説明

光学用透明フィルム、およびこれを用いた光学補償フィルム、偏光板、液晶表示装置

【課題】 光学異方性がほとんどなく、機械方向とそれと垂直な方向とで物理特性の差があまりなく、温湿度の変化による光学異方性変化や縦横の寸法変化等が小さい透明フィルムを提供することで、温度や湿度という環境の変化が起きても光漏れや色味変化等を起こさない、優れた液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 機械方向の引張弾性率が2.4×109〜4.9×109N/m2であり、機械方向に垂直な方向の引張弾性率が2.3×109〜4.7×109N/m2であり、かつ、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.80〜1.36であり、フィルム面内のレターデーション値Reが20以下、およびフィルム膜厚方向のレターデーション値Rthの絶対値が25以下の透明フィルムとする。また、上記透明フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板、液晶表示装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用透明フィルム、およびこれを用いた光学補償フィルム、偏光板、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶セルおよび偏光板からなる。前記偏光板は保護フィルムおよび偏光膜を有し、例えば、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる。透過型液晶表示装置では、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには一枚以上の光学補償フィルムを配置することもある。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚以上の光学補償フィルム、偏光板の順に配置する。液晶セルは、液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶性分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過および反射型いずれにも適用できる、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードが提案されている。
【0003】
この様なLCDの中でも、高い表示品位が必要な用途については、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子を用い、薄膜トタンジスタにより駆動する90度ねじれネマチック型液晶表示装置(以下、TNモードという)が主に用いられている。しかしながら、TNモードは正面から見た場合には優れた表示特性を有するものの、斜め方向から見た場合にコントラストが低下したり、階調表示で明るさが逆転する階調反転等が起こることにより表示特性が悪くなるという視野角特性を有しており、この改良が強く要望されている。
【0004】
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
【0005】
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献1参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコティック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)が提案されている。しかし、提案された方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であるために、直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを十分に解決できないという問題がある。また、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しい。なぜなら、ある波長において完全に光漏れを補償できたとしても、他の波長で補償できるとは限らないからである。たとえば、視感度が最も大きい緑の波長で光りぬけを補償したとしても、より小さな波長の青やより大きな波長の赤における光漏れは生じるという問題がある。この問題を解決するために、非特許文献1では2枚の2軸性フィルムを積層することを提案している。しかし、この方法には2枚の2軸性フィルムを用いるため、2軸フィルムの軸ずれが発生しやすく、画面むらが発生しやすいという問題があった。また黒表示時の光漏れは、液晶セルと偏光子との間にある偏光板保護膜として従来用いられてきたトリアセチルセルロースフィルムに面内のレターデーションReがおよそ5nm程度、膜厚方向のレターデーションRthがおよそ50nmあることも原因となっていた。そのため、面内のレターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRthがともに小さい透明フィルムを開発し、偏光板の保護フィルムとして用いることが望まれている。
【0006】
また近年、液晶表示装置においては内部のバックライトで温度が上昇したり、高温高湿度の環境下にて用いられる場合があり、上記の偏光板保護膜であるトリアセチルセルロースフィルムが温度、湿度でそのRe、Rthが変化し、光学補償能が変わり、黒表示時に光が漏れる、または画像にムラが生じる、という問題があった。特にこのような場合、表示装置の縦横の長さが異なること、部材がもともと縦横とで異なる物性を持つ場合があること、によって表示装置の枠の周囲から本来の黒表示時に光が漏れる現象や色味が変化する故障が問題となっていた。そのため、このような環境による光学補償機能の変化が少ない液晶表示装置が得られるフィルムの開発が要望されている。
【0007】
高温、高湿度などの環境による光学補償能の変化の原因の一つとして、透明保護フィルムの物理特性が、その製膜時に機械搬送方向とそれと垂直な方向とで差があり、液晶表示装置に組み込んで環境変化が起きた際に縦方向と横方向とでフィルムが何らかの力を受けると縦方向と横方向とで程度が異なっていることが考えられる。そのため、透明フィルムの物理特性としては、機械方向とそれと垂直な方向とで差がないことがのぞましい。
【0008】
さらには近年、液晶表示装置はパソコンのモニター用途だけでなくTV用途としての開発が進められており、それに伴って大画面化が進んでいる。大画面化と同時に液晶表示装置全体の薄型化も進行しており、液晶表示装置を構成する薄いガラスまたは樹脂製の基板の反りが発生しやすくなり、視認側から見てパネル中央部がへこみ、縁部分が視認側に反る、「ワープ」が問題となっている。ワープが起こると、パネルの縁部分または四隅が筐体に接触することがあり、このため画面表示性能に悪影響を及ぼす。
【0009】
ワープ現象は、本来反りを起こさないガラス又は樹脂製の液晶セル基板に対して、上側(視認側)と下側(裏側)に積層された各種部材が、加熱や吸/放湿などによる膨張・収縮を起こし、上側と下側に差が生じるために、液晶表示装置の表と裏の力のバランスが崩れ、画面全体が反ってしまうことが原因である。さらには、通常の液晶表示装置においては、視認側の表面が開放されているのに対し、裏面は筐体に組み込まれて準密閉状態となっている。このため、基板を挟んでいる上側の積層体と下側の積層体とで加熱や吸/放湿に差が生じ、そのための膨張・収縮にも差が生じている。
【0010】
液晶表示装置は、ガラス基板に液晶を封入した液晶セルの両側に偏光を作り出す偏光板を配置し、必要に応じて位相差板、反射防止フィルム、輝度向上膜等の各種光学素子を積層し、外周部を「ベゼル」と呼ばれるステンレス等の金属板からなる固定枠で固定して液晶モジュールとし、この液晶モジュールを他の構成部材と共に筐体内に組み立て、収納して製造される。
【0011】
液晶表示装置の電源点灯時はバックライトで温度が上昇するなどの理由により、視認側とバックライト側とで温度や湿度の差が生じることがある。この場合、液晶セルを境界に、偏光板を含んだ視認側の積層体とバックライト側の積層体とがさらされる温度や湿度の条件は異なっており、それぞれの積層体はこの影響を受けると考えられる。ワープが起こるとパネルの縁部分または四隅が筐体に接触するだけでなく、背面に設置されているバックライトヘの密着の影響により表示性能上問題となる。さらには黒表示画面としたとき画面の四隅がムラ状に光漏れする「コーナームラ」現象が起こる場合があり表示性能上非常に大きな問題となる。
【0012】
【特許文献1】特開平9−80424号公報
【特許文献2】特開平10−54982号公報
【特許文献3】特開平11−202323号公報
【特許文献4】特開平9−292522号公報
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.41.(2002)4553
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の第1の課題は、偏光板の保護フィルムの面内のレターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRthを低下させ、ほぼゼロとし、しかも温度、湿度などの環境変化によるRe、Rthの変化が少なく、フィルムの機械方向とそれに垂直な方向(面内の縦方向と横方向)とで物理特性がほぼ等しい透明フィルムを提供することである。本発明の第2の課題は、上記の透明フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板を提供し、温度や湿度という環境の変化が起きてもフィルムの縦横の物理特性がほぼ等しいために光漏れや色味変化を起こさない、優れた液晶表示装置を提供することである。
さらに本発明の第3の課題は、前述した液晶表示装置のパネルが液晶セルの反りによって起こるワープを防止し、さらにはワープによって発生する表示性能の低下が起こらない、優れた液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は、鋭意検討した結果、透明フィルムの物理特性、とくに引張弾性率、貯蔵弾性率、光弾性係数、寸法安定性が、機械方向と、機械方向に垂直な方向とで、ほぼ等しくなるように、機械搬送方向に極端に延伸されないようにしてフィルムを作製した。物理特性が機械方向と機械方向に垂直な方向とでほぼ等しい透明フィルムは、ポリマーの配向程度がどちらの方向もほぼ等しい。すなわちフィルム面内のレターデーション(Re)が小さいということになる。一方、フィルムの膜厚方向のレターデーション(Rth)はこれら機械物性とは関係なく、製膜の状況によってポリマーが面内および膜厚方向配向することで発現する。そこで本発明の発明者は、鋭意検討した結果、透明フィルムが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いてフィルムの光学的異方性を十分に低下させ、特に膜厚方向のレターデーションRthを低減することに成功した。さらに、Rthを低下する化合物は、面内のレターデーション値(Re)も低下させることを可能にした。
【0015】
さらに本発明の発明者は、ワープ現象は一般に画面長辺方向でより大きく起こりやすいことから、画面長辺方向について液晶表示装置を構成する積層体の物性を制御することを考えた。また、通常画面表側が開放され画面裏側が閉じられた筐体内に組み込まれることを考え、基板の上側(視認側)と基板の下側とに差分を設けることを考えた。以上を鋭意検討した結果、画面長辺方向において、液晶表示装置の基板を挟んだ上側(視認側)の積層体および下側(裏側)の積層体について、各層の弾性率とその断面積を掛け合わせた値の総和が、上側より下側を大きくすることでワープおよびワープによる表示性能の悪化が防止できることを見出した。
【0016】
本発明の課題は、下記(1)〜(7)の透明フィルム、下記(8)〜(12)の光学補償フィルム、下記(13)〜(14)の偏光板および下記(15)〜(20)の液晶表示装置により達成された。
(1) 機械方向の引張弾性率が2.4×109〜4.9×109N/m2であり、機械方向に垂直な方向の引張弾性率が2.3×109〜4.7×109N/m2であり、かつ、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.80〜1.36であり、式(i)(ii)で表されるフィルム面内のレターデーション値Re(nm)およびフィルム膜厚方向のレターデーション値Rth(nm)が式(iii)(iv)をみたすことを特徴とする透明フィルム。
(i) Re=(nx−ny)×d
(ii) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(iii) 0≦Re≦20
(iv) |Rth|≦25
(2) 機械方向の貯蔵弾性率および機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率がともに1.5×109〜7.8×109N/m2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.80〜1.20であることを特徴とする(1)に記載の透明フィルム。
(3) 機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに5.0×10-112/N以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.80〜1.20であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載の透明フィルム。
(4) 60℃90%RH24時間後での寸法変化率および90℃dry24時間後での寸法変化率がいずれも機械方向、機械方向に垂直な方向ともに±0.5%以下であり、かつ、いずれの場合も(機械方向の寸法変化率)/(機械方向に垂直な方向の寸法変化率)の比が0.3〜2.5であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の透明フィルム。
(5) ソルベントキャスト法により製造されたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の透明フィルム。
(6) セルロースアシレートからなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の透明フィルム。
(7) フィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(v)、(vi)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の透明フィルム。
(v) (Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(vi) 0.01≦A≦30
ここで、
Rth(A):Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)
Rth(0):Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)
A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)
である。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の透明フィルムに、下記式(vii)をみたす光学異方性層を設けたことを特徴とする光学補償フィルム。
(vii) Re=0〜200(nm)かつ|Rth|=0〜300(nm)
(9) 光学異方性層がディスコティック液晶性化合物を用いて形成されたことを特徴とする(8)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(10) 光学異方性層が棒状液晶層を用いて形成されたことを特徴とする(8)または(9)に記載の光学補償フィルム。
(11) 光学異方性層が複屈折を持つポリマーフィルムからなることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(12) 光学異方性層を形成するポリマーフィルムが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を含有することを特徴とする(11)に記載の光学補償フィルム。
(13) (1)〜(7)のいずれかに記載の透明フィルム、又は(8)〜(12)のいずれかに記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いて、偏光子の保護フィルムとした偏光板。
(14) 表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けた(13)に記載の偏光板。
(15) (1)〜(7)のいずれかに記載の透明フィルム、(8)〜(12)のいずれかに記載の光学補償フィルム、(13)または(14)に記載の偏光板、のいずれかを用いた液晶表示装置。
(16) (1)〜(7)のいずれかに記載の透明フィルム、(8)〜(12)のいずれかに記載の光学補償フィルム、(13)または(14)に記載の偏光板、のいずれかを用いたVAまたはIPS液晶表示装置。
(17) ガラスまたは樹脂からなる基板で液晶を封入した液晶セル、偏光板を含む液晶セルの表側に設けられた積層体、および偏光板を含む液晶セルの裏側に設けられた積層体を有するパネルを備えており、表側を視認側とする液晶表示装置であって、表側の積層体および裏側の積層体の少なくとも一方に(13)または(14)に記載の偏光板を含有し、下記式(viii)を満たすことを特徴とする液晶表示装置。
(viii) Σi(Efi×Sfi)/Σj(Erj×Srj)≦0.99
[上式において、Efiは表側の積層体を構成するi番目の層の長辺方向の弾性率を表し、Sfiは表側の積層体を構成するi番目の層の短辺を一辺とする断面積を表し、Erjは基板の裏側の積層体を構成するj番目の層の長辺方向の弾性率を表し、Srjは基板の裏側の積層体を構成するj番目の層の短辺を一辺とする断面積を表す。]
(18) 液晶表示装置の表側の表面が開放されており、液晶表示装置の裏面が筐体で閉じられていることを特徴とする(17)に記載の液晶表示装置。
(19) 前記パネルが長方形または正方形であり、長辺が10cm〜500cmであることを特徴とする(17)または(18)に記載の液晶表示装置。
(20) 温度60℃、相対湿度90%にて48時間経時後、温度25℃相対湿度60%の環境下に移して20分後の時点で、前記パネルの反り量w(mm)が、前記パネルの長辺方向の長さL(mm)に対して、w/L≦0.01を満たすことを特徴とする(17)〜(19)のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明者の研究により、光学用の透明フィルムの物理特性、とくに引張弾性率、貯蔵弾性率、光弾性係数、寸法安定性が、機械方向と、機械方向に垂直方向とが、ほぼ等しくなるように調整することにより、液晶表示装置を過酷な温度条件や湿度条件下で使用した場合に起こる光漏れや色味変化を低減できることが判明した。特に透明フィルムの面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthを小さくすると、環境による上記ReおよびRthの変化率が小さいため、光漏れや色味変化の低減により効果的であることがわかった。
【0018】
また、本発明の引張弾性率、貯蔵弾性率、光弾性係数、寸法安定性が、機械方向と、機械方向に垂直方向とが、ほぼ等しい透明フィルムを偏光板の保護膜に用い、かつ、画面長辺方向において、液晶表示装置の基板を挟んだ上側(視認側)の積層体および下側(裏側)の積層体について、各層の弾性率とその断面積を掛け合わせた値の総和が、上側より下側を大きくすることにより、上記の環境による光漏れや色味変化の低減に加え、液晶表示装置のワープおよびワープによるコーナームラが防止できることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の透明フィルムは、液晶表示装置の基本的な構成部材である偏光板の透明保護フィルムとしてのぞましく用いることができる。以下に本発明の透明フィルムの詳細を説明する。
【0020】
[透明フィルムの作製方法]
以下に本発明の透明フィルムの作製方法について説明する。
【0021】
[ソルベントキャスト法によるフィルム作製方法]
本発明の透明フィルムは、ソルベントキャスト法によってフィルムを作製することが好ましい。ソルベントキャスト法では、フィルム原料のポリマーを適当な有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)とし、このドープを適当な支持体上、好ましくは金属の支持体上に流延し、その後溶剤を乾燥させフィルムを支持体から剥ぎ取り、さらにフィルムから溶剤を十分に乾燥させて製造する。
【0022】
[剥ぎ取り時の残留溶剤量]
ソルベントキャスト法によりフィルムを作製する際には、フィルムを金属支持体上にて溶剤を乾燥させ、フィルムがゲル化したところで剥ぎ取る。フィルムを剥ぎ取るためにはフィルム中の残留溶剤量が60〜150%であることがのぞましい。残留溶剤量の次式(ix)で表される。なお、残存揮発分質量はフィルムを120℃で2時間加熱処理したときに、加熱処理前のフィルム質量から加熱処理後のフィルム質量を引いた値である。
(ix) 残留溶剤量=残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量×100(%)
【0023】
[フィルム搬送時にかかるテンション]
金属支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは一般的に巾方向(機械方向に垂直な方向)に収縮しようとする。本発明の透明フィルムの作製においては、機械方向とそれに垂直な方向のどちらの方向にもフィルムが強く延伸されることのないよう制御を要する。具体的には、機械方向へのフィルム搬送時においてはフィルム搬送用ロールからフィルムの機械方向にかかるテンションの強さを10〜50kgf/mとすることがのぞましい。一方で機械方向と垂直な方向にかかるテンションの強さも同様の強さとすることがのぞましい。この場合垂直方向でフィルムを保持し、かつテンションを調整するためにテンタークリップを用いたテンター方式も好ましく用いることができる。例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)を好ましく用いることができる。
【0024】
[透明フィルムの物理特性]
以下に本発明の透明フィルムの物理特性について説明する。
【0025】
[フィルムの弾性率]
本発明の透明フィルムの機械方向の引張弾性率が2.4×109〜4.9×109N/m2であり、機械方向に垂直な方向の引張弾性率が2.3×109〜4.7×109N/m2であり、かつ、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.80〜1.36であることがのぞましい。
よりのぞましくは、機械方向の引張弾性率が2.5×109〜4.7×109N/m2であり、機械方向に垂直な方向の引張弾性率が2.4×109〜4.6×109N/m2であり、かつ、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.85〜1.30である。さらにのぞましくは、機械方向の引張弾性率が2.6×109〜4.5×109N/m2であり、機械方向に垂直な方向の引張弾性率が2.5×109〜4.4×109N/m2であり、かつ、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.88〜1.25である。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃・70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
【0026】
[フィルムの貯蔵弾性率]
本発明の透明フィルムは、機械方向の貯蔵弾性率および機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率がともに1.5×109〜7.8×109N/m2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.80〜1.20であることがのぞましい。
よりのぞましくは、機械方向、垂直方向ともに貯蔵弾性率が1.8×109〜7.4×109N/m2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.82〜1.18である。
さらにのぞましくは、機械方向、垂直方向ともに貯蔵弾性率が2.0×109〜6.9×109N/m2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.84〜1.16である。具体的な測定方法は、温度を変化させながらの動的粘弾性測定より貯蔵弾性率をもとめた。
【0027】
[フィルムの光弾性係数]
本発明の透明フィルムは、機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに5.0×10-112/N以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.80〜1.20であることがのぞましい。
よりのぞましくは、機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに4.0×10-112/N以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.82〜1.18である。
さらにのぞましくは、機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに3.0×10-112/N以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.84〜1.16である。
具体的な測定方法としては、本発明の透明フィルム試料12mm×120mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
【0028】
[フィルムの寸度変化]
本発明の透明フィルムの60℃90%RH24時間後での寸法変化率および90℃dry24時間後での寸法変化率がいずれも機械方向、機械方向に垂直な方向ともに±0.5%以下であり、かつ、いずれの場合も(機械方向の寸法変化率)/(機械方向に垂直な方向の寸法変化率)の比が0.3〜2.5であることがのぞましい。
よりのぞましくは、60℃90%RH24時間後での寸法変化率および90℃dry24時間後での寸法変化率がいずれも機械方向、機械方向に垂直な方向ともに±0.4%以下であり、かつ、いずれの場合も(機械方向の寸法変化率)/(機械方向に垂直な方向の寸法変化率)の比が0.4〜2.2である。
具体的な測定方法としては、本発明の透明フィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とした。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定した。60℃、90%RHの寸度変化率={(L0−L1)/L0}×100、90℃、5%RHの寸度変化率={(L0−L2)/L0}×100、として寸度変化率を求めた。
【0029】
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明の透明フィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。また機械方向と垂直方向とで吸湿膨張係数がほぼ同等になることがのぞましい。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、透明フィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0030】
本発明の透明フィルムの厚さは、20〜200μmであることが好ましく、40〜180μmであることがさらに好ましい。
【0031】
[透明フィルムの評価方法]
本発明の透明フィルムの評価に当たって、以下の方法で測定して実施した。
【0032】
(面内のレターデーション Re)
本発明の透明フィルムにおいてはRe=(nx−ny)×dで表されるフィルム面内のレターデーション値Reは0≦Re≦20であることがのぞましい。よりのぞましくは0≦Re≦15であり、0≦Re≦10であることがさらにのぞましい。
測定は試料70mm×100mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株)にて589nmにおける垂直方向から測定した。
【0033】
(膜厚方向のレターデーション Rth)
本発明の透明フィルムにおいてはRth=((nx+ny)/2−nz)×dで表されるフィルム膜厚方向のレターデーション値Rthは|Rth|≦25であることがのぞましい。よりのぞましくは|Rth|≦23であり、|Rth|≦20であることがさらにのぞましい。
測定は試料30mm×40mmを、25℃,60%RHで2時間調湿し、エリプソメーター(M150、日本分光(株))で、632.8nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら(面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°、−40°傾斜した方向)同様に測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値(セルロースアシレート:1.48)及び入力された膜厚値を基にエリプソメーターが算出した。
【0034】
[透明フィルムの評価方法]
(偏光板の湿度変化、温度変化に対するパネル上での光漏れ、色味変化)
本発明の透明フィルムは液晶表示装置用の偏光子の透明保護フィルムとして好ましく用いることができる。これを液晶表示装置に実装して、装置内部のバックライトで温度が上昇したり、高温高湿度の環境下にて用いられる場合を想定した場合、特に黒表示時に本来ならば画面全体が黒く表示されるべき時に、表示装置の枠の周囲から光が漏れるムラ故障や色味が変化する故障を、これまでに用いられてきた偏光板の保護膜よりも低減することがのぞましい。さらにのぞましくは上記のような故障をゼロにすることである。
【0035】
[透明フィルムの材質]
本発明の透明フィルムを形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した式(iii)(iv)を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の透明フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0036】
また、本発明の透明フィルムを形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0037】
また、本発明の透明フィルムを形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。以下にセルロースアシレートについて詳細を説明する。
【0038】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明の透明フィルムに用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0039】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造されるセルロースアシレートについて記載する。セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
【0040】
上述のようにセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
【0041】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0042】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基から選ばれる少なくとも2種類である場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
【0043】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
特に、アシル置換基が、実質的にアセチル基のみからなり、平均重合度が180〜550であるセルロースアシレートを用いて本発明の透明フィルムを作製すると、光学異方性をより低下できる。
【0044】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、2.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0045】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0046】
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0047】
[透明フィルムへの添加剤]
本発明の透明フィルムは熱可塑性のポリマー樹脂を熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を熱溶融時に加えることができる。一方、透明フィルムを溶液から調整する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープという)には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0048】
[透明フィルムの光学的異方性を低下させる化合物の構造的特徴]
まず、本発明の透明フィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、フィルム中のポリマーが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くなるようにした。このためには光学的異方性を低下させる化合物はポリマーに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
[透明フィルムの光学的異方性を低下させる化合物の添加量]
本発明のセルロースアシレートフィルムの光学的異方性、とくに下記式(ii)で表されるフィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(v)、(vi)をみたす範囲で少なくとも一種含有することがのぞましい。
(ii)Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(v)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(vi)0.01≦A≦30
上記式(v)、(vi)は
(v)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(vi)0.05≦A≦25
であることがよりのぞましく、
(v)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(vi)0.1≦A≦20
であることがさらにのぞましい。
ここで、
Rth(A):Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)
Rth(0):Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)
A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)
である。
【0049】
以下に本発明で好ましく用いられる、透明フィルムの光学異方性すなわちRe及びRthを低下させる化合物の具体例として下記一般式(1)〜(4)を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。以下これらついて詳細に説明する。
次に、一般式(1)および(2)の化合物について説明する。
【0050】
【化1】

【0051】
【化2】

【0052】
上記一般式(1)において、R1aはアルキル基またはアリール基を表し、R2aおよびR3aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R1a、R2aおよびR3aの炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、一般式(2)中、R4aおよびR5aはそれぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、R4aおよびR5aの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
式中、R1dはアルキル基またはアリール基を表し、R2dおよびR3dはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。
一般式(3)として好ましくは下記一般式(4)で表される化合物である。
【0060】
【化9】

【0061】
上記一般式(4)において、R4d、R5dおよびR6dはそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
【0062】
上記のアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
【0063】
以下に、一般式(3)または一般式(4)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0064】
【化10】

【0065】
【化11】

【0066】
【化12】

【0067】
【化13】

【0068】
【化14】

【0069】
【化15】

【0070】
[波長分散調整剤]
本発明の透明フィルムにおいては、ReおよびRthが小さいことが特徴であり、さらにいえば、これらReおよびRthの波長による依存性すなわち波長分散も小さいことがのぞましい。この、波長分散を低下させる手段として、本発明においては透明フィルムに対して波長分散を調整する化合物(以下波長分散調整剤ともいう)を添加することが有効であり、以下これら化合物について説明する。本発明の透明フィルムのRthの波長分散を良化させるためには、下記式(x)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を、下記式(xi)、(xii)をみたす範囲で少なくとも一種含有することがのぞましい。
(x) ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)
(xi) (ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
(xii) 0.01≦B≦30
上記式(xi)、(xi)は
(xi) (ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
(xii) 0.05≦B≦25
であることがよりのぞましく、
(xi) (ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
(xii) 0.1≦B≦20
であることがさらにのぞましい。
ここで、
Rth(400):400nmにおけるRth(nm)
Rth(700):700nmにおけるRth(nm)
ΔRth(B):ΔRthを低下させる化合物をB%含有したフィルムのΔRth(nm)
ΔRth(0):ΔRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのΔRth(nm)
B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)
である。
上記の波長分散調整剤は、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、透明フィルム固形分に対して0.01〜30質量%含むことによって透明フィルムのRe、Rthの波長分散を調整した。添加量としては0.1〜30質量%含むことによって透明フィルムのRe、Rthの波長分散を調整した。
【0071】
透明フィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身が透明フィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0072】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、透明フィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はポリマー固形分に十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0073】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を透明フィルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明の透明フィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0074】
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0075】
波長分散調整剤は、透明フィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0076】
(化合物添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、透明の0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
【0077】
(化合物添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0078】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0079】
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
【0080】
一般式(101) Q1−Q2−OH
【0081】
(式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環Q2は芳香族環を表す。)
【0082】
1は含窒素方向芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0083】
2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0084】
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
一般式(101−A)
【0085】
【化16】

【0086】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0087】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1およびR3として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0088】
2、およびR4として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0089】
5およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0090】
6およびR7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0091】
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
一般式(101−B)
【0092】
【化17】

【0093】
(式中、R1、R3、R6およびR7は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0094】
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0095】
【化18】

【0096】
【化19】

【0097】
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずに本発明の透明フィルムフィルムを作製した場合、保留性の点で有利であることが確認された。
【0098】
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(102)
【0099】
【化20】

【0100】
(式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0101】
1およびQ2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
1およびQ2で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0102】
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、またはOであり、特に好ましくはOである。
【0103】
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0104】
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)
【0105】
【化21】

【0106】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0107】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0108】
1、R3、R4、R5、R6、R8およびR9として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0109】
2として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0110】
7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0111】
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)
【0112】
【化22】

【0113】
(式中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
【0114】
10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0115】
一般式(102)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0116】
【化23】

【0117】
【化24】

【0118】
【化25】

【0119】
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるシアノ基を含む化合物としては一般式(103)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(103)
【0120】
【化26】

【0121】
(式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)Q1およびQ2であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0122】
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
【0123】
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0124】
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0125】
1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X1およびX2で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、X1およびX2はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X1およびX2はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0126】
1およびX2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの))である。
【0127】
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
一般式(103−A)
【0128】
【化27】

【0129】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0130】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0131】
1、R2、R4、R5、R6、R7、R9、およびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0132】
3、およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0133】
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
一般式(103−B)
【0134】
【化28】

【0135】
(式中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X3は水素原子、または置換基を表す。)
【0136】
3は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0137】
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
一般式(103−C)
【0138】
【化29】

【0139】
(式中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0140】
21として好ましくはR3およびR8が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0141】
21として好ましくはR3およびR8が水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0142】
本発明一般式(103)で表される化合物はJounal of American Chemical Society 63巻3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
【0143】
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0144】
【化30】

【0145】
【化31】

【0146】
【化32】

【0147】
[表面処理]
本発明の透明フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、透明フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0148】
[アルカリ鹸化処理によるフィルム表面の接触角]
本発明の透明フィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることがのぞましい。よりのぞましくは50°以下であり、45°以下であることがさらにのぞましい。接触角の評価法はアルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角をもとめる通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
【0149】
[機能層]
本発明の透明フィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に透明フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。透明フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0150】
[用途(偏光板)]
本発明の透明フィルムの用途について説明する。
本発明の透明フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた透明フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0151】
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の透明フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0152】
したがって本発明の透明フィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
【0153】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0154】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。
【0155】
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0156】
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号、同5622648号、同5770107号の各明細書、国際公開第95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号の各パンフレット、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などの各公報に記載の化合物が含まれる。
【0157】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0158】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0159】
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の透明フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の透明フィルムと貼合し、あわせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0160】
(一般的な液晶表示装置の構成)
本発明の透明フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、透明フィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。
液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セルの両側に偏光板を配置し、必要に応じて位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の各種光学素子が積層される。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
一般に、液晶表示装置は液晶パネルの外周部を「ベゼル」と呼ばれるステンレス等の金属板からなる固定枠で固定して液晶モジュールとし、この液晶モジュールを他の構成部材と共に筐体内に組み立て、収納して製造される。本発明でも同様の構成で用いられる。
【0161】
(基板)
本発明の液晶表示装置を構成する液晶セルの基板は、ガラスまたは樹脂(プラスチック)からなる。当該ガラスまたは樹脂は添加剤を含んでいてもよく、また基板はガラスまたは樹脂以外の構成要素を保持していてもよい。そして、ガラスや樹脂からなるセル基板の間に液晶を封入することができる。
液晶表示装置を薄型化する観点からは、基板は、厚さ1mm以下のものが好ましく、0.7mm以下がさらに好ましく、0.5mm以下が最も好ましい。
【0162】
ここで、樹脂基板としては、透明性と機械的強度を有していれば特に限定されず、従来公知のものを全て使用できる。樹脂基板を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂や、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル、ポリジアリルフタレート、ポリイソボニルメタクリレート等の熱硬化性樹脂などを挙げることができる。かかる樹脂は、1種または2種以上を用いることができ、他成分との共重合体や混合物として用いることもできる。
【0163】
(偏光板)
次に、液晶表示装置において積層体を構成する偏光板について説明する。
本発明において、偏光板の種類は本発明の条件を満足しうるものであれば特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、二色性を有するヨウ素または二色性染料で染色し、延伸して配向させた後に架橋、乾燥させた偏光子と、保護膜とを貼り合わせて製造される吸収型偏光板を好ましく用いることができる。偏光子は光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。光透過率は30%〜50%が好ましく、35%〜50%がさらに好ましく、40%〜50%であることが最も好ましい。偏光度は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが最も好ましい。30%以下の透過率、もしくは90%以下の偏光度の場合には液晶表示装置の輝度やコントラストが低く、表示品位が低下する。偏光子の厚さは1〜50μmが好ましく、1〜30μmがさらに好ましく、8〜25μmであることが最も好ましい。
【0164】
本発明において偏光子と保護膜との接着処理は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤などを介して行うことができる。特に、ポリビニルアルコール系フィルムとの接着性が最も良好である点で、ポリビニルアルコール系接着剤を用いることが好ましい。かかる接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0165】
(偏光板を含む表側の積層体)
液晶表示装置の表側の積層体は、偏光板を含み、さらに偏光板の視認側および液晶セル側に接着される光学部材も含むことができる。
偏光板の視認側表面にはハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等を貼りあわせまたは表面処理によって適宜設ける場合がある。ハードコートフィルムまたはハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばシリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り性等に優れる硬化皮膜を、透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止フィルムまたは反射防止処理(アンチリフレクション)は、偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、防眩フィルムまたは防眩処理(アンチグレア)はパネル(画面)の表面で外光が反射してパネルからの透過光の視認を阻害することの防止を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式や、透明微粒子を含有した塗工液をコーティングする方式などの適宜な方式にて、保護膜表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。
【0166】
偏光板の液晶セル側には光学補償フィルムを必要に応じて用いる場合がある。光学補償フィルムは、一般に液晶表示装置の斜め方向の視野角を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは、偏光板の保護膜そのものに光学性能を持たせた一体型、例えばトリアセチルセルロースアシレートフィルムに光学補償性能を持たせて偏光子の保護膜としたものでも良いし、例えばトリアセチルセルロースフィルムにディスコティック液晶を塗布して、その後偏光板と一体化する型でも良い。また、光学補償フィルムは複数枚用いて貼りあわせても良い。貼りあわせる光学補償フィルムとしては主にポリマーフィルムが好ましく用いられる。例えば面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した傾斜配向ポリマーフィルムのような2方向延伸フィルムなどが用いられる。さらには傾斜配向フィルムも用いられる。例えばポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/および収縮処理したものや液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。
【0167】
これら視認側および液晶セル側の各層を構成する各部材同士は粘着剤を用いて接着されるのが一般的である。このときの粘着層もそれぞれの積層体に含まれる。
【0168】
粘着層は、アクリル系等の従来に準じた適宜な粘着剤にて形成することができる。吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。粘着層は必要に応じて設ければよく、本発明では例えば、光学補償フィルムと保護膜との接着や液晶セルと保護膜の接着などに必要に応じて設けることができる。
【0169】
(偏光板を含む裏側の積層体)
本発明において偏光板を含む裏側の積層体とは、偏光板を含み、さらに偏光板の液晶セル側およびバックライト側に接着される光学部材も含むことができる。
偏光板の液晶セル側には光学補償フィルム、またバックライト側には拡散シート、輝度向上膜などを必要に応じて用いる場合がある。これら各部材同士は粘着剤を用いて接着しても良く、このときの粘着剤も裏側の積層体に含まれる。ただし、拡散シートや輝度向上膜などがバックライト側に配置されても裏側の偏光板と直接接着されていない場合は、本発明では裏側の積層体には含まないものとする。
【0170】
(式(viii)の条件)
本発明の液晶表示装置においては、基板の表側(視認側)の積層体および基板の裏側の積層体を構成する層について、各層の弾性率とその断面積を掛け合わせた値の総和が、基板の表側より基板の裏側を大きくすることによって、反りおよび反りによる表示悪化(液晶表示装置におけるコーナームラ発生等)を防止することができる。具体的には、下記式(viii)を満たすことによって、反りおよび反りによる表示悪化を効果的に防止することができる。パネルの反りによるコーナームラは、特にIPS方式の液晶表示装置でみられるため、IPS型液晶表示装置において下記式(viii)を満たすようにパネル設計を行うと特に効果的である。
(viii) Σi(Efi×Sfi)/Σj(Erj×Srj)≦0.99
[上式において、Efiは表側の積層体を構成するi番目の層の長辺方向の弾性率を表し、Sfiは表側の積層体を構成するi番目の層の短辺を一辺とする断面積を表し、Erjは基板の裏側の積層体を構成するj番目の層の長辺方向の弾性率を表し、Srjは基板の裏側の積層体を構成するj番目の層の短辺を一辺とする断面積を表す。]
式(viii)の上限値は0.99であるが、上限値は0.95がより好ましく、0.90がさらに好ましく、0.85がとくに好ましい。また式(viii)の値は0.7以上であることが好ましい。0.7以上であれば、積層体全体が抗力に対抗する力のバランスが表側と裏側のいずれにも偏ることがないため、かえって表面が視認側に凸に反るようなことも生じにくい。表側積層体または裏側積層体の少なくとも1つに本発明の透明フィルムを部材(偏光子保護膜、光学補償フィルムの支持体など)として用い、さらに上記式を満たすようにパネル設計を行うことで、光漏れや色味変化が少なく、さらにコーナームラも抑制した液晶表示装置を提供できる。
【0171】
式(viii)において、Efi×Sfiは基板(液晶セル)の表側の積層体を構成するi番目の層の長辺方向の弾性率Efiと短辺を一辺とする断面積Sfiの掛け合わせである。層が正方形の場合は、ここでいう短辺は一辺とする。弾性率Efiが大きいほどi番目の層は長辺方向に伸び/縮みしにくいことを示す。弾性率Efiは単位面積あたりの値であることから、断面積Sfi(=厚さ×短辺)を掛け合わせることで、i番目の層にかかる伸び/縮みに対して抗する力の大きさを表すことができる。したがって、Σ(Efi×Sfi)は、基板の表側の積層体を構成する各層(例えば偏光板を構成する保護膜や偏光子、粘着剤、光学補償フィルムなど)についてパネルの長辺方向の伸び/縮みに抗する力の総和を表す。同様にΣ(Erj×Srj)は、基板の裏側の積層体を構成する各層についてパネルの長辺方向にかかる力の総和を表す。以上により、式(viii)は基板の表側の力の総和よりも基板の裏側の力の総和が大きいことを意味し、この式を満たすことによって基板の表側への反り、および反りによる表示性能の低下が防止できる。
【0172】
本発明において、式(viii)を満足するように表側積層体のΣ(Efi×Sfi)および裏側積層体のΣ(Erj×Srj)を調整する方法は特に制限されない。表側と裏側の積層体の層構成や、製造する液晶表示装置の特性や使用環境などを考慮して適宜方法を選択することができる。例えば、液晶表示装置においては、光学補償フィルムを裏側積層体のみに組み込んだり、また輝度向上膜を裏側積層体に一体化させることなどにより裏側積層体の該物性値を表側積層体のそれに比べて大きくする方法が考えられる。また裏側積層体に弾性率の大きい材料を用いて、表側積層体には弾性率の小さい材料を用いることによっても本発明を達成できる。また各層の機能に障害を与えない範囲で、各層の厚みを調節することも本発明では有効である。
【0173】
(断面積)
本発明において、表側、裏側の各層の厚みは上記式(viii)中の断面積に関係していることから、適宜調整することが望ましい。厚みが大きければ各層の断面積を大きくすることができる。偏光子、保護膜、光学部材、粘着層、それぞれの素材に応じて適宜調整することが望ましい。
【0174】
本発明の液晶表示装置に用いられる各層の大きさは、パネル(画面)の大きさに等しい。本発明ではパネルの長辺方向の物性を式(viii)で考えているので、断面積(=厚み×幅)に現れる幅は短辺方向の長さに等しい。液晶表示装置のパネルサイズに依存するが、実用的なサイズや製造上の観点から長辺の長さは10〜500cmであることが好ましい。より好ましくは20〜500cmであり、さらに好ましくは30〜500cm、とくに好ましくは50〜500cmである。大きさについては特に制限は無いが、面積が広い場合に液晶パネルの反りが発生しやすいことから、特に大画面の液晶表示装置で上記式(viii)を満たすことが効果的である。
【0175】
(パネルの反り)
本発明の液晶表示装置は、パネルの反りに関して、温度60℃、相対湿度90%にて48時間経時後、温度25℃相対湿度60%の環境下に移して20分後の時点でのパネルの反り量w(mm)が、パネルの長辺方向の長さL(mm)に対して、w/L≦0.01を満たすことが好ましい。w/L≦0.01であればパネルの反りによるコーナームラの表示性能の低下を抑制できる。より望ましくはw/L≦0.005であり、w/L≦0.003を満たすことがさらに望ましい。
【0176】
また、温度50℃、相対湿度50%にて4時間経時後、温度25℃相対湿度60%の環境下に移して20分後の時点でも、パネルの反り量w(mm)が、パネルの長辺方向の長さL(mm)に対して、w/L≦0.05を満たすことが望ましい。より望ましくはw/L≦0.02であり、w/L≦0.01を満たすことがさらに望ましい。
【0177】
(環境変化時の温湿度)
本発明の液晶表示装置は、温度60℃、相対湿度90%にて48時間経時後、温度25℃相対湿度60%の環境下に移して20分後の時点では、表側(視認側)表面と筐体の内部とでは温度や湿度の環境が異なることがあり、環境条件を移してから20分後の時点で、下記式(xiii)および(xiv)を満たすことが望ましい。
(xiii) Hf≧Hr
(xiv) Tf≦Tr
上式において、Hfは表側の積層体の最外層表面の相対湿度(%)、Hrは基板の裏側の積層体の最外層表面の相対湿度(%)、Tfは表側の積層体の最外層表面の温度(℃)、Trは基板の裏側の積層体の最外層表面の温度(℃)を表す。
【0178】
(液晶表示装置の種類)
本発明の透明フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の透明フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0179】
(TN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0180】
(STN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0181】
(VA型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0〜150nmとし、Rthレターデーション値を70〜400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20〜70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0182】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の透明フィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のレターデーションの値は、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。またRth値の絶対値|Rth|は、25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下に設定するのが好ましいため、本発明の透明フィルムが有利に用いられる。
【0183】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0184】
(反射型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
【0185】
(その他の液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0186】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の透明フィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の透明フィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の透明フィルムを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0187】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
(透明フィルムの作製)
本発明の透明フィルムの素材としてセルロースアシレートを用いた。
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。なお、セルロースアシレートとしてはアシル化度が異なる三種類(Ac:OH=2.86:0.14)、(Ac:OH=2.92:0.08)、(Ac:Pro:OH=1.9:0.8:0.3)を用いた(カッコ内Acはアセチル置換基、Proはプロピオニル置換基、OHは置換されていない水酸基をあらわし、比率はアシル化度の比率)。
【0188】
(セルロースアシレート溶液組成)
セルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0189】
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0190】
(マット剤溶液組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
【0191】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液を調製した。光学的異方性(Re、Rth)を低下する化合物および波長分散調整剤については下記表1に示すものを用いた。
【0192】
(添加剤溶液組成)
光学的異方性を低下する化合物 49.3質量部
波長分散調整剤 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
【0193】
(セルロースアシレート試料101〜105の作製)
上記セルロースアシレート溶液を94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤のセルロースアシレートに対する質量比はそれぞれ12%、1.2%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は80μmであった。
【0194】
(比較例)
上記実施例1で用いた光学的異方性を低下させる化合物および波長分散調整剤を用いずに、それ以外は実施例1と同様にして比較試料001を作製した。
同様にして、光学的異方性を低下させる化合物の変わりにセルロースアシレートに用いられる可塑剤であるTPP(トリフェニルフォスフェート)を用いる以外は実施例と同様にして比較試料002を作製した。
またフィルム作製の処方は同様だが、フィルムを搬送する際の機械方向にかかるテンションのみを強くかけた比較試料003を作製した。
【0195】
上記実施例1にて作製した本発明の試料および比較試料の評価結果を表1〜3に示した。これより、本発明の透明フィルムは、Re、Rth(表1)が小さく、引張弾性率、貯蔵弾性率、光弾性係数(表2)、および高湿度や高温での寸法変化率(表3)がいずれも、機械方向とそれに垂直な方向との縦横比がほぼ1であることが分かった。
【0196】
【表1】

【0197】
【表2】

【0198】
【表3】

【0199】
[実施例2](偏光板性能の評価)
実施例1で得た本発明の透明フィルムを偏光板加工し、以下のようにして液晶表示装置のパネルに実装したと同様の偏光板の評価を行った。
【0200】
(偏光板の作製)
本発明の透明フィルム試料101を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、透明フィルムの表面をケン化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のケン化した透明フィルム試料101を2枚用意して偏光膜を間にして貼り合わせ、両面が透明フィルム101によって保護された偏光板を得た。この際両側の透明フィルム試料101の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付け、偏光板101を作製した。同様にして透明フィルム試料102〜105および比較試料001〜003についても偏光板を作製し、以下これら偏光板を偏光板102〜105、001〜003という。偏光板101〜105はいずれも十分な偏光度を持っていた。
【0201】
(偏光板の耐久試験)
上記で作製した偏光板試料101〜105および比較試料からなる偏光板試料001〜003を20cm×30cmに切り出し、これを粘着剤を介してガラス板に固定して60℃90%RHの高湿度下に500時間置いた。これを常温常湿度条件に戻したのち、もう一枚の偏光板でクロスニコルとして、偏光板試料の額縁(サンプルの縁から1cmの場所)についての光漏れを検出した。結果を表4に示した。本発明の透明フィルムからなる偏光板101〜105は、比較試料からなる偏光板001〜003よりも光漏れが少なく、また色味変化が見られず優れていた。
【0202】
[実施例3](IPSモード液晶表示装置への透明フィルムの実装評価)
図1に示す構成のIPSモードの液晶表示装置を作製した。具体的には、一対の基板16及び18の間に液晶性分子17を封入して作製した液晶セルを、一対の偏光膜11a及び11bの間に配置した。液晶セルと下側偏光膜11bとの間に、本発明の透明フィルム19を配置し、液晶セルと上側偏光膜11aとの間に、第一光学補償フィルム15及び第二光学補償フィルム13を配置した。なお、偏光膜の透過軸12a、12bと、第一光学補償フィルムの遅相軸15aとの関係は、各々の実施例の説明中に記載する。また、図1中、各部材は便宜上、独立の部材として描かれているが、各部材は他の部材と一体化された後、例えば、透明フィルム19は保護フィルムとして偏光膜11bと一体化された後、装置中に組み込まれている場合もある。
【0203】
以下、各部材の作製方法について詳細に説明する。
(IPSモード液晶セルの作製)
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
【0204】
(下側偏光板の作製)
本実施例では透明フィルム19と下側偏光膜11bは一体化したものとした。すなわち、下側偏光板は実施例1の透明フィルム試料101〜105より作製した偏光板101〜105、比較例試料001〜002より作製した偏光板001〜002を用いた。
【0205】
(第二光学補償フィルム13の作製)
フジタックTD80UF(富士写真フイルム(株)製)を150℃で15%縦一軸延伸することにより光学補償フィルム13を作製した。このフィルムの光学特性は、Re=5nm、Rth=70nmであった。
【0206】
(第一光学補償フィルム15の作製)
上記で作製した第二光学補償フィルムの表面をケン化後、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60度の温風で60秒、さらに100度の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。
(配向膜塗布液の組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
テトラメチルアンモニウムフルオライド 0.3質量部
【0207】
【化33】

【0208】
次に、配向膜上に、下記のディスコティック液晶性化合物1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、下記のフッ素系ポリマー(空気界面側垂直配向剤)0.01gを3.9gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を、#5のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、125度の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、100度で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射しディスコティック液晶化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、第二光学補償フィルム上に、第一光学補償フィルムが形成された位相差膜2を製作した。
【0209】
【化34】

【0210】
上記作製した位相差膜2のReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した第二光学補償フィルムの寄与分を差し引くことによって、ディスコティック液晶位相差層(第一光学補償フィルム)のみの光学特性を算出したところ、Reが110nm、Rthが−55nm、液晶の平均傾斜角は89.9°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることが確認できた。なお遅相軸の方向は配向膜のラビング方向と平行であった。
【0211】
(上側偏光板の作製)
次に、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて上側偏光膜11aを作製した。これに、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、セルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をこの偏光膜の一方の表面に貼り付けた。その後、偏光膜11aの他の表面に、第二光学補償フィルム13が偏光膜11a側になるように、位相差膜2を貼り合わせて、光学補償層と一体化した上側偏光板を作製した。
【0212】
(液晶表示装置の作製)
さらに、第一光学補償フィルム側が液晶セル側になるように、上側偏光板に上記作製したIPSモードセルを貼り合わせた。ここで、第一光学補償フィルム15の遅相軸15a及びIPSモード液晶セルの配向膜のラビング方向は、上側偏光膜11aの透過軸12aと平行にした。次に、前記で作製した下側偏光板をその偏光膜11bの透過軸12bが、上側偏光膜11aの透過軸12aと直交するように貼り合わせ、液晶表示装置を作製した。
【0213】
(作製した液晶表示装置の漏れ光の測定)
このように作製した液晶表示装置において、左斜め方向60°から観察した際の漏れ光を測定した。結果は表4に示した。本発明の透明フィルムを用いた場合は比較例に対していずれも漏れ光が少なく、本発明の透明フィルムが液晶表示装置のコントラスト(光漏れが少ない)、色味表示の視野角特性に優れていることがわかった。
【0214】
[実施例4](光学補償フィルム性能:VA型液晶表示装置への実装)
本発明の透明フィルム試料を用いて、特開2003−315541号公報の実施例1に記載の方法に準じて光学補償フィルム試料を作製した。2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)から合成された、質量平均分子量(Mw)7万、△nが約0.04のポリイミドを、溶媒にシクロヘキサノンを用い25wt%に調製した溶液を、実施例1で作製した本発明の透明フィルム試料103(厚さ80μm)に塗布した。その後100℃で10分熱処理後、160℃で15%縦一軸延伸することにより厚さ6μmのポリイミドフィルムが本発明の透明フィルムに塗布された光学補償フィルム103を得た。この光学補償フィルム103の光学特性は、Re=72nm、Rth=220nm、配向軸のズレ角度は±0.3度以内で、nx>ny>nzの複屈折層を持つ光学補償フィルムであった。
実施例1で作製した他の本発明の透明フィルム試料101、102、104、105についても同様にして、光学補償フィルム101、102、104、105を得た。
【0215】
(比較例)
上記の透明フィルム試料103の代わりに、比較フィルム試料001(厚さ80μm)に塗布した以外は同様の操作により、厚さ6μmのポリイミドフィルムが比較フィルム試料001の透明フィルムに塗布された光学補償フィルム001を得た。この光学補償フィルム001の光学特性は、Re=75nm、Rth=280nmであった。
他の比較フィルム試料002、003についても同様にして、光学補償フィルム002、003を得た。
【0216】
(VA型液晶表示装置への実装評価)
上記実施例4および比較例で得られた光学補償フィルム101〜105、001〜003の、ポリイミドフィルムを塗布していない側をアルカリ鹸化処理し、延伸したポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させた偏光子とポリビニルアルコール系接着剤を用いて接着することにより、直接貼り合せた。この際光学補償フィルムのnx方向と偏光板の吸収軸が直交するように貼り合せた。これら光学補償フィルムが液晶セル側となるように粘着剤でVA液晶パネルの下側に貼り合わせた。なお、液晶セルの反対側(上側)には偏光板の吸収軸同士が直交するように市販偏光板のみを粘着剤を介してVA液晶パネルに貼り合せた。以上のようにして得られた液晶表示装置において、斜め方向から観察した際の漏れ光を測定した。コントラスト(光漏れが少ない)の視野角特性を測定したところ、実施例1で得られた本発明の透明フィルム試料101〜105より得られた光学補償フィルム101〜105を用いたものは比較試料001〜003から得た光学補償フィルム001〜003を用いたものよりも左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明の透明フィルムが、VA用の位相差フィルムとして用いる際にも優れたものであることが判った。結果は表4に示した。
なお、視野角特性の評価は以下のように行った。
○:左右上下のコントラストが優れる
△:光漏れが少しあり、コントラストがやや劣る
×:光漏れによりコントラストが劣る
【0217】
【表4】

【0218】
[実施例5](液晶表示装置の作製)
前記の透明フィルム試料001〜003、101〜105を、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、透明フィルムの表面を表面処理した。
【0219】
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥することにより、厚さ25μmの偏光子を得た。厚さ25μmの偏光子の延伸方向の引張弾性率は12.7×109N/m2で、延伸方向と垂直方向での引張弾性率は6.1×109N/m2であった。
厚さ25μmの偏光子の両面に、前記表面処理した透明フィルム試料001〜003、101〜105を保護膜として使用し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、表5に示す構成にて貼り合せてヨウ素系偏光板(表側の偏光板、裏側の偏光板)を作製した。
厚さ0.5mmのガラス基板を用いた26インチ(横長辺58cm、縦短辺35cm)サイズのIPS型液晶セルの表側および裏側に、アクリル系粘着剤を介して表5に示す構成にて偏光板と基板が接するように貼り合せて液晶パネルを作製し、この液晶パネルを筐体に組み込んで液晶表示装置を作製した(本発明例1〜6、比較例1)。この際使用した接着剤、粘着剤の引張弾性率は長辺方向、短辺方向の差がほとんどなく、また引張弾性率の値も他の部材に対して無視できる大きさであることを事前に確認した。
【0220】
ここで、本発明例1〜4、6では、表側の積層体を構成する偏光板の偏光子吸収軸、表側の積層体を構成する保護膜の機械搬送方向、およびパネルの短辺方向とが平行であり、裏側の積層体を構成する偏光板の偏光子吸収軸と裏側の積層体を構成する保護膜の機械搬送方向とが平行で、表側の積層体を構成する偏光板の吸収軸と裏側の積層体を構成する偏光板の吸収軸が直交するように各部材を配置した。この配置を表5では「逆」配置と表す。
また本発明例5および比較例の液晶表示装置では、表側の積層体を構成する偏光板の偏光子吸収軸、表側の積層体を構成する保護膜の機械搬送方向、およびパネルの長辺方向とが平行であり、裏側の積層体を構成する偏光板の偏光子吸収軸と裏側の積層体を構成する保護膜の機械搬送方向とが平行で、表側の積層体を構成する偏光板の吸収軸と裏側の積層体を構成する偏光板の吸収軸が直交するように各部材を配置した。この配置を表5では「順」配置と表す。
【0221】
(3)液晶表示装置の湿熱処理による評価
作成した液晶表示装置を温度60℃、相対湿度90%の環境下で48時間放置した。処理後、そのまま温度25℃、相対湿度60%の環境に移した。電源を投入し、黒表示状態を目視で観察した。次に、液晶表示装置からパネルのみを取り出して、温度25℃、相対湿度60%の環境下に移してから20分の時点での反り量を測定した。反り量wは長辺方向の長さLに対しての値w/L(mm/mm)として表5に記した。
【0222】
【表5】

【0223】
表5より、各層の引張弾性率と断面積の積で表される物性値の総和が、表側積層体よりも裏側積層体の方が大きい液晶表示装置(本発明例1〜5)では、湿熱処理に起因するパネルの反りが抑制できていることがわかる。これらの液晶表示装置ではいずれも反り量が小さく、黒表示状態において、画面の四隅がムラ状に光漏れする「コーナームラ」現象による表示の悪化は見られなかった。片側積層体にのみ本発明の透明フィルムが用いられている本発明例2では、パネルの反りは抑制されているが、表裏両側の積層体に本発明の透明フィルムが用いられている本発明1、3〜6と比較して、若干の斜め光漏れがみられた。
また、各層の引張弾性率と断面積の積で表される物性値の総和が、裏側積層体よりも表側積層体の方が大きい液晶表示装置では、表裏両側の積層体に本発明の透明フィルムを用いた本発明例6においても、表裏両側の積層体に比較例の透明フィルムが用いられた比較例1と同様に、反り量w/Lが0.01より大きくなり、若干の反りによるコーナームラが生じ、四隅に若干の光もれが生じた。なお、比較例1では、表裏両側の積層体に比較例の透明フィルムが用いられているため、コーナームラに加え、斜め方向の光漏れが明らかに認められた。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】本発明の透明フィルム19を配置したIPSモードの液晶表示装置である。
【符号の説明】
【0225】
11a 上側偏光膜
11b 下側偏光膜
12a 上側偏光膜の透過軸
12b 下側偏光膜の透過軸
13 第二光学補償フィルム
15 第一光学補償フィルム
15a 第一光学補償フィルムの遅相軸
16 基板
17 液晶性分子
18 基板
16、17、18 液晶セル
19 本発明の透明フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械方向の引張弾性率が2.4×109〜4.9×109N/m2であり、機械方向に垂直な方向の引張弾性率が2.3×109〜4.7×109N/m2であり、かつ、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.80〜1.36であり、式(i)(ii)で表されるフィルム面内のレターデーション値Re(nm)およびフィルム膜厚方向のレターデーション値Rth(nm)が式(iii)(iv)をみたすことを特徴とする透明フィルム。
(i) Re=(nx−ny)×d
(ii) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(iii) 0≦Re≦20
(iv) |Rth|≦25
【請求項2】
機械方向の貯蔵弾性率および機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率がともに1.5×109〜7.8×109N/m2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.80〜1.20であることを特徴とする請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項3】
機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに5.0×10-112/N以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.80〜1.20であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項4】
60℃90%RH24時間後での寸法変化率および90℃dry24時間後での寸法変化率がいずれも機械方向、機械方向に垂直な方向ともに±0.5%以下であり、かつ、いずれの場合も(機械方向の寸法変化率)/(機械方向に垂直な方向の寸法変化率)の比が0.3〜2.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項5】
ソルベントキャスト法により製造されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項6】
セルロースアシレートからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項7】
フィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(v)、(vi)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明フィルム。
(v) (Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(vi) 0.01≦A≦30
ここで、
Rth(A):Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)
Rth(0):Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)
A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)
である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルムに、下記式(vii)をみたす光学異方性層を設けたことを特徴とする光学補償フィルム。
(vii) Re=0〜200(nm)かつ|Rth|=0〜300(nm)
【請求項9】
前記光学異方性層がディスコティック液晶性化合物を用いて形成されたことを特徴とする請求項8に記載の光学補償フィルム。
【請求項10】
前記光学異方性層が棒状液晶性化合物を用いて形成されたことを特徴とする請求項8または9に記載の光学補償フィルム。
【請求項11】
前記光学異方性層が複屈折を持つポリマーフィルムからなることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の光学補償フィルム。
【請求項12】
前記光学異方性層を形成する前記ポリマーフィルムが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を含有することを特徴とする請求項11に記載の光学補償フィルム。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム、又は請求項8〜12のいずれかに記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いて、偏光子の保護フィルムとした偏光板。
【請求項14】
表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けた請求項13に記載の偏光板。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム、請求項8〜12のいずれかに記載の光学補償フィルム、請求項13または14に記載の偏光板、のいずれかを用いた液晶表示装置。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム、請求項8〜12のいずれかに記載の光学補償フィルム、請求項13または14に記載の偏光板、のいずれかを用いたVAまたはIPS液晶表示装置。
【請求項17】
ガラスまたは樹脂からなる基板で液晶を封入した液晶セル、偏光板を含む液晶セルの表側に設けられた積層体、および偏光板を含む液晶セルの裏側に設けられた積層体を有するパネルを備えており、表側を視認側とする液晶表示装置であって、表側の積層体および裏側の積層体の少なくとも一方に請求項13または14に記載の偏光板を含有し、下記式(viii)を満たすことを特徴とする液晶表示装置。
(viii) Σi(Efi×Sfi)/Σj(Erj×Srj)≦0.99
[上式において、Efiは表側の積層体を構成するi番目の層の長辺方向の引張弾性率を表し、Sfiは表側の積層体を構成するi番目の層の短辺を一辺とする断面積を表し、Erjは基板の裏側の積層体を構成するj番目の層の長辺方向の引張弾性率を表し、Srjは基板の裏側の積層体を構成するj番目の層の短辺を一辺とする断面積を表す。]
【請求項18】
液晶表示装置の表側の表面が開放されており、液晶表示装置の裏面が筐体で閉じられていることを特徴とする請求項17に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
前記パネルが長方形または正方形であり、長辺が10cm〜500cmであることを特徴とする請求項17または18に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
温度60℃、相対湿度90%にて48時間経時後、温度25℃相対湿度60%の環境下に移して20分後の時点で、前記パネルの反り量w(mm)が、前記パネルの長辺方向の長さL(mm)に対して、w/L≦0.01を満たすことを特徴とする、請求項17〜19のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−18245(P2006−18245A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159242(P2005−159242)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】