説明

光学用保護フィルム

【課題】帯電防止性、傷付き防止性、汚染物易洗浄性(有機溶剤で洗浄することもあるため耐溶剤性も必要となる)、印刷適性、基材フィルムとの密着性、透明性および適度な滑り性などを有する光学用保護フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他方の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層が、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)と帯電防止剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレーに使用される偏光板などの製造時に使用される光学用保護フィルムに関する。さらに詳しくは、帯電防止機能、汚染物易洗浄機能、傷付き防止機能などが具備された光学用保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な光学用保護フィルムは、表面保護層/耐水層/帯電防止層/基材フィルム/帯電防止層/粘着層/セパレートフィルム層の構成であり、基材フィルムの一方の面(セパレートフィルム層側)は偏光板に貼り合わせる側であって、セパレートフィルム層、粘着層および帯電防止層からなっている。上記粘着層は糊残りの少ない粘着剤から形成され、帯電防止層には帯電防止機能が付与されている。光学用保護フィルムの他方の面には、帯電防止層、耐水層および表面保護層が形成されている。帯電防止層の機能は前記の通りであり、耐水層の機能は帯電防止層に対する外部環境(湿度)の影響を最小限にすることであり、表面保護層には多くの機能が付与されている。
【0003】
液晶ディスプレーなどに使用される偏光板の製造時には、偏光板の表面に光学用保護フィルムを貼り合わせて、偏光板に汚れや傷が付かないようにし、使用時には光学用保護フィルムを偏光板から剥離する。
【0004】
光学用保護フィルムの粘着層側に帯電防止機能を付与させる理由は、偏光板を製造する過程で発生する静電気による偏光板へのごみの付着や、偏光板から光学用保護フィルムを剥離する際に発生する静電気で偏光板に不良品が生起することがあるので、それを防止するためである。
【0005】
また、光学用保護フィルムの粘着層と反対側の面の外側の表面保護層には、帯電防止機能、傷付き防止機能および汚染物易洗浄機能などが付与されている。それぞれを付与する必要性は次の通りである。帯電防止機能については前記の通りであり、傷付き防止機能については、偏光板を製造する過程で発生する傷付きを防止させることを目的とし、特に、偏光板と光学用保護フィルムをロールで貼り合わせる時、偏光板としての必要スペックに合わせ裁断し、積層して保管している時、或いは保管中に抜き取りをする時などに偏光板に傷付きが発生し易いので、これらに対応するためのものである。
【0006】
汚染物易洗浄機能は、偏光板と光学用保護フィルムとを貼り合わせる際に保護層に付着する粘着剤、或いは偏光板としての必要スペックに合わせ裁断し、積層して保管している時に付着する粘着剤などが光学用保護フィルムの表面を汚染して外観検査で不良品扱いとなって問題化するので、容易に拭きとれるようにするためである。光学用保護フィルムに付着した粘着剤の除去法としては、例えば、乾拭き或いはアルコールや酢酸エチルなどの有機溶剤をしみ込ませた布などによる拭取りを行う方法などがある。このような拭き取り時に光学用保護フィルムには汚染物易洗浄機能が求められている。
【0007】
前記機能を付与した光学用保護フィルムの製造例としては、基材フィルムの一方の面にアクリル粘着剤を、帯電防止処理が施された基材フィルムの他方の面にシリコーンアクリレートを塗布し、光学用保護フィルムの粘着剤のはみだしによる積み重ね時のフィルム同士のくっつき防止と汚染物易洗浄性の機能を付与した例(特許文献1参照)や、表面保護層にポリビニルアルコールやポリエチレンイミンを長鎖アルキル化した共重合体などを塗布し、裁断面からはみ出した粘着剤が光学用保護フィルムの表面に付着するのを防止する機能を付与した例(特許文献2および3参照)が提案されている。
光学用保護フィルムの表面保護層には、前記した帯電防止機能、傷付き防止機能および汚染物易洗浄機能の他に、印刷適性(工程管理する際に使用するプリンターインキ適性)、基材フィルムとの密着性、耐スクラッチ性および適度な滑り性なども求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−305346公報
【特許文献2】特開平11−256115号公報
【特許文献3】特開平11−256116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記の提案技術では、前記した全ての機能を満足しているわけではない。その上、従来よりもさらに高性能である光学用保護フィルムの表面保護層形成材料が要望されている。また、現行の表面保護層の構成システムである3コートシステム(表面保護層/耐水層/帯電防止層/基材フィルム)から2コートシステム(表面保護層/帯電防止層/基材フィルム)へ、さらには製法の簡略化を目的として(帯電防止機能を兼ね備えた表面保護層/基材フィルム)という1コートシステムへの構成システムの変更についても要望されている。
【0010】
従って、本発明の目的は、帯電防止性、傷付き防止性、汚染物易洗浄性(有機溶剤で洗浄することもあるため耐溶剤性も必要となる)、印刷適性(工程管理する際に使用するプリンターインキ適性)、基材フィルムとの密着性、透明性および適度な滑り性などを有する光学用保護フィルムを提供することである。
さらに、本発明の目的は、表面保護層の構成として帯電防止機能を兼ね備えた表面保護層/基材フィルムという1コートシステムが可能な光学用保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他方の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層を、分子内に活性水素基を有する樹脂とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂とポリイソシアネートと帯電防止剤とを被膜形成成分として形成することで、優れた機能を有する光学用保護フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の構成からなる。
1.基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他方の面に設けた帯電防止性表面保護層(以下単に「表面保護層」という場合がある)とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層が、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)と帯電防止剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用保護フィルム。
【0013】
2.樹脂(A)中の活性水素基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種である前記1に記載の光学用保護フィルム。
3.樹脂(B)が、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサン化合物と、ポリイソシアネートと、ポリオールおよび/またはポリアミンとを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、その重量平均分子量が5,000〜500,000である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0014】
4.帯電防止剤(D)が、導電性ポリマー、イオン伝導ポリマー、金属酸化物、金属アルコキシドおよび導電性フィラー含有ポリマーから選ばれた少なくとも1種である前記1に記載の光学用保護フィルム。
5.表面抵抗値が、105〜1012Ω/cm2である前記1に記載の光学用保護フィルム。
6.表面保護層のヘイズ値が、0〜1.2%である前記1に記載の光学用保護フィルム。
7.表面保護層の動摩擦係数が、0.15〜0.30である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0015】
8.分子内に活性水素基を有する樹脂(A)と、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)と帯電防止剤(D)とを有機溶剤に溶解してなることを特徴とする表面保護層形成用塗料。
9.樹脂(A)が、樹脂(A)と樹脂(B)と帯電防止剤(D)の合計量(100質量%)のうちの15〜85質量%であり、樹脂(B)が60〜10質量%であり、帯電防止剤(D)が25〜5質量%である前記8に記載の塗料。
10.さらに使用前にポリイソシアネートを添加するか、或いは安定化ポリイソシアネートを含有している前記8に記載の塗料。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学用保護フィルムの表面保護層の構成システムが、帯電防止性表面保護層/基材フィルムといった1コートシステムからなり、帯電防止性、傷付き防止性、汚染物易洗浄性、印刷適性、基材フィルムとの密着性、透明性および適度な滑り性などに優れた光学用保護フィルムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に述べる。
本発明の光学用保護フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他方の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなっている。すなわち、光学用保護フィルムの表面保護層側の構成は、帯電防止性表面保護層/基材フィルムといった1コートシステムの構成からなることを特徴としており、従来の3コートシステムの構成(表面保護層/耐水層/帯電防止層/基材フィルム)或いは2コートシステムの構成(表面保護層/帯電防止層/基材フィルム)の製法をより簡略化したものである。すなわち、本発明の光学用保護フィルムの表面保護層は、製造時のコート回数が削減されコストパフォーマンスに優れた表面保護層となっている。
【0018】
次に本発明における帯電防止性表面保護層について詳しく説明する。
表面保護層は、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)と帯電防止剤(D)とを被膜形成成分として形成されているものであり、これらの成分を溶剤などに溶解・分散させて、或いは無溶剤で表面保護層形成用塗料として基材フィルムの上に塗布および乾燥して表面保護層とするのが好ましい。この場合の表面保護層形成用塗料は、前記樹脂(A)と前記樹脂(B)とポリイソシアネート(C)と帯電防止剤(D)からなる組成物である。
【0019】
樹脂(A)としては、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、セルロース類、キトサン、シリコーン系樹脂およびウレタン樹脂などが挙げられる。この中で特に好ましいのは、エチレン−ビニルアルコール共重合体、部分けん化ポリビニルアルコールおよびフェノキシ樹脂である。さらに、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ブチラール基変性ポリビニルアルコールなどをフッ素変性シリコーン基または長鎖アルキル基で変性した樹脂も使用できる。
【0020】
樹脂(A)中の活性水素基としては、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NRH(Rは2価の有機基)、−NH2など)、チオール基(−SH)およびエポキシ基などであり、これらの中では水酸基が好ましい。前記樹脂が分子内に活性水素基を有している場合は、そのまま前記樹脂(A)として使用できるが、前記樹脂が分子内に活性水素基を有していない場合は、変性などの処理を行って活性水素基を付与して樹脂(A)として使用することができる。
【0021】
次に前記樹脂(B)について以下に説明する。樹脂(B)中のポリシロキサン基は、ポリウレタン樹脂の主鎖中に含有或いは分岐した状態で含有されている。すなわち、原料となるポリシロキサンが両末端反応型であればポリウレタン樹脂の主鎖である幹部分に、片末端或いは分岐反応型であればポリウレタン樹脂の主鎖から分岐した状態でポリウレタン樹脂中に含有されることとなる。
【0022】
ポリシロキサン基を含有する樹脂(B)としては、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサン化合物および/または該ポリシロキサン化合物とラクトンとを共重合した化合物と、ポリイソシアネートと、ポリオールおよび/またはポリアミンとを反応させて得られるポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂が好ましく使用され、その好ましい重量平均分子量は5,000〜500,000である。
【0023】
本発明で使用する前記樹脂(B)の原料成分について説明する。樹脂(B)の製造に使用される活性水素基を少なくとも1個有するポリシロキサン化合物としては、例えば、以下のような化合物を用いることが好ましい(この中には活性水素基を利用して変性されたエポキシ変性ポリシロキサン化合物も含んでいるが、イソシアネート基と反応してポリウレタン樹脂中に含有されることとなるので含めている)。
【0024】
(1)アミノ変性ポリシロキサン化合物

【0025】

【0026】

【0027】

【0028】
(2)エポキシ変性ポリシロキサン化合物

【0029】

【0030】

【0031】
(3)アルコール変性ポリシロキサン化合物

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】
(4)メルカプト変性ポリシロキサン化合物

【0039】

【0040】
以上列記した活性水素基を有するポリシロキサン化合物は本発明において使用する好ましい化合物であるが、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物はいずれも本発明において好ましく使用することができる。本発明において特に好ましい化合物は2個の水酸基またはアミノ基を有するポリシロキサン化合物である。
【0041】
これらの他にもポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン(ポリエステル)−ポリシロキサン化合物およびエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドで変性したポリエチレンオキサイド−ポリシロキサン化合物やポリプロピレンオキサイド−ポリシロキサン化合物なども好ましく使用される。特に好ましくはポリシロキサン化合物をラクトンで変性した化合物であり、さらに好ましくは分子内に1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン−ポリシロキサン化合物である。ここで使用する好ましいラクトンは、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクタノリド、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンおよびδ−カプロラクトンなどである。
【0042】
また、本発明において前記ポリラクトン−ポリシロキサン化合物、すなわち、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン−ポリシロキサン化合物は、分子中に1個または2個以上の活性水素基、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などを有するシロキサン化合物の活性水素原子団がラクトンを開環重合させた後、減圧処理することによって得られる。
【0043】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)に使用されるポリオールとしては、好ましくはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジオール、多価アルコール系化合物および高分子ポリオールなどの従来公知のものが、また、ポリアミンとしてはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジアミンなどが使用できるが、これらは特に限定されない。以下に使用するそれぞれの化合物について説明する。
【0044】
前記短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。また、多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
前記高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなど、
【0046】
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなど、
【0047】
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカプロラクトントリオールおよびポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなど、
(4)ポリカーボネートジオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなど、
【0048】
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物など、
(6)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0049】
これらのポリオールの分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜2,000程度が好ましい。また、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
前記ポリアミンとして好ましいポリアミンは、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン類およびヒドラジン類などが挙げられる。短鎖ジアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールおよびポリアミンとしては、ジオール化合物およびジアミン化合物が好ましい。
【0051】
前記樹脂(B)の合成に使用するポリイソシアネート化合物としては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネート化合物として好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDIおよび水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0052】
上記の原料を用いたポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)の製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、少なくとも1個の活性水素基とポリシロキサンセグメントが同一分子内に共存する化合物と、ポリオールおよび/またはポリアミンと、ポリイソシアネートと、必要に応じて低分子ジオールもしくは低分子ジアミンを鎖伸長剤とし、イソシアネート基と活性水素含有官能基との当量比が、通常、1.0となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、イソシアネート基が殆どなくなるまで反応させることで樹脂(B)を得ることができる。
【0053】
なお、樹脂(B)については、無溶剤で合成しても、有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましいのは、例えば、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびシクロヘキサノンなどが挙げられる。また、アセトン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテートおよびN−メチル−2−ピロリドンなども使用することができる。
【0054】
樹脂(B)を製造する場合には、それぞれ前記の、同一分子内に少なくとも1個の活性水素基を含有するポリシロキサン化合物を0.01〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、ポリオールおよび/またはポリアミン20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%、鎖伸長剤は40〜1質量%、好ましくは20〜2質量%(これらの成分の合計は100質量%である。)の割合で使用し、ポリイソシアネートの比は、NCO/OH=1.0とする。なお、ポリシロキサン化合物が多いと(30質量%を超えると)、樹脂(B)を用いて作製した光学用保護フィルム同士が滑りすぎて裁断保管時に積上げが不可能であることや、表面保護層中に未反応ポリシロキサン成分が存在することにより、表面保護層が品質工程管理に使用するインキをはじく現象が起きたりするので好ましくない。一方、ポリシロキサン化合物が少ないと(0.01質量%未満であると)、樹脂(B)を用いて作製した光学用保護フィルム同士の滑り不足、表面保護層の汚染性能の不備、耐溶剤性および外気の湿度制御が不可能となり好ましくない。
【0055】
本発明で使用する樹脂(B)の分子量は、重量平均分子量(GPCで測定、標準ポリスチレン換算)で5,000〜500,000の範囲が好ましい。
【0056】
表面保護層を形成する成分である帯電防止剤(D)として好ましい材料としては、導電性ポリマー、イオン伝導ポリマー、金属酸化物、金属アルコキシドおよび導電性フィラー含有ポリマーから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アルカリ金属塩含有ポリエーテル(例えば、ポリエチレンオキサイドのLi塩など)、アルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン、ポリアミン、4級カチオン塩含有アクリル系樹脂、特殊変性ポリエステル、特殊カチオン系樹脂、セルロース誘導体、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびスルホン化ポリアニリンなどの有機導電性材料、カーボンブラック、酸化スズ、酸化亜鉛および酸化チタンなどの金属酸化物、各種金属アルコキシド、アンチモン酸亜鉛ゾルおよびITO粉末などの導電性フィラー含有高分子などから選ばれた1種以上が挙げられる。
【0057】
前記化合物のうち、アルカリ金属塩含有ポリエーテルおよびアルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン中のアルカリ金属塩としては、例えば、過塩素酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム、リチウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウムおよびカリウムビストリフルオロメタンスルホンイミドなどが挙げられる。
【0058】
前記化合物のうち、アルカリ金属塩含有ポリエーテルおよびアルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン中のイオン性液体化合物としては、例えば、イオン性液体を構成するカチオン成分では、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)に代表されるアルキルイミダゾリウムカチオン、アルキルピリジニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオン、アルキルスルホニウムカチオンなどの化合物が使用できる。また、イオン性液体を構成するアニオン成分としては、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオンおよび硝酸アニオンや酢酸アニオンのようなアニオン化合物を用いてイオン性液体として使用できる。
【0059】
本発明で使用するイオン性液体は特に限定されるものではなく、公知のいかなるイオン性液体でもよいが、通常、複雑な合成による不純物の精製が困難なため、アニオン化合物、カチオン化合物のいずれもが有機性のものを選定することが望ましい。
【0060】
前記化合物のうち、例えば、ポリアミンでは、エポミン(日本触媒社製)、ポリアリルアミン(日東紡績社製)などが、4級カチオン系ポリマーでは、例えば、エレコンド(綜研化学社製)、ジュリマー(日本純薬社製)、TKカチオンB(高松油脂社製)、テクスノール(日本乳化剤社製)、NKポリマー(新中村化学社製)、エフコール(松本油脂社製)およびシャロール(第一工業製薬社製)などが、金属アルコキシド系では、例えば、各種アルコキシシラン、各種アルミナゾル、コルコート(コルコート社製)およびセルナックス(アンチモン酸亜鉛ゾル、日産化学社製)などの使用が好ましい。
【0061】
前記樹脂(A)、前記樹脂(B)および前記帯電防止剤(D)の使用量は、樹脂(A)、樹脂(B)および帯電防止剤(D)の合計量(100質量%)のうち、樹脂(A)が15〜85質量%、樹脂(B)が60〜10質量%および帯電防止剤(D)が25〜5質量%である。樹脂(A)の使用量が85質量%を超えると、これらの成分を含む塗料の可使時間および基材フィルムへの密着性が低下するので好ましくなく、15質量%未満では架橋密度および耐溶剤性が低下するので好ましくない。樹脂(B)の使用量が60質量%を超えると光学用保護フィルム同士が滑り過ぎたり、表面保護層のインキ適性不良や耐溶剤性の低下を招くので好ましくなく、10質量%未満では光学用保護フィルム同士の滑り性低下や環境湿度の影響を受け易くなるので好ましくない。一方、帯電防止剤(D)の使用量が25質量%を超えると、表面保護層の耐溶剤性やスクラッチ性が低下するので好ましくなく、5質量%未満では表面保護層の帯電防止性能が低下するので好ましくない。
【0062】
前記ポリイソシアネート(C)においては、従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらのうち、芳香族系或いは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】
これらのポリイソシアネート(C)の使用量は、前記の樹脂(A)、樹脂(B)および帯電防止剤(D)合わせて100質量部に対して5〜60質量部、好ましくは5〜40質量部である。ポリイソシアネート(C)の使用量が60質量部を超えると、前記成分を含む塗料の可使時間の低下などが起きるので好ましくなく、一方、使用量が5質量部未満では表面保護層の架橋密度が低下するので好ましくない。上記ポリイソシアネート(C)がフリーのイソシアネート基を有する場合には、樹脂(A)、樹脂(B)および帯電防止剤(D)を含む塗料に、該塗料の使用直前に添加することが好ましく、上記ポリイソシアネート(C)が安定化ポリイソシアネートである場合には、塗料の使用前から塗料に加えておいてもよい。
【0071】
表面保護層形成用材料には、必要に応じて、さらに硬化触媒、反応抑制剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。硬化触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラ−n−ブチルチタネートおよびビスマスなどの金属と有機または無機酸の塩および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミンおよびジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。反応抑制剤としては、例えば、燐酸、酢酸、酒石酸、フタル酸およびギ酸エステルなどが挙げられる。
【0072】
さらに表面保護層に滑り性付与や耐水化を目的として、例えば、シリコーンオイルおよび/または変性シリコーンオイル(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンおよびアラルキル変性ポリジメチルシロキサンなど)、各種ワックス、アクリル系ポリマー、長鎖アルキル変性ポリマー、フッ素変性ポリマーおよびシロキサン変性ポリマーなどの添加剤を加えることができる。
【0073】
なお、本発明における表面保護層を形成する場合には、前記樹脂(A)と樹脂(B)とポリイソシアネート(C)と帯電防止剤(D)とからなる表面保護層形成用塗料を使用する。該塗料は、無溶剤で調製したものでもよいし、有機溶剤を用いて調製したものでもよい。有機溶剤として好ましいのは、例えば、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどが挙げられる。また、アセトン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、n−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブおよびセロソルブアセテートなども使用することができる。有機溶剤を用いて調製した塗料の固形分は、特に限定されないが、3〜95質量%程度が好ましい。
【0074】
本発明の光学用保護フィルムの基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを成分とするフィルムが用いられる。特に好ましいのは、二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムであり、光学用保護フィルムに適合した適正かつ必要な強度を有している。基材フィルムの膜厚は、好ましくは20〜100μmであり、より好ましくは、25〜40μmである。これらの基材フィルムは、必要に応じて、コロナ処理、帯電防止処理、易接着処理などを施してもよい。
【0075】
本発明の光学用保護フィルムは、上記の表面保護層形成用塗料を用い、従来公知の方法で製造することができ、製造方法自体は特に限定されない。また、基材フィルム、粘着層形成材料などの表面保護層形成用材料以外の材料は、いずれも公知の材料が使用でき、特に限定されない。本発明の光学用保護フィルムの表面保護層は、本発明の表面保護層形成用塗料を、従来公知の方法によって、基材フィルムの表面(裏面は粘着層)に、乾燥厚さが0.01〜1μm程度となるように塗布して形成する。
【0076】
このようにして得られた表面保護層は、樹脂(A)と樹脂(B)中のポリシロキサン基および帯電防止剤(D)との表面エネルギーの相違により、樹脂(A)の活性水素基は親水性のため基材フィルム表面に配向して表面保護層の基材フィルムに対する密着性を向上させる。一方、表面エネルギーの低いポリシロキサン基を含有する成分や帯電防止剤は基材フィルムの反対側(空気側)に配向することで、帯電防止性、汚染防止性および適度な滑り性が付与される。
【0077】
表面保護層を形成する前記ポリイソシアネート(C)は、表面保護層形成用材料内の成分を架橋するので、表面保護層の汚染除去に耐え得る耐溶剤性および耐スクラッチ性(表面硬度アップ)をさらに向上させることができる。帯電防止機能については、表面保護層形成用塗料中に帯電防止剤を含有させることでその機能は保たれている。
【実施例】
【0078】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
[合成例1〜3]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を具備した反応器に、窒素ガスで置換した後、表1に記載したラクトン化合物およびシロキサン化合物を所定の濃度まで投入し窒素気流下、100℃にて均一になるまで攪拌した。続いて所定のテトラ−n−ブチルチタネートを投入し、窒素気流下180℃の温度下で10時間反応させた。反応の進行とともに反応物の粘度が上昇してくる。その後、180℃で5mmHgの減圧下で1時間反応を続け、反応を完了させるとともに、原料のシロキサン化合物に含まれていた非反応性シロキサン化合物および未反応物を完全に除去した。得られたポリカプロラクトン変性ポリシロキサン化合物の組成および性状を表1に示す。
【0079】

【0080】
表1中のシロキサン化合物(a)は下記の構造を有する。

【0081】

【0082】

【0083】
[合成例4〜7]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、表1に記載の水酸基を有するポリカプロラクトン変性ポリシロキサン化合物、ポリオール化合物、鎖伸長剤化合物および溶剤を所定量加え、均一に溶解させ、溶液濃度を30%に調節した。続いてジイソシアネート化合物を所定量(活性水素基1モルに対して等モル)加えて80℃で反応を行い、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が認められなくなるまで反応を行った。得られたシロキサン含有ポリウレタン樹脂の原料組成、性状および物性を表2に示す。
【0084】

【0085】
PCD:ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業社製、商品名CD−220、平均分子量2,000)
1,3−BD:1,3−ブタンジオール
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
MEK:メチルエチルケトン
【0086】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
本発明および比較例の表面保護層形成用塗料(固形分5%)を表3および表4の組成により作製した。

【0087】

【0088】
・熟成条件;40℃、2日
・EVOH;エチレンビニルアルコール(商品名:F104、エチレン共重合比率=32mol%、メルトインデックス=4.5g/min.;190℃、2,160g、(株)クラレ製)
・PVA;部分けん化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217、けん化度=87〜89、重合度=1,700)、(株)クラレ製)
・YP−50S;フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−50S、重量平均分子量=40,000)、東都化成工業(株)製)
・BL−S;ブチラール基・アセチル基含有ポリビニルアルコール共重合体(商品名:BL−S、水酸基=22mol%、アセチル基=3〜5mol%、ブチラール化度=70mol%以下、積水化学工業(株)製)
・PHDI;HDIのビウレット型(商品名:デュラネート24A−100、旭化成ケミカルズ(株)製)
・D−1;カチオン型(4級アンモニウム塩)ポリアクリル酸エステル(商品名:ジュリマーSP−50TF(日本純薬(株)製)をDMFに溶媒置換した化合物)
・D−2;カチオン型(4級アンモニウム塩)ポリアクリル酸エステル(商品名:エレコンドPQ−50B(綜研化学(株)製)をDMFに溶媒置換した化合物)
・DMF:ジメチルホルムアミド
【0089】
各実施例および比較例で得られた各塗料を用い、グラビア印刷により、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製)の表面に、乾燥後の厚みが1.0μmになるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を乾燥させた。実施例1〜4および比較例1、2、4の塗料を用いた場合は塗布および乾燥後、40℃のオーブンにて48時間熟成させて表面保護層を形成させた。比較例3はPHDIを使用していないので熟成を行わずに溶剤を乾燥したもので試験した。
【0090】
次に、下記の配合処方で粘着剤組成物を作製した。上記の表面保護層を形成した各PETフィルムの裏面にグラビアロールにより乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布して粘着層を形成し、実施例および比較例の光学用保護フィルムを得た。
【0091】
〔粘着剤組成物〕
・SKセイカダイン1491H(綜研化学(株)製) 100部
・硬化剤L−45(綜研化学(株)製) 0.9部
【0092】
[試験例]
上記で得られた実施例および比較例の表面保護層の塗膜および光学用保護フィルムの性能を以下の項目について試験し、表5の結果を得た。
<表面抵抗値>
三菱化学(株)製のMCP−HT450を使用して光学用保護フィルムの帯電防止性の測定を行う。測定条件は、温度23℃、湿度65%RH、印加電圧100V、30秒で行った。帯電防止効果を発揮するには、表面抵抗値が105〜1012Ω/cm2であることが好ましく、1×1011Ω/cm2以下がより望ましい。
【0093】
<透明性(ヘイズ値)>
スガ試験機(株)製直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを使用し、光学用保護フィルムのヘイズ値を測定した。
ヘイズ値=測定値−基材のヘイズ値
ヘイズ値は1.2%以下であれば透過性が高く、光学用保護フィルムに適する。
【0094】
<耐酢酸エチル性>
光学用保護フィルム表面に1gの酢酸エチルを垂らし、荷重50g/cm2でラビングした際の表面保護層の塗膜の外観を観察した。
○:表面保護層の塗膜外観の変化がない
△:表面保護層の塗膜外観がやや変化している
×:表面保護層の塗膜外観が変化している
【0095】
<汚染易洗浄性>
1gの粘着剤組成物(SKセイカダイン1491H(綜研化学(株)製)/硬化剤L−45(綜研化学(株)製)=100/0.9)を表面保護層の塗膜に擦り付け、キムワイプ(登録商標)(乾拭きまたは酢酸エチルを用いて)にて拭取り時の易洗浄性を確認した。
○:粘着剤付着物が容易に洗浄できる(乾拭き)
△:粘着剤付着物が洗浄できる(酢酸エチル使用)
×:粘着剤付着物が洗浄できない
【0096】
<耐傷付き性>
光学用保護フィルムの表面保護層の塗膜を約10g/cm2の荷重にてスコッチブライト(住友スリーエム(株)製)で擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○:確認できる傷が0本以上5本未満
△:確認できる傷が5本以上10本未満
×:確認できる傷が10本以上
【0097】
<密着性>
光学用保護フィルムの表面保護層の塗膜と基材PETフィルムとの接着性を碁盤目試験(セロハンテープ剥離クロスカット法)にて行った。
【0098】
<滑り性>
新東科学(株)製のHEIDON−14DRを使用して光学用保護フィルムの動摩擦係数の測定を行う。測定条件は、温度23℃、湿度65%RH、測定数5回の平均値で行った。動摩擦係数は0.15〜0.3であることが好ましく、0.18〜0.28の範囲がより望ましい。
【0099】
<印刷適性>
寺西化学工業(株)製マジックインキNo.500を使用して表面保護層の塗膜面に記載し、インキの筆記状況を観察した。
○:マジックインキの筆記状況が良好である
△:ややインキのハジキがあるが問題ないレベルである
×:インキがはじき筆記できない
【0100】

【0101】

【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明によれば、帯電防止性、傷付き防止(スクラッチ性)および汚染物易洗浄性(有機溶剤で洗浄するため耐溶剤性が必要となる)の他、印刷適性(工程管理する際に使用するプリンターインキの適性)、基材との密着性、透明性および適度な滑り性などを有する光学用保護フィルムが得られる。また、表面保護機能と帯電防止機能が備わった1コートシステムが可能な光学用保護フィルムが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他方の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層が、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)と帯電防止剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用保護フィルム。
【請求項2】
樹脂(A)中の活性水素基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項3】
樹脂(B)が、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサン化合物と、ポリイソシアネートと、ポリオールおよび/またはポリアミンとを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、その重量平均分子量が5,000〜500,000である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項4】
帯電防止剤(D)が、導電性ポリマー、イオン伝導ポリマー、金属酸化物、金属アルコキシドおよび導電性フィラー含有ポリマーから選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項5】
表面抵抗値が、105〜1012Ω/cm2である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項6】
表面保護層のヘイズ値が、0〜1.2%である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項7】
表面保護層の動摩擦係数が、0.15〜0.30である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項8】
分子内に活性水素基を有する樹脂(A)と、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)と帯電防止剤(D)とを有機溶剤に溶解してなることを特徴とする表面保護層形成用塗料。
【請求項9】
樹脂(A)が、樹脂(A)と樹脂(B)と帯電防止剤(D)の合計量(100質量%)のうちの15〜85質量%であり、樹脂(B)が60〜10質量%であり、帯電防止剤(D)が25〜5質量%である請求項8に記載の塗料。
【請求項10】
さらに使用前にポリイソシアネートを添加するか、或いは安定化ポリイソシアネートを含有している請求項8に記載の塗料。

【公開番号】特開2006−178424(P2006−178424A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323059(P2005−323059)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】