説明

光学素子、光学素子アレイ、表示装置および電子機器

【課題】十分な絶縁性を確保しつつ、低電圧で正確な駆動を実現することができる光学素子を提供する。
【解決手段】対向配置された第1および第2の電極と、第1の電極の、第2の電極と対向する面を覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、絶縁膜と第2の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体とを備える。誘電体層は、イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、イオンバリア層は、極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、撥水膜は、絶縁膜の最上層に位置し、無極性液体に対して親和性を示すものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレクトロウェッティング現象を利用した光学素子および光学素子アレイ、ならびにその光学素子アレイを備えた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロウェッティング現象(電気毛管現象)により光学作用を発揮する液体光学素子が開発されている。エレクトロウェッティング現象とは、電極と導電性を有する液体(極性液体)との間に電圧を印加した場合に、その電極の表面と液体との界面エネルギーが変化し、液体の表面形状が変化する現象をいう。
【0003】
本出願人は、このエレクトロウェッティング現象を利用した複数の液体光学素子をレンチキュラーレンズとして備えた立体画像表示装置を、既に提案している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−247480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、液体光学素子では、エレクトロウェッティング現象を利用するため、電極の表面が撥水性の絶縁膜で覆われている。この絶縁膜には、所望の絶縁性を確保できること(リーク電流を十分に抑制すること)と、極性液体における所望の接触角が得られることとが要求される。
【0006】
また、最近では、このような液体光学素子に対し、より低い印加電圧での駆動が求められている。そのためには、絶縁膜についてその誘電率を上げること、およびその厚さを低減すること、の2点が考えられる。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、十分な絶縁性を確保しつつ、より低い電圧であっても良好に動作可能な光学素子および光学素子アレイ、ならびにその光学素子アレイを備えた表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の光学素子は、対向配置された第1および第2の電極と、第1の電極の、第2の電極と対向する面を覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、この絶縁膜と第2の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体とを備える。ここで、誘電体層は、イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、イオンバリア層は、極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、撥水層は、無極性液体に対して親和性を示すものである。
【0009】
本開示の光学素子アレイは、対向配置された第1および第2の基板と、第1の基板の、第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、隔壁の壁面に、複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、第2の基板の、第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、第1の基板と第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体とを備える。ここで、誘電体層は、イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、イオンバリア層は、極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、撥水層は、無極性液体に対して親和性を示すものである。
【0010】
本開示の表示装置は、表示手段と、上記した本開示の光学素子アレイとを備える。本開示の電子機器は、上記表示装置を備えたものである。表示手段は、例えば、複数の画素を有し、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するディスプレイである。
【0011】
本開示の光学素子、光学素子アレイ、表示装置および電子機器では、絶縁膜が、誘電体層とイオンバリア層と撥水層とが積層されたものを含むようにした。これにより、絶縁破壊電圧が向上すると共に、絶縁膜に対する無極性液体の接触角が、より低い印加電圧において安定して変化することとなる。すなわち、絶縁破壊を回避しつつ、極性液体と無極性液体との界面形状が、より低い電圧で制御可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の光学素子および光学素子アレイでは、第1の電極(もしくは第1および第2の電極)を、誘電体層、イオンバリア層および撥水層の順に積層された絶縁膜によって覆うようにしたので、十分な絶縁性を確保しつつ、低電圧で正確な駆動を実現することができる。このため、この光学素子アレイを備えた本開示の表示装置および電子機器によれば、消費電力を低減しつつ、所定の映像信号に対応した正確な画像表示を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の第1の実施の形態としての液体光学素子の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した絶縁膜を拡大して表す断面図である。
【図3】本開示の第2の実施の形態としての液体光学素子アレイの構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した液体光学素子アレイの全体構成を表す平面図である。
【図5】図3に示した液体光学素子アレイの動作を説明するための概略図である。
【図6】本開示の第3の実施の形態としての表示装置の全体構成を表す概略図である。
【図7】図6に示した波面変換偏向部の要部構成を表す断面図である。
【図8】図7に示した波面変換偏向部のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】図7に示した波面変換偏向部のIX-IX線に沿った断面図である。
【図10】図8に示した液体光学素子の動作を説明するための概念図である。
【図11】図8に示した液体光学素子の動作を説明するための他の概念図である。
【図12】図6に示した波面変換偏向部の製造方法における一工程を説明するための断面模式図である。
【図13】図12に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図14】図13に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図15】表示装置を用いた電子機器としてのテレビジョン装置の構成を表す斜視図である。
【図16】実験例に用いたサンプルの構造を説明するための断面模式図である。
【図17】実験例1−1〜1−3における印加電圧とリーク電流との関係を表す特性図である。
【図18】実験例2−1〜2−4における印加電圧と接触角との関係を表す特性図である。
【図19】図6に示した波面変換偏向部の他の使用例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示のいくつかの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(図1,図2):液体光学素子
2.第2の実施の形態(図3〜図5):液体光学素子アレイ
3.第3の実施の形態(図6〜図14):立体表示装置
4.第4の実施の形態(図15):表示装置の適用例(電子機器)
【0015】
[第1の実施の形態]
<液体光学素子の構成>
図1は、本開示における第1の実施の形態としての液体光学素子1の全体構成を表す断面図である。液体光学素子1は、いわゆるエレクトロウェッティング現象により自らを透過する透過光の光学的制御を行う、エレクトロウェッティング素子である。具体的には、液体光学素子1は、制御部20と接続され、静電的な濡れ性を制御することで内包する無極性液体15および極性液体16の界面形状を変形させ、あるいは変位させることにより、透過光に対し光学的作用を及ぼすものである。図1(A)は、対向する下部電極12および上部電極17の間に電圧Vを印加しない状態(V=0)を表し、図1(B)は、対向する下部電極12および上部電極17の間に所定の大きさの電圧Vを印加した状態(V>0)を表す。なお、液体光学素子1の動作については、後に詳述する。
【0016】
液体光学素子1は、下部基板11と、下部基板11を覆う下部電極12と、下部電極12を覆う絶縁膜13と、絶縁膜13の外縁に沿って立設する側壁19と、上部電極17と、上部基板18とを順に備えている。絶縁膜13、側壁19および上部電極17によって取り囲まれた空間には無極性液体15および極性液体16が封入されている。一方、制御部20は、スイッチ部21および電源22を有している。下部電極12および上部電極17は電源22と接続されており、それらの間に電圧が印加されるようになっている。なお、上部電極17は接地されていてもよい。
【0017】
下部基板11および上部基板18は、側壁19によって支持されて対向するように配置され、例えばガラスや透明なプラスチックなど、可視光を透過する透明な絶縁材料によって構成される。なお、本実施の形態の絶縁膜13は、100℃以下の温度で成膜可能なものである。よって、下部基板11は、ポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)およびポリオレフィン(PO)のうちの少なくとも1種を含む透明樹脂基板とすることができる。
【0018】
下部電極12および上部電極17は、例えば酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電材料によって構成される。
【0019】
絶縁膜13は、図2に示したように、下部電極12の側から順に積層された誘電体層131とイオンバリア層132と撥水層133とを含んでいる。なお、図2は、絶縁膜13の断面構成を拡大して表す断面図である。誘電体層131は、イオンバリア層132よりも高い誘電率を有し、例えばAl2 3 ,Ta2 5 ,ZrO2 ,ZnO2 ,TiO2 ,MgOおよびHfO2 のうちの少なくとも1種を含む材料によって形成されている。誘電体層131は、例えば原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法、スパッタ法、もしくは化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によって、緻密に成膜されたものである。
【0020】
イオンバリア層132は、極性液体16に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、例えばパラキシリレン骨格を繰り返し単位とするポリマーを含む材料によって形成されている。イオンバリア層132は、より具体的には、例えば化1(1)に示したパリレンN、化1(2)に示したパリレンC、化1(3)に示したパリレンD、あるいは化1(4)に示したパリレンHTによって形成される。
【0021】
【化1】

【0022】
撥水層133は、極性液体16に対して撥水性(疎水性)を示す(より厳密には無電界下において極性液体16よりも無極性液体15に対して親和性を示す)と共に、電気的絶縁性に優れた性質を有する材料によって構成される。具体的には、フッ素系の高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0023】
無極性液体15は、ほとんど極性を有さず、かつ、電気絶縁性を示す液体材料であり、例えばデカン、ドデカン、ヘキサデカンもしくはウンデカンなどの炭化水素系材料のほか、シリコンオイルなどが好適である。この無極性液体15に対して電圧を印加した場合、その直接の影響が絶縁膜13に対する濡れ性に及ぶことはほとんどない。この無極性液体15は、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加しない場合において、絶縁膜13の表面を所望の範囲で覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0024】
一方、極性液体16は、極性を有する液体材料であり、例えば水のほか、塩化カリウムや塩化ナトリウム、あるいは塩化リチウムなどの電解質を溶解させた水溶液が好適である。この極性液体16に電圧を印加すると、絶縁膜13に対する濡れ性(無極性液体15と絶縁膜13との接触角)が比較的大きく変化する。
【0025】
このように絶縁膜13と上部電極17との間に封入された無極性液体15および極性液体16は、互いに混在することなく分離し、2つの層を形成する。また、本実施の形態では、無極性液体15および極性液体16は、いずれも透明である。
【0026】
側壁19は、下部基板11および上部基板18と共に無極性液体15および極性液体16を密封するものであり、例えば下部基板11および上部基板18と同種の材料により構成される。
【0027】
制御部20は、液体光学素子1に対する駆動制御をおこなうものである。スイッチ21は、その一方の端子が金属配線によって上部電極17と接続され、他方の端子が金属配線によって電源22を介して下部電極12と接続されている。スイッチ21は、両端子の間を電気的に接続する投入状態と、両端子の間を電気的に切断する切断状態との2つの状態が選択可能なものである。電源22は、電圧の大きさを所定範囲内で変化させることができ、かつ、任意に設定可能なものである。したがって、制御部20は、スイッチ21の操作(投入状態および切断状態を選択する操作)と、電源22の電圧制御とにより、下部電極12と上部電極17との間に所定の電圧を印加することができるようになっている。
【0028】
<液体光学素子の動作>
次に、上記のように構成された液体光学素子1の動作について説明する。
【0029】
まず、図1(A),1(B)を参照して、エレクトロウェッティング現象の原理について説明する。エレクトロウェッティング現象とは、導電性を有する液体と電極との間に電圧を印加したときに電極表面と液体との固液界面におけるエネルギーが変化し、液体表面の形状が変化する現象をいう。図1(A),1(B)は、エレクトロウェッティング現象を説明するための模式図である。図1(A)に示したように、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加していない状態では、絶縁膜13の表面と無極性液体15との間の相互作用エネルギーは低く、接触角θ0は大きい。ここで、接触角θ0は、絶縁膜13の表面と無極性液体15の正接線との成す角度であり、無極性液体15の表面張力や絶縁膜13の表面エネルギー等の物性に依存する。一方、図1(B)に示したように、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加すると、無極性液体15の電解質イオンが絶縁膜13の表面の近傍に集中することによって帯電量変化が生じ、無極性液体15の表面張力の変化が誘発される。この現象がエレクトロウェッティング現象であり、印加電圧の大きさによって無極性液体15の接触角θvが変化する。すなわち、図1(B)において、接触角θvは、印加電圧Vの関数である、以下の式(1)、すなわちリップマン−ヤング(Lippman-Young)の方程式で表される。
【0030】
cos(θv)=cos(θ0)+(ε0×ε×V2 )/(2×γ×t) ……(1)
但し、
ε0:真空の誘電率
ε:絶縁膜13の比誘電率
γ:無極性液体15と極性液体16との間の表面張力
t:絶縁膜13の膜厚
である。
【0031】
以上のように、下部電極12と上部電極17との間に印加する電圧Vの大きさによって、無極性液体15と極性液体16との界面の形状(曲率)が変化する。したがって、無極性液体15をレンズ素子として用いると、焦点位置(焦点距離)を電気的に制御できる光学素子が実現される。
【0032】
<液体光学素子の効果>
このように、本実施の形態の液体光学素子1では、無極性液体15および極性液体16を挟んで対向配置された下部電極12および上部電極17のうち、下部電極12の表面を、3層構造からなる絶縁膜13で覆うようにした。その絶縁膜13は、最も下部電極12に近い層として誘電体層131を含むようにしたので、高い絶縁抵抗を確保することができる。また、誘電体層131を覆うようにイオンバリア層132を設けるようにしたので、電解液である極性液体16の、誘電体層131への浸透が回避される。そのため、絶縁膜13の全体の厚さを低減しつつ、絶縁破壊電圧の向上を図ることができる。さらに、最上層に撥水層133を設けるようにしたので、無極性液体15の初期の接触角θ0を安定させることができ、印加電圧Vに応じて界面形状を再現性良く制御することができる。これらの結果、液体光学素子1では、十分な絶縁性を確保しつつ絶縁膜13の薄型化により駆動電圧を例えば30V以下に抑え、かつ界面形状の安定した変化を正確に再現することができる。
【0033】
なお、絶縁膜13は、誘電体層131、イオンバリア層132および撥水層133からなる3層構造である場合に限定されず、他の層をさらに追加したものとしてよい。但し、無極性液体15および極性液体16と接することとなる最上層には、撥水層133を設けることが望ましい。
【0034】
[第2の実施の形態]
<液体光学素子アレイの構成>
図3は、本開示における第2の実施の形態としての液体光学素子アレイ2の全体構成を表す断面図であり、図4は、液体光学素子アレイ2の全体構成を表す平面図である。なお、図3は、図4に示したIII−III切断線に沿った矢視方向の断面を示している。また、図4では、絶縁膜13、無極性液体15、極性液体16、上部電極17、上部基板18、側壁19などの各構成要素についての図示を省略している。液体光学素子アレイ2は、上記第1の実施の形態で説明した液体光学素子1がアレイ状に複数配置されたものである。なお、図4では9つの液体光学素子1を表しているが、その数はこれに限定されない。図4に示したように、各液体光学素子1は、例えば正方形をなしている。液体光学素子1は、それぞれ制御部20と接続され、静電的な濡れ性を制御することで内包する極性液体16の変形および変位を発生させ、その現象によって自らを透過する透過光の光量を制御するエレクトロウェッティング素子である。本実施の形態では、上記第1の実施の形態で説明した構成要素と実質的に同一のものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略することとする。
【0035】
下部基板11には、液体光学素子1ごとに薄膜トランジスタなどの駆動素子41が設けられていると共に、それらの駆動素子41を個別に駆動させるための、制御部20と接続されたゲート線およびデータ線などからなる信号線対(図示せず)が設けられている。なお、駆動素子41や信号線対は、下部基板11とは別の基板に設けるようにしてもよい。
【0036】
下部電極12は駆動素子41の一端と接続されると共に、上部電極17は一定の電位に保たれている。すなわち、制御部20によって下部電極12と上部電極17との間に液体光学素子1ごとに電圧を印加することで、液体光学素子1ごとに外部からの入射光の透過量を制御することができるようになっている。下部電極12は液体光学素子1ごとに複数に分割して配置され、遮光部材42によって互いに絶縁されている。下部電極12は液体光学素子1の全面に亘って延在しており、その一部(下部電極12の外縁)が遮光部材42によって覆われていることが望ましい。
【0037】
遮光部材42は、複数の液体光学素子1の境界部分に設けられ、カーボンブラックなどの所定の波長光(例えば可視光)を吸収する顔料や染料を含む絶縁性材料からなり、遮光性を有するいわゆるブラックマトリクスとして機能するものである。
【0038】
複数の液体光学素子1は、隔壁14によって相互に仕切られている。すなわち、隔壁14は、光が透過する単位領域となる液体光学素子1を個々に画定する仕切部材であり、遮光部材42と対応する位置において絶縁膜13に立設するように設けられている。この隔壁14の存在により、無極性液体15は、隣り合う他の液体光学素子1へ移動(流出)しないようになっている。隔壁14は、極性液体16に対して親水性を示すと共に、無極性液体15および極性液体16に溶解等しない材料、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などによって構成されることが望ましい。あるいは、隔壁14の表面が、上記材料からなる被膜によって覆われたものとすることが望ましい。そうすることで、無極性液体15の形状を安定化できるうえ、無極性液体15の流出をより確実に回避することができるからである。
【0039】
無極性液体15は、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加しない場合において、各液体光学素子1における絶縁膜13の表面を全て覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。なお、本実施の形態では、極性液体16は透明である一方、無極性液体15は所定の波長光(例えば可視光)を吸収する顔料や染料によって着色されて不透明となっている。
【0040】
制御部20は、スイッチ21の操作と電源22の電圧制御とにより、下部電極12と上部電極17との間に所定の電圧を印加するものである。その際、ゲートドライバ(図示せず)によって特定の液体光学素子1の駆動素子41を選択して駆動することができるようになっている。
【0041】
<液体光学素子アレイの動作>
次に、図5を参照して、上記のように構成された液体光学素子アレイ2の動作について説明する。図5は、液体光学素子10における任意の液体光学素子1を拡大して表したものである。
【0042】
まず、制御部20においてスイッチ21を切断状態とし、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加しない場合には、例えば図5(A)に示したように、無極性液体15が各セル領域Zの全体を覆うように広がった状態となる。そのため、着色された無極性液体15によって、例えば下部基板11の側から照射された外部からの入射光Linが遮断される。ここで遮光部材42を設けるようにしたことから、隔壁14の内部を伝達した光が漏れたり隣接する他の液体光学素子1からの光が漏れたりするのを抑制することができる。さらに、無極性液体15の厚みが相対的に薄くなる液体光学素子1の周縁部においても、遮光部材42によって確実に入射光Linが遮断される。したがって、反対側(上部基板18側)には入射光Linが全く漏れない状態となる。一方、制御部20においてスイッチ21を投入状態とし、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加した場合には、例えば図5(B)に示したように、極性液体16が絶縁膜13と接触するようになり、無極性液体15が各液体光学素子1の任意の領域αに集まった状態となる。そのため、例えば下部基板11の側から照射された外部からの光Linのうち、領域αに入射する一部の光L1inが無極性液体15によって進行を遮断される一方、領域βに入射する残りの光L2inは反対側(上部基板18側)に透過し、透過光Loutとして射出することとなる。この場合においても、遮光部材42の存在により、隔壁14や他の液体光学素子1からの光漏れが確実に抑制されるので、透過率が安定化する。なお、このよう無極性液体15の挙動は、電圧印加により、極性液体16と絶縁膜13との濡れ性が変化することに起因する。詳細には、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加した場合、疎水性絶縁膜13の表面に電荷が蓄積されるので、その電荷のクーロン力によって、極性を有する極性液体16が絶縁膜13へ引き寄せられる。そのため、無極性液体15は、極性液体16によって絶縁膜13の表面から排除されるように移動(変形)し、結果として任意の領域αに集まることとなると考えられる。
【0043】
なお、図5(B)では、最大の透過率(最大の開口率)が得られる状態を表しているが、印加電圧を調整することで無極性液体15の大きさを制御し、任意の透過光強度(透過率)を得ることも可能である。
【0044】
<液体光学素子アレイの効果>
このように、本実施の形態の液体光学素子アレイ2では、各液体光学素子1における下部電極12の表面を、上記第1の実施の形態と同様に、誘電体層131、イオンバリア層132および撥水層133の順に積層された絶縁膜13で覆うようにした。これにより、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0045】
また、本実施の形態では、無極性液体15を着色するようにしたので、印加電圧の有無による無極性液体15と極性液体16との界面の形状変化を利用して、各液体光学素子1において選択的に光を透過させることができる。その際、液体光学素子1の周縁部および隔壁14と対応する領域に遮光部材42を配置するようにしたので、電圧を印加しない場合における、液体光学素子1の周縁部や隔壁14と絶縁膜13との境界からの光漏れを確実に抑制することができる。したがって、印加電圧の有無による透過率の差分を広げることができ、より高いコントラストを得ることができる。さらに、各下部電極12が、液体光学素子1の全面に亘って延在しているので、電圧印加時に無極性液体15が複数に分離することなく素早く変形するので応答性にも優れているうえ、透過率のヒステリシスの発現が抑制される。
【0046】
[第3の実施の形態]
<表示装置の構成>
次に、図6を参照して、本開示における第3の実施の形態としての液体光学素子アレイを用いた表示装置について説明する。図6は、本実施の形態の表示装置の、水平面内における一構成例を表す概略図である。なお、本実施の形態では、上記第1の実施の形態で説明した構成要素と実質的に同一のものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略することとする。
【0047】
図6に示したように、この表示装置は、光源(図示せず)の側から、表示部50と、液体光学素子アレイとしての波面変換偏向部60とを順に備えている。ここでは、光源からの光の進行方向をZ軸方向とし、水平方向をX軸方向とし、鉛直方向をY軸方向としている。
【0048】
表示部51は、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するものであり、例えばバックライトBLが照射されることにより表示画像光を射出するカラー液晶ディスプレイである。表示部50は、光源の側からガラス基板51と、それぞれ画素電極および液晶層を含む複数の表示画素52(52L,52R)と、ガラス基板53とが順に積層された構造を有している。ガラス基板51およびガラス基板53は透明であり、いずれか一方には例えば赤(R),緑(G),青(B)の着色層を有するカラーフィルタが設けられている。このため、表示画素52は、赤色を表示する表示画素R−52と緑色を表示する表示画素G−52と青色を表示する表示画素B−52とに分類される。この表示部1では、X軸方向においては表示画素R−52と、表示画素G−52と、表示画素B−52とが順に繰り返し配置される一方、Y軸方向においては同色の表示画素52が並ぶように配置されている。さらに、表示画素52は、左眼用の画像を形成する表示画像光を射出するものと、右眼用の画像を形成する表示画像光を射出するものとに分類され、それらはX軸方向において交互に配置されている。図6では、左眼用の表示画像光を射出する表示画素52を表示画素52Lと表し、右眼用の表示画像光を射出する表示画素52を表示画素52Rと表す。
【0049】
波面変換偏向部60は、例えばX軸方向に隣り合う1組の表示画素52L,52Rに対応して設けられた1つの液体光学素子1Aが、X軸方向に複数配列されたアレイ状をなすものである。波面変換偏向部60は、表示部50から射出された表示画像光に対し、波面変換処理および偏向処理を行う。具体的には、波面変換偏向部60では、各表示画素52に対応する各液体光学素子1Aがシリンドリカルレンズとして機能する。すなわち、波面変換偏向部60は、全体としてレンチキュラーレンズとして機能する。これによって各表示画素52L,52Rからの表示画像光の波面が、鉛直方向(Y軸方向)に並ぶ一群の表示画素52を一単位として所定の曲率を有する波面に一括して変換される。波面変換偏向部60では、併せて、必要に応じてそれらの表示画像光を水平面内(XZ平面内)において一括して偏向することも可能となっている。
【0050】
図7〜図9を参照して、波面変換偏向部60の具体的な構成について説明する。
【0051】
図7は、表示画像光の進行方向と直交するXY平面に平行な波面変換偏向部60の要部拡大断面図である。また、図8は、図7に示したVIII−VIII線に沿った矢視方向の断面図である。さらに、図9は、図7に示したIX−IX線に沿った矢視方向の断面図である。なお、図7は、図8に示したVII−VII線に沿った矢視方向の断面に相当する。
【0052】
図7〜図9に示したように、波面変換偏向部60は、対向配置された下部基板11および上部基板18と、下部基板11の内面11Sに立設し、接着層ALを介して上部基板18を支持する側壁19(図7,図9)および隔壁14とを備えている。波面変換偏向部60では、Y軸方向へ延在する複数の隔壁14によって区画されたセル領域Zを含む複数の液体光学素子1AがX軸方向へ並び、全体として液体光学素子アレイを構成している。液体光学素子1Aは、屈折率の異なる2種の液体(無極性液体15および極性液体16)を含み、入射光線に対して偏向や屈折などの光学的作用をもたらすものである。
【0053】
下部基板11の内面11Sには、この下部基板11上の空間領域を複数の液体光学素子1Aに仕切る複数の隔壁14が立設している。複数の隔壁14は、上述したように各々Y軸方向へ延在しており、Y軸方向に並ぶ一群の表示画素52に対応した矩形状の平面形状を有する液体光学素子1Aを、側壁19と共に複数形成している。すなわち、側壁19は、複数の隔壁14の一端同士および他端同士をそれぞれ繋ぐことにより、隔壁14と共に複数のセル領域Zを取り囲むように構成されている。隔壁14によって区画された空間(セル領域Z)には、それぞれ無極性液体15が保持されている。すなわち、無極性液体15は、隔壁14の存在により、隣り合う他のセル領域Zへ移動(流出)しないようになっている。なお、下部基板11と隔壁14とが同種の透明なプラスチック材料からなり、一体成型されたものであってもよい。
【0054】
各隔壁14の壁面には、互いに対向して配置された第1および第2の電極31A,31Bが設けられている。第1および第2の電極31A,31Bの構成材料としては、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電性材料のほか、銅(Cu)などの金属材料、あるいは炭素(C)もしくは導電性高分子などの他の導電性材料が適用可能である。第1および第2の電極31A,31Bは、隔壁14の一端から他端に至るまで途切れることなく連続して延在している。第1および第2の電極31A,31Bは、それぞれ、下部基板11に埋設された信号線と制御部とを介して外部電源(いずれも図示せず)と接続されている。第1および第2の電極31A,31Bは、上述の制御部によってそれぞれ所定の大きさの電位に設定できるようになっている。第1および第2の電極31A,31Bの各々の両端にはパッド(図示せず)が形成されており、外部電源(図示せず)と接続されている。第1および第2の電極31A,31Bは、絶縁膜13によって密に覆われている。絶縁膜13は、第1および第2の電極31A,31Bだけでなく、隔壁14および下部基板11を全面的に覆うように形成されていてもよい。なお、隔壁14の上端もしくはそれを覆う絶縁膜13は、上部基板18および後出の第3の電極31Cと離間していることが望ましい。なお、図7および図9では、絶縁膜13の図示を省略している。
【0055】
上部基板18の、下部基板11と対向する内面18Sには、第3の電極31Cが設けられている。第3の電極31Cは、例えばITOやZnOなどの透明な導電材料によって構成されており、接地電極として機能する。なお、図7では、上部基板18および第3の電極31Cの図示を省略している。
【0056】
下部基板11、上部基板18、側壁19および隔壁14によって完全に密閉された空間領域には、無極性液体15および極性液体16が密封されている。無極性液体15および極性液体16は、その閉空間において互いに溶解せずに分離して存在し、界面IFを形成している。無極性液体15および極性液体16は透明であることから、界面IFを透過する光は、その入射角と、無極性液体15および極性液体16の屈折率とに応じて屈折する。
【0057】
無極性液体15は、第1の電極31Aと第2の電極31Bとの間に電圧を印加しない場合において、下部基板11(絶縁膜13)を全て覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0058】
一方、極性液体16に電圧を印加すると、内表面13A,13Bに対する濡れ性(極性液体16と内表面13A,13Bとの接触角)が無極性液体15と比べて大きく変化する。極性液体16は、接地電極としての第3の電極31Cと接している。
【0059】
ここで、X軸方向に並ぶ隔壁14の間隔(より厳密には、X軸方向において隣り合う隔壁14を覆う絶縁膜13同士の間隔W1(図7参照))は、以下の式(1)で表される毛管長K-1以下の長さであるとよい。そうすることで、無極性液体15および極性液体16が、安定して初期位置(図8に示した位置)に保持される。これは、無極性液体15および極性液体16が隔壁14を覆う絶縁膜13と接することにより、その接触界面における界面張力が無極性液体15および極性液体16に対し作用するからである。ここでいう毛管長K-1とは、無極性液体15と極性液体16との界面に生じる界面張力に対して重力の影響を全く無視できる最大の長さをいう。したがって、間隔W1が式(2)を満足する場合には、無極性液体15および極性液体16は、波面変換偏向部60の姿勢の影響を受けずに極めて安定して初期位置(図8に示した位置)に保持される。
【0060】
Κ-1 ={Δγ/(Δρ×g)}0.5 ……(2)
但し、
Κ-1 :毛管長(mm)
Δγ:極性液体と無極性液体との界面張力(mN/m)
Δρ:極性液体と無極性液体との密度差(g/cm3
g:重力加速度(m/s2
【0061】
各液体光学素子1Aでは、第1および第2の電極31A,32Bの間に電圧が印加されていない状態(第1および第2の電極31A,32Bの電位がいずれも零である状態)では、図8に示したように、界面IFは、極性液体16の側から無極性液体15へ向けて凸の曲面をなしている。このときの界面IFの曲率はY軸方向において一定であり、各液体光学素子1Aは1つのシリンドリカルレンズとして機能する。また、界面IFの曲率はこの状態(第1および第2の電極31A,32Bの間に電圧を印加しない状態)が最大となる。内表面13Aに対する無極性液体15の接触角θ1、および内表面13Bに対する無極性液体15の接触角θ2は、例えば絶縁膜13の材料種を選択することによって調整することができる。ここで、無極性液体15が極性液体16よりも大きな屈折率を有していれば、液体光学素子1Aは負の屈折力を発揮する。これに対し、無極性液体15が極性液体16よりも小さな屈折率を有していれば、液体光学素子1Aは正の屈折力を発揮する。例えば、無極性液体15が炭化水素系材料またはシリコンオイルであり、極性液体16が水または電解質水溶液であれば、液体光学素子1Aが負の屈折力を発揮することとなる。
【0062】
第1および第2の電極31A,32Bの間に電圧が印加されると界面IFの曲率が小さくなり、ある一定以上の電圧を印加すると例えば図10(A)〜10(C)に表したように平面となる。なお、図10(A)は、第1の電極31Aの電位(V1とする)と第2の電極31Bの電位(V2とする)とが互いに等しい(V1=V2)場合を示している。この場合、例えば接触角θ1,θ2がいずれも直角(90°)となる。このとき、液体光学素子1Aへ入射して界面IFを通過した入射光は、界面IFにおいて収束、発散もしくは偏向などの光学作用を受けることなく、そのまま液体光学素子1Aから射出する。
【0063】
電位V1と電位V2とが異なる場合(V1≠V2)には、例えば図10(B),10(C)に表したように、X軸およびZ軸に対して傾斜した平面(Y軸に対しては平行な面)となる(θ1≠θ2)。具体的には、電位V1が電位V2よりも大きい場合(V1>V2)、図10(B)に示したように接触角θ1が接触角θ2よりも大きくなる(θ1>θ2)。反対に、電位V1よりも電位V2が大きいと(V1<V2)、図10(C)に示したように、接触角θ1よりも接触角θ2が大きくなる(θ1<θ2)。これらの場合(V1≠V2)、例えば第1の電極31A,31Bと平行に進行して液体光学素子1Aへ入射した入射光は、界面IFにおいてXZ平面内で屈折し、偏向される。したがって、電位V1および電位V2の大きさを調整することで、入射光をXZ平面内の所定の向きへ偏向可能となる。
【0064】
なお、上記の現象(電圧の印加による接触角θ1,θ2の変化)は以下のように生じるものと推察される。すなわち、電圧印加により、内表面13A,13Bに電荷が蓄積され、その電荷のクーロン力によって、極性を有する極性液体16が絶縁膜13へ引き寄せられる。すると、極性液体16が内表面13A,13Bと接触する面積を拡大する一方、無極性液体15が内表面13A,13Bと接触する部分から極性液体16によって排除されるように移動(変形)し、結果として界面IFが平面に近づくこととなる。
【0065】
また、電位V1および電位V2の大きさの調整により界面IFの曲率が変わるようになっている。例えば、電位V1,V2(V1=V2とする)を、界面IFが水平面となる場合の電位Vmaxよりも低い値とすれば、例えば図11(A)に表したように、電位V1,V2が零の場合の界面IF0(破線で表示)よりも曲率の小さな界面IF1(実線で表示)が得られる。このため、界面IFを透過する光に対して発揮する屈折力は、電位V1および電位V2の大きさを変えることで調整可能である。すなわち、液体光学素子1Aは、可変焦点レンズとして機能する。さらに、その状態で電位V1と電位V2とが互いに異なる大きさ(V1≠V2)となれば、界面IFは適度な曲率を有しつつ、傾斜した状態となる。例えば電位V1のほうが大きい(V1>V2)場合には、図11(B)において実線で表した界面IFaが形成される。一方、電位V2のほうが大きい(V1<V2)場合には、図11(B)において破線で表した界面IFbが形成される。したがって、電位V1および電位V2の大きさを調整することで、液体光学素子1Aは、入射光に対して適度な屈折力を発揮しつつ、その入射光を所定の向きへ偏向することが可能である。なお、図11(A),11(B)では、無極性液体15が極性液体15よりも大きな屈折率を有しており、液体光学素子1Aが負の屈折力を発揮する場合に、界面IF1,IFaを形成したときの入射光の変化を表している。
【0066】
次に、波面変換偏向部60の製造方法について、図12〜図14に表した断面模式図を参照して説明する。
【0067】
まず、下部基板11を用意したのち、図12に示したように、その一方の面(内面11S)の上の所定位置に隔壁14を形成する。具体的には、例えばスピンコーティング法により所定の樹脂を内面11Sの上にできるだけ均一な厚みとなるように塗布したのち、フォトリソグラフィ法を利用して選択的な露光を行うことにより、パターニングを行う。あるいは、所定形状の金型を使用した一括成型により、同種の材料からなる一体化した平面基板11および隔壁14を形成するようにしてもよい。さらには、射出成型、熱プレス成型、フィルム材を用いた転写成型または2P(Photoreplication Process)法などによりそれらを形成することも可能である。
【0068】
次に、図13に示したように、隔壁14の端面に、所定の導電性材料からなる第1および第2の電極31A,31Bを形成する。この際、例えばフォトリソグラフィ法やマスク転写、あるいはインクジェット描画などの手法を利用することができる。さらに、少なくとも第1および第2の電極31A,31Bを覆うように絶縁膜13を形成する。その際、誘電体層131は、ALD法、スパッタ法あるいはCVD法によって形成するとよい。イオンバリア層132は真空蒸着法などにより形成し、撥水層133は各種蒸着法、ディップコート法あるいはスピンコート法などにより形成するとよい。なお、絶縁膜13は、内面11Sや隔壁14の上面をも覆うようにしてもよい。
【0069】
続いて図14に示したように、無極性液体15を、隔壁14で仕切られた空間に注入もしくは滴下する。そののち、上部基板18に第3の電極31Cを設けたものを用意し、下部基板11と上部基板18とが一定の間隔となるように対向配置する。その際、下部基板11と上部基板18とが重なり合う領域の外縁に沿って接着層ALを設け、その接着層ALを介して上部基板18と側壁19(ここでは図示せず)および隔壁14とを固定するようにする。なお、接着層ALの一部には注入口(図示せず)を形成しておく。最後に、その注入口から、下部基板11、側壁19、隔壁14、および上部基板18によって囲まれた空間に極性液体16を充填したのち、注入口を封止する。以上の手順により、応答性に優れた液体光学素子1Aを複数備えた波面変換偏向部60を簡便に製造することができる。
【0070】
<表示装置の動作>
この表示装置では、図6に示したように、表示部50に映像信号が入力されると、表示画素52Lから左眼用の表示画像光I−Lが射出されると共に表示画素52Rから右眼用の表示画像光I−Rが射出される。表示画像光I−L,I−Rは、いずれも液体光学素子1Aに入射する。液体光学素子1Aでは、その焦点距離が、例えば表示画素52L,52Rと界面IFとの間の屈折率を空気換算した距離となるように、適切な値の電圧を第1および第2の電極31A,31Bに印加する。なお、観察者の位置に応じて、液体光学素子1Aの焦点距離を前後させるようにしてもよい。液体光学素子1Aにおける無極性液体15と極性液体16との界面IFが形成するシリンドリカルレンズの作用により、表示部50の各表示画素52L,52Rから射出された表示画像光I−L,I−Rの射出角度が選択される。そのため、図6に示したように、表示画像光I−Lは観察者の左眼10Lに入射し、表示画像光I−Rは観察者の右眼10Rに入射する。これにより、観察者は立体映像を観察することができる。
【0071】
また、液体光学素子1Aにおいて界面IFを平坦面(図10(A)参照)とし、表示画像光I−L,I−Rに対する波面変換を行わないことにより、高解像度な二次元画像の表示も可能となる。
【0072】
<表示装置の効果>
このように、本実施の形態の波面変換偏向部60では、隔壁14に設けられた第1および第2の電極31A,31Bを、上記第1の実施の形態と同様に、誘電体層131、イオンバリア層132および撥水層133の順に積層された絶縁膜13で覆うようにした。これにより、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。すなわち、各液体光学素子1Aでは、十分な絶縁性を確保しつつ絶縁膜13の薄型化により駆動電圧を低減し、かつ界面形状の安定した変化を正確に再現することができる。このため、液体光学素子1Aを備えた表示装置によれば、消費電力を低減しつつ、所定の映像信号に対応した正確な画像表示を実現することが可能となる。
【0073】
[第4の実施の形態]
<表示装置の適用例(電子機器)>
次に、上記した表示装置の適用例について説明する。
【0074】
本技術の表示装置は、各種用途の電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されない。この表示装置は、例えば、以下の電子機器に搭載可能である。ただし、以下で説明する電子機器の構成はあくまで一例であるため、その構成は適宜変更可能である。
【0075】
図15は、テレビジョン装置の外観構成を表している。このテレビジョン装置は、例えば、表示装置としての映像表示画面部200を備えている。映像表示画面部200は、フロントパネル210およびフィルターガラス220を含むものである。
【0076】
本技術の表示装置は、図15に示したテレビジョン装置のほか、例えばタブレット型パーソナルコンピュータ(PC)、ノート型PC、モバイルフォン、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラあるいはカーナビゲーションシステムにおける映像表示部分として用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本技術の具体的な実施例について説明する。
【0078】
(実験例1−1)
本実験例では、絶縁膜の耐電圧特性の評価を行った。具体的には、図16に模式的に示したサンプルを作製し、極性液体16としての塩化リチウム溶液(d線に対する屈折率は1.375)と下部電極12との間に電圧(V)を印加したときのリーク電流(A)の変化を測定した。その結果を図17に示す(曲線C1)。ここで、下部基板11はガラス基板とし、下部電極12はITOによって形成し、絶縁膜13は、誘電体層131とイオンバリア層132と撥水層133との3層構造とした。
【0079】
具体的には、ALD法によってAl2 3 からなる誘電体層131を、50nmの厚さとなるように形成した。なお、この際のガラス基板(下部基板11)の温度は、例えば酸化剤としてオゾンを用いることにより80〜100℃程度に抑えるようにした。また、イオンバリア層132については、パリレンC(化1(2))の原料ダイマー粉末(日本パリレン合同会社製)を用いた真空蒸着法により、100nmの厚さとなるように形成した。より詳細には、まず、原料ダイマー粉末を加熱室において150℃に加熱することで気化させたのち、気化したダイマーを熱分解室へ輸送した。そののち、熱分解室においてダイマー蒸気をさらに680℃に至るまで加熱することで熱分解させ、反応性に富んだモノマーガスを生成した。さらに、このモノマーガスを真空引きされた蒸着室へ導入し、その蒸着室内で常温の試料基板(下部基板11上に下部電極12と誘電体層131とを成膜したもの)と接触させることで、誘電体層131の表面において重合させた。さらに、撥水膜133については、フッ素含有化合物であるNANOS(株式会社ティーアンドケー)を8nmの厚さとなるように形成した。
【0080】
(実験例1−2)
撥水膜133を設けなかったことを除き、他は実験例1−1と同様にして図16に示したサンプルを作製した。その結果を図17に併せて示す(曲線C2)。
【0081】
(実験例1−3)
イオンバリア層132および撥水膜133を設けなかったことを除き、他は実験例1−1と同様にして図16に示したサンプルを作製した。その結果を図17に併せて示す(曲線C3)。
【0082】
図17では、横軸が印加電圧(V)を示し、縦軸がリーク電流(A)を示す。図17に示したように、実験例1−1(曲線C1)において、最も高い絶縁破壊電圧(約68V)が得られた。実験例1−2(曲線C2)ではイオンバリア層132を設けることで、誘電体層131のみからなる場合(実験例1−3(曲線C3))よりも耐圧特性は改善される。本技術のように撥水層133を設けることで、耐圧特性のさらなる向上が実現されることが確認できた。なお、誘電体層131をTa2 5 ,ZrO2 ,ZnO2 ,TiO2 ,MgOおよびHfO2 の各材料によってそれぞれ形成した場合においても上記と同様の効果が確認できた。また、イオンバリア層132を、化1(1)に示したパリレンN、および化1(3)に示したパリレンDによってそれぞれ形成した場合においても上記と同様の効果が確認できた。
【0083】
(実験例2−1)
本実験例では、印加電圧と接触角との関係について評価を行った。具体的には、図1に示した液体光学素子1のサンプルを作製し、下部電極12と上部電極17との間の印加電圧を変化させたときの、無極性液体15と極性液体16との界面が絶縁膜13の表面に対してなす角度を測定した。その結果を図18に示す(「●」のプロットで示す)。ここで、無極性液体15としてメチルフェニルシリコーンオイル(d線に対する屈折率が1.556のもの)を用い、極性液体16として塩化リチウム溶液(d線に対する屈折率が1.375のもの)を用いた。また、上部電極17および上部基板18は、それぞれ、下部電極12および下部基板11と同様の材料により形成した。上記の点を除き、他は実験例1−1と同様の構成とした。
【0084】
(実験例2−2)
撥水膜133を設けなかったことを除き、他は実験例2−1と同様にして図1に示したサンプルを作製した。その結果を図18に併せて示す(「□」のプロットで示す)。
【0085】
(実験例2−3)
絶縁膜としてイオンバリア層132のみを200nmの厚さで設けたことを除き、他は実験例2−1と同様にして図1に示したサンプルを作製した。その結果を図18に併せて示す(「△」のプロットで示す)。
【0086】
(実験例2−4)
絶縁膜としてイオンバリア層132のみを3μmの厚さで設けたことを除き、他は実験例2−1と同様にして図1に示したサンプルを作製した。その結果を図18に併せて示す(「○」のプロットで示す)。
【0087】
図18では、横軸が印加電圧(Vrms)を示し、縦軸が接触角(°)を示す。図18に示したように、実験例2−1において、比較的低い印加電圧(Vrms)において最も高い接触角(°)を得ることができた。具体的にはVrms=28.7で約110°の接触角が得られた。なお、初期の接触角、すなわち電圧を印加しない状態(Vrms=0)から最初に変化を生じるまで(Vrms=10に至るまで)の接触角についても、約45°で非常に安定していた。これに対し、実験例2−2,2−3では、比較的低い印加電圧において接触角の変化が見られたが、その接触角の最大値はそれぞれ約90°および約60°に留まった。また、実験例2−4では、約110°の接触角が得られたが、そのためには約120Vrmsの大きな印加電圧が必要となることがわかった。なお、誘電体層131をTa2 5 ,ZrO2 ,ZnO2 ,TiO2 ,MgOおよびHfO2 の各材料によってそれぞれ形成した場合においても上記と同様の効果が確認できた。また、イオンバリア層132を、化1(1)に示したパリレンN、および化1(3)に示したパリレンDによってそれぞれ形成した場合においても上記と同様の効果が確認できた。
【0088】
以上の各実験例の結果から、本技術によれば3層構造の絶縁膜を採用したので、十分な絶縁耐圧特性を確保しつつ、低電圧であってもより広範囲に亘る界面形状の変化を正確に再現可能であることが確認された。
【0089】
以上、いくつかの実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記第3の実施の形態では、波面変換偏向部60における液体光学素子1Aにより、集光もしくは発散作用と、偏向作用との双方を発揮させるようにした。しかしながら、波面変換部と偏向部とを個別に設け、集光もしくは発散作用と、偏向作用とを別々のデバイスによって表示画像光に付与するようにしてもよい。
【0090】
また、図19に示したように、1組の表示画素52L,52Rについて複数の液体光学素子1Aを対応させ、それら複数の液体光学素子1Aを組み合わせて1つのシリンドリカルレンズとして機能させるようにしてもよい。なお、図19では、液体光学素子1A1,1A2,1A3により、1つのシリンドリカルレンズを構成する例を示している。
【0091】
また、上記実施の形態では、2次元画像生成手段(表示部)としてバックライトを使用するカラー液晶ディスプレイを例示したが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば有機EL素子を用いたディスプレイやプラズマディスプレイであってもよい。
【0092】
また、本技術の液体光学素子は、表示装置に限定して適用されるものではなく、光学的作用を必要とする種種のデバイスへの応用が可能である。
【0093】
また、本技術は以下のような構成を取り得るものである。
(1)
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1の電極の、前記第2の電極と対向する面を覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記絶縁膜と前記第2の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記絶縁膜の最上層に位置し、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
光学素子。
(2)
前記イオンバリア層は、パラキシリレン骨格を繰り返し単位とするポリマーを含む
上記(1)記載の光学素子。
(3)
前記撥水層は、フッ素含有樹脂を含む
上記(1)または(2)に記載の光学素子。
(4)
前記誘電体層は、Al2 3 ,Ta2 5 ,ZrO2 ,ZnO2 ,TiO2 ,MgOおよびHfO2 のうちの少なくとも1種を含む
上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の光学素子。
(5)
前記第1の電極は、前記絶縁膜と反対側に位置する第1の基板に設けられたものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極と反対側に位置する第2の基板に設けられたものである
上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の光学素子。
(6)
前記第1の基板は、ポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)およびポリオレフィン(PO)のうちの少なくとも1種を含む透明樹脂基板である
上記(5)に記載の光学素子。
(7)
前記第2の電極は、接地電極である
上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の光学素子。
(8)
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、
前記隔壁の壁面に、前記複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
光学素子アレイ。
(9)
表示手段と、光学素子アレイとを備え、
前記光学素子アレイは、
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、
前記隔壁の壁面に、前記複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
表示装置。
(10)
表示手段と光学素子アレイとを有する表示装置を備えた電子機器であって、
前記光学素子アレイは、
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、
前記隔壁の壁面に、前記複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
電子機器。
【符号の説明】
【0094】
1,1A…液体光学素子、2…液体光学素子アレイ、11…下部基板、12…下部電極、13…絶縁膜、131…誘電体層、132…イオンバリア層、133…撥水層、15…無極性液体、16…極性液体、17…上部電極、18…上部基板、19…側壁、20…制御部、21…スイッチ、22…電源、IF…界面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1の電極の、前記第2の電極と対向する面を覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記絶縁膜と前記第2の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記絶縁膜の最上層に位置し、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
光学素子。
【請求項2】
前記イオンバリア層は、パラキシリレン骨格を繰り返し単位とするポリマーを含む
請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記撥水層は、フッ素含有樹脂を含む
請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記誘電体層は、Al2 3 ,Ta2 5 ,ZrO2 ,ZnO2 ,TiO2 ,MgOおよびHfO2 のうちの少なくとも1種を含む
請求項1記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1の電極は、前記絶縁膜と反対側に位置する第1の基板に設けられたものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極と反対側に位置する第2の基板に設けられたものである
請求項1記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1の基板は、ポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)およびポリオレフィン(PO)のうちの少なくとも1種を含む透明樹脂基板である
請求項5記載の光学素子。
【請求項7】
前記第2の電極は、接地電極である
請求項1記載の光学素子。
【請求項8】
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、
前記隔壁の壁面に、前記複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
光学素子アレイ。
【請求項9】
表示手段と、光学素子アレイとを備え、
前記光学素子アレイは、
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、
前記隔壁の壁面に、前記複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
表示装置。
【請求項10】
表示手段と光学素子アレイとを有する表示装置を備えた電子機器であって、
前記光学素子アレイは、
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を複数のセル領域に区切る隔壁と、
前記隔壁の壁面に、前記複数のセル領域の各々において互いに対向して配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように順に積層された誘電体層、イオンバリア層および撥水層を含む絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備え、
前記誘電体層は、前記イオンバリア層よりも高い誘電率を有するものであり、
前記イオンバリア層は、前記極性液体に含まれるイオンの透過を抑制するものであり、
前記撥水層は、前記無極性液体に対して親和性を示すものである
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−37219(P2013−37219A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173781(P2011−173781)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】