説明

光学素子の成形部材、及び光学素子の製造方法

【課題】作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制でき、所望の性能を有する光学素子を製造できる成型部材を提供する。
【解決手段】成型部材は、光学素子を製造するための部材である。成型部材は、光学素子の表面の形状を定めるための第1面を有する第1モールド部と、第1モールド部と一体で、光学素子の裏面を加工可能な加工装置の保持機構に保持される被保持部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の成形部材、及び光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガスケットの両端の開口のそれぞれにモールド部材(母型)を配置し、ガスケットと一対のモールド部材との間に形成される空間に、プラスチックレンズを製造するための材料であるモノマーを供給し、その後、そのモノマーを重合することによって製造される。下記特許文献には、ガスケットを用いてプラスチックレンズを製造する技術の一例が開示されている。
【特許文献1】特開平9−300371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチックレンズの製造において、作業工程数の削減、作業の簡略化等が望まれる。作業工程数が増えたり、作業が複雑化したりすると、製造コストの低減を阻害する可能性がある。また、作業工程数が増えたり、作業が複雑化したりすると、プラスチックレンズが損傷し易くなったり、プラスチックレンズに異物が付着し易くなったり、プラスチックレンズの光学性能が低下したりする可能性がある。
【0004】
本発明は、プラスチックレンズ等の光学素子を製造する際、作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制でき、所望の性能を有する光学素子を製造できる成型部材、及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を例示する第1の態様に従えば、光学素子を製造するための成型部材であって、光学素子の表面の形状を定めるための第1面を有する第1モールド部と、第1モールド部と一体で、光学素子の裏面を加工可能な加工装置の保持機構に保持される被保持部と、を備えた成型部材が提供される。
【0006】
本発明を例示する第2の態様に従えば、第1の態様の成型部材を用いる光学素子の製造方法が提供される。
【0007】
本発明を例示する第3の態様に従えば、光学素子の製造方法であって、光学素子の表面の形状を定めるための第1モールド部の第1面に、光学素子を製造するための材料を供給することと、第1面上に光学素子を形成した後、第1面と光学素子とを接触させた状態で、第1モールド部と一体な被保持部を、光学素子の裏面を加工可能な加工装置の保持機構で保持することと、保持機構で被保持部を保持した状態で、光学素子の裏面を加工することと、を含む光学素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学素子を製造する際、作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制でき、所望の性能を有する光学素子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら例示的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るプラスチックレンズを製造するための成型部材100の一例を示す側断面図である。本実施形態において、成型部材100は、例えばセミフィニッシュレンズと呼ばれる半製品レンズを製造可能(成型可能)である。以下の説明においては、成型部材100で製造される光学素子を適宜、セミフィニッシュレンズ、と称する。
【0011】
図1において、成型部材100は、第1部材1と、第1部材1と別の第2部材2とを備えている。第1部材1は、セミフィニッシュレンズの表面(凸面)の形状を定めるための第1面3を有する第1モールド部4と、第1モールド部4と一体で、セミフィニッシュレンズの裏面(凹面)を加工可能な加工装置の保持機構に保持される被保持部5とを備えている。第2部材2は、セミフィニッシュレンズの裏面の形状を定めるための第2面6を有する第2モールド部7と、第2モールド部7と一体で、セミフィニッシュレンズの側面の形状を定めるための第3面8を有するガスケット部9とを備えている。
【0012】
本実施形態において、第1モールド部4及び被保持部5を含む第1部材1は、合成樹脂製である。本実施形態においては、第1モールド部4及び被保持部5を含む第1部材1は、オレフィン系樹脂である。本実施形態において、オレフィン系樹脂は、例えばポリプロピレンを含む。
【0013】
本実施形態において、第2モールド部7及びガスケット部9を含む第2部材2は、合成樹脂製である。本実施形態においては、第2モールド部7及びガスケット部9を含む第2部材2は、オレフィン系樹脂である。本実施形態において、オレフィン系樹脂は、例えばポリプロピレンを含む。なお、第2部材2が、例えばエラストマー製でもよい。
【0014】
第1部材1の第1モールド部4は、製造されるセミフィニッシュレンズの表面の形状を規定することができる。図1において、第1モールド部4の第1面3は、中央部が周辺部に対して−Y側に湾曲する形状である。第1面3は、凹面である。
【0015】
第1部材1の被保持部5は、第1面3と反対側(−Y側)の第1モールド部4の所定部位に接続されている。第1モールド部4と被保持部5とは一体である。本実施形態において、被保持部5は、軸部材である。図1において、被保持部5の中心軸AX1は、Y軸と平行である。
【0016】
本実施形態において、第1部材1は、被保持部5の周囲に支持面10を有する。XZ平面内において、支持面10は、輪帯状である。本実施形態において、支持面10は、XZ平面とほぼ平行である。
【0017】
第2部材2の第2モールド部7は、ガスケット部9の+Y側に配置されている。第2モールド部7とガスケット部9とは一体である。第2モールド部7は、製造されるセミフィニッシュレンズの裏面の形状を規定することができる。第2モールド部7の第2面6は、中央部が周辺部に対して−Y側に湾曲する形状である。第2面6は、凸面である。
【0018】
第2部材2のガスケット部9は、円筒状である。図1において、ガスケット部9の中心軸AX2は、Y軸と平行である。ガスケット部9は、Y軸と平行な中心軸AX2の周囲に配置される。ガスケット部9は、内周面11を有する。内周面11は、セミフィニッシュレンズの側面の形状を定めるための第3面8を含む。本実施形態において、ガスケット部9は、内周面11の一部の領域において、セミフィニッシュレンズの側面の形状を規定することができる。すなわち、本実施形態においては、第3面8は、ガスケット部9の内周面11の一部の領域である。
【0019】
第2部材2は、ガスケット部9の−Y側に、第1部材1の第1モールド部4を配置可能な開口12を備えている。本実施形態において、開口12の近傍のガスケット部9の内側に、第1モールド部4を支持可能な支持部13が設けられている。支持部13は、−Y側を向いており、開口12に配置された第1モールド部4の少なくとも一部を支持可能である。
【0020】
本実施形態においては、第2部材2の開口12に第1部材1の第1モールド部4が配置されて、支持部13に支持されることによって、第1モールド部4の第1面3と、第2モールド部7の第2面6と、ガスケット部9の第3面8との間に、空間(キャビティ)14が形成される。空間14には、セミフィニッシュレンズ(光学素子)を製造するためのモノマーが供給される。
【0021】
本実施形態において、第1部材1の第1モールド部4が、第2部材2の開口12に配置されて、支持部13に支持されたとき、第1部材1の被保持部5の中心軸AX1と、第2部材2のガスケット部9の中心軸AX2とは、ほぼ一致する。また、空間14に形成されるセミフィニッシュレンズ(光学素子)の光軸は、Y軸と平行である。
【0022】
次に、上述の成型部材100に関する処理の一例について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0023】
まず、成型部材100の第1部材1及び第2部材2が製造される。第1部材1は、射出成形によって形成される(ステップS1)。同様に、第2部材2も、射出成形によって形成される(ステップS2)。
【0024】
次に、第1部材1と第2部材2とを組み合わせる処理が実行される(ステップS3)。すなわち、第2部材2の開口12に、第1部材1が配置され、支持部13に支持される。これにより、図3に示すように、第1面3と第2面6と第3面8との間に、空間14が形成される。
【0025】
本実施形態においては、第1部材1と第2部材2とを組み合わせる処理は、クリーンブースで実行される。これにより、第1面3、第2面6及び第3面8等に異物が付着することを抑制できる。
【0026】
また、本実施形態においては、ばね機構を含む保持部材50によって、第1部材1と第2部材2とが固定される。以下の説明において、保持部材50を適宜、おさえばね50、と称する。
【0027】
次に、空間14に、セミフィニッシュレンズを製造するためのモノマーが供給される(ステップS4)。本実施形態においては、例えば第2部材2の一部を撓ませて、空間14と外部空間とを連通する通路を形成し、その通路にモノマーを供給可能な供給管を配置する。これにより、供給管を介して、空間14にモノマーが供給される。空間14に供給されたモノマーは、第1面3、第2面6及び第3面8のそれぞれに供給され、それら第1面3、第2面6及び第3面8のそれぞれと接触する。空間14にモノマーが供給されることによって、空間14がモノマーで満たされる。
【0028】
なお、図4に示すように、第3面8の一部に、空間14にモノマーを供給するための供給口15を設けることができる。図4において、ガスケット部9の所定位置に、空間14と外部空間とを接続する貫通孔16が形成される。供給口15は、空間14側の貫通孔16の端部に配置される。貫通孔16は、外部空間に配置された、モノマーを供給可能な供給装置(不図示)と接続可能である。供給装置より貫通孔16にモノマーが供給されることによって、そのモノマーは、貫通孔16及び供給口15を介して、空間14に供給される。
【0029】
空間14がモノマーで満たされた後、空間14に供給されたモノマーに対する重合処理(加熱処理)が実行される(ステップS5)。本実施形態において、モノマーは、例えばジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のような熱重合性樹脂を含む。モノマーを所定の加熱条件で加熱することによって、そのモノマーが重合され、セミフィニッシュレンズ(光学素子)が生成される。モノマーの重合処理は、空間14に満たされたモノマーを、第1部材1、第2部材2及びおさえばね50とともに、例えば電気オーブン等の所定の加熱装置にセットする工程と、その加熱装置を用いて所定の加熱条件でモノマーを加熱処理する工程とを含む。
【0030】
モノマーを重合させることによって、セミフィニッシュレンズが生成された後、そのセミフィニッシュレンズと第2部材2とが分離される(ステップS6)。
【0031】
図5は、セミフィニッシュレンズと第2部材2とが分離された後の状態を示す図である。本実施形態においては、セミフィニッシュレンズPが生成され、そのセミフィニッシュレンズPと第2部材2とが分離された後においても、図5に示すように、第1部材1とセミフィニッシュレンズPとは分離されない。セミフィニッシュレンズPは、第1部材1の第1面3上に形成される。
【0032】
第1部材1の第1面3上にセミフィニッシュレンズが形成された後、第1面3とセミフィニッシュレンズPとは、接触した状態で、一緒に袋詰めされる(ステップS7)。第1部材1とセミフィニッシュレンズPとは、接続された状態で、例えば加工工場に所定の流通経路で輸送される(ステップS8)。
【0033】
第1部材1と接続された状態のセミフィニッシュレンズPが加工工場に輸送された後、図6に示すように、セミフィニッシュレンズPと接続された状態の第1部材1が、セミフィニッシュレンズを加工可能な加工装置30の保持機構31に保持される。本実施形態において、加工装置30は、セミフィニッシュレンズPの裏面(凹面)を加工可能である。
【0034】
保持機構31は、被保持部5を含む第1部材1の少なくとも一部を保持する。本実施形態において、保持機構31は、真空チャック機構を含む。保持機構31は、第1部材1の支持面10と接触可能な接触面(シール面)32と、被保持部5の少なくとも一部が配置可能な空間33とを含む。第1部材1の支持面10と保持機構31の接触面32とを接触させることによって、第1部材1と保持機構31との間に、ほぼ密閉された空間33が形成される。保持機構31は、空間33の気体を吸引する真空システム(不図示)を含み、第1部材1の支持面10と保持機構31の接触面32とを接触させた状態で、空間33の気体を吸引することによって、接触面32で、第1部材1の支持面10を吸着するように保持することができる。また、保持機構31は、空間33の内側面で、被保持部5を保持する。
【0035】
そして、保持機構31で第1部材1を保持した状態で、セミフィニッシュレンズPの裏面が加工される(ステップS9)。加工装置30は、例えば切削装置及び研磨装置の少なくとも一方を含む。セミフィニッシュレンズPを加工することによって、図7に示すように、所定の形状を有する光学素子(プラスチックレンズ)PFが形成される。
【0036】
その後、光学素子PFに対する第1部材1の保持が解除される。すなわち、光学素子PFと第1部材1とが分離される(ステップS10)。その後、光学素子PFに対する洗浄処理が実行される(ステップS11)。その後、例えば光学素子PFに対して反射防止膜を形成する等、所定の後工程が実行される。
【0037】
なお、本実施形態においては、ステップS6においてセミフィニッシュレンズから分離された第2部材2は、粉砕処理された後、再利用される(ステップS12)。また、ステップS10において光学素子PF分離された第1部材1は、粉砕処理された後、再利用される(ステップS13)。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1モールド部4と被保持部5とが一体なので、例えば重合処理を実行した後、セミフィニッシュレンズPと第1部材1とを分離することなく、その第1部材1を保持機構31で保持して、第1部材1に支持されているセミフィニッシュレンズPを加工することができる。したがって、作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制して、光学素子PFを製造することができる。
【0039】
例えば重合処理を実行してセミフィニッシュレンズを形成した後、セミフィニッシュレンズと第1部材と分離し、そのセミフィニッシュレンズを所定の支持部材を介して加工装置の保持機構で保持する構成の場合、作業工程数が増す可能性がある。
【0040】
また、セミフィニッシュレンズを所定の支持部材を介して加工装置の保持機構で保持する構成において、例えばセミフィニッシュレンズと支持部材との位置関係を所望状態にするための作業が必要となり、作業が複雑化する可能性がある。
【0041】
また、セミフィニッシュレンズと支持部材との位置関係を所望状態にすることが困難な場合、位置ずれした状態でセミフィニッシュレンズを加工してしまう可能性がある。その結果、光学素子を所望の形状に形成することができず、所謂、プリズム不良が発生する等、光学素子が所望の光学性能を得られなくなる可能性がある。
【0042】
また、例えば重合処理を実行してセミフィニッシュレンズを形成した後、セミフィニッシュレンズと第1部材と分離し、そのセミフィニッシュレンズを所定の支持部材を介して加工装置の保持機構で保持する構成の場合、セミフィニッシュレンズの表面が一旦露出することとなるので、セミフィニッシュレンズの表面に異物が付着したり、セミフィニッシュレンズの表面が損傷したりする可能性が高くなる。その結果、光学素子の光学性能が低下する可能性がある。また、セミフィニッシュレンズの表面を露出させた状態で、輸送(流通)する場合、セミフィニッシュレンズの表面が損傷する可能性が高くなる。輸送の際に、所定の保護部材でセミフィニッシュレンズの表面を覆うことも考えられるが、その分、作業工程が増えることとなる。
【0043】
本実施形態によれば、重合処理を実行してセミフィニッシュレンズを製造した後においても、セミフィニッシュレンズと第1部材1とを分離することなく、重合処理後の処理を実行することができるので、上述したような不具合の発生を抑制することができる。したがって、作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制して、所望の性能を有する光学素子PFを製造することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、第1部材1が合成樹脂製なので、その第1部材1にかかるコストを低減することができる。例えば、セミフィニッシュレンズの表面の形状を定めるための部材をガラス製にする場合に比べて、コストを十分に低減することができる。また、例えば、様々な形状を有する光学素子を製造しようとした場合、ガラス製の部材を多数用意する必要がある。本実施形態によれば、第1部材1を射出成形で製造できるので、コストの上昇を抑制しつつ、製造しようとする光学部材の形状に応じて、様々な形状の第1部材1を容易に製造できる。
【0045】
また、ガラス製の部材を洗浄して再利用する場合、洗浄むらが発生したり、部材に異物が残留したりする可能性があることは否めない。また、ガラス製の部材は、損傷し易く、作業性が低下する可能性がある。本実施形態によれば、例えばセミフィニッシュレンズを製造する毎に、射出成形により、コストの上昇を抑制しつつ、第1部材1を製造することができる。したがって、作業性の低下、異物の混入等を抑制することができる。また、第1部材1の合成樹脂を再利用することによって、コストの上昇を抑制できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第2部材2が合成樹脂製なので、第1部材1と同様、コストの上昇、作業性の低下、異物の混入等を抑制しつつ、様々な形状の第2部材2を容易に製造できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、第2モールド部7とガスケット部9とが一体なので、作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制することができる。すなわち、セミフィニッシュレンズの裏面の形状を定めるための部材と、セミフィニッシュレンズの側面の形状を定める部材とが別の部材である場合、例えばモノマーを供給するための空間を形成する作業の作業性が低下する可能性がある。本実施形態によれば、第2モールド部7とガスケット部9とが一体なので、作業工程数の増大、作業の複雑化等を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、セミフィニッシュレンズの表面のほぼ全域を第1部材1の第1面3で支持した状態で、セミフィニッシュレンズを加工するので、例えば加工によりセミフィニッシュレンズが変形したり、セミフィニッシュレンズに所謂、びびり振動が発生したりすることを抑制できる。したがって、所望の性能を有する光学素子を製造することができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0050】
図8は、第2実施形態に係る成型部材100Bの一例を示す側断面図である。本実施形態の特徴的な部分は、第2部材2のガスケット部9に、第1部材1の第1モールド部4の少なくとも一部が嵌る溝17が形成されている点にある。
【0051】
図8において、溝17は、ガスケット部9の内周面11の一部に形成されている。本実施形態において、溝17は、中心軸AX2に対する放射方向において、中心軸AX2に対して凹むように形成されている。
【0052】
図9は、ガスケット部9に形成された溝17に第1モールド部4の外縁を嵌めた状態を示す図である。ガスケット部9に形成された溝17に第1モールド部4の外縁を嵌めることによって、第1面3と第2面6と第3面8との間に空間14が形成される。上述の実施形態と同様、空間14には、例えば供給管を介してモノマーが供給される。なお、図10に示すように、ガスケット9の一部に貫通孔16を形成し、その貫通孔16(供給口15)を介して、空間14にモノマーを供給してもよい。
【0053】
本実施形態においては、溝17に第1モールド部4を嵌ることによって、第1部材1と第2部材2との位置関係を固定することができる。これにより、上述の実施形態で説明したようなおさえばね50を省略することができる。本実施形態においては、溝17に第1モールド部4の少なくとも一部を嵌めた状態で、空間14にモノマーを供給する。また、溝17に第1モールド部4の少なくとも一部を嵌めた状態で、空間14に供給されたモノマーの加熱処理(重合処理)が実行される。
【0054】
なお、上述の第1、第2実施形態においては、第2モールド部7とガスケット部9とが一体である場合を例にして説明したが、第2モールド部7とガスケット部9とが別の部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係る成型部材の一例を示す側断面図である。
【図2】第1実施形態に係る成型部材に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る成型部材に関する処理の一例を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る成型部材の変形例の一例を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係る成型部材に関する処理の一例を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係る成型部材に関する処理の一例を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係る成型部材に関する処理の一例を説明するための図である。
【図8】第2実施形態に係る成型部材の一例を示す側断面図である。
【図9】第2実施形態に係る成型部材に関する処理の一例を説明するための図である。
【図10】第2実施形態に係る成型部材の変形例の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
1…第1部材、2…第2部材、3…第1面、4…第1モールド部、5…被保持部、6…第2面、7…第2モールド部、8…第3面、9…ガスケット部、12…開口、14…空間、15…供給口、17…溝、30…加工装置、31…保持機構、100…成型部材、P…セミフィニッシュレンズ、PF…光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を製造するための成型部材であって、
前記光学素子の表面の形状を定めるための第1面を有する第1モールド部と、
前記第1モールド部と一体で、前記光学素子の裏面を加工可能な加工装置の保持機構に保持される被保持部と、を備えた成型部材。
【請求項2】
前記第1モールド部及び前記被保持部は、合成樹脂製である請求項1記載の成型部材。
【請求項3】
前記光学素子の裏面の形状を定めるための第2面を有する第2モールド部を備える請求項1又は2記載の成型部材。
【請求項4】
前記光学素子の側面の形状を定めるための第3面を有するガスケット部を備える請求項3記載の成型部材。
【請求項5】
前記光学素子の裏面の形状を定めるための第2面を有する第2モールド部と、
前記第2モールド部と一体で、前記光学素子の側面の形状を定めるための第3面を有するガスケット部と、を備える請求項1又は2記載の成型部材。
【請求項6】
前記第2モールド部及び前記ガスケット部は、合成樹脂製である請求項5記載の成型部材。
【請求項7】
前記第1面と前記第2面と前記第3面とで形成される空間に、前記光学素子を製造するための材料が供給される請求項4〜6のいずれか一項記載の成型部材。
【請求項8】
前記第3面の少なくとも一部に、前記空間に前記材料を供給するための供給口を備える請求項7記載の成型部材。
【請求項9】
前記ガスケット部に、前記第1モールド部の少なくとも一部が嵌る溝を有する請求項4〜8のいずれか一項記載の成型部材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の成型部材を用いる光学素子の製造方法。
【請求項11】
光学素子の製造方法であって、
前記光学素子の表面の形状を定めるための第1モールド部の第1面に、前記光学素子を製造するための材料を供給することと、
前記第1面上に前記光学素子を形成した後、前記第1面と前記光学素子とを接触させた状態で、前記第1モールド部と一体な被保持部を、前記光学素子の裏面を加工可能な加工装置の保持機構で保持することと、
前記保持機構で前記被保持部を保持した状態で、前記光学素子の裏面を加工することと、を含む光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1面と、前記光学素子の裏面の形状を定めるための第2モールド部の第2面と、前記光学素子の側面の形状を定めるためのガスケット部の第3面とで形成された空間に、前記材料を供給する請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
前記第2モールド部と前記ガスケット部とは、一体である請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記ガスケット部に形成された溝に前記第1モールド部の少なくとも一部を嵌めた状態で、前記空間に前記材料を供給する請求項12又は13記載の製造方法。
【請求項15】
前記溝に前記第1モールド部の少なくとも一部を嵌めた状態で、前記空間に供給された前記材料を加熱する請求項14記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−143181(P2009−143181A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325075(P2007−325075)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(300035870)株式会社ニコン・エシロール (51)
【Fターム(参考)】