説明

光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物及び立体造形物

【課題】剛性、耐衝撃性、靭性等のすべてに優れた硬化物(立体造形物)を与える光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、組成物の全量を100質量%として、(A)2個以上のビスフェノール構造及び1個以上の水酸基を有するカチオン重合性化合物3〜40質量%、(B)(A)成分以外のカチオン重合性化合物20〜85質量%、(C)カチオン性光重合開始剤0.1〜10質量%、(D)ラジカル重合性化合物3〜45質量%、及び(E)ラジカル性光重合開始剤0.01〜10質量%、を含有する。本発明の組成物はさらに、(F)平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子や、(G)ポリエーテルポリオール、を含有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性の樹脂組成物に選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより、当該硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体造形物を形成する光学的立体造形法が知られている(特許文献1〜4)。この光学的立体造形法の代表的な例を説明すると、容器内に収容された光硬化性樹脂組成物の液面に、紫外線レーザーなどの光を選択的に照射することにより、所定のパターンを有する硬化樹脂層を形成する。次いで、この硬化樹脂層の上に、一層分の光硬化性樹脂組成物を供給し、その液面に選択的に光を照射することにより、先行して形成された硬化樹脂層上にこれと連続するよう新しい硬化樹脂層を一体的に積層形成する。そして、光が照射されるパターンを変化させながらあるいは変化させずに上記の工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体造形物が形成される。この光学的立体造形法は、目的とする立体造形物の形状が複雑なものであっても、容易にしかも短時間で得ることができるという利点を有する。そのため、光学的立体造形法は、自動車や家電産業等の新製品開発における試作過程において極めて有用であり、開発期間の短縮とコスト削減に不可欠な手段になりつつある。
【0003】
従来、光学的立体造形法に使用される光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物としては、下記〔イ〕〜〔ハ〕のような樹脂組成物が提案されている。
〔イ〕ウレタン(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、チオールおよびエン化合物、感光性ポリイミドなどのラジカル重合性有機化合物を含有する樹脂組成物(特許文献5〜7)。
〔ロ〕エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などのカチオン重合性化合物を含有する樹脂組成物(特許文献8)。
〔ハ〕ラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性化合物とを含有する樹脂組成物(特許文献9〜14)。
【0004】
このような立体造形法により得られる立体造形物は、これまでデザインを検討するためのモデル、機械部品の試作品などの形状確認モデルとして多用されてきた。しかしながら、近年の市場動向として、実装材料に使用される熱可塑性樹脂等の汎用樹脂と同等の物性を強く求める傾向がある。これは、放射線硬化性樹脂により得られた立体形状物を形状確認のみならず、組み付け試験や落下試験、耐熱試験、耐久試験等の実装材料と同じ評価試験に用いることで、製品の開発期間とコストダウンを狙ったものである。このような評価試験に適用するためには、硬化した樹脂が実装材料と同じ特性を有していなければならない。
特に、実装材料がABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックである場合、プラスチック部品の試作品として用いる立体造形物には、設計図に忠実な微細加工が高い精度で施されていることに加えて、ABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックに近い、あるいはこれと同等の優れた機械的特性(例えば、剛性、耐衝撃性、靭性のすべてに優れていること)等の特性を有していることが要求される。
【0005】
ところが、特許文献5〜14の技術では、高い造形精度に加えて、剛性、耐衝撃性、靭性等のすべてに優れた組成物を得ることは困難である。
ここで、立体造形物の機械的特性を改善する目的で、エラストマー等からなる粒子を配合する技術が知られている(特許文献15)。しかし、ABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックで製造されるプラスチック部品の試作品に用いるには、未だ、剛性、耐衝撃性、靭性等の物性バランスに改善の余地がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−247515号公報
【特許文献2】特開昭62−35966号公報
【特許文献3】特開昭62−101408号公報
【特許文献4】特開平5−24119号公報参照
【特許文献5】特開平1−204915号公報
【特許文献6】特開平2−208305号公報
【特許文献7】特開平3−160013号公報
【特許文献8】特開平1−213304号公報
【特許文献9】特開平2−28261号公報
【特許文献10】特開平2−75618号公報
【特許文献11】特開平6−228413号公報
【特許文献12】特開平11−310626号公報
【特許文献13】特開平11−228610号公報
【特許文献14】特開平11−240939号公報
【特許文献15】特開2003−192887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、剛性、耐衝撃性、靭性等のすべてに優れた硬化物(立体造形物)を与える光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、分子中に2個以上のビスフェノール構造及び1個以上の水酸基を有するカチオン重合性化合物等からなる複数の成分を特定の配合割合で含む光硬化性樹脂組成物によれば、上記物性を備えた硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] 組成物の全量を100質量%として、
(A)2個以上のビスフェノール構造及び1個以上の水酸基を有するカチオン重合性化合物 3〜40質量%、
(B)(A)成分以外のカチオン重合性化合物 20〜85質量%、
(C)カチオン性光重合開始剤 0.1〜10質量%、
(D)ラジカル重合性化合物 3〜45質量%、及び
(E)ラジカル性光重合開始剤 0.01〜10質量%、
を含有することを特徴とする光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
[2] 前記(A)成分が、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物である上記[1]に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、−C(CH−、−CH−、−SO−のいずれかであり、kは、1〜4の整数であり、nは、1〜10の整数である。)
[3] 前記(B)成分が、オキセタン構造を有する化合物を含有する上記[1]又は[2]に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
[4] 前記(B)成分が、ビスフェノール構造を有する化合物を含有する上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
[5] さらに(F)平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子を含有する上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、機械的特性に優れた硬化物(立体造形物)を与えることができる。具体的には、本発明の樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物は、大きな剛性(高いヤング率、曲げ弾性率等)と、優れた耐衝撃性(大きなアイゾット衝撃値等)と、優れた靭性(例えば、フィルムを複数回折り曲げたときの破断までの折り曲げ回数が多いこと)等を兼ね備えている。
本発明の組成物は、ABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックに近いかまたは同等の機械的特性を有する硬化物を与えることができるため、これらエンジニアリングプラスチックで製造されるプラスチック部品の試作品を作製し評価するための材料として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物は、(A)〜(E)成分と、必要に応じて添加される他の成分とを含む。
以下、各成分ごとに詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の組成物に用いられる(A)成分は、2個以上のビスフェノール構造及び1個以上の水酸基を有するカチオン重合性化合物である。(A)成分を特定の配合割合で用いることによって、組成物の硬化物の機械的特性に関し、剛性、耐衝撃性、靭性等の物性バランスを良好にすることができる。
ここで、ビスフェノール構造とは、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールSに由来する2価の基をいい、ビスフェノールAに由来する2価の基であることが好ましい。(A)成分の分子中に含まれるビスフェノール構造の数は、2個以上であることが必要であり、2〜11個が好ましく、2〜5個がさらに好ましく、2〜4個が特に好ましい。ビスフェノール構造の数が11個を超えると、組成物の粘度が過大となるため好ましくない。一方、ビスフェノール構造の数が2個未満であると、硬化物の機械的特性の物性バランスの向上を図り難くなるため、好ましくない。分子中に2個以上のビスフェノール構造を有することにより、硬化物中で芳香環の相互作用が期待され、硬化物(立体造形物)の機械的特性の物性バランスが改善される。
【0012】
さらに、(A)成分は水酸基を有することが必要である。水酸基を有することにより、硬化物中で水素結合による相互作用が期待され、立体造形物の機械的特性の物性バランスが改善される。(A)成分が有する水酸基の数は、1個以上であればよく、特に限定されない。
【0013】
(A)成分の好適な例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【化2】

(式中、Rは、−C(CH−、−CH−、−SO−のいずれかであり、kは、1〜4の整数であり、nは、1〜10の整数である。)
【0014】
一般式(1)中、Rは−C(CH−、−CH−、−SO−のいずれかであり、好ましくは−C(CH−である。kは、1〜4の整数であり、好ましくは1又は2である。nは、1〜10の整数であり、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは2〜4の整数である。
一般式(1)で表される化合物の市販品としては、エピコート834、1001、1002、1003、1004、1055、1003F、1004F、1005F(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。
(A)成分のエポキシ当量は、例えば、230〜1500g/eqであり、好ましくは230〜900g/eq、より好ましくは230〜500g/eqである。
【0015】
本発明の組成物中、(A)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、3〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%である。(A)成分の配合割合が3質量%未満または40質量%を超えると、立体造形物の機械的特性の物性バランスの改善が不十分となり、好ましくない。
【0016】
[(B)成分]
本発明の組成物に用いられる(B)成分は、(A)成分以外のカチオン重合性化合物である。(B)成分は、カチオン性光重合開始剤の存在下で光照射することにより重合反応や架橋反応を起こす有機化合物であり、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物などを挙げることができる。
【0017】
(B)成分として使用することのできるエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエンなどを例示することができる。
【0018】
(B)成分として使用することのできる他のカチオン重合性化合物としては、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、ビス(3−エチル−3−メチルオキシ)ブタンなどのオキセタン類;テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランなどのオキソラン類;トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール類;γ−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン類;エチレンスルフィド、1,2−プロピレンスルフィド、チオエピクロロヒドリンなどのチイラン類;3,3−ジメチルチエタンなどのチエタン類;エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル類;ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物類;上記の各化合物の誘導体などを例示することができる。
【0019】
これらのカチオン重合性化合物のうち、本発明の組成物からなる硬化物の機械的特性の物性バランスの観点から、エポキシ化合物、オキセタン化合物が好ましい。
エポキシ化合物の中でも、1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物や、ビスフェノール構造を有するエポキシ化合物が特に好ましい。
(B)成分中、1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物およびオキセタン化合物の含有率を50質量%以上とすると、得られる樹脂組成物のカチオン重合反応速度(硬化速度)の向上、立体形状物の経時的変形の抑制等を達成することができる。
【0020】
具体的には、上記カチオン重合性化合物のうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等が好ましい。
【0021】
(B)成分として好適に使用できるカチオン重合性化合物の市販品としてはUVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、サイクロマーM100、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業社製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508、エピコート834、1001、1002、1003、1004、1055、1003F、1004F、1005F(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、KRM−2100、KRM−2110、KRM−2199、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2200、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業社製)、Rapi−Cure DVE−3、CHVE、PEPC(以上、ISP社製)、VECTOMER 2010、2020、4010、4020(以上、アライドシグナル社製)などを挙げることができる。上記のカチオン重合性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて(B)成分を構成することができる。
【0022】
本発明の組成物中、(B)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、20〜85質量%、好ましくは25〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
(B)成分の配合割合が20質量%未満であると、立体造形物の機械的特性の物性バランスが悪くなる(特に剛性が小さくなる)ため、好ましくない。一方、(B)成分の配合割合が85質量%を超えると、配合される他の成分、特に(A)成分の配合割合が小さくなり、立体造形物の機械的特性の物性バランスが悪くなるため、好ましくない。
【0023】
[(C)成分]
本発明の組成物に用いられる(C)成分は、カチオン性光重合開始剤である。カチオン性光重合開始剤は、光などのエネルギー線を受けることによって、前記(A)成分及び(B)成分のカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物である。ここで、光などのエネルギー線とは可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線、γ線などを意味する。特に好ましい(C)成分の化合物として、下記一般式(2)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。
[RW]+m[MXn+m−m (2)
(式中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Clまたは−N=Nであり、R、R、RおよびRは同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdは各々0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数+mに等しい。Mはハロゲン化物錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coなどである。Xは、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。)
【0024】
一般式(2)で表されるオニウム塩は、光を受けることによりルイス酸を放出する化合物である。一般式(2)中におけるアニオン[MXn+m]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)などが挙げられる。
【0025】
また、一般式[MX(OH)]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオンなどの他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0026】
このようなオニウム塩のうち、(C)成分として特に有効なオニウム塩は芳香族オニウム塩である。中でも、特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報などに記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報などに記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報などに記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報などに記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報などに記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩などが好ましい。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤なども挙げることができる。
【0027】
(C)成分として好適に使用できるカチオン性光重合開始剤の市販品としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−172(以上、旭電化工業社製)、Irgacure 261(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達社製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学社製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬社製)などを挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−172、CD−1012、MPI−103は、これらを含有してなる樹脂組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。上記のカチオン性光重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて(C)成分を構成することができる。
【0028】
本発明の組成物中、(C)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜10質量%である。(C)成分の配合割合が0.1質量%未満であると、得られる樹脂組成物の光硬化性が低下し、十分な機械的強度を有する立体造形物を造形することが困難となる。一方、(C)成分の配合割合が10質量%を超えると、得られる樹脂組成物を光学的立体造形法に供する場合に、適当な光透過性を得ることができず、硬化深さの制御が困難となり、得られる立体造形物の造形精度が低下する傾向がある。
【0029】
[(D)成分]
本発明の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物に用いられる(D)成分は、ラジカル重合性化合物である。ラジカル重合性化合物とは、エチレン性不飽和結合(C=C)を分子中に有する化合物であり、1分子中に1個のエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー、および1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーを挙げることができる。
【0030】
(D)成分として好適に使用できる単官能モノマーとしては、例えばアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、および下記一般式(3)〜(5)で表される化合物を例示することができる。
【0031】
【化3】

(式(3)〜式(5)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、Rは炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示す。rは0〜12、好ましくは1〜8の整数であり、qは1〜8、好ましくは1〜4の整数である。)
【0032】
これらの単官能モノマーのうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらの単官能モノマーの市販品としては、例えばアロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成社製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬社製)、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業社製)などを挙げることができる。
【0033】
(D)成分として好適に使用できる多官能モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシメチル)ヒドロキシメチルイソシアヌレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス((メタ)アクリロキシメチル)イソシアヌレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
中でも、イソシアヌレート化合物が好ましく用いられる。
【0034】
これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えばSA1002(以上、三菱化学社製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業社製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬社製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成社製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学社製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬社製)、ASF−400(以上、新日鐵化学社製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子社製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業社製)などを挙げることができる。
【0035】
上記の単官能モノマーおよび多官能モノマーは、各々1種単独でまたは2種以上組み合わせるか、あるいは単官能モノマーの少なくとも1種と多官能モノマーの少なくとも1種とを組み合わせて(D)成分を構成することができるが、(D)成分中には3官能以上、即ち1分子中に3個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーが、(D)成分全体を100質量%として、60質量%以上の割合で含有されていることが好ましい。この3官能以上の多官能モノマーのさらに好ましい含有割合は70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。3官能以上の多官能モノマーの含有割合が60質量%未満であると、得られる樹脂組成物の光硬化性が低下すると共に、造形される立体造形物の経時的変形が生じやすくなることがある。
かかる3官能以上の多官能モノマーとしては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができる。
【0036】
本発明の組成物中、(D)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、3〜45質量%、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは7〜25質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。(D)成分の配合割合が3質量%未満であると、組成物の光硬化性が低下し、十分な機械的強度を有する立体造形物を造形することが困難となる。一方、(D)成分の配合割合が45質量%を超えると、組成物が光硬化により収縮しやすいものとなり、また、得られる立体造形物について、耐熱性、耐湿性などが低下する傾向がある。
【0037】
[(E)成分]
本発明の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物に用いられる(E)成分は、ラジカル性光重合開始剤である。ラジカル性光重合開始剤は、光などのエネルギー線を受けることにより分解し、発生するラジカルによって(D)成分(ラジカル重合性化合物)のラジカル重合反応を開始させる化合物である。
【0038】
(E)成分(ラジカル性光重合開始剤)の具体例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、およびBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンその他の色素増感剤との組み合わせなどを挙げることができる。これらのうち、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどが特に好ましい。上記のラジカル性光重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて(E)成分を構成することができる。
【0039】
本発明の組成物中、(E)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。(E)成分の配合割合が0.01質量%未満であると、組成物のラジカル重合反応速度(硬化速度)が低くなって造形に時間を要したり、解像度が低下したりする傾向がある。一方、(E)成分の配合割合が10質量%を超えると、過剰量の重合開始剤が組成物の硬化特性を低下させたり、立体造形物の耐湿性や耐熱性に悪影響を及ぼすことがある。
【0040】
本発明の組成物には、さらに光増感剤(重合促進剤)、反応性希釈剤などを含有させることができる。光増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン系化合物;チオキサントン、チオキサントンの誘導体、アントラキノン、アントラキノンの誘導体、アントラセン、アントラセンの誘導体、ペリレン、ペリレンの誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが、また反応性希釈剤としては、ビニルエーテル類、ビニルスルフィド類、ビニルウレタン類、ウレタンアクリレート類、ビニルウレア類などが挙げられる。
【0041】
[(F)成分]
本発明の組成物は、さらに、(F)成分として平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子を含むことが好ましい。(F)成分を含むことにより、硬化物の靭性及び耐衝撃性を向上させることができる。
(F)成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などをベース成分とするエラストマー粒子を挙げることができる。
【0042】
またこれらエラストマー粒子を、メチル(メタ)アクリレートポリマー、メチル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等で被覆したコア/シェル型の粒子を挙げることができる。コアの半径とシェルの厚みの比は、通常、1/2〜1,000/1、好ましくは1/1〜200/1である。例えば、コア半径が350nm、シェルの厚みが10nmの場合、該比は35/1である。
コア/シェル型の粒子の場合は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体等を部分架橋したコアを、メチル(メタ)アクリレートポリマー、メチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体等で被覆してなるエラストマー粒子が特に好ましい。
【0043】
さらに、(F)成分のエラストマー粒子は、粒子内部に架橋構造を有してもよく、通常用いられている手段によって架橋することができる。この場合使用される架橋剤としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。
【0044】
これらのエラストマー粒子は通常用いられている方法で作製することができ、例えば、乳化重合法が挙げられる。この乳化重合法としては、例えば単量体成分を全量一括して仕込み重合する方法、単量体成分の一部を重合した後、残部を連続的又は断続的に添加する方法、単量体成分を重合の始めから連続的に添加する方法、あるいはシード粒子を用いる方法等を採用することができる。
【0045】
このようにして得られる(F)エラストマー粒子の平均粒子径は10nm〜700nmである。エラストマー粒子の平均粒子径が10nm未満であると、得られる立体形状物の耐衝撃性や破壊靭性が低下したり、樹脂液の粘度が上昇し、立体形状物の生産性や造形精度に影響を及ぼすことがあるため、好ましくない。一方、エラストマー粒子の平均粒子径が700nmを超えると、十分に表面平滑な立体形状物が得られなかったり、造形精度が低下する。上記のようなコア/シェル型エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0046】
本発明の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物中、(F)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。(F)成分の配合割合を1質量%以上にすれば、立体造形物の靭性及び耐衝撃性の向上を期待することができる。一方、(F)成分の配合割合が35質量%を超えると、粘度が高くなり、その結果、造形時に気泡が発生したり、立体形状物の造形精度が低下する傾向があるため、好ましくない。
【0047】
[(G)成分]
本発明の組成物は、さらに、(G)成分として、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールを配合することにより、組成物の光硬化性の向上や、光立体造形物の形状安定性(経時的変形の抑制)及び物性安定性(機械的特性の経時的変化の抑制)の向上の効果を得ることができる。
(G)成分として使用されるポリエーテルポリオールは、好ましくは1分子中に3個以上、さらに好ましくは1分子中に3〜6個の水酸基を有するものである。1分子中に有する水酸基の数が3個未満のポリエーテルポリオール(ポリエーテルジオール)を使用すると、光硬化性の向上効果が十分ではなく、また、得られる立体造形物の剛性(弾性率)が低下する傾向がある。一方、1分子中に6個を超えるポリエーテルポリオールを用いると、得られる立体造形物の伸びが低下する傾向が見られるとともに耐湿性に問題を生じる傾向がある。
【0048】
かかる(G)成分としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、クオドロールなどの3価以上の多価アルコールを、エチレンオキシド(以下、EOという。)、プロピレンオキシド(以下、POという。)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテル化合物で変性することにより得られるポリエーテルポリオールを挙げることができ、具体的には、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、テトラヒドロフラン変性トリメチロールプロパン、EO変性グリセリン、PO変性グリセリン、テトラヒドロフラン変性グリセリン、EO変性ペンタエリスリトール、PO変性ペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン変性ペンタエリスリトール、EO変性ソルビトール、PO変性ソルビトール、EO変性スクロース、PO変性スクロース、EO変性クオドールなどを例示することができ、これらのうち、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、PO変性グリセリン、PO変性ソルビトールが好ましい。
【0049】
(G)成分として使用するポリエーテルポリオールの分子量は、100〜2,000であることが好ましく、更に好ましくは160〜1,000である。分子量が100未満のポリエーテルポリオールを(G)成分として使用すると、得られる樹脂組成物によっては、形状安定性および物性安定性を有する立体造形物を得ることが困難となることがある。一方、分子量が2,000を超えるポリエーテルポリオールを(G)成分として使用すると、得られる樹脂組成物の粘度が過大となり、光学的立体造形により得られる立体造形物の弾性率が低下する恐れがある。
【0050】
(G)成分として使用できるポリエーテルポリオールの市販品としては、サンニックスTP−400、サンニックスGP−600、サンニックスGP−1000、サンニックスSP−750、サンニックスGP−250、サンニックスGP−400、サンニックスGP−600(以上、三洋化成社製)、TMP−3Glycol、PNT−4 Glycol、EDA−P−4、EDA−P−8(以上、日本乳化剤社製)、G−300、G−400、G−700、T−400、EDP−450、SP−600、SC−800(以上、旭電化工業社製)などを挙げることができる。上記のポリエーテルポリオールは、1種単独で、または2種以上組み合わせて(G)成分を構成することができる。
【0051】
本発明の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物中、(G)成分の配合割合は、組成物全量を100質量%として、好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。(G)成分の配合割合が5質量%以上であると、組成物の光硬化性の向上効果を十分に図ることができ、また、形状安定性及び物性安定性に優れた立体造形物を確実に得ることができる。一方、(G)成分の配合割合が35質量%を超えると、樹脂組成物の光硬化性が低下し、得られる立体造形物の剛性(弾性率)が低下する傾向がある。
【0052】
[その他]
本発明の組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料などを挙げることができる。
本発明の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分、及び必要に応じて配合される他の成分を均一に混合することによって、液状物として得ることができる。このようにして得られる本発明の液状組成物の粘度(25℃)は、50〜2,000cpsであることが好ましく、更に好ましくは70〜1,500cpsである。
【0053】
以上のようにして得られる本発明の組成物は、光学的立体造形法における光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物として好適に使用される。すなわち、本発明の組成物に対して、可視光、紫外光、赤外光等の光を選択的に照射して硬化に必要なエネルギーを供給する光学的立体造形法により、所望の形状の立体造形物を製造することができる。
【0054】
次に、本発明の立体造形物について説明する。本発明の立体造形物は、上記の光硬化性液状組成物の硬化物の積層体からなる。
この積層体の各層は、光硬化性液状組成物の液面に光を照射することにより得られる。尚、液面は、リコーター等で均すことができる。このとき、光を選択的に照射すると、所望のパターンの断面を有する硬化物(断面硬化層)を得ることができる。
本発明の立体造形物の製造方法は、光硬化性液状組成物に光を照射して、該組成物の硬化物(断面硬化層)を形成し、この硬化物(断面硬化層)の上に、液状組成物を再度供給し、光を照射して、液状組成物の硬化物(断面硬化層)をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化物(断面硬化層)を積層し一体化してなる立体造形物を得るものである。
【0055】
光硬化性液状組成物に光を選択的に照射する手段としては、特に制限されるものではなく、種々の手段を採用することができる。例えば、(a)レーザー光、又はレンズ、ミラー等を用いて得られた収束光等を走査させながら組成物に照射する手段、(b)所定のパターンの光透過部を有するマスクを用い、このマスクを介して非収束光を組成物に照射する手段、(c)多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して、光を組成物に照射する手段、(d)一定の領域毎に一括露光を繰り返し実行する手段、等を採用することができる。
また、上記(b)のマスクを用いる手段においては、マスクとして、液晶表示装置と同様の原理により、所定のパターンに従って、光透過領域と光不透過領域とよりなるマスク像を電気光学的に形成するものを用いることもできる。
目的とする立体造形物が、微細な部分を有するもの、又は高い寸法精度が要求されるものである場合には、液状組成物に選択的に光を照射する手段として、スポット径の小さいレーザー光を走査する手段を採用することが好ましい。
なお、容器内に液状組成物が収容されている場合、光の照射面(例えば、収束光の走査平面)は、組成物の液面、透光性容器の器壁との接触面の何れであってもよい。液状組成物の液面又は器壁との接触面を光の照射面とする場合には、容器の外部から直接又は器壁を介して光を照射することができる。
【0056】
本発明の立体造形物は、上述したように、光積層造形法等の光学的立体造形法により製造することができる。光学的立体造形法においては、通常、液状組成物の特定部分を硬化させた後、光の照射位置(照射面)を、既硬化部分から未硬化部分に連続的に又は段階的に移動させることにより、硬化部分を積層させて所望の立体形状とする。ここで、照射位置の移動は、種々の方法によって行うことができ、例えば、光源、組成物の収容容器、組成物の既硬化部分の何れかを移動させたり、収容容器に組成物を追加供給したりする等の方法が挙げられる。
【0057】
本発明の光学的立体造形法の代表的な例を、図1及び図2を用いて説明する。図1は、光積層造形法の一例を示す図であり、図2は、マイクロ光造形法のシステムの一例を示す図である。
[光積層造形法]
光積層造形法により造形される立体造形物の大きさは、通常、数mmから数m、典型的には、数cmから数十cmのスケールである。
図1中、(a)に示すように、光硬化性液状組成物1を収容した容器2内に、昇降自在に設けられた支持ステージ3を、組成物1の液面4から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ3上に、組成物1を供給して、組成物1の薄層を形成する。次いで、この薄層に対して、マスク5を介して選択的に光8を照射し、組成物1の硬化物(硬化樹脂層)6を形成する。
次に、図1中の(b)に示すように、支持ステージ3を微小量降下(沈降)させて、この硬化物6の上に、組成物1を供給して、組成物の薄層を再度形成する。次いで、この薄層に対して、マスク5を介して選択的に光8を照射し、硬化物6の上に、これと連続して一体的に積層するように新しい硬化物7をさらに形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら又は変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化物が一体的に積層されてなる立体造形物が造形される。
【0058】
このようにして得られる立体造形物は、収容容器から取り出し、その表面に残存する未反応の組成物を除去した後、必要に応じて洗浄する。ここで、洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤;低粘度の熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。
【0059】
[マイクロ光造形法]
マイクロ光造形法により造形される立体造形物の大きさは、通常、数μm〜数cm、典型的には、数十μm〜数mmのスケールである。
本発明の液状組成物は、光積層造形法を用いる場合よりも微小な大きさの立体造形物を作製しうるマイクロ光造形法の材料として好適に用いられる。
マイクロ光造形法において、光の照射は、光線を走査して硬化させる必要がある部分に対してのみ行うのではなく、一定の領域(投影領域)毎に一括露光を繰り返すことにより行われる。このような一括露光は、例えば、ディジタルミラーデバイス(DMD)を用いて行われる。
【0060】
図2中、光硬化造形装置(以下、光造形装置ともいう。)100は、光源11、ディジタルミラーデバイス(DMD)12、レンズ13、造形テーブル14、ディスペンサ15、リコータ16、制御部17、記憶部18を備えている。
光源11は、レーザ光線を発生させるための手段である。光源11には、例えば、405nmのレーザ光を発生させるレーザダイオード(LD)や紫外線(UV)ランプが用いられる。
ディジタルミラーデバイス(DMD)12は、テキサス・インスツルメンツ社によって開発されたデバイスであり、CMOS半導体上に独立して動くマイクロミラーが数十万〜数百万個、例えば、48万〜131万個敷き詰められている。かかるマイクロミラーは、静電界作用によって対角線を軸に約±10度、例えば、±12度程度傾けることが可能である。マイクロミラーは、各マイクロミラーのピッチの1辺の長さが約10μm、例えば、13.68μmの四角形の形状を有している。隣接するマイクロミラーの間隔は、例えば1μmである。DMD2の全体は、40.8×31.8mmの四角形状(このうち、ミラー部は、14.0×10.5mmの四角形状を有する。)を有し、1辺の長さが13.68μmのマイクロミラー786,432個により構成されている。
DMD12は、光源11から出射されたレーザ光線を個々のマイクロミラーによって反射させ、制御部17によって所定の角度に制御されたマイクロミラーによって反射されたレーザ光のみを、集光レンズ13を介して造形テーブル14上の液状組成物層19に照射する。
【0061】
レンズ13は、DMD12によって反射されたレーザ光線を液状組成物層19上に導き、投影領域を形成する。レンズ13は、凸レンズを用いた集光レンズであってもよいし、凹レンズを用いてもよい。凹レンズを用いると、DMDの実サイズよりも大きな投影領域を得ることができる。レンズ13は、集光レンズであって、入射光を約15倍縮小し、液状組成物層19上に集光している。
造形テーブル14は、液状組成物層19を硬化させてなる硬化層を順次堆積させて載置するための平板状の台である。造形テーブル14は、図示しない駆動機構、即ち移動機構によって、水平移動及び垂直移動が可能である。この駆動機構により、所望の範囲に亘って光造形を行なうことができる。
ディスペンサ15は、本発明の光硬化性液状組成物20を収容し、予め定められた量の液状組成物20を造形テーブル上の所定位置に供給するための手段である。
リコータ16は、液状組成物20を均一に塗布して、液状組成物層19を形成させるための手段であり、例えば、ブレード機構と移動機構を備えている。
【0062】
制御部17は、露光データを含む制御データに応じて、光源11、DMD12、造形テーブル14、ディスペンサ15及びリコータ16を制御する。制御部17は、典型的には、コンピュータに所定のプログラムをインストールすることによって構成することができる。典型的なコンピュータの構成は、中央処理装置(CPU)とメモリとを含んでいる。CPUとメモリは、バスを介して、補助記憶装置としてのハードディスク装置などの外部記憶装置に接続されている。この外部記憶装置が、制御部17の記憶部18として機能する。
フレキシブルディスク装置、ハードディスク装置、CD−ROMドライブ等の記憶媒体駆動装置は、各種コントローラを介してバスに接続されている。フレキシブルディスク装置等の記憶媒体駆動装置には、フレキシブルディスク等の可搬型記憶媒体が挿入される。
記憶媒体は、オペレーティングシステムと協働してCPUなどに命令を与えて、本システムを稼動するための所定のコンピュータプログラムを記憶することができる。
記憶部18には、造形しようとする立体モデルを複数の層にスライスして得られる断面群の露光データを含む制御データが格納されている。
制御部17は、記憶部18に格納された露光データに基づいて、主としてDMD12における各マイクロミラーの角度制御、造形テーブル14の移動(即ち、立体モデルに対するレーザ光の照射範囲の位置)を制御し、立体モデルの造形を実行する。
【0063】
コンピュータプログラムは、メモリにロードされることによって実行される。コンピュータプログラムは圧縮し、又、複数に分割して記憶媒体に記憶することができる。さらに、ユーザ・インターフェース・ハードウェアを備えることができる。ユーザ・インターフェース・ハードウェアとしては、例えば、マウスなどの入力をするためのポインティング・デバイス、キーボード、あるいは視覚データをユーザに提示するためのディスプレイなどがある。
【0064】
次に、光造形装置100の光造形動作について説明する。
まず、ディスペンサ15に液状組成物20を収容する。造形テーブル14は初期位置にある。ディスペンサ15は、収容された液状組成物20を所定量だけ造形テーブル14上に供給する。リコータ16は、液状組成物20を引き伸ばすようにして掃引し、硬化させる一層分の液状組成物層19を形成する。
光源11から出射したレーザ光線は、DMD12に入射する。DMD12は、記憶部18に格納された露光データに応じて制御部17により制御され、レーザ光線を液状組成物層19に照射する部分である一部のマイクロミラーの角度を調整する。これにより、一部のマイクロミラーで反射されたレーザ光線が、集光レンズ13を介して液状組成物層19に照射される一方、残部のマイクロミラーで反射されたレーザ光線は、液状組成物層19に照射されないことになる。
液状組成物層19へのレーザ光線の照射は、例えば0.4秒間行なわれる。このとき、液状組成物層19への投影領域は、例えば、1.3×1.8mm程度であり、0.6×0.9mm程度まで縮小することもできる。投影領域の面積は、100mm以下であることが望ましい。
【0065】
レンズ13に、凹レンズを用いることにより、投影領域を6×9cm程度まで拡大することもできる。投影領域をこのサイズを超えて拡大すると、投影領域に照射されるレーザ光線のエネルギー密度が低くなるため、液状組成物層19の硬化が不十分となることがある。
レーザ光線の投影領域のサイズよりも大きい立体モデルを形成する場合には、例えば造形テーブル14を移動機構によって水平移動させることにより、レーザ光線の照射位置を移動させて、全造形領域を照射する必要がある。投影領域毎に1ショットずつレーザ光線の照射を実行していく。各投影領域に対するレーザ光線の照射の制御については、後に詳述する。
このようにして、投影領域を移動させて、各投影領域を単位としてレーザ光線の照射、即ち露光を実行することによって、液状組成物層19が硬化し、第1層目の硬化層が形成される。1層分の積層ピッチ、すなわち、硬化層の厚みは、例えば、1〜50μm、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは5〜10μmである。
【0066】
続いて、同様の工程で、所望形状の立体モデルの2層目を形成する。具体的には、第1層目として形成された硬化層の外側に、ディスペンサ15より供給された液状組成物20を、リコータ16によって立体モデルを越えて引き伸ばされるように均一な厚さに塗布する。そして、レーザ光線を照射することにより、第2層目の硬化層を第1層目の硬化層の上に形成する。
以下同様にして、第3層目以降の硬化樹脂層を順次堆積させる。そして、最終層の堆積が終了すると、造形テーブル14上に形成された造形物を取り出す。造形物は、表面に付着した光硬化性樹脂液を洗浄その他の方法で除去する。造形物は、必要に応じて、紫外線ランプ等により照射し又は加熱して、硬化を更に進行させることができる。
【0067】
このようにして得られる立体造形物は、剛性、耐衝撃性、靭性のすべてに優れている。さらに、立体造形物の表面強度および耐熱性を向上させるためには、洗浄処理を施した後に、熱硬化性または光硬化性のハードコート材を使用することが好ましい。かかるハードコート材としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などからなる有機コート材、あるいは無機ハードコートを使用することができ、これらのハードコート材は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
表1に示す配合処方に従って各成分を攪拌容器内に仕込み、60℃で3時間攪拌することにより、液状樹脂組成物を製造した。得られた液状樹脂組成物の物性を、下記の方法によって評価した。結果も併せて表1に示す。
【0070】
評価方法
[フィルムヤング率]
(1)試験片の作製
液状樹脂組成物をガラス板状に200μm厚に塗布し、メタルハライドランプを用いて1J/cmを照射することで硬化膜を得た。その後、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置した。
(2)測定
このようにして作製した硬化膜から、8cm×0.6cmの寸法の試験片を切り出した。島津製作所社製の引張り測定試験機AGS−50Gを用いて、JIS K7127に準じて、試験片のヤング率を測定した。この際、引張り速度1mm/分、標線間距離2.5cm(両端掴みしろ2.75cm)で行った。
【0071】
[フィルム折り曲げ耐性]
(1)試験片の作製
フィルムヤング率の試験片の作製と同一の条件で、硬化膜を作製した。
(2)測定
このようにして作製した硬化膜を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置した後、12cm×1.5cmの寸法の試験片を切り出した。MIT式折り曲げ試験機を用いて、試験片が破断するまでの折り曲げ回数を測定した。初期荷重は200gfで測定した。
【0072】
[フィルム衝撃値]
(1)試験片の作製
フィルムヤング率の試験片の作製と同一の条件で、硬化膜を作製した。
(2)測定
このようにして作製した試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置した後、10cm×10cmの寸法の試験片を切り出した。安田精機社製のフィルムインパクトテスターを用いて、フィルム衝撃値を測定した。衝撃球は12mm径のプラスチック球を用いた。
【0073】
[曲げ弾性率]
JIS K7171に準拠して行った。
なお、試験片は、ソリッドクリエーターSCS−300P(ソニーマニュファクチュアリングシステムズ社製)を使用し、照射面(液面)におけるレーザーパワー100mW、各組成において硬化深さが300μmとなる走査速度の条件で、樹脂組成物に対して選択的にレーザー光を照射して硬化樹脂層(厚さ200μm)を形成する工程を繰り返すことにより作製した。作製した試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置した後、測定を行った。
[アイゾット衝撃値]
JIS K7110に準拠して行った。
なお、試験片は、曲げ弾性率の試験片の作成と同一の条件で作製し、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置した後、測定を行った。
【0074】
【表1】

【0075】
表1中に記載の各成分の詳細は以下の通りである。
1)ジャパンエポキシレジン社製、エピコート834(商品名)
2)ユニオンカーバイド社製、UVR−6110(商品名)
3)ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828(商品名)
4)ジャパンエポキシレジン社製、エピコート806(商品名)
5)東亜合成社製、アロンオキセタンOXT−101(商品名)
6)サンアプロ社製、CPI−101A(商品名)
7)東亜合成社製、アロニックスM−315(商品名)
8)チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア184(商品名)
9)レジナス化成社製、レジナスボンドRKB(商品名)
10)三洋化成社製、サンニックスGP−400(商品名)、分子量396.5
【0076】
表1から、本発明の組成物の硬化物(実施例1〜5)は、剛性(高いフィルムヤング率、高い曲げ弾性率)、耐衝撃性(高いフィルム衝撃値、高いアイゾット衝撃値)、靭性(フィルム折り曲げ耐性)のすべてに優れることがわかる。具体的には、本発明の組成物の硬化物(実施例1〜5)は、1,050MPa以上のフィルムヤング率と、130回以上のフィルム折り曲げ耐性と、40J/cm以上のフィルム衝撃値と、2,000MPa以上の曲げ弾性率と、4.2kJ/m2以上のアイゾット衝撃値を兼ね備えている。
一方、(A)成分の配合割合が本発明の範囲外である比較例1〜4では、前記の各特性のバランスが劣る。すなわち、比較例1では、フィルム折り曲げ耐性、フィルム衝撃値、及びアイゾット衝撃値の各値が劣る。比較例2〜4では、曲げ弾性率の値が劣る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】光積層造形法の一例を示す図である。
【図2】マイクロ光造形法のシステムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 光硬化性液状組成物
2 容器
3 支持ステージ
4 光硬化性液状組成物の液面
5 マスク
6,7 硬化物(硬化層)
8 光
11 光源
12 ディジタルミラーデバイス(DMD)
13 集光レンズ
14 造形テーブル
15 ディスペンサ
16 リコータ
17 制御部
18 記憶部
19 液状組成物層
20 光硬化性液状組成物
100 光硬化造形装置(光造形装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全量を100質量%として、
(A)2個以上のビスフェノール構造及び1個以上の水酸基を有するカチオン重合性化合物 3〜40質量%、
(B)(A)成分以外のカチオン重合性化合物 20〜85質量%、
(C)カチオン性光重合開始剤 0.1〜10質量%、
(D)ラジカル重合性化合物 3〜45質量%、及び
(E)ラジカル性光重合開始剤 0.01〜10質量%、
を含有することを特徴とする光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物である請求項1に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、−C(CH−、−CH−、−SO−のいずれかであり、kは、1〜4の整数であり、nは、1〜10の整数である。)
【請求項3】
前記(B)成分が、オキセタン構造を有する化合物を含有する請求項1又は2に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、ビスフェノール構造を有する化合物を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(F)平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−260787(P2008−260787A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88039(P2007−88039)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592109732)日本特殊コーティング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】