説明

光学用ポリエステルフィルム

【課題】 拡散シート、プリズムシート、複合シート用の基材等として使用した際に、高度な輝度を実現し、画像に歪みやムラのない、高品質な画像を与えることができる、光学的性能の良好なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステル樹脂層の両面に、ジカルボン酸成分の70〜90モル%がテレフタル酸、10〜30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、グリコール成分の20〜60モル%が1,4−ブタンジオール、40〜80モル%がエチレングリコールである共重合ポリエステルを1〜20重量%含有するポリエステル組成物からなる樹脂層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが2.5%以下、全光線透過率が89.0%以上であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは、光学特性に優れ、高度な輝度を実現できることから光学製品の品質向上に寄与することができる光学用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有しており、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネートフィルム、ガラスディスプレイ等のガラス表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
ポリエステルフィルムは、近年、特に各種光学用フィルムに多く使用され、LCDの部材のプリズムシート、光拡散シート、複合シート、反射板、タッチパネル等のベースフィルムや反射防止用ベースフィルムやディスプレイの防爆用ベースフィルム、PDPフィルター用フィルム等の各種用途に用いられている。これらの光学製品において、明るく鮮明な画像を得るために、光学用フィルムとして用いられるベースフィルムは、その使用形態から透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要となる。
【0004】
これらの光学用フィルムとしては、厚みが50〜350μm程度の比較的厚いポリエステルフィルムが使用されているが、厚みが厚くなるに従い、フィルムを均一に加熱もしくは冷却することが難しくなるため、製膜工程中、特に溶融させたポリエステル樹脂を冷却固化し、アモルファスシートを作る工程においては、ポリエステルシートに結晶化物が発生して光学欠陥の原因となるため解決が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−261856号公報
【特許文献2】特開2003−49011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、光学製品の部材、特にLCD用のバックライトの拡散シート、プリズムシート、複合シート用の基材として使用した際に、高度な輝度を実現し、結晶化物による光学欠陥のない高品質な画像を与えることができる、光学的性能に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステル樹脂層の両面に、ジカルボン酸成分の70〜90モル%がテレフタル酸、10〜30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、グリコール成分の20〜60モル%が1,4−ブタンジオール、40〜80モル%がエチレングリコールである共重合ポリエステルを1〜20重量%含有するポリエステル組成物からなる樹脂層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが2.5%以下、全光線透過率が89.0%以上であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも3層からなる積層フィルムであって、全ての層が押出し機の口金から共溶融押出しされる、いわゆる共押出し法によって押出されたものを、延伸および熱処理されたものとして得られる。以下、共押出し3層フィルムについて説明するが、本発明の要旨を越えない限り、本発明は3層フィルムに限定されず、4層またはそれ以上の多層であってもよい。
【0010】
本発明において、中心となる層を構成するポリエステル樹脂(以下、A層と略記することがある)、その両面に積層される層(以下、B層と略記することがある)を構成する共重合ポリエステル(以下、Cと略記することがある)以外のポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールの定法による重縮合反応で得られる。また、同様にして得られ、かつ融点の異なる2種以上のポリエステル樹脂を混合して組成物とすることもできる。使用されるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールなどが挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0011】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用してよいが、好ましくはアンチモン化合物の量を零またはアンチモンとして100ppm以下にすることによりフィルムのくすみを低減したものが好ましい。
【0012】
なおポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。
【0013】
本発明において、共重合ポリエステル(C)とは、酸成分の70〜90モル%がテレフタル酸、10〜30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸、グリコール成分の20〜60モル%が1,4−ブタンジオール、40〜80モル%がエチレングリコールである共重合ポリエステルを指す。
【0014】
本発明でいうB層を得る方法としては、共重合ポリエステル(C)と他のポリエステルとをブレンドして、溶融混練りする方法が好ましく用いられる。本発明における共重合ポリエステル(C)の含有量は1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%である。1重量%未満では、ポリエステルシートに結晶化物による光学欠陥が発生し、高品質な画像を得ることができなくなる。一方、20重量%を越えると、耐熱性が損なわれ、フィルム製造時において破断が多発するようになり、延伸性が著しく悪化し生産性の低下をもたらすようになるため好ましくない。
【0015】
本発明のB層を構成する共重合ポリエステル(C)は、酸成分の70〜90モル%がテレフタル酸成分、10〜30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、好ましくは75〜90モル%がテレフタル酸、10〜25モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分から構成されるものである。かかる範囲外では、フィルムの寸法安定性が悪化して、ディスプレイ製品の部材として使用した場合に画像に歪みやムラが発生し、鮮明で高精細な画像を得ることができなくなるため好ましくない。
【0016】
また、B層を構成する共重合ポリエステル(C)のグリコール成分の20〜60モル%が1,4−ブタンジオール成分、40〜80モル%がエチレングリコール成分、好ましくは20〜50モル%が1,4−ブタンジオール成分、好ましくは50〜80モル%がエチレングリコール成分から構成されるものである。かかる範囲外では、アモルファスシートを作る工程において、ポリエステルシートに、部分的に結晶化が起こることが原因と思われる島状の不均一部分が発生するようになるため好ましくない。
【0017】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0018】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性に劣るようになってしまう。
【0020】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0021】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0022】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常50〜350μm、好ましくは75〜250μmの範囲である。
【0024】
本発明のフィルムは、全光線透過率が89.0%以上、好ましくは89.5%以上、さらに好ましくは90.0%以上である。本発明のフィルムは、その優れた光透過性を有するために光学用途に広く用いられるが、全光線透過率が89.0%未満の場合には、光学用としては不適当となる。
【0025】
本発明のフィルムのフィルムヘーズは2.5%以下であり、好ましくは0.5〜2.0%、さらに好ましくは0.5〜1.8%である。本発明のフィルムは、その優れた透明性を有するために光学用途に広く用いられるが、フィルムヘーズが2.5%を超える場合には、光学用としては不適当となる。
【0026】
本発明の光学用特にディスプレイ用のポリエステルフィルムは、透過法1枚で測定したときの色調y値が、好ましくは0.3180以下、さらに好ましくは0.3178以下の範囲である。色調y値が0.3180を超える場合には、フィルムの黄色味が強くディスプレイ用として使用した場合画像の色調が劣るようになったり、輝度が低くなったりする等の点で不適切となることが多い。かかる色調のフィルムとするためには、原料のポリエステルを製造する際の触媒、助剤を選択し、なるべく触媒の量を少なくすることや、重合および製膜時にポリエステルが必要以上に高温度になったり、溶融時間が長くなったりしないようにすること、さらに再生された原料の配合量を少なくすることなどの方法を採用することができる。
【0027】
また、本発明のフィルムは、180℃で10分間熱処理後のフィルム表面へのオリゴマー(環状三量体)析出量の表裏面の総和が、15mg/m2以下であることが好ましく、さらに好ましくは10.0mg/m以下、特に好ましくは8.0mg/m以下である。フィルム表面へのオリゴマー析出量が15mg/mを超える場合には、表面でオリゴマーが結晶化してフィルムの透明性を低下させたり、フィルム上に設ける機能層に溶け込んで特性に影響を及ぼしたりする等の問題を引き起こしやすい。熱処理によるフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記の範囲とする方法は特には限定されないが、使用するポリエステル樹脂に固層重合法によりあらかじめオリゴマーを減少させた原料を用いる方法、触媒失活法、オリゴマー析出防止層をコートする方法等が好適に用いられる。
【0028】
本発明のフィルムは、共押出し法によって押出されたものを、延伸および熱処理されたものとして得られるが、その際、最外層(B層)の厚みは、片側のみの厚みで通常3μm以上かつ総厚みの1/4以下であることが好ましい。かかる厚みが3μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有されているオリゴマー(環状三量体)がフィルム表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルム表面の異物量の増加が見られる可能性があり、一方総厚みの1/4の厚さより厚いと最外層に配合する粒子量が増えて透明性を損なう恐れがある。
【0029】
また前記紫外線吸収剤、染料等の添加剤を添加する場合には積層フィルムの中間層(A層)に配合することが好ましい。
【0030】
本発明のフィルムは、直径20μm以上の結晶化物の数が通常50個/m以下、好ましくは30個/m以下である。上記の条件を逸脱する場合には、LCDやPDPの部材として使用した場合に画像に結晶化物による欠陥が発生して透明性を損ない、品質を著しく低下させる原因となることがある。
【0031】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0032】
まず、公知の手法により乾燥した、または未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0033】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜5倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜5倍延伸を行い、150〜240℃で10〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0034】
本発明において、前記のとおりポリエステルの溶融押出し機を複数台の押出し機、複数層のマルチマニホールドダイまたはフィードブロックを用い、それぞれのポリエステルを積層して口金から複数層の溶融シートを押出し、冷却ロールで冷却固化して実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。層の構成としては、D原料とE原料とを用いたD/E/D構成、さらにF原料を用いてD/E/F構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばD原料として特定の粒子を用いてD層の表面形状を設計し、E原料としては粒子を含有しない原料を用い、D/E/D構成のフィルムとすることができる。この場合、E層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。また当該フィルムの再生原料をE層に配合しても表層であるD層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。
【0035】
特に本発明のフィルムは、光学用途に用いるため、ハードコート層、反射防止層、防眩層等を設けたり、蒸着層等が設けられたりするため、それらの層を形成する際の塗布性や接着性を向上すること、あるいは表面を清浄な状態に保つため帯電を防止することを目的として、下引き層としての塗布層を設けることができる。かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法が、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては接着性の観点から、通常ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびポリウレタンの中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
【0036】
なお必要に応じてフィルムの製造後にオフラインコートでコートしてもよい。また片面、両面を問わない。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶剤系いずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
【0037】
また本発明のフィルムは、光学用に用いるので、接着性の改良以外にも外光の映り込みや静電気によるゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成させることも好ましい。
【0038】
本発明で塗布剤として用いる、上記のポリエステル、アクリル系ポリマー、ポリウレタンの中で特に好ましいポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、ポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているポリマーである。
【0039】
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。 メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0040】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。一方有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
【0041】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
【0042】
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0043】
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0044】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
【0045】
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0046】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
【0047】
このような塗布フィルムを光学用途に適用する場合には、塗布層表面の塗布ヌケが、この塗布層のさらに上に反射防止層等を設ける時等に問題となっている。塗布ヌケが生じる理由は明確ではないが、フィルム中にある異物がフィルム表面に粗大突起を作りそれが核となって塗布剤がはじき、それが延伸されて塗布ヌケが発生したり、フィルムの表面に付着したオリゴマーやゴミが核となりそこを核として塗布剤がはじきヌケとなったりする場合等が考えられる。したがって、かかる核となり得るゴミや異物をできる限り除去した条件で製膜することが必要である。かかる異物にはフィルム上に付着または析出したオリゴマーも含まれるため、フィルムが含有するオリゴマー量を低減することも塗布のヌケを減少させる効果を有する。
【0048】
かくして得られる本発明のフィルムは、塗布層を有する場合その塗布ヌケの個数(N)がフィルム10m当たり通常50個以下であり、さらに好ましくは30個以下、特に好ましくは10個以下である。いずれにせよ今後ますます厳しくなる光学用フィルムにおいては、塗布ヌケは可能な限り零にすることが必要である。
【0049】
本発明のフィルムは、光学用として使用されたときに特にその優れた効果を発揮するが、その具体的な部材としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に用いるバックライトとして使用される拡散シート、プリズムシート、拡散とプリズムの機能を持ち合わせた複合シート、レンズシート、輝度向上フィルムなど、高度な透明性を必要とする基材として有効に使用される。
【発明の効果】
【0050】
本発明のフィルムは、透明性、低ヘーズ、光学的な均一性等の光学特性に優れ、かつ光学製品としたときの光学欠陥である結晶化物の画像欠点の発生を防止するなどの品質向上に寄与することができるものであり、LCD、PDP等に用いる各種光学用部材として用いた場合に光学的性質が良好なポリエステルフィルムを提供することができ、工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0052】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0053】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0054】
(3)全光線透過率、ヘーズ
全光線透過率はJIS−K−7361、ヘーズはJIS−K−7136に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH2000」により、全光線透過率、ヘーズを測定した。
【0055】
(4)色調y値
JIS−Z−5722に準じたミノルタ製分光測色計「CM−3700d」により、色調y値を測定した。
【0056】
(5)フィルム表面の結晶化物数
暗室にて幅1000mm、長さ20m(面積20m)のフィルム表面にハロゲンランプにて光を当て、目視にてフィルム表面を観察し、直径20μm以上の結晶化物の数を数え、フィルム1m当たりの結晶化物の数を算出した。
【0057】
(6)光学部材適性(輝度について)
光学用部材の代表として、プリズムシートとして使用した場合の特性を評価した。すなわちフィルムの片面に、アクリル系バインダーを塗布してプリズム層を形成した。得られたプリズムシートをバックライトユニットに組み込んで、得られる面状発光の品質を以下の観点で評価した。
輝度レベル(輝度計を用いて評価し、比較例1のフィルムを使用した場合と比較した)
A:輝度が向上し、改良が見られた
B:輝度の低下は確認できなかった
C:輝度が低下した
【0058】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(1)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.68に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(1)の極限粘度は0.68であった。
【0059】
<ポリエステル(2)の製造方法>
ポリエステル(1)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.2μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(1)を得た。得られたポリエステル(2)は、極限粘度0.66であった。
【0060】
<ポリエステル(3)の製造方法>
ポリエステル(1)の製造方法において、出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とジエチレングリコール2重量部とし、重合触媒として酸化ゲルマニウムを使用したこと以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(3)を得た。なお、酸化ゲルマニウムの添加方法は公知の方法を採用し、その添加量はゲルマニウムとして原料重量に対して100ppmとした。得られたポリエステル(3)の固有粘度は0.68であった。
【0061】
<共重合ポリエステル(C)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル75モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル25モル%、1,4−ブタンジオール50モル%、エチレングリコール50モル%、テトラブチルチタネート0.005部を反応器にとり、反応開始温度を190℃とし、メタノールの留出とともに反応温度を徐徐に上昇させ、3時間後に225℃まで昇温した。さらに、常法により重縮合反応を行った。この反応は、温度を徐徐に高めると共に圧力を常圧より徐徐に減じ、2時間後、温度を280℃、圧力を0.3mmHgとした。反応開始後、4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られた共重合ポリエステル(C)の固有粘度は0.76であった。
【0062】
実施例1:
前述のポリエステル(2)、(3)、共重合ポリエステル(C)をそれぞれ10%、82%、8%の割合で混合した混合原料をB層の原料とし、ポリエステル(2)100%の原料をA層の原料として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、B層を最外層(表層)、A層を中間層とする2種3層(B/A/B)の層構成で共押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度81℃で縦方向に3.2倍延伸した後、以下に示した組成の塗布剤を塗布した後テンターに導き、横方向に120℃で3.7倍延伸し、229℃で熱処理を行った後、横方向に5%弛緩し、厚さ250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、9/232/9μmであった。塗布層の厚みは0.10μmであった。
【0063】
(塗布剤の組成:重量比)
a/b/c/d=47/20/30/3
ここで、aは、テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/ジエチレングリコール/トリエチレングリコール=31/16/3/22/21(モル比)のポリエステル分散体;bは、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリルニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤);cは、ヘキサメトキシメチルメラミン(メラミン系架橋剤);dは、粒子径0.06μmの酸化ケイ素の水分散体(無機粒子)である。
【0064】
実施例2:
実施例1において、共重合ポリエステル(C)のテレフタル酸ジメチル85モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル15モル%、1,4−ブタンジオール40モル%、エチレングリコール60モル%とする以外は、実施例1と同様にして層構成が2種3層(B/A/B)であり、厚さ250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、12/226/12であった。
【0065】
実施例3:
ポリエステル(2)、(3)、共重合ポリエステル(C)をそれぞれ12%、73%、15%の割合で混合した混合原料をB層の原料とする以外は、実施例1と同様にして層構成が2種3層(B/A/B)であり、厚さ250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは9/232/9であった。
【0066】
比較例1:
ポリエステル(2)、(3)、共重合ポリエステル(C)をそれぞれ10%、89.7%、0.3%の割合で混合した混合原料をB層の原料とし、ポリエステル(2)100%の原料をA層の原料としたこと以外は実施例1と同様にして、層構成が2種3層(B/A/B)であり、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0067】
比較例2:
ポリエステル(2)、(1)、共重合ポリエステル(C)をそれぞれ10%、89.7%、5%の割合で混合した混合原料をB層の原料とし、ポリエステル(1)100%の原料をA層の原料としたこと以外は実施例1と同様にして、層構成が2種3層(B/A/B)であり、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、11/228/11μmであった。
【0068】
比較例3:
実施例1において、共重合ポリエステル(C)のテレフタル酸ジメチル90モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル10モル%、1,4−ブタンジオール5モル%、エチレングリコール95モル%、としたこと以外は、実施例1と同様にして層構成が2種3層(B/A/B)であり、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0069】
比較例4:
ポリエステル(2)、(3)、共重合ポリエステル(C)をそれぞれ13%、77%、10%の割合で混合した混合原料をB層の原料とし、ポリエステル(2)、実施例1のポリエステル製造時に発生した耳部およびフィルム端部からの再生品をそれぞれ25、75%の割合で混合した混合原料をA層の原料としたこと以外、製膜条件は実施例1と同様にして層構成が2種3層(B/A/B)の厚みが188μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、11/166/11μmであった。
【0070】
比較例5:
ポリエステル(2)、(3)、共重合ポリエステル(C)をそれぞれ10%、10%、80%の割合で混合した混合原料をB層の原料としたこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向フィルムを製造しようとしたが、延伸性が極端に乏しくフィルム破断頻発して満足なフィルムを得ることができなかった。
【0071】
得られたフィルムの物性値および光学部材適性について下記表1にまとめて示す。本発明の要件を満たすフィルムは、光学用としての適性が高いことがわかる。
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のフィルムは、例えば、拡散シート、プリズムシート、複合シート用の基材として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂層の両面に、ジカルボン酸成分の70〜90モル%がテレフタル酸、10〜30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、グリコール成分の20〜60モル%が1,4−ブタンジオール、40〜80モル%がエチレングリコールである共重合ポリエステルを1〜20重量%含有するポリエステル組成物からなる樹脂層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが2.5%以下、全光線透過率が89.0%以上であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−202356(P2009−202356A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44483(P2008−44483)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】