光学素子、日射遮蔽装置、建具、窓材および光学素子の製造方法
【課題】入射光を部分的に反射させ周囲の温度上昇を抑制し、層間剥離のない耐久性に優れた光学素子、日射遮蔽装置、建具、窓材および光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光学素子は、形状層11と、光学機能層13と、包埋樹脂層12とを具備する。形状層11は、凹部111を形成する構造体11aを有する。光学機能層13は、構造体11aの上に形成され、赤外線を反射し可視光を透過させる。包埋樹脂層12は、凹部111を充填し第1の体積を有する構造層12a(第1の層)と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで構造層12aの上に形成された平坦層12b(第2の層)とを含む。包埋樹脂層12は、上記構造体11a及び光学機能層13を包埋する紫外線硬化樹脂で形成される。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光学素子は、形状層11と、光学機能層13と、包埋樹脂層12とを具備する。形状層11は、凹部111を形成する構造体11aを有する。光学機能層13は、構造体11aの上に形成され、赤外線を反射し可視光を透過させる。包埋樹脂層12は、凹部111を充填し第1の体積を有する構造層12a(第1の層)と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで構造層12aの上に形成された平坦層12b(第2の層)とを含む。包埋樹脂層12は、上記構造体11a及び光学機能層13を包埋する紫外線硬化樹脂で形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を部分的に反射させる光学素子、例えば、赤外線帯域の光を選択的に指向反射させ、可視光帯域の光を透過させる光学素子、かかる光学素子を備えた日射遮蔽装置、建具および窓材、並びに光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビル、住居などの建築用ガラスや車窓ガラスに太陽光の一部を吸収、又は反射させる層が設けられるケースが増加している。これは、地球温暖化防止を目的とした省エネルギー対策のひとつであり、太陽から注がれる光エネルギーが窓から屋内に入り、屋内温度が上昇することによる冷房設備の負荷を軽減することを目的としている。
【0003】
可視領域の透過性を維持しながら近赤外線を遮蔽する構造としては、近赤外領域に高い反射率を有する層を窓ガラスに設ける構造(例えば特許文献1参照)と、近赤外領域に高い吸収率を有する層(例えば特許文献2参照)を窓ガラスに設ける構造が知られている。また、窓ガラスではなく、道路標識などの用途ではあるが、光学構造層を有し、可視光に対する透過性を保ちながら、特定波長域の光線のみ再帰反射させることができる透明波長選択性再帰反射体が知られている(特許文献3参照)。この再帰反射体は、再帰反射構造を有する光学構造層と、再帰反射構造に沿って形成された波長選択反射層と、再帰反射構造を埋める光透過性樹脂層とを備える。光透過性樹脂層には、例えば、紫外線硬化樹脂等のエネルギー線硬化樹脂で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/087680号公報
【特許文献2】特開平6−299139号公報
【特許文献3】特開2007−10893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の構造では、エネルギー線硬化樹脂の硬化後の残留応力を緩和できず、再帰反射構造に沿って形成された波長選択反射層と、再帰反射構造を埋める光透過性樹脂の間の層間剥離に起因する光学素子の透過率の低下を招いていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、入射光を部分的に反射させ周囲の温度上昇を抑制し、層間剥離のない耐久性に優れた光学素子、日射遮蔽装置、建具、窓材および光学素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学素子は、形状層と、光学機能層と、包埋樹脂層とを具備する。
上記形状層は、凹部を形成する構造体を有する。
上記光学機能層は、上記構造体の上に形成され、入射光を部分的に反射させる。
上記包埋樹脂層は、上記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで上記第1の層の上に形成された第2の層とを含む。上記包埋樹脂層は、上記構造体及び上記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成される。
上記形状層および上記包埋樹脂層の少なくとも一つは、透光性を有するとともに上記入射光の入射面を有する。
【0008】
上記光学素子において、入射面を介して構造体に入射した光は、光学機能層によって部分的に反射される。構造体は形状層の表面に凹部を形成し、構造体の上に形成された光学機能層によって反射される光はその入射方向に指向性をもって反射される。したがって、光学機能層によって反射される光が赤外線帯域の光となるように設計されることで、入射光を正反射させる場合に比べて周囲の温度上昇を抑制することができる。また、光学機能層を透過する光が可視光帯域の光となるように設計されることで、温度上昇を抑制しつつ視認性に優れた採光が可能となる。
【0009】
また、上記光学素子において、包埋樹脂層は、凹部を充填する第1の層と、その上に形成された第2の層とを含むことで、構造体及び光学機能層の保護層として機能する。これにより、構造体及び光学機能層の損傷あるいは汚損を防止して、耐久性の向上を図ることが可能となる。また、第2の層は、凹部を充填する個々の第1の層を相互に連結する機能を有し、当該第2の層は、第1の層の体積(第1の体積)の5%以上の体積(第2の体積)を有する厚みで形成される。これにより、エネルギー線硬化樹脂の硬化後の残留応力を第2の層で緩和でき、光学機能層と第1の層との間の層間剥離に起因する光学素子の透過率の低下を長期にわたって抑制することができる。
【0010】
上記構造体の形状は限定されず、例えば、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、またはコーナーキューブ状等でもよい。
【0011】
上記エネルギー線効果樹脂は、典型的には、紫外線硬化樹脂である。これ以外に、電子線やX線、熱線あるいは可視光の照射によって硬化する樹脂が用いられてもよい。上記形状層は、エネルギー線硬化樹脂で形成されてもよいし、他の材料、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂で形成されてもよい。
【0012】
上記光学素子は、フィルム、シートあるいはブロック状に形成することができる。上記光学素子は、建築用、車載用等の内装材、外装材あるいは窓材に貼り付けて使用されることができる。
【0013】
上記第2の体積が上記第1の体積の5%未満の場合、エネルギー線硬化樹脂の残留応力を第2の層で緩和することができないことで、長期にわたって第1の層と光学機能層との間の剥離を抑制できない場合がある。第2の体積の大きさは、エネルギー線硬化樹脂の収縮応力の大きさで設定され、硬化収縮率が3体積%以上であるエネルギー線硬化樹脂が用いられる場合に本発明は効果的である。
【0014】
また、上記エネルギー線硬化樹脂が8体積%以上の硬化収縮率を有する場合、上記第2の体積は、上記第1の体積の15%以上とすることができる。さらに、上記エネルギー線硬化樹脂が13体積%以上の硬化収縮率を有する場合、上記第2の体積は、上記第1の体積の50%以上とすることができる。これにより、エネルギー線硬化樹脂の硬化時において、光学機能層と第1の層との間の剥離を抑制することができる。
【0015】
上記光学素子は、前記形状層側および前記包埋樹脂層側の少なくとも一方に積層された、透光性を有する基材をさらに具備してもよい。
これにより、上記構造体および/または光学機能層の保護効果が高まるとともに、光学素子の生産性を高めることができる。
【0016】
本発明の一形態に係る窓材は、第1の支持体と、光学機能層と、第2の支持体と、窓本体とを具備する。
上記第1の支持体は、凹部を形成する構造体を有する。
上記光学機能層は、上記構造体の上に形成され、入射光を部分的に反射させる。
上記第2の支持体は、上記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで上記第1の層の上に形成された第2の層とを含む。上記第2の支持体は、上記構造体及び上記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成される。
上記窓本体は、上記第2の支持体と接合される。
【0017】
上記窓材によれば、光学機能層によって反射される光が赤外線帯域の光となり、光学機能層を透過する光が可視光帯域の光となるように設計されることで、周囲の温度上昇を抑制しつつ視認性に優れた採光が可能となる。また、光学機能層と第1の層との間の剥離を長期にわたって抑制でき、耐久性を高めることができる。
【0018】
本発明の一形態に係る光学素子の製造方法は、凹部を形成する構造体を有する第1の支持体を形成する工程を含む。上記構造体の上に、入射光を部分的に反射させる光学機能層が形成される。上記構造体及び上記光学機能層をエネルギー線硬化樹脂で包埋することで、上記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで上記第1の層の上に形成された第2の層とを含む第2の支持体が形成される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、特定波長帯域の光を部分的に反射し特定波長帯域以外の光を透過させ、層間剥離のない耐久性に優れた光学素子、日射遮蔽装置、建具、窓材および光学素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学素子及びこれを備えた熱線反射窓の概略構成を示す断面図である。
【図2】上記光学素子における形状層の一構成例を示す部分斜視図である。
【図3】上記光学素子における形状層の他の構成例を示す部分斜視図である。
【図4】上記光学素子における形状層の他の構成例を示す部分平面図である。
【図5】上記光学素子における包埋樹脂層を説明する要部の断面図である。
【図6】上記光学素子の一作用を説明する断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光学素子の製造方法を説明する各工程の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る光学素子の製造方法を説明する各工程の断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る光学素子の製造装置の概略構成図である。
【図10】図9の製造装置における要部の平面図である。
【図11】上記形状層を作製するための金型の構成例を示す要部の概略断面図である。
【図12】本発明の実施例において説明する、上記包埋樹脂層の平坦層の体積比と、高温高湿試験前後における透過率の変化との関係を示す図である。
【図13】本発明の変形例に係る、光学素子に対して入射する入射光と、光学素子により反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図14】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図15】本発明の変形例に係る、光学素子の構造体の一構成例を示す斜視図である。
【図16】(A)は、本発明の変形例に係る、形状層に形成された構造体の形状例を示す斜視図であり、(B)は、形状層に形成された構造体の主軸の傾きの方向を示す断面図である。
【図17】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図18】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図19】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図20】本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す斜視図である。
【図21】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示した形状層のB−B線に沿った断面図であり、(C)は、(A)に示した形状層のC−C線に沿った断面図である。
【図22】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示した形状層のB−B線に沿った断面図であり、(C)は、(A)に示した形状層のC−C線に沿った断面図である。
【図23】本発明の適用例に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。
【図24】(A)は、本発明の適用例に係るブラインドの要部の断面図であり、(B)はその変形例を示す断面図である。
【図25】(A)は、本発明の適用例に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図であり、(B)はその要部の断面図である。
【図26】(A)は本発明の適用例に係る建具の一構成例を示す斜視図であり、(B)はその要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[光学素子の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子の一構成例を示す概略断面図である。本実施形態の光学素子1は、形状層11(第1の支持体)と、包埋樹脂層12(第2の支持体)と、これら形状層11及び包埋樹脂層12の間に形成された光学機能層13とを含む積層体10を有する。また、本実施形態の光学素子1は、形状層11に積層される透明な第1の基材21と、包埋樹脂層12に積層される透明な第2の基材22とを有する。光学素子1は、第2の基材22上に形成された接合層23を介して、建築窓あるいは車窓用の窓本体30に接合される。
【0023】
以下、光学素子1の各部の詳細について説明する。
【0024】
[形状層]
形状層11は、透明な樹脂材料で形成されており、例えば、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、エポキシ等の熱硬化性樹脂、アクリルなどの紫外線硬化樹脂で形成されている。本実施形態では、後述する包埋樹脂層12と同様な紫外線硬化樹脂で形成されている。形状層11は、光学機能層13を支持する支持体としての機能を有し、所定厚みのフィルム状、シート状、プレート状あるいはブロック状に形成される。
【0025】
形状層11は、光学機能層13が形成される側の面に配列された複数の凹部111を形成する複数の構造体11aを有する。形状層11の構造体11a側とは反対側の面11bは平坦面である。
【0026】
本実施形態において、凹部111は、指向反射が可能な形状を有しており、例えば、角錐形状、円錐形状、角柱形状、曲面形状等で形成されている。個々の凹部111は、同一の形状及び大きさで形成されるが、領域ごとに又は周期的に、形状あるいは大きさを異ならせてもよい。
【0027】
図2は、三角柱形状(プリズム形状)の凹部111を形成する構造体11aが一次元配列された形状層11の部分斜視図、図3は、曲面形状(シリンドリカルレンズ形状)の凹部111を形成する構造体11aが一次元配列された形状層11の部分斜視図である。図4は、三角錐形状の凹部111を形成する構造体11a(デルタ稠密アレイ)が二次元配列された形状層11の部分平面図である。ただし、凹部111(または構造体11a)の形状はこれらに限定されず、例えば、コーナーキューブ状、半球状、半楕円球状、自由曲面状、多角形状、円錐形状、多角錐状、円錐台形状、放物面状などの凸状または凹状などであってもよい。また、凹部111の底面は、例えば、円形状、楕円形状、または三角形状、四角形状、六角形状もしくは八角形状などの多角形状を有していてもよい。
【0028】
構造体11a(凹部111)の配列ピッチ(凹部111の頂点間の間隔)は、特に限定されず、例えば数十μm〜数百μmの間で適宜設定することができる。構造体11aのピッチは、好ましくは5μm以上5mm以下、より好ましくは5μm以上250μm未満、さらに好ましくは20μm以上200μm以下である。構造体11aのピッチが5μm未満であると、凹部111の形状を所望のものとすることが難しい上、光学機能層の波長選択特性は一般的には急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると回折が生じて高次の反射まで視認されるため、指向反射に必要な凹部111の形状を考慮した場合、必要な膜厚が厚くなりフレキシブル性が失われ、窓本体30などの剛体に貼り合わせることが困難になる。また、構造体11aのピッチを250μm未満にすることにより、さらにフレキシブル性が増し、ロールツーロールでの製造が容易となり、バッチ生産が不要となる。窓などの建材に本発明の光学素子を適用するためには、数m程度の長さが必要であり、バッチ生産よりもロールツーロールでの製造が適している。また、凹部111の深さも特に限定されず、例えば、10μm〜100μmとされる。凹部111のアスペクト比(深さ寸法/平面寸法)は特に限定されず、例えば0.5以上である。
【0029】
[光学機能層]
光学機能層13は、形状層11の構造体11aの上に形成される。光学機能層13は、特定波長帯域(第1の波長帯域)の光を反射し特定波長帯域以外(第2の波長帯域)の光を透過させる光学多層膜を含む、波長選択反射層である。本実施形態において、上記特定波長帯域の光は近赤外線を含む赤外線帯域であり、上記特定波長帯域以外の光は可視光帯域である。
【0030】
光学機能層13は、例えば、第1の屈折率層(低屈折率層)と、第1の屈折率層よりも高い屈折率を有する第2の屈折率層(高屈折率層)とを交互に複数積層してなる積層膜で形成される。あるいは、光学機能層13は、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層または透明導電層とを、交互に積層してなる積層膜で形成される。
【0031】
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgCu、AgBi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFeなどを用いることができる。上記光学透明層は、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。上記透明導電層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、インジウムドープ酸化錫(ITO)、カーボンナノチューブ含有体、インジウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化錫などを主成分とする。若しくは、これらのナノ粒子や金属などの導電性を持つ材料のナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤーを樹脂中に高濃度に分散させた層を用いてもよい。
【0032】
なお、これらの光学透明層または透明導電層は、Al、Gaなどのドーパントを含有していてもよい。金属酸化物層をスパッタ法等で形成する場合に、膜質や平滑性が向上するからである。例えば、ZnO系酸化物の場合、GaおよびAlをドープした酸化亜鉛(GAZO)、Alをドープした酸化亜鉛(AZO)、およびGaをドープした酸化亜鉛(GZO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0033】
また、積層膜に含まれる高屈折率層の屈折率は、1.7以上2.6以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.8以上2.6以下、更に好ましくは1.9以上2.6以下である。これにより、クラックが発生しない程度の薄い膜で可視光領域での反射防止を実現できるからである。ここで、屈折率は、波長550nmにおけるものである。高屈折率層は、例えば、金属の酸化物を主成分とする層である。金属の酸化物としては、層の応力を緩和し、クラックの発生を抑制する観点からすると、酸化亜鉛以外の金属酸化物を用いることが好ましい場合もある。特に、酸化ニオブ(例えば、五酸化ニオブ)、酸化タンタル(例えば、五酸化タンタル)、および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。高屈折率層の膜厚は、好ましくは10nm以上120nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上80nm以下である。膜厚が10nm未満であると、可視光が反射しやすくなる傾向がある。一方、膜厚が120nmを超えると、透過率の低下やクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0034】
光学機能層13は、無機材料からなる薄膜の多層膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層が積層された膜でもよい。光学機能層13の厚みは特に限定されず、目的とする波長帯域の光を所望の反射率で反射できる膜厚を有していればよい。光学機能層13の形成方法としては、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等のドライプロセスや、ディップコーティング法、ダイコーティング法等のウェットプロセスを用いることができる。光学機能層13は、構造体11aの上にほぼ均一な厚みで形成される。なお、光学機能層13の平均膜厚は、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。光学機能層13の平均膜厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。
【0035】
また、光学機能層13は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能層を含んでいてもよい。該機能層を単層または複層で用いてもよいし、上述した積層膜、透明導電層と組み合わせて用いてもよい。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料を用いることができる。
【0036】
フォトクロミック材料とは、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、例えば紫外線などの光照射により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。フォトクロミック材料としては、例えばCr、Fe、NiなどをドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb2O5などの遷移金属酸化物を用いることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
【0037】
サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。サーモクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。サーモクロミック材料としては、例えばVO2などを用いることができる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。また、VO2などのサーモクロミック材料を主成分とする層を、TiO2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
【0038】
または、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。このとき、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0039】
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の以下により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。より具体的には、エレクトロクロミック材料としては、例えば、プロトンなどのドープまたは脱ドープにより、反射特性が代わる反射型調光材料を用いることができる。反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態、および/またはその中間状態に制御することができる材料である。このような反射型調光材料としては、例えば、マグネシウムおよびニッケルの合金材料、マグネシウムおよびチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料などを用いることができる。
【0040】
具体的な光学機能層の構成としては、例えば、形状層上に、上記合金層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta2O5などの電解質層、プロトンを含むWO3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。または、形状層上に透明導電層、電解質層、WO3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。これらの構成では、透明導電層と対向電極との間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープまたは脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるためには、エレクトロクロミック材料をTiO2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。また、その他の構成として、形状層上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成を用いることができる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中に針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶を四方八方に向かせて波長選択反射状態にしたりすることができる。
【0041】
[包埋樹脂層]
包埋樹脂層12は、例えば、透明な紫外線硬化樹脂で形成される。包埋樹脂層12は、形状層11の構造体11a及び光学機能層13を包埋する。
【0042】
紫外線硬化樹脂を構成する組成物は、例えば、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有する。また、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤、酸化防止剤などがさらに含まれてもよい。
【0043】
アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを用いることができる。このモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味する。オリゴマーとは、分子量500以上6000以下の分子をいう。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などを単独で、または併用して用いることができる。
【0044】
図5は、包埋樹脂層12の構成を模式的に示す要部断面図である。包埋樹脂層12は、光学機能層13が形成された凹部111を充填する、断面三角形状の構造層12a(第1の層)と、構造層12aの上に形成された平坦層12b(第2の層)とを有する。構造層12aは、構造体11aを構成する各凹部111の内部に形成され、凹部111の深さと同等の厚みを有する。構造層12aは、凹部111の内壁を被覆する光学機能層13と密着する。平坦層12bは、凹部111を充填する個々の構造層12aを相互に連結する機能を有し、その表面は平坦に形成されている。
【0045】
また、平坦層12bは、包埋樹脂層12を形成する際の紫外線硬化樹脂の硬化収縮による層間剥離を緩和する機能を有する。すなわち、一般に紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する際、当該樹脂の組成や含有物質等によって定まる所定の収縮率で収縮する。当該収縮応力が適度に緩和されないと、樹脂に作用する熱負荷等を原因として光学機能層との界面に応力が集中し、上記界面での層間剥離が引き起こされることで、経時的に光学素子の透過率が低下するおそれがある。特に、誘電層や金属層に対する樹脂の密着性は比較的低いため、光学機能層に対して樹脂の層間剥離は発生しやすい。そこで本実施形態では、平坦層12bを形成することで、構造層12aに残留する内部応力を緩和して、光学機能層13との界面剥離を抑制するようにしている。
【0046】
平坦層12bの厚みは、用いられる樹脂の硬化収縮率と、構造層12aの体積とによって定められる。例えば、包埋樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂の硬化収縮率が3体積%以上である場合、平坦層12bは、構造層12aの体積(第1の体積)の5%以上の体積(第2の体積)を有する厚みで形成される。5%未満の場合、構造層12aの残留応力を平坦層12bで緩和することができずに、長期にわたって構造層12aと光学機能層13との間の剥離を抑制できない場合がある。
【0047】
上述のように、平坦層12bの厚みは、構造層12a(凹部111)との体積比で決定される。上記第1の体積は、個々の凹部111の体積と定義されてもよいし、すべての凹部111の総体積と定義されてもよい。前者の場合の第2の体積は、単位領域(個々の凹部111の形成領域に相当する。)あたりの平坦層12bの体積であり、後者の場合の第2の体積は、平坦層12b全体の体積である。
【0048】
また、上記紫外線硬化樹脂が8体積%以上の硬化収縮率を有する場合、平坦層12bの体積は、構造層12aの体積の15%以上とすることができる。さらに、上記紫外線硬化樹脂が13体積%以上の硬化収縮率を有する場合、平坦層12bの体積は、構造層12aの体積の50%以上とすることができる。これにより、当該紫外線硬化樹脂の硬化時において、光学機能層13と構造層12aとの間の剥離を抑制することができる。
【0049】
形状層11および包埋樹脂層12の少なくとも一方は、透明性を有している。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。形状層11と包埋樹脂層12との屈折率差は、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンは殆ど気にならない。形状層11および包埋樹脂層12のうち、窓本体30などとの貼り合わせ側となる支持体は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、部材を削減することができる。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0050】
形状層11と包埋樹脂層12の両方が透明性を有する場合には、形状層11および包埋樹脂層12は、可視領域において透明性を有する同一材料からなることが好ましい。形状層11と包埋樹脂層12とを同一の材料により構成することで、両者の屈折率が同程度となるので、可視光の透明性を向上させることができる。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収がないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、本発明では両者を備えることが好ましい。本発明に係る光学素子1を指向反射体として用いる場合には、指向反射する特定の波長以外の光を透過することが好ましく、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないことが好ましい。ただし、その用途によっては、一方の支持体に意図的に散乱性を持たせることが可能である。
【0051】
形状層11と包埋樹脂層12とを樹脂層で形成する場合、光学機能層の形成前に形成される樹脂層(形状樹脂層)と、光学機能層の形成後に形成される樹脂層(包埋樹脂層)は、屈折率が略同一であることが好ましい。しかし、両樹脂層に同一の有機樹脂を用い、かつ光学機能層が無機層である場合に、包埋樹脂層との密着性を向上させるために、添加剤を形状樹脂層に配合すると、形状転写の際にNi−P型から形状樹脂層を剥離させにくくなる。光学機能層をスパッタ法により形成する場合は、高エネルギーの粒子が付着するため、形状樹脂層と光学機能層との密着性が問題になることは少ない。そのため、形状樹脂層の添加剤の添加量を必要最低限に抑えておき、包埋樹脂層に密着性を向上する添加剤を導入することが好ましい。この際、包埋樹脂層と形状樹脂層の屈折率が大きく異なっていると、曇って反対側が見難くなるが、添加剤の添加量を1質量%以下とすれば、屈折率も殆ど変化がないため、透過鮮明性が非常に高い光学素子を得ることができる。仮に、添加剤を多量に添加する必要がある場合には、形状樹脂層を形成するための樹脂組成物の配合を調整し、包埋樹脂層と屈折率を略同一とすることが好ましい。
【0052】
また、光学素子1や窓材などに意匠性を付与する観点からすると、形状層11および/または包埋樹脂層12に、可視光領域における特定の波長の光を吸収する特性を付与してもよい。このような機能を有する材料としては、形状層11または包埋樹脂層12の主成分である材料(例えば、樹脂)に顔料を分散させたものを用いることができる。顔料は、有機系顔料および無機系顔料のいずれであってもよいが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料を用いることが好ましい。具体的には、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO2またはCr、WドープTiO2)、クロムグリーン(Cr2O3など)、ピーコック((CoZn)O(AlCr)2O3)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)2O3)、紺青(CoO・Al2O3・SiO2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO2・SiO2)、陶試紅(MnドープAl2O3)、サーモンピンク(FeドープZrSiO4)などの無機顔料、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0053】
[第1及び第2の基材]
図1に示すように、形状層11、光学機能層13及び包埋樹脂層12の積層体10は、第1及び第2の基材21、22によって挟み込まれる。
【0054】
第1及び第2の基材21、22は、透明性を有する材料で形成される。基材21、22の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、これらに限られない。
【0055】
第1及び第2の基材21、22は、積層体10の保護層としての機能を有する。第1及び第2の基材21、22として、ポリエチレンテレフタレート等のように紫外線硬化樹脂よりも水蒸気透過率の低い材料を用いることで、積層体10の吸湿による光学機能層13と包埋樹脂層12との間の層間剥離を抑制することができる。また、第1及び第2の基材21、22は、形状層11及び包埋樹脂層12と同等の屈折率を有する材料で形成されることで、界面における光の反射ロスを低減し光学素子1の透過率の向上を図ることができる。さらに、第1及び第2の基材21、22として、紫外線の透過率に優れた材料が用いられることで、形状層11及び包埋樹脂層12を紫外線硬化樹脂によって容易に形成することが可能となる。
【0056】
第1の基材21は、形状層11の構造体11aとは反対側の平坦面11bに積層される。第2の基材22は、包埋樹脂層12の平坦層12bの上に積層される。第1の基材21および第2の基材22は両方設けられる場合に限らず、少なくとも一方のみ設けられればよい。
【0057】
[光学素子が指向反射体として機能する場合の説明]
図13は、光学素子1に対して入射する入射光と、光学素子1により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学素子1は、光Lが入射する平坦な入射面S1を有する。光学素子1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過する。また、光学素子1は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。但し、θは、入射面S1に対する垂線l1と、入射光Lまたは反射光L1とのなす角である。φは、入射面S1内の特定の直線l2と、入射光Lまたは反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線l2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学素子1の入射面S1に対する垂線l1を軸として光学素子1を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l2として選択するものとする。なお、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0058】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、および透過させる特定の光は、光学素子1の用途により異なる。例えば、窓本体30に対して光学素子1を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学体をガラス窓などの窓本体に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射を有し、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
【0059】
指向反射する方向φoは、−90°以上、90°以下であることが好ましい。光学素子1を窓本体30に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学素子1が有用である。また、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、好ましくは(θ、−φ)から5度以内、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内の範囲内のずれのことをいう。この範囲にすることで、光学素子1を窓本体30に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、例えば球面や双曲面の一部や三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0060】
特定波長体の光の指向反射が、再帰反射近傍方向、すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長体の光の反射方向が、(θ、φ)近傍であることが好ましい。光学素子1を窓本体30に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内である。この範囲にすることで、光学素子1を窓本体30に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、再帰反射方向は入射方向と等しくないとならないが、本発明のように特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0061】
透過性を持つ波長帯に対する写像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。写像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した写像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。写像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、写像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0062】
透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。光学素子1の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、写像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置および測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
【0063】
光学素子1の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、光学層2および波長選択反射層3を透過し、出射面S2から出射される透過光および反射光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。更に、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩くと色が変化して見えたりするため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、0°以上60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2から入射し、光学層2および波長選択反射層3により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、光学素子1の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
【0064】
[熱線反射窓]
本実施形態の光学素子1は、包埋樹脂層12が外光の入射側(屋外側)、形状層11が外光の出射側となるように窓本体30に接合される。第2の基材22は接合層23を介して窓本体30に接合され、第2の基材22の接合層23との界面S1は平坦面であり、窓本体30を透過した光の入射面を形成する。一方、第1の基材21の空気と接する表面S2は、光学素子1を透過した光の出射面を形成する。これら光学素子1、接合層23、窓本体30等により、本実施形態の熱線反射窓100(窓材)が構成される。
【0065】
接合層23は、透明な接着剤あるいは粘着材で形成される。接合層23は、第2の基材22および/または窓本体30と同等な屈折率を有する材料で形成されることで、界面における光の反射ロスを低減し光学素子1の透過率の向上を図ることができる。
【0066】
窓本体30は、建築用あるいは車載用の各種ガラス材料で形成されるが、ポリカーボネート板やアクリル板などの各種樹脂材料で形成されてもよい。また、窓本体30は、単層構造に限られずペアガラス(合わせガラス)のような複層構造であってもよい。
【0067】
図6は、光学素子1(積層体10)の一作用を説明する模式図である。光学素子1は、光入射面S1に入射する太陽光のうち、赤外線帯域の光L1を光学機能層13で反射する。また、光学素子1は、光入射面S1に入射する太陽光のうち可視光帯域の光L2を透過させて光出射面S2から出射させる。これにより、屋外あるいは車外の視認性を確保しつつ、屋内あるいは車内の温度上昇を抑制することができる。
【0068】
本実施形態の光学素子1において、光学機能層13は、構造体11a上に形成されているため、赤外光(熱線)L1はその入射方向に指向性をもつように再帰反射される。したがって、入射光が選択反射層で正反射される場合に比べて、窓本体30周囲の気温の上昇を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の光学素子1において、包埋樹脂層12は、構造体11a及び光学機能層13の保護層として機能する。これにより、構造体11a及び光学機能層13の損傷あるいは汚損を防止して、耐久性の向上を図ることが可能となる。また、包埋樹脂層12を構成する平坦層12bは、構造層12aの体積(第1の体積)の5%以上の体積(第2の体積)を有する厚みで形成される。これにより、包埋樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂の硬化後の残留応力を平坦層12bで効果的に緩和することができる。その結果、光学機能層13と構造層12aとの間の層間剥離に起因する光学素子1の透過率の低下を長期にわたって抑制でき、光学素子1の耐久性を高めることができる。
【0070】
[光学素子の製造方法]
次に、本実施形態の光学素子1の製造方法について説明する。図7及び図8は、光学素子1の製造方法を説明する概略工程図である。
【0071】
まず、図7(A)に示すように、構造体11aを有する形状層11を形成する。形状層11の形成方法としては、例えば、あらかじめ構造体11aに対応する凹凸形状が形成された型を作製し、上記凹凸形状を紫外線硬化樹脂に転写する方法が用いられる。基材21は、上記転写型から紫外線硬化樹脂を剥離する際の支持体として機能する。これにより、紫外線硬化樹脂からなる形状層11が形成される。
【0072】
次に、図7(B)に示すように、形状層11の構造体11a上に光学機能層13を形成する。光学機能層13は、赤外線帯域の光を反射し可視光帯域の光を透過させることが可能なように設計された光学多層膜で形成される。光学機能層13の形成には、スパッタ法、真空蒸着法等のドライプロセスが用いられるが、ディップ法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法等のウェットプロセスが用いられてもよい。
【0073】
続いて、図7(C)に示すように、構造体11aの上に形成された光学機能層13の上に、未硬化のペースト状の紫外線硬化樹脂12Rを所定量供給する。そして、図8(A)に示すように、樹脂12Rの上に第2の基材22を重ねた後、第2の基材22を形状層11に押し付けることで樹脂12Rを形状層11の構造体11a全体に行き渡らせる。これにより、構造体11a及び光学機能層13が紫外線硬化樹脂12Rで包埋される。このとき、形状層11と第2の基材22との間隔Tが所定の値となるように、第2の基材22の押し付け圧が調整される。
【0074】
間隔Tは、平坦層12b(図5参照)の厚みに相当し、間隔Tの厚み領域に存在する樹脂12Rの体積(第2の体積)が構造層12aの体積(第1の体積)の5%以上となる値に調整される。これにより、樹脂12Rの硬化処理に際して、凹部111の形成領域に存在する構造層12aの残留応力に起因する、光学機能層13に対する界面剥離を効果的に抑制することができる。
【0075】
次に、図8(B)に示すように、紫外線ランプ40を用いて、樹脂12Rに第2の基材22を介して紫外線を照射し、樹脂12Rを硬化させる。これにより、包埋樹脂層12が形成され、図8(C)に示すように、本実施形態に係る光学素子1が製造される。光学素子1の厚みは特に限定されず、仕様又は用途に応じて適宜定められ、例えば50μm〜300μmとされる。
【0076】
図9は、光学素子1の製造装置の一例を示す概略図である。図示する製造装置50は、帯状の第1の基材21Fを供給する第1の供給ローラ51と、帯状の第2の基材22Fを供給する第2の供給ローラ52と、紫外線硬化樹脂12Rを吐出するノズル61と、紫外線ランプ40とを有する。第1の基材21Fは、図7(B)に示したように光学機能層13が形成された形状層11を支持する。第2の基材22Fは、図8(A)に示した第2の基材22に相当する。製造装置50は、第1及び第2のラミネートローラ54、55と巻取りローラ53とをさらに有する。第1のラミネートローラ54はゴム製であり、第2のラミネートローラ55は金属製である。
【0077】
第1の基材21F上の光学機能層13には、塗布ノズル61により紫外線硬化樹脂12Rが塗布される。第1の基材21Fと第2の基材22Fは、ガイドローラ56、57により、ラミネートローラ54、55の間に案内される。ラミネートローラ54、55は第1の基材21Fと第2の基材22Fとを紫外線硬化樹脂12Rを挟むようにラミネートし、積層フィルム1Fを作製する。積層フィルム1F内の紫外線硬化樹脂12Rは、紫外線ランプ40から紫外線の照射を受けることで硬化する。巻取りローラ53は、作製された積層フィルム1Fを連続的に巻き取る。積層フィルム1Fは、図8(C)に示した帯状の光学素子1に相当する。
【0078】
製造装置50によれば、光学素子1Fを連続して製造することができる。光学素子1Fの製造に第1及び第2の基材21F、22Fを用いることで、光学素子1Fの生産性を高めることができる。光学素子1Fは、製品サイズに裁断されることで使用される。
【0079】
製造装置50は、図9に示した構成に限られず、例えば、紫外線ランプ40は、第2の基材22F側から紫外線を照射するように配置されてもよい。また、第1の基材21Fは第2の供給ローラ52から供給されてもよいし、第2の基材22Fは第1の供給ローラ52から供給されてもよい。
【0080】
ラミネートローラ54、55は、図8(A)を参照して説明したように、紫外線硬化樹脂12Rを介して対向する第1の基材21F(光学機能層13)と第2の基材22F(22)との間に間隔Tを形成して積層フィルム1Fを作製する。間隔Tの調整方法としては、紫外線硬化樹脂12Rの粘度、基材21F及び22Fの張力、第2のラミネートローラ55に対する第1のラミネートローラ54の押し付け圧力などによって調整することができる。
【0081】
間隔Tの調整方法の一例を図10に示す。図示の例は、第1のラミネートローラ54と第2のラミネートローラ55との間に形成された空間部S内で積層フィルム1Fをラミネートすることで、上記間隔Tを確保するようにしている。空間部Sは、第1のラミネートローラ54の両端に形成されたフランジ状のスペーサ54sを第2のラミネートローラ55に接触させることで形成される。空間部Sの厚みは、スペーサ54sの弾性変形を利用して、第2のラミネートローラ55に対する第1のラミネートローラ54の押圧力で調整することができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0083】
包埋樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂の種類と包埋樹脂層12の平坦層12bの体積とが異なる複数の光学素子サンプルを作製し、各サンプルの透過率の経時変化を測定した。
【0084】
サンプルの作製に先立ち、図11に示す金型80を作製した。金型80はNi−P製であり、断面二等辺三角形状のプリズム形状の凹部が連続して配列された構造面80aを有する。プリズム形状の凹部の幅(配列ピッチ)は50μm、深さは25μm、プリズム頂角は90°(最も指向反射性が高くなる角度)とした。また、以下の基本組成を有する3種類の紫外線硬化樹脂A、B及びCを作製した。樹脂Aの硬化収縮率は3体積%、樹脂Bの硬化収縮率は8体積%、樹脂Cの硬化収縮率は13体積%であった。
【0085】
<樹脂Aの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス(同社の登録商標。以下同じ。)」):97重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184(「イルガキュア」は、スイス国 チバ ホールディング インコーポレーテッド社の登録商標。以下同じ。)」:3重量%
<樹脂Bの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス」):82重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):15重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
<樹脂Cの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス」):48.5重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):48.5重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
【0086】
(実施例1)
金型80の構造面80aに樹脂Bを塗布し、その上に厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4300」)を載置した。次に、PETフィルム側から紫外線を照射することで樹脂Bを硬化させた後、樹脂BとPETフィルムとの積層体を金型80から剥離した。これにより、プリズム形状の凹部111(図2)が配列された構造面を有する樹脂層(形状層11(図7(A))が作製された。
次に、得られた積層体のプリズム構造面に、光学機能層として、酸化亜鉛層及び銀層を交互に積層した。酸化亜鉛35nm、銀11nm、酸化亜鉛80nm、銀11nm、酸化亜鉛35nmという構成の多層膜をスパッタ法によって作製した。
次に、光学機能層の上に樹脂Bを塗布した後、PETフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4300」)を積層した。そして、当該樹脂Bを紫外線の照射によって硬化させることで、包埋樹脂層12(図8(C))を形成した。
【0087】
上述のようにして作製された光学素子サンプルを、常温下、ミクロトームで切断し、その断面画像を工業用顕微鏡(オリンパス社製「OLS3000」)を用いて取得した。対物レンズの倍率は50倍もしくは100倍とした。得られた断面画像から、平坦層12b(図5)に相当する領域の厚みT(図8(A))を、画像処理装置(三谷商事(株)製)によって測定した。そして、厚みTから上記凹部に対する平坦層の体積比(以下単に「体積比」という。)を計算した結果、15%であった。なお、体積比は、上記PETフィルムの積層時の押圧力で任意の値に調整可能とした。
【0088】
次に、上記光学素子サンプルの可視光(波長550nm)の透過率を測定した。そして、当該光学素子サンプルに対し、恒温恒湿槽(温度60℃、相対湿度90%)内に1500時間保持する高温高湿試験を実施した後、再び可視光(波長550nm)の透過率を測定し、透過率の変化を評価した。透過率の測定には、日本分光(株)製「V−7100」を用いた。
【0089】
(実施例2)
実施例1と同様な手順で体積比26%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0090】
(実施例3)
実施例1と同様な手順で体積比50%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0091】
(実施例4)
実施例1と同様な手順で体積比106%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0092】
(実施例5)
実施例1と同様な手順で体積比205%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0093】
(実施例6)
実施例1と同様な手順で体積比301%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0094】
(実施例7)
実施例1と同様な手順で体積比610%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0095】
(実施例8)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用いて、実施例1と同様な手順で体積比5%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0096】
(実施例9)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比50%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0097】
(実施例10)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比100%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0098】
(実施例11)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比204%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0099】
(実施例12)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比303%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0100】
(実施例13)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比612%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0101】
(比較例1)
実施例1と同様な手順で体積比0%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0102】
(比較例2)
実施例1と同様な手順で体積比14%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0103】
(比較例3)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用いて、実施例1と同様な手順で体積比0%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0104】
実施例1〜13及び比較例1〜3に係るサンプルの体積比、試験前後の透過率及び透過率変化の評価結果を、表1にまとめて示す。ここでは、透過率変化の評価として、透過率の変化量が2%以上を不合格「×」、透過率変化量が2%未満を合格「○」とした。また、樹脂A〜Cの平坦層の体積比と透過率変化との関係を図12に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1の結果から明らかなように、いずれの光学素子サンプルに関しても、高温高湿試験の後の透過率は、その試験前に比べて減少することが確認された。透過率の減少は、包埋樹脂層の残留応力により誘発された、光学機能層と包埋樹脂層との間の層間剥離に起因するものである。
【0107】
包埋樹脂層を樹脂Aで作製した光学素子サンプルにおいては、体積比5%の平坦層を有することで、透過率の減少量を2%未満に抑えることができる。一方、包埋樹脂層を樹脂Bで作製した光学素子サンプルにおいては体積比15%以上の平坦層を有することで、また、包埋樹脂層を樹脂Cで作製した光学素子サンプルにおいては体積比50%以上の平坦層を有することで、それぞれ、透過率の減少量を2%未満に抑えることができる。これにより、本実施例に係る光学素子サンプルによれば、紫外線硬化樹脂の残留応力に起因する包埋樹脂層と光学機能層との間の層間剥離を効果的に抑制でき、耐久性に優れた光学素子を得ることができる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0109】
例えば以上の実施形態では、光学機能層13は、赤外線帯域の光を反射し、可視光帯域の光を透過させるように構成されたが、これに限られない。例えば、可視光帯域において反射すべき波長帯域と透過させるべき波長帯域を設定することで、本発明に係る光学素子をカラーフィルタとして機能させることができる。
【0110】
また、包埋樹脂層12の作製に用いる紫外線硬化樹脂に、適宜の粒子径を有するフィラー(スペーサ)を混入することによって、上記間隔Tに相当する厚みの平坦層を形成するようにしてもよい。
【0111】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0112】
<変形例1>
光学機能層は、例えば、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過する波長選択反射層のほか、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を指向反射する反射層、または散乱が少なく反対側を視認できる透明性を有する半透過層であってもよい。反射層としては上述した金属層を用いることができ、その平均層厚は、好ましくは20μm、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。反射層3の平均層厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。反射層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0113】
一方、半透過層は、例えば、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有するものである。金属層の材料としては、例えば、上述の積層膜の金属層と同様のものを用いることができる。半透過層の具体例を下記に示す。
(1)構造体上に製膜する反射層をAgTi:8.5nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)として本発明に係る光学素子を得た。
(2)構造体上に製膜する反射層をAgTi:3.4nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)として本発明に係る光学素子を得た。
(3)構造体上に製膜する反射層をAgNdCu:14.5nm(Ag/Nd/Cu=99.0/0.4/0.6at%)として本発明に係る光学素子を得た。
【0114】
<変形例2>
図14は、本発明の変形例2に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。変形例2は、光の入射面に対して傾斜した複数の光学機能層13を、形状層および包埋樹脂層の間に備え、これらの光学機能層13が互いに平行または略平行に配列されている。図14は一例として、形状層11および包埋樹脂層12がともに透光性を有し、形状層11側から入射した特定の波長帯域の光L1が光学機能層13によって指向反射し、それ以外の波長帯域の光L2が透過する場合を示している。ただし、光入射面は包埋樹脂層12側であってもよい。また、形状層11および包埋樹脂層12の一方のみに透光性を持たせ、入射光L1の指向反射機能を有し、入射光L2の透過機能を有しない光学素子1とすることもできる。
【0115】
図15は、本変形例に係る光学素子の構造体の一構成例を示す斜視図である。構造体11aは、一方向に延在された三角柱状の凸部であり、この柱状の構造体11aが他の一方向に向かって一次元配列されることで形状層11の表面に凹部が形成されている。構造体11aの延在方向に垂直な断面は、例えば、直角三角形状を有する。構造体11aの鋭角側の傾斜面上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法などの、指向性を有する薄膜形成法により、光学機能層13が形成される。
【0116】
本変形例によれば、複数の光学機能層13を平行に配列していることより、光学機能層13による反射回数を、コーナーキューブ形状やプリズム形状の構造体11aを形成した場合に比べて低減することができる。したがって、反射率を高くすることができ、かつ、光学機能層13による光の吸収を低減できる。
【0117】
<変形例3>
図16(A)に示すように、構造体11aの形状を、光学素子1の入射面または出射面に垂直な垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体11aの主軸lmが、垂線l1を基準にして構造体11aの配列方向Aに傾くことになる。ここで、構造体11aの主軸lmとは、構造体断面の底辺の中点と構造体の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して略垂直に配置された窓本体30に光学素子1を貼る場合には、図16(B)に示すように、構造体11aの主軸lmが、垂線l1を基準にして窓本体30の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、上記形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。図16(A)および図16(B)では、プリズム形状の構造体11aを垂線l1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体11aを垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。
【0118】
構造体11aがコーナーキューブ形状の場合、稜線Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方が良く、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、光学素子に対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分のRが大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブでは、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れる。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けても良い。
【0119】
<変形例4>
図17は、本発明の変形例4に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。本変形例では、光学素子1の入射面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層6をさらに備えている。自己洗浄効果層6は、例えば、光触媒を含んでいる。光触媒としては、例えば、TiO2を用いることができる。
【0120】
上述したように、光学素子1は特定波長帯の光を部分的に反射する点に特徴を有している。光学素子1を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され部分反射特性(例えば、指向反射特性)が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。
【0121】
本変形例によれば、光学素子1の入射面上に自己洗浄効果層6を形成しているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、入射面に対する汚れなどの付着を抑制し、部分反射特性(例えば、指向反射特性)の低減を抑制できる。
【0122】
<変形例5>
本変形例は、光学素子1が、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、上記実施形態とは異なっている。光学素子1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、形状層若しくは包埋樹脂層の表面または内部、および光学機能層と形状層若しくは包埋樹脂層との間のうち、少なくとも一の箇所に設けられている。光学素子1を窓材などの部材に貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらにも適用可能である。光学素子1を室外側に対して貼り合わせる場合、光学機能層13と窓本体30などの部材の間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。光学素子1を窓材などの部材に貼り合わせる場合、光学機能層13と入射面との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学素子1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、光学機能層13との間に光散乱体を設けることが好ましい。
【0123】
図18(A)は、本変形例に係る光学素子の第1の構成例を示す断面図である。図18(A)に示すように、形状層11は、樹脂と微粒子110とを含んでいる。微粒子110は、形状層11の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子110としては、例えば、有機微粒子および無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子110としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子110としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、スチレン、アクリル、やそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0124】
図18(B)は、本変形例に係る光学素子の第2の構成例を示す断面図である。図18(B)に示すように、光学素子1は、形状層11の裏面に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の構成例と同様のものを用いることができる。
【0125】
図18(C)は、本変形例に係る光学素子の第3の構成例を示す断面図である。図18(C)に示すように、光学素子1は、光学機能層13と形状層11との間に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
【0126】
本変形例によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学素子1を曇らせて、光学素子1に対して意匠性を付与することができる。
【0127】
<変形例6>
上記実施形態では、光学素子1の包埋樹脂層12は平坦層12bを有していたが、本変形例では、図19に示すように、光学素子1は、凹凸層12cからなる入射面S1を有している。この入射面S1の凹凸形状と、形状層11の凹凸形状とは、例えば、両者の凹凸形状が対応するように形成されており、両者が有する凸部の頂部と凹部の最下部との位置が略一致しているか、若しくは、入射面S1の凹凸形状は、第1の光学層4の凹凸形状よりもなだらかであることが好ましい。
【0128】
ここで、凹凸層12cは、第2の体積を有する厚みで構造層12a(第1の層)の上に形成された第2の層に相当し、第2の体積は、構造層12aが有する第1の体積の5%以上である。そして、例えば、エネルギー線硬化樹脂で形成された、構造層12aと凹凸層12cからなる包埋樹脂層12によって、構造体及び光学機能層が包埋されている。
【0129】
<変形例7>
図20〜図22は、本発明に係る光学素子の構造体の変形例を示す断面図である。
【0130】
本変形例の一態様は、図20(A)および図20(B)に示すように、形状層11の一主面には、例えば、柱状の構造体(柱状体)11cを直交配列することにより形成されている。具体的には、第1の方向に向かって配列された第1の構造体11cと、上記第1の方向とは直交する第2の方向に向かって配列された第2の構造体11cとが、互いの側面を貫通するように配列されている。柱状の構造体11cは、例えば、上述したプリズム形状やレンチキュラー形状などの柱状を有する凸部または凹部である。
【0131】
また、形状層11の一主面に、例えば、球面状やコーナーキューブ状などの形状を有する構造体11cを最稠密充填状態で2次元配列することにより正方稠密アレイ、デルタ稠密アレイ、六方稠密アレイなどの稠密アレイを形成するようにしてもよい。正方稠密アレイは、例えば図21(A)〜図21(C)に示すように、四角形状(例えば正方形状)の底面を有する構造体11cを正方稠密状に配列させたものである。六方稠密アレイは、例えば図22(A)〜図22(C)に示すように、六方形状の底面を有する構造体11cを六方稠密状に配列させたものである。
【0132】
以下、本発明の適用例について説明する。
上述の実施形態では、本発明に係る光学素子を窓材などに適用する場合を例として説明したが、本発明に係る光学素子を他の内装部材や外装部材などに適用するようにしてもよい。これらの部材としては、壁や屋根のように固定された部材のみならず、季節や時間変動など、必要に応じて光学体の適用量を変更出来る部材なども挙げられる。光学体を複数の要素に分割し、角度を変更するなどの手段により、光学体への入射光線の透過量を調整可能な部材、例えばブラインドなどが挙げられる。また、巻き取ったり、折りたたんだりする事が可能である本光学体を適用した部材、例えばロールカーテンなどが挙げられる。更に、本光学体を枠組みなどに固定し、必要に応じ枠組み毎取り外しが可能な部材、例えば障子などが挙げられる。
【0133】
光学素子が適用された内装部材または外装部材としては、例えば、光学素子自体により構成された内装部材または外装部材、光学素子が貼り合わされた透明基材などにより構成された内装部材または外装部材などが挙げられる。このような内装部材または外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材または外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材または外装部材による室内側への散乱反射も殆どないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材を適用する事も出来る。
【0134】
<適用例1>
本適用例では、複数の日射遮蔽部材からなる日射遮蔽部材群の角度を変更することにより、日射遮蔽部材群による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(ブラインド装置)について説明する。
【0135】
図23は、本適用例に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。図23に示すように、日射遮蔽装置であるブラインド装置201は、ヘッドボックス203と、複数のスラット(羽)202aからなるスラット群(日射遮蔽部材群)202と、ボトムレール204とを備える。ヘッドボックス203は、複数のスラット202aからなるスラット群202の上方に設けられている。ヘッドボックス203からラダーコード206、および昇降コード205が下方に向かって延びており、これらのコードの下端にボトムレール204が吊り下げられている。日射遮蔽部材であるスラット202aは、例えば、細長い矩形状を有し、ヘッドボックス203から下方に延びるラダーコード206により所定間隔で吊り下げ支持されている。また、ヘッドボックス203には、複数のスラット202aからなるスラット群202の角度を調整するためのロッドなどの操作手段(図示省略)が設けられている。
【0136】
ヘッドボックス203は、ロッドなどの操作手段の操作により応じて、複数のスラット202aからなるスラット群202を回転駆動することにより、室内などの空間に取り込まれる光量を調整する駆動手段である。また、ヘッドボックス203は、昇降操作コード207などの操作手段の適宜操作に応じて、スラット群202を昇降する駆動手段(昇降手段)としての機能も有している。
【0137】
図24(A)は、スラットの第1の構成例を示す断面図である。図24(A)に示すように、スラット202は、基材211と、光学フィルム1とを備える。光学フィルム1は、基材211の両主面のうち、スラット群202を閉じた状態において外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学フィルム1と基材211とは、例えば、接着層などにより貼り合される。
【0138】
基材211の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材211の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第6の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
図24(B)は、スラットの第2の構成例を示す断面図である。図24(B)に示すように、第2の構成例は、光学フィルム1をスラット202aとして用いるものである。光学フィルム1は、ラダーコード205により支持可能であるとともに、支持した状態において形状を維持できる程度の剛性を有していることが好ましい。
【0140】
なお、本適用例では、本発明を横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に対して適用した例について説明したが、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対しても適用可能である。
【0141】
<適用例2>
本適用例では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールスクリーン装置について説明する。
【0142】
図25(A)は、本適用例に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図である。図25(A)に示すように、日射遮蔽装置であるロールスクリーン装置301は、スクリーン302と、ヘッドボックス303と、芯材304とを備える。ヘッドボックス303は、チェーン205などの操作部を操作することにより、スクリーン302を昇降可能に構成されている。ヘッドボックス303は、その内部にスクリーンを巻き取り、および巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン302の一端が結合されている。また、スクリーン302の他端には芯材304が結合されている。スクリーン302は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールスクリーン装置301を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましく、例えば矩形状に選ばれる。
【0143】
図25(B)は、スクリーン302の一構成例を示す断面図である。図25(B)に示すように、スクリーン302は、基材311と、光学素子1とを備え、可撓性を有していることが好ましい。光学素子1は、基材211の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学素子1と基材311とは、例えば、接着層などにより貼り合される。なお、スクリーン302の構成はこの例に限定されるものではなく、光学素子1をスクリーン302として用いるようにしてもよい。
【0144】
基材311の形状としては、例えば、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材311としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学素子1としては、上述の実施形態または変形例に係る光学素子1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0145】
なお、本適用例ではロールスクリーン装置について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
【0146】
<適用例3>
本適用例では、指向反射性能を有する光学体に採光部を備える建具(内装部材または外装部材)に対して本発明を適用した例について説明する。
【0147】
図26(A)は、本適用例に係る建具の一構成例を示す斜視図である。図26(A)に示すように、建具401は、その採光部404に光学体402を備える構成を有している。具体的には、建具401は、光学体402と、光学体402の周縁部に設けられる枠材403とを備える。光学体402は枠材403により固定され、必要に応じて枠材403を分解して光学体402を取り外すことが可能である。建具401としては、例えば障子を挙げることができるが、本発明はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。
【0148】
図26(B)は、光学体の一構成例を示す断面図である。図26(B)に示すように、光学体402は、基材411と、光学素子1とを備える。光学素子1は、基材411の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けられる。光学素子1と基材311とは、接着層などにより貼り合される。なお、障子402の構成はこの例に限定されるものではなく、光学素子1を光学体402として用いるようにしてもよい。
【0149】
基材411は、例えば、可撓性を有するシート、フィルム、または基板である。基材411としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空欄に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来建具の光学体として公知のものを用いることができる。光学素子1としては、上述の実施形態または変形例に係る光学素子1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
なお、上述の適用例では、本発明を窓材、建具、ブラインド装置のスラット、およびロールスクリーン装置のスクリーンなどの内装部材または外装部材に適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、上記以外の内装部材および外装部材にも適用可能である。
【符号の説明】
【0151】
1…光学素子
10…積層体
11…形状層
11a…構造体
12…包埋樹脂層
12a…構造層(第1の層)
12b…平坦層(第2の層)
13…光学機能層
21…第1の基材
22…第2の基材
23…接合層
30…窓本体
100…熱線反射窓
111…凹部
201…ブラインド装置
301…ロールスクリーン装置
401…建具
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を部分的に反射させる光学素子、例えば、赤外線帯域の光を選択的に指向反射させ、可視光帯域の光を透過させる光学素子、かかる光学素子を備えた日射遮蔽装置、建具および窓材、並びに光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビル、住居などの建築用ガラスや車窓ガラスに太陽光の一部を吸収、又は反射させる層が設けられるケースが増加している。これは、地球温暖化防止を目的とした省エネルギー対策のひとつであり、太陽から注がれる光エネルギーが窓から屋内に入り、屋内温度が上昇することによる冷房設備の負荷を軽減することを目的としている。
【0003】
可視領域の透過性を維持しながら近赤外線を遮蔽する構造としては、近赤外領域に高い反射率を有する層を窓ガラスに設ける構造(例えば特許文献1参照)と、近赤外領域に高い吸収率を有する層(例えば特許文献2参照)を窓ガラスに設ける構造が知られている。また、窓ガラスではなく、道路標識などの用途ではあるが、光学構造層を有し、可視光に対する透過性を保ちながら、特定波長域の光線のみ再帰反射させることができる透明波長選択性再帰反射体が知られている(特許文献3参照)。この再帰反射体は、再帰反射構造を有する光学構造層と、再帰反射構造に沿って形成された波長選択反射層と、再帰反射構造を埋める光透過性樹脂層とを備える。光透過性樹脂層には、例えば、紫外線硬化樹脂等のエネルギー線硬化樹脂で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/087680号公報
【特許文献2】特開平6−299139号公報
【特許文献3】特開2007−10893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の構造では、エネルギー線硬化樹脂の硬化後の残留応力を緩和できず、再帰反射構造に沿って形成された波長選択反射層と、再帰反射構造を埋める光透過性樹脂の間の層間剥離に起因する光学素子の透過率の低下を招いていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、入射光を部分的に反射させ周囲の温度上昇を抑制し、層間剥離のない耐久性に優れた光学素子、日射遮蔽装置、建具、窓材および光学素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学素子は、形状層と、光学機能層と、包埋樹脂層とを具備する。
上記形状層は、凹部を形成する構造体を有する。
上記光学機能層は、上記構造体の上に形成され、入射光を部分的に反射させる。
上記包埋樹脂層は、上記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで上記第1の層の上に形成された第2の層とを含む。上記包埋樹脂層は、上記構造体及び上記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成される。
上記形状層および上記包埋樹脂層の少なくとも一つは、透光性を有するとともに上記入射光の入射面を有する。
【0008】
上記光学素子において、入射面を介して構造体に入射した光は、光学機能層によって部分的に反射される。構造体は形状層の表面に凹部を形成し、構造体の上に形成された光学機能層によって反射される光はその入射方向に指向性をもって反射される。したがって、光学機能層によって反射される光が赤外線帯域の光となるように設計されることで、入射光を正反射させる場合に比べて周囲の温度上昇を抑制することができる。また、光学機能層を透過する光が可視光帯域の光となるように設計されることで、温度上昇を抑制しつつ視認性に優れた採光が可能となる。
【0009】
また、上記光学素子において、包埋樹脂層は、凹部を充填する第1の層と、その上に形成された第2の層とを含むことで、構造体及び光学機能層の保護層として機能する。これにより、構造体及び光学機能層の損傷あるいは汚損を防止して、耐久性の向上を図ることが可能となる。また、第2の層は、凹部を充填する個々の第1の層を相互に連結する機能を有し、当該第2の層は、第1の層の体積(第1の体積)の5%以上の体積(第2の体積)を有する厚みで形成される。これにより、エネルギー線硬化樹脂の硬化後の残留応力を第2の層で緩和でき、光学機能層と第1の層との間の層間剥離に起因する光学素子の透過率の低下を長期にわたって抑制することができる。
【0010】
上記構造体の形状は限定されず、例えば、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、またはコーナーキューブ状等でもよい。
【0011】
上記エネルギー線効果樹脂は、典型的には、紫外線硬化樹脂である。これ以外に、電子線やX線、熱線あるいは可視光の照射によって硬化する樹脂が用いられてもよい。上記形状層は、エネルギー線硬化樹脂で形成されてもよいし、他の材料、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂で形成されてもよい。
【0012】
上記光学素子は、フィルム、シートあるいはブロック状に形成することができる。上記光学素子は、建築用、車載用等の内装材、外装材あるいは窓材に貼り付けて使用されることができる。
【0013】
上記第2の体積が上記第1の体積の5%未満の場合、エネルギー線硬化樹脂の残留応力を第2の層で緩和することができないことで、長期にわたって第1の層と光学機能層との間の剥離を抑制できない場合がある。第2の体積の大きさは、エネルギー線硬化樹脂の収縮応力の大きさで設定され、硬化収縮率が3体積%以上であるエネルギー線硬化樹脂が用いられる場合に本発明は効果的である。
【0014】
また、上記エネルギー線硬化樹脂が8体積%以上の硬化収縮率を有する場合、上記第2の体積は、上記第1の体積の15%以上とすることができる。さらに、上記エネルギー線硬化樹脂が13体積%以上の硬化収縮率を有する場合、上記第2の体積は、上記第1の体積の50%以上とすることができる。これにより、エネルギー線硬化樹脂の硬化時において、光学機能層と第1の層との間の剥離を抑制することができる。
【0015】
上記光学素子は、前記形状層側および前記包埋樹脂層側の少なくとも一方に積層された、透光性を有する基材をさらに具備してもよい。
これにより、上記構造体および/または光学機能層の保護効果が高まるとともに、光学素子の生産性を高めることができる。
【0016】
本発明の一形態に係る窓材は、第1の支持体と、光学機能層と、第2の支持体と、窓本体とを具備する。
上記第1の支持体は、凹部を形成する構造体を有する。
上記光学機能層は、上記構造体の上に形成され、入射光を部分的に反射させる。
上記第2の支持体は、上記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで上記第1の層の上に形成された第2の層とを含む。上記第2の支持体は、上記構造体及び上記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成される。
上記窓本体は、上記第2の支持体と接合される。
【0017】
上記窓材によれば、光学機能層によって反射される光が赤外線帯域の光となり、光学機能層を透過する光が可視光帯域の光となるように設計されることで、周囲の温度上昇を抑制しつつ視認性に優れた採光が可能となる。また、光学機能層と第1の層との間の剥離を長期にわたって抑制でき、耐久性を高めることができる。
【0018】
本発明の一形態に係る光学素子の製造方法は、凹部を形成する構造体を有する第1の支持体を形成する工程を含む。上記構造体の上に、入射光を部分的に反射させる光学機能層が形成される。上記構造体及び上記光学機能層をエネルギー線硬化樹脂で包埋することで、上記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、上記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで上記第1の層の上に形成された第2の層とを含む第2の支持体が形成される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、特定波長帯域の光を部分的に反射し特定波長帯域以外の光を透過させ、層間剥離のない耐久性に優れた光学素子、日射遮蔽装置、建具、窓材および光学素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学素子及びこれを備えた熱線反射窓の概略構成を示す断面図である。
【図2】上記光学素子における形状層の一構成例を示す部分斜視図である。
【図3】上記光学素子における形状層の他の構成例を示す部分斜視図である。
【図4】上記光学素子における形状層の他の構成例を示す部分平面図である。
【図5】上記光学素子における包埋樹脂層を説明する要部の断面図である。
【図6】上記光学素子の一作用を説明する断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光学素子の製造方法を説明する各工程の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る光学素子の製造方法を説明する各工程の断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る光学素子の製造装置の概略構成図である。
【図10】図9の製造装置における要部の平面図である。
【図11】上記形状層を作製するための金型の構成例を示す要部の概略断面図である。
【図12】本発明の実施例において説明する、上記包埋樹脂層の平坦層の体積比と、高温高湿試験前後における透過率の変化との関係を示す図である。
【図13】本発明の変形例に係る、光学素子に対して入射する入射光と、光学素子により反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図14】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図15】本発明の変形例に係る、光学素子の構造体の一構成例を示す斜視図である。
【図16】(A)は、本発明の変形例に係る、形状層に形成された構造体の形状例を示す斜視図であり、(B)は、形状層に形成された構造体の主軸の傾きの方向を示す断面図である。
【図17】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図18】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図19】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図20】本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す斜視図である。
【図21】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示した形状層のB−B線に沿った断面図であり、(C)は、(A)に示した形状層のC−C線に沿った断面図である。
【図22】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示した形状層のB−B線に沿った断面図であり、(C)は、(A)に示した形状層のC−C線に沿った断面図である。
【図23】本発明の適用例に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。
【図24】(A)は、本発明の適用例に係るブラインドの要部の断面図であり、(B)はその変形例を示す断面図である。
【図25】(A)は、本発明の適用例に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図であり、(B)はその要部の断面図である。
【図26】(A)は本発明の適用例に係る建具の一構成例を示す斜視図であり、(B)はその要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[光学素子の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子の一構成例を示す概略断面図である。本実施形態の光学素子1は、形状層11(第1の支持体)と、包埋樹脂層12(第2の支持体)と、これら形状層11及び包埋樹脂層12の間に形成された光学機能層13とを含む積層体10を有する。また、本実施形態の光学素子1は、形状層11に積層される透明な第1の基材21と、包埋樹脂層12に積層される透明な第2の基材22とを有する。光学素子1は、第2の基材22上に形成された接合層23を介して、建築窓あるいは車窓用の窓本体30に接合される。
【0023】
以下、光学素子1の各部の詳細について説明する。
【0024】
[形状層]
形状層11は、透明な樹脂材料で形成されており、例えば、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、エポキシ等の熱硬化性樹脂、アクリルなどの紫外線硬化樹脂で形成されている。本実施形態では、後述する包埋樹脂層12と同様な紫外線硬化樹脂で形成されている。形状層11は、光学機能層13を支持する支持体としての機能を有し、所定厚みのフィルム状、シート状、プレート状あるいはブロック状に形成される。
【0025】
形状層11は、光学機能層13が形成される側の面に配列された複数の凹部111を形成する複数の構造体11aを有する。形状層11の構造体11a側とは反対側の面11bは平坦面である。
【0026】
本実施形態において、凹部111は、指向反射が可能な形状を有しており、例えば、角錐形状、円錐形状、角柱形状、曲面形状等で形成されている。個々の凹部111は、同一の形状及び大きさで形成されるが、領域ごとに又は周期的に、形状あるいは大きさを異ならせてもよい。
【0027】
図2は、三角柱形状(プリズム形状)の凹部111を形成する構造体11aが一次元配列された形状層11の部分斜視図、図3は、曲面形状(シリンドリカルレンズ形状)の凹部111を形成する構造体11aが一次元配列された形状層11の部分斜視図である。図4は、三角錐形状の凹部111を形成する構造体11a(デルタ稠密アレイ)が二次元配列された形状層11の部分平面図である。ただし、凹部111(または構造体11a)の形状はこれらに限定されず、例えば、コーナーキューブ状、半球状、半楕円球状、自由曲面状、多角形状、円錐形状、多角錐状、円錐台形状、放物面状などの凸状または凹状などであってもよい。また、凹部111の底面は、例えば、円形状、楕円形状、または三角形状、四角形状、六角形状もしくは八角形状などの多角形状を有していてもよい。
【0028】
構造体11a(凹部111)の配列ピッチ(凹部111の頂点間の間隔)は、特に限定されず、例えば数十μm〜数百μmの間で適宜設定することができる。構造体11aのピッチは、好ましくは5μm以上5mm以下、より好ましくは5μm以上250μm未満、さらに好ましくは20μm以上200μm以下である。構造体11aのピッチが5μm未満であると、凹部111の形状を所望のものとすることが難しい上、光学機能層の波長選択特性は一般的には急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると回折が生じて高次の反射まで視認されるため、指向反射に必要な凹部111の形状を考慮した場合、必要な膜厚が厚くなりフレキシブル性が失われ、窓本体30などの剛体に貼り合わせることが困難になる。また、構造体11aのピッチを250μm未満にすることにより、さらにフレキシブル性が増し、ロールツーロールでの製造が容易となり、バッチ生産が不要となる。窓などの建材に本発明の光学素子を適用するためには、数m程度の長さが必要であり、バッチ生産よりもロールツーロールでの製造が適している。また、凹部111の深さも特に限定されず、例えば、10μm〜100μmとされる。凹部111のアスペクト比(深さ寸法/平面寸法)は特に限定されず、例えば0.5以上である。
【0029】
[光学機能層]
光学機能層13は、形状層11の構造体11aの上に形成される。光学機能層13は、特定波長帯域(第1の波長帯域)の光を反射し特定波長帯域以外(第2の波長帯域)の光を透過させる光学多層膜を含む、波長選択反射層である。本実施形態において、上記特定波長帯域の光は近赤外線を含む赤外線帯域であり、上記特定波長帯域以外の光は可視光帯域である。
【0030】
光学機能層13は、例えば、第1の屈折率層(低屈折率層)と、第1の屈折率層よりも高い屈折率を有する第2の屈折率層(高屈折率層)とを交互に複数積層してなる積層膜で形成される。あるいは、光学機能層13は、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層または透明導電層とを、交互に積層してなる積層膜で形成される。
【0031】
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgCu、AgBi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFeなどを用いることができる。上記光学透明層は、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。上記透明導電層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、インジウムドープ酸化錫(ITO)、カーボンナノチューブ含有体、インジウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化錫などを主成分とする。若しくは、これらのナノ粒子や金属などの導電性を持つ材料のナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤーを樹脂中に高濃度に分散させた層を用いてもよい。
【0032】
なお、これらの光学透明層または透明導電層は、Al、Gaなどのドーパントを含有していてもよい。金属酸化物層をスパッタ法等で形成する場合に、膜質や平滑性が向上するからである。例えば、ZnO系酸化物の場合、GaおよびAlをドープした酸化亜鉛(GAZO)、Alをドープした酸化亜鉛(AZO)、およびGaをドープした酸化亜鉛(GZO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0033】
また、積層膜に含まれる高屈折率層の屈折率は、1.7以上2.6以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.8以上2.6以下、更に好ましくは1.9以上2.6以下である。これにより、クラックが発生しない程度の薄い膜で可視光領域での反射防止を実現できるからである。ここで、屈折率は、波長550nmにおけるものである。高屈折率層は、例えば、金属の酸化物を主成分とする層である。金属の酸化物としては、層の応力を緩和し、クラックの発生を抑制する観点からすると、酸化亜鉛以外の金属酸化物を用いることが好ましい場合もある。特に、酸化ニオブ(例えば、五酸化ニオブ)、酸化タンタル(例えば、五酸化タンタル)、および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。高屈折率層の膜厚は、好ましくは10nm以上120nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上80nm以下である。膜厚が10nm未満であると、可視光が反射しやすくなる傾向がある。一方、膜厚が120nmを超えると、透過率の低下やクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0034】
光学機能層13は、無機材料からなる薄膜の多層膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層が積層された膜でもよい。光学機能層13の厚みは特に限定されず、目的とする波長帯域の光を所望の反射率で反射できる膜厚を有していればよい。光学機能層13の形成方法としては、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等のドライプロセスや、ディップコーティング法、ダイコーティング法等のウェットプロセスを用いることができる。光学機能層13は、構造体11aの上にほぼ均一な厚みで形成される。なお、光学機能層13の平均膜厚は、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。光学機能層13の平均膜厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。
【0035】
また、光学機能層13は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能層を含んでいてもよい。該機能層を単層または複層で用いてもよいし、上述した積層膜、透明導電層と組み合わせて用いてもよい。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料を用いることができる。
【0036】
フォトクロミック材料とは、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、例えば紫外線などの光照射により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。フォトクロミック材料としては、例えばCr、Fe、NiなどをドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb2O5などの遷移金属酸化物を用いることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
【0037】
サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。サーモクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。サーモクロミック材料としては、例えばVO2などを用いることができる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。また、VO2などのサーモクロミック材料を主成分とする層を、TiO2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
【0038】
または、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。このとき、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0039】
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の以下により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。より具体的には、エレクトロクロミック材料としては、例えば、プロトンなどのドープまたは脱ドープにより、反射特性が代わる反射型調光材料を用いることができる。反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態、および/またはその中間状態に制御することができる材料である。このような反射型調光材料としては、例えば、マグネシウムおよびニッケルの合金材料、マグネシウムおよびチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料などを用いることができる。
【0040】
具体的な光学機能層の構成としては、例えば、形状層上に、上記合金層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta2O5などの電解質層、プロトンを含むWO3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。または、形状層上に透明導電層、電解質層、WO3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。これらの構成では、透明導電層と対向電極との間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープまたは脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるためには、エレクトロクロミック材料をTiO2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。また、その他の構成として、形状層上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成を用いることができる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中に針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶を四方八方に向かせて波長選択反射状態にしたりすることができる。
【0041】
[包埋樹脂層]
包埋樹脂層12は、例えば、透明な紫外線硬化樹脂で形成される。包埋樹脂層12は、形状層11の構造体11a及び光学機能層13を包埋する。
【0042】
紫外線硬化樹脂を構成する組成物は、例えば、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有する。また、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤、酸化防止剤などがさらに含まれてもよい。
【0043】
アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを用いることができる。このモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味する。オリゴマーとは、分子量500以上6000以下の分子をいう。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などを単独で、または併用して用いることができる。
【0044】
図5は、包埋樹脂層12の構成を模式的に示す要部断面図である。包埋樹脂層12は、光学機能層13が形成された凹部111を充填する、断面三角形状の構造層12a(第1の層)と、構造層12aの上に形成された平坦層12b(第2の層)とを有する。構造層12aは、構造体11aを構成する各凹部111の内部に形成され、凹部111の深さと同等の厚みを有する。構造層12aは、凹部111の内壁を被覆する光学機能層13と密着する。平坦層12bは、凹部111を充填する個々の構造層12aを相互に連結する機能を有し、その表面は平坦に形成されている。
【0045】
また、平坦層12bは、包埋樹脂層12を形成する際の紫外線硬化樹脂の硬化収縮による層間剥離を緩和する機能を有する。すなわち、一般に紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する際、当該樹脂の組成や含有物質等によって定まる所定の収縮率で収縮する。当該収縮応力が適度に緩和されないと、樹脂に作用する熱負荷等を原因として光学機能層との界面に応力が集中し、上記界面での層間剥離が引き起こされることで、経時的に光学素子の透過率が低下するおそれがある。特に、誘電層や金属層に対する樹脂の密着性は比較的低いため、光学機能層に対して樹脂の層間剥離は発生しやすい。そこで本実施形態では、平坦層12bを形成することで、構造層12aに残留する内部応力を緩和して、光学機能層13との界面剥離を抑制するようにしている。
【0046】
平坦層12bの厚みは、用いられる樹脂の硬化収縮率と、構造層12aの体積とによって定められる。例えば、包埋樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂の硬化収縮率が3体積%以上である場合、平坦層12bは、構造層12aの体積(第1の体積)の5%以上の体積(第2の体積)を有する厚みで形成される。5%未満の場合、構造層12aの残留応力を平坦層12bで緩和することができずに、長期にわたって構造層12aと光学機能層13との間の剥離を抑制できない場合がある。
【0047】
上述のように、平坦層12bの厚みは、構造層12a(凹部111)との体積比で決定される。上記第1の体積は、個々の凹部111の体積と定義されてもよいし、すべての凹部111の総体積と定義されてもよい。前者の場合の第2の体積は、単位領域(個々の凹部111の形成領域に相当する。)あたりの平坦層12bの体積であり、後者の場合の第2の体積は、平坦層12b全体の体積である。
【0048】
また、上記紫外線硬化樹脂が8体積%以上の硬化収縮率を有する場合、平坦層12bの体積は、構造層12aの体積の15%以上とすることができる。さらに、上記紫外線硬化樹脂が13体積%以上の硬化収縮率を有する場合、平坦層12bの体積は、構造層12aの体積の50%以上とすることができる。これにより、当該紫外線硬化樹脂の硬化時において、光学機能層13と構造層12aとの間の剥離を抑制することができる。
【0049】
形状層11および包埋樹脂層12の少なくとも一方は、透明性を有している。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。形状層11と包埋樹脂層12との屈折率差は、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンは殆ど気にならない。形状層11および包埋樹脂層12のうち、窓本体30などとの貼り合わせ側となる支持体は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、部材を削減することができる。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0050】
形状層11と包埋樹脂層12の両方が透明性を有する場合には、形状層11および包埋樹脂層12は、可視領域において透明性を有する同一材料からなることが好ましい。形状層11と包埋樹脂層12とを同一の材料により構成することで、両者の屈折率が同程度となるので、可視光の透明性を向上させることができる。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収がないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、本発明では両者を備えることが好ましい。本発明に係る光学素子1を指向反射体として用いる場合には、指向反射する特定の波長以外の光を透過することが好ましく、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないことが好ましい。ただし、その用途によっては、一方の支持体に意図的に散乱性を持たせることが可能である。
【0051】
形状層11と包埋樹脂層12とを樹脂層で形成する場合、光学機能層の形成前に形成される樹脂層(形状樹脂層)と、光学機能層の形成後に形成される樹脂層(包埋樹脂層)は、屈折率が略同一であることが好ましい。しかし、両樹脂層に同一の有機樹脂を用い、かつ光学機能層が無機層である場合に、包埋樹脂層との密着性を向上させるために、添加剤を形状樹脂層に配合すると、形状転写の際にNi−P型から形状樹脂層を剥離させにくくなる。光学機能層をスパッタ法により形成する場合は、高エネルギーの粒子が付着するため、形状樹脂層と光学機能層との密着性が問題になることは少ない。そのため、形状樹脂層の添加剤の添加量を必要最低限に抑えておき、包埋樹脂層に密着性を向上する添加剤を導入することが好ましい。この際、包埋樹脂層と形状樹脂層の屈折率が大きく異なっていると、曇って反対側が見難くなるが、添加剤の添加量を1質量%以下とすれば、屈折率も殆ど変化がないため、透過鮮明性が非常に高い光学素子を得ることができる。仮に、添加剤を多量に添加する必要がある場合には、形状樹脂層を形成するための樹脂組成物の配合を調整し、包埋樹脂層と屈折率を略同一とすることが好ましい。
【0052】
また、光学素子1や窓材などに意匠性を付与する観点からすると、形状層11および/または包埋樹脂層12に、可視光領域における特定の波長の光を吸収する特性を付与してもよい。このような機能を有する材料としては、形状層11または包埋樹脂層12の主成分である材料(例えば、樹脂)に顔料を分散させたものを用いることができる。顔料は、有機系顔料および無機系顔料のいずれであってもよいが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料を用いることが好ましい。具体的には、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO2またはCr、WドープTiO2)、クロムグリーン(Cr2O3など)、ピーコック((CoZn)O(AlCr)2O3)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)2O3)、紺青(CoO・Al2O3・SiO2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO2・SiO2)、陶試紅(MnドープAl2O3)、サーモンピンク(FeドープZrSiO4)などの無機顔料、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0053】
[第1及び第2の基材]
図1に示すように、形状層11、光学機能層13及び包埋樹脂層12の積層体10は、第1及び第2の基材21、22によって挟み込まれる。
【0054】
第1及び第2の基材21、22は、透明性を有する材料で形成される。基材21、22の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、これらに限られない。
【0055】
第1及び第2の基材21、22は、積層体10の保護層としての機能を有する。第1及び第2の基材21、22として、ポリエチレンテレフタレート等のように紫外線硬化樹脂よりも水蒸気透過率の低い材料を用いることで、積層体10の吸湿による光学機能層13と包埋樹脂層12との間の層間剥離を抑制することができる。また、第1及び第2の基材21、22は、形状層11及び包埋樹脂層12と同等の屈折率を有する材料で形成されることで、界面における光の反射ロスを低減し光学素子1の透過率の向上を図ることができる。さらに、第1及び第2の基材21、22として、紫外線の透過率に優れた材料が用いられることで、形状層11及び包埋樹脂層12を紫外線硬化樹脂によって容易に形成することが可能となる。
【0056】
第1の基材21は、形状層11の構造体11aとは反対側の平坦面11bに積層される。第2の基材22は、包埋樹脂層12の平坦層12bの上に積層される。第1の基材21および第2の基材22は両方設けられる場合に限らず、少なくとも一方のみ設けられればよい。
【0057】
[光学素子が指向反射体として機能する場合の説明]
図13は、光学素子1に対して入射する入射光と、光学素子1により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学素子1は、光Lが入射する平坦な入射面S1を有する。光学素子1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過する。また、光学素子1は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。但し、θは、入射面S1に対する垂線l1と、入射光Lまたは反射光L1とのなす角である。φは、入射面S1内の特定の直線l2と、入射光Lまたは反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線l2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学素子1の入射面S1に対する垂線l1を軸として光学素子1を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l2として選択するものとする。なお、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0058】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、および透過させる特定の光は、光学素子1の用途により異なる。例えば、窓本体30に対して光学素子1を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学体をガラス窓などの窓本体に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射を有し、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
【0059】
指向反射する方向φoは、−90°以上、90°以下であることが好ましい。光学素子1を窓本体30に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学素子1が有用である。また、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、好ましくは(θ、−φ)から5度以内、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内の範囲内のずれのことをいう。この範囲にすることで、光学素子1を窓本体30に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、例えば球面や双曲面の一部や三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0060】
特定波長体の光の指向反射が、再帰反射近傍方向、すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長体の光の反射方向が、(θ、φ)近傍であることが好ましい。光学素子1を窓本体30に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内である。この範囲にすることで、光学素子1を窓本体30に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、再帰反射方向は入射方向と等しくないとならないが、本発明のように特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0061】
透過性を持つ波長帯に対する写像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。写像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した写像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。写像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、写像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0062】
透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。光学素子1の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、写像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置および測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
【0063】
光学素子1の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、光学層2および波長選択反射層3を透過し、出射面S2から出射される透過光および反射光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。更に、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩くと色が変化して見えたりするため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、0°以上60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2から入射し、光学層2および波長選択反射層3により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、光学素子1の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
【0064】
[熱線反射窓]
本実施形態の光学素子1は、包埋樹脂層12が外光の入射側(屋外側)、形状層11が外光の出射側となるように窓本体30に接合される。第2の基材22は接合層23を介して窓本体30に接合され、第2の基材22の接合層23との界面S1は平坦面であり、窓本体30を透過した光の入射面を形成する。一方、第1の基材21の空気と接する表面S2は、光学素子1を透過した光の出射面を形成する。これら光学素子1、接合層23、窓本体30等により、本実施形態の熱線反射窓100(窓材)が構成される。
【0065】
接合層23は、透明な接着剤あるいは粘着材で形成される。接合層23は、第2の基材22および/または窓本体30と同等な屈折率を有する材料で形成されることで、界面における光の反射ロスを低減し光学素子1の透過率の向上を図ることができる。
【0066】
窓本体30は、建築用あるいは車載用の各種ガラス材料で形成されるが、ポリカーボネート板やアクリル板などの各種樹脂材料で形成されてもよい。また、窓本体30は、単層構造に限られずペアガラス(合わせガラス)のような複層構造であってもよい。
【0067】
図6は、光学素子1(積層体10)の一作用を説明する模式図である。光学素子1は、光入射面S1に入射する太陽光のうち、赤外線帯域の光L1を光学機能層13で反射する。また、光学素子1は、光入射面S1に入射する太陽光のうち可視光帯域の光L2を透過させて光出射面S2から出射させる。これにより、屋外あるいは車外の視認性を確保しつつ、屋内あるいは車内の温度上昇を抑制することができる。
【0068】
本実施形態の光学素子1において、光学機能層13は、構造体11a上に形成されているため、赤外光(熱線)L1はその入射方向に指向性をもつように再帰反射される。したがって、入射光が選択反射層で正反射される場合に比べて、窓本体30周囲の気温の上昇を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の光学素子1において、包埋樹脂層12は、構造体11a及び光学機能層13の保護層として機能する。これにより、構造体11a及び光学機能層13の損傷あるいは汚損を防止して、耐久性の向上を図ることが可能となる。また、包埋樹脂層12を構成する平坦層12bは、構造層12aの体積(第1の体積)の5%以上の体積(第2の体積)を有する厚みで形成される。これにより、包埋樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂の硬化後の残留応力を平坦層12bで効果的に緩和することができる。その結果、光学機能層13と構造層12aとの間の層間剥離に起因する光学素子1の透過率の低下を長期にわたって抑制でき、光学素子1の耐久性を高めることができる。
【0070】
[光学素子の製造方法]
次に、本実施形態の光学素子1の製造方法について説明する。図7及び図8は、光学素子1の製造方法を説明する概略工程図である。
【0071】
まず、図7(A)に示すように、構造体11aを有する形状層11を形成する。形状層11の形成方法としては、例えば、あらかじめ構造体11aに対応する凹凸形状が形成された型を作製し、上記凹凸形状を紫外線硬化樹脂に転写する方法が用いられる。基材21は、上記転写型から紫外線硬化樹脂を剥離する際の支持体として機能する。これにより、紫外線硬化樹脂からなる形状層11が形成される。
【0072】
次に、図7(B)に示すように、形状層11の構造体11a上に光学機能層13を形成する。光学機能層13は、赤外線帯域の光を反射し可視光帯域の光を透過させることが可能なように設計された光学多層膜で形成される。光学機能層13の形成には、スパッタ法、真空蒸着法等のドライプロセスが用いられるが、ディップ法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法等のウェットプロセスが用いられてもよい。
【0073】
続いて、図7(C)に示すように、構造体11aの上に形成された光学機能層13の上に、未硬化のペースト状の紫外線硬化樹脂12Rを所定量供給する。そして、図8(A)に示すように、樹脂12Rの上に第2の基材22を重ねた後、第2の基材22を形状層11に押し付けることで樹脂12Rを形状層11の構造体11a全体に行き渡らせる。これにより、構造体11a及び光学機能層13が紫外線硬化樹脂12Rで包埋される。このとき、形状層11と第2の基材22との間隔Tが所定の値となるように、第2の基材22の押し付け圧が調整される。
【0074】
間隔Tは、平坦層12b(図5参照)の厚みに相当し、間隔Tの厚み領域に存在する樹脂12Rの体積(第2の体積)が構造層12aの体積(第1の体積)の5%以上となる値に調整される。これにより、樹脂12Rの硬化処理に際して、凹部111の形成領域に存在する構造層12aの残留応力に起因する、光学機能層13に対する界面剥離を効果的に抑制することができる。
【0075】
次に、図8(B)に示すように、紫外線ランプ40を用いて、樹脂12Rに第2の基材22を介して紫外線を照射し、樹脂12Rを硬化させる。これにより、包埋樹脂層12が形成され、図8(C)に示すように、本実施形態に係る光学素子1が製造される。光学素子1の厚みは特に限定されず、仕様又は用途に応じて適宜定められ、例えば50μm〜300μmとされる。
【0076】
図9は、光学素子1の製造装置の一例を示す概略図である。図示する製造装置50は、帯状の第1の基材21Fを供給する第1の供給ローラ51と、帯状の第2の基材22Fを供給する第2の供給ローラ52と、紫外線硬化樹脂12Rを吐出するノズル61と、紫外線ランプ40とを有する。第1の基材21Fは、図7(B)に示したように光学機能層13が形成された形状層11を支持する。第2の基材22Fは、図8(A)に示した第2の基材22に相当する。製造装置50は、第1及び第2のラミネートローラ54、55と巻取りローラ53とをさらに有する。第1のラミネートローラ54はゴム製であり、第2のラミネートローラ55は金属製である。
【0077】
第1の基材21F上の光学機能層13には、塗布ノズル61により紫外線硬化樹脂12Rが塗布される。第1の基材21Fと第2の基材22Fは、ガイドローラ56、57により、ラミネートローラ54、55の間に案内される。ラミネートローラ54、55は第1の基材21Fと第2の基材22Fとを紫外線硬化樹脂12Rを挟むようにラミネートし、積層フィルム1Fを作製する。積層フィルム1F内の紫外線硬化樹脂12Rは、紫外線ランプ40から紫外線の照射を受けることで硬化する。巻取りローラ53は、作製された積層フィルム1Fを連続的に巻き取る。積層フィルム1Fは、図8(C)に示した帯状の光学素子1に相当する。
【0078】
製造装置50によれば、光学素子1Fを連続して製造することができる。光学素子1Fの製造に第1及び第2の基材21F、22Fを用いることで、光学素子1Fの生産性を高めることができる。光学素子1Fは、製品サイズに裁断されることで使用される。
【0079】
製造装置50は、図9に示した構成に限られず、例えば、紫外線ランプ40は、第2の基材22F側から紫外線を照射するように配置されてもよい。また、第1の基材21Fは第2の供給ローラ52から供給されてもよいし、第2の基材22Fは第1の供給ローラ52から供給されてもよい。
【0080】
ラミネートローラ54、55は、図8(A)を参照して説明したように、紫外線硬化樹脂12Rを介して対向する第1の基材21F(光学機能層13)と第2の基材22F(22)との間に間隔Tを形成して積層フィルム1Fを作製する。間隔Tの調整方法としては、紫外線硬化樹脂12Rの粘度、基材21F及び22Fの張力、第2のラミネートローラ55に対する第1のラミネートローラ54の押し付け圧力などによって調整することができる。
【0081】
間隔Tの調整方法の一例を図10に示す。図示の例は、第1のラミネートローラ54と第2のラミネートローラ55との間に形成された空間部S内で積層フィルム1Fをラミネートすることで、上記間隔Tを確保するようにしている。空間部Sは、第1のラミネートローラ54の両端に形成されたフランジ状のスペーサ54sを第2のラミネートローラ55に接触させることで形成される。空間部Sの厚みは、スペーサ54sの弾性変形を利用して、第2のラミネートローラ55に対する第1のラミネートローラ54の押圧力で調整することができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0083】
包埋樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂の種類と包埋樹脂層12の平坦層12bの体積とが異なる複数の光学素子サンプルを作製し、各サンプルの透過率の経時変化を測定した。
【0084】
サンプルの作製に先立ち、図11に示す金型80を作製した。金型80はNi−P製であり、断面二等辺三角形状のプリズム形状の凹部が連続して配列された構造面80aを有する。プリズム形状の凹部の幅(配列ピッチ)は50μm、深さは25μm、プリズム頂角は90°(最も指向反射性が高くなる角度)とした。また、以下の基本組成を有する3種類の紫外線硬化樹脂A、B及びCを作製した。樹脂Aの硬化収縮率は3体積%、樹脂Bの硬化収縮率は8体積%、樹脂Cの硬化収縮率は13体積%であった。
【0085】
<樹脂Aの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス(同社の登録商標。以下同じ。)」):97重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184(「イルガキュア」は、スイス国 チバ ホールディング インコーポレーテッド社の登録商標。以下同じ。)」:3重量%
<樹脂Bの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス」):82重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):15重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
<樹脂Cの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス」):48.5重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):48.5重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
【0086】
(実施例1)
金型80の構造面80aに樹脂Bを塗布し、その上に厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4300」)を載置した。次に、PETフィルム側から紫外線を照射することで樹脂Bを硬化させた後、樹脂BとPETフィルムとの積層体を金型80から剥離した。これにより、プリズム形状の凹部111(図2)が配列された構造面を有する樹脂層(形状層11(図7(A))が作製された。
次に、得られた積層体のプリズム構造面に、光学機能層として、酸化亜鉛層及び銀層を交互に積層した。酸化亜鉛35nm、銀11nm、酸化亜鉛80nm、銀11nm、酸化亜鉛35nmという構成の多層膜をスパッタ法によって作製した。
次に、光学機能層の上に樹脂Bを塗布した後、PETフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4300」)を積層した。そして、当該樹脂Bを紫外線の照射によって硬化させることで、包埋樹脂層12(図8(C))を形成した。
【0087】
上述のようにして作製された光学素子サンプルを、常温下、ミクロトームで切断し、その断面画像を工業用顕微鏡(オリンパス社製「OLS3000」)を用いて取得した。対物レンズの倍率は50倍もしくは100倍とした。得られた断面画像から、平坦層12b(図5)に相当する領域の厚みT(図8(A))を、画像処理装置(三谷商事(株)製)によって測定した。そして、厚みTから上記凹部に対する平坦層の体積比(以下単に「体積比」という。)を計算した結果、15%であった。なお、体積比は、上記PETフィルムの積層時の押圧力で任意の値に調整可能とした。
【0088】
次に、上記光学素子サンプルの可視光(波長550nm)の透過率を測定した。そして、当該光学素子サンプルに対し、恒温恒湿槽(温度60℃、相対湿度90%)内に1500時間保持する高温高湿試験を実施した後、再び可視光(波長550nm)の透過率を測定し、透過率の変化を評価した。透過率の測定には、日本分光(株)製「V−7100」を用いた。
【0089】
(実施例2)
実施例1と同様な手順で体積比26%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0090】
(実施例3)
実施例1と同様な手順で体積比50%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0091】
(実施例4)
実施例1と同様な手順で体積比106%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0092】
(実施例5)
実施例1と同様な手順で体積比205%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0093】
(実施例6)
実施例1と同様な手順で体積比301%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0094】
(実施例7)
実施例1と同様な手順で体積比610%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0095】
(実施例8)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用いて、実施例1と同様な手順で体積比5%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0096】
(実施例9)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比50%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0097】
(実施例10)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比100%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0098】
(実施例11)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比204%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0099】
(実施例12)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比303%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0100】
(実施例13)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いて、実施例1と同様な手順で体積比612%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0101】
(比較例1)
実施例1と同様な手順で体積比0%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0102】
(比較例2)
実施例1と同様な手順で体積比14%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0103】
(比較例3)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用いて、実施例1と同様な手順で体積比0%の平坦層を有する光学素子サンプルを作製し、実施例1と同様な条件で高温高湿試験前後の透過率の変化を評価した。
【0104】
実施例1〜13及び比較例1〜3に係るサンプルの体積比、試験前後の透過率及び透過率変化の評価結果を、表1にまとめて示す。ここでは、透過率変化の評価として、透過率の変化量が2%以上を不合格「×」、透過率変化量が2%未満を合格「○」とした。また、樹脂A〜Cの平坦層の体積比と透過率変化との関係を図12に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1の結果から明らかなように、いずれの光学素子サンプルに関しても、高温高湿試験の後の透過率は、その試験前に比べて減少することが確認された。透過率の減少は、包埋樹脂層の残留応力により誘発された、光学機能層と包埋樹脂層との間の層間剥離に起因するものである。
【0107】
包埋樹脂層を樹脂Aで作製した光学素子サンプルにおいては、体積比5%の平坦層を有することで、透過率の減少量を2%未満に抑えることができる。一方、包埋樹脂層を樹脂Bで作製した光学素子サンプルにおいては体積比15%以上の平坦層を有することで、また、包埋樹脂層を樹脂Cで作製した光学素子サンプルにおいては体積比50%以上の平坦層を有することで、それぞれ、透過率の減少量を2%未満に抑えることができる。これにより、本実施例に係る光学素子サンプルによれば、紫外線硬化樹脂の残留応力に起因する包埋樹脂層と光学機能層との間の層間剥離を効果的に抑制でき、耐久性に優れた光学素子を得ることができる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0109】
例えば以上の実施形態では、光学機能層13は、赤外線帯域の光を反射し、可視光帯域の光を透過させるように構成されたが、これに限られない。例えば、可視光帯域において反射すべき波長帯域と透過させるべき波長帯域を設定することで、本発明に係る光学素子をカラーフィルタとして機能させることができる。
【0110】
また、包埋樹脂層12の作製に用いる紫外線硬化樹脂に、適宜の粒子径を有するフィラー(スペーサ)を混入することによって、上記間隔Tに相当する厚みの平坦層を形成するようにしてもよい。
【0111】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0112】
<変形例1>
光学機能層は、例えば、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過する波長選択反射層のほか、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を指向反射する反射層、または散乱が少なく反対側を視認できる透明性を有する半透過層であってもよい。反射層としては上述した金属層を用いることができ、その平均層厚は、好ましくは20μm、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。反射層3の平均層厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。反射層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0113】
一方、半透過層は、例えば、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有するものである。金属層の材料としては、例えば、上述の積層膜の金属層と同様のものを用いることができる。半透過層の具体例を下記に示す。
(1)構造体上に製膜する反射層をAgTi:8.5nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)として本発明に係る光学素子を得た。
(2)構造体上に製膜する反射層をAgTi:3.4nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)として本発明に係る光学素子を得た。
(3)構造体上に製膜する反射層をAgNdCu:14.5nm(Ag/Nd/Cu=99.0/0.4/0.6at%)として本発明に係る光学素子を得た。
【0114】
<変形例2>
図14は、本発明の変形例2に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。変形例2は、光の入射面に対して傾斜した複数の光学機能層13を、形状層および包埋樹脂層の間に備え、これらの光学機能層13が互いに平行または略平行に配列されている。図14は一例として、形状層11および包埋樹脂層12がともに透光性を有し、形状層11側から入射した特定の波長帯域の光L1が光学機能層13によって指向反射し、それ以外の波長帯域の光L2が透過する場合を示している。ただし、光入射面は包埋樹脂層12側であってもよい。また、形状層11および包埋樹脂層12の一方のみに透光性を持たせ、入射光L1の指向反射機能を有し、入射光L2の透過機能を有しない光学素子1とすることもできる。
【0115】
図15は、本変形例に係る光学素子の構造体の一構成例を示す斜視図である。構造体11aは、一方向に延在された三角柱状の凸部であり、この柱状の構造体11aが他の一方向に向かって一次元配列されることで形状層11の表面に凹部が形成されている。構造体11aの延在方向に垂直な断面は、例えば、直角三角形状を有する。構造体11aの鋭角側の傾斜面上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法などの、指向性を有する薄膜形成法により、光学機能層13が形成される。
【0116】
本変形例によれば、複数の光学機能層13を平行に配列していることより、光学機能層13による反射回数を、コーナーキューブ形状やプリズム形状の構造体11aを形成した場合に比べて低減することができる。したがって、反射率を高くすることができ、かつ、光学機能層13による光の吸収を低減できる。
【0117】
<変形例3>
図16(A)に示すように、構造体11aの形状を、光学素子1の入射面または出射面に垂直な垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体11aの主軸lmが、垂線l1を基準にして構造体11aの配列方向Aに傾くことになる。ここで、構造体11aの主軸lmとは、構造体断面の底辺の中点と構造体の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して略垂直に配置された窓本体30に光学素子1を貼る場合には、図16(B)に示すように、構造体11aの主軸lmが、垂線l1を基準にして窓本体30の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、上記形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。図16(A)および図16(B)では、プリズム形状の構造体11aを垂線l1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体11aを垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。
【0118】
構造体11aがコーナーキューブ形状の場合、稜線Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方が良く、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、光学素子に対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分のRが大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブでは、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れる。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けても良い。
【0119】
<変形例4>
図17は、本発明の変形例4に係る光学素子の一構成例を示す断面図である。本変形例では、光学素子1の入射面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層6をさらに備えている。自己洗浄効果層6は、例えば、光触媒を含んでいる。光触媒としては、例えば、TiO2を用いることができる。
【0120】
上述したように、光学素子1は特定波長帯の光を部分的に反射する点に特徴を有している。光学素子1を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され部分反射特性(例えば、指向反射特性)が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。
【0121】
本変形例によれば、光学素子1の入射面上に自己洗浄効果層6を形成しているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、入射面に対する汚れなどの付着を抑制し、部分反射特性(例えば、指向反射特性)の低減を抑制できる。
【0122】
<変形例5>
本変形例は、光学素子1が、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、上記実施形態とは異なっている。光学素子1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、形状層若しくは包埋樹脂層の表面または内部、および光学機能層と形状層若しくは包埋樹脂層との間のうち、少なくとも一の箇所に設けられている。光学素子1を窓材などの部材に貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらにも適用可能である。光学素子1を室外側に対して貼り合わせる場合、光学機能層13と窓本体30などの部材の間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。光学素子1を窓材などの部材に貼り合わせる場合、光学機能層13と入射面との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学素子1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、光学機能層13との間に光散乱体を設けることが好ましい。
【0123】
図18(A)は、本変形例に係る光学素子の第1の構成例を示す断面図である。図18(A)に示すように、形状層11は、樹脂と微粒子110とを含んでいる。微粒子110は、形状層11の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子110としては、例えば、有機微粒子および無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子110としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子110としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、スチレン、アクリル、やそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0124】
図18(B)は、本変形例に係る光学素子の第2の構成例を示す断面図である。図18(B)に示すように、光学素子1は、形状層11の裏面に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の構成例と同様のものを用いることができる。
【0125】
図18(C)は、本変形例に係る光学素子の第3の構成例を示す断面図である。図18(C)に示すように、光学素子1は、光学機能層13と形状層11との間に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
【0126】
本変形例によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学素子1を曇らせて、光学素子1に対して意匠性を付与することができる。
【0127】
<変形例6>
上記実施形態では、光学素子1の包埋樹脂層12は平坦層12bを有していたが、本変形例では、図19に示すように、光学素子1は、凹凸層12cからなる入射面S1を有している。この入射面S1の凹凸形状と、形状層11の凹凸形状とは、例えば、両者の凹凸形状が対応するように形成されており、両者が有する凸部の頂部と凹部の最下部との位置が略一致しているか、若しくは、入射面S1の凹凸形状は、第1の光学層4の凹凸形状よりもなだらかであることが好ましい。
【0128】
ここで、凹凸層12cは、第2の体積を有する厚みで構造層12a(第1の層)の上に形成された第2の層に相当し、第2の体積は、構造層12aが有する第1の体積の5%以上である。そして、例えば、エネルギー線硬化樹脂で形成された、構造層12aと凹凸層12cからなる包埋樹脂層12によって、構造体及び光学機能層が包埋されている。
【0129】
<変形例7>
図20〜図22は、本発明に係る光学素子の構造体の変形例を示す断面図である。
【0130】
本変形例の一態様は、図20(A)および図20(B)に示すように、形状層11の一主面には、例えば、柱状の構造体(柱状体)11cを直交配列することにより形成されている。具体的には、第1の方向に向かって配列された第1の構造体11cと、上記第1の方向とは直交する第2の方向に向かって配列された第2の構造体11cとが、互いの側面を貫通するように配列されている。柱状の構造体11cは、例えば、上述したプリズム形状やレンチキュラー形状などの柱状を有する凸部または凹部である。
【0131】
また、形状層11の一主面に、例えば、球面状やコーナーキューブ状などの形状を有する構造体11cを最稠密充填状態で2次元配列することにより正方稠密アレイ、デルタ稠密アレイ、六方稠密アレイなどの稠密アレイを形成するようにしてもよい。正方稠密アレイは、例えば図21(A)〜図21(C)に示すように、四角形状(例えば正方形状)の底面を有する構造体11cを正方稠密状に配列させたものである。六方稠密アレイは、例えば図22(A)〜図22(C)に示すように、六方形状の底面を有する構造体11cを六方稠密状に配列させたものである。
【0132】
以下、本発明の適用例について説明する。
上述の実施形態では、本発明に係る光学素子を窓材などに適用する場合を例として説明したが、本発明に係る光学素子を他の内装部材や外装部材などに適用するようにしてもよい。これらの部材としては、壁や屋根のように固定された部材のみならず、季節や時間変動など、必要に応じて光学体の適用量を変更出来る部材なども挙げられる。光学体を複数の要素に分割し、角度を変更するなどの手段により、光学体への入射光線の透過量を調整可能な部材、例えばブラインドなどが挙げられる。また、巻き取ったり、折りたたんだりする事が可能である本光学体を適用した部材、例えばロールカーテンなどが挙げられる。更に、本光学体を枠組みなどに固定し、必要に応じ枠組み毎取り外しが可能な部材、例えば障子などが挙げられる。
【0133】
光学素子が適用された内装部材または外装部材としては、例えば、光学素子自体により構成された内装部材または外装部材、光学素子が貼り合わされた透明基材などにより構成された内装部材または外装部材などが挙げられる。このような内装部材または外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材または外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材または外装部材による室内側への散乱反射も殆どないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材を適用する事も出来る。
【0134】
<適用例1>
本適用例では、複数の日射遮蔽部材からなる日射遮蔽部材群の角度を変更することにより、日射遮蔽部材群による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(ブラインド装置)について説明する。
【0135】
図23は、本適用例に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。図23に示すように、日射遮蔽装置であるブラインド装置201は、ヘッドボックス203と、複数のスラット(羽)202aからなるスラット群(日射遮蔽部材群)202と、ボトムレール204とを備える。ヘッドボックス203は、複数のスラット202aからなるスラット群202の上方に設けられている。ヘッドボックス203からラダーコード206、および昇降コード205が下方に向かって延びており、これらのコードの下端にボトムレール204が吊り下げられている。日射遮蔽部材であるスラット202aは、例えば、細長い矩形状を有し、ヘッドボックス203から下方に延びるラダーコード206により所定間隔で吊り下げ支持されている。また、ヘッドボックス203には、複数のスラット202aからなるスラット群202の角度を調整するためのロッドなどの操作手段(図示省略)が設けられている。
【0136】
ヘッドボックス203は、ロッドなどの操作手段の操作により応じて、複数のスラット202aからなるスラット群202を回転駆動することにより、室内などの空間に取り込まれる光量を調整する駆動手段である。また、ヘッドボックス203は、昇降操作コード207などの操作手段の適宜操作に応じて、スラット群202を昇降する駆動手段(昇降手段)としての機能も有している。
【0137】
図24(A)は、スラットの第1の構成例を示す断面図である。図24(A)に示すように、スラット202は、基材211と、光学フィルム1とを備える。光学フィルム1は、基材211の両主面のうち、スラット群202を閉じた状態において外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学フィルム1と基材211とは、例えば、接着層などにより貼り合される。
【0138】
基材211の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材211の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第6の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
図24(B)は、スラットの第2の構成例を示す断面図である。図24(B)に示すように、第2の構成例は、光学フィルム1をスラット202aとして用いるものである。光学フィルム1は、ラダーコード205により支持可能であるとともに、支持した状態において形状を維持できる程度の剛性を有していることが好ましい。
【0140】
なお、本適用例では、本発明を横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に対して適用した例について説明したが、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対しても適用可能である。
【0141】
<適用例2>
本適用例では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールスクリーン装置について説明する。
【0142】
図25(A)は、本適用例に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図である。図25(A)に示すように、日射遮蔽装置であるロールスクリーン装置301は、スクリーン302と、ヘッドボックス303と、芯材304とを備える。ヘッドボックス303は、チェーン205などの操作部を操作することにより、スクリーン302を昇降可能に構成されている。ヘッドボックス303は、その内部にスクリーンを巻き取り、および巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン302の一端が結合されている。また、スクリーン302の他端には芯材304が結合されている。スクリーン302は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールスクリーン装置301を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましく、例えば矩形状に選ばれる。
【0143】
図25(B)は、スクリーン302の一構成例を示す断面図である。図25(B)に示すように、スクリーン302は、基材311と、光学素子1とを備え、可撓性を有していることが好ましい。光学素子1は、基材211の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学素子1と基材311とは、例えば、接着層などにより貼り合される。なお、スクリーン302の構成はこの例に限定されるものではなく、光学素子1をスクリーン302として用いるようにしてもよい。
【0144】
基材311の形状としては、例えば、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材311としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学素子1としては、上述の実施形態または変形例に係る光学素子1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0145】
なお、本適用例ではロールスクリーン装置について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
【0146】
<適用例3>
本適用例では、指向反射性能を有する光学体に採光部を備える建具(内装部材または外装部材)に対して本発明を適用した例について説明する。
【0147】
図26(A)は、本適用例に係る建具の一構成例を示す斜視図である。図26(A)に示すように、建具401は、その採光部404に光学体402を備える構成を有している。具体的には、建具401は、光学体402と、光学体402の周縁部に設けられる枠材403とを備える。光学体402は枠材403により固定され、必要に応じて枠材403を分解して光学体402を取り外すことが可能である。建具401としては、例えば障子を挙げることができるが、本発明はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。
【0148】
図26(B)は、光学体の一構成例を示す断面図である。図26(B)に示すように、光学体402は、基材411と、光学素子1とを備える。光学素子1は、基材411の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けられる。光学素子1と基材311とは、接着層などにより貼り合される。なお、障子402の構成はこの例に限定されるものではなく、光学素子1を光学体402として用いるようにしてもよい。
【0149】
基材411は、例えば、可撓性を有するシート、フィルム、または基板である。基材411としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空欄に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来建具の光学体として公知のものを用いることができる。光学素子1としては、上述の実施形態または変形例に係る光学素子1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
なお、上述の適用例では、本発明を窓材、建具、ブラインド装置のスラット、およびロールスクリーン装置のスクリーンなどの内装部材または外装部材に適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、上記以外の内装部材および外装部材にも適用可能である。
【符号の説明】
【0151】
1…光学素子
10…積層体
11…形状層
11a…構造体
12…包埋樹脂層
12a…構造層(第1の層)
12b…平坦層(第2の層)
13…光学機能層
21…第1の基材
22…第2の基材
23…接合層
30…窓本体
100…熱線反射窓
111…凹部
201…ブラインド装置
301…ロールスクリーン装置
401…建具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を形成する構造体を有する形状層と、
前記構造体の上に形成された、入射光を部分的に反射させる光学機能層と、
前記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、前記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで前記第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記構造体および前記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成された包埋樹脂層とを具備し、
前記形状層および前記包埋樹脂層の少なくとも一つは、透光性を有するとともに前記入射光の入射面を有する光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記エネルギー線硬化樹脂は、8体積%以上の硬化収縮率を有し、
前記第2の体積は、前記第1の体積の15%以上である光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記エネルギー線硬化樹脂は、13体積%以上の硬化収縮率を有し、
前記第2の体積は、前記第1の体積の50%以上である光学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記形状層側および前記包埋樹脂層側の少なくとも一方に積層された、透光性を有する基材をさらに具備する光学素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学機能層は、波長選択反射層である光学素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記波長選択反射層は、赤外線帯域の光を指向反射し、可視光帯域の光を透過させる光学素子。
【請求項7】
請求項5に記載の光学素子であって、
入射角(θ、φ)(但し、θ:前記入射面に対する垂線と、前記入射面に入射する入射光または前記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:前記入射面内の特定の直線と、前記入射光または前記反射光を前記入射面に射影した成分とのなす角)で前記入射面に入射した光のうち、第1の波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、前記第1の波長帯と異なる第2の波長帯の光を透過する光学素子。
【請求項8】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記入射面は平坦面である光学素子。
【請求項9】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.5mmの光学くしの透過写像鮮明度が、50以上である光学素子。
【請求項10】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしの透過写像鮮明度の合計値が、230以上である光学素子。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学機能層は、半透過層である光学素子。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学機能層が、前記入射面に対して傾斜した複数の光学機能層からなり、
前記複数の光学機能層が、互いに平行に配置されている光学素子。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記形状層と前記包埋樹脂層との屈折率差が、0.010以下である光学素子。
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記構造体は、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、またはコーナーキューブ状である光学素子。
【請求項15】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記構造体は、1次元または2次元的に配列されており、
前記構造体の主軸が、前記入射面の垂線を基準にして前記構造体の配列方向に傾いている光学素子。
【請求項16】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
5°以上60°以下の入射角度で前記光学素子の両面のいずれか一方から入射し、前記光学素子により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、およびyの差の絶対値が、前記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学素子。
【請求項17】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学素子の前記入射面上に、撥水性または親水性を有する層をさらに具備する光学素子。
【請求項18】
日射を遮蔽する1または複数の日射遮蔽部材を備え、
前記日射遮蔽部材が、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子を備える日射遮蔽装置。
【請求項19】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子を採光部に備える建具。
【請求項20】
凹部を形成する構造体を有する第1の支持体と、
前記構造体の上に形成された、入射光を部分的に反射させる光学機能層と、
前記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、前記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで前記第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記構造体および前記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成された第2の支持体と、
前記第2の支持体と接合される窓本体とを具備する窓材。
【請求項21】
凹部を形成する構造体を有する第1の支持体を形成し、
前記構造体の上に、入射光を部分的に反射させる光学機能層を形成し、
前記構造体及び前記光学機能層をエネルギー線硬化樹脂で包埋することで、前記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、前記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで前記第1の層の上に形成された第2の層とを含む第2の支持体を形成する光学素子の製造方法。
【請求項1】
凹部を形成する構造体を有する形状層と、
前記構造体の上に形成された、入射光を部分的に反射させる光学機能層と、
前記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、前記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで前記第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記構造体および前記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成された包埋樹脂層とを具備し、
前記形状層および前記包埋樹脂層の少なくとも一つは、透光性を有するとともに前記入射光の入射面を有する光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記エネルギー線硬化樹脂は、8体積%以上の硬化収縮率を有し、
前記第2の体積は、前記第1の体積の15%以上である光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記エネルギー線硬化樹脂は、13体積%以上の硬化収縮率を有し、
前記第2の体積は、前記第1の体積の50%以上である光学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記形状層側および前記包埋樹脂層側の少なくとも一方に積層された、透光性を有する基材をさらに具備する光学素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学機能層は、波長選択反射層である光学素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記波長選択反射層は、赤外線帯域の光を指向反射し、可視光帯域の光を透過させる光学素子。
【請求項7】
請求項5に記載の光学素子であって、
入射角(θ、φ)(但し、θ:前記入射面に対する垂線と、前記入射面に入射する入射光または前記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:前記入射面内の特定の直線と、前記入射光または前記反射光を前記入射面に射影した成分とのなす角)で前記入射面に入射した光のうち、第1の波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、前記第1の波長帯と異なる第2の波長帯の光を透過する光学素子。
【請求項8】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記入射面は平坦面である光学素子。
【請求項9】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.5mmの光学くしの透過写像鮮明度が、50以上である光学素子。
【請求項10】
請求項5に記載の光学素子であって、
前記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしの透過写像鮮明度の合計値が、230以上である光学素子。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学機能層は、半透過層である光学素子。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学機能層が、前記入射面に対して傾斜した複数の光学機能層からなり、
前記複数の光学機能層が、互いに平行に配置されている光学素子。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記形状層と前記包埋樹脂層との屈折率差が、0.010以下である光学素子。
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記構造体は、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、またはコーナーキューブ状である光学素子。
【請求項15】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記構造体は、1次元または2次元的に配列されており、
前記構造体の主軸が、前記入射面の垂線を基準にして前記構造体の配列方向に傾いている光学素子。
【請求項16】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
5°以上60°以下の入射角度で前記光学素子の両面のいずれか一方から入射し、前記光学素子により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、およびyの差の絶対値が、前記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学素子。
【請求項17】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学素子の前記入射面上に、撥水性または親水性を有する層をさらに具備する光学素子。
【請求項18】
日射を遮蔽する1または複数の日射遮蔽部材を備え、
前記日射遮蔽部材が、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子を備える日射遮蔽装置。
【請求項19】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子を採光部に備える建具。
【請求項20】
凹部を形成する構造体を有する第1の支持体と、
前記構造体の上に形成された、入射光を部分的に反射させる光学機能層と、
前記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、前記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで前記第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記構造体および前記光学機能層を包埋するエネルギー線硬化樹脂で形成された第2の支持体と、
前記第2の支持体と接合される窓本体とを具備する窓材。
【請求項21】
凹部を形成する構造体を有する第1の支持体を形成し、
前記構造体の上に、入射光を部分的に反射させる光学機能層を形成し、
前記構造体及び前記光学機能層をエネルギー線硬化樹脂で包埋することで、前記凹部を充填し第1の体積を有する第1の層と、前記第1の体積の5%以上である第2の体積を有する厚みで前記第1の層の上に形成された第2の層とを含む第2の支持体を形成する光学素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−186414(P2011−186414A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56938(P2010−56938)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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