの使用可能範囲としては、概ね450nm〜750nmとなる。
【0042】
なお、半球部1の拡散反射層1aとして用いられる、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体や硫酸バリウム等では、紫外波長域から可視波長域のほぼ全域に亘って、0.95程度の反射率を実現することができる。
【0043】
図2に示すような反射率の波長特性から、測定対象である光源SMP1から可視波長域の光束が主として照射される場合には、平面部10として高反射処理ミラーを採用することで、積分効率を高めることができる。
【0044】
しかしながら、測定対象である光源SMP1から照射される光束に紫外波長域の成分が含まれている場合には、高反射処理ミラーを採用することができず、アルミニウム蒸着ミラーを採用せざるを得なかった。この結果、平面部10の反射率が高反射処理ミラーを採用した場合に比較して低くなるので、積分効率、すなわち、受光部7で測定される受光面照度Eaの絶対値が低下するという課題があった。
【0045】
そこで、本実施の形態に従う半球型の積分球40では、平面部10を、正反射を生じる材質からなる部分(外周部)と、外周部に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質からなる部分(内周部)とで構成する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態に従う半球型の積分球40を構成する平面部10を示す模式図である。図3を参照して、平面部10は、平面部10が半球部1の内壁(拡散反射層1a)と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占める外周部12と、外周部12の内側の領域を占める内周部14とを含む。外周部12は、金属蒸着ミラー(典型的には、アルミニウム蒸着ミラー)からなり、入射した光を主として正反射する。内周部14は、外周部12に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有し、かつ、入射した光を主として拡散反射する。典型的には、内周部14は、半球部1の拡散反射層1aと同様に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体や硫酸バリウム等からなる。なお、このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体としては、ラブスフェア(Labsphere)社のスペクトラロン(登録商標)が好適である。
【0047】
<C.平面部>
図3に示すような平面部10を構成する外周部12よび内周部14については、その範囲(位置、領域、大きさ等)を適切に設計する必要がある。以下、外周部12および内周部14をどのように設計するかについて説明する。
【0048】
外周部12および内周部14の設計については、以下の2つのファクタを考慮する必要がある。
【0049】
(1)積分球全体としての積分効率が予め定められた設計値以上となること
(2)内周部14で生じる拡散反射によって積分球としての性能に影響を受けないこと
すなわち、(1)のファクタに基づけば、内周部14の占める範囲は大きいほど好ましい。一方(2)のファクタに基づけば、内周部14に占める範囲は小さいほど好ましい。そのため、(1)および(2)のファクタを満たすように、平面部10を設計することになる。
【0050】
(c1.最外周部における光吸収)
上述の(1)のファクタとして考慮すべき点として、半球部1と平面部10との接続部付近(最外周部)における光吸収について考察する。
【0051】
図4は、半球部1と平面部10との接続部付近における光の挙動の一例を示す模式図である。図4(a)には、平面部10を正反射部材で構成した場合を示し、図4(b)には、平面部10を拡散反射部材で構成した場合を示す。
【0052】
図4(a)に示すように、平面部10を正反射部材で構成した場合には、何らかの光が平面部10に入射すると、その入射角と同じ出射角で反射する。そのため、半球部1の拡散反射層1aで光が拡散反射されたとしても、入射方向とは反対の方向に反射されるため、光が半球部1と平面部10との接続部付近に閉じ込められることはない。
【0053】
これに対して、図4(b)に示すように、平面部10を拡散反射部材で構成した場合には、何らかの光が平面部10に入射すると、その入射角に応じた方向を中心として複数の方向に反射光が生じる。また、半球部1の拡散反射層1aにおいても光が拡散反射される。そのため、一部の光は、半球部1と平面部10との間で多重反射を生じ得る。このように、平面部10を拡散反射部材で構成した場合には、光が半球部1と平面部10との接続部付近に閉じ込められて、その結果、この付近で光吸収が生じる。
【0054】
したがって、外周部12は、少なくとも、平面部10が半球部1の内壁と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占めるように設計される。言い換えれば、内周部14の範囲は、内周部14と半球部1の内壁との間での光吸収による影響を実質的に無視できるように定められる。
【0055】
(c2.積分効率/吸収率)
上述の(1)のファクタとして考慮すべき点として、半球部1と平面部10との間に形成される積分空間における光の吸収率が所定値以下となるように、外周部12および内周部14の比率は定められる。図2に示すようなアルミニウム蒸着ミラーの反射率が0.9(90%)付近であるので、少なくとも、積分空間における光の吸収率が10%以下となるように設計されることが好ましい。
【0056】
言い換えれば、測定対象の光源から射出される全光束のうち、90%以上が半球部1の内壁の照度として現れるようにすることが好ましい。
【0057】
(c3.平面部の非鏡面反射領域による積分機能への影響)
上述の(1)および(2)のファクタとして考慮すべき点として、平面部10に形成される非鏡面反射領域による積分機能への影響について考察する。
【0058】
半球型の積分球の場合、平面部10における非鏡面反射領域(内周部14あるいは光源SMP1)の占める割合が大きくなると、虚像としての光束が生じなくなり、光学的な積分球として成り立たなくなる。すなわち、非鏡面反射領域が内周部14等のように拡散反射を生じる部材である場合には、正しい虚像が現れなくなる。また、非鏡面反射領域が光源SMP1等のように光を吸収するような部材である場合には、虚像が現れなくなるだけでなく、積分効率も低下する。
【0059】
図5は、本実施の形態に従う半球型の積分球40における平面部10の非鏡面反射領域による積分機能への影響を評価するためのモデルを示す図である。図5を参照して、非鏡面反射領域により虚像として生じる影について考察する。
【0060】
図5には、半球部1の拡散反射層1aのいずれかの位置で生じた反射光が平面部10の非鏡面反射領域で遮られて生じる影SおよびS’を示す。なお、平面部10は半球部1の曲率の中心Oから半径rの円であるとし、平面部10の非鏡面反射領域は、半球部1の曲率の中心Oから半径rSの円であるとする。図5に示すように、平面部10の非鏡面反射領域により生じる影のうち最も大きいのは、平面部10の非鏡面反射領域の鉛直方向にある半球部1の壁面上の点Aで生じた反射光による影Sである。
【0061】
さらに、影Sを基準として、平面部10の非鏡面反射領域の鉛直方向に対して角度βにある半球部1の壁面上の点A’で生じた反射光による影S’は、S’=S・cosβとなる。
【0062】
非鏡面反射領域の端部における鉛直角をθとすれば、半球部1の内面側についての曲率の中心Oから球帽状の非鏡面反射領域についての影に対する立体角ωSは、(2)式のように表わすことができる。
【0063】
【数2】
【0064】
実像および虚像からなる積分空間における、半球部1の曲率の中心Oからの全立体角は4πであるから,積分空間の内面積に対する非鏡面反射領域による影S’(A’の反射光によってできる影の球帽)の割合Rは、ωS/4πとなる。したがって、平面部10の非鏡面反射領域の鉛直方向に対して角度βにある半球部1の壁面上の点A’で生じた反射光による影S’の割合R(β)は、(3)式のように表わすことができる。
【0065】
【数3】
【0066】
半球部1の拡散反射層1aが完全拡散反射であるとすると、拡散反射層1aでの反射光の配光は完全拡散となる。そのため、半球部1の壁面上の点Aと点A’とがいずれも同一の反射光を生じるとすれば、(3)式を角度βで積分したものが、積分空間の内面積を基準とした、発生する影の面積の比率となる。
【0067】
図6は、図5に示すモデルにおいて算出される平面部の半径rを基準とした非鏡面反射領域の半径rSの比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。図7は、図5に示すモデルにおいて算出される平面部の面積を基準とした非鏡面反射領域の面積の比率に対する、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合を示す図である。
【0068】
たとえば、平面部10の非鏡面反射領域の半径rSが平面部10の半径rに対して60%である(平面部10の非鏡面反射領域の面積が平面部10の面積に対して36%である)場合を考える。この場合において、非鏡面反射領域の反射率が約0.95であるとすると、非鏡面反射領域の影による半球部1の壁面における照度の低下は、当該非鏡面反射領域が存在しない場合と比較して、1%以下に抑えることができる。
【0069】
このような設計値をもつように平面部10を構成することで、積分球としての性能を劣化させることなく、積分球全体としての積分効率を高めることができる。
【0070】
なお、上述の場合に、非鏡面反射領域に測定対象である光源SMP1が装着されて、当該光源SMP1の反射率がゼロ(入射した光をすべて吸収する場合)には、非鏡面反射領域の影による半球部1の壁面における照度は、当該非鏡面反射領域が存在しない場合に比較して約12%低下する。すなわち、図6および図7に示すように、非鏡面反射領域による影で遮られる光束の割合が0.12となる。
【0071】
したがって、図6に示すように、平面部10の非鏡面反射領域の半径rSが平面部10の半径rに対して60%を中心として±10%程度の範囲、すなわち、約50%〜70%の範囲となるように設計することが好ましい。言い換えれば、内周部14は、半球部1の実質的な曲率の中心Oから最外周までの距離(半径r)を基準としたときに、約50%〜70%の長さの半径(半径rS)を有する円の内部に配置されることが好ましい。
【0072】
あるいは、図7に示すように、平面部10の面積を基準とした非鏡面反射領域の面積の比率が、36%を中心として概ね±15%程度の範囲、すなわち、約25%〜50%の範囲となるように設計することが好ましい。言い換えれば、内周部14は、最外周内の面積を基準としたときに、約25%〜50%の面積を有するように定められることが好ましい。
【0073】
典型的な設計例として、半球部1の実質的な曲率の中心Oから最外周までの距離を約70mm(2.75インチ)とした場合に、内周部14の半径を約42mm(1.65インチ)とすることができる。
【0074】
<D.バリエーション>
上述した図3に示すような平面部10に加えて、C.の項において考察したような2つのファクタを満たせば、外周部12および内周部14について任意の形状を採用することができる。
【0075】
図8および図9は、本発明の実施の形態に従う半球型の積分球40を構成する平面部10のバリエーションを示す模式図である。図8には、内周部14の重心が平面部10の中心Oと一致するように構成した例を示し、図9には、内周部14の重心が平面部10の中心Oとは異なるように構成した例を示す。
【0076】
一例として、図8(b)に示す正方形の内周部14、図8(c)に示す正六角形の内周部14、図8(e)に示す正三角形の内周部14、図8(f)に示す正五角形の内周部14、図8(g)に示す正七角形の内周部14、および、図8(i)に示す正八角形の内周部14については、図8(a)に示す円状の内周部14を外接円とするようなサイズに設計されることが好ましい。すなわち、これらの多角形状の内周部14は、平面部10の半径rに対して50%〜70%の半径rSを有する円に内接するように構成することができる。
【0077】
また、図9(a)〜図9(k)に示すように、内周部14の重心が平面部10の中心Oとは異なるように構成されていてもよい。
【0078】
なお、内周部14の形状は、測定対象の大きさおよび形状に適合するように設計される場合もある。すなわち、本実施の形態に従う半球型の積分球40は、各種の光学測定方法に適用可能であり、その適用先の測定方法によっては、測定対象の光源等を半球内に露出するように配置する必要がある。その場合、外周部12と内周部14とを分離可能に構成し、内周部14の全部または一部を取除いた上で、測定対象の光源を装着するような使用形態も想定される。
【0079】
<E.適用例1>
次に、本実施の形態に従う半球型の積分球40を用いて、測定対象の光源から放射される全光束を測定する場合の構成について説明する。この全光束を測定する場合には、基本的には、図1と同様の光学測定装置を構成する。但し、以下の説明では、光源等による光吸収を補正するための機構を有する構成について例示する。
【0080】
図10は、本実施の形態の適用例1に係る光学測定装置100の構成を示す図である。図10を参照して、光学測定装置100を構成する半球型の積分球40は、基本的には、図1に示す半球型の積分球と同様であるが、平面部10に、自己吸収を測定するために使用される光束を半球部1の内面側に向けて照射するための開口である照明窓4が設けられている点が異なっている。平面部10の外側には、照明窓4と連通するように、補正光源24を格納するための光源格納部22が配置される。補正光源24は、後述するように、測定対象の光源SMP1での光吸収に起因する補正係数を算出するための自己吸収測定用の光源である。以下では、光源SMP1から発生する光束と区別するために、補正光源24から発生する光束を「補正光束」とも称す。
【0081】
光学測定装置100は、観測窓6および受光部7を通じて、半球部1の内壁における照度が検出することにより、光源SMP1での自己吸収補正係数を算出した上で、光源SMP1の全光束を測定する検出演算部50を含む。
【0082】
次に、光学測定装置100を用いて光源SMP1の全光束を測定するための処理手順について説明する。図11は、本発明の実施の形態の適用例1に係る光学測定装置100を用いて光源SMP1の全光束を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【0083】
図11を参照して、まず、ユーザは、光源窓2に校正用ミラーを装着し(ステップS100)、補正光源24を発光させる(ステップS102)。そして、ユーザは、検出演算部50に、「光源窓2に校正用ミラーが装着されており、かつ補正光源24のみが発光状態」であることを示す選択指令を入力する。すると、検出演算部50は、そのときに受光部7で検出される照度を出力値i0として一時的に格納する(ステップS104)。
【0084】
なお、平面部10を構成する内周部14の全体を校正用ミラーとしてもよい。すなわち、測定対象の光源SMP1(光源窓2)と同一の断面形状を有するように内周部14を設計し、内周部14が装着された状態を「光源窓2に校正用ミラーが装着された状態」としてもよい。
【0085】
次に、ユーザは、光源窓2に測定対象の光源SMP1を装着し(ステップS106)、補正光源24を発光させる(ステップS108)。そして、ユーザは、検出演算部50に、「光源窓2に測定対象の光源SMP1が装着されており、かつ、補正光源24のみが発光状態」を示す選択指令を入力する。すると、検出演算部50は、そのときに受光部7で検出される照度を出力値i1として一時的に格納する(ステップS110)。
【0086】
さらに、検出演算部50は、出力値i1を出力値i0で割り算することで、自己吸収補正係数αを算出する(ステップS112)。検出演算部50は、この算出した自己吸収補正係数αを格納する。
【0087】
次に、ユーザは、光源窓2に測定対象の光源SMP1が装着された状態で、補正光源24を非発光状態にするとともに、測定対象の光源SMP1を発光させる(ステップS114)。そして、ユーザは、検出演算部50に、「光源窓2に測定対象の光源SMP1が装着されており、かつ、測定対象の光源SMP1のみが発光状態」を示す選択指令を入力する。すると、検出演算部50は、そのときに受光部7で検出される照度である出力値idに対して、ステップS112において算出された自己吸収補正係数αを乗じた値を算出し、測定対象の光源SMP1の全光束を示す相対値として出力する(ステップS116)。そして、処理は終了する。
【0088】
<F.適用例2>
次に、本実施の形態に従う半球型の積分球40を用いて、測定対象の量子効率を測定する場合の構成について説明する。この量子効率は、測定対象(典型的には、蛍光体)に吸収された光量子数に対する蛍光発光の光量子数の割合を意味する。
【0089】
図12は、本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200の構成を示す図である。図12を参照して、光学測定装置200を構成する半球型の積分球40は、半球部1と、この半球部1の開口部を塞ぐように配置された円板状の平面部10とを含む。平面部10は、半球部1の内面側と外部との間を連通可能な、光源窓17および観測窓18を有する。すなわち、光源窓17は、半球部1の実質的な曲率中心を含む領域に形成される。また、観測窓18は、半球部1の内壁における照度を測定するための開口であり、光源窓17からより外周側に所定距離だけ離れた位置に設けられる。
【0090】
光学測定装置200は、試料SMP2または標準体REF2(透過率特性が既知)に励起光を照射するための光源60と、試料SMP2の量子効率を測定する分光演算部70とを含む。
【0091】
光源60で生成された励起光は、光源窓17を通じて、平面部10の法線と一致する光軸Ax3に沿って照射される。この励起光は、光源窓17に装着される試料SMP2または標準体REF2を透過する。この励起光としては、低圧水銀蛍光ランプの場合には、200〜400nmの紫外単色光が用いられ、LED(Light Emitting Diode)分野では、300〜600nmの紫外もしくは可視単色光等が用いられる。
【0092】
平面部10の外側には、観測窓18と連通するように、半球部1の内壁におけるスペクトルを検出するための受光部26が配置される。受光部26では、観測窓18を覆う筐体26a内には、分光演算部70へ光を導くための光ファイバ26dおよび光ファイバ26dに接続されたファイバ端部26bが挿入されている。また、筐体26a内には、観測窓18を通じて入射する光の伝搬方向を約90°変換した上で、ファイバ端部26bに導くための反射部26cが設けられている。
【0093】
分光演算部70は、光ファイバ26dによって導入された光のスペクトルを検出する。典型的に、分光演算部70は、回折格子および回折格子の回折方向に関連付けられたラインセンサ等を含んで構成され、入力された光の波長毎の強度を出力する。
【0094】
図12に示す半球型の積分球40内に装着される試料SMP2または標準体REF2が発する蛍光についても、上述したように、実像および虚像が現れる。すなわち、図13に示すように、仮想的な積分空間内には、2つの試料SMP2または標準体REF2が配置されることになる。
【0095】
図14は、本発明の実施の形態の適用例2に係る量子効率の測定原理を説明するための図である。図14(a)を参照して、たとえば蛍光体である試料SMP2に対して、励起光L1が照射されると、その一部(光量子)が吸収されて蛍光の発光に用いられるとともに、残りの励起光L1はその表面で反射される。ここで、励起光L1の波長範囲をλ1L〜λ1Hとし、試料SMP2から発生する蛍光成分の波長範囲をλ2L〜λ2Hとする。なお、一般的に、励起光L1は紫外線であり、蛍光は可視光線であるので、波長範囲λ1L〜λ1Hと波長範囲λ2L〜λ2Hとは重複しない。そのため、分光演算部70において、測定されるスペクトルのうち、それぞれの波長範囲に対応する成分を選択的に抽出することで、両者を分離することができる。
【0096】
ここで、励起光L1のスペクトルをE0(λ)とする。また、励起光L1を照射することで試料SMP2から発生する蛍光成分のスペクトルをP(λ)とし、試料SMP2で反射される反射光成分のスペクトルをR(λ)とする。すなわち、蛍光成分のスペクトルP(λ)は、試料SMP2を装着した場合に分光演算部70で測定されたスペクトルE(1)(λ)の蛍光に対応する波長範囲(λ2L〜λ2H)の成分に相当し、反射光成分のスペクトルをR(λ)は、分光演算部70で測定されたスペクトルE(1)(λ)の励起光L1に対応する波長範囲(λ1L〜λ1H)の成分に相当する。
【0097】
また、図14(b)に示すように、標準体REF2の反射率特性をρS(λ)とすると、スペクトルE0(λ)をもつ励起光L1を標準体REF2に照射することで測定されるスペクトルは、E(2)(λ)=ρS(λ)・E0(λ)となる。この式より、励起光L1のスペクトルE0(λ)は、(4)式のように表わすことができる。
【0098】
E0(λ)=E(2)(λ)/ρS(λ) …(4)
また、図14(a)に示すように、励起光L1のスペクトルE0(λ)から試料SMP2で反射される反射光成分のスペクトルR(λ)を除いた成分(光量子)が、試料SMP2に吸収されたものとみなすことができる。
【0099】
したがって、スペクトル(放射パワー)を光量子数に変換するために、hc/λ(但し、h:プランク定数、c:光速)でスペクトルを除算すると、試料SMP2に吸収された光量子数Abは、(5)式のように表わすことができる。なお、k=1/hcである。
【0100】
【数4】
【0101】
また、蛍光の光量子数Pphは、(6)式のように表わすことができる。
【0102】
【数5】
【0103】
したがって、試料SMP2の内部量子効率QEinは、(7)式のように表わすことができる。
【0104】
QEin=Pph/Ab …(7)
以上のように、光学測定装置200を用いて量子効率を測定する場合には、少なくともその一部が半球部1内に露出するように配置した測定対象である試料SMP2に対して光源60からの励起光を照射した場合に分光演算部70で測定される第1のスペクトル(E(1)(λ))と、試料SMP2に代えて配置された既知の反射率特性または透過率特性をもつ標準体REF2に対して光源60からの励起光を照射した場合に分光演算部70で測定される第2のスペクトル(E(2)(λ))とに基づいて、試料SMP2の量子効率が算出される。
【0105】
次に、光学測定装置200を用いて試料SMP2の量子効率を測定するための処理手順について説明する。図15は、本発明の実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200を用いて試料SMP2の量子効率を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【0106】
図15を参照して、まず、ユーザは、光源窓17に試料SMP2を装着し(ステップS200)、光源60からの励起光の照射および分光演算部70での測定を開始させる(ステップS202)。ユーザは、分光演算部70に、「光源窓17に試料SMP2が装着されている」ことを示す選択指令を入力する。分光演算部70は、そのときに測定されたスペクトルE(1)(λ)を一時的に格納する(ステップS204)。
【0107】
次に、ユーザは、光源窓17に標準体REF2を装着し(ステップS206)、光源60からの励起光の照射および分光演算部70での測定を開始させる(ステップS208)。ユーザは、分光演算部70に、「光源窓17に標準体REF2が装着されている」ことを示す選択指令を入力する。分光演算部70は、そのときに測定されたスペクトルE(2)(λ)を一時的に格納する(ステップS210)。
【0108】
スペクトルE(1)(λ)およびE(2)(λ)の取得が完了すると、分光演算部70は、これらのスペクトルに基づいて、試料SMP2の内部量子効率QEinを算出する(ステップS212)。より具体的には、分光演算部70は、スペクトルE(1)(λ)の波長範囲λ1L〜λ1Hに対応する波長成分、スペクトルE(2)(λ)の波長成分、および、標準体REF2の反射率特性をρS(λ)に基づいて、試料SMP2に吸収された光量子数Abを算出する。また、分光演算部70は、スペクトルE(1)(λ)の波長範囲λ2L〜λ2Hに対応する波長成分に基づいて、蛍光の光量子数Pphを算出する。そして、分光演算部70は、光量子数Abおよび光量子数Pphに基づいて、試料SMP2の内部量子効率QEinを算出する。
【0109】
さらに、分光演算部70は、算出した試料SMP2の内部量子効率QEinを出力する(ステップS214)。なお、内部量子効率QEinの出力の一例としては、内部量子効率QEinのモニタ上等での表示、内部量子効率QEinのプリント出力、内部量子効率QEinの記憶媒体への格納等が挙げられる。そして、処理は終了する。
【0110】
なお、図15に示すフローチャートでは、測定手順の一例として、先に試料SMP2についてのスペクトルE(1)(λ)を取得し、続いて、標準体REF2についてのスペクトルE(2)(λ)を取得する処理例を説明したが、スペクトルE(1)(λ)およびスペクトルE(2)(λ)が取得できる限り、この順序に限定されることはない。たとえば、先に標準体REF2についてのスペクトルE(2)(λ)を取得した後、試料SMP2についてのスペクトルE(1)(λ)を取得してもよい。この場合には、標準体REF2について取得したスペクトルE(2)(λ)を用いて、複数の試料SMP2のそれぞれについてのスペクトルE(1)(λ)を順次取得することで、複数の試料SMP2についての内部量子効率QEinを効率的に算出できる。すなわち、光源窓17に標準体REF2を装着してスペクトルE(2)(λ)を取得した後、光源窓17に複数の試料SMP2を順次装着すればよい。
【0111】
<G.適用例3>
上述した本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200においては、試料SMP2および標準体REF2に励起光を透過させて量子効率を測定する構成について例示した。一方、試料SMP2および標準体REF2に励起光を照射して、その反射光を測定して量子効率を測定してもよい。
【0112】
図16は、本実施の形態の適用例3に係る光学測定装置300の構成を示す図である。図16を参照して、本実施の形態の適用例3に係る光学測定装置300は、本実施の形態の適用例2に係る光学測定装置200(図12)に比較して、光源窓17が半球部1の内面側についての曲率の中心Oからずれた位置に形成されている点、および、半球部1の頂点付近に試料SMP3および標準体REF3を装着するための試料窓19が設けられている点が異なっている。その他の点については、光学測定装置200と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0113】
光源60で生成された励起光は、光源窓17を通じて、平面部10の法線N1に対して角度θをもつ光軸Ax4に沿って、試料窓19に装着される試料SMP3または標準体REF3に向けて照射される。
【0114】
試料窓19は、半球部1の内面側についての曲率の中心Oを通る平面部10の法線N1との交点の位置に設けられる。すなわち、試料窓19は、半球部1および平面部10とによって囲まれる半球の頂点位置に設けられる。そして、試料窓19に試料SMP3または標準体REF3が装着される。この装着された試料SMP3に励起光が照射されることで、蛍光が発生する。
【0115】
光学測定装置300を用いて試料SMP3の量子効率を測定するための処理手順については、図15に示すフローチャートと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0116】
<H.測定例>
本願発明者らは、図16に示す光学測定装置300を用いて、アルミニウム蒸着ミラーに対してコーティング処理を施した高反射処理ミラーで作成した平面部と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体で作成した平面部との間の測定効率の差を評価した。
【0117】
より具体的には、図16に示す光学測定装置300の試料窓19に、硫酸バリウムの標準体または青色蛍光体サンプル(BAMサンプル)を装着し、励起光を標準体またはBAMサンプルへ照射した場合のゲートタイムを測定した。このゲートタイムは、分光演算部70において所定の光量が得られるまでに要した露光時間を意味する。
【0118】
また、BAMサンプルへ直接的に励起光を照射する場合の他、半球部1のBAMサンプルが存在しない内面へ励起光を照射して、間接的に励起させる場合についても測定した。
【0119】
この測定結果は、以下の通りである。
【0120】
【表1】
【0121】
上述の表において、「鏡面反射体」が高反射処理ミラーで作成した平面部の場合を示し、「拡散反射体」がポリテトラフルオロエチレン焼結体で作成した平面部の場合を示す。また、「励起」が硫酸バリウムを表面に塗布した標準体に励起光を直接照射した場合を示し、「サンプル」がBAMサンプルに励起光を直接照射した場合を示し、「再励起」がBAMサンプルに励起光を間接照射した場合を示す。また、励起光としては、260nm〜400nmまでの波長を20nmずつ異ならせた8種類の単色光を用いた。
【0122】
上表における数値の単位は「msec」である。なお、波長260nmでBAMサンプルを励起した場合には、生じる光が微弱であるため、十分に光を取得することができず、分光演算部70における露光時間の最大値である20000msecを表示している。
【0123】
さらに、上表においては、それぞれの測定結果について、異なる2つの材質間の差(比率)を算出している(比率の項目)。この算出結果によれば、平面部をポリテトラフルオロエチレン焼結体で作成することで、よりゲートタイムを短縮できることがわかる。すなわち、ポリテトラフルオロエチレン焼結体からなる平面部を採用することで、積分球における光吸収を低減して、より高い積分効率を得られることを意味する。
【0124】
<I.まとめ>
本実施の形態に従う半球型の積分球は、積分空間を形成するための平面部として、鏡面反射(正反射)を生じる材質からなる外周部と、当該外周部の材質に比較して少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有する材質からなる内周部とを組合せた構造を採用する。
【0125】
このような平面部を採用することで、反射率が相対的に高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)焼結体などからなる反射部材を用いることができ、これにより、半球型の積分球における積分効率を高めることができる。同時に、PTFEなどの反射部材は、高反射処理ミラーなどに比較して安価であるため、光学測定装置全体のコストを抑えることができる。
【0126】
このように、相対的に積分効率の高い積分球を実現することができるので、光源の全光束測定などにおいては、検出される壁面の照度をより高めることができる。その結果、積分球内における光吸収や検出器のノイズなどに起因する誤差を低減することができる。また、発光強度の弱い蛍光試料などについても、より高精度にその量子効率を測定することができる。
【0127】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
1 半球部、1a 拡散反射層、2 光源窓、4 照明窓、6,18 観測窓、7,26 受光部、8 遮蔽部(バッフル)、10 平面部、12 外周部、14 内周部、17 光源窓、19 試料窓、22 光源格納部、24 補正光源、26a 筐体、26b ファイバ端部、26c 反射部、26d 光ファイバ、40 積分球、50 検出演算部、60 光源、70 分光演算部、100,200,300 光学測定装置、REF2,REF3 標準体、SMP1 光源、SMP2,SMP3 試料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁に拡散反射層を有する半球部と、
前記半球部の実質的な曲率中心を通り、かつ、前記半球部の開口部を塞ぐように配置された、前記半球部の内面側に反射層を有する平面部とを備え、前記平面部は、前記半球部と前記平面部との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓、および、前記積分空間内で均一化された光を抽出するための窓の少なくとも一方を含み、
前記平面部は、
前記平面部が前記半球部の内壁と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占める、主として正反射を生じる第1の材質からなる外周部と、
前記第1の材質に比較して、少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有し、かつ、主として拡散反射を生じる第2の材質からなる、前記外周部の内側の領域を占める内周部とを含む、光学測定装置。
【請求項2】
前記内周部の範囲は、前記内周部と前記半球部の内壁との間での光吸収による影響を実質的に無視できるように定められる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記内周部の範囲は、前記積分空間における光の吸収率が所定値以下となるように定められる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記所定値は、10%である、請求項3に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記内周部は、前記半球部の実質的な曲率中心から前記最外周までの距離を基準としたときに、50%〜70%の長さの半径を有する円の内部に配置される、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記内周部は、前記円を外接円とする多角形である、請求項5に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記内周部は、前記最外周内の面積を基準としたときに、25%〜50%の面積を有するように定められる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項8】
前記外周部は、金属蒸着ミラーからなり、
前記内周部は、ポリテトラフルオロエチレン焼結体、または、硫酸バリウムの一方からなる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項9】
前記平面部は、測定対象である光源をその発生する光束が前記半球部の内壁に向けて照射されるように装着可能な第1の窓を含み、
前記光学測定装置は、
前記半球部または前記平面部の第2の窓を通じて、前記半球部の内壁における照度を測定するための検出器と、
前記第1の窓から前記第2の窓までの経路上に配置された遮蔽部とをさらに備える、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項10】
前記平面部は、前記半球部の実質的な曲率中心の近傍に設けられた第1の窓と、前記第1の窓から所定距離だけ離れた位置に設けられた第2の窓とを含み、
前記光学測定装置は、
前記第1の窓を通じて励起光を照射する光源と、
前記第2の窓を通じて、前記半球部の内壁におけるスペクトルを測定するための分光器と、
少なくともその一部が前記半球部内に露出するように配置した測定対象に対して前記光源からの前記励起光を照射した場合に前記分光器で測定される第1のスペクトルと、前記測定対象に代えて配置された既知の反射率特性または透過率特性をもつ標準体に対して前記光源からの前記励起光を照射した場合に前記分光器で測定される第2のスペクトルとに基づいて、前記測定対象の量子効率を算出する演算処理部とをさらに備える、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項1】
内壁に拡散反射層を有する半球部と、
前記半球部の実質的な曲率中心を通り、かつ、前記半球部の開口部を塞ぐように配置された、前記半球部の内面側に反射層を有する平面部とを備え、前記平面部は、前記半球部と前記平面部との間に形成される積分空間内で均一化されるべき光を導入するための窓、および、前記積分空間内で均一化された光を抽出するための窓の少なくとも一方を含み、
前記平面部は、
前記平面部が前記半球部の内壁と接する最外周から所定幅の領域を少なくとも占める、主として正反射を生じる第1の材質からなる外周部と、
前記第1の材質に比較して、少なくとも紫外波長域においてより高い反射率を有し、かつ、主として拡散反射を生じる第2の材質からなる、前記外周部の内側の領域を占める内周部とを含む、光学測定装置。
【請求項2】
前記内周部の範囲は、前記内周部と前記半球部の内壁との間での光吸収による影響を実質的に無視できるように定められる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記内周部の範囲は、前記積分空間における光の吸収率が所定値以下となるように定められる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記所定値は、10%である、請求項3に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記内周部は、前記半球部の実質的な曲率中心から前記最外周までの距離を基準としたときに、50%〜70%の長さの半径を有する円の内部に配置される、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記内周部は、前記円を外接円とする多角形である、請求項5に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記内周部は、前記最外周内の面積を基準としたときに、25%〜50%の面積を有するように定められる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項8】
前記外周部は、金属蒸着ミラーからなり、
前記内周部は、ポリテトラフルオロエチレン焼結体、または、硫酸バリウムの一方からなる、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項9】
前記平面部は、測定対象である光源をその発生する光束が前記半球部の内壁に向けて照射されるように装着可能な第1の窓を含み、
前記光学測定装置は、
前記半球部または前記平面部の第2の窓を通じて、前記半球部の内壁における照度を測定するための検出器と、
前記第1の窓から前記第2の窓までの経路上に配置された遮蔽部とをさらに備える、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項10】
前記平面部は、前記半球部の実質的な曲率中心の近傍に設けられた第1の窓と、前記第1の窓から所定距離だけ離れた位置に設けられた第2の窓とを含み、
前記光学測定装置は、
前記第1の窓を通じて励起光を照射する光源と、
前記第2の窓を通じて、前記半球部の内壁におけるスペクトルを測定するための分光器と、
少なくともその一部が前記半球部内に露出するように配置した測定対象に対して前記光源からの前記励起光を照射した場合に前記分光器で測定される第1のスペクトルと、前記測定対象に代えて配置された既知の反射率特性または透過率特性をもつ標準体に対して前記光源からの前記励起光を照射した場合に前記分光器で測定される第2のスペクトルとに基づいて、前記測定対象の量子効率を算出する演算処理部とをさらに備える、請求項1に記載の光学測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−174785(P2011−174785A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38377(P2010−38377)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
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