説明

光学用積層フィルム

【課題】 本発明の目的は、耐環境性において液晶表示素子としての画質品位を損なわないように制御する機能を有する光学用のフィルムを提供することにある。
【解決手段】 少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなる積層フィルムであって、一方の樹脂のガラス転移温度をTg1、他方のガラス転移温度をTg2とした場合、その関係が下記式Tg1−Tg2≧100℃を満たすことを特徴と有する光学用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用積層フィルム及びその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは耐薬品性、耐環境性等の耐久性に優れ、且つ、液晶表示素子としての画質品位を損なわないように応力緩和することにより制御する機能を有する光学用積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位相差フィルムとしては、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、トリアセテートセルロース系樹脂フィルム等が用いられてきているが、近年様々な用途、多様な環境で偏光板が使用されるようになり、従来にない過酷な使用状況にも耐えるような機能を持った位相差フィルムが期待されている。しかし、位相差フィルムは通常、粘着剤を用いて偏光板や液晶セルとの貼合せを行うが、耐環境試験を行った場合、それらの材料と位相差フィルムとの熱膨張係数が異なるため、偏向板との積層界面にはどうしても応力が発生し、位相差フィルムの光学特性を損ねてしまう。そのために、とりわけ温度変化の大きくなる環境下での液晶セルの実用においては液晶表示素子の表示品質を良好に保つことが極めて困難である。
【0003】
例えば特許文献1には以下について記載されている。
粘着型光学フィルムは液晶パネルメーカーにおいて液晶表示装置に装着されるが、その際に粘着型光学フィルムは各工程で加熱条件下におかれる。しかし、光学フィルムはその材料特性から寸法安定性に乏しく、特に加熱条件下では収縮による寸法変化が大きい。光学フィルムに寸法変化が生じると、粘着剤による応力緩和性が低い場合、光学フィルムに応力ムラが発生し、その結果、表示ムラが生じ視認性を低下させるという問題があった。
【0004】
前記表示ムラを防止すべく、従来の粘着剤では引張り弾性率を低下させた比較的柔らかい組成の粘着剤を用いて応力を緩和させることにより上記の問題を解決してきた。柔らかい組成の粘着剤とする1つの方法として、たとえば架橋度を低下、すなわち架橋点を減少させる方法がある。しかし、架橋点を減少させると、それとともに一般的に低分子量ポリマーの含有量が増加する。低分子量ポリマーが多くなると凝集力が不十分となるため粘着層において発泡、剥がれ等の不具合を生じ易くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−341141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、液晶表示素子に用いられる位相差フィルムは、通常粘着剤を用いて偏光板や液晶セルとの貼合せを行うが、耐環境試験を行った場合、それらの材料と位相差フィルムとの熱膨張係数が異なるため、どうしても貼り合せた積層界面には応力が発生し、かかる位相差フィルムの光学特性を損ねてしまう。そのために、とりわけ温度変化の大きくなる環境下での液晶セルの実用においては液晶表示素子の表示品質を良好に保つことが極めて困難である。
【0006】
本発明の目的は、耐環境性において液晶表示素子としての画質品位が良好な光学用フィルムを提供することにある。具体的には、液晶表示素子に用いられる位相差フィルムとその隣接するフィルム、層、あるいは基板との熱膨張により生じる寸法変化のミスマッチから生じる応力を吸収緩和する役割を果たし、耐環境性において液晶表示素子としての画質品位を損なわないように制御する機能を有する応力緩和層を有した光学用途に用いる積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために光学用途に用いるフィルムとして、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなる積層フィルムを鋭意検討した。この積層フィルムでは、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度と、他方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度との温度差が100℃以上となるように熱可塑性樹脂を組み合わせるように設計することで、ガラス転移温度の低い熱可塑性樹脂層が温度変化による熱膨張で生じた寸法変化のミスマッチから生じる応力を吸収緩和できることを見出し、光学等方性積層フィルム及び光学異方性積層フィルムを含む光学用積層フィルムを提供することに成功したものである。
【0008】
すなわち本発明は、下記の[1]〜[11]のより達成することが出来た。
[1]少なくとも一方の熱可塑性樹脂からなる第1層及び他方の熱可塑性樹脂からなる第2層を有する光学用積層フィルムであって、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg1、他方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg2とした場合、|Tg1−Tg2|≧100℃の関係を満たすことを特徴とする光学用積層フィルム。
[2]第1層は10nm以上の位相差を有し、かつ第2層は位相差が10nm以下であることを特徴とする上記の光学用積層フィルム。
[3]3層以上からなる光学用積層フィルムであって、最外層の2層の内側に存在する層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、当該最外層の2層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度より高いことを特徴とする上記の光学用積層フィルム。
[4]3層からなる光学用積層フィルムであって、最外層の2層を構成する熱可塑性樹脂が実質的に同一である上記の光学用積層フィルム。
[5]一番高いガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂の光弾性定数の絶対値が10ブリュースタ以上であることを特徴とする上記の光学用積層フィルム。
[6]少なくとも1種類の熱可塑性樹脂がエラストマーであることを特徴とする上記の光学用積層フィルム。
[7]少なくとも1種類の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする上記の光学用積層フィルム。
[8]一方の熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面に、コーティング法により他方の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層することを特徴とする上記の光学用積層フィルムの製造方法。
[9]一方の熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面に、共押出法により他方の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層することを特徴とする上記の光学用積層フィルムの製造方法。
[10]少なくとも一方の熱可塑性樹脂からなる第1層及び他方の熱可塑性樹脂からなる第2層を有する光学用積層フィルムの製造方法であって、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg1、他方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg2とした場合、|Tg1−Tg2|≧100℃の関係を満たす光学用積層フィルムを、Tg1−30℃≦T≦Tg1+30℃の温度範囲により延伸することを特徴とする上記の光学用積層フィルムの製造方法(ここでTは延伸温度(℃))。
[11]上記の光学用積層フィルムと偏光板とを任意の角度により貼り合わせてなる光学補償機能を有する積層偏光板。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学用積層フィルムは、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂から構成されており、この2種類の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上離れた材料を用いることで、熱膨張により生じる体積変化のミスマッチから生じる応力を、ガラス転移温度の低い熱可塑性樹脂層が吸収緩和する役割を果たす。したがって、耐環境性に対して、特に温度変化に対して、画質品位を安定的に保つことが出来る液晶表示素子を提供するという格別の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明の光学用積層フィルムは、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg1、他方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg2とした場合、その関係が|Tg1−Tg2|≧100℃を満たすことを特徴とする。
【0011】
ガラス転移温度Tg1を有する一方の熱可塑性樹脂としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、または、前記ポリマーのブレンド物などが挙げられる。このとき、薄膜成形性に富み、且つ該薄膜が十分な強度を有することが好ましく、この点において適した材料としては、ポリカーボネート系ポリマー、ノルボルネン構造を有するポリオレフィン系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリスルホン系ポリマーなどが好ましいものとして挙げられ、特にポリカーボネート系ポリマーが好ましい。
【0012】
ここで、本発明におけるポリカーボネート系ポリマーとは、炭酸とグリコール又は2価フェノールとのポリエステルであり、通常炭酸と2、2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(通称ビスフェノール−A)とを構造単位とする芳香族ポリカーボネートが多様されているが、本発明ではこれに限定されるわけではなく、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1、1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類からなる群から選択される少なくとも1種の2価フェノールをモノマー成分とする共重合ポリカーボネート、ホモポリマー、フェノール−Aをモノマー成分とするポリカーボネートとの混合物、上記2価フェノールとビスフェノール−Aとをモノマー成分とする共重合ポリカーボネートが挙げられる。
【0013】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンの具体例としては、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0014】
1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン基で置換された1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、例えば、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0015】
1、1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン基で置換された1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、例えば、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0016】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0017】
さらに、他のビスフェノール成分として、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、4,4’−(α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘブタン、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)2,5−ジメチルヘブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)4−フルオロフェニルメタン、2,2’−ビス(3−フルオロー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0018】
上記ポリカーボネートは、上記ビスフェノール成分の他に、酸成分のコモノマーとして少量の脂肪族、芳香族ジカルボン酸を用いたポリエステルカーボネートを含む。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、p−キシレングリコール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1、1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、2、2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、等を挙げることができる。この中で、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0019】
用いられるポリカーボネートの分子量は、2000〜100000の粘度平均分子量を有するものであることが好ましく、より好ましくは、5000〜70000、さらに好ましくは7000〜50000の粘度平均分子量が良い。これは、濃度0.7g/dlの塩化メチレン溶液にして20℃で測定した比粘度で表して0.07〜2.70、好ましくは、0.15〜1.80、さらに好ましくは、0.20〜1.30のものである。粘度平均分子量が2000未満のものでは得られるフィルムが脆くなるので適当でなく、100000以上のものでは、フィルムへの加工性が困難になるために好ましくない。
【0020】
本発明に用いるポリカーボネートとしては、フルオレン骨格を有するものを挙げることができる。特にフルオレン骨格を有する共重合ポリカーボネート、具体的には、下記式(I)
【化1】

で表される繰り返し単位及び下記式(II)
【化2】

で表される繰り返し単位からなる共重合ポリカーボネートが好ましい。このポリカーボネートは2種類以上の混合物であってもよい。
【0021】
上記式(I)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。Xは下記式
【化3】

であり、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜3の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0022】
上記式(II)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。Yは下記式群
【化4】

から選ばれる少なくとも1種の基である。ここでR19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基であり、R22及びR25は炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。炭素数1〜22の炭化水素基及び炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0023】
また、Ar〜Arはそれぞれ独立に炭素数6〜10のアリール基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0024】
上記式(I)及び(II)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートにおいては、(I)の含有量が繰り返し単位全体の5〜95モル%であることが好ましい。このポリカーボネートにおいて、(I)の含有量が5モル%未満となる場合、ポリマーフィルムの複屈折が大きくなるために、面内均一な位相差フィルムを得ることが困難となる。一方、(I)の含有量が全体の95モル%を超えると、フィルムが割れ易く、脆い性質となり、位相差を有するフィルムとして適さない。より効果的には(I)の含有量が20〜80モル%、さらに効果的には(I)の含有量が30〜70モル%であることが好ましい。とりわけ、位相差値が短波長ほど大きい特性が要求される用途では、(I)の含有量が30〜55モル%であることが適しており、位相差値が短波長ほど小さい特性が要求される用途では、(I)の含有量が55〜70モル%であることが適している。
【0025】
この中でも、上記式(II)において、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2、2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールAとも言う)が好適に用いられ、さらに、上記式(I)において9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレンとも言う)からなる共重合ポリカーボネートが耐熱性、寸法安定性、透明性において優れている。
【0026】
一方、ガラス転移温度Tg2を有する他方の熱可塑性樹脂としては、透明性、熱安定性、等方性などに優れるものが好ましく、|Tg1−Tg2|≧100℃を満たすものであれば特に制限はないが、例えばTg1−Tg2≧100℃の関係となるような熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えば、ゴムやエラストマーなど、ガラス転移温度Tg1を有する熱可塑性樹脂より弾性率が小さいものが好適である。かかるゴムとしては、例えば天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴムが挙げられる。また、かかるエラストマーとしては、例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、オレフィン系、ジオレフィン系、スチレン系、フッ素系などを挙げることができる。しかし、フィルムに成形加工を行った際に透明性が良好(全光線透過率が80%以上)であり、耐候性、耐熱性、耐薬品性が良好で、且つハンドリングも良好であることが望ましい。そのためにタック性の無いものが好都合である。
【0027】
得られたガラス転移温度Tg2を有する樹脂からなる層は、通常クロスニコルに設置された偏光板の間で使用するため、光学等方フィルムであることが特に望ましく、面内の位相差が10nm以下、好ましくは7nm以下、更に好ましくは5nm以下であることが望まれる。
【0028】
上記一方の熱可塑性樹脂と他方の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移点温度Tg1が、通常140〜260℃、好ましくは160〜250℃、特に好ましくは、180〜240℃の範囲のものが良く、他方の熱可塑性樹脂は、Tg1−Tg2≧100℃、好ましくはTg1−Tg2≧140℃の関係を満足するエラストマーから選ばれることが好ましい。ここで一方の熱可塑性樹脂において、Tg1が140℃未満のものを用いると寸法安定性が悪く、また、240℃を超えると、延伸工程の温度制御が非常に困難になるために製造が困難となる。
【0029】
〔積層フィルム〕
本発明の光学用積層フィルムは、少なくとも、ガラス転移温度Tg1を有する熱可塑性樹脂からなる第1層、ガラス転移温度Tg2を有する熱可塑性樹脂からなる第2層を含むものである。したがって、第1層と第2層のみから構成されるもの、さらに第3層を有するもの、第3層以上の複数の層を有していてもよい。また、全体として3層以上の構成からなる場合には、同じ熱可塑性樹脂からなる層が2層以上あってもよい。好ましい形態としては、第1層、第2層、第3層から順に積層してなる、つまり最外層が第1層及び第3層であり、その2層の内側に第2層が存在するような積層フィルムを挙げることができる。この場合、特に第1層と第3層とは実質的に同じ熱可塑性樹脂からなるものが好ましい。ここで実質的に同じとは、例えばこれらの層を構成する熱可塑性樹脂がポリカーボネート系ポリマーであって、その構造が一部異なるとか、分子量が異なる場合をいう。
【0030】
また、特に第1層と第3層とは実質的に同じ熱可塑性樹脂からなる積層フィルムの場合、Tg1の熱可塑性樹脂での光弾性定数の絶対値が10ブリュースタ以上であるような熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
本発明の光学用積層フィルムは、構成するすべての層の位相差が10nm以下である光学等方性フィルムからなる積層フィルム(以下、光学等方性積層フィルムという)及び、少なくとも1層が配向して例えば10nm以上の位相差を有する光学異方性の積層フィルム(以下、光学異方性積層フィルムという)を含む。光学異方性積層フィルムとしては、例えば第1層が10nm以上の位相差を有するフィルムであって、第2層が位相差10nm以下の光学等方性であるフィルムからなるものを挙げることができる。
本発明における光学等方性積層フィルムは、その複屈折異方性の点において、光学等方性であることを表している。
【0032】
ここで、光学特性である複屈折は位相差値で表され、特に、面内位相差(R値)と厚み方向の位相差(K値)に分けられる。これらR値とK値は、それぞれ下記式(a)と(b)で定義される。
R=Δn・d=(nx−ny)・d (a)
K=((nx+ny)/2−nz)・d (b)
である。R値、K値の単位はnmである。dはフィルムの厚さ(nm)である。nx、ny、nzは、ここでは以下のように定義される。
nx:フィルム面内における最大屈折率
ny:フィルム面内における最大屈折率を示す方向に直交する方位の屈折率
nz:フィルム法線方向の屈折率
(主延伸方向とは一軸延伸の場合には延伸方向、二軸延伸の場合には配向度が上がるように延伸した方向を意味しており、化学構造的には高分子主鎖の配向方向を指す。)
【0033】
光学等方性とは、この面内位相差値が10nm以下であるものを表し、クロスニコルに設置された偏光板の間に光学等方性積層フィルムを任意の角度で挿入しても、その輝度がほとんど変化しない特性を有するものであり、面内位相差値の値においては、7nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。
また、本発明における光学異方性積層フィルムは、その複屈折異方性の点において、光学異方性であることを表している。
【0034】
本発明の光学異方性積層フィルムにおける複屈折の発現は、ガラス転移温度Tg1を有する樹脂のフィルム層からなされることを特徴とし、本発明における光学等方性積層フィルムをTg1−30℃≦T≦Tg1+30℃の温度範囲により延伸して得ることを特徴とする。ここでTは延伸温度(℃)である。このとき、光学用積層フィルムの1つの成分であるガラス転移温度Tg2を有する樹脂のフィルム層では、Tg1−Tg2≧100℃の関係を満たす材料であることにより、Tg1−30℃≦T≦Tg1+30℃の温度範囲により延伸を行っても分子配向がほとんど発生せず、位相差の発現に実質的に寄与しない。
【0035】
本発明の光学異方性積層フィルムを作製する場合の延伸倍率は、1.1〜5.0倍の範囲が好ましく、1.2〜4.0倍の範囲がより好ましく、さらに、1.3〜3.0倍の範囲がフィルムの加工において破断も少なく、フィルムの光学特性において面内の均一性のフィルムを得ることが容易となるので、最も適している。
【0036】
本発明の光学異方性積層フィルムは、液晶パネルに組み合わせて光学補償機能を付加する位相差フィルムとして用いられる。よって、厚みに関しては、粘着加工時のハンドリング性を保ちつつ、薄さが必要となるので、5〜200μmが好ましく、10〜150μmがより好ましく、さらに好ましくは20〜130μmである。
本発明における光学異方性積層フィルムは位相差を有する光学的一軸または二軸性フィルムであっても構わない。
【0037】
また、これまでの位相差フィルムは、単層からなる熱可塑性樹脂フィルムであり、偏光板と粘着剤等により貼り合せて用いられている。位相差フィルムに要求される特性としては、光学透明であり、且つ耐候性、耐熱性、耐薬品性を有しており、さらに光弾性定数が低い必要がある。ここで、光弾性定数という特性は、外部応力が発生した場合、外部応力に対して同一方向、或いは垂直方向に位相差を発生する程度を表す指標であり、位相差フィルムにおいては光弾性定数が小さい方がより好ましい。しかし、近年、位相差フィルムに対する耐候性、耐熱性に対する要求特性がよりいっそう高くなり、この特性を求めるために、位相差フィルムの材料としてはバルキーな分子骨格や芳香族環をポリマー鎖に組み込むことになり、これにより光弾性定数は大きな値を有するものとなっている。とりわけ、光弾性定数の絶対値が10ブリュースタ以上である位相差フィルムにおいて、偏光板や液晶セルと粘着剤を用いて積層させた場合、耐候性において、特に耐熱性において、位相差フィルムと偏光板と液晶セルの体積膨張率が同一でないために、どうしても体積変化に応じた応力が界面に発生して、その発生した力の大きさに応じて位相差フィルムにさらに位相差が生じてしまい、その部分の液晶表示素子としての表示特性を損なう現象が顕著に現れることとなる。しかし、本発明の光学用積層フィルムを、位相差フィルムとして用いることで、体積変化により生じる応力を吸収緩和させることが可能となるので、光弾性定数という要因にとらわれない位相差フィルムを設計することができる。とりわけ、本発明の位相差フィルムの効果が観察されるTg1のガラス転移温度をもつ熱可塑性樹脂としては、光弾性定数の絶対値が10ブリュースタ以上のものがよく、本発明の光学用積層フィルムを光学フィルムの効果がより大きい位相差フィルムとして用いる場合は上記光弾性定数の絶対値が15ブリュースタ以上のもの、さらに顕著に効果が見られる位相差フィルムとしては光弾性定数の絶対値が20ブリュースタ以上のものが好ましい。
【0038】
本発明の光学用積層フィルムは透明性が良好であり、へーズ値は5%以下、全光線透過率は80%以上であることが好ましい。
ここで、第1層の厚さは、一般には200μm以下であり、1〜150μmが好ましく、特に5〜100μmとするのが好ましい。
また第2層の厚さとしては、1〜100μmが好ましいが、積層しているフィルムの膜厚が薄すぎると特性の発現が得られないし、また逆に厚すぎると積層フィルム全体の膜厚がかさむため、3〜50μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。
【0039】
さらに本発明の光学用積層フィルムが第3層あるいは第4層など3層構成の場合には、第3層目以上の層の厚さとしては、最外層を構成する層は200μm以下であり、1〜150μmが好ましく、特に5〜100μmとするのが好ましい。内側を構成する層は1〜100μmが好ましい。
【0040】
〔積層フィルムの製造方法〕
本発明の積層フィルムの製造方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。
第1層及び第2層を構成する熱可塑性樹脂を例えば溶融押出法、溶液キャスト法、カレンダー法によりおのおの別々にフィルムとして製造し、それらを粘着剤、接着剤等を用いて積層する方法、熱圧着により積層する方法が挙げられる。また、第1層と第2層とを共押出により積層することもできる。さらには第1層または第2層の上に、溶液キャスト法により第2層または第1層を形成して製造する方法もある。
【0041】
本発明のガラス転移温度Tg2を有する熱可塑性樹脂からなる層の加工、製造においては、既存の様々な方法を用いても良く、フィルムの生産性や表面の平滑性からは、共押出法、ガラス転移温度Tg1を有する熱可塑性樹脂からなる層を基材フィルムとし、この上にかかるガラス転移温度Tg2を有する樹脂からなる溶液をキャストして行う溶液キャスト法、またはコーティング法によるフィルム成膜方法が好ましい。
【0042】
また、本発明の光学用積層フィルムを構成する各フィルム(層)中には、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、透明核剤、永久帯電防止剤、蛍光増白剤等のポリマー改質剤が同時に存在しても良い。
【0043】
〔光学異方性積層フィルム、及び光学補償機能を有する積層偏光板の利用分野〕
本発明の光学異方性積層フィルムは、偏光板と貼りあわせることにより、光学補償機能を有する積層偏光板として利用され、広い視野角を有し、コントラスト等の表示品位に優れる液晶表示装置を形成しうるものであり、ツイストネマチックモード、垂直配向モード、OCB(Optically Compensated Bend)配向モード、インプレインスイッチングモード等のTFT液晶表示装置などのいずれかの液晶モードを用いたものに用いることができる。その実用に際しては、偏光板として用いられるすべての用とに利用することが可能であり、例えば、液晶表示装置であれば、照明システムにバックライトあるいは反射板や半透過型反射板を用いてなる透過型や反射型、あるいは半透過反射型などが形成することができる。その他の偏光板を用いる表示装置等としては、液晶プロジェクター、強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いたもの、有機EL表示装置等が挙げられるが、本発明で製造された偏光板をそれらに使用しても良い。
【0044】
本発明の光学補償機能を有する積層偏光板においては、粘着層を用いて液晶パネルとの貼合を行うが、偏光板に粘着層を備えた形で、その粘着層露出面においては、汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる形態をとる。
【0045】
本発明の光学補償機能を有する積層偏光板のディスプレイの表示側にあたる面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0046】
ハードコート処理は偏光板の傷つき防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度やすべり特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着性防止を目的に施される。
【0047】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光透過光を拡散して視野角などを拡大するための拡散層(視野角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0048】
本発明の光学補償機能を有する積層偏光板には、接着する前に表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、紫外線照射処理などが挙げられ、好ましくはフィルム面の水滴の接触角で65度以下、さらに好ましくは60度以下の表面状態にするのが好ましい。
【実施例】
【0049】
本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
〔R値、K値の測定〕
複屈折Δnと膜厚dの積である位相差R値、面内に対して垂直方向な位相差K値は、王子計測機器社製の商品名『KOBRA21−ADH』により測定した。R値は入射光線とフィルムの表面が垂直する状態で測定しており、R=Δn・d=(nx−ny)・d、K=((nx+ny)/2−nz)・dである。R値、K値、dの単位は、nmである。nx、ny、nzは、ここでは以下のように定義される。
nx:フィルム面内における最大屈折率
ny:フィルム面内における最大屈折率を示す方向に直交する方位の屈折率
nz:フィルム法線方向の屈折率
d:フィルムの厚さ
【0050】
[実施例1]
攪拌機、温度計及び還流冷却機を備えた反応装置に水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を仕込み、ビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンを、50:50(mol%)の比率で溶解させ、少量のハイドロサルファイドを加えた。次に、これに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p-tert-ブチルフェノールを加えて乳化させ、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相分取して、塩化メチレンを蒸発させ共重合ポリカーボネートを得た。得られた共重合ポリカーボネートの組成比はモノマー仕込み量とほぼ同等であった。また、この樹脂のガラス転移点温度(Tg1)は215℃、光弾性定数は50ブリュースターであった。この共重合ポリカーボネートを、樹脂Aとする。
【0051】
他方の樹脂としては、ECDEL9966(イーストマン・ケミカル社、ポリエステルエラストマー)を使用した。この樹脂のガラス転移点温度(Tg2)は−3℃であった。このポリエステルエラストマー樹脂を、樹脂Bとする。
樹脂Aと樹脂Bのガラス転移温度の差は、Tg1−Tg2=218℃≧100℃を満たしている。
【0052】
この2つの樹脂を共押出法によって製造して、下記構成からなる光学等方性積層フィルムを得た。
樹脂B(厚み15μm)/樹脂A(厚み100μm)/樹脂B(厚み15μm)
【0053】
この積層フィルムを樹脂AのTg1に対して10℃高い温度(225℃)おいて、縦方向1.8倍の一軸延伸加工、続いて横方向に2.1倍の逐次2軸延伸加工を行った。この逐次二軸延伸により得られた延伸フィルムは、位相差値が、積層フィルム全体として実質的にR=48nm、K=230nmである光学異方積層フィルム(厚み55μm)であった。なお、具体的には樹脂Bからなる第1層及び第3層の位相差値がR=48nm、K=230nmであり、樹脂Aからなる第2層の位相差値は実質0である。この光学異方性積層フィルムのヘイズは0.9%、全光線透過率は90%であった。
【0054】
上記光学異方性積層フィルム1枚と、さらに偏光板2枚(液晶セルを挟んでクロスニコルに配置)、液晶セル(50mmX70mm)を用いて、偏光板/光学異方性積層フィルム/液晶セル/偏光板となるように粘着剤を介して順次積層させて、ノーマリーブラック(電圧無印加状態で黒表示)となる液晶パネルを作成した。
【0055】
このとき、この液晶パネルを暗室内において、フジカラーライトボックス5000インバータでバックライトを点燈させ、液晶パネル面内における黒輝度の均一性を評価した。その結果、面内において均一な黒表示となっており液晶表示特性の均質性を確認した。
【0056】
次に、この液晶パネルを80度DRY設定のオーブンの中に30分保持して、取り出し直後1分以内で液晶パネルを同等の評価方法において観察した。これにおいても、面内において均一な黒表示となっており液晶表示特性の均質性を確認し、広い温度範囲において問題なく均質な表示特性が得られることがわかった。
【0057】
[実施例2]
攪拌機、温度計及び還流冷却機を備えた反応装置に水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を仕込み、ビスフェノールAを溶解させ、少量のハイドロサルファイドを加えた。次に、これに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p-tert-ブチルフェノールを加えて乳化させ、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相分取して、塩化メチレンを蒸発させポリカーボネートを得た。この樹脂のガラス転移点温度(Tg1)は155℃、光弾性定数は85ブリュースターであった。このポリカーボネートを、樹脂Cとする。
【0058】
他方の樹脂としては、LX430(日本ゼオン(株)、変性スチレン・ブタジエン系ラテックス、全固形分49.0%水溶液)を使用した。この樹脂のガラス転移点温度(Tg2)は12℃であった。この変性スチレン・ブタジエン系ラテックス樹脂を、樹脂Dとする。
樹脂Cと樹脂Dのガラス転移温度の差は、Tg1−Tg2=143℃≧100℃を満たしている。
【0059】
始めに樹脂Cを溶融押出しによって成膜して、樹脂C単独からなるフィルムを得た。
このフィルムを樹脂CのTg1に対して10℃高い温度(165℃に)おいて、縦方向1.1倍の一軸延伸加工、続いて横方向に1.13倍の逐次2軸延伸加工を行った。この逐次二軸延伸により得られた延伸フィルムは、位相差値が、R=53nm、K=244nmであるフィルム(厚み90μm)となった。
【0060】
次に、マイヤーバーコーティング法により、下記構成に示す通り、延伸加工した樹脂Cからなるフィルムの両面に樹脂Dからなるフィルム層を形成した。
樹脂D(厚み10μm)/樹脂C(厚み90μm)/樹脂D(厚み10μm)
この光学異方性積層フィルムのヘイズは1.0%、全光線透過率は90%であった。
【0061】
上記光学異方性積層フィルム1枚と、さらに偏光板2枚(液晶セルを挟んでクロスニコルに配置)、液晶セル(50mmX70mm)を用いて、偏光板/光学異方性積層フィルム/液晶セル/偏光板となるように粘着剤を介して順次積層させて、ノーマリーブラック(電圧無印加状態で黒表示)となる液晶パネルを作成した。
【0062】
このとき、この液晶パネルを暗室内において、フジカラーライトボックス5000インバータでバックライトを点燈させ、液晶パネル面内における黒輝度の均一性を評価した。その結果、面内において均一な黒表示となっており液晶表示特性の均質性を確認した。
【0063】
次に、この液晶パネルを80度DRY設定のオーブンの中に30分保持して、取り出し直後1分以内で液晶パネルを同等の評価方法において観察した。これにおいても、面内において均一な黒表示となっており液晶表示特性の均質性を確認し、広い温度範囲において問題なく均質な表示特性が得られることがわかった。
【0064】
[比較例1]
実施例1と同様に、ビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンを、50:50(mol%)の比率で得られた共重合ポリカーボネートを使用した位相差値が、R=51nm、K=273nmとなる位相差フィルムを得た。この位相差フィルムのヘイズは0.9%、全光線透過率は90%であった。
【0065】
上記位相差フィルム1枚と偏光板2枚(液晶セルを挟んでクロスニコルに配置)と液晶セル(50mmX70mm)を用いて、偏光板/位相差フィルム/液晶セル/偏光板となるように粘着剤を介して順次積層させて、ノーマリーブラック(電圧無印加状態で黒表示)となる液晶パネルを作成した。
【0066】
このとき、この液晶パネルを暗室内において、フジカラーライトボックス5000インバータでバックライトを点燈させ、液晶パネル面内における黒輝度の均一性を評価した。これでは、面内において均一な黒表示となっており液晶表示特性の均質性を確認した。
【0067】
次に、この液晶パネルを80度DRY設定のオーブンの中に30分保持して、取り出し直後1分以内で液晶パネルを同等の評価方法において観察したところ、面内において4隅に楕円状の白い光り抜けとなる部分が見られ、液晶パネルにおいて面内の均一表示を行うことができなかった。
【0068】
[比較例2]
実施例1と同様に、ビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンを、50:50(mol%)の比率で得られた共重合ポリカーボネートを樹脂A(Tg1=215℃)として使用した。また、他方の樹脂Eとして、ZEONOR1420R(日本ゼオン(株)、シクロオレフィンポリマー、Tg2=136℃)を使用した。
【0069】
樹脂Aと樹脂Eのガラス転移温度の差は、Tg1−Tg2=79℃<100℃である。
この2つの樹脂を共押出法によって成膜して、下記構成からなる積層フィルムを得た。
樹脂E(厚み15μm)/樹脂A(厚み100μm)/樹脂E(厚み15μm)
【0070】
この積層フィルムを樹脂AのTg1に対して10℃高い温度(225℃)おいて、縦方向1.8倍の一軸延伸加工、続いて横方向に2.1倍の逐次2軸延伸加工を行った。この逐次二軸延伸により得られた延伸フィルムは、位相差値が、R=51nm、K=225nmである積層フィルム(厚み58μm)となった。この積層フィルムのヘイズは0.9%、全光線透過率は91%であった。
【0071】
上記積層フィルム1枚と、さらに偏光板2枚(液晶セルを挟んでクロスニコルに配置)、液晶セル(50mmX70mm)を用いて、偏光板/積層フィルム/液晶セル/偏光板となるように粘着剤を介して順次積層させて、ノーマリーブラック(電圧無印加状態で黒表示)となる液晶パネルを作成した。
【0072】
このとき、この液晶パネルを暗室内において、フジカラーライトボックス5000インバータでバックライトを点燈させ、液晶パネル面内における黒輝度の均一性を評価した。これでは、面内において均一な黒表示となっており液晶表示特性の均質性を確認した。
【0073】
次に、この液晶パネルを80度DRY設定のオーブンの中に30分保持して、取り出し直後1分以内で液晶パネルを同等の評価方法において観察したところ、面内において4隅に楕円状の白い光り抜けとなる部分が見られ、液晶パネルにおいて面内の均一表示を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の積層フィルムを用いることで、耐薬品性、耐環境性等の耐久性に優れ、且つ、熱膨張により生じる体積変化のミスマッチから生じる応力を吸収緩和する役割を果たし、耐環境性に対して、特に温度変化に対して、液晶表示素子としての画質品位を安定的に保つことが出来るという効果を有し、光学補償機能を具備した偏光板として利用され、広い視野角を有し、コントラスト等の表示品位に優れる液晶表示装置を形成しうるものであり、ツイストネマチックモード、垂直配向モード、OCB(Optically Compensated Bend)配向モード、インプレインスイッチングモード等のTFT液晶表示装置などのいずれかの液晶モードを用いたものに用いることができる。その実用に際しては、偏光板として用いられる用途に利用することが可能であり、例えば、液晶表示装置であれば、照明システムにバックライトあるいは反射板や半透過型反射板を用いてなる透過型や反射型、あるいは半透過反射型などが形成することができる。その他の偏光板を用いる表示装置等としては、液晶プロジェクター、強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いたもの、有機EL表示装置等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の熱可塑性樹脂からなる第1層及び他方の熱可塑性樹脂からなる第2層を有する光学用積層フィルムであって、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg1、他方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg2とした場合、|Tg1−Tg2|≧100℃の関係を満たすことを特徴とする光学用積層フィルム。
【請求項2】
第1層は10nm以上の位相差を有し、かつ第2層は位相差が10nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光学用積層フィルム。
【請求項3】
3層以上からなる光学用積層フィルムであって、最外層の2層の内側に存在する層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、当該最外層の2層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度より高いことを特徴とする請求項1または2記載の光学用積層フィルム。
【請求項4】
3層からなる光学用積層フィルムであって、最外層の2層を構成する熱可塑性樹脂が実質的に同一である請求項3記載の光学用積層フィルム。
【請求項5】
一番高いガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂の光弾性定数の絶対値が10ブリュースタ以上であることを特徴とする請求項3または4記載の光学用積層フィルム。
【請求項6】
少なくとも1種類の熱可塑性樹脂がエラストマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
【請求項7】
少なくとも1種類の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
【請求項8】
一方の熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面に、コーティング法により他方の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学用積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
一方の熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面に、共押出法により他方の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学用積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
少なくとも一方の熱可塑性樹脂からなる第1層及び他方の熱可塑性樹脂からなる第2層を有する光学用積層フィルムの製造方法であって、一方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg1、他方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg2とした場合、|Tg1−Tg2|≧100℃の関係を満たす光学用積層フィルムを、Tg1−30℃≦T≦Tg1+30℃の温度範囲により延伸することを特徴とする請求項2記載の光学用積層フィルムの製造方法(ここでTは延伸温度(℃))。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の光学用積層フィルムと偏光板とを任意の角度により貼り合わせてなる光学補償機能を有する積層偏光板。

【公開番号】特開2006−208655(P2006−208655A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19489(P2005−19489)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】